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リル・ファッツ・オー・ゴールド

 スワンプ・ポップの異世代同居バンド、Lil' Band O' Goldの最新作を聴きました。
 どこかの文章で、「三世代のメンバーからなる」みたいな表現を見た覚えがあります。

 本バンドは、70代のWarren Storm(dr)、Dickie Randry(sax)から、リーダー格の40代、C.C.Adcock(gt)まで、三世代は大げさでも、親子くらいの年齢差があるメンツで構成されているバンドです。


Plays Fats
Lil' Band O' Gold

1. Blue Monday (Warren Storm) 
2. It Keeps Raining (Robert Plant)
3. Let’s Talk It Over (Don’t Lie To Me) (C.C. Adcock) 
4. I'm Ready (Lucinda Williams with Ani DiFranco, Kenny Bill Stinson)
5. I'm In Love Again (David Egan) 
6. Going Home (Warren Storm) 
7. Ain't That A Shame (Jimmy Barnes) 
8. What A Price (Grand Prix) (Steve Riley)
9. 4 Winds Blow (Warren Storm)  
10. Poor Me (C.C. Adcock) 
11. I'm Walkin' (Tim Rogers)
12. Rosemary (Warren Storm)
13. I've Been Around (Robert Plant)

 曲目のあとの( )内は、リード・ボーカルです。
 本盤でのメンツは以下のような感じだと思います。

Warren Storm : drums, vocals
Steve Riley : accordion, vocals
C.C.Adcock : guitar, vocals
David Egan : piano, vocals
Dave Ranson : bass
Richard Comeaux : pedal steel guitar
Dickie Landry : sax
Pat Breaux : sax
Kenny Bill Stinson : keyboad(若しかするとguitarも)
(もう一人、Huston Dereksという人の名前がリーフレットの最終ページに記されているのですが、誰のことなのか分かりませんでした。)

 このバンドは、スワンプ・ポップのオールスターというには、若干むりがあるかも知れません。
 もともとスワンプ・ポップはニッチなサブ・ジャンルです。
 ジャンルを代表するアーティストでも、一般的な音楽ファンには、限りなく無名でしよう。

 この中では、ドラムスのWarren Stormが、スワンプ・ポップ・レジェンドと呼ばれている人です。
 若いころは、J.D. Millerのもと、セッション・ドラマーとして、エクセロのスワンプ・ブルース・マンのセッションに多数参加しています。
 ソロ・シンガーとしては、"Prisoner's Song"(58)ほかのヒットがあり、これまで、Lil' Band O' Goldのアルバムでは、最も多くリード・ボーカルを務めています。

 David Eganは、シンガー、ソングライター、ピアニストで、ソロ作もありますが、他のシンガーへの曲提供で、ライターとしての方が評価が高い人かも知れません。
 Egan作の"First You Cry"(1stに本人バージョン収録)は、パーシー・スレッジのカバーがあるほか、私はリトル・バスターのバージョンが好きです。

 Steve Rileyは、スワンプ・ポップというより、モダンなケイジャン・バンドのアコーディオニストです。
 そして、C.C.Adcockは、スワンプ・ロッカーとベタに言ってしまいましょう。


2ndのころのスナップだと思います。


 さらに本盤には、ロバート・プラントほか数人のゲストが参加しています。
 以下のとおりです。

Robert Plant
Lucinda Williams
Ani DiFlanco (誰ですか?)
Jimmy Barnes (同上)
Tim Rogers

 スワンプ・ポップのスーパー・グループと評されるこのバンドのことは、当ブログにコメントをいただいた二見さんからご教示いただいて知って以来、過去作を愛聴していました。
 バンドは、これまで2枚のアルバムをリリースしていて、本盤は2年ぶり、通算3枚目になります。
 以下のとおりです。

00年 The Lil' Band O' Gold (Shanachie Records)
10年 The Promised Land (Room 609)
12年 Plays Fats (Dust Devil Music)

 1stのあと、2ndまで10年のブランクがありますが、2ndの録音は06年で、4年寝かされていたことになります。
 そして、3枚とも、すべて別の会社からリリースされていますね。
 当初は1回限りの企画ものだったのか、それとも需要がなかったのか(だとすれば寂しすぎる)

 本盤のDust Devil Musicは、オーストラリアの会社のようです。
 2ndのリリース後、オーストラリアやニュージーランドで公演したようなので、その関係でしょうか。
 
 また、ゲストの一人、Tim Rogersというのは、You Am Iというオーストラリア(!)のロック・バンドのメンバーです。
 You Am Iは、音楽的には私の関心外のバンドですが、一度だけ聴くきっかけがありました。
 このバンドには、なんと"Doug Sahm"という題名の自作曲があるのでした。
 この件は、当ブログで過去に触れました。

 さて、本盤は前作同様、ルイジアナのラファイエ(ット)で録音されました。
 プロデュースは、C.C.Adcockが仕切っています。
 前作でC.C.と共同制作した、Tarka Cordellは不参加です。
 (ちなみに、1stはニューオリンズ録音で、C.C.とLil' Band O' Goldの共同制作名義でした。また、Tarka Cordellは、C.C.の2枚のソロ作を制作している人です。)

 1stは、David EganやC.C.のオリジナルを混じえながら、ニューヨーク・ディープから、ニユーオリンズR&B、スワンプ・ポップ、ケイジャンなどを披露したアルバムでした。
 対して、2ndは、引き続き渋いカバー曲をやりつつも、オリジナル曲の比率を上げたアルバムになっていました。
 そして、今作は、ファッツ・ドミノのカバー集です。
 これが、ジャズなら、"Plays Fats"とは、ファッツ・ウォーラーを連想していたでしょう。

 1stと2ndでは、音の印象がかなり違いました。
 2ndは、各パートがそれぞれ個性をうまく出しつつも、出しゃばりすぎないスタンスが気持ち良いサウンドでした。
 大好きなアルバムです。
 一方、1stは、C.C.が大先輩に遠慮したのか、オーバー・プロデュースの真逆という感じで、めいめいが自由にやりましたという印象を受ける緩いガレージなサウンドでした。(と感じました。)

 対して、今作はどうでしょう。
 プロデュースは、C.C.単独です。
 ただ、今作は、多彩なゲストが参加していることもあり、彼らの意見も取り入れながらやったのでしょう。
 1st、2ndとも肌触りの違う印象を持ちました。
 私の好みでは、ロック的なフェイクで味付けしたものより、オリジナルのイメージに近いもの、あるいはデキシー調など別の意味で古いスタイルに仕上げた作品が気に入りました。

 頑固に原曲に近いスタイルでやった、Warren Stormの担当曲、そして独自のアレンジながらセピアな雰囲気を出すことに成功しているDavid Eganの"I'm In Love Again"の仕上がりがとりわけ好きです。
 Warrenの"4 Winds Blow"は、ウキウキ軽快なリズムと、いい味を出しているペダル・スチールの使い方が私にはツボでした。
 そして、Rose Mary"は、誰がやっても悪くなりようがない名作ですね。
 へたにいじるべからずです。

 Steve Rileyは、わが道を行く感じのサウンドで、クリオールなまりっぽい歌いくちがいいです。
 クリフトン・シェニエを連想しました。
 やはりケイジャンとザディコは同じコインの両面ですね。

 C.C.は、当初いまいちかなと思いましたが、"Poor Me"がよいです。
 ここでの仕上げは、ジョン・レノンのアルバム、"Rock and Roll"を連想させる、スペクターっぽいエコーが胸に切なく迫ります。

 ゲストの担当曲では、Jimmy Barnesの、Fatsの歌い方や演奏のギミックをデフォルメした仕上げが痛快でした。
 Tim Rogersも頑張っていて悪くないです。
 まあ、何と言っても原曲が名作ぞろいですからね。

 Robert Plantは、彼の好みの牧歌的スタイルと、得意の艶っぽいウェットなボーカルが決まれば最高ですね。
 2曲ともよいですが、あえて私の好みで1曲あげるなら、ラストの"I've Been Around"がよりセクシーでお奨めです。

 最後に、本盤の収録曲を、英AceのCD、"Fats Domino Imperial Singles"シリーズ(Vol.1〜5)に当てはめて締めたいと思います。 

Fats Domino
The Early Imperial Singles 1950-1952

6. Going Home (Warren Storm)
3. Let's Talk It Over (Don't Lie 2 Me) (C.C.Adcock)

The Imperial Singles Vol.2 1953-1956
7. Ain't That A Shame (Jimmy Barnes)
10. Poor Me (C.C.Adcock)
12. Rosemary (Warren Storm)

The Imperial Singles Vol.3 1956-1958
1. Blue Monday (Warren Storm)
5. I'm In Love Again (David Egan)
11. I'm Walkin (Tim Rogers)

The Imperial Singles Vol.4 1959-1961
2. It Keeps Raining  (Robert Plant)
4. I'm Ready  (Lucinda Williams with Ani Di-franco)
8. What A Price (Grand Prix) (Steve Riley)
9. 4 Winds Blow (Warren Storm)
13. I've Been Around (Robert Plant)

 本盤は、繰り返し聴きこむほど、味わい深さを感じて、さらに好きになっていくアルバムだと思います。



It Keeps Rainin' by Robert Plant & Lil' Band O' Gold




関連記事はこちら

Fats Domino
ヘイ・ラ・バ・ブギ
ふとっちょ登場

Warren Storm
ダーティ・ドッグ・ワルツ
リトル・スワンプ・ドラマー・ボーイ
土曜の夜はあげあげカーニバル

David Egan : First You Cry
ブルーズン・ソウル・ブラザーズ
元祖ヘタウマ
アリゲーターバイユー、クロコダイル・スワンプ

You Am I
この人だれ? プラス1


テハーノ・サウンド・ショーケース

 今回は、テハーノ・ミュージックの大物、Ruben Ramosが兄貴のAlfonso Ramosと組んで作ったアルバムの内の1枚を聴きました。

 彼ら二人の共同名義のアルバムは、両名の名前のあとに"The Texas Revolution"(オルケスタの名前)と名乗っているケースが多いですが、本盤は、単に"Ruben Y Alfonso"(Ruben & Alfonso)名義となっています。 


