アフィリエイト広告を利用しています

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

メープル・シロップ テキサス風味

 しかし、このバンド名でカナダって、どういうことなんでしょう。
 最初は、普通にテキサスのバンドだと思ってチョイスしました。

 今回は、カナダのテキサス音楽好き(?)のバンドをご紹介します。


Southern Exposure
The Texicanos

1. If You Were Not Born in Texas (Roger Arndt, Susan Hillman)
2. Dinero (Augie Meyers)
3. It Feels Like Forever (Lowry Olafson)
4. Mexico...Whatcha Doin' To Me (Roger Arndt, Susan Hillman)
5. Feelin' Kinda Lonely Tonight (Jamie O'Hara)
6. Heartaches Over Ice (Roger Arndt, Susan Hillman)
7. Do You Wanna Boogie Woogie (Roger Arndt)
8. Hestia's Waltz (Roger Arndt, Susan Hillman)
9. Rancho Grande (trad. arr. Roger Arndt)
10. Querencia (Roger Arndt)
11. Dark Days (Roger Arndt)
12. Ghost Riders in the Sky (Stan Jomes)

 「テキシカーノ」って、何か造語ですかね。
 これで、テキサン・カナディアン(そんな概念があるとして)とは解せないと思うんですが…。

 ウェブからの限られた情報によれば、本盤の主役たちは、カナダのブリティッシュ・コロンビア州あたりを本拠とするバンドではないかと思います。

 本盤は、同州のボーエン・アイランドで録音され、05年にリリースされました。

 本作に参加したメンバーは、以下のとおりです。

Roger Arndt : lead vocals, guitars, fiddle, banjo, accordion, bajo sexto
Ruby Red : bass, lead vocal on track8,12
Richard Baker : guitars, bass on track12
Kendra Arndt : lead vocal on track6
Alex Alegria : vocals on track2,9, spanish translations
Ron Thompson : lead guitar on track7,9, 6-string banjo on track8
Michael Creber : piano on track7
Bruce Hamilton : peddle steel on track1,6
Moritz Behm : ghost fiddle on track8

 このうち、リード・ボーカルで、多くの楽器を持ち替えて演奏するバンド・リーダー、Roger Arndtは、カナダ生まれながら、サンアントニオでの居住経験がある人で、なんとベトナム戦争の退役軍人らしい(?)です。
 生年がわかりませんが、それなりの年齢ですね。
 このバンドが、テキサスの音楽を愛好するのは、この人によるんでしょう。

 しかし、ベトナム戦争のとき兵役を回避するため、アメリカからカナダへ渡った若者がいたという話がありますが、逆に派兵しなかったカナダから、わざわざ米国軍に従軍し、さらに遠い異国で戦ったというのは、サンアントニオにいた時期が、彼の人生によほど大きな影響を与えたのでしょうか。

 このRogerと、英国生まれの女性ベーシスト、Ruby RedことSusan Hillmanがバンドの中心メンバーではないかと思われます。

 あと、ギターのRichard Bakerは、カナダの有名な(私は知りませんが…)Doug and the Slugsというロック・バンド出身らしいです。



 本盤は、1曲目から、ごきげんなボブ・ウィルズ・スタイルの正調ウエスタン・スイングで始まります。
 この曲の印象はかなり強いです。
 ウエスタン・スイング好きの私は、一発で気に入りました。

 そして、続いて演奏されるのは、Augie Meyersの作品、"Dinero"です。
 "Money"を意味するスペイン語です。
 歌詞の内容は分かりませんが、陽気なパーティ・チューンです。
 この曲のクレジットには、"A tribute to the Texas Tornados"と添え書きがされています。

 この曲のAugie Meyers自身のバージョンは、90年のTexas Tornadosの1stで初めて発表されました。
 その後、96年のAugieのソロ・アルバム、"Alive And Well At Lake Taco"で再演されています。
 (Texas Tornadosの2枚のライヴ盤でも聴くことができます。)

 この最初の2曲の流れこそ、私がこのアルバムに惹きこまれた理由です。
 アコースティック・スイングっぽいアルバムといえるかも知れません。

 哀愁漂うフォーキーな曲から、正調ホンキートンク・カントリーまでが展開するなか、アルバムのアクセントとなっているのは、7曲目の"Do You Wanna Boogie Woogie"です。

 これは、ウキウキ感満点に快調に飛ばすカントリー・ブギで、モダンさを醸し出すローリン・ピアノが最高にはまっています。
 ジャジーなトーンでスイングするエレキ・ギターのソロもごきげんです。
 コディ司令の失われた惑星の空挺楽団を思い出します。

 トラッドの"Rancho Grande"や、"Ghost Riders in the Sky"も決まっています。
 "Rancho Grande"は、ポップス風の味付けがされていて、Freddy Fenderのバージョンに近いスタイルでやっています。

 今の所、本盤以降のリリースは不明ですが、もう少し聴いてみたいと思わせるバンドです。



La Bamba by The Texicanos







バッパビリー・スイング

 アコースティック・スイングって、最近とんと話題を聞かないんですが、私が情報にうといだけでしょうか?
 まあ、レココレとかも、気になる記事がないと立ち読みで済ましちゃう人なので、世間知らずかも知れません。

 かつて、鈴木カツさんや宇田和弘さんが著作のタイトルに使ってたりして、それなりに用語として露出していた時期もありましたが、さほど高まることもなく沈静化したんじゃないか、というのが私の印象です。

 当時は、ジョン・ミラーとか、ルウ・ロンドンとか、私の嗜好に合っていたのでしょう、随分と感化されたものでした。

 でも、言葉の流行り廃りとは関係なく、音楽は存在します。
 ジャネット・クラインなど、それなりに話題になっている人がいても、グッドタイム・ミュージックとか、単に別の名前で呼ばれていることもありますよね。

 アコースティック・スイングでも、グッドタイム・ミュージックでもいいのですが、そういった言葉から自由にイメージしてください。
 今回は、そんな(?)アルバムです。

 

Bop-A-Billy Swing !
Recorded Live !
Beats Walkin'

1. Lady Be Good (Gershwin)
2. Suger Moon (Wills, Walker)
3. My Window Faces The South (Livingston, Silver, Parish)
4. Straight, No Chaser (Monk)
5. Eating Right Out of Your Hard (Bass) 
6. Honeysucle Rose (Waller, Razaf)
7. Old Fashioned Love (Mack, Johnson)
8. Route 66 (Troup)
9. Wonderful World (Welss, Thiele)
10. Heart of a Clown (Nelson, Rollins, Kane)
11. Choo Choo Ch'Boogie (Horton, Gabler, Darling)
12. Goin' Away Party (Walker)
13. Reckon I'm a Texan Till Die (Wood, Butler)
14. House of Blue Lights (Jacobs)

 Beats Walkin'というバンドをご紹介します。

 まあ、バンドというより、グループと呼びたい感じですね。
 ボーカルは若々しく、艶もありますが、ジャケ裏の写真を見る限り、かなり年配のメンツで構成されているようです。

 基本のメンバーは4人で、ギター、ベース、スチール・ギター、ドラムスという編成です。
 さらに、本盤では、サックスとフィドルがゲスト参加しています。

 メイン・ボーカルは、ギターの女性とドラムスの男性が分け合っている感じですが、ほかの2人もそれぞれ1曲づつリード・ボーカルをとっています。
 詳細は、以下のとおりです。

