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シンディが好きなもの

 Cyndi Lauperのアルバムを初めて買いました。
 ハイスクールはダンステリアとか、トゥルー・カラーズとか、タイム・アフター・タイムとか、ヒット曲は知っていましたが、今まで一度もアルバムを買ったことはありません。
 
 それが、なぜ?
 その理由は、このアルバムの収録曲をご覧ください。


Memphis Blues
Cyndi Lauper

1. Just Your Fool (feat. Charlie Musselwhite)
2. Shattered Dreams (feat. Allen Toussaint)
3. Early in the Morning (feat. Allen Toussaint & B.B. King)  
4. Romance in the Dark
5. How Blue Can You Get (feat. Jonny Lang)
6. Down Don't Bother Me (feat. Charlie Musselwhite)
7. Don't Cry No More  
8. Rollin and Tumblin’ (feat. Kenny Brown and Ann Peebles)
9. Down So Low  
10. Mother Earth (feat. Allen Toussaint)
11. Cross Roads (feat. Jonny Lang)
12. Wild Women Don't Get the Blues
13.I Don't Want To Cry (feat. Leo Gandelman)


 このアルバムは、昨年にリリースされたものですが、何とタイトルどおりブルースのカバー集なのです。
 驚きました。
 私は、彼女のバックボーンを全く知らなかったので、なぜブルース?  
 なぜメンフィス? と思いました。

 このアルバムは、数日前に手に入れて何度か聴いたのですが、ブルース・ロックではなく、普通にブルースとして楽しめました。

 伴奏陣には、ドラムスでハワード・グライムズが、ベースでリロイ・ホッジズが参加しています。
 私が不案内なだけでもっと有名人が参加している可能性もあります。
 とはいっても、ハイ・サウンドを連想させるとまではいってないのが、少し残念です。
 
 特定のサウンドを意識した音づくりではないということでしょう。
 私などは、ついつい有名曲のそっくりフレーズとか期待してしまいがちですが、これはこれでよいのだと思います。
 
 ゲストとして明記されている有名人は、B.B.キングとチャーリー・マッセルホワイト、アラン・トゥーサン、ジョニー・ラングなどです。

 リズム隊よりもボーン陣のほうが、あのころの音を思い起こさせるかも知れません。
 いい味を出しているホーン・リフが嬉しいです。

 冒頭から、リトル・ウォルターのJust Your Foolでスタートします。
 当然、チャーリーがハープで参加します。

 この曲は、大好きなI Got Find My Babyのフリップ・サイドの曲ですが、実は原曲は未聴です。(だと思います。)
 いい感じですが、欲を言えば、もう少しウォーキン・ベースとかで緊張感を出して、シカゴっぽくやってもよかったかなと思います。

 Shattered Dreamsは、ローウェル・フルスンですね。
 米ケント時代の曲で、多分、何度も繰り返しリイシューされていると思われる人気の時代の曲だと思います。

 Early in the Morningは、ルイ・ジョーダンの有名曲ですが、ルイ大好きで、まるごと1枚ルイ・ソングで固めたアルバムを出しているB.B.キングが参加して、ボーカルも少しとっいます。
 B.B.は私のヒーローなので、それだけでオールオーライです。

 Romance in the Darkは、リリアン・グリーンとビッグ・ビルのペンになる曲で、リル・グリーンのバージョンが原曲のようです。
 私は、今回初めて聴きました。
 40年代の古い曲のようです。

 How Blue Can You Getは、原曲が誰か知りませんが、もはやB.B.の曲で間違いないですね。
 ここでのギターは、若干ロック寄りのトーンに聴こえ、やはりジョニー・ラングでした。

 Down Don't Bother Me は、アルバート・キングのスタックス録音だと思いますが、チャーリーのハープが入っていて、少しダウンホームな雰囲気です。
 ただ、シンディのボーカルがスタイリッシュなので、どっちつかずの感もあります。

 Don't Cry No Moreは、もっとも期待していた曲です。
 もちろん、原曲はデューク時代のボビー・ブランドですね。
 あのジャンプ・グルーヴが出てくると、それだけでうれしくなります。
 シンディは、まだ余力を残した歌い方です。

 Rollin and Tumblin’は、誰が原曲ですか?
 まあ、誰であってもマディ・ウォーターズで正解だと言いたい曲です。
 ここでは、スライド・ギターが3分間を支配します。

 Down So Lowは、トレイシー・ネルソンの1stソロ収録曲ですか。
 白人の楽曲のカバーというのは、意表をつかれますね。
 この曲を収録したトレイシーの日本盤をもっているはずですが、音は全く記憶にありません。
 始めて出会った感じで聴きました。
 この選曲は何か意味があるのかな。

 Mother Earthは、メンフィス・スリムですね。
 この原曲は、ピアノ・メインでしたっけ?
 それとも、マット・マーフィーとのデュオ時代だったかな?
 こちらも、どこかにCDがあるはずですが、ほとんど忘れてしまってます。
 
 Cross Roadsは、クリーム盤ではなく、ウォーキン・ベースを使ったロバート・ジョンソン風です。
 ジョニー・ラングがギターを弾いていますが、このあたりはブルース・ロックの雰囲気もあります。

 Wild Women Don't Get the Bluesは、クラシック・ブルースのカバーだと思います。
 私は全くうといのですが、原曲はベシー・スミスでしょうか?
 それとも、作者のアイダ・コックス嬢ですか。

 まあ、誰の代表曲かはともかく、このアルバムのライナーは、「ブルースの母、マ・レイニーに捧げる」というコメントで締められているので、マ・レイニー盤があるのかも知れません。
 シンディのボーカルは、アンニュイな雰囲気を出していてうまく歌っていると思います。

 ラストのI Don't Want To Cryは、今回の私の一押し曲です。
 エタ・ジェイムズのような雰囲気の展開の曲で、ホーンがのっしのっしと進んでくるような、サザン・バラードです。
 これは良いです。
 アップ・テンポのチャック・ジャクソン盤とは同名異曲です。

 オリジネイターは、サヴォイ時代のビッグ・メイベルだと思います。
 メイベルは、オーケー時代のコンプリート集を聴いていましたが、サヴォイ時代はコンピで数曲きいただけなので、この曲は初体験でした。
 ぜひ、原曲が収録されたアルバムが欲しいです。

 ところで、皆さんはアマゾンでCDを購入していて、自然とMP3の楽曲ファイルのプレゼントがたまってませんか?
 私は、もう何通もアマゾンからプレゼント通知メールが届いています。

 このメイベルのサヴォイ音源なんか、試しにダウンロードしてみようかな、なんて考えたりしています。
 まあ、考えるだけでなかなか実行に移さない、七回石橋を叩いてなお渡らない派なんですが…。

 デジタル・データって、やっぱり形がないので、味気ないですよね。
 新しいもの好きのわりに、アナログから逃れられない私は、仮にダウンロードしても、MP3プレイヤーのプレイリストを作って終わりではなく、CD-Rに焼きたい人かも知れません。
 ただ、ものぐさなので口ばっかりなんですが。

 今回、シンディ・ローパーという人に興味を持ちました。
 ブルースが好きなんて、とにかく嬉しいです。
 
 少し調べたところ、彼女はソロ・デビュー前に、Blue Angelというロカビリー系のバンドをやっていたらしいです。
 なるほどというか、ますます好感を持ちました。

 03年には、At Lastという、もう一枚のカバー集があるようです。
 レヴューでは、スタンダード集のような書かれ方をされてますが、アルバム・タイトル曲は、エタ・ジェイムズの名バラードです。
 モーリス・ウイリアムズ&ゾディアクスのStayとか、スモーキー・ロビンスンのあの曲とかもやっているようなので、興味は増す一方です。