Medley of 34 Golden Hits
Ruben Y Alfonso Ramos

Exitos De Rancheras 
1. Un Cielo
2. Flecha Envenenada
3. Mala Cara
Charro Medley
4. Palabra De Hombre
5. La Mal Pagadora
6. Se Me Hizo Facil
7. Mi Unico Camino
8. Volver Volver
Rock & Roll Medley
9. Mr. Pitiful
10. Mustang Sally
11. Farther On Up The Road
12. Shake Rattle & Roll
Boleros De Oro
13. Amor Mio
14. Si Dios Me Quita La Vida
15. Amor De La Calle
16. Parece Que Fue Ayer
17. Si Te Vas De Mi
Rancheras Del Pasado
18. Un Nuevo Contrato
19. Con El Agua Hasta El Cuello
20. Ojitos Sonadores
Oldies Medley
21. Tears On My Pillow
22. When A Man Loves A Woman
23. What's Your Name
24. Silhouettes
25. In The Still Of The Night,
26. Stand By Me
27. My Girl
Boleros Romanticos
28. Gema
29. Sabra Dios
30. Dios No Lo Quiera
31. Estoy Perdido
32. La Barca
Fats Domino Special
33. Blue Monday
34. Blueberry Hill

 唐突ですが、英語では、なぜ兄弟姉妹を明確に表現しないのでしょうか?
 会話でブラザー、シスターと言うとき、兄か弟か、姉か妹か、彼らは気にならないのでしょうか。

 年齢が離れていて、かつ本人が目の前にいれば、見た目でわかるかも知れません。
 でも、そうでない場合、話題になっている人物が、ジョンの兄貴なのか弟なのか、ジュリアの姉なのか妹なのか、私は気になります。

 父と子と精霊の前では、家族かどうかさえ判別できればよく、長幼の別は問題ではないということでしょうか。
 まあ、お兄ちゃん、お姉ちゃんとは呼ばず、名前で呼ぶから問題ないんでしょうね。

 これは、日本人だから気になるのでしょうか。
 家長制は、もはや遥か昔の歴史的制度ですが、なごりが日本人のDNAに埋め込まれているのかも知れません。
 例えば、長男、次男、長女、次女の表記が住民票から消えたのは、さほど前のことではありません。
 これは、正嫡の別を表しないための改正だったはずで、今回の話題とは別の話でしょう。
 住民票の続柄の表記が「子」となっていることに、なんとなく不足感を感じるのは古い人間なのかな?

 すみません、脱線しました。
 何が言いたいかといいますと、アルフォンソ・ラモスはルーベン・ラモスの兄貴だと思うのですが、はっきりと"older brother"、"younger brother"などの表記が見つからないのです。
 どうも文化的ないしは宗教的なところに理由があるのか、などと無駄に考えてしまったのでした。

 ジャケット写真の左が兄貴のアルフォンソ(sax, vocal)、右が弟のルーベン(vocal)だと思います。
 最近のルーベンの写真を見ると、本盤写真よりもずっと年齢を重ねているように感じられ、かつ黒いサングラスをかけていることが多いです。
 本CDは、04年リリースと表記されていますが、オリジナルはもっと以前なのだと思います。

 もともとは、アルフォンソのバンドだった"Mexican Revolution"を兄弟でやるようになり、その後、名称を"Texas Revolution"と変更して、現在はルーベンのバンドになった…と理解しているのですが、間違っていたらご指摘ください。




 さて、全34曲入りとすごいボリュームのように感じられますが、消化不良などなく、流れるように楽しく聴けます。
 7分から8分程度のメドレー曲が多く入っていて、曲目表の見た目ほどの圧迫感はありません。
 実際には、8セットの曲に分かれている感じです。

 スペイン語によるラテン曲は、伝統にのっとりつつもモダンなサウンドで、とても耳に心地よく聴きやすいです。
 そして、英語曲のメドレーが最高のアクセントになっていて、胸が躍る展開です。

 ところで、メドレー群のうち、ランチェラは何となくわかるのですが、ボレロとチャロ(もしかしてチャオ?)がよく分かりません。
 私は、ボレロは英語のバラードのスペイン語表記かと思っていた時期がありました。
 今は、よく分からないとしか言えません。

 さらに、チャロ(Charro)なんていうのは、いったい何なんでしょう?
 メキシコの伝統音楽(文化?)のひとつの形態なんでしょうね。

 その点、英語曲のメドレーは分かりやすく、ほっとします。
 ただ、ロックンロール・メドレーとなっているのが、メンフィス・ソウルやブルースだったりするのが不思議ではありますが…。

 オールディーズ・メドレーとなっているものの中心は、いわゆるドゥ・ワップです。
 このあたりは、アメグラ的なオールディーズかと思いがちですが、少し違って、チカーノ文化では、この手の古いジャンプ、リズム&ブルース(とりわけドゥ・ワップ)をオールディーズ(チカーノ・オールディーズ)と呼ぶらしく、古くから長く愛されているらしいです。

 テハーノ・オルケスタの代表的存在、Sunny & Sunlinersが、その初期に、Little Anthony & Imperialsをお手本の一つとしていたことは、いくつかの文章に記されています。
 本盤のオールディーズ・メドレーの歌いだしが、Imperialsの"Tears On My Pillowであるのは偶然ではないでしょう。
 Imperialsは、チカーノ、テハーノに愛され続けているグループなのだと思います。

 このメドレーの選曲は、時期によって多少変化があるようで、"Just Because"や"You Send Me"を組み入れているアルバムもあります。

 このセットリストをライヴでやったなら、間違いなく楽しめるステージになると思います。
 ラストにFats Dominoがくるのも意表を突かれます。

 ソウル・レビューならぬ、テハーノ・レビューの最高の1枚だと思いました。




Oldies Medley by Ruben Y Alfonso


Tears On My Pillow 〜
〜 When a Man loves a Woman 
〜 What's Your Name 
〜 Silhouette 
〜 In The Still Of The Night 
〜 Stand By Me 
〜 My Girl






愛しのロスアンヘレス

 ジー・ミッドナイターズの残党らが中心に制作した、イーストL.A.サウンドのモダン作が、今年春にリリースされました。
 ラテン・フレイバー溢れるサウンドで、次第にいや増す猛夏に対抗するアイテムとしてはいかがでしょうか?

 パーカッシブなリズムにメロウなボーカル、そして何よりも力強さと哀愁を併せ持つホーン陣の演奏が素晴らしいです。
 Little Willie G先生も参加して、スムースなのどを聴かせています。
 少しだけですが、サンタナみたいなラテン・ギターも堪能できます。 


Thee East L.A. Philharmonic

1. I Love Los Angeles (Romeo Prado)
2. Making Ends Meet (Willie Garcia, Larry Rendon)
3. You'll Never Find Another Love Like Mine (Kenny Gamble, Leon Huff)
4. I Know That We Have Loved Before (Louise Dorsey, Daniel Candon de la Campa)
5. Chicano Power (Romeo Prado)
6. Don't Let Me Lose This Dream (Aretha Franklin, Ted White)
7. We're in This Love Together (Roger Murrah, Keith Stegall)
8. Paradise in Your Eyes
9. Good Lovin' (Rudy Clark, Arthur Resnick)
10. Pachuko Hop (Chuco Tempo) (Vernon Haven, Chuck Higgins)
11. The Letter (Ruben Blades, Lou Reed)
12. Summer Wind (Hans Bradtke, Heinz Mayer, Johnny Mercer)
13. Come Back Baby (Mike Lewis, Ricky Lisi)
14. Pachuco Hop (Vernon Haven, Chuck Higgins)
15. Por El Amor De Una Mujer(Un Hombre) (Daniel Candon De La Campa, Jesus Gonzalez Lopez)
16. Quince Para Tomar (Romeo Prado)
17. Romeo Speaks and Plays (feat. Romeo Prado)

 実を言いますと、私はサンアントニオ派といいますか、テハーノ派といいますか、カリフォルニアよりもテキサスが好きです。
 が、もちろん、あえて比較すればという話で、基本的にチカーノ・ソウルは大好きです。
 最近は、Tierraなんかも聴いています。
 アーバン・メロウなスイート・ソウルは、ツボに入るとはまりますよね。

 それにしても、同じバリオでも、メキシコの影響大のテキサスに比べて、見事にアフロ・アメリカン風のサウンドです。
 ランチェラよりも、むしろジャジーな臭いがします。
 なにより、スイート・ソウルの、そして、ギターはラテン・ロックの影響を感じます。

 ボーカル曲では、まずウイリーGが「ロッサンヘレーエ〜 ロッサン・ヘレーエ〜」と鼻から抜ける声で歌う、冒頭の曲、"I Love Los Angeles"が耳に残ります。
 とにかく、そのステマ効果抜群のフレーズに刷り込まれます。

 また、アリサの"Don't Let Me Lose This Dream"が印象に残りました。
 ラテン風味を加えつつも、美しいメロを生かしたつくりです。
 こういう曲がまず気になるのは、やはり、まだまだウエストコースト風のラテンに染まっていないのかもしれません。

 お馴染みの曲では、ラスカルズの"Good Lovin'"のラテン・アレンジが気持ち良かったです。

 そして、私が一番気に入った曲を言います。
 うーん、何とも聴きこみが浅い、今までの音楽体験に囚われている、などと言われそうですが、"Pachuko Hop"です。

 この曲は、アルバムの中で、2度にわたって登場します。
 トラック10と14です。
 これはいいです。
 やっばり、私はホーンの鳴りがいい、スイングするバンドが大好きなのでした。
 
 これを聴いてから、Roomful Of Bluesの1stとかを聴き返しています。
 私は、最初期のホーンがバンド・リーダーだった頃のRoomful Of Bluesが最高にお気に入りなのでした。

 ホーンのいいバンドで、フライング・ホームとか、ナイト・トレインとか、ディーコンズ・ホップとかを連続でやってほしいです。

 "Pachuko Hop"は、Chuck Higginsのブロウ・インスト・ナンバーです。
 Chuck Higginsという人は、私は普通に黒人かと思っているのですが、まさかチカーノですか?
 そういえば、Joe Houstonにも、"Chicano Hop"という曲があるらしいです。
 50年代の流行だったのかな?