Wendi Bourne : guitar, vocals on tracks 1,2,6,8,10,12
Jim Cohen : pedal steel guitar, match-bro, vocals on tracks 5
Bob Lewis : bass, vocals on track 11
Chuck Lindsey : drums, vocals on tracks 3,7,9,14
guest :
Troy Corley : tenor saxophone
Joel Glassman : fiddle

 本盤は、01年のフィラデルフィア公演のライヴ録音で、02年にリリースされました。
 彼らは、どうやらペンシルバニア州出身らしいこと、この前にもう1枚アルバム(97年)があること、このグループの情報は、ほとんどこれが全てです。

 私は、ジャズについてはほとんど門外漢ですが、セロニアス・モンクくらいは知っています。
 まあ、「ラプソディ・イン・ブルー」(だけ)を知っている程度ですから、ごくごく普通のレベルです(?)
 トラック4のインスト、"Straight, No Chaser"は、初めて聴きました。
 「ラプソディー」とは全くイメージが違う曲ですね。

 そして、ファッツ・ウォーラーも同様です。
 "Honeysucle Rose"は、有名だと思いますが、やはり曲名は知っているけれどメロと一致しない、そんな程度でした。
 ここでは、スチール・ギターが主役になって頑張っています。

 さて、本盤には、作者がWalkerとなっている曲が複数収録されています。
 "Suger Moon"と"Goin' Away Party"がそうです。
 これらは、いずれもCindy Walkerのことで、ヒルビリー〜ホンキートンク時代の人気女性コンポーザーです。
 多くのシンガーに曲を提供していますが、私にとっては、Bob Willsの名作をいくつも書いた人として大好きな人です。

 "Suger Moon"では、そのBob Willsとの共作名義になっています。
 当然、Bob Wills & His Texas Playboysのレパートリーです。

 カバーでは、Asleep At The Wheel盤がお奨めです。
 ライヴ盤でもやっていました。
 ジャジー、かつレイジーな雰囲気を持つ曲で、いかにもRay Bensonが好きそうな曲です。
 本盤では、軽快で楽しげなアレンジでやっています。

 "Goin' Away Party"は、多分初めて聴く曲で、原曲は知りません。
 ライナーには、レスリー・ゴアからインスパイアされて書かれた曲、みたいなことが書かれています。
 でも、レスリー・ゴアって、ぶりぶりの60sアメリカン・ポップスのイメージですよね。
 ここで言われているのは、やはり代表曲の"It's My Party"なんでしょうか?
 曲名からいってそんな感じですよね。
 "It's My Party"のアンサー・ソングですか(?)
 でも、こちらはバラードなのでした。

 余談ですが、Willie Nelsonが、Cindy Walkerの曲ばかりを歌ったアルバムを出しています。
 結果的に、Bob Willsのレパートリー中心の選曲になっていました。

 そのBob Willsは、本盤でも主役級の扱いです。
 このBeets Walkin'というバンドは、ジャズ小唄的な曲とBob Willsが好きなんだと思います。
 "My Window Faces The South"と"Old Fashioned Love"の2曲が、Bob Willsの有名曲のカバーです。

 とりわけ、"My Window Faces The South"は、多くのカバーがある人気曲です。
 ロック・ファンには、Commander Cody & His Lost Planet Airmen盤がお奨めですが、もちろん、Asleep盤もよいです。
 この曲は、誰がやっても外れなしの名曲だと思います。

 "Old Fashioned Love"は、知名度ではかなり劣りますが、これも良い曲です。
 スリー・ドッグ・ナイトの大ヒット曲は、"Old Fashioned Love Song"で別の曲です。

 "Old Fashioned Love"は、元は古いジャズのピアノ・インストかも知れません。
 いつの時点かで、誰かヒルビリー系歌手が歌詞を付けて、この形にしたのではないかと思います。
 でも、オリジナルはともかく、やはりこの曲はBob Wills盤が最高です。
 Bob Willsのヒット盤は、47年にリリースされています。
 この曲は、マール・ハガードも、Bob Willsのトリビュート・アルバムで演っていました。

 その他、ルイ・ジョーダンの"Choo Choo Ch'Boogie"や、定番の"Route 66"まで、いずれも小粋で軽快なボーカルで、おしゃれかつ爽やかに歌っています。
 曲によっては、男女ボーカルのかけあいなどもあり、マンハッタン・トランスファーを連想させたりもします。

 "Choo Choo Ch'Boogie"では、スチール・ギターが列車の走りの爽快感を、サックスが力強く邁進するさまを表現しています。

 かと思えば、サッチモの"Wonderful World"では、ほとんど直球勝負でうっとり歌いあげていて、サッチモを意識しつつも、過度なダミ声になって物まねになりそうなのをこらえています。

 ラストは、これまた定番の"House of Blue Lights"で締めです。
 ロックンロール・ファンには、もちろんChuck Berry盤ですね。
 原曲はよく分かりませんが、ヒルビリー・ブギ・ピアニストのメリル・ムーア盤がポピュラーにした曲だと思います。
 メリル・ムーアは、ムーン・マリカンとともに、ジェリー・リー・ルイスのお手本になった人です。

 もちろん、Jerry Lee Lewisもやっていて、その他、Commander Cody & His Lost Planet Airmen盤、Asleep At The Wheel盤もあります。
 Chuck Berry直系では、George Thorogood盤もあり、ちょっとラウドてすが聴きものです。
 本盤では、少しテンポをゆったりめにして、リラックスした雰囲気でやっています。

 レパートリーから、全体的にカントリー寄りかと思われるかも知れませんが、意外とカントリー臭は希薄で、特にスチール・ギターのサウンド、フレーズにそれを感じます。
 ピアノレスにも関わらず、モダンな雰囲気を感じさせる、大人のサウンドに仕上がっています。

 ロッキン・サウンドはもちろんいいですが、たまにはスインギーというのもいかがでしょうか。




My Window Faces The South by Beats Walkin'




San Antonio Rose 〜 Hey Good Lookin' 〜 
Don't Fence Me In 〜 Smoke! Smoke! Smoke! 〜 etc etc…
by Beats Walkin'


あれっ MCでテキサス・スイング・バンドって紹介されてますね?



関連記事はこちら

ぼくんちの窓は南向き
シンディ・ウォーカー20選
バディ、ボブを歌う
最後のときに
テキサスのご婦人方
オースティン音楽バンド


シンディ・ウォーカー20選

 これは、予想外にしっとりとしたアルバムでした。
 Bob Wills & The Texas Playboysの最後期のリード・ボーカリストだった、Leon Rauschが、Cindy Walkerの楽曲を歌ったアルバムです。

 Cindy Walkerは、ホンキートンク・カントリーの最も重要な女性ソングライターの一人で、多くのシンガーに曲を提供していますが、何と言ってもBob Willsのレパートリーへの貢献度が高い人です。



Close To You
A 20 Song
Salute To The Music Of Cindy Walker Vol.1
Leon Rausch

1. Close To You
2. That Would Sure Go Good
3. In The Misty Moonlight
4. Hotline
5. The Little Blue Bonnet Bar
6. Ruidoso
7. You Don't Know Me
8. You're From Texas
9. I'm A Music Man
10. Bubbles In My Beer
11. Inseparable From My Heart
12. The Day You Left Me
13. I Don't Care
14. Tucumacari Woman
15. Take Me In Your Arms And Hold Me
16. Don't Be Ashamed Of Your Age
17. The Heebee Jeebee Blues
18. China Doll
19. Two Glasses, Joe
20. On Silver Wings To San Antone