 企画盤が増えるのは、キャリアが長くなって、煮詰まっているとも言えなくありませんが、ロッド・スチュワートの成功の例もあります。

 大の親日家で、ブルースやR&Bが好き、若いころはロカビリーもやってました、なんて素敵です。
 今回、大いに見直したシンガーです。

 なお、私が手に入れたアルバムは、多分ブラジル盤だと思われ、もっとも曲数が多いものです。
 通常盤は全11曲で、トラック12が追加された米盤がありますが、トラック13は未収録です。

 また、来月発売予定のDVD付き日本盤の説明文では、トラック13は日本盤のみ収録と謳われています。
 歌詞対訳はともかく、各曲に関する詳細な日本語解説がつくのなら、ライナーは読んでみたいです。





Don't Cry No Moreです。




 

蘇る銀狼

 やっとこさひとつの壁を乗り越えた気分です。
 なんだか大層な出だしですが、他人様から見れば中身は大したことではありません。

 私は、大好きにも関わらず、根強く抱いていたCharlie Richに対する「ある思い」を克服したのでした。


Behind Closed Doors
Carlie Rich

1. Behind Closed Doors
2. If You Wouldn't Be My Lady
3. You Never Really Wanted Me
4. A Sunday Kind of Woman
5. Peace on You Listen
6. The Most Beautiful Girl
7. I Take It on Home Listen
8. 'Til I Can't Take It Anymroe
9. We Love Each Other
10. I'm Not Going Hungry
11. Nothing in the World (To Do with Me)
12. Mama, Take Me Home [*]
13. Ruby, You're Warm [*]
14. Papa Was a Good Man [*]
15. I've Got Mine [#][*]
 

 すみません。
 繰り返しますが、大したことではありません。

 持って回った言い方をしている中身は、ごく単純なことです。

 私は、チャーリー・リッチが大好きですが、そのキャリアの全てが好きと言う訳ではなく、限定的でした。
 具体的には、50年代と60年代のサン・レコードとハイ・レコード時代が、もう愛おしさで胸が一杯になるほど好きなのですが、その他の時代はいまいち好きになれなかったのでした。

 これは、食わず嫌いな面が多分にあり、いつか克服する試みをしたいと思っていました。
 
 私のトラウマ、というか悪い印象として刷り込まれていることがあります。
 それは、私が初めてカントリーを系統的に聴いた、コロンビア系列のカントリーのコンピ・シリーズに関連します。
 ほぼ年代順に組まれたそのシリーズは、カントリーのサウンドの歩みを大別して、CD各1枚ごとに編成したものでした。

 黄金時代、ホンキートンク、ナッシュビル・サウンド、アメリカーナ、ニュー・トラディションといったテーマのくくりでコンパイルされていたのです。

 チャーリー・リッチは、このうちナッシュビル・サウンド編に収録されていました。
 この流れで聴いたことが、現在まで続く、私のリッチに対する後ろ向きな姿勢の原因となりました。

 この時聴いたのは、The Most Beautiful GirlBehind Closed Doorsではなかったかと思います。
 まさに、今回のアルバムの中心曲ですね。

 私は、カントリーを初めて系統的に聴いたとき、30年代から40年代の名曲の魅力を知りました。
 その素晴らしい作品たちに心底ほだされたのです。
 とりわけ、30年代の名作群が私の心に強く印象づけられたのでした。

 また一方、ニュー・トラディション(新伝統派)という、30年代の黄金時代や60年代のコースト・カントリーを現代に蘇らせたスタイルも、私を興奮させるに充分なものがありました。

 そんな中聴いた、ナッシュビル・サウンド編は、私にはあまりにも商業主義的なサウンドに聴こえたのです。
 ナッシュビル・サウンドは、ロックンロールの嵐が吹き荒れ、壊滅的打撃を受けたカントリーが、起死回生として打ち出した、ポップスと限りなくクロスオーバーしたサウンドでした。

 主として、RCAのチェット・アトキンスの主導により作られた、イージー・リスニング的なサウンドで、当時はロックッンロールへのカントリーの逆襲ともいうべきもので、多くの保守的なリスナーに受け入れられたのでした。

 振り返って聴くと、これといった個性がないサウンドのように感じますが、当時はロック・サウンドの流行に憤懣やるかたない思いを持っていた人々に、大いに溜飲を下げさせたのでした。

 こういったサウンドや、ビジネス・スタイルへのアンチテーゼとして、オースティンのレッド・ネック・ロックは生まれてきたのだと思います。

 ともかく、最初に聴いた状況がよくなかった、ただそれだけのことを言いたくて、くだくだと書いてしまいました。

 チャーリー・リッチのサンやハイ(ディアブロ)などの音源に大感激しながらも、70年代以降の作品に後ろ向きな印象を持ったきっかけです。

 その後、いくどか聴こうと思いましたが、つい最近まで逡巡し続けていたのです。
 それには、もうひとつの理由もありまのす。
 実は、後年の吹き込みが好みじゃないというだけではなかったのです。

 私は、サンとハイの間に位置するスマッシュ時代の音源も、いまいちピンと来なかったのでした。
 このため、私は呪文のように小声で言い続けてきたのです。

 チャーリー・リッチ大好き、ただしサン時代とハイ時代限定…と。

 そんな私の心が氷解し始め、今回思い切ってトライしたのには、ふたつの理由があると思います
 
 ひとつは、YouTubeです。
 YouTubeは、文字情報の検索にはない、ダイレクトな情報の供給を容易にしてくれました。
 ここでいくつか聴いた、リッチの70年代以降のパフォーマンスに心を動かされたのでした。

 そして、もうひとつは、私が年齢を重ねたことでしょう。
 かつては拒否していた音楽のいくつかを、近年の私は素直に聴くことができるようになりました。
 カントリーについても、同様の微妙な変化が私のなかで生まれていったのだと思います。

 さて、くどくどと書き連ねてきましたが、今回のアルバムは、いくつものレーベルを渡り歩きながら、商業的成功と無縁だったリッチが、初めて成功を手にした時期のものです。

 ビリー・シェリルが制作したこのアルバムは、No.1ヒットを収録し、アルバムとして、またボーカリストとしても多くの賞を受け、リッチは、まさに人生の絶頂期を迎えました。
 このアルバムは、73年にエピックからリリースされました

 ここでは、別のアルバムからの追加曲数曲と、未発表1曲を含む内容になっています。
 
 今の私には、この音楽は「あり」です。
 かつて、ジョニー・キャッシュが、サム・フィリップスに求めて叶えられなかった、流麗なストリングスがバックに流れています。
 このあたりが、以前はなんとも受け入れがたいもでしたが、いまの私にはさほど気にならなくなりました。

 これはひよりでしょうか。

 私は思いたいのです。
 リッチが深く静かに保持し続けていたソウルに、現在の私は、表面のサウンドに捕らわれることなく聴くことができるようになったのだと…。

 サンやハイのサウンドが好きなのは不変です。
 しかし、ここでのリッチの音楽は、全否定する根拠など全くないと思うようになりました。

 そういう思いで聴くと、ここにも確かに、リッチの根源的な魅力を聴きとることができるのでした。
 私の頑固な先入観は、数十年を経て、やっとときほぐすことが出来たようです。

 私は今、彼のキャリアをもっと掘り下げていきたいと、素直に思いだしています。 




A Sunday Kind of Womanです。




関連記事はこちら

チャーリー・リッチのこの1枚


ジョゼフ説教師の童心

 今回は、Joe Texを聴き返しました。
 選んだのは、英Kentの編集盤で、94年にリリースされたものです。
 ジョン・ブローヴンがコンパイルし、クリフ・ホワイトがライナーを書いています。(読めませんが…)

 
Skinny Legs And All
The Classic Early Dial Sides
Joe Tex

1. S.Y.S.L.J.F.M. (The Letter Song)
2. The Love You Save (May Be Your Own)
3. Show Me
4. Hold What You've Got
5. Heep See Few Know
6. Someone To Take Your Place
7. One Monkey Don't Stop No Show
8. If Sugar Was As Sweet As You
9. Meet Me In The Church
10. You Got What It Takes
11. I Had A Good Home But I Left (Part 1)
12. Don't Let Your Left Hand Know
13. A Woman Can Change A Man
14. Skinny Legs And All
15. I Want To (Do Everything For You)
16. A Sweet Woman Like You
17. I Believe I'm Gonna Make It
18. Men Are Gettin' Scarce
19. I'm A Man
20. I've Got To Do A Little Bit Better
21. Papa Was Too
22. Watch The One (That Brings The Bad News)
23. The Truest Woman In The World
24. Chicken Crazy
 

 いきなり脇道へそれてしまいますが、英Aceでは、AceとKentの振り分けをどのようにしているんでしょう。
 Aceは、ブルース、R&B、ロックンロール、そしてKentはソウルでしょうか?