 パチューコ(Pachuko)というのは、ちょっと不良っぽいメキシコ系アメリカ人を指す言葉です。
 歌舞いたチカーノくらいの意味だと思います。

 原曲は50年代のR&Bインスト・ヒットで、イーストL.A.のチカーノたちの間では人気曲だったのだと思います。

 イーストL.A.のチカーノが愛した曲を集めたRhinoのコンピ・シリーズ、"Brown Eyed Soul The Sound Of East L.A."のVol.1にしっかり収録されていました。
 (ちなみに、Joe King Carrascoの作品に、同名異曲があります。)
 追記 : Carrascoの曲名は、"Pachuco Hop"でした。
      1文字表記が違いますが、同じことを意味していると思います。


 アルバムは、素晴らしいインスト、"Quince Para Tomar"を経て、本盤の完成を見ることなく他界した中心メンバー、ロメオ・プラードの会話のスケッチ、"Romeo Speaks and Plays"で終了します。





Little Willie G and Thee East L.A. Philharmonic



Pachuko Hop by Chuck Higgins




関連記事はこちら

East L.A. Sounds Compilation
バリオでロッキン
イーストL.A.の郷愁

Little Willie G
心の扉を開けてくれ
ディスカバー・ウイリー・ガルシア

Other East L.A. Chicano Rock
イーストL.A.発、キャリメックス



ビバップ小僧 参上

 アマゾンUSのオンデマンド・オーダーをご存知でしょうか?
 ここでお話ししたいのは、音楽ソフトに関わることです。
 通常、各国アマゾンで、音楽ソフトの品ぞろえに違いはありません。
 しかし、まれに例外があります。
 その一つが、アマゾンUSによるCDのオンデマンド・オーダーです。

 他国のアマゾンでは扱っていない、アマゾンUSだけのアイテムがあるのです。
 目印はジャケ写です。
 若干縮小されたジャケ写の周りに黒い縁、そして上辺のみライト・ブルーのベルト・ラインが目印です。
 このジャケのアイテムは、アマゾンUSが受注製造しているもので、厳密にはCD-Rなのでした。

 今回は、そのオンデマンドで、最近ラインナップされたFreddy Fenderの最初期の音源集をご紹介します。 


El Bebop Kid & Friends
Freddy Fender

1. Chantilly Lace
2. No Seas Cruel (Don't Be Cruel)
3. Hermanita (Little Sister)
4. Puerto Verde (Green Door)
5. El Rock De La Carcel (Jailhouse Rock)
6. Chica Alborotada (Tallahassee Lassie)
7. El Twist (The Twist)
8. Esa Sera El Dia (That'll Be The Day)
9. Hasta La Vista Cocodrillo (See You Later Alligator)
10. Diablo Con Vestido Azul Y La Plaga (Devil With A Blue Dress On)
11. Enriqueta (Henrietta)
12. Rock Del Jet
13. Tutti Frutti
14. Enmedio De Una Isla (In The Middle Of An Island)
15. Rock A Beatin' Boogie
16. Gloria
17. Estremecete (All Shook Up)
18. Susy Q
19. Marianne
20. Avientense Todos (C'mon Everybody)
21. Johnny Se Bueno (Johnny B. Goode)
22. Rockabilidad (Rockabilly Rock)
23. Cantando Los Blues
24. Adios A Jamiaca (Jamaica Farewell)

 アマゾンUSのオンデマCD-Rは、流通していないアイテムを受注に合わせて供給する試みです。(多分)
 ただ、流通難のアイテムの中にも、マーケット・プレイスでしぶとく流通しているものがあり、本来のCDと、オンデマCD-Rが併存している場合がしばしばあります。

 この場合、発売年が新しいものをオーダーしてしまいがちですが、ジャケ写に注意しましょう。
 オンデマCD-Rは、CD-Rであるだけではなく、ブックレットの中身が一切ない(無地でテキスト情報なし)という低レベル仕様です。(さらに言えば、裏ジャケもない)
 もし、選択する機会があったら、迷うことなく、ライトブルー縁取りの縮小ジャケは避けましょう。

 今回のアイテムは、オンデマCD-Rではありますが、旧作CDのオンデマ・ソフトではありません
 本盤は、09年からMP3ダウンロード・アルバムで配信されていたもので、過去にCDのフォーマットでリリースされたことはありません。
 つまり、MP3でしか入手できなかった音源を、初めてディスク化したものなのです。

 ただ、まず、最初に言うべきことがあります。
 先述のとおり、本盤には全く情報の記載がありません。
 最低限の曲目リストが掲載されているのみです。

 そういう状況の中、なんとFreddy Fenderの音源ではない、全く関係ない音源が多数紛れていことが分かりました。
 これってどうなんでしょう。
 確かに、アルバム・タイトルが、"El Bebop Kid & Friends"となっていて、内容を匂わせるタイトルにはなっています。

 とはいえ、その程度ではあまりにも説明不足でしょう。
 共演などではなく、無関係の音源なのですから…。
 せめて、別のアーティストが含まれていることは特記すべきだと思いました。 

 さて、ここからは、海外コレクター(?)のTerry Gordon氏作成のディスコグラフィーを参考に、収録内容に触れたいと思います。

 本盤収録の24曲のうち、Freddy Fenderの音源は11曲です。
これらは、Falcon Recordsから57年から59年にかけて、本名のBaldemar Huerta名義でシングル・リリースされたもので、全てスペイン語で歌われています。

 Freddy Fenderが、Duncan Recordsで最初のローカル・ヒットを出す直前のことです。 
 Duncan時代の録音は、アーフリーからCD化されていますが、それ以前の音源はブートLPだけだったと思います。
 対象の曲は、以下のとおりです。 

Freddy Fender 11曲 (Baldemar Huerta)
1. Chantilly Lace
2. No Seas Cruel (Don't Be Cruel)  
4. Puerto Verde (Green Door)
5. El Rock De La Carcel (Jailhouse Rock)  
7. El Twist (The Twist)
8. Esa Sera El Dia (That'll Be The Day)  
11. Enriqueta (Henrietta)  
14. Enmedio De Una Isla (In The Middle Of An Island)  
19. Marianne
23. Cantando Los Blues
24. Adios A Jamiaca (Jamaica Farewell)

 スペイン語タイトルがほとんどですが、かっこ書きがあるものは分かりますよね。
 ビッグ・ボッパー、エルヴィス、ハンク・バラード(チャビー・チェッカー)、バディ・ホリー、などなどの50年代の有名ロックンロールのカバーがほとんどです。

 ちなみに、"Puerto Verde (Green Door)"は、ジム・ロウの作品で、80年代にShakin' Stevensのカバー・ヒットがあります。
 "Enriqueta (Henrietta)"は、ジミー・ディーの作品で、後にジョン・フォガティの未発表アルバムの1曲となりました。

 英語タイトルが追記されていない曲では、"Cantando Los Blues"が、ガイ・ミッチェル(マーティ・ロビンズ)の"Singin' The Blues"です。
 この曲は、デイヴ・エドマンズのカバー盤が印象深いです。

 Duncan時代に開花する泣き節は、この時点ではその萌芽がまだみられません。
 むしろ、エルヴィスのカバーに、後のリズムものでの味わいがくみ取れます。
 完全に習作時代の作品だと思います。
 内容的には、ファン・オンリーの作品集といえるでしょう。
 でも、ファンにとっては宝物です。

 私は、今回、本盤の収録曲について調べることにより、自分の手持ちのLPの中に、一部Falcon録音を含むものがあることに気付きました。
 こういったLPは、いずれも75年以降に出されたもので、FreddyがNo.1カントリー・ヒットを出したため、便乗して出されたものだと思われます。
 ジャケ写に70年代のものを使用しているのがほとんどで、ジャケだけでは中身をはかることは出来ません。

 75年発売の"Freddy Fender - The Story of an Overnight Sensation" (Pickwick JS-6178)がそうです。
 ジャケをご紹介します。



 63年〜64年のNorco Records録音が中心ですが、1曲だけFalcon録音が入っています。
 ハリー・ベラフォンテのカバー、"Jamaica Farewell" (本盤トラック24 "Adios A Jamiaca (Jamaica Farewell)")です。
 


 さて、その他の音源についても聴いていきましょう。
 アーティストごとにまとめてみました。
 以下の通りです。

Los Loud Jets 5曲
Los Locos Ritmo 2曲
Los Llopis 3曲
Los Rockin' Davils 3曲

 これらは、おそらくメキシコのバンドだと思われます。
 アルバム・タイトルにはFriendsとありますが、彼らがFalcon Recordsのレーベル・メイトだったかどうかは不明です。

