2011年01月22日
回想のファイアドッグス
テキサスは面白い。
そう思わずにはいられません。
70年代初め、アトランティックの伝説的プロデューサー、ジェリー・ウェクスラーは、オースティンで、ウイリー・ネルソン、ダグ・サームと契約し、さらにもう一組のアーティストに白羽の矢を立てていました。
1.Make Me A Pallet
2.Cold Wind
3.When You Come Home Again
4.Your Good Girl's Gonna Go Bad
5.Dry Creek Inn
6.Fist City
7.Stand By Your Man
8.EZ Rider
9.The Only Thing Missing Is You
10.Jambalaya
11.Marcia's Song
12.Today I Started Loving You Again
このアルバムは、音源が完成し、アトランティックのゴー・サインが出ていたにも関わらず、バンド側の躊躇により契約が見送られ、果ては機会を失って、ついにお蔵入りしたアルバムでした。
ライナーによれば、本音源は、アトランティックの倉庫火災により焼失したと考えられていましたが、ウェクスラーが複製を保管していたことから、数十年ぶりの英断によりCD化されたものだそうです。
こうして音を聴くことが適うようになった私たちは、この幸運に感謝しましょう。
メンバーは、紅一点のフリーダこと、ピアノとボーカルのマーシャ・ボールと、ベースとボーカルのボビー・アール・スミスをフロントとして、ギターのジョン・X・リード、ドラムスのスティーヴ・マクダニエルズ、スチール・ギターのデイヴィッド・クックからなる5人組です。
バンドの要だと思われるのは、フォーキーな自作曲を書くボビー・スミスで、彼の曲は、バンドの個性の大きな一端を形作っています。
そして、ブルースに傾倒するピアニスト、マーシャ・ボールは、チャーミングさは控え目で、ひたすら姉御肌のボーカルを聴かせています。
彼女はルイジアナ生まれのテキサス育ちだそうで、私たち日本人が、米国南部白人に期待するイメージどおりの音楽をやってくれます。
本作でも、伝承的なブルースをレイジーに決めたかと思えば、一転、リズミックに古いホンキートンク・カントリーをやんちゃに弾き語ったり、かと思えば、大人の女性の心情を歌うカントリー・バラードをしっとりと歌い込んだりしています。
フォーキーなボビー・スミスと、マーシャ・ボールのとても分かりやすいルーツに根差した音楽性の混在が、このバンドの最大の個性であり、売りだと思います。
私にとっても、ブルースとカントリーを身内に共存させているミュージシャンが最大の好物です。
私が大好きなジョン・フォガティとダグ・サームは、決して一括りになど出来ませんが、最大の共通項が、白人黒人を問わず米国南部産の音楽への深い傾倒であるのは言うまでも有りません。
さて、収録曲ですが、ボビー・スミスの楽曲が、私にとっては謎の魅力があり、戸惑っています。
カントリー・ロックと簡単にいいたくない、そんな独特の雰囲気があります。
それは、ボビーの声質のせいもあるんでしょう。
あくの強いダミ声でもなく、鼻にかかったホンキーなスタイルでもない、独立心と孤独というキーワードがうっすらと浮かんだりもしますが、語彙が少なく、決定的な言葉を見つけられない私は、しかたなく、ひたすらフォーキーと呪文のように言うほかないのでした。
一方、マーシャ・ボールは、ブルースでは予想通りの渋さを展開していますが、カントリーのレパートリーが期待以上によくて、嬉しくなりました。
タミー・ワイネットのスタンド・バイ・ユア・マンは、私は、ブルース・ブラザーズで出会い、キャンディ・ステイトンのディープ・ソウル盤を経て、最後にタミーのオリジナルに到達しました。
この曲は、パフォーマンスの良しあしを超えて、私には何といっても、ジェイクとエルウッドです。
こちらは、映像とのコラボで強烈に刷り込まれているので、印象の強さはピカイチなのでした。