 いちいち現物に当たってはいませんが、何となく感覚的にはそんなイメージですね。
 まあ、前提として、そもそもなぜ分ける必要性があるのかという問題が残りますが…。

 さて、ジョー・テックスです。
 ウィキペディアによれば、彼の本名は、ジョゼフ・アーリントン・ジュニアというらしいです。
 テックスというのは、出身地がテキサスだからというのが自然な発想ですが、正解でしょうか?

 私がジョー・テックスに持っているイメージは、プリーチ、説教です。
 それも切々と語るというのではなく、言葉をたたみ掛けていく、そんな印象です。

 ところが今回、この初期ダイアル録音集を聴いて、案外、プリーチ、プリーチしてないなあ、勝手な刷り込みというか、思い込みは怖いなあと思いました。 

 じっくり聴いてみるものですね。
 彼には、サム・クック・フレイバーを感じさせる歌い方のものがあるということを知りました。 
 冒頭のS.Y.S.L.J.F.M. (The Letter Song)などは、いきなりそんな感じですね。

 でも、それだけじゃありません。
 彼にはソロモン・バークのような側面もまた、確実にあります。
 ここで私が感じたのは、バークが持っていたジェントルな雰囲気です。

 バークの場合、特にそれは、カントリーを取り上げた作品に顕著でした。
 ジョー・テックスは、比較的南部録音が多いようですが、南部のバックでも、バーク節とでも呼びたい、懐の深い歌い口を持っていると思いました。

 とりあえず、A Woman Can Change A Manあたりを上げておきたいです。
 この曲では、間奏でゆったりしたモノローグが入り、私が従来持っていたイメージに近いパフォーマンスです。
 これで、徐々にボルテージが高まって、頂点に達したところで爆発すれば、などと思いますが、実際はオスカー・トニーのように、熱さは深く静かに潜行します。

 このアルバムには、主に64年から66年までのシングルのA面が収録されているようです。
 録音は、ナッシュビル、メンフィスが中心で、それにニューヨーク録音が少し混ざっているようです。

 この人の場合、あまり出来不出来が少ないように感じます。
 ヒット曲も、その他の曲もそれほど大きな違いがあるようには思えません。
 それぞれが魅力的だと思います。 

 ただ、先入観でしょうか?
 やはりメンフィス録音がいいように思ってしまいます。
 A Sweet Woman Like Youなんかは特に好きですね。

 ところで、このメンフィスというのは、どこのスダジオでしょう。
 アメリカン・スタジオは、67年からと72年までらしいですからそれ以前ですね。

 私は、サザン・ソウル好きにも関わらず、このあたりにうといので、Obinさんの「Songs」のスタジオ相関図(?)のページに付箋を貼ったりしていました。

 ナッシュビル録音というのは、ダイアル・レコードの自社スタジオかな。 
 
 そういえば、マッスルショールズ録音のHold What You've Gotは、フェイム・スタジオのようですが、B面が収録されていないので、このアルバム唯一のアラバマ録音です。
 ダイアルのオーナーは、ヒット曲が出たのに、テックスのファイム詣では1回こっきりでやめちゃったんですかね。
 
 まあ、私の耳は、情けないことにさほど音の違いが分かりません…。
 ここからは、スタックスやハイのような個性を聴きとれないのです。

 スタジオだけ借りて、ツアー・メンバーで録音したということはないですよね。
 何の意味もないし。

 ただ決してくさしている訳ではなくて、むしろ私には、平均より上の曲ばかりのように感じます。
 その分、この1曲という決定打に欠けるきらいがありますが。
 それは、Hold What You've Gotを含めてそう思います。

 この曲は、もっとディープにやっている人がいたとも思います。

 ウーム、こういう話の展開にするつもりはなかったのです。
 私は、基本的に好みじゃないアルバムは取り上げません。

 気を取り直すため、全く別方面の話題に切り替えて、平和に終わりたいと思います。

 このアルバムには、If Sugar Was As Sweet As Youという曲が入っています。
 曲名だけでピンと来た方は偉いです。

 そうです。
 ロックパイルがやっていた曲のオリジナルです。
 66年のメンフィス録音のようです。
 パブ・ロック・ファンは、このバージョンを聴くだめだけでも、このアルバムを手に入れましょう。

 オリジナルなんて関心がないよ、という人にはごめんなさい。




If Sugar Was As Sweet As Youです。
歌心を感じさせるギターがいい感じです。





孤高のフィドリン・マン

 探し物をしていると、思いがけず出てきた目的外のものが気になって、どうもに仕方がなくなるときがあります。

 今回のアルバムもそんな1枚です。
 私がこのアルバムを聴くのは、おそらく20数年ぶりだと思います。


Hot Diggidy Doug
Doug Kershaw

Side 1
1. Cajun Baby : with Hank Williams Jr.
2. Louisiana
3. Jambalaya
4. I Wanna Hold You
5. Calling Baton Rouge
6. Toot Toot : with Fats Domino

Side 2
1. Boogie Queen
2. Just Like You
3. Louisiana Man
4. Mansion in Spain
5. Cajun Stripper
6. Fiddlin' Man 
 

 私は、ある頃からスワンプ・ポップが大好きになりました。
 そして、ヴィンテージ期のそういった音源を、熱に浮かされたように追っかけていた時期がありました。
 
 サウス・ルイジアナの音楽を追っていると、自然とザディコやケイジャンに行き着きます。
 Doug Kershawも、たどり着くべくしてたどり着いた重要アーティストの一人でした。

 DougとRustyによる兄弟デュオのヴィンテージ録音が第一の目的でしたが、勢いから、当時の最新のケイジャンにも関心を寄せていました。

 このアルバムは、ダグ・カーショウの89年リリースのソロ・アルバムで、ゲストとして、ハンク・ウイリアムズ・ジュニアとファッツ・ドミノが参加しているという、なかなか興味深い内容になっています。

 当時のことは、もう遠い記憶の彼方にあり、詳しいことは覚えていませんが、私がこのアルバムを入手しようとした第一の動機は、My Toot Tootの存在だったのだと思います。

 My Toot Tootは、このアルバムにもToot Tootとして収録されていますが、当時、南部でちょっとしたムーブメントを起こしていた、新たな南部アンセムともいうべき曲でした。

 50年代から活躍するザディコ奏者、ロッキン・シドニーのペンによる曲で、シドニー自身のヒット・バージョン(チープなピコピコ電子音サウンドの方です)を始め、多くのシンガーによって取り上げられた曲でした。

 シングル・オンリーだったジョン・フォガティ盤は、昨年、センターフィールドの25周年記念盤のボーナス・トラックとして、目出度く収録されました。
 ディープ・ソウルのデニース・ラセール盤もありました。

 そして多分、レコーディングされていなくても、南部のそこかしこのクラブで演奏されていたのだと思います。
 そう、丁度一時期のZ.Z.ヒルのDown Home Bluesのように。

 私がそういった興味からこのアルバムにたどり着いた可能性は高いです。
 
 今回久しぶりに聴いてみて、非常に聴きやすいアルバムだと感じました。
 これは、伝統的なスタイルの匂いをしっかりと残しつつも、完全にコンテンポラリー・ケイジャン・ミュージックとでも呼びたくなる音楽です。