 基本的に、アメリカのロックンロールのカバーが中心です。
 50年代の録音が多いと思いますが、このうち、Los Rockin' Davilsは明らかに60年代の録音だと思います。
 理由は、以下の曲目をご覧ください。

Los Loud Jets 
3. Hermanita (Little Sister)  
12. Rock Del Jet
13. Tutti Frutti
17. Estremecete (All Shook Up)  
21. Johnny Se Bueno (Johnny B. Goode)  

Los Locos Ritmo 
6. Chica Alborotada (Tallahassee Lassie)  
20. Avientense Todos (C'mon Everybody)  

Los Llopis 
9. Hasta La Vista Cocodrillo (See You Later Alligator)
15. Rock A Beatin' Boogie  
22. Rockabilidad (Rockabilly Rock)

Los Rockin' Davils 
10. Diablo Con Vestido Azul Y La Plaga (Devil With A Blue Dress On)  
16. Gloria  
18. Susy Q  

 Los Rockin' Davilsのみ、ミッチ・ライダー、ゼムなんてのをやっています。
 このバンドは、60sメキシカン・ガレージ・バンドですね。
 この頃のメキシコのバンドは、チャンプスの成功を受けて、同系のインスト・バンドやサーフ・バンドあがりが多いので、彼らもその系統の可能性は高いです。

 そのほかにも、60年代の録音があると思いますが、選曲は50年代ですね。
 元ネタは、エルヴィス、リトル・リチャード、チャック・ベリー、フレディ・キャノン、エディ・コクラン、ボビー・チャールズ、ビル・ヘイリー、デイル・ホーキンスなどなどです。

 このうち、英語タイトルの補記がないものでは、Los Loud Jetsの"Rock Del Jet"が、エディ・コクランの20フライト・ロックです。

 これらのバンドのうち、私が過去に聴いていたのは、Los Llopisだけです。
 リイシュー・レーベルのEl Toro Recordsから出たコンピ、"El Mexican Rock and Roll"に収録されていました。
 このコンピは、50年代のメキシコのロックンロール集です。
 ただ、全く記憶になく、改めて聴き返しました。

 "El Mexican Rock and Roll"は、今年になってVol.2が出て入手していましたが、聴かずに棚に並べたままでした。
 Vol.2にも、Los Llopisが2曲入っていて、今回を契機に興味深く聴きました。
 今は、メキシコのロックンロール、ガレージ・パンクに関心を持っています。

 ライナーによれば、Los Llopisは、キューバ出身のバンドで、メキシコやアメリカで活動していたとのことです。
 彼らのメイン・インフルエンスが、ビル・ヘイリーだというのが面白いです。

 さて、Freddy Fenderの名前は、Duncan Recordsのオーナー、Wayne Duncanが名付けたと言われています。
 そして、El Bebop Kidは、Freddyの50年代のニックネームですが、レコードでメインの名義になったかどうかは不明です。

 Terry Gordon氏のリサーチによれば、Freddy FenderのFalcon時代の名義は、分かっている範囲で、以下のとおりです。

Baldemar Huerta Con Los Romanceros
Baldemar Huerta Con Xavier Michel Y Su Quinteto
Baldemar Huerta - El Bebop Kid -

 Falcon時代のすぐあと、59年にリリースされた、Duncan Recordsの1枚目、"Mean Woman"では、"Freddie Fender"名義が使われています。
 同レコードを60年に全国配給した、Imperial盤も、同様の名義となっています。

 Duncanの2枚目、"Wasted Days & Wasted Nights"で始めて、"Freddy Fender"の表記が使われました。
 でも、その後も一定の期間(いつごろまでかは不明)、"Freddie"、"Freddy"の表記が混在していくのでした。
 (少なくとも、64年までは"Freddie"表記が存在しました。)

 本盤は、Freddy Fenderのファンのための1枚です。
 そして、これを聴いた私は、最初期のFreddy Fenderへの関心を深めるとともに、自然とメキシカン・ロックンロールに興味を持ったのでした。




No Seas Cruel by Baldemar Huerta




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 ブートですが、(ここは素直に)嬉しい続編が出たコンピをご紹介します。
 Duke Recordsとその関連レーベルの音源からチョイスされたもので、タイトルにあるとおり、ソウルという切り口でコンパイルされたコンピレーションです。

 正規盤で、Dukeのレーベル・ストーリーものとか、似たような趣旨のコンピは出ていたでしょうか?
 CDでは、1枚もので、チャート・ヒットを集めたものがMCAから出ていましたが、本シリーズのようなものは、私は知りません。

 ディスクはCD-Rで、普通に聴ける音質のものが大半ですが、曲によっては、明らかに45sから起こしたのではと思われるスクラッチ・ノイズが聴こえるものがあります。

 Discによっては、そういった音源が続く箇所もあり、ストレスがたまることもあります。
 でも、本シリーズで初めて気づいた発見もあって、私にとっては刺激的なソフトです。

 シリーズは、先にVol.1〜Vol.3が出ていましたが、今回、Vol.4とVol.5の2枚がリリースされました。
 なるほど、Vol.3のブックレットを見ると、文末に"to be Continued"の文字があります。
 しかし、ブートでもあり、本当に続編が出たのは大きな驚きでした。


Duke Of Soul Vol.5

1. You Got Me (Sure Shot 5018)  Al Haskins & the Mastertones
2. Don't Kick The Teenager Around (Duke 596)  Eddie Wilson
3. You Made Me A Anybody's Woman (Back Beat 623) Jean Ellas
4. It's All Over (Sure Shot 5013) Bobby Williams
5. I Saw You Last Night (Duke 399) Clarence Green & Rhythmaires
6. (Gimme Back) My Love (Duke 451) Paulette Parker
7. When You Love Someone (Peacock 1933) Reuben & the Chains
8. Competition Aint Nothin' (Back Beat 588) Little Carl Carlton
9. Sting Me Baby (Duke 475) Jo Ann Garrett
10. Stroke My Yoke (Peacock 1961) Willie Tomlin
11. Mr. Independent (Back Beat 599) The Soul Twins
12. From Me (Back Beat 561) Tommy Williams
13. Come Let Me Love You (Peacock 1930) Jackie Verdell
14. When You Play (Sure Shot 5013) Bobby Williams
15. Somebody Better Come Here Quick (Duke 365) Clarence & Calvin
16. So Lonely (Since You've Been Gone) (Sure Shot 5036) Bobby Day
17. Don't Make Me Cry (Peacock 1929) Little Frankie Lee & the Saxtons
18. I Still Love You (Peacock 1958) Jean Stanback
19. I'm So Glad (Peacock 1937) Don Fletcher
20. Love Sick Blues (Back Beat 537) Joe Hinton
21. I Have To Laugh (Duke 356) Otis Rush
22. Don't You Know She's Alright (Sure Shot 5012) The Bell Brothers
23. I Won't Let That Chump Break Your Heart (Back Beat 627) Carl Carlton
24. (It Will Have To Do) Until The Real Thing Comes Along (Duke 423) Ernie K-Doe

 シリーズ全体の曲目をご紹介したいところですが、煩雑となるため、ここは代表して最新のVol.5の曲目を記載することに留めます。

 本稿では、本盤のみでなく、シリーズ全体の感想を記したいと思います。
 このシリーズを聴いて、私が驚いたこと、嬉しかったことがいくつかあります。

 まず、Melvin Carterが聴けたことです。
 O. V. Wrightの"Ace Of Spades"の一件で、日本のソウル・ファンの間では知られている人だと思います。
 (私は、"Ace Of Spade"は、O. V.盤よりも、Melvinのデモ盤の方がワイルドで好きです。)
 ライター、コンポーザーの側面の方が強いのでしょうか、名前のみ高く、音源はあまり見かけないの人なので、嬉しかったです。
 収録されているのは、以下の2曲です。

Tired Of Being Fooled By You  (Duke Of Soul Vol.1 - Peacock 1956)
Something Reminds Me (Duke Of Soul Vol.2 - Peacock 1934)

 次に、Otis Rushの"Homework"とそのB面の曲(これはレアでは?)が聴けたことです。
 私は、Rushの"Homework"がDuke録音であることさえ認識していませんでした。
 "Homework"は、J. Geils Bandの1stで知った曲で、大好きな曲です。
 Otis Rushのオリジナルは、ヴァンガード盤だと思い込んでいたのですが、何か全く別の曲と混同していたのかもしれません。
 Rushは、次の2曲が収録されています。

Homework (Duke Of Soul Vol.1 - Duke 356)
I Have To Laugh (Duke Of Soul Vol.5 - Duke 356)

 Rushは、Dukeからのリリースはこの2曲(シングル1枚)だけでしたが、実は少なくとも、もう2曲は未発表曲があるらしいので、今後に期待したいです。
 でも、編者の手持ちの45sシングルから音を起こしているのなら無理ですね。

 次に、Junior Parkerです。
 Vol.2収録の"Wait For Another Day"という曲は、初めて聴きました。
 もしや、未CD化曲ではないでしょうか?
 Junior Parkerは、次の2曲が収録されています。 

Wait For Another Day  (Duke Of Soul Vol.2 - Duke 413)
It's A Pity (Duke Of Soul Vol.3 - Duke 362)

 Jimmy Outlerも、1曲ですが入っていて嬉しかったです。
 私は、"Sir Records Story"で彼の歌唱を聴いて、すっかりファンになったくちです。

It's All Over (Duke Of Soul Vol.3 - Duke 396)



 そして、この間、英KentからFameのシングル集が出たばかりのClarence Carterは、Clarence & Calvin時代の音源の収録が嬉しいです。
 このあたりは、正規でもCD化されているのか、私は知りません。
 とにかく、私は初めて聴いたものばかりで、曲の良し悪しの前に、聴けたそのことに感激しました。
 とりわけ、C and C Boys名義のものが彼らの別名義の録音だと気づいて、嬉しさも倍増しました。
 意外な選曲もあります。
 以下のとおりです。

My Life (Duke Of Soul Vol.1 - Duke 379)  C and C Boys名義
It's All Over Now (Duke Of Soul Vol.3 - Duke 466)  C and C Boys名義 (曲はヴァレンティノスのあの曲)
I Like It  (Duke Of Soul Vol.4 - Duke 365) Clarence & Calvin名義
Somebody Better Come Here Quick (Duke Of Soul Vol.5 - Duke 365) Clarence & Calvin名義

 シリーズ5枚(全120曲)の中で、4曲も収録されているのは中々のものです。
 ちなみに、4曲以上収録されているアーティストは5組でした。(3曲以上だと9組)
 以下のとおりです。

 Ernie K-Doe  10曲
 Buddy Ace  5曲
 Reuben & the Chains  4曲
 Joe Hinton  4曲
 Clarence & Calvin (C and C Boys含む) 4曲

 このリストを見てどう感じられますか?