 Cindy Walkerは、初期には自らシンガーとして録音していますが、私の聴いた限りでは、ソングライターとしての方が才能があった人だと思います。

 本盤は、90年代の終わり頃にリリースされたと思われ、バンドには、元Texas Playboysの残党たちが参加しているのではないかと思います。
 実質的には、Leon RauschとTommy Allsupを中心に組まれたプロジェクトのようです。

 ギター、フィドル、ラップ・スチール、ドブロ、ピアノ、アコースティック・ベース、ドラムス、トランペット、トロンボーン、クラヴィネットからなる編成です。
 ビッグ・バンド編成ですが、エレキ・ギターのロッキン・ソロといった、ネオ・スイングに定番の見せ場はなく、とてもおしゃれな大人のサウンドに仕上がっています。

 ホーン陣も基本はミュート・サウンドで、ブリブリのブロウなど一切なく、小粋なフレーズがおしゃれ度に貢献しています。
 最近、活字媒体であまり見かけなくなりましたが、少し前に話題になった、アコースティック・スイングを思わせるサウンドです。

 Bob Willsの音楽は、徹底したダンス・ミュージックでしたが、彼は自らの音楽をウエスタン・スイングとは呼ばす、しばしばカントリー・ジャズと呼んでいました。
 本盤では、ジャズの楽曲こそやっていませんが、その落ち着いたたたずまいは、ジャジーな雰囲気も感じます。

 Asleep At The Wheelのリーダー、Ray Bensonが、ソロ作でジャジーなボーカル・アルバムを作ったことを思い出します。
 ちなみに、Asleepつながりで言いますと、本盤にはゲストの一人として、初期のAsleepの女声ボーカリスト、Chris O'Connellが、コーラスで参加しています。

 さて、中身を聴いていきましょう。
 ざっと曲目を眺めて、驚きました。
 ほとんど知っている曲がありません。

 Bob Willsの楽曲の作者として、しばしば名前を見かけたはずなのですが、ここに収録されている曲で、すぐに思いつくのは、"You're From Texas"、"Bubbles In My Beer"くらいです。

 このあたりは、MGM時代のBobのレパートリーでしょうか。
 だとすれば、40年代ですね。
 そして、"You Don't Know Me"は、よく知っている曲ですが、これはBob Willsでしたっけ?

 馴染み深い曲ばかりと思っていたので、改めて確認したこのラインナップは驚きです。
 こんなにも未知の曲ばかりとは…。
 でも、もしかすると、過去に聴いてあまり印象に残っていなかっただけで、聴いた曲があるのかも知れません。

 本盤は、私に眼を洗うような清々しい感覚を与えてくれました。
 とにかく、優れた作品がたくさん入っています。
 (あえて1曲だけあげるとすると、美しくも軽妙なワルツ、"China Doll"が最高です。)

 今回私は、Cindy Walkerには、私の知らない素晴らしい曲が、まだまだたくさんあることを知って、心から嬉しくなりました。
 本盤で新たにお気に入りとなった曲たちは、じっくりとオリジナルを探したいと思いだしています。

 Cindy Walkerのトリビュート・アルバムは、Willie Nelsonも作っていて、そちらは、実質的にはBob Willsのレパートリー中心の作品集でした。
 Cindy Walker集の名を借りた、アナザー・Bob Wills名作選とでもいうべき作品集に仕上がっていたのです。
 近年のWillieの仕事では、特に好きな1枚です。 

 ともかく、本盤は良いです。
 ただ、若い人たちには、のどかなサウンドがもどかしいかも知れません。
 ロック・ファンには、毒もなく、攻撃性のかけらも感じられないないことに、退屈される方もいることと思います。
 しかし、私も10代から20代初めには、レアなロカビリーばかり探して聴いていたものでした。

 そんな私が、今ではいっぱしのおじさんになって、日向ぼっこソング好きになっています。
 (私は、Kinksのお昼寝ものやティータイム・ソングが大好きです。)

 曲調が攻撃的でないからといって、刺激がないわけではありません。
 私は、本盤を聴いて、心豊かな気持ちにさせられました。

 ウエスタン・スイングに関心がある方には、ぜひ推薦したい1枚です。
 ただし、Asleepのように、ジャンプやブギはやっていません。
 私は、Bob WillsとLouie Jordanは、同じコインの裏表だと思っていますが、ここで聴けるのは、オールド・タイムの要素が勝ったサウンドです。

 なお、本盤は、Vol.1となっていますが、Vol.2が出たのかどうか私は知りません。
 Leon Rauschは、近年、Asleep At The Wheelとの共演盤を作って、元気な歌声を披露してくれました。
 当然、そちらも推薦盤です。

 就寝前に、寝床に文庫本を持ち込んで、好きな文章を追いながら、流しっぱなしにしたい、そんな音楽です。



It's A Good Day by Leon Rausch and Asleep At The Wheel




関連記事はこちら

まるごとパブ・ロック
ロッキン・レオンのふるさと


 

酒とあの娘とほら話

 今、私はとてもほっこりとしています。
 それは、このアルバムを聴いたからです。

 この「ほっこり」というのは、標準語でしょうか。
 私は、関西圏なので、書いた後、ついこれで通じているのかな、などと思ってしまいます。
 私がここで感じたのは、「ほっと落ち着いて、おだやかな気分になり、くつろいでいる」くらいのニュアンスです。


Lived That Song Before
Aaron Wendt
 

1. Drinkin' 2B Drinkin' (Aaron Wendt)
2. That's Your Memory (Aaron Wendt)
3. The Dog Song (Aaron Wendt)
4. Outlaw (Aaron Wendt)
5. Honkytonks, Nightclubs, Bars and Dives (M.Hodges)
6. Lived That Song Before  (Aaron Wendt)
7. Swim Up Bar (Aaron Wendt)
8. Yellow-Haired Rose of Texas (Aaron Wendt)
9. I Like Texas  (Aaron Wendt)
10. Slow Pouring Tequila (Aaron Wendt)
11. Don't Cry a Tear  (Aaron Wendt)

 初めて聴くアーティストです。
 本盤は、10年にリリースされたもので、テキサスのシンガー、ソング・ライター、Aaron Wendtの1stアルバムになります。

 いきなり余談ですが、Wendtという姓はどちら方面の姓で、なんと発音するのでしょう。
 語尾が「dt」で終わる姓というと、私は、リンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)くらいしか思いつきません。
 彼女は、マリアッチのアルバムを出して、ルーツに向き合っていましたね。

 ロンシュタットという日本語表記が、必ずしも正しいとはいえないですが、これにならえば、dは発音せず、本盤の主人公は、アーロン・ウェントさんでしょうか。
 一方、ファースト・ネームのAaronは、私の思い込みでは、フランスっぽい臭いがしますね。
 興味深いです。

 さて、音楽の傾向ですが、ざっくりとWestern Swingと言ってしまいましょう。
 アクースティック度の高いホンキー・トンク・カントリーでもいいかもしれませんが、聴いて受ける印象はウエスタン・スイングです。

 バンドの編成は、ギター、べース、ドラムス、スチール・ギター、フィドルなどを基本として、曲によっては、バンジョー、マンドリン、ピアノ、アコーディオンなどが追加されます。
 主人公のAaron Wendtは、ボーカルとリズム・ギターです。

 ホーンレスのウエスタン・スイング・バンドと言うのが一番イメージがわきやすいでしょう。
 アクースティック・スイングに近いですが、編成だけでなく曲調としてもジャズ性があまりなく、そのレパートリーは、ホンキートンク・カントリー、カウボーイ・ソングが主体で、ごくわずかにTex-Mexも含まれています。