唐突ですが、obinさんが、ランディ・ニューマンのGood Old Boysを紹介されている記事を読みながら、私の頭に浮かんでいたのは、ブルース・ブラザースがホンキートンク・バーで演奏するシーンでした。
くだんのバーで、約束の時間に遅れてきて、ブルース・ブラザースに出演のきっかけを作ったのが、グッド・オールド・ボーイズという名のカントリー・バンドでした。
マーシャのバージョンは、伴奏も思いのほかよくて、曲のよさに後押しされていい雰囲気の仕上がりです。
ロレッタ・リンの曲もやっているようですが、私は知らない曲でした。
私がロレッタで一番好きなのは、"あたいの男に手を出すなんて10年早い"です。
伝記映画「コールマイナーズ・ドーター」は、私のお気に入りの1作でした。
さて、ライナーによれば、アルバム・デビューを逃したバンドは、数年後解散します。
その後、マーシャ・ボールは、ソロ・シンガーとして成功し、近年もアリゲーターから作品をリリースしています。
一方、ボビー・アール・スミスは、解散後ダグ・サームのバンドに加わったのち、アルヴィン・クロウとも活動をともにしたとのことです。
このあたりは、ボビーの公式サイトにも同様のことが記載されていますが、私は、ダグ・サームとどの時期に一緒に活動していたのか、突き止められませんでした。
あるいは、活動していたのは事実でも、レコーディングの機会には恵まれなかったのかも知れません。
ダグのキャリアの中に、ボビーの痕跡を探していて、思いもかけず見つけた名前があります。
ギターのジョン・リードです。
彼は、アルマディロ・ヘッドクォーターのクインテットの同窓会ライヴに名前を連ねていました。
また、テハス・デイムズでダグと共演したり、そこかしこに名前が散見していたように思います。
そして、ダグの75年のオースティン・シティ・リミッツのライヴでは、スティーヴ・マクダニエルズがドラムを叩いているようです。
ファイアドッグスは、解散後もダグ・サームと関連が深いと知って、一層親しみが増しました。
そう思わずにはいられません。
70年代初め、アトランティックの伝説的プロデューサー、ジェリー・ウェクスラーは、オースティンで、ウイリー・ネルソン、ダグ・サームと契約し、さらにもう一組のアーティストに白羽の矢を立てていました。
Freda and the Firedogs
1.Make Me A Pallet
2.Cold Wind
3.When You Come Home Again
4.Your Good Girl's Gonna Go Bad
5.Dry Creek Inn
6.Fist City
7.Stand By Your Man
8.EZ Rider
9.The Only Thing Missing Is You
10.Jambalaya
11.Marcia's Song
12.Today I Started Loving You Again
このアルバムは、音源が完成し、アトランティックのゴー・サインが出ていたにも関わらず、バンド側の躊躇により契約が見送られ、果ては機会を失って、ついにお蔵入りしたアルバムでした。
ライナーによれば、本音源は、アトランティックの倉庫火災により焼失したと考えられていましたが、ウェクスラーが複製を保管していたことから、数十年ぶりの英断によりCD化されたものだそうです。
こうして音を聴くことが適うようになった私たちは、この幸運に感謝しましょう。
メンバーは、紅一点のフリーダこと、ピアノとボーカルのマーシャ・ボールと、ベースとボーカルのボビー・アール・スミスをフロントとして、ギターのジョン・X・リード、ドラムスのスティーヴ・マクダニエルズ、スチール・ギターのデイヴィッド・クックからなる5人組です。
バンドの要だと思われるのは、フォーキーな自作曲を書くボビー・スミスで、彼の曲は、バンドの個性の大きな一端を形作っています。
そして、ブルースに傾倒するピアニスト、マーシャ・ボールは、チャーミングさは控え目で、ひたすら姉御肌のボーカルを聴かせています。
彼女はルイジアナ生まれのテキサス育ちだそうで、私たち日本人が、米国南部白人に期待するイメージどおりの音楽をやってくれます。
