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ビバップ小僧 参上

 アマゾンUSのオンデマンド・オーダーをご存知でしょうか?
 ここでお話ししたいのは、音楽ソフトに関わることです。
 通常、各国アマゾンで、音楽ソフトの品ぞろえに違いはありません。
 しかし、まれに例外があります。
 その一つが、アマゾンUSによるCDのオンデマンド・オーダーです。

 他国のアマゾンでは扱っていない、アマゾンUSだけのアイテムがあるのです。
 目印はジャケ写です。
 若干縮小されたジャケ写の周りに黒い縁、そして上辺のみライト・ブルーのベルト・ラインが目印です。
 このジャケのアイテムは、アマゾンUSが受注製造しているもので、厳密にはCD-Rなのでした。

 今回は、そのオンデマンドで、最近ラインナップされたFreddy Fenderの最初期の音源集をご紹介します。 


El Bebop Kid & Friends
Freddy Fender

1. Chantilly Lace
2. No Seas Cruel (Don't Be Cruel)
3. Hermanita (Little Sister)
4. Puerto Verde (Green Door)
5. El Rock De La Carcel (Jailhouse Rock)
6. Chica Alborotada (Tallahassee Lassie)
7. El Twist (The Twist)
8. Esa Sera El Dia (That'll Be The Day)
9. Hasta La Vista Cocodrillo (See You Later Alligator)
10. Diablo Con Vestido Azul Y La Plaga (Devil With A Blue Dress On)
11. Enriqueta (Henrietta)
12. Rock Del Jet
13. Tutti Frutti
14. Enmedio De Una Isla (In The Middle Of An Island)
15. Rock A Beatin' Boogie
16. Gloria
17. Estremecete (All Shook Up)
18. Susy Q
19. Marianne
20. Avientense Todos (C'mon Everybody)
21. Johnny Se Bueno (Johnny B. Goode)
22. Rockabilidad (Rockabilly Rock)
23. Cantando Los Blues
24. Adios A Jamiaca (Jamaica Farewell)

 アマゾンUSのオンデマCD-Rは、流通していないアイテムを受注に合わせて供給する試みです。(多分)
 ただ、流通難のアイテムの中にも、マーケット・プレイスでしぶとく流通しているものがあり、本来のCDと、オンデマCD-Rが併存している場合がしばしばあります。

 この場合、発売年が新しいものをオーダーしてしまいがちですが、ジャケ写に注意しましょう。
 オンデマCD-Rは、CD-Rであるだけではなく、ブックレットの中身が一切ない(無地でテキスト情報なし)という低レベル仕様です。(さらに言えば、裏ジャケもない)
 もし、選択する機会があったら、迷うことなく、ライトブルー縁取りの縮小ジャケは避けましょう。

 今回のアイテムは、オンデマCD-Rではありますが、旧作CDのオンデマ・ソフトではありません
 本盤は、09年からMP3ダウンロード・アルバムで配信されていたもので、過去にCDのフォーマットでリリースされたことはありません。
 つまり、MP3でしか入手できなかった音源を、初めてディスク化したものなのです。

 ただ、まず、最初に言うべきことがあります。
 先述のとおり、本盤には全く情報の記載がありません。
 最低限の曲目リストが掲載されているのみです。

 そういう状況の中、なんとFreddy Fenderの音源ではない、全く関係ない音源が多数紛れていことが分かりました。
 これってどうなんでしょう。
 確かに、アルバム・タイトルが、"El Bebop Kid & Friends"となっていて、内容を匂わせるタイトルにはなっています。

 とはいえ、その程度ではあまりにも説明不足でしょう。
 共演などではなく、無関係の音源なのですから…。
 せめて、別のアーティストが含まれていることは特記すべきだと思いました。 