 私は、ウエスタン・スイングとは、ざっくり言えば、カントリー・バンドに、ジャズのビッグ・バンド編成を取り入れたものだと思っていますが、その定義からは外れていますね。
 でも、聴いた印象は、ほんわかムードのウエスタン・スイングなのでした。

 ホーンが入っているバンドでは、しばしばジャンプやブギが演奏されますが、このバンドではそういった要素が薄いです。
 ピアノもゲスト扱いですので、モダン性も低めで、全体から受ける印象はカントリー度が高いです。

 2曲目の"That's Your Memory"で、女性シンガーがデュエットしますが、これがまた、オールド・スタイルのシンガーで、古いヒルビリーのような懐かしさを感じました。
 キュート路線、鉄火肌路線のいずれでもないですが、魅力的です。

 実際、トラック5で初めてエレキ・ギターが登場するまで、完全なアクースティック・バンドかと思っていました。
 ここで登場したエレキ・ギターが、思いのほか普通にノリノリのロッキン・スタイルだったので、かえって驚いたくらいです。
 本盤で唯一のジャンプ系のブギウギ曲で、快調なスイング感が理屈抜きに楽しいです。
 ピアノもごきげんに跳ねています。

 とはいえ、特に前半のメインは、スチールやフィドルの流麗なサウンドをバックにした、ゆったりとしたワルツや、トロットのようなリズムの曲で、ひたすら和みます。
 曲は、酒、可愛い女、ならず者、一攫千金、武勇伝などなどの、ほら話が歌われているではないかと思います。

 アルバム後半になると、ロッキン度、モダン度が増して、タイトル曲の"Lived That Song Before"などは、John Fogertyが書きそうなカントリー・ロックという感じです。 

  そして、"I Like Texas"では、再度懐かしい古いスタイルのホンキー・トンク・カントリーの世界に誘われ、酔わされます。
 この曲の途中で、不意にブレイクが入って、"Sunshine Of Your Love"の印象的なフレーズが一瞬だけ出てくる箇所があり、眼が覚めます。
 何か意味があるんでしょうか?
 出来れば歌詞を聴き取りたいものです。 

 "Slow Pouring Tequila"は、いきなりメキシカン・スタイルのトランペットで始まり、驚きます。
 (唯一この曲のみ、管楽器が入ります。)
 さらに、アコーディオンが入り、巻き舌での「ルルルー、アイ、アイ、アイ」といった囃子言葉が出てきます。
 Tex-Mexの香りが漂うというか、もはやメキシコという感じですが…。
 アルバムも終わり近くになってのサプライズ・アクセントでした。

 そして、ラストは、フォーキーなカントリー・ロック調の曲で、静かに終了します。

 当初は、穏やかでアンプラグドなウエスタン・スイングだけなのかと思いましたが、実は随所にアクセントが盛り込まれた、最後まで飽きさせない、(意外にも)バラエティに富んだ内容なのでした。

 次作にも期待です。









スタンダード・タイム

 私は、Asleep At The Wheelが好きです。
 今回は、2枚目に買ったAsleepのアルバムで、私を決定的にAsleep好きにさせたアルバムです。


Western Standard Time
Asleep At The Wheel

1. Chattanooga Choo Choo (M.Gordon, H.Warren)
2. Don't Let Go (J.Stone)
3. Hot Rod Lincoln (C.Ryan, W.S.Stevenson)
4. That's What I Like 'Bout The South (A.Razaf)
5. That Lucky Old Sun (Just Rolls Around Heaven All Day) (H.Gillespie, B.Smith)
6. Walk On By (K.Hayes)
7. San Antonio Rose (B.Wills)
8. Roly Poly (F.Rose)
9. Sugarfoot Rag (H.Garland, V.Horton)
10. Walking The Floor Over You (E.Tubb)

 Asleepは、Louie Jordanのカバー、"Choo Choo Ch Boogie"で最初の成功を得ましたが、彼らにさらに大きな成功をもたらしたのが、Bob Willsのトリビュート盤でした。
 これは、発表当時の人気カントリー・シンガー多数をゲストに迎えて制作されたもので、その後続編も制作され、そちらも大変評判になりました。

 今回とりあげるアルバムは、そういったAsleepの企画盤のはしりとなったものではないかと思います。
 それまでのアルバムでは、リーダーのRay Bensonのオリジナルを中心に、Bob Willsや古いカントリーのカバーをうまく交えた構成になっていました。

 本作は88年にEpicからリリースされたもので、タイトルにあるように、ホンキートンクや、ウエスタン・スイングのスタンダード集になっています。
 当時のメンバーは以下の通りです。

Ray Benson : guitar, lead vocals, 6string bass
Larry Franklin : fiddle, guitar, vocals
Tim Alexander : piano, vocals
John Ely : fender hawaiian steel guitar, pedal steel guitar
David Sanger : drums
John Mitchell : bass on "Sugarfoot Rag"
Mike Francis : saxophone

 また、ゲストとして、常連のJohnny Gimbleがフィドルで、元メンバーのChris O'Connelがコーラスて参加しているほか、" Chattanooga Choo Choo"では、Willie NelsonがRay Bensonとデュエットしています。

 このアルバムは、いい曲だらけですね。
 まずは、ビッグ・バンド・スイング・ジャズの名曲、"Chattanooga Choo Choo"でスタートします。
 そして、ジェシ・ストーン作の" Don't Let Go"へと続きます。
 この曲は、一聴するとカントリー・スタンダードかと思いがちですが、もとはRoy HamiltonのR&Bが原曲です。
 ここでは、レイによるロッキン・ギターのリックがかっこいいです。

 ロッキン・ギターといえば、次の"Hot Rod Lincoln"です。
 Lincolnというのは、車のリンカーンのことだと思って聴いているのですが、間違いであればご指摘ください。
 ここでも、レイがイントロからトワンギーなプレイをかっ飛ばしており、速弾きもあって聴かせます。
 オリジナルは、Johnny BondかRoger Millerあたりではないかと思います。

 ロック系では、Commander Cody & his Lost Planet Airmen盤があり、Asleepは彼らの影響を強く受けているため、まずLost Planet Airmen盤がお手本であるとみて間違いないでしょう。
 Lost Planet Airmen盤でギター(及びボーカル)を弾いていたのは、Bill Kirchenでした。
 彼は、ソロでもこの曲をレパートリーにしています。

 "That's What I Like 'Bout The South"、"San Antonio Rose"、"Roly Poly"は、いずれもBob Willsのレパートリーです。
 すべて傑作だと思います。
 "That's What I Like 'Bout The South"は、Commander Cody & his Lost Planet Airmenによる素晴らしいバージョンがあり、Asleep盤は、やはりそちらがお手本だと思います。
 "San Antonio Rose"と"Roly Poly"は、何度も吹き込むことになるRayのお気に入りです。 
 Bob Willsのトリビュート盤では、真っ先にカバーしていました。

 "That Lucky Old Sun (Just Rolls Around Heaven All Day)"は、ジャズ・スタンダードだと思いますが、Rayがダンディかつ誠実感あふれる美声を披露しています。
 Asleepは、時折りこの手の曲をやっていましたが、私は、後にRayが出したソロ作を聴いて、いかにこの手の音楽がRayの中で大きな位置を占めるのか、改めて気づかされました。
 
 "Walk On By"もまた名曲です。
 原曲は不明ですが、ろうろうと伸びのある声で歌うさまが気持ちいいです。
 ポップスでは、コニー・フランシス盤がお奨めです。
 