 ロック世代のリスナーの耳にもすんなりと入ってくる、ポップで親しみやすいサウンドに仕上がっています。
 ゲストの一人、ハンク・ウイリアムズ・ジュニアは、デビュー当時こそ、ナッシュビル・サウンドからスタートしましたが、次第にロックに傾斜して、ついにはサザン・ロックに限りなく接近した人でした。
 
 彼のレパートリーには、レーナードのSweet Home Alabamaが何の違和感もなく存在していました。
 また、ディッキー・ベッツとの親交も深かったようです。

 サザン・ロックが衰退していったとき、カントリーのフィールドで受け入れていった土壌は、ハンク・ジュニアの当時の活動が、少なからず影響を与えていたのだと私は思っています。

 さて、このアルバムですが、とてもポップで、若い聴き手を意識したサウンドづくりでありながら、一方では、ピュアな伝統的スタイルのバックボーンの重みを感じさせてくれる優れた1枚だと思います。

 時代に合わせたように見せながら、深い芯の部分はゆるぎない、ある意味理想的なルーツ・ロックに仕上がっていると思います。

 ここては、デイヴ・エドマンズもやったLouisiana Manの新録音も聴くことができます。
 
 ダク・カーショウのボーカルは、青臭い鼻にかかったホンキーなスタイルではありません。
 あえて、例えれば、ジョニー・キャッシュを何音か高くしたようなボーカル・スタイルです。

 頑固で孤高、そういいたいです。
 ロンサムな雰囲気もたまりません。

 彼は自分でギターを爪弾き、フィドルを奏で、アコーディオンを弾いています。
 ダンス・チューンでは、最高にうきうきとさせてくれ、フォーキーなバラードでは、しっとりと心に染みいるようなボーカルを聴かせてくれます。

 私は、その後、ケイジャンよりもザディコへとより関心を移して言ったため、彼のその後を追うことはありませんでした。

 しかし、久しぶりに聴いたカーショウの音楽は、外から帰宅したばかりの私の冷たい身体と、疲れた心を優しく癒してくれました。

 入手当時はあまり重視していなかった、スローな曲も、今の私にはとてもしっくりきます。
 私は最近、遠いふるさとへの郷愁を歌ったボーダー・ソングを好んで聴いています。

 昔でいえば、カセット・テープに気になる曲を録りだめていったように、MP3プレーヤーにプレイリストを作っています。

 このアルバムの中からも、何曲か加えたいなと思っています。



Louisiana Man (Live at Farm Aid 1986)
by Doug Kershaw




関係記事はこちら

John Fogerty
マイ・トゥー・トゥー


履きなれたスニーカーたち

 初めて聴くバンドなんですが、正直驚きました。
 曲目リストを見て、ほのかに抱いていた期待は、音が出始めると、次第に嬉しい喜びへと変化していったのです。


Old Cons
Reducers

1. Take The Cash (K.A.S.H)/Eric Goulden(01)
2. Baby, Come Back/Eddy Grant(01)
3. High Society/Roger C. Reale(93)
4. Police Car/Larry Wallis(81)
5. Hippy Hippy Shake/Chan Romero(85)
6. (I Thought I Heard A) Heartbeat/Peter Staines(01)
7. Ninety Nine And A Half (Won't Do)/Steve Cropper, Wilson Pickett, Eddie Froyd(live84)
8. Mack The Knife/Kurt Weill, Bertolt Brent, Blitzstein(live84)
9. That's It I Quit/Nick Lowe(live84)
10. Hurt By Love/Cris Spedding(live84)
11. Three Bells In A Row/Bob Kingston, Dick Crippen, Gary Long, Edward Tudor(live84)
12. Breakout/Snips(84)
13. Going Back Home/Wilko Johnson(84)
14. Sleepwalk/Santo Farina, John Farina, Ann Farina(01)
 

 03年リリースのアルバムですが、非常に興味深い曲目に魅かれて、このバンドの最初の1枚に選びました。
 しかし、どうやら過去作品からセレクトした編集盤だったようです。

 曲目リストは、順に曲名、作者、そしてカッコ内はリリース年になります。
 これからいくと、81年1曲、84年のライヴ音源7曲、85年1曲、93年1曲、01年4曲の計14曲が、過去のアルバムからチョイスされているようです。

 てっきりオリジナル・アルバムだと思い込んでいたので意外でしたが、期せずして美味しいどこ取りの編集盤に当たったようです。

 アルバム・タイトルがベスト盤ぽくないですので、気が付きようがないですよね。
 でも、改めて考えると、Old Consというタイトルは、ジャケット写真から察するところ、「古いコンバース」と言うことかも知れません。

 履きなれたスニーカーたち。
 過去のお気に入りの音源を集めました、くらいの意味でしょうか。

 どうやら、米国で四半世紀以上のキャリアを持つベテラン・バンドのようで、78年ごろにデビューしているようです。
 英国産パブ・ロック好きのバーバンドのようです。
 このバンドは知りませんでした。
 もしかして、パンクからスタートしたバンドでしょうか?

 バンドは、ギター2本に、ベース、ドラムスというベーシックな編成です。
 そして、音はパンキッシュで、かつポップな味わいを感じました。
 
 最初の驚きから冷めて、冷静にに聴くと、もう少しボーカルに華があればなあ…と正直惜しく思います。
 でも、それを補って余りある、かっこいいビートがここにはありました。

 収録曲については、私が知らない曲もありますが、おしなべて好き者心をくすぐられるような選曲です。
 多分、このあたりの曲に詳しい方で、このバンドをご存知ない方は、関心を持たれることと思います。
 とにかく、有名どころのカバーも、ちょっとひねった渋い選曲になっています。

 ラリー・ウォーリスのPoiice Carは、懐かしいですね。
 これは、ウォーリスの代表曲のひとつかも知れませんが、ウォーリスをカバーする時点で激渋です。

 ニック・ロウのThat's It I Quitは、もちろん、ジッピ・メイヨ時代のドクター・フィールグッドのカバーですね。

 そして、Heartbeatは、誰だったでしょう?
 インメイツがやっていたような気がしますが、リズム隊が一新した後のフィールグッドもやってましたか?
 
 チャン・ロメロのHippy Hippy Shake、ウイルソン・ピケットのNinety Nine And A Half (Won't Do)、ウィルコ時代のフィールグッドのGoing Back Homeあたりは、この渋い曲目の中ではかなりの有名曲ですね。
 いずれも、人気曲ばかりです。

 Ninety Nine And A Half (Won't Do)は、私にはクリーデンス盤が一番ですが、ジッピ時代のフィールグッド盤もありましたね。

 Baby, Come Backというのは、よく知らないんですが、エディ・グラントと言う人は、レゲエ系の人ですか?
 でも、この曲は、印象的なリフレインがかっこいい、ファストなロックンロールです。
 燃えます。

 クリス・スペディングも、実は詳しくないんですが、Huet By Loveはかっこいいです。
 私が無知なだけで、有名曲でしょうか?

 全体の傾向からすると、Mack The Knifeは意外な選曲ですね。
 箸やすめというところでしようか。

 そして、アルバムは、大有名インストのSleepwalkで幕を閉じます。
 これは、オーソドックスなアレンジで演奏されています。

 その他の触れなかった曲にも、突っ込みどころが多数あるのかもしれません。
 しかし、残念ながら私は知らない曲たちです。

 でも、何だか初めて聴いた気がしない、とにかくかっこいい、ハード・ロッキンなロックンロールばかりでした。

 この選曲に感激して、ワクワクしすぎているのかも知れませんが、久しぶりに"ロック"の熱さに触れることが出来た1枚でした。

 どうも、現役バンドのような気がしますので、オリジナル・アルバムが気になってきました。




何とShe Does It RightとRoute66をやってます。




エル・ビーバップ・キッドの逆襲

 今回は、またまた英Krazy Katのヴィニール盤です。
 86年にリリースされたもので、レイ・トッピング先生がコンパイルしています。
 中身は、我らがチカーノ・ヒーロー、Freddy Fenderです。


The Early Years 1959-1963
Freddy Frender

Side One
1. I'm Gonna Leave
2. Wasted Days & Wasted Nights
3. Mean Woman
4. Crazy Baby
5. Wild Side Of Life
6. You're Something Else For Me
7. Going Out With The Tide
8. San Antonio Rock

Side Two
1. Louisiana Blues
2. Since I Met You Baby
3. Little Mama
4. You Told Me You Loved Me
5. I Can't Remember When I Didn't Love You
6. Only One
7. Find Somebody New
8. Roobie Doobie


 この時代の音源というのは、CD化されていましたっけ?