 さて、ここからは、海外コレクター(?)のTerry Gordon氏作成のディスコグラフィーを参考に、収録内容に触れたいと思います。

 本盤収録の24曲のうち、Freddy Fenderの音源は11曲です。
これらは、Falcon Recordsから57年から59年にかけて、本名のBaldemar Huerta名義でシングル・リリースされたもので、全てスペイン語で歌われています。

 Freddy Fenderが、Duncan Recordsで最初のローカル・ヒットを出す直前のことです。 
 Duncan時代の録音は、アーフリーからCD化されていますが、それ以前の音源はブートLPだけだったと思います。
 対象の曲は、以下のとおりです。 

Freddy Fender 11曲 (Baldemar Huerta)
1. Chantilly Lace
2. No Seas Cruel (Don't Be Cruel)  
4. Puerto Verde (Green Door)
5. El Rock De La Carcel (Jailhouse Rock)  
7. El Twist (The Twist)
8. Esa Sera El Dia (That'll Be The Day)  
11. Enriqueta (Henrietta)  
14. Enmedio De Una Isla (In The Middle Of An Island)  
19. Marianne
23. Cantando Los Blues
24. Adios A Jamiaca (Jamaica Farewell)

 スペイン語タイトルがほとんどですが、かっこ書きがあるものは分かりますよね。
 ビッグ・ボッパー、エルヴィス、ハンク・バラード(チャビー・チェッカー)、バディ・ホリー、などなどの50年代の有名ロックンロールのカバーがほとんどです。

 ちなみに、"Puerto Verde (Green Door)"は、ジム・ロウの作品で、80年代にShakin' Stevensのカバー・ヒットがあります。
 "Enriqueta (Henrietta)"は、ジミー・ディーの作品で、後にジョン・フォガティの未発表アルバムの1曲となりました。

 英語タイトルが追記されていない曲では、"Cantando Los Blues"が、ガイ・ミッチェル(マーティ・ロビンズ)の"Singin' The Blues"です。
 この曲は、デイヴ・エドマンズのカバー盤が印象深いです。

 Duncan時代に開花する泣き節は、この時点ではその萌芽がまだみられません。
 むしろ、エルヴィスのカバーに、後のリズムものでの味わいがくみ取れます。
 完全に習作時代の作品だと思います。
 内容的には、ファン・オンリーの作品集といえるでしょう。
 でも、ファンにとっては宝物です。

 私は、今回、本盤の収録曲について調べることにより、自分の手持ちのLPの中に、一部Falcon録音を含むものがあることに気付きました。
 こういったLPは、いずれも75年以降に出されたもので、FreddyがNo.1カントリー・ヒットを出したため、便乗して出されたものだと思われます。
 ジャケ写に70年代のものを使用しているのがほとんどで、ジャケだけでは中身をはかることは出来ません。

 75年発売の"Freddy Fender - The Story of an Overnight Sensation" (Pickwick JS-6178)がそうです。
 ジャケをご紹介します。



 63年〜64年のNorco Records録音が中心ですが、1曲だけFalcon録音が入っています。
 ハリー・ベラフォンテのカバー、"Jamaica Farewell" (本盤トラック24 "Adios A Jamiaca (Jamaica Farewell)")です。
 


 さて、その他の音源についても聴いていきましょう。
 アーティストごとにまとめてみました。
 以下の通りです。

Los Loud Jets 5曲
Los Locos Ritmo 2曲
Los Llopis 3曲
Los Rockin' Davils 3曲

 これらは、おそらくメキシコのバンドだと思われます。
 アルバム・タイトルにはFriendsとありますが、彼らがFalcon Recordsのレーベル・メイトだったかどうかは不明です。

 基本的に、アメリカのロックンロールのカバーが中心です。
 50年代の録音が多いと思いますが、このうち、Los Rockin' Davilsは明らかに60年代の録音だと思います。
 理由は、以下の曲目をご覧ください。