 ラストの"Walking The Floor Over You"は、ホンキートンクのスタンダードですね。
 アーネスト・タブを代表する名曲だと思います。
 タブは、鼻にかかった声や、語尾のイントネーションの感じなど、多くの後輩カントリー・シンガーの唱法のお手本になった人だと思います。
 "Walking The Floor Over You"は、明るいメロディと快調なテンポが気持ちいい曲です。
 原曲でも既にロッキン・ギターの萌芽を聴くことができます。

 Asleepは、このあとAristaと契約しますが1枚をリリースしただけで、Livertyへ移籍します。
 そして、93年に"A Tribute to the Music of Bob Wills & the Texas Playboys"をリリースしたのでした。
 このBob Willsのトリビュート盤は、Asleepにとってキャリアを代表するアルバムになりました。
 さしずめ、Asleep版「永遠の絆」といったところでしょうか。

 私は、"Western Standard Time"が契機のひとつとなって、Bob Willsのトリビュート盤へと繋がったのではないかと考えています。


Walk On Byです。




関連記事はこちら

果てしなく広大な道をゆく
クリスマスはテキサスで陽気に
スウィンギン・クリスマス
アスリープ、大きくホップする
うたたね運転の旅立ち




テキサスの腕利き野郎ども

 とても良かったです。
 この人を聴くのは初めてですが、長く活動していたシンガーのようです。
 このアルバムは、Asleep At The WheelのRay Bensonともう一人の制作で、96年にリリースされました。


Texas Top Hand
Don Walser

1. Texas Top Hand (Ray Benson, Don Walser)
2. Tumbling Tumbleweeds (Bob Nowlin)
3. Whose Heart Are You Breaking Now (Floyd Jenkins)
4. Wine Me Up (Faron Young, Billy Deaton)
5. Weary Blues From Waiting (Hank Williams)
6. Signposts Of Life (Don Walser)
7. You Walk By (Don Walser)
8. Divorce Me C.O.D. (Merle Travis)
9. Whispering Pines (Mahlon Merrick)
10. Mexicali Rose (Jack Tenney, Helen Stone)
11. Big Blue Diamonds (Earl 'Kit' Carson) 
12. Danny Boy (Trditional)

 ジャンル分けすれば、ウエスタン・スイングになると思いますが、このDon Walserという人には、他のシンガーと違う大きな特徴があります。
 それは、彼がJimmie Rodgersのような、ブルー・ヨーデラーだということです。

 ボーカルは、テナー〜バリトンですが、カントリーによくある鼻にかかった歌い方は控えめで、朴訥とした、何ともオールドタイミーな雰囲気を持った歌いくちが魅力的な人です。

 やっているレパートリーのせいもあるのでしょうが、私は、ドック・ワトソンを連想しました。
 また、伝統的なホンキートンク・ナンバーでの歌声からは、Johnny Bushを思い出します。

 本作は、95年にオースティンで録音されました。
 主要なレコーディング・メンバーは以下のとおりです。

Don Walser : Vocals
Johnny Gimble : Fiddle
Jason Roberts : Fiddle
Cindy Cashdollar : Lap Steel, Weissenborn
Lucky Oceans : Pedal Steel
Ray Benson : Guitar
Rick Mcree : Guitar
Floyd Domino : Piano
Tim Alexander : Accordion
Michael Francis : Saxophone
Bob Meyer : Trumpet
David Sanger : Drums
David Miller : Bass, Guitarron  

 私が知っている名前をチョイスして書き出したせいもありますが、ほとんどがRay Benson人脈の人たちです。

 フィドルのJason Roberts、ドラムスのDavid Sangerは、Asleep At The Wheelの現メンバーで、Jasonは、ときにRay Bensonに代わってリード・ボーカルもとるバンドの主要メンバーです。
 また、David Sangerは、Asleepの要ともいうべき、ベテラン・ドラマーで、数年前に加入した女性ボーカルのElizabeth McQueenの夫でもあります。

 スチール・ギターのCindy Cashdoller、Lucky Ocean、ピアノのFioyd Dominoは、Asleepの元メンバーで、CindyとFloydの二人は、脱退後も、しばしばRay Bensonの仕事にゲスト参加しています。
 Lucky Oceanは、Asleepを作った人といってよく、バンドの初期にはRay Bensonよりも中心人物だった人です。

 そして、Jonhny Gimbleは、元Bob Wills & his Texas Playboysのメンバーで、Asleep At The Wheelの立ち上げのころから、頻繁に活動を共にしている、テキサス・フィドルの第一人者です。

 さて、アルバムは、Asleep勢の協力のもと、快調なウエスタン・スイング調でスタートします。

 冒頭の"Texas Top Hand"は、Don Walserからの「Good Yodel Songが欲しい」という願いを受けて、Ray Bensonがアイデアの大半を出し、Don Walserが味付けをして出来上がった曲だそうです。

 定番のサウンドでスタートしますが、中盤でDonの最大の見せ場、聴かせ場があります。
 この曲では、得意のメランコリックなヨーデルをたっぷりと聴かせてくれます。

 "Whose Heart Are You Breaking Now"は、私はすぐに思い出せないのですが、Donのライナーによれば、Bob Wills Songだとのことです。
 ビッグ・バンド・ジャズのサウンドに乗せて、最高にスイングするカントリー・ソングが演奏されます。
 オールドタイムな雰囲気も素晴らしいです。

 "Wine Me Up"、"Weary Blues From Waiting"は、いずれもホンキートンクの古典曲で、Asleep勢が最高のアンサンブルを聴かせます。
 このあたりの選曲は、Donがやりたいと主張したのでしょう。
 私の好みでは、フロイド・ティルマンの軽快な"Wine Me Up"が特に好きです。

 Donのオリジナルは、曲調は違っても、いずれも伝統的なホンキートンク・スタイルで、スモール・コンボ的な抑えたサウンドの中、Dave Sangerの乾いたドラムの音が印象に残りました。
 
 続く"Divorce Me C.O.D."は、マール・トラヴィスのナンバーです。
 気持ちよく歌うDonのボーカルにのせて、フィドル、スチール、ピアノが素晴らしいハーモニーを奏でます。
 特段、トラヴィス風ピッキングが強調されていないのが唯一さびしいです。

 そして、ジョニー・ホートンの美しいバラード、"Whispering Pines"を経て、本作で最もトラッドな雰囲気を醸し出している、"Mexicali Rose"へと続きます。

 この曲は、作者名がクレジットされていますが、限りなく伝承歌に近い曲ではないかと思います。
 多数のシンガーがやっている曲ですが、私が、このバージョンを聴いてすぐに連想したのは、ジミー・ロジャースの「マイ・キャロライナ・サン・シャイン・ガール」でした。

 のどかなビートにのせて、Donがろうろうと歌う、美しいワルツです。
 アコーディオンとトランペットが、最高に雰囲気を盛り上げています。
 デキシーランド・ヒルビリーとでも呼びたいです。

 次の"Big Blue Diamonds"は、50年頃に書かれたカントリー・ソングらしいですが、私は、Clint Westというスワンプ・ポップ・シンガーで親しんできた曲です。

 50年代から、幾人かのヒルビリー・シンガーに歌われてきたようですが、どうも、63年のGene Summersというロカビリー・シンガーのバージョンで広く知られるようになったようで、ほぼ同じころに、R&BのLittle Willie Johnが吹き込んでいます。