 この人は37年生まれですから、22歳から26歳までの時期に当たります。
 
 まず思うのは、早くもかなり完成されているなあということ、そして、70年代にNO.1カントリー・ヒットを連発した最盛期のレパートリーが、すでにいくつも顔をのぞかせているという事に対する驚きです。

 Wasted Days & Wasted NightsSince I Met You BabyWild Side Of Lifeの3曲は、ABC時代に新たに録音され、シングル・カットされた曲です。

 このうち、自作のWasted Days & Wasted Nightsは、彼が持つ4曲のNo.1ヒットのうちのひとつで、ここでのバージョンがプロトタイプと言うことになります。

 また、ヒットこそしていなくても、Crazy BabyGoing Out With The TideOnly Oneなどは、その後何度も吹き込むことになる、定番中の定番曲です。
 Only Oneは、Holy Oneという表記でも録音されている名曲バラードです。

 まあ、フレディ・フェンダーといえば、泣きのバラードですね。
 そして、英語とスペイン語による、必殺のバイリンガル・パターンがこの人の売りです。
 芸人でいえば、営業ネタですね。

 ジョニー・ロドリゲスなどもそうですが、1番の歌詞を英語で歌い、2番をスペイン語、そして間奏を挟んで再び英語に戻るなんていうのは、おきまりのパターンとはいえ、好きな人には、もうたまりません。

 日本人は、基本的には、おしなべて保守的で協調性を重視する傾向があると思います。
 「和を持って尊しとなす」の精神は、我々民族のDNAの中に、深く静かに根付いているのではないでしょうか?

 日本人は、様式美を好みます。
 ハード・ロックの黎明期に、いち早く熱狂的に受け入れたのは、精神的な土壌があったのだと思います。

 多くの人が、水戸黄門を支持し続けるのはなぜでしょう。
 関西でいえば、吉本新喜劇の変わらない人気の秘密はなんなのでしょう。

 これらは、先の展開が読めたりします。
 物語が急展開して、はらはらさせられても、受けて側は知っているのです。
 そろそろ、いつものおきまりの場面がくることを。
 しかも、今か今かと、それを待っているのです。

 そして、分かっていながらも、いつもの展開が繰り広げられると、喝采せずにはいられないのでした。
 受けての予想を裏切りながら、決して期待を裏切らないというのが、最も美しい展開だと思います。
 これこそ、まさに黄金の定番様式だと言いたいです。

 ヒスパニックのシンガーのライヴDVDなどを観ていて、英語の歌詞から、スペイン語の歌詞にさりげなく切り替わったときに、観客が一瞬の沈黙をおいて、「わあっ」と盛り上がるのは、ソフトを観たり聴いたりしている側にとっても、思わず一体化して心を動かされる瞬間です。 
 
 ヒスパニックの共同体意識の発露と言ってしまえば、それこそ味気ないですので、単純に多くの人々の感動を疑似共有して、心を熱くしましょう。

 さて、このアルバムの収録曲は、いずれも魅力的なものばかりです。

 Wild Side Of Lifeは、カーター・ファミリーのI'm Thinking Tonight of My Blue Eyesのメロディを借りた曲です。
 いえ、あるいは、どちらもルーツを同じくする、古い伝承曲が元歌かも知れません。
 A.P.カーターも、レッドベリーも、民衆から採集した曲を自分なりに組み立てて、自作として発表していました。  

 ラジオ時代、レコード時代の始まる前から歌は存在し、口伝え、耳伝いに伝承されていったのだと思います。
 
 20年代、カーター・ファミリーとジミー・ロジャースが、最初のラジオ・スターとなった偉人たちです。
 彼らが譜面に残し、優れたパフォーマンスをレコードに記録しなければ、散逸した曲は確実にあったと思います。
  
 You're Something Else For Meは、ジミー・リードの改作のような曲ですが、もしかしたら、私が知らないだけで、完全にリードの曲かも知れません。

 このアルバムには、作者名のクレジットが一切ないので、何とも言えませんが、この曲では、Ain't That Something Baby、Yeah, You're Something Else For Meという歌詞が繰り返し歌われているように聴こえます。

 Going Out With The Tideも好きな曲です。
 フレディが、この曲をトミー・マクレインとデュエットしていたバージョンは、どのアルバムに入っていたのでしょう?
 急に聴きたくなってきました。

 San Antonio Rockは、なんとも想像力を掻き立てる魅力的な題名ですが、何のことはない、イントロが始まると「ああっ」と得心する曲です。
 これは、ボブ・ウィルズの代表曲、San Antonio Roseのロックンロール・インスト盤なのでした。

 全曲にわたって、ちまちまと思いつきに過ぎないコメントを綴るのも煩雑なだけですので、このへんにしておきたいと思います。

 全体を通して、改めて聴いてみて、やはりその魅力、歌手としての力に感服しました。
 フレディ・フェンダーは、偉大な歌手だったと思います。

 私がフレディから連想するシンガーがいます。
 それは、ロイ・オービスンです。
 二人とも、泣きのバラードを得意としている点が共通しています。

 そして、キャリアの初期がロックンロールが爆発した時期であり、最盛期にはあまりやらなかったようなロックンロールを、初期にはかなり吹き込んでいることも同じです。
 また、実はリードが弾けるギタリストでもありました。

 これは、大人たちに混じって、タフな10代を過ごしたに違いない、ひとつの証しだと思います。
 歌うだけでなく、様々なことが求められる時代だったのでしょう。
 彼らのギター・テクは、必要に迫られて形作られたものだったのだと思います。 

 このアルバムには、ロイがやってもおかしくない曲が入っています。
 Mean Womanは、実際にやっていたような気も…。

 ところで、後回しにしてきましたが、A面1曲目に、I'm Gonna Leaveという曲が入っています。
 作者不明ですが、この曲こそ、昨日の記事で言及した曲と同じものなのでした。

 ラリー・レインジと彼のロンリー・ナイツがライヴ盤でやっていた曲であり、なぜかそのアルバムで、ビッグ・サンディ(ロバート・ウイリアムズ)作と誤記されていた曲なのです。

 これがフレディの自作なのか、黒人グループのカバーなのか、はたまたチカーノ・グループのカバーなのか、興味は尽きませんが、今日私が、腰を冷やしながらも、レコード棚を探索した成果が、この小さなトリビアなのでした。

 引き続き、偶然というサイコロが、思いを寄せる目を出してくれるまで、気長に待ち続けたいと思います。




I'm Gonna Leaveです。





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グッド・オールド・ヒルビリー


グッド・オールド・ヒルビリー

 少し前のことです。
 私は、テキサスのごった煮音楽バンド、Larry Range & and his Lonely Knightsのライヴ盤をとりあげました。

 そこに収録されている、I'm Gonna Leaveという曲の作者名が、Robert Williamsとクレジットされていたため、原曲は、Big Sandyのどれかのアルバムに入っているはず、と書きました。