Los Loud Jets 
3. Hermanita (Little Sister)  
12. Rock Del Jet
13. Tutti Frutti
17. Estremecete (All Shook Up)  
21. Johnny Se Bueno (Johnny B. Goode)  

Los Locos Ritmo 
6. Chica Alborotada (Tallahassee Lassie)  
20. Avientense Todos (C'mon Everybody)  

Los Llopis 
9. Hasta La Vista Cocodrillo (See You Later Alligator)
15. Rock A Beatin' Boogie  
22. Rockabilidad (Rockabilly Rock)

Los Rockin' Davils 
10. Diablo Con Vestido Azul Y La Plaga (Devil With A Blue Dress On)  
16. Gloria  
18. Susy Q  

 Los Rockin' Davilsのみ、ミッチ・ライダー、ゼムなんてのをやっています。
 このバンドは、60sメキシカン・ガレージ・バンドですね。
 この頃のメキシコのバンドは、チャンプスの成功を受けて、同系のインスト・バンドやサーフ・バンドあがりが多いので、彼らもその系統の可能性は高いです。

 そのほかにも、60年代の録音があると思いますが、選曲は50年代ですね。
 元ネタは、エルヴィス、リトル・リチャード、チャック・ベリー、フレディ・キャノン、エディ・コクラン、ボビー・チャールズ、ビル・ヘイリー、デイル・ホーキンスなどなどです。

 このうち、英語タイトルの補記がないものでは、Los Loud Jetsの"Rock Del Jet"が、エディ・コクランの20フライト・ロックです。

 これらのバンドのうち、私が過去に聴いていたのは、Los Llopisだけです。
 リイシュー・レーベルのEl Toro Recordsから出たコンピ、"El Mexican Rock and Roll"に収録されていました。
 このコンピは、50年代のメキシコのロックンロール集です。
 ただ、全く記憶になく、改めて聴き返しました。

 "El Mexican Rock and Roll"は、今年になってVol.2が出て入手していましたが、聴かずに棚に並べたままでした。
 Vol.2にも、Los Llopisが2曲入っていて、今回を契機に興味深く聴きました。
 今は、メキシコのロックンロール、ガレージ・パンクに関心を持っています。

 ライナーによれば、Los Llopisは、キューバ出身のバンドで、メキシコやアメリカで活動していたとのことです。
 彼らのメイン・インフルエンスが、ビル・ヘイリーだというのが面白いです。

 さて、Freddy Fenderの名前は、Duncan Recordsのオーナー、Wayne Duncanが名付けたと言われています。
 そして、El Bebop Kidは、Freddyの50年代のニックネームですが、レコードでメインの名義になったかどうかは不明です。

 Terry Gordon氏のリサーチによれば、Freddy FenderのFalcon時代の名義は、分かっている範囲で、以下のとおりです。

Baldemar Huerta Con Los Romanceros
Baldemar Huerta Con Xavier Michel Y Su Quinteto
Baldemar Huerta - El Bebop Kid -

 Falcon時代のすぐあと、59年にリリースされた、Duncan Recordsの1枚目、"Mean Woman"では、"Freddie Fender"名義が使われています。
 同レコードを60年に全国配給した、Imperial盤も、同様の名義となっています。

 Duncanの2枚目、"Wasted Days & Wasted Nights"で始めて、"Freddy Fender"の表記が使われました。
 でも、その後も一定の期間(いつごろまでかは不明)、"Freddie"、"Freddy"の表記が混在していくのでした。
 (少なくとも、64年までは"Freddie"表記が存在しました。)

 本盤は、Freddy Fenderのファンのための1枚です。
 そして、これを聴いた私は、最初期のFreddy Fenderへの関心を深めるとともに、自然とメキシカン・ロックンロールに興味を持ったのでした。




No Seas Cruel by Baldemar Huerta




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 文字数制限で、すべてのリンクが貼れないため、上記リンクのみ貼ります。
 上記記事から、その他の関連記事へとべます。


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