 ジーン・サマーズのバージョンは、そのままClint Westに引き継がれたといってよく、ロカビリーぽさは微塵もない、感傷的なバラードに仕上がっていました。

 この曲は、たくさんの人がやっていますが、近年では、伝統的なカントリー・アレンジでやった、ヴァン・モリソン盤が聴きものです。 
 本作では、明るいアレンジで、Donが勢いよく歌い飛ばしています。
 やはり、Sangerの乾いたドラムの音が印象に残ります。 
 
 そして、ラストは、トラッドの"Danny Boy"です。
 この曲は、どうもDonの親族の個人的な境遇を思いながら歌っているらしく、優しく語りかけるように歌うDonの歌声が、しみじみと胸に迫ります。
 
 Don Walserは、写真での印象より、ずっと若々しい力強い歌声が魅力の人だと感じました。

 Don Walserは、34年生まれ、50年代から活動していたようですが、最初のアルバムが出たのは90年代のようで、06年に72歳で天に召されました。


Shotgun Boogieです。





可愛い七つの子はフィドル弾き

 今回は、Alvin Crowのソロ・アルバムを聴きました。
 リリースは、多分96年か97年ころだと思います。
 Alvin Crow自身のレーベル、Broken Spoke Recrdsから出されています。
 (流通が少ないと思われますので、見つけたら躊躇せずにゲットしましょう。)

 Broken Spoke(折れた車軸)とは、馬車の壊れた車輪を指すと思いますが、いかにも現代のカウボーイ、Alvin Crowらしいネーミングだと思います。
 ちなみに、彼が経営するクラブ(ホンキートンク・バー?)の名前でもあります。


Texas Classic
Alvin Crow

1. Fiddler's Lady (Alvin Crow)
2. Sands Of Texas (Gene Autry)
3. One Foot In The Grave (Roger Crabtree)
4. Dynamite Dina (Alvin Crow)
5. Turkey Texas (Herb Steiner)
6. Rearview Mirror (Bobby Earl Smith)
7. Chains On Me (Alvin Crow)
8. Nyquil Blues (Herb Steiner)
9. When I Stop Lovin' You (Jesse Ashlock)
10. Foolish Faith (Leslie Simon)
11. Just Dropped By To See The Show (Judy Clark)

 今作の参加メンバーは以下のとおりです。
 
Alvin Crow : Guitars, Fiddles
Rick Crow : Guitars
Don Bacoch : Bass
John Chandler : Drums
Scott Walls : Steel Guitar

 リック・クロウさんは、アルヴィン・クロウの息子さんでしょうか?
 とてもシンプルな編成です。

 アルヴィン・クロウは、Takoma時代のSir Douglas Quintetのメンバーだった人で、当時からギターとフィドルを弾いていました。
 Sir Douglas Quintetのアルバムとしては、"Border Wave"と"Live(Texas Tornado)"に参加して、バディ・ホリーのカバーなどをやっていました。
 ヒーカップっぽいボーカルが特徴的な人です。

 また、ニューローズからリリースされた覆面バンド、"Texas Mavericks"(実態はSir Douglas Quintet)唯一のアルバムに、Rockin' Leonの変名で参加していました。

 そして、一番のおすすめは、Sir Douglas QuintetのAustin City Limitsでのライヴ盤です。
 もちろんCDもいいですが、動く姿を見ることが出来るDVDは必見です。

 私は当時、彼のことを、やんちゃなロカビリー好きの男というイメージを持っていましたが、ダグ・サームのもとを離れた彼が取り組んだ音楽は、ウエスタン・スイングでした。

 本作も、伝統的なウエスタン・スイング音楽が詰まっています。
 そのサウンドは、良く言えば外れのない定番のクオリティを保っています。
 しかし、一方で、スリルにかけるという点があるのも確かです。

 これを愛すべきワン・パターン、様式の美しさと捉えられるかどうか、ということが、リスナーの印象を左右すると思います。
 ホーンレスですので、ホンキートンク度の高いウエスタン・スイングが楽しめます。 

 実は、アルバム・タイトルの「テキサスの古典」の意味が気になります。
 収録曲は、私にとって未知のものが大半で、「古典」なのかどうかが判断できません。
 テキサスの人気曲なのだとしたら、どういったシンガーが歌っているのか知りたいものです。

 歌うカウボーイ、Gene Autryの"Sands Of Texas"は、私が持っているコロンビア音源のベスト盤CDには入っていません。

 私が知るAutryの有名曲は、"Back In The Saddle Again"と"Don't Fence Me In"です。
 どちらもカウボーイ・ソングです。
 "Back In The Saddle Again"は、多くのコンピに収録されている曲で、一般的にはこの曲が彼の代表曲でしょう。

 "Don't Fence Me In"は、Asleep at The Wheelがライヴ盤でやっていて知った曲です。
 「いい曲だなあ」と思った曲(の原曲)が、自分の手持ちのCDに入っていると知ったときは嬉しかったです。

 2曲入っているHerb Steinerという人が気になりますが、全く知らない人です。
 その他の人もそうで、テキサスの古い有名ソングライターって、他にいなかったですか?
 Bob Willsの曲をたくさん書いたCindy Walkerは、テキサスじゃなかったですか、オクラホマかな?

 とりあえず、Gene Autry以外で知っているのは、Bobby Earl Smithだけです。
 でも、Bobby Earl Smithは古典ではないです。
 今を生きるソングライターです。

 Bobby Earl Smithは、70年代のテキサスのルーツ・ロック・バンド、Freda & The Firedogsの主要メンバーで、ソングライターであり、ベーシストでした。
 Freda & The Firedogsは、若き日のMarcia Ballが参加していたバンドで、アトランティックのジェリー・ウェクスラーが、ダグ・サームやウイリー・ネルソンに次いでスカウトしようとしていたバンドです。

 事情により、メジャー・デビューすることなく消滅した伝説のバンドですが、完成してお蔵入りしていたスタジオ録音盤が数十年ぶりにCDリリースされ、近年、日の目をみています。

 近年でとても興味深かったのは、ダグ・サームのトリビュート盤、"Keep Your Soul"に、Freda & The Firedogs名義で新録音が寄せられていたことです。
 もちろん再結成したわけではなく、このときだけの同窓会録音だったのだと思います。

 Freda & The Firedogsの解散後、Marcia Ballはソロ活動を行い、その後成功しました。
 ギターのJohn X Reed、ドラムスのSteve McDaniels、そしてベースのBobby Earl Smithは、一時ダグ・サームと活動していたようです。
 (このうち、John X ReedとSteve McDanielsはダグとの録音が残っていて、容易に聴くことが出来ますが、Bobby Earl Smithのみ、文章で書かれているだけで、音源は未確認です。)

 その後、ダグと離れたあと、Bobby Earl Smithは、Alvin Crowと行動を共にしたと、オフィシャル・サイトに記載されています。
 しかし私は、ダグとの活動と同じく、実際の音源をまだ聴いたことがありません。

 今作で、Alvin CrowがBobby Earl Smithの曲、"Rearview Mirror"を録音していることは、初めてかすかな繋がりを見つけたという感じです。

 "Rearview Mirror"(バックミラーのこと)は、Bobby Earl Smithが00年にリリースしたカムバック・ソロ・アルバムのタイトル曲になりました。
 この曲は、本作で、作者自演盤より数年早く世に出たことになります。