 Ernie K-Doeの10曲が飛びぬけていますよね。
 そもそも吹き込みの絶対数が多いのでしょうか。
 それとも、編者がErnie K-Doeを特に好んでいるのか?

 答えは分かりませんが、Ernie K-Doeって、ノベルティ・ソングだけの人ではなく、実はディープ・ソウルも歌える人なのでした。
 Vol.3収録の"I'm Sorry"などは、教会風の厚いコーラスをバックにスクリームするディープ・ソウル(ゴスペル・ブルース)です。

 Joe Hintonは、Willie Nelsonのカバー(「時の流れは早いもの」本シリーズ未収録)が有名ですが、Vol.5に収録されている、Hank Williamsの"Love Sick Blues"が珍品です。
 (これもカントリーのカバーですね)

 最後に、大物をチェックしておきましょう。
 Junior Parkerは触れましたので、Bobby BlandとO. V. Wrightの二人です。
 Bobby Blandは2曲です。

Yum Yum Tree (Duke Of Soul Vol.1 - Duke 466)
Call On Me (Duke Of Soul Vol.2 - Duke 360)

 もはや、安心安定の作品ですね。
 貫禄というほかないです。

 そして、O. V. Wrightも2曲です。

Love The Way You Love (Duke Of Soul Vol.1 - Back Beat 611)
Why Not Give Me A Chance (Duke Of Soul Vol.3 - Back Beat 607)

 このなかでは、レアではないですが、やはり"Why Not Give Me A Chance"が耳に残ります。
 これは、Willie Mitchell制作のHi録音ですね。
 どうも、レアなものを有り難がり気味ですが、やはりこの良さは突き抜けています。

 その他、何気に、無名人の中にも良質のディープがあって、また、弾けるノーザンがありまます。
 The Bell Brothers、The Soul Twinsなどは、良質のディープだと思いました。

 珍品では、Vol.4収録のLittle Frankie Lee & the Saxtonsが演奏する"Full Time Lover"って曲があるんですが、替え歌に近いレベルで、メロはまんま"Part Time Love"、雰囲気は"I Pity The Fool"という曲でした。
 
 他にも、歌詞の中にOtis Redding、Sam Cookeの名前が歌われている、Vol.1収録のBobby Conerlyの"A Whole Lot Of Soul Is Gone"が興味深かったです。

 ちなみに、Vol.5まで出た段階で、これまでJohnny Ace、Roscoe Gordonは未収録です。
 (余談ですが、Johnny Aceは、近々Fantastic Voyageから2枚組(半分は他人の伴奏)が出ます。)

 さて、このVol.5のブックレットの文末にも、これまで同様「つづく」の文字が記載されています。
 こうなったら、さらなる続編を期待しましょう。



I'm Sorry by Ernie K-Doe



My Life by C and C Boys




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ラレードのバラ

 昔から、放送用音源というものに興味がありました。
 最初にはまったのは、ビートルズのBBCものです。
 今は公式にCD化されましたが、昔はブートしかなくて人気でした。

 BBC音源って、いいものが多くて、1枚ものが出たヤードバーズもキンクスも愛聴盤です。
 この場合、頭にあるのは、観客なしでのスタジオ・ライヴ音源です。

 最近は、発売が近づいているキンクスのBBCボックスが楽しみでなりません。

 あと、古くは、ボブ・ウィルズのティファニーのシリーズ(40年代のラジオ音源)が最高でした。
 (同時期のMGM録音よりも好き)

 今回は、テキサスはオースチンのFM曲、KGSRの収録音源をまとめたシリーズの1枚をご紹介します。

 
Broadcasts Vol. 7
107.1 KGSR Radio Austin

Disc One
1. Greg Brown : China
2. Billy Bragg : Against The Law
3. John Hammond : Drop Down Mama
4. Sinead Lohan : No Mermaid
5. Neil Finn and Shawn Colvin : What I Get Paid For
6. Lyle Lovett : If I Had A Boat
7. Texas Tornados : Laredo Rose
8. Ian Moore : Paris, Texas
9. Bad Livers : Honey, I've Found A Brand New Way
10. Peter Himmelman : 7 Circles
11. Shawn Mullins : Shimmer
12. Jimmy LaFave : Burden To Bear
13. Joan Baez : If I Wrote You
14. The Gourds : Gangsta Lean
15. Bruce Robison and Kelly Willis : Angry All The Time
16. Robert Earl Keen : Feelin' Good Again
17. David Garza : Slave
18. Radney Foster and Abra Moore : I'm In
19. Kim Richey : Can't Lose Them All
20. Brad Roberts : Mmm Mmm Mmm Mmm
Disc Two
1. Joe Henry : Skin And Teeth
2. Beth Orton : She Cries Your Name
3. Lucinda Williams : Car Wheels On A Gravel Road
4. Willie Nelson : Ou Es Tu, Mon Amour-I Never Cared For You
5. Wes Cunningham : So It Goes
6. Guy Clark : Picasso's Mandolin
7. Patty Griffin : Change
8. Sean Lennon : Into The Sun
9. Sheryl Crow : Anything But Down
10. Martin Sexton : Love Keep Us Together
11. Corey Harris : Blues Come To Texas
12. Terri Hendrix : Gravity
13. Jonatha Brooke : Annie
14. Chip Taylor : Angel Of The Morning
15. Ron Sexsmith : Still Time
16. Ray Wylie Hubbard : Conversation With The Devil
17. Eric Johnson : Tribute To Jerry Reed
18. Julian Lennon : I Don't Wanna Know
19. The Damnations TX : Unholy Train

 CD2枚組、全39曲入りとボリュームたっぷりです。
 このシリーズ、私は全貌を把握していませんが、少なくともVol.16までは出ているようです。
 オースチンのFM局ということで、アウトロー・カントリーを始めとして、ウエスタン・スイング、テキサス・ブルース、シンガー・ソングライター、ルーツ・ロック系など、有名無名混交という感じです。

 私たちには無名でも、地元では需要の高い人も、それなりに含まれているんじゃないでしょうか。
 私が本盤に注目したのは、いうまでもなく、Texas Tornadosが含まれていたからです。
 ジャケ写が彼らというのが、(ファン目線では)かなり価値を高めています。

 本盤の音源は、基本的にラジオ放送用に収録されたもので、放送日のデータこそ記載されていませんが、録音データがまとめられているのが嬉しいです。

 Disc1は、98年9月から99年3月まで、Disc2は、99年3月から99年9月までの期間に録音されたものです。
 (放送日は不明です。また全て放送されたかも不明です。ただし、お蔵入り等の特記はありません。)

 ここで気になるのは、99年という年です。
 この年は、Doug Sahmが亡くなった年です。

 早速、ブックレットを確認してみました。
 お目当てのTexas Tornadosの録音は、98年12月18日でした。
 Doug Sahmの命日は、99年11月18日なので、およそ11か月前ということになります。
 何の意味もないことですが、18日という日付の符号が気になりました。
 いずれにしても、晩年の貴重な録音のひとつであることに間違いありません。

 各曲の録音場所は、基本的に明記されていません。
 どこか、ラジオ局の関係の特定のスタジオなんでしょうか?
 コンサート・ホール音源など、特別なもののみ、特記してある感じです。

 各演奏スタイルは、プラグ・インのものもありますが、やはり、アンプラグドが多いような印象を受けます。
 リラックスした雰囲気の演奏が大半です。

 Texas Tornadosは、1stに収録されていた、"Laredo Rose"をやっています。
 オースチンのシンガー・ソングライター(サン・アントニオ生れのディラン?)、Rich Minusの作品です。
 この時のセッションは、アンプラグドで、なおかつドラムレスです。

 参加メンバーは以下の通りです。

Doug Sahm : vocal
Augie Meyers : coke can (原文のママ)
Flaco Jimenez : accordion
Freddy Fender : vocal, hands (原文のママ)
Louie Ortega : guitar, backing vocal
Max Baca : Bajo Sexto

 バホ・セスト(メキシカン12弦ギター)でのMax Bacaの参加が眼を惹きます。
 Los Texmaniacsの中心メンバーですね。
 この人は、スタジオ盤では参加していませんでした。
 Augie Meyersとは旧知のイメージがありますが、あるいは、このあたりをきっかけに、Dougの没後に交流が深まったのかも知れません。

 Augieの担当楽器はなんでしょう?
 まさか、コーラのアルミ缶じゃないですよね。
 ジャグ・バンド風を狙ったんでしょうか?
 それらしい音には気づけませんでした。

