2012年08月05日
リル・ファッツ・オー・ゴールド
スワンプ・ポップの異世代同居バンド、Lil' Band O' Goldの最新作を聴きました。
どこかの文章で、「三世代のメンバーからなる」みたいな表現を見た覚えがあります。
本バンドは、70代のWarren Storm(dr)、Dickie Randry(sax)から、リーダー格の40代、C.C.Adcock(gt)まで、三世代は大げさでも、親子くらいの年齢差があるメンツで構成されているバンドです。
1. Blue Monday (Warren Storm)
2. It Keeps Raining (Robert Plant)
3. Let’s Talk It Over (Don’t Lie To Me) (C.C. Adcock)
4. I'm Ready (Lucinda Williams with Ani DiFranco, Kenny Bill Stinson)
5. I'm In Love Again (David Egan)
6. Going Home (Warren Storm)
7. Ain't That A Shame (Jimmy Barnes)
8. What A Price (Grand Prix) (Steve Riley)
9. 4 Winds Blow (Warren Storm)
10. Poor Me (C.C. Adcock)
11. I'm Walkin' (Tim Rogers)
12. Rosemary (Warren Storm)
13. I've Been Around (Robert Plant)
曲目のあとの( )内は、リード・ボーカルです。
本盤でのメンツは以下のような感じだと思います。
Warren Storm : drums, vocals
Steve Riley : accordion, vocals
C.C.Adcock : guitar, vocals
David Egan : piano, vocals
Dave Ranson : bass
Richard Comeaux : pedal steel guitar
Dickie Landry : sax
Pat Breaux : sax
Kenny Bill Stinson : keyboad(若しかするとguitarも)
(もう一人、Huston Dereksという人の名前がリーフレットの最終ページに記されているのですが、誰のことなのか分かりませんでした。)
このバンドは、スワンプ・ポップのオールスターというには、若干むりがあるかも知れません。
もともとスワンプ・ポップはニッチなサブ・ジャンルです。
ジャンルを代表するアーティストでも、一般的な音楽ファンには、限りなく無名でしよう。
この中では、ドラムスのWarren Stormが、スワンプ・ポップ・レジェンドと呼ばれている人です。
若いころは、J.D. Millerのもと、セッション・ドラマーとして、エクセロのスワンプ・ブルース・マンのセッションに多数参加しています。
ソロ・シンガーとしては、"Prisoner's Song"(58)ほかのヒットがあり、これまで、Lil' Band O' Goldのアルバムでは、最も多くリード・ボーカルを務めています。
David Eganは、シンガー、ソングライター、ピアニストで、ソロ作もありますが、他のシンガーへの曲提供で、ライターとしての方が評価が高い人かも知れません。
Egan作の"First You Cry"(1stに本人バージョン収録)は、パーシー・スレッジのカバーがあるほか、私はリトル・バスターのバージョンが好きです。
Steve Rileyは、スワンプ・ポップというより、モダンなケイジャン・バンドのアコーディオニストです。
そして、C.C.Adcockは、スワンプ・ロッカーとベタに言ってしまいましょう。
さらに本盤には、ロバート・プラントほか数人のゲストが参加しています。
以下のとおりです。
Robert Plant
Lucinda Williams
Ani DiFlanco (誰ですか?)