 ロバート・ウイリアムズは、ビッグ・サンディの本名です。
 今回のアルバムは、くだんの曲を含む、Big Sandyの97年リリースの3rdアルバムです。


Feelin' Kinda Lucky
Big Sandy and his Fly Rite Boys

1. The Loser's Blues
2. Feelin' Kinda Lucky  
3. Let's Make It …Tonite!
4. If I Knew Now (What I Knew Then)
5. What's It To Ya?
6. Have You Ever Had The Feelin' : Webb Pierce & Bob Wills 
7. The Greatest Story Ever Told
8. Stranger Love
9. I'm Gonna Leave
10. Bug Tussle Saturday Night : L.Jeffries
11. Three Years Blind
12. Have & Hold
13. Big '49
14. Back Door Dan 


 以前から気になっていたバンドですが、機会を逸して、今まで入手していませんでした。
 今回、ロンリー・ナイツがカバーした曲の原曲を聴くということを、このバンドに触れるための動機づけにしてみました。
 なんにでも、ちょっとしたきっかけが必要なのです。
 
 私が、このバンドに対して持っていたイメージは、スモール・コンボのネオ・ロカビリーからスタートして、ビッグ・バンド・スタイルのスイング・バンドになったグループだろうというものでした。

 言ってみれば、ブライアン・セッツァーみたいな感じです。
 それも、ブライアンよりも、ロカビリーに未練を残したサウンド、そんな風に思いこんでいたのです。

 事実、ある程度は当たっていたようです。
 しかし、ロカビリー時代から、音楽の方向性に修正を加えた彼らは、かなりの変貌を遂げたようです。

 このアルバムからくみ取れるのは、決して私が事前に考えていたような音楽ではなかったのでした。

 このアルバムは、全14曲入りですが、12曲までが、全てロバート・ウイリアムズこと、ビッグ・サンディの作品で占められています。
 残る2曲のうち、1曲は、メンバーのスチール・ギタリスト、リー・ジェフリーズが書いた曲です。

 そして、唯一1曲のみカバーがあって、 Have You Ever Had The Feelin'という曲が、ウェブ・ピアースとボブ・ウィルズのペンになる曲です。

 私は、ボブ・ウィルズ・ファンですが、この曲はあまり記憶にありません。
 ウィルズが他人に曲を書くというのは、あまり例がないと思うので、きっと彼の録音があるんでしょうが、ちょっとものぐさが出て、ディスクには当たらず、ネット検索のみで済ませたところ、ウェブ・ピアースに関してはヒットしました。
 よって、ピアース盤はあるようです。
 ウィルズ盤については、もう少し眠気が襲ってきていないときに再度調べたいと思います。

 さて、そのサウンドですが、ビッグ・バンド・スイングではありません。
 もちろん、ジャンプ・ブルースでもありせん。
 カントリー系ではありますが、ウエスタン・スイングでさえないと言い切ってしまいましょう。

 私の基準では、これはウエスタン・スイングとは言い難いです。

 カテゴリーは、記号にすぎませんが、イメージを喚起するのに重宝します。
 あえていうなら、これは、ヒルビリー・ブギとかの部類だと思います。
 まず、楽器編成が決定的に不足しています。

 ギター2本に、ベース、フィドル、スチール・ギター、そしてドラムスという編成です。
 (アシュレイ・ハーソンという人のクレジットが、Take-Off Guitarという謎の表記になっています。)

 ドラムスこそ入っていますが、スチール・ギターが縦横無尽に活躍する、ロッキン・リズムであっても、本質は古いスタイルのヒルビリーだと思います。

 エレキ・ギターが目立つ曲でも、さほどモダンな感じはしません。
 アップ・テンポの曲であっても、どこかほんわかムードが漂う演奏です。
 ロカビリーのような、リヴァーブ一杯にエコーがかかったサウンドは一切でてきません。

 ボブ・ウィルズは、自身の音楽を決してウエスタン・スイングとは呼ばず、カントリー・ジャズと呼んでいたそうです。
 ボブの功績は、酒場やダンス・ホールの喧騒に対抗するため、いち早くドラムスとエレキ・ギターを導入し、さらに、ボーン陣を加えてジャズのビッグ・バンド編成を取り入れたことでした。

 音楽の名称をどう呼ぼうが、その人の自由だとは思いますが、ボブのスタイルの基本は、フィドル・バンドに、エレキ・ギターの単音弾きと、サックスを中心としたホーンのリフを加えることだったと思います。
 そして、その音楽はあくまでダンス・チューンでした。

 このアルバムのサウンドは、ダンス・チューンではありますが、ホーンが入っていず、ハワイアンぽいスチール・ギターばかり目立っています。
 ジャズっぽいのは、むしろギターで、ロカビリー要素が少なく、クリアでお上品なトーンを聴かせています。

 まあ、曲によっては、ウエスタン・スイング調のものもないとは言い切れませんが、私的には物足りないサウンドなのでした。

 とはいえ、ヒルビリー・ブギも好きな私としては、これはこれで良いと思います。
 しかし、ロッキン・ビートを期待される人にはいささか退屈かもしれません。
 そういう方には、あと10歳ほど年齢を重ねていただき、私のようにひよっていただくほかありません。

 モダンさが感じられない理由としては、ピアノが入っていないということが大きいでしょう。
 恐らく、鍵盤が入っていれば、随分と印象が違ったと思います。
 ブギの演奏の基本は、やはり、はねるピアノです。 

 何度か聴いているうちに、このサウンドに慣れてきたようですが、パンク以降のロック・ファンには、かなり厳しい音だという思いは強いです。

 ところで、ラリー・レインジ & ロンリー・ナイツがカバーした、I'm Gonna Leaveですが、どうやらクレジットの誤りのようです。
 これは全く別の曲です。
 
 なぜ、そういうことが起こったのか謎ですが、ロンリー・ナイツ盤は、ホーン・リフとピアノのアンサンブルが印象的な、ミディアム・アップのR&Bです。
 対して、ビッグ・サンディ盤は、スチール・ギター中心のほのぼの系カントリー・ブギです。
 
 ロンリー・ナイツ盤の正体が混沌としてきましたが、やはり順当なところでは、ニューオリンズR&Bのカバーか、レアなチカーノR&Bが原曲なのだろうと思います。

 少しはものぐさを抑えて、レコード棚あさりをして、原曲探索をしようかなと思いだしています。

 なお、このアルバムは、デイヴ・アルヴィンに特別な謝辞が贈られているほか、ファロン・ヤングとリチャード・ベリーの想い出に捧げられています。

 ファロン・ヤングは、ナッシュビル・カントリーのスターですが、ソング・ライター時代のドン・ギブソンの曲や、同様に、ウイリー・ネルソンの曲をヒットさせたりして、彼らが世に出る契機のひとつとなった人だと思います。

 一方、リチャード・ベリーは、Louie Louieのオリジネイターとして有名な人ですが、エタ・ジェイムズとRoll With Me Henryをデュエットした人でもありました。
 そして、忘れてならないのが、コースターズの前身、ロビンズで、あのRiot in Cellblock Number Nineのリードを歌っていたことです。

 ファロンはともかく、ベリーは、このアルバムのサウンドとは、関連性がうすいように思いますが、何かリスペクトするところがあったのでしょう。
 ファロン・ヤングは、96年に65歳で、リチャード・ベリーは、97年に61歳で天に召されています。




トリオ編成の、ロカビリー時代の彼らによるDon't Be Cruelです。
このころなら、ロック・ファンも聴けますね。





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リズム貴族、登場

 今回のヴィニール盤も、若干反っています。
 でも、実際に針を落としてみると案外きれいにトレースしてくれました。
 ジョン・ブローヴンがライナーを書いている84年リリースの英Krazy Kat盤です。


The Dukes Of Rhythm
featuring Joe Carl

Side A
1. Opening Theme
2. Those Eyes
3. For Love  
4. Before I Grow To Old 
5. Ooh Poo Pah Doo 
6. Holy One 
7. Tell It Like It Is  
8. Don't Leave Me Again

Side B
1. One Little Dream  
2. Somebody's Cheatin'  
3. You Broke My Heart 
4. Everybody's Rockin'  
5. I've Found My Love
6. Defeeated
7. Don't Leave Me Again


 これこそ、文字通り、誰も知らないシリーズの1枚だと思います。
 The Dukes Of Rhythmのライヴと未発表集です。
 フューチャリング・ジョー・カールです。(誰ですか?)