 Bobby Earl SmithとAlvin Crowは、今後もさらに追っかけ続けたいと思っています。



One Foot In The Graveです。




関連記事はこちら

ロッキン・レオンのふるさと
バック・ミラー越しの恋
回想のファイア・ドッグス





ロッキン・レオンのふるさと

 最初の印象は、ごくごく普通のWestern Swingでした。
 私は、そのことに少なからず驚きました。
 なぜなら、私が頭に描いていたイメージは、もっとやんちゃな、ロカビリーっぽいサウンドだったからです。


Pure Country
Best Hokytonk In Texas
Broken Spoke Legend
Alvin Crow

1. Honky Tonk Trail (Alvin Crow)
2. Too Country (Alvin Crow)
3. Dance With Who Brung You (James M.White)
4. Go Down Swinging (Bill Anderson)
5. Red Neck Rock (Alvin Crow)
6. Real Thing (Alvin Crow)
7. Sweetwater Waltz (Alvin Crow)
8. About That Time Again (Bucky Buchanan)
9. Be My Mamma Again (D.K.Little)
10. The Way It Is (Rick Crow)
11. Fiddler's Lady (Alvin Crow)
12. Wine Me Up (F.Young, B.Deaton)
13. Living On Memories (Alvin Crow)
14. Dynamite Diana (Alvin Crow)
15. Sands Of Texas (Gene Autry)
16. One Foot In The Grave (Roger Crabtree)
17. Broken Spoke Legend (James White)
18. Big Ball's In Cowtown (Hoyle Nix)
19. Faded Love (B.Wills, J.Wills)
20. Bring It On Down To My House (vo.Leon Rausch, arr.Alvin Crow)
21. You Send Me (Sam Cooke)
22. So Long  (K.Lloyd)

 Alvin Crowをご存知でしょうか?
 Doug Sahmのファンなら、当然知っている存在です。
 
 アルヴィン・クロウは、80年代初め、Sir Douglas Quintetに参加していたフィドラーです。
 アルバムとしては、今はなきTakomaレコードで、スタジオ録音1枚、ライヴ録音1枚が記録されています。

 覆面バンド、Texas Mavericksでの録音もありました。
 そして、ずっと後になって、クインテットのAustin City Limits出演時のライヴがソフト化されました。
 
 クインテットには、その活動期間の中で、幾人かのメンバーの変遷がありました。
 そんな中で、アルヴィン・クロウは、特異な人物です。

 ダグの盟友、オーギー・マイヤースは別格として、バンド内で、ダグに代わってリード・ボーカルを取る機会をもった稀れな存在です。
 あとは、ルイ・オルテガくらいしか思いつきません。

 しかも、ヒーカップ唱法といいますか、バディ・ホリーみたいな歌い方が特に印象に残りました。
 私は、とりわけライヴ盤、Live Texas Tornadoでやった、ホリーのOh Boyと、ディランの親指トムのブルースが忘れられません。
 名唱だと思います。

 Texas Mavericksで歌ったRock And Roll Rubyでも、ロカビリー好きなんだなと感じました。 
 
 ところがどうでしょう。
 このアルバムで聴ける音楽は、あまりにも王道のウエスタン・スイングです。
 もちろん、それが悪いわけじゃありません。
 しかし、私が持っていた「やんちゃ」というイメージは、ほとんど窺い知れません。

 このアルバムは、88年リリースとなっていますが、ジャケ写真を見ると、腹も出て恰幅のいい頑固なテキサンそのものという風貌です。
 ボブ・ウィルズのカウボーイ映画に出てきそうです。

 そのサウンドは、Sir Douglas QuintetによるWesten Swing調の曲を容易に連想させてくれます。
 かなり自作の比率が高いですので、やはりクインテットでも、もっとセンターを取りたかった人なんでしょう。
 クインテットでは、ついに自作を録音する機会はありませんでした。

 ところで、このCDですが、どうもアルヴィン・クロウのレーベルから出ているようなのですが、若干分かりにくいところがあります。
 やはり、大らかなテキサスらしさでしょうか。
 
 まず、アルバム・タイトルからしてそうです。
 私が購入した海外ネット・ショップでは、"Pure Country"というタイトルになっていました。
 ジャケット上部に書かれていますね。

 しかし、困ったことに、パッケージの背には、"Honkytonk"とあります。
 ジャケット表にはない表記で、混乱します。

 ちなみに、アマゾンUSでは、中古が高額で出品されていますが、"Honky Tonk Trail"というタイトルになっていました。
 これは、ペラのリーフレット裏に記されているタイトルです。
 このリーフレット裏の写真が、私には、まるでアルバムのジャケット写真のように見えます。

 

 収録曲が22曲と多数なのも気になります。
 88年ならあり得るのかもしれませんが、何となく2枚のアルバムをカップリングしたもののような気がします。
 ところが、さらに気になることがあります。

 ジャケット表の下段に記されている表記です。
 そこには、"Best Hokytonk In Texas"とあり、さらに次の段に"Broken Spoke Legend"とも記されています。
 これを見ると、このふたつが、もとの2枚のアルバム・タイトルではないのか、とも思えてきます。

 困りますねェ
 アマゾンUSに掲載されているジャット写真は、私が入手したものと微妙に違っていて、"Best Hokytonk In Texas"という表記がありません。
 "Broken Spoke Legend"の一行だけです。

 アイテム詳細欄に記載されているレコード会社名は同じで、アルヴィン・クロウのレーベル(だと思う)Broken Spoke Recordsです。
 収録曲は同じですので、リリース時期が違うのでしょう。
 (アマゾンUSの詳細欄には、リリース年データの記載がありません。)

 うーん、ますます混乱するばかりです。
 収録曲から考えると、Honky Tonk TrailとBroken Spoke Legendいう曲が入ってるので、これらをタイトルとする2枚のアルバムのカップリングというのが正解ではないでしょうか。

 一方、曲調などの内容から推測しますと、トラック17のBroken Spoke Legendがライヴ録音になっていて、その後のスタジオ・テイクも、有名曲のカバー中心ですので、ここで切り替わっているようにも感じます。
 しかし、それだと曲数のバランスが合いませんよね。
 LPとEPなら別ですが…。

 可能性としては、自作中心のトラック1から11までが1枚目のアルバムで、トラック12以降がもう1枚のアルバムという考え方が浮かびます。
 流れが変化するトラック17は、アナログ盤のB面1曲目と考えれば自然な気もします。

 まあ、全て推測にすぎません。
 事実がどうかはともかく、そのサウンドは、ほぼ一貫して正調ウエスタン・スイングです。
 それはもう見事で、ロカビリーっぽさは、ごくわすがです。
 ウキウキする、ファストなダンス・チューンはもちろん、美しいワルツもダンス・ナンバーです。
 ウエスタン・スイングが、そもそもどのような音楽なのか表しています。

 さて先ほど、アルヴィン・クロウは、ダグ・サームに自作が採用されなかったと書きましたが、Texas Mavericksの収録曲を見落としていました。
 Texas Mavericksでは、変名のRockin' Leon名になっていますが、Red Neck Rockという曲がアルヴィン・クロウの作品です。
 本作では、トラック5に収録されています。

 この曲は、チャック・ベリー・スタイルのギターのイントロでスタートするロックンロールです。
 他の曲と違って、エレキ・ベースの音がブンブンと大きめに録られています。
 Texas Mavericks盤を久々に聴いてみたら、さほど違わないアレンジでやっていました。

 その他の曲では、ジーン・オートリーのカバーもありますが、やはり後半のホブ・ウィルズ・ナンバーが気になります。

 ライヴ録音のBring It On Down To My Houseでデュエットしているのは、後期のテキサス・プレイボーイズでリード・ボーカルを務めたリオン・ラーシュです。
 この人は、最近でも元気で活躍していて、Asleep At The Wheelの最近作に主役ゲストとして参加して、レイ・ベンスンやリズ・マックイーンとデュエットしていました。