Jimmy Barnes (同上)
Tim Rogers
スワンプ・ポップのスーパー・グループと評されるこのバンドのことは、当ブログにコメントをいただいた二見さんからご教示いただいて知って以来、過去作を愛聴していました。
バンドは、これまで2枚のアルバムをリリースしていて、本盤は2年ぶり、通算3枚目になります。
以下のとおりです。
00年 The Lil' Band O' Gold (Shanachie Records)
10年 The Promised Land (Room 609)
12年 Plays Fats (Dust Devil Music)
1stのあと、2ndまで10年のブランクがありますが、2ndの録音は06年で、4年寝かされていたことになります。
そして、3枚とも、すべて別の会社からリリースされていますね。
当初は1回限りの企画ものだったのか、それとも需要がなかったのか(だとすれば寂しすぎる)
本盤のDust Devil Musicは、オーストラリアの会社のようです。
2ndのリリース後、オーストラリアやニュージーランドで公演したようなので、その関係でしょうか。
また、ゲストの一人、Tim Rogersというのは、You Am Iというオーストラリア(!)のロック・バンドのメンバーです。
You Am Iは、音楽的には私の関心外のバンドですが、一度だけ聴くきっかけがありました。
このバンドには、なんと"Doug Sahm"という題名の自作曲があるのでした。
この件は、当ブログで過去に触れました。
さて、本盤は前作同様、ルイジアナのラファイエ(ット)で録音されました。
プロデュースは、C.C.Adcockが仕切っています。
前作でC.C.と共同制作した、Tarka Cordellは不参加です。
(ちなみに、1stはニューオリンズ録音で、C.C.とLil' Band O' Goldの共同制作名義でした。また、Tarka Cordellは、C.C.の2枚のソロ作を制作している人です。)
1stは、David EganやC.C.のオリジナルを混じえながら、ニューヨーク・ディープから、ニユーオリンズR&B、スワンプ・ポップ、ケイジャンなどを披露したアルバムでした。
対して、2ndは、引き続き渋いカバー曲をやりつつも、オリジナル曲の比率を上げたアルバムになっていました。
そして、今作は、ファッツ・ドミノのカバー集です。
これが、ジャズなら、"Plays Fats"とは、ファッツ・ウォーラーを連想していたでしょう。
1stと2ndでは、音の印象がかなり違いました。
2ndは、各パートがそれぞれ個性をうまく出しつつも、出しゃばりすぎないスタンスが気持ち良いサウンドでした。
大好きなアルバムです。
一方、1stは、C.C.が大先輩に遠慮したのか、オーバー・プロデュースの真逆という感じで、めいめいが自由にやりましたという印象を受ける緩いガレージなサウンドでした。(と感じました。)
対して、今作はどうでしょう。
プロデュースは、C.C.単独です。
ただ、今作は、多彩なゲストが参加していることもあり、彼らの意見も取り入れながらやったのでしょう。
1st、2ndとも肌触りの違う印象を持ちました。
私の好みでは、ロック的なフェイクで味付けしたものより、オリジナルのイメージに近いもの、あるいはデキシー調など別の意味で古いスタイルに仕上げた作品が気に入りました。
頑固に原曲に近いスタイルでやった、Warren Stormの担当曲、そして独自のアレンジながらセピアな雰囲気を出すことに成功しているDavid Eganの"I'm In Love Again"の仕上がりがとりわけ好きです。
Warrenの"4 Winds Blow"は、ウキウキ軽快なリズムと、いい味を出しているペダル・スチールの使い方が私にはツボでした。
そして、Rose Mary"は、誰がやっても悪くなりようがない名作ですね。
へたにいじるべからずです。
Steve Rileyは、わが道を行く感じのサウンドで、クリオールなまりっぽい歌いくちがいいです。
クリフトン・シェニエを連想しました。
やはりケイジャンとザディコは同じコインの両面ですね。
C.C.は、当初いまいちかなと思いましたが、"Poor Me"がよいです。
ここでの仕上げは、ジョン・レノンのアルバム、"Rock and Roll"を連想させる、スペクターっぽいエコーが胸に切なく迫ります。
ゲストの担当曲では、Jimmy Barnesの、Fatsの歌い方や演奏のギミックをデフォルメした仕上げが痛快でした。
Tim Rogersも頑張っていて悪くないです。
まあ、何と言っても原曲が名作ぞろいですからね。
Robert Plantは、彼の好みの牧歌的スタイルと、得意の艶っぽいウェットなボーカルが決まれば最高ですね。
2曲ともよいですが、あえて私の好みで1曲あげるなら、ラストの"I've Been Around"がよりセクシーでお奨めです。
最後に、本盤の収録曲を、英AceのCD、"Fats Domino Imperial Singles"シリーズ(Vol.1〜5)に当てはめて締めたいと思います。
Fats Domino
The Early Imperial Singles 1950-1952
6. Going Home (Warren Storm)
3. Let's Talk It Over (Don't Lie 2 Me) (C.C.Adcock)
The Imperial Singles Vol.2 1953-1956
7. Ain't That A Shame (Jimmy Barnes)
10. Poor Me (C.C.Adcock)
12. Rosemary (Warren Storm)