 A面はライヴ音源で、B面は、クローリーのJ.D.ミラーのスタジオで吹き込まれたもので、そのほとんどが未発表、または別テイクのようです。

 うーむ、白人のサウス・ルイジアナ・グループの60年代レア音源ということですが、正規リリース音源でさえ、1曲も聴いたことがないグループです。
 当時の私は、なぜこのLPを購入したのでしょうか?

 どうも、ギター、ベース、ピアノ、ドラムスに、テナー・サックス2本という編成のようです。
 そして、リード・ボーカルとトランペット(!)のジョー・カールが加わります。
 
 やっている音楽は、ニューオリンズR&Bスタイルの曲です。
 曲としては、比較的ボビー・チャールズの曲や、彼にインスパイアされたようなのものが多いようで、ファッツ・ドミノで有名なBefore I Grow To Old、レアなThose Eyesは、ボビーの曲ですね。
 作者は不明ですが、You Broke My Heartも、そんな感じの曲です。

 そして、レイ・チャールズからの影響も大きいようです。
 当時、ニューオリンズでは、このバンドに限らず、レイのサウンドが強い影響力をもっていたのだと思います。
 
 冒頭のオープニング・テーマがそうですし、ジェシー・ヒルのOoh Poo Pah Dooなどもやっていますが、原曲自体がレイのサウンドを目指したものだと思います。

 その他、ロイド・プライス風の曲をやったりもしています。

 A面は、ライヴ音源だとのことですが、そんな感じがしません。
 観客の歓声などは一切なく、バンドのサウンドも、特段ラフというわけではないです。
 ライヴと言われなければ分からないレベルです。
 
 そして、B面のボーカルは、A面と比べるとかなり力が入っていて、もちろんジョー・カールなのでしょうが、ときどき別人のように聴こえたりします。
 青臭い白人ティーン・ポップ風ボーカルですが、なかなか元気一杯頑張っていて好感が持てます。

 ボーカルの印象の差が大きいのかも知れませんが、全体的にスタジオ録音のB面の方がいい曲がそろっているように感じます。

 まあ、A面には、フレディ・フェンダーの名曲、Holy Oneもありますが、メンバーの自作曲でもB面のほうがポップさが感じられ、私好みです。

 また、Tell It Like It Isは、有名なアーロン・ネヴィル盤のカバーではなく、同名異曲のようです。
 こちらは、アップ・テンポのダンス・チューンに仕上がっています。
 ボビー・チャールズのTake It Easy, Greasyあたりを連想しますが、ジョン・ブローヴンは、エディ・ボーの名前を出していて、そうなのかも知れません。 

 B面は、ロックンロールっぽい曲があるということもありますし、サックスが元気ということもあります。
 あるいは、コンピに入って入れば、A面とB面では別のグループと思ったかも知れません。
 
 ともかく、コレクターズ・オンリーという感はいなめません。
 スワンプ・ポップや、チカーノ・グループなど、ルイジアナやテキサスの音楽に関心がある人のみに向けた、とても人を選ぶ1枚であるのは間違いありません。



Don't Leave Me Againです。





若き日の王様とエル・モリーノ

 テックス・メックスって、何て楽しいんだ。
 しみじみとそう感じさせてくれるアルバムです。

 サウンドこそ、ラテン風味たっぷりですが、ほぼ英語で歌われているので、とっつきやすく、入門編として最適であるとともに、なおかつ高い音楽性を持ったひとつの完成形だとも思います。


Joe King Carrasco and El Molino

1. Jalapeno Con Big Red 
2. Mezcal Road  
3. Black Cloud  
4. Tell Me  
5. I'm A Fool To Care 
6. Rock Eate Noche 
7. Funky Butt 
8. Every Woman(Crazy About An Automobile) 
9. Please Mr. Sandman
10. Just A Mile Away
 
 
 このアルバムは、02年にリリースされたCDですが、私がこれを初めて聴いたソフトは、カセットテープでした。

 録音は77年ごろだと思われ、多分翌78年に自主製作盤としてひっそりと出され、その後商業リリースされたようです。
 最初のソフト形式がなんだったのか不明ですが、普通はLPでしょう。
 Joe King Carrascoのデビュー作になります。

 今手元にくだんのカセットテープがなく、いつ頃の発売で、私が入手した時期も霧のかなたですが、推測することは出来ます。

 CDの黎明期、LPからCDへのメディアの変更は、ゆるやかに行われました。
 事実は違うかも知れませんが、当時の私はそう感じていました。

 CDとLPの同時発売が普通になったころ、CDのみのボーナス・トラックというのが、ひとつの流行りでした。
 国内でCDがほぼLPを駆逐し、ヴィニール盤のプレス工場が姿を消したころになっても、海外の発展途上国では、まだヴィニール盤の需要がありました。
 国内の針メーカーは、海外向けに商品を作り続けていたのです。

 そして、カセットテープの需要もまた、国内では想像もつかないほど有ったのだと思います。
 これは、再生機の普及率に関わることでしょう。
 途上国では、CDプレイヤーはもちろんのこと、レコード・プレイヤーでさえ希少で、ラジカセこそ、庶民にとって身近な音楽再生機だったと思われます。

 私がこのアルバムのカセットテープを入手したのは、そういった時期だったのではないかと思います。

 さて、このジョー・カラスコのデビュー作は、その後のスティッフ時代などの音源のみ聴いて来られた方には、驚きの音源だと思います。
 
 一般的には、ジョー・キング・カラスコ & クラウンズ名義のものが有名だと思います。
 ニューウェイヴが流行っていたころに現れた、まさにパンクの洗礼を受けたテックス・メックスともいうべきものでした。

 それも聴いたことがないという方は、ニック・ロウのハーフ・ア・ボーイ・アンド・ハーフ・マンを思い出して下さい。
 あんなサウンドです。
 初めてニックのあの曲を聴いたとき、多くの人が「ああ、ジョー・キング・カラスコだ」と感じたと思います。

 私は、そのころのサウンドも大好きで、パーティ・ウイークエンドとか、ブエナとか、レッツ・ゲット・ブリティとかは、大のお気に入りでした。

 クラウンズのスモール・コンボ・スタイルも良いですが、こちらのオルケスタ(?)スタイルの演奏も素晴らしいです。

 エル・モリーノと名付けられたこのバンドの音は、最高のメンツによる、もう最高というしかないサウンドです。


 編成の肝は、ホーン陣で、テナー・サックスのロッキー・モラレス、ルイ・バストス、トランペットのチャーリー・マクバーニーのアンサンブルがとにくかく素晴らしいです。
 ホーン・アレンジは、チャーリー・マクバーニーが担当しています。
 チャーリーとロッキーは、とりわけこのバンドの要だと思います。

 一方、リズム隊は、ベースのスピーディ・スパークス、ドラムスのアーニー・デュラワ、リチャード・エリソンド、キーボードのオーギー・メイヤース、アルツロ・ゴンザレス、マリンバのアル・カストロ、そして、ジョー自身によるリズム・ギターからなっており、さらにアイク・リッターという人がリード・ギターを弾いています。

 その他、一部の曲では、さらにゲスト演奏者が入っていて、ゴージャス感たっぷりの編成です。

 多くの曲は、英語で歌われていますが、スペイン語を含む曲もあり、まず1曲目の Jalapeno Con Big Redからして、スペイン語で始まり、途中から英語になるという、黄金のバイリンガル・スタイルで歌われる、陽気なサンバです。