 アコーディオンとバホ・セスト(又はアコギ)の音が耳に残る演奏です。
 歌唱は、Dougのリード・ボーカル、Ortegaのハーモニーで展開し、2番になると、満を持してFreddyが伸びのあるボーカルを聴かせます。

 このシリーズは、レア音源の宝庫だと思います。 
 多分、再発されることなく、ひっそりと次第に見かけなっていくアイテムだと思います。
 こういった音源は、そのまま埋もれる可能性が高いので、気になった方は、自分の好きなアーティストが参加しているか、一度チェックされるとよいでしょう。

 私が気になったところでは、ざっと斜め見したところ、John Hiatt、Ray Bensonなどがいます。
 (Texas Tornadosは、他にはないようです。)

 John Hiattは、Vol.4,6,8,9,11,12と6曲も収録されているようです。
 Ray Bensonは、Vol.5,10,11の3曲です。
 (…Vol.13には、Dave Alvinも)

 既に、入手困難のナンバリング・タイトルもあり、まだもれがあるかもしれません。



Laredo Rose by Texas Tornados (1992)





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エニイモア
反復、脳みそゆすり
ヘンリエッタを探せ!
「心の声」が叫んでる
ジーン・トーマスを探して

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Bob Wills Tiffany Transcriptions
ぼくんちの窓は南向き



エースはダイヤモンド

 この人は、何となく名前は知っていました。
 しかし、まだ聴いたことがないな、いつか聴いてみたいなと思っていました。

 なにしろ、サンアントニオ・ソウルのファンのためのベーシック・アイテム、"Chicano Soul San Antonio's Westside Sound"シリーズ(スピンオフ1枚を含むコンピCD4枚全88曲)にも、さらには念のためチェックしたイーストL.A.のバリオ向けコンピ・シリーズ、"East Side Story"(CD12枚全144曲)にも収録されていません。

 ところが、少し前にLPの移動をしていたとき、あるコンピレーションLPに入っていたことに気が付きました。
 ほとんど記憶に残っていませんでしたが、ずっと昔に聴いたことがあったのでした。

 彼は、サンアントニオの古参チカーノ・シンガーの一人です。


There's Good Rockin' Tonight
Sonny Ace

1. Here's The Song
2. Before It's Too Late
3. There Again Tonight
4. Baby I Feel Like I Love You
5. Help Me Walk
6. There's Good Rockin' Tonight
7. Down On My Knees
8. Just A Little Lovin'
9. Only A Dream
10. Lovin' Me

 60年代に、Sonny Ace & the Twistersとして活動していた人で、くだんのコンピLP、"Border Town Jive : Chicano R&B from San Antonio"には、"You'll Tear Our Dreams Apart"、"Tamales"の2曲が収録されていました。



 全く記憶になかった曲ですが、久しぶりに聴きました。
 興味深いのは、ルイジアナっぽい雰囲気があることです。

 テキサスでは、昔からニューオリンズR&Bやスワンプ・ポップが人気なので、こういったスタイルは不思議はないですが、この人はとりわけ雰囲気が自然です。

 そんな印象をひきずりつつ本盤に臨んだところ、予想以上にニューオリンズR&B風で驚きました。
 もはや、スワンプ・ポップ・アルバムと呼んでもいいいんじゃないでしょうか。

 Sonny Aceは、本名をDomingo Solisといい、多分サンアントニオやヒューストンあたりを活動の拠点にしてきた人ではないかと思います。

 本盤は、Golden Eagle Recordsから97年にリリースされたCDです。
 例によって曲のクレジット表記が全くありません。
 録音時期、録音場所も不明です。
 旧作のCD化という可能性もありますが、おそらくそんなに古い音源ではないと思います。
 
 かろうじて、参加メンバーのみ記載がありましたのでご紹介します。
 以下の通りです。

Sonny Ace : vocals 
Rocky Morales : sax
Arturo Gonzales : keyboad
Mike Seal : bass
Felix Villarreal : guitar
Randy Garibay : background vocal
Rocky Hernandez : drums

 これは、なかなか興味深いラインナップですね。
 まず、Doug Sahm人脈のホンカー、Rocky Moralesの名前に眼がとまります。
 ロッキー・モラレスは、ブリティッシュ・インベイジョン襲来以前からDoug Sahmと交友があった人で、Doug Sahm with the Markays名義のレコードに参加していました。

 ただ、意外にも、初期のSir Douglas Quintetには参加していません。
 多分、ライヴ・バンドよりも地元でのスタジオ活動を中心にやっていたのではないかと思われ、70年代初頭、サンフランシスコから帰還したDoug Sahmの求めに応じて合流したことを契機に、以降はDougとそのキャリアのほとんどを共にすることになります。
 日本へは、ギャレット、サーム、テイラー・バンドの来日に同行して、ごきげんなプレイを聴かせてくれました。

 キーボードのArturo Gonzales(ニック・ネーム、"Sauce"又は"Sas" Gonzalez)もまた、Doug Sahmと少なからず関連がある人です。
 若いころ、Jimmy Smith、Fats Domino、Jerry Lee Lewisらの影響を受けたそうで、Sunny & the Sunliners(Sunglows)、Little Joe、Joe Bravo、さらにはあのCoastersと共演経験があるらしいです。

 Doug Sahmとは、70年代頃から交友を深めたらしいですが、鍵盤系はAugie Meyersがいて、また、Doug自身も達者であることから、常連とまでは呼べないかもしれません。
 でも、77年録音のアルマディロのライヴ("Back To The Dillo")には、しっかりクレジットされていました。

 その後、83年の大名作、"West Side Sound Rolls Again"にも参加して、"Father On Down The Road"の間奏でのメンバーのかっこよすぎるソロ回しの一翼を担いました。
 そして、Augieが不参加だった、94年の"Last Real Texas Blues Band"では、ハモンド・オルガンを演奏しています。
 近年は、Weat Side Hornsの一員として、さらには自身がリーダーを務めるバンド、Sauce Gonzales Quintetでも活動しているようです。

 バック・ボーカルのRandy Garibayですが、いくつかのソフトのクレジットで酷似した名前の人物を見つけることが出来ます。
 Randy Garibay、Randy Gariby、Randy Gribay、などと複数の表記(多分、あとの二つが誤植)があり、もちろんあっさり別人という可能性もないとはいえませんが、おそらくは同一人物ではないでしょうか?

 その仮定が正しければ、この人物は、Doug Sahm with Pharaohs、Doug Sahm with the Dell Vikings(いずれもDougが10代の時期のバンド)に参加していた人であり、88年のDougの名作ソロ、"Juke Box Music"でDoug Sahmと"What's Your Name"をデュエットした人物だということになります。

 ドラムスのRocky Hernandezは、Little Joeの弟と同姓同名ですが、同一人物でしょうか?
 Little Joe(Jose Hernandez)、Johnny Hernandez、Rocky Hernadezの三兄弟が、スタンド・マイク3本を立てて並んで歌ってる映像を見たことがあります。
 Rockyがドラマーだったかどうかは、不勉強でよくわかりません。

 どうも、参加メンツ・リストだけで高まってしまいました。
 
 そろそろ中身を聴いてみましょう。
 
 先にも書きましたが、スワンプ・ポップ風味満載のアルバムです。
 テキサスっぼいギターで始まる曲もありますが、すぐにゆるゆるの哀愁三連曲になったりします。

 ところで、今回は、全く原曲が分からないものばかりです。
 例えば、アルバム・タイトルの"There's Good Rockin' Tonight"ですが、当然Roy Brownの有名曲だと思いましたが、どうも違うようです。
 メロディが違うので、大胆なフェイクかと思い、必死で歌詞を聴き取ろうと努力しました。
 ところが、何度聴いても、例の「今夜がごきげんだって知らせを聞いた」みたいなフレーズが出てきません。
 これは別の曲ですね。

 "Down On My Knees"も、Bobby Charlesに似たタイトルの曲があったと思いましたが、やはり別の曲のようです。

 さて、通して聴いてみて、第一印象での私の好みは、最もスワンプ・ポッブしている曲、"Only A Dream"です。
 ロッキーのテナー・ソロで始まり、ドゥワップ風のコーラスをバックに、Sonny AceがFreddy Fenderばりののどを聴かせる哀愁の三連バラードです。
 これは必殺曲ですね。
 タイトルが、Jimmy Clantonの名作を連想させるこの曲、雰囲気が満点で気に入りました。

 とはいえ、全体的にはB級臭が漂っており、あまり録音も良いとはいえませんが、ときおりキラリと光る瞬間があって、はまれば味わい深いアルバムだと思います。



Anymore by Sonny Ace & the Twisters


Sonny Ace sings Late Great Johnny Ace



Tell Me Why by Randy Garibay




Four by Sauce Gonzales Quintet




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鷲は舞い降りた かもしれない

 今回のアルバムは、前回取り上げた"Dickie and The Tornadoes"のアルバムと関連があります。
 まず、同じ会社(Great Blues Recordings)からリリースされています。
 次に、収録曲12曲のうち、なんと3曲も同じ曲を取り上げているのです。


Easy Does It Again
Easy

1. Going Back To Louisiana (R. E. Osborn)
2. Baby, I Don't Know (B. Fussell)
3. If You Love Me Like You Say (Little Johnny Taylor)
4. T-Bone Shuffle (A. Walker)
5. I Can't Help Myself (L. Dozier, B. Holland, E. Holland)
6. Everyday Will Be Like a Holiday (W. Bell, B. T. Jones Jr.)
7. Don't Let The Green Grass Fool You (J. AKines, J. Bellmon, V. Drayton, R. Turner)
8. Tee Na Na (C. Chenier)
9. I'm Gonna Find Another You (J. Mayer)
10. Touch a Hand, Make a Friend (H. Banks, C. Hampton, R. Jackson)
11. What Went Wrong (D. J. Richard)
12. In The Mood (J. Garland)