The Imperial Singles Vol.3 1956-1958
1. Blue Monday (Warren Storm)
5. I'm In Love Again (David Egan)
11. I'm Walkin (Tim Rogers)
The Imperial Singles Vol.4 1959-1961
2. It Keeps Raining (Robert Plant)
4. I'm Ready (Lucinda Williams with Ani Di-franco)
8. What A Price (Grand Prix) (Steve Riley)
9. 4 Winds Blow (Warren Storm)
13. I've Been Around (Robert Plant)
本盤は、繰り返し聴きこむほど、味わい深さを感じて、さらに好きになっていくアルバムだと思います。
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Fats Domino
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Warren Storm
ダーティ・ドッグ・ワルツ
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土曜の夜はあげあげカーニバル
David Egan : First You Cry
ブルーズン・ソウル・ブラザーズ
元祖ヘタウマ
アリゲーターバイユー、クロコダイル・スワンプ
You Am I
この人だれ? プラス1
どこかの文章で、「三世代のメンバーからなる」みたいな表現を見た覚えがあります。
本バンドは、70代のWarren Storm(dr)、Dickie Randry(sax)から、リーダー格の40代、C.C.Adcock(gt)まで、三世代は大げさでも、親子くらいの年齢差があるメンツで構成されているバンドです。
Plays Fats
Lil' Band O' Gold
Lil' Band O' Gold
1. Blue Monday (Warren Storm)
2. It Keeps Raining (Robert Plant)
3. Let’s Talk It Over (Don’t Lie To Me) (C.C. Adcock)
4. I'm Ready (Lucinda Williams with Ani DiFranco, Kenny Bill Stinson)
5. I'm In Love Again (David Egan)
6. Going Home (Warren Storm)
7. Ain't That A Shame (Jimmy Barnes)
8. What A Price (Grand Prix) (Steve Riley)
9. 4 Winds Blow (Warren Storm)
10. Poor Me (C.C. Adcock)
11. I'm Walkin' (Tim Rogers)
12. Rosemary (Warren Storm)
13. I've Been Around (Robert Plant)
曲目のあとの( )内は、リード・ボーカルです。
本盤でのメンツは以下のような感じだと思います。
Warren Storm : drums, vocals
Steve Riley : accordion, vocals
C.C.Adcock : guitar, vocals
David Egan : piano, vocals
Dave Ranson : bass
Richard Comeaux : pedal steel guitar
Dickie Landry : sax
Pat Breaux : sax
Kenny Bill Stinson : keyboad(若しかするとguitarも)
(もう一人、Huston Dereksという人の名前がリーフレットの最終ページに記されているのですが、誰のことなのか分かりませんでした。)
このバンドは、スワンプ・ポップのオールスターというには、若干むりがあるかも知れません。
もともとスワンプ・ポップはニッチなサブ・ジャンルです。
ジャンルを代表するアーティストでも、一般的な音楽ファンには、限りなく無名でしよう。
この中では、ドラムスのWarren Stormが、スワンプ・ポップ・レジェンドと呼ばれている人です。
若いころは、J.D. Millerのもと、セッション・ドラマーとして、エクセロのスワンプ・ブルース・マンのセッションに多数参加しています。
ソロ・シンガーとしては、"Prisoner's Song"(58)ほかのヒットがあり、これまで、Lil' Band O' Goldのアルバムでは、最も多くリード・ボーカルを務めています。
David Eganは、シンガー、ソングライター、ピアニストで、ソロ作もありますが、他のシンガーへの曲提供で、ライターとしての方が評価が高い人かも知れません。
Egan作の"First You Cry"(1stに本人バージョン収録)は、パーシー・スレッジのカバーがあるほか、私はリトル・バスターのバージョンが好きです。
Steve Rileyは、スワンプ・ポップというより、モダンなケイジャン・バンドのアコーディオニストです。
そして、C.C.Adcockは、スワンプ・ロッカーとベタに言ってしまいましょう。
2ndのころのスナップだと思います。
さらに本盤には、ロバート・プラントほか数人のゲストが参加しています。
以下のとおりです。
Robert Plant
Lucinda Williams
Ani DiFlanco (誰ですか?)