 続くMezcal Roadは、アコーディオンこそありませんが、コンフントによくある軽快なツービート・ナンバーです。
 全編とおして大活躍するホーン陣ですが、この曲やBlack Croudでは、特にトランペットが素晴らしく聴きものです。
 アイアイ、オイオイといった掛け声も楽しいです。、
 
 Tell Meは、ニューオリンズR&Bスタイルの曲で、三連ミディアムのリズムに、ロッキーのソロが最高です。
 そして、Rock Eate Nocheでは、マリンバのロールが美しく印象に残ります。

 また、Funky Buttは、ホーン・リフがメインのシャッフル・インストですが、リード・ギターが、パット・ヘアか、クラレンス・ホリマンかと言いたいような、スリリングなフレーズを連発して、思わず「おおっ」と声が出そうになります。

 Every Woman(Crazy About An Automobile)や、Just A Mile Awayでも、やはりリード・ギターが大活躍して、サザン・ロック風味のスライドを聴かせてくれます。
 Just A Mile Awayでは、ファーフィサ・オルガンが、脳内アドレナリンを活性化するような、反復ビートを奏でて、サー・ダグラス・クインテットを連想させます。

 そうです。
 メンツの名前を見て気付かれた方も多いと思いますが、エル・モリーノ・バンドは、ほとんどがダグ・サームの人脈に繋がる人たちなのでした。

 70年代終盤は、ダグ・サームが固定的なバンドでやっていなかった時期かも知れず、それがこのような名盤を生んだ大きな要因かも知れないな、などと私はひそかに思っています。

 彼らの多くは、その後も長く、折につけダグ・サームと活動を共にして、ダグが天に召された後は、この中から、ウエスト・サイド・ホーンズに参加した人も多いです。

 私は、ジョー・キング・カラスコが大好きですが、中でもこのアルバムは特別な存在で、もし1作だけを選べといわれれば、この作品こそ最高傑作であるといいたいです。 




これは素晴らしい!?
レアなスモール・コンボ編成のエル・モリーノ・バンドによるTell Meです。




回想のファイアドッグス

 テキサスは面白い。
 そう思わずにはいられません。
 70年代初め、アトランティックの伝説的プロデューサー、ジェリー・ウェクスラーは、オースティンで、ウイリー・ネルソン、ダグ・サームと契約し、さらにもう一組のアーティストに白羽の矢を立てていました。


Freda and the Firedogs

1.Make Me A Pallet
2.Cold Wind
3.When You Come Home Again
4.Your Good Girl's Gonna Go Bad
5.Dry Creek Inn
6.Fist City
7.Stand By Your Man
8.EZ Rider
9.The Only Thing Missing Is You
10.Jambalaya
11.Marcia's Song
12.Today I Started Loving You Again


 このアルバムは、音源が完成し、アトランティックのゴー・サインが出ていたにも関わらず、バンド側の躊躇により契約が見送られ、果ては機会を失って、ついにお蔵入りしたアルバムでした。
 
 ライナーによれば、本音源は、アトランティックの倉庫火災により焼失したと考えられていましたが、ウェクスラーが複製を保管していたことから、数十年ぶりの英断によりCD化されたものだそうです。
 こうして音を聴くことが適うようになった私たちは、この幸運に感謝しましょう。

 メンバーは、紅一点のフリーダこと、ピアノとボーカルのマーシャ・ボールと、ベースとボーカルのボビー・アール・スミスをフロントとして、ギターのジョン・X・リード、ドラムスのスティーヴ・マクダニエルズ、スチール・ギターのデイヴィッド・クックからなる5人組です。

 バンドの要だと思われるのは、フォーキーな自作曲を書くボビー・スミスで、彼の曲は、バンドの個性の大きな一端を形作っています。

 そして、ブルースに傾倒するピアニスト、マーシャ・ボールは、チャーミングさは控え目で、ひたすら姉御肌のボーカルを聴かせています。

 彼女はルイジアナ生まれのテキサス育ちだそうで、私たち日本人が、米国南部白人に期待するイメージどおりの音楽をやってくれます。

 本作でも、伝承的なブルースをレイジーに決めたかと思えば、一転、リズミックに古いホンキートンク・カントリーをやんちゃに弾き語ったり、かと思えば、大人の女性の心情を歌うカントリー・バラードをしっとりと歌い込んだりしています。

 フォーキーなボビー・スミスと、マーシャ・ボールのとても分かりやすいルーツに根差した音楽性の混在が、このバンドの最大の個性であり、売りだと思います。

 私にとっても、ブルースとカントリーを身内に共存させているミュージシャンが最大の好物です。

 私が大好きなジョン・フォガティとダグ・サームは、決して一括りになど出来ませんが、最大の共通項が、白人黒人を問わず米国南部産の音楽への深い傾倒であるのは言うまでも有りません。

 さて、収録曲ですが、ボビー・スミスの楽曲が、私にとっては謎の魅力があり、戸惑っています。
 カントリー・ロックと簡単にいいたくない、そんな独特の雰囲気があります。
 それは、ボビーの声質のせいもあるんでしょう。

 あくの強いダミ声でもなく、鼻にかかったホンキーなスタイルでもない、独立心と孤独というキーワードがうっすらと浮かんだりもしますが、語彙が少なく、決定的な言葉を見つけられない私は、しかたなく、ひたすらフォーキーと呪文のように言うほかないのでした。

 一方、マーシャ・ボールは、ブルースでは予想通りの渋さを展開していますが、カントリーのレパートリーが期待以上によくて、嬉しくなりました。

 タミー・ワイネットのスタンド・バイ・ユア・マンは、私は、ブルース・ブラザーズで出会い、キャンディ・ステイトンのディープ・ソウル盤を経て、最後にタミーのオリジナルに到達しました。

 この曲は、パフォーマンスの良しあしを超えて、私には何といっても、ジェイクとエルウッドです。
 こちらは、映像とのコラボで強烈に刷り込まれているので、印象の強さはピカイチなのでした。

 唐突ですが、obinさんが、ランディ・ニューマンのGood Old Boysを紹介されている記事を読みながら、私の頭に浮かんでいたのは、ブルース・ブラザースがホンキートンク・バーで演奏するシーンでした。
 くだんのバーで、約束の時間に遅れてきて、ブルース・ブラザースに出演のきっかけを作ったのが、グッド・オールド・ボーイズという名のカントリー・バンドでした。

 マーシャのバージョンは、伴奏も思いのほかよくて、曲のよさに後押しされていい雰囲気の仕上がりです。
 ロレッタ・リンの曲もやっているようですが、私は知らない曲でした。

 私がロレッタで一番好きなのは、"あたいの男に手を出すなんて10年早い"です。
 伝記映画「コールマイナーズ・ドーター」は、私のお気に入りの1作でした。

 さて、ライナーによれば、アルバム・デビューを逃したバンドは、数年後解散します。
 その後、マーシャ・ボールは、ソロ・シンガーとして成功し、近年もアリゲーターから作品をリリースしています。

 一方、ボビー・アール・スミスは、解散後ダグ・サームのバンドに加わったのち、アルヴィン・クロウとも活動をともにしたとのことです。

 このあたりは、ボビーの公式サイトにも同様のことが記載されていますが、私は、ダグ・サームとどの時期に一緒に活動していたのか、突き止められませんでした。
 あるいは、活動していたのは事実でも、レコーディングの機会には恵まれなかったのかも知れません。

 ダグのキャリアの中に、ボビーの痕跡を探していて、思いもかけず見つけた名前があります。
 ギターのジョン・リードです。
 彼は、アルマディロ・ヘッドクォーターのクインテットの同窓会ライヴに名前を連ねていました。
 また、テハス・デイムズでダグと共演したり、そこかしこに名前が散見していたように思います。
 
 そして、ダグの75年のオースティン・シティ・リミッツのライヴでは、スティーヴ・マクダニエルズがドラムを叩いているようです。
 
 ファイアドッグスは、解散後もダグ・サームと関連が深いと知って、一層親しみが増しました。


 
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