 本盤は、09年にリリースされました。
 前回記事の"Dickie and The Tornadoes"の"Going Back Home"は、04年のリリースでしたので5年後に出されたことになります。

 "Easy"という安易な(?)名前を持つこのバンドは、今作で2枚目になるようです。
 前作のタイトルは、"Easy Does It"で、本盤のタイトルは、この末尾に"Again"をつけただけという安易さ(?)です。
 
 参加メンバーは、以下の通りです。

Dave Show : lead vocals
Steve Champagne : bass
Roy "Pooch" Poche : keyboads
Gerald Hebert : drums
Paul Bonin : lead guitar
George Hernandez : trumpet
Mike Weatbrock : trumpet
Shelby Collins : sax
Ramon Ramos : sax

 前回の"Dickie and The Tornadoes"の記事を参照していただきたいのですが、ある人物の名前が目に留まります。
 ベーシストのSteve Champagne(シャンペイン? シャンパーニュ?)です。
 この人は、"Dickie and The Tornadoes"のベーシストと同姓同名です。
 もちろん、別人という可能性もないとは言えませんが、この特徴ある名前で担当楽器まで同じなのですから、まず同一人物でしょう。

 その他のメンツはかぶっていませんが、やっている音楽は、とてもよく似ています。
 メンフィス・ソウル、モダン・ブルース、ニューオリンズR&B、スワンプ・ポップなどを中心としたアルバム構成は、まるで双生児のようです。

 バンドのサウンドは、私は若干"Dickie and The Tornadoes"の方が好みですが、編成が大差ないこともあり、かなり似ています。
 
 ギターのオブリなどは、"Dickie and The Tornadoes"が良いと思います。
 また、リード・ボーカルは、本盤のDave Shpwより、Dickie Peltierの方が私は好きです。
 全体的な印象として、"Eazy"は、"Dickie and The Tornadoes"の下位互換サウンドに聴こえなくもないです。

 さて、"Dickie and The Tornadoes"の"Going Back Home"と本盤を比較して、まず目をひくのは、モータウン・ナンバーとT-Boneナンバーの存在です。
 T-Boneナンバーがなかなかよいです。
 これらの曲も、"Dickie and The Tornadoes"がやっていても不思議ではない気はします。

 それよりも、両作で共に取り上げている曲に注目しましょう。
 次の3曲です。

1. Going Back To Louisiana
3. If You Love Me Like You Say
6. Everyday Will Be Like a Holiday

 ここまで同じ曲をチョイスしてカバーしているのは偶然ではない気がします。
 ベーシストのシャンパーニュさんにキャプテンシーがあって意向を通しているのか、あるいはプロデューサーの考えなのか…?
 …プロデューサーは、ボーカルのDave Showさんでした。

 さて、私は、"Dickie and The Tornadoes"を聴いてから、Little Johnny Taylorのアルバムを聴き返しました。
 "If You Love Me Like You Say"の原曲を過去に聴いていたか、確認したかったからです。
 結果、ひとつの事実を知りました。

 "If You Love Me Like You Say"には別名があり、日本編集のP-vine盤では、"Zig Zag Lightnin'"と表記されていることです。
 (最初は、手持ちのCDには未収録だと思ってしまいました。)

 久々にLittle Johnny Taylorを聴いて、少し高まりました。
 この人の凄いところ、そして私が夢中になりきれなかった両面を再確認しました。

 さて、その他の曲にも触れておきたいと思います。
 "Touch a Hand, Make a Friend"は、はっきりと本盤だけのサウンドだと言い切れる音づくりになっています。
 これは、完全にザディコで、パーソネルの楽器リストにはありませんが、アコやラブボードを模したような音が聴こえます。
 この曲が始まると、もともとイナタかったサウンドが、さらにディープ・サウスのそれへと誘われた感じを受けます。
 私は、クリフトン・シェニエよりもロッキン・シドニーを連想しました。

 ルイジアナへ帰ろうで始まったアルバムは、グレン・ミラーの大有名曲のインストを、いかにも南部諸州のテーマらしいディキシーランド・スタイルでやってエンディングへと向かいます。
 やはり、私には美味しいアルバムでした。


 (おまけ)
 本盤と"Dickie and The Tornadoes"の"Going Back Home"を比較するため、両盤が共通して取り上げている3曲をメドレーにしてみました。
 曲順は、"Everyday Will Be Like a Holiday"、"If You Love Me Like You Say"、"Going Back To Louisiana"の順で、それぞれジャケット画像が切り替わる箇所で両バンドがチェンジしています。



Everyday Will Be Like a Holiday
〜 If You Love Me Like You Say 
〜 Going Back To Louisiana
by Eazy + Dickie and The Tornadoes




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うちへ帰ろう






うちへ帰ろう

 今回は、初めて聴くアーティストです。
 音を聴かなくても、この曲目をみると興味を惹かずにはいられませんでした。
 メインフィス・ソウルで始まり、ニューオリンズR&B、スワンプ・ポップ、テキサス・ブルースなどなどが混在するラインナップが、まさに私好みです。


Going Back Home
Dickie and The Tornadoes

1. Everyday Will Be Like a Holiday (W. Bell, B.T. Jones)
2. C C Rider (C. Willis)
3. Ya Ya (M. Levy, C. L. Lewis)
4. Betty and Dupree (C. Willis)
5. If You Love Me Like You Say (Little Johnny Taylor)
6. Honky Tonk (B. Butler, B. doggett, C. Scott, S. Shepherd)
7. Just a Dream (Jimmy Clanton)
8. Just a Little Bit (Rosco Gordon)
9. Next Time You See Me (E. Forest, B. Harvey)
10. Your Picture (Robert C. Guidry)
11. Back to Louisiana (R. E. Osborn)
12. Goin' Home (A. Domino, A. Young)

 このアーティストについては、ほとんど何も知りません。
 おそらくは、90年代後期かミレニアム以降にアルバム・デビューしたのではないかと推察します。

 つべに、"〜2011 Runion〜"というタイトルのライヴ動画がありましたので、現在は活動しているのかどうかは不明です。 
 フロントマンが、ソロでやっているのかも知れません。

 本盤は、04年にGreat Blues Recordingsという、テキサスはポートアーサーの会社(=スタジオ)からリリースされました。
 多分、同地周辺を拠点にしていたバンドだと思います。 

 ただ、バンド・メンバーを確認すると、どうもフレンチっぽい匂いがして、名前だけみるとルイジアナのバンドかと思ってしまいそうです。
 本盤の参加メンバーは、以下のとおりです。

Dickie Peltier : vocals, guitar, piano
Steve Champagne : bass
Scooter Green : drums
Don E. LeBlanc : keyboads
Johnny Lindow : tenor sax
The Taylor Bayou Horns

 フロント・マンの名前はなんと読むのでしょうか。
 カタカナ表記では、ディッキー・ペルティエかな?

 正式な本名は知りませんが、ファースト・ネームのディッキーは、普通に考えればリチャードですね。
 Dickieは、Richardの愛称(短縮形)のひとつです。
 Richard → Dick → Dickie(又はDickey)
 オールマン・ブラザーズのDickey Bettsの本名は、Forrest Richard Bettsでした。
 (彼のソロ・アルバム、"Highway Callの名義は、"Richard Betts")

 ベーシストの姓シャンペイン(シャンパン)は、本名だとすればおしゃれですね。
 ホーン陣のネーミングには、バイユーの文字が入っています。
 これはもう、ストレートにルイジアナっぽいですね。

 ところで、このバンド名の表記ですが、The Tornadoesと竜巻の語尾が"es"になっています。
 かのオールスター・バンド、Texas Tornadosの語尾は"s"のみでした。
 これって、どうなんでしょう。
 正解、不正解ってあるんでしょうか?
 私の感覚では、"es"の方がしっくりきます。
 例えば、語尾が"o"で終わる単語、トマト(tomato)は、tomaoesです。
 固有名詞は何でもありなのかな。
 (Texas Tornadosを知った当初、よく間違えてタイプしていました。)


 さて、音を聴きましょう。
 冒頭からいい感じに展開していきます。
 曲は、William Bellの名作ですね。

 スタックス・サウンドへの憧憬を素直に表わした、細かい所へもこだわった丁寧な演奏に好感を持ちます。
 イントロのギターから堪りません。
 原曲を意識しつつ、彼らなりのアレンジではありますが、憧れの音への敬意に満ちたサウンドだと思います。
 ロバート・クレイが1stでやったEddie Floydのカバーを連想しました。
 ホーン陣の鳴りの良さ、クリアなギターのトーンが「いかにも」な感じで素晴らしいです。
 ボーカルは、意外にも若干ハイ・トーン気味です。

 Chuck Willisを2曲もやっているのが興味深いです。
 演奏のテイストとしては、一転してニューオリンズR&B風というか、スワンプ・ポップ調です。
 ゆったりしたテンポと、優しいボーカルに和みます。
 三連のピアノが耳に残る"Betty and Dupree"は、オリジナルよりもCookie & the Cupcakes盤がお手本かも知れません。

 リー・ドーシーの"Ya Ya"が聴きものです。
 ここでは、原曲のとぼけた感じは少し残しつつも、バックのリフがゆったりした16ビートで、かっこいい系に仕上げています。
 ホーンによるメイン・リフが全体のテーマになっていて、曲のおしゃれな印象を決定づけています。
 この曲をこういうアレンジでやったのは、初めて聴きました。
 本盤のハイライトの1曲だといいたいです。