Jimmy Barnes (同上)
Tim Rogers
スワンプ・ポップのスーパー・グループと評されるこのバンドのことは、当ブログにコメントをいただいた二見さんからご教示いただいて知って以来、過去作を愛聴していました。
バンドは、これまで2枚のアルバムをリリースしていて、本盤は2年ぶり、通算3枚目になります。
以下のとおりです。
00年 The Lil' Band O' Gold (Shanachie Records)
10年 The Promised Land (Room 609)
12年 Plays Fats (Dust Devil Music)
1stのあと、2ndまで10年のブランクがありますが、2ndの録音は06年で、4年寝かされていたことになります。
そして、3枚とも、すべて別の会社からリリースされていますね。
当初は1回限りの企画ものだったのか、それとも需要がなかったのか(だとすれば寂しすぎる)
本盤のDust Devil Musicは、オーストラリアの会社のようです。
2ndのリリース後、オーストラリアやニュージーランドで公演したようなので、その関係でしょうか。
また、ゲストの一人、Tim Rogersというのは、You Am Iというオーストラリア(!)のロック・バンドのメンバーです。
You Am Iは、音楽的には私の関心外のバンドですが、一度だけ聴くきっかけがありました。
このバンドには、なんと"Doug Sahm"という題名の自作曲があるのでした。
この件は、当ブログで過去に触れました。
さて、本盤は前作同様、ルイジアナのラファイエ(ット)で録音されました。
プロデュースは、C.C.Adcockが仕切っています。
前作でC.C.と共同制作した、Tarka Cordellは不参加です。
(ちなみに、1stはニューオリンズ録音で、C.C.とLil' Band O' Goldの共同制作名義でした。また、Tarka Cordellは、C.C.の2枚のソロ作を制作している人です。)
1stは、David EganやC.C.のオリジナルを混じえながら、ニューヨーク・ディープから、ニユーオリンズR&B、スワンプ・ポップ、ケイジャンなどを披露したアルバムでした。
対して、2ndは、引き続き渋いカバー曲をやりつつも、オリジナル曲の比率を上げたアルバムになっていました。
そして、今作は、ファッツ・ドミノのカバー集です。
これが、ジャズなら、"Plays Fats"とは、ファッツ・ウォーラーを連想していたでしょう。
1stと2ndでは、音の印象がかなり違いました。
2ndは、各パートがそれぞれ個性をうまく出しつつも、出しゃばりすぎないスタンスが気持ち良いサウンドでした。
大好きなアルバムです。
一方、1stは、C.C.が大先輩に遠慮したのか、オーバー・プロデュースの真逆という感じで、めいめいが自由にやりましたという印象を受ける緩いガレージなサウンドでした。(と感じました。)
対して、今作はどうでしょう。
プロデュースは、C.C.単独です。
ただ、今作は、多彩なゲストが参加していることもあり、彼らの意見も取り入れながらやったのでしょう。
1st、2ndとも肌触りの違う印象を持ちました。
私の好みでは、ロック的なフェイクで味付けしたものより、オリジナルのイメージに近いもの、あるいはデキシー調など別の意味で古いスタイルに仕上げた作品が気に入りました。
頑固に原曲に近いスタイルでやった、Warren Stormの担当曲、そして独自のアレンジながらセピアな雰囲気を出すことに成功しているDavid Eganの"I'm In Love Again"の仕上がりがとりわけ好きです。
Warrenの"4 Winds Blow"は、ウキウキ軽快なリズムと、いい味を出しているペダル・スチールの使い方が私にはツボでした。
そして、Rose Mary"は、誰がやっても悪くなりようがない名作ですね。
へたにいじるべからずです。
Steve Rileyは、わが道を行く感じのサウンドで、クリオールなまりっぽい歌いくちがいいです。
クリフトン・シェニエを連想しました。
やはりケイジャンとザディコは同じコインの両面ですね。
C.C.は、当初いまいちかなと思いましたが、"Poor Me"がよいです。
ここでの仕上げは、ジョン・レノンのアルバム、"Rock and Roll"を連想させる、スペクターっぽいエコーが胸に切なく迫ります。
ゲストの担当曲では、Jimmy Barnesの、Fatsの歌い方や演奏のギミックをデフォルメした仕上げが痛快でした。
Tim Rogersも頑張っていて悪くないです。
まあ、何と言っても原曲が名作ぞろいですからね。
Robert Plantは、彼の好みの牧歌的スタイルと、得意の艶っぽいウェットなボーカルが決まれば最高ですね。
2曲ともよいですが、あえて私の好みで1曲あげるなら、ラストの"I've Been Around"がよりセクシーでお奨めです。
最後に、本盤の収録曲を、英AceのCD、"Fats Domino Imperial Singles"シリーズ(Vol.1〜5)に当てはめて締めたいと思います。
Fats Domino
The Early Imperial Singles 1950-1952
6. Going Home (Warren Storm)
3. Let's Talk It Over (Don't Lie 2 Me) (C.C.Adcock)
The Imperial Singles Vol.2 1953-1956
7. Ain't That A Shame (Jimmy Barnes)
10. Poor Me (C.C.Adcock)
12. Rosemary (Warren Storm)
The Imperial Singles Vol.3 1956-1958
1. Blue Monday (Warren Storm)
5. I'm In Love Again (David Egan)
11. I'm Walkin (Tim Rogers)
The Imperial Singles Vol.4 1959-1961
2. It Keeps Raining (Robert Plant)
4. I'm Ready (Lucinda Williams with Ani Di-franco)
8. What A Price (Grand Prix) (Steve Riley)
9. 4 Winds Blow (Warren Storm)
13. I've Been Around (Robert Plant)
本盤は、繰り返し聴きこむほど、味わい深さを感じて、さらに好きになっていくアルバムだと思います。
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