本作でも、伝承的なブルースをレイジーに決めたかと思えば、一転、リズミックに古いホンキートンク・カントリーをやんちゃに弾き語ったり、かと思えば、大人の女性の心情を歌うカントリー・バラードをしっとりと歌い込んだりしています。
フォーキーなボビー・スミスと、マーシャ・ボールのとても分かりやすいルーツに根差した音楽性の混在が、このバンドの最大の個性であり、売りだと思います。
私にとっても、ブルースとカントリーを身内に共存させているミュージシャンが最大の好物です。
私が大好きなジョン・フォガティとダグ・サームは、決して一括りになど出来ませんが、最大の共通項が、白人黒人を問わず米国南部産の音楽への深い傾倒であるのは言うまでも有りません。
さて、収録曲ですが、ボビー・スミスの楽曲が、私にとっては謎の魅力があり、戸惑っています。
カントリー・ロックと簡単にいいたくない、そんな独特の雰囲気があります。
それは、ボビーの声質のせいもあるんでしょう。
あくの強いダミ声でもなく、鼻にかかったホンキーなスタイルでもない、独立心と孤独というキーワードがうっすらと浮かんだりもしますが、語彙が少なく、決定的な言葉を見つけられない私は、しかたなく、ひたすらフォーキーと呪文のように言うほかないのでした。
一方、マーシャ・ボールは、ブルースでは予想通りの渋さを展開していますが、カントリーのレパートリーが期待以上によくて、嬉しくなりました。
タミー・ワイネットのスタンド・バイ・ユア・マンは、私は、ブルース・ブラザーズで出会い、キャンディ・ステイトンのディープ・ソウル盤を経て、最後にタミーのオリジナルに到達しました。
この曲は、パフォーマンスの良しあしを超えて、私には何といっても、ジェイクとエルウッドです。
こちらは、映像とのコラボで強烈に刷り込まれているので、印象の強さはピカイチなのでした。
唐突ですが、obinさんが、ランディ・ニューマンのGood Old Boysを紹介されている記事を読みながら、私の頭に浮かんでいたのは、ブルース・ブラザースがホンキートンク・バーで演奏するシーンでした。
くだんのバーで、約束の時間に遅れてきて、ブルース・ブラザースに出演のきっかけを作ったのが、グッド・オールド・ボーイズという名のカントリー・バンドでした。
マーシャのバージョンは、伴奏も思いのほかよくて、曲のよさに後押しされていい雰囲気の仕上がりです。
ロレッタ・リンの曲もやっているようですが、私は知らない曲でした。
私がロレッタで一番好きなのは、"あたいの男に手を出すなんて10年早い"です。
伝記映画「コールマイナーズ・ドーター」は、私のお気に入りの1作でした。
さて、ライナーによれば、アルバム・デビューを逃したバンドは、数年後解散します。
その後、マーシャ・ボールは、ソロ・シンガーとして成功し、近年もアリゲーターから作品をリリースしています。
一方、ボビー・アール・スミスは、解散後ダグ・サームのバンドに加わったのち、アルヴィン・クロウとも活動をともにしたとのことです。
このあたりは、ボビーの公式サイトにも同様のことが記載されていますが、私は、ダグ・サームとどの時期に一緒に活動していたのか、突き止められませんでした。
あるいは、活動していたのは事実でも、レコーディングの機会には恵まれなかったのかも知れません。
ダグのキャリアの中に、ボビーの痕跡を探していて、思いもかけず見つけた名前があります。
ギターのジョン・リードです。
彼は、アルマディロ・ヘッドクォーターのクインテットの同窓会ライヴに名前を連ねていました。
また、テハス・デイムズでダグと共演したり、そこかしこに名前が散見していたように思います。
そして、ダグの75年のオースティン・シティ・リミッツのライヴでは、スティーヴ・マクダニエルズがドラムを叩いているようです。
ファイアドッグスは、解散後もダグ・サームと関連が深いと知って、一層親しみが増しました。
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投稿者:エル・テッチ|02:16|テキサス・ミュージック
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