 Littlle Johnny Taylorの"If You Love Me Like You Say"は、既聴曲かも知れませんが、記憶にない曲でした。
 切れのあるブルース・ギター、気力充実したホーン陣ともに素晴らしい伴奏です。
 これなどは、黒人ブルース・マンの演奏と言われれば信じそうです。

 サザン・ソウル・ハラード、スワンプ・ポップ、モダン・ブルースと、このバンドの抽斗の多さ、豊かな音楽性を立て続けに披露してくれています。
 実力派バンドだと感じます。
 そういった思いは、インスト曲、"Honky Tonk"を聴くと一層深く感じられました。
 やはりホーン陣のよいバンドは安定していると思います。

 以下、スワンプ・ポップの名作"Just A Dream"、ブルージー・ファンク、"Just a Little Bit"などは無難なアレンジでやっていきます。
 あまりいじらないのは、完成度の高い原曲への敬意でしょうか。

 Junior Parkerの"Next Time You See Me"は、演奏、歌唱とも、再びオリジナルへの強烈な憧憬と敬意を感じる仕上がりです。
 ボーカルは、Parkerの少し鼻にかかったビロード・ボイスを意識していると思います。
 完成度は原曲にかなわなくとも、憧れの曲に対する強い気持ちが伝わってきて、好きにならずにはいられません。

 ボビー・チャールズの" Your Picture"、ファッツ・ドミノの"Goin' Home"ともに、やはり愛情たっぷりにカバーしています。
 本盤収録の三連曲は、いずれもピアノとホーンのアンサンブルが素晴らしいです。

 最後に、"Back to Louisiana"という曲について一言。
 私は、オリジナルは知りませんが、Delbert McClintonのバージョンで知っていた曲で、大好きな曲です。
 この曲をケイジャンぼい姓を持つメンツが歌うのは、なかなか面白いです。
 ブルージーに始まりつつも、次第に調子のいいお祭りソングになっていくのが実に良いです。
 相変わらず、ブラス隊がいい音を出していて、街を練り歩きながらやってほしい、そんな風に思いました。

 よく考えると、最後の2曲が、"Back to Louisiana"、"Goin' Home"ときて、アルバム・タイトルが"Going Back Home"というのは、偶然でしょうか?
 なんとも興味深いです。

 冒頭のスタックス風のサウンドから、最後のクラシックなニューオリンズR&Bスタイルまで、テキサス・ブルース、スワンプ・ポップまでを混じえて、この手の音楽好きには、聴きどころ満載の美味しいアルバムだと思います。




Call Me The Breeze 〜 Sweet Home Alabama
by Dickie and The Tornadoes Reunion 2011


なぜか、レーナードをメドレーでやっています。
バー・バンドっぽくていいですね。






イッツ・オーケイ、ブラボー 

 文末に追記しました。(斜体赤字)

 今回は、Joe Bravoという人のアルバムを聴きました。
 この人は、Sunny Ozunaの後任としてSunglowsのリード・ボーカルを務めた人で、その後ソロになり、今も現役で活動しています。
 つい最近、最新作をリリースしたところです。

 私が初めてJoe Bravoを聴いたのは、Jazzmanから02年にリリースされたレア・グルーヴ・コンピ、"Texas Funk"の収録曲で、ミーターズのカバー、"Sissy Strut"(原題は"Cissy Strut")でした。


Please Call Me, Baby
Joe Bravo

1. La Boa (Carlos J. Reyes)
2. Mufieca Triste (D.A.R.)
3. Tomando Mil Copas (Doroteo Ramirez)
4. Amor Necio (Cornelio Reyena)
5. Yo (J.A. Jimenez)
6. Un Mal Rucuerdo (D.A.R.)
7. Please Call Me, Baby (R. Owens, F. Martinez)
8. If You Don't Love Me (D.A.R.)
9. It's Okey (Manny R. Guerra)
10. Does He Remind You Of Me (Sunny Ozuna)
11. Again (Greg Ramirez)
12. Think It Over (D.A.R.)

 本盤は、Hawk Recordsという会社から01年にリリースされたCDです。
 多分、Sunny & The Sunlinersらサンアントニオのアーティストの旧作のCD化を行っているGolden Eagle Recordsの系列ではないかと思います。
 パッケージのチープなつくり、資料性の低い(全くない)ペラのリーフレットなど、会社のネーミングも合わせ、共通性を感じます。

 本盤は、一応ソロ名義ですが、音源のソースは不明です。
 おそらくは、LPのストレートCD化だと思われ、A面に当たる6曲目までがスペイン語によるラテン・サイド、B面だと思われる7曲目以降が英語でのR&Bやポップ・サイドになっています。

 さて、58年頃、テキサス州サンアントニオで、高校の同級生らが中心になって、ひとつのティーンネイジャー・バンドが結成されます。
 その中核メンバーだったのが、ボーカルのSunny Ozuna、ドラムスのManuel Guerra、サックスのRudy Guerraらで、そのバンドこそ、Sunny & The Sunglowsでした。

 50年代に"Just A Moment"(Doug Sahmのカバーあり)の小ヒットを出したSunny & The Sunglowsは、63年頃分裂します。
 リード・ボーカルのSunny Ozuna(おそらくSaxのRudy Guerraも一緒)がバンドを脱退し、ヒューストンで新しいバンド、Sunny & The Sunlinersを結成したのです。
 (Sunnyの代表曲、"Talk To Me"はこの騒動の前後にリリースされたと思われ、現在、Sunny & The Sunglows名義、Sunny & The Sunliners名義両方のアルバムに収録されています。)

 Manny Guerra(dr)他の残されたメンバーは、新たなリード・ボーカルを迎え、The Sunglowsを継続します。
 Sunny脱退後のSunglowsは、シンプルにThe Sunglows、または一時期The Fabulous Sunglowsと名乗っていたと思われます。
 この間、Fred Salasら三人のボーカリストの交代があり、4人目でようやく固定メンバーとなったのが、今回の主人公、Joe Bravoでした。

 Bravoの体制は、おそらく65年頃確立されたと思われ、Joe Bravo時代のSunglowsの代表曲は、本盤にも収録されている66年の"It's Okey"という曲です。

 ちなみに、Joe Bravoの独立後のSunglowsは、Los Fabulous Sunglowsなどと名乗っていたのではないかと思います。
 (多分、シングルのみでは、Joe Bravo & The Sunglows名義があるのではないかと思います。)
 このあたりの変遷の詳細は、いまいちよく分かりません。

 さて、本盤です。
 後半の英語曲について、いくつか思ったことがあります。

 バンドは、ホーン入りではありますが、あまり分厚い感じがせず、スモール・コンボっぽい音に聞こえます。
 このあたりは、LP"The Fabulous Sunglows"などとは、少し違う編成のような気がします。
 まあ、あのアルバムも、曲によってはスモール・コンボっぽい印象のものもありましたので一概には言えませんが…。

 英語曲の大半は、オルガンのピーピー音と四つ切のギターが耳に残るスタイルで、ブラス入りのテキサスのガレージ・バンドっぼいです。
 やっている楽曲は、一部を除いてティーン・ポップ調と言えなくもないです。
 "Does He Remind You Of Me"などは、ブリル・ビルディング系のポップ・チューンにも聴こえます。

 しかし、"Does He Remind You Of Me"は、作者がSunny Ozunaなんですよね。
 とりあえず手持ちのソフトを調べましたが、Sunny OzunaまたはSunny & Sunliners(Sunglows)による作者バージョンはありませんでした。
 うーむ、ここは気になります。

 そして、代表曲"It's Okey"は、やはり印象に残る曲だと思います。
 魅力的なホーン・リフのイントロで始まり、オルガンとシンプルなギターの反復ビートをバックに、Bravoが語りに近いボーカルを乗せてきます。
 そして、あざけるような笑い声を効果的に挿入しながら、次第にメロディにのせて歌い始めます。
 もう1本のギターが控えめにオブリを入れたりします。
 なかなかにかっこいいです。

 この曲は、イーストL.A.のチカーノ向けのコンピ(だと思われる)、"East Side Story"シリーズのVol.3にThe Sunglows名義のバージョンが収録されています。



 ここでのバージョンは、疑似ライヴっぽいもので、テンポが少し早いです。
 ただ、ボーカル、ホーンともにハイ・ピッチに聴こえるので、テープ・スピードを下げ、疑似っぽい歓声を消せば、今回の盤のバージョンと似ている気もします。
 両方お持ちの方は、聴き比べていただきたいです。

 最後に、"Think It Over"について触れます。
 これは、アレンジが違い少し分かりづらいですが、曲はJimmy Donleyの名曲で間違いありません。
 ドラムに特徴があり、歌は普通にミディアム・テンポですが、リズムは忙しないタイコが支配していて、テキサス・ファンクです。
 ホーン・リフやオルガンのロング・トーンがいい感じで、間奏での短いサックス・ソロも良いです。
 ビートに違和感を感じない方なら、"Think It Over"の新たなバリエーションとして楽しめると思います。

 Sunny & The Sunglowsのファンや、サンアントニオ・ソウルに関心がある方なら、興味を持って聴けるアルバムだと思います。


 追記
 コンピCD、"Chicano Soul : San Antonio's Westside Sound Vol.3"及びコンピLP、"Border Town Jive : Chicano R&B from San Antonio"に収録されている、Little Joe & the HarlemsのLittle Joeは、実はJoe Bravoのことらしいです。
 なんとなく、Little Joe & the LatinairesのLittle Joe Hernandezの別時期のバンドなのかなと思っていたので驚きです。





Please Call Me, Baby by Joe Bravo




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