 そして、サム・クックのYou Send Meは珍しい選曲ですね。
 ここでは、ハーモニカやラップ・スチールの音色が流れるなか、アルヴィンが「ウォウ、ウォウ」というサム独特のフレーズを歌っています。
 珍品というべきでしょうか。
 私は、不思議感もありますが、いいカバーだと思いました。

 アルヴィン・クロウは、ボビー・アール・スミスとの関係など、知りたいことが多く、まだまだ追っかけたいアーティストです。




Honky Tonk Trailです。





関連記事はこちら

バック・ミラー越しの恋
回想のファイア・ドッグス
ウェ、ローライ



オースティン音楽バンド

 お初のバンドを聴いてみました。
 私は、ウエスタン・スイング・バンドを期待して入手したのですが、軽く裏切られました。


Swang !
Jim Stringer And The Austin Music Band
 
1. Onward, Charlie Christian's Soldiers (Jim Stringer)
2. Texas and Pacific (Jack Wolf Fine)
3. Bye-Bye, Bayou (Jim Stringer)
4. My Baby Left Me (Arthur Cruddup)
5. Long Black Limousine (Stovall, George)
6. Thirty Days (Winfield)
7. Ninety Miles Per Hour (Down a Dead End Street) (Robertson, Blair)
8. Special Delivery Stomp (A.Shaw)
9. Earthquake (Jim Stringer)
10. Jack, You're Dead (D.Miles, W.Bishop)
11. We Ran Out of Love, Baby Blue (Jim Stringer)
12. That's All I Need (Jim Stringer)
13. Sick, Sober & Sorry (Atchison, Hazelwood)
14. 36-22-36 (Deadlic Malone)
15. No Love Have I (Jim Stringer)
16. I Wanna Be in Your Dreams (Jim Sringer)

 オースティン・ミュージック・バンドという名乗りが気に入りました。
 なおかつ、年代物のAMラジオのジャケが気に入りました。 
 また、Swangという、シンプルなタイトルにも惹かれました。

 アルバムのリリースは、99年です。

 ざっと曲目を見ると、ウエスタン・スイングの古典や、定番曲が見当たらないようですが、一方で、ルイ・ジョーダンや、ボビー・ブランドのナンバーをやっていることが眼にとまり、好感を持ちました。

 アスリープ・アット・ザ・ホイールも、ウエスタン・スイングとブギやジャンプ・ブルースを得意としています。
 むしろ、リズム&ブルースをやっているのは、私の好みです。
 ほとんどためらうことなくオーダーを決定しました。

 しかし、実際に音を聴いてみると、かなり予想していたサウンドと開きがあり、若干戸惑いました。
 このバンドは、ギター2本、ベース、ドラムス、ピアノからなるスモール・コンボ・スタイルのバンドなのです。

 通常、ウエスタン・スイング・バンドなら、スチール・ギターとフィドルが必須です。
 さらには、ヒルビリー・ブギや、ジャンプ・ブルースを演奏するため、サックスをフィーチャーするのがごく普通の編成です。
 これは、この分野のリバイバルの先駆者ともいうべき、ロスト・プラネッツ・エア・メン時代からの定番編成です。

 ところが、このバンドは、フィドルレス、スチール・ギターレスで、なおかつホーンレスなのでした。

 ロカビリー系の編成というべきでしよう。
 ネオ・ロカビリーからスタートして、ビッグ・バンド編成へと発展し、ネオ・スイング・サウンドになるというのが、ブライアン・セッツァー・オーケストラの成功以来のひとつの流行です。

 しかし、こちらは、アコースティック・スイング風の編成、並びにサウンドなのでした。
 ギターのサウンドは、ほとんどディストーションなしのクリア・トーンで、アクースティックのフラット・ピッキングも多用しています。
 全体的には、ピアノの左手のブギ・ビートと、はねる右手のパンピン・ピアノ、そして、スイングするギターが個性を主張しています。
 
 私の好みで、いくつか注目曲をご紹介します。
 まずオリジナルでは、3曲目のBye-Bye Bayouが面白いです。
 この曲は、リズム・ギターが、ロックンロールのリフを刻んでいて、真っ先にパブ・ロックを連想しました。
 軽快なビートを奏でるピアノもごきげんです。
 さらに、メロディもポップなので、これはよいです。
 ただし、曲名から連想するスワンプとか、そんなイメージはほとんどありません。

 この曲と同趣向で書かれている、9曲目のEarthquakeも、やはり魅力的です。
 ここでは、チャック・ベリー風のギター・イントロから、ピアノが加わると、ほぼ同時に小指を使った永遠不滅のギター・ブギのリフが出てきます。
 このリズムは、常習性があるというほかないです。 

 ちなみに、リーダーのジム・ストリンガーは、ライナーで、自分たちの音楽を、偉大なアメリカン・ミュージックの伝統をベースにした、カントリー、ブルース、スイング、ロックンロールなどの"るつぼ"であるとして、"Swang"と呼んで欲しいと語っています。

 さて、カバー曲での注目曲はいつくかあります。
 まず、2曲目のTexas and Pacificです。
 この曲は、ジャンプ・ブルース風の曲で、私は原曲を知りませんが、間奏で、ジムが「T-ボーン」と叫んでいるように聴こえますので、もしT-ボーンのレパートリーなら嬉しいです。
 ただ、あまりT-ボーン風のタイトルではありません。

 4曲目のMy Baby Left Meは、ごく普通のアレンジですね。
 あえていうなら、クリーデンス風ですが、アーサー・クラダップのオリジナルからして、もともとがそんな感じの曲です。
 あくがない分、面白みに欠けるかも知れません。

 5曲目のLong Black Limousineは、エルヴィスがやっていたような気がしますが、どうでしょう。
 60年代後半のメンフィス録音あたりになかったですかね。

 続くThirty Daysは謎の曲です。
 作者名を見てわかるとおり、チャック・ベリーではありません。
 まあ、似たような雰囲気の曲ではあります。

 爽やかな疾走感を感じさせる、Ninety Miles Per Hour (Down a Dead End Street)もいい感じです。
 これなどは、ウエストコースト・カントリー・ロックという雰囲気ですね。
 間奏では、かっこいいフラット・ピッキングのギター・ソロが聴けます。

 次のSpecial Delivery Stompは、ヒルビリー・ブギ風のインストですが、タイトルだけから判断すると、ジャンプ・ブルース(ブギ)が原曲のような気もします。

 10曲目のJack, You're Deadは、私が大好きな曲です。
 ルイ・ジョーダンのバージョンで知った曲で、多分彼がオリジネイターだと思います。
 ルイ独特のユーモアがうまく機能していて、曲の良さが光っていると感じます。

 そして、ボビー・ブランドの36-32-36は、意外な選曲ですね。
 それだけに嬉しいです。
 だので、評価は甘くなります。
 ここでは、この曲を取り上げたセンスに敬意を表したいと思います。
 曲は、隠れた名曲というべきもので、ちょっとキャブ・キャロウェイを連想させるといいますか、キャバレー調の曲です。
 私の好みとしては、名曲の部類に入ると言いたいです。

 こういう嬉しいことをやってくれると、多少のことは眼をつむりたくなりますね。

 軽い肩すかしもありましたが、それは聴きての勝手な予断からくるものなので、彼らに罪はないです。
 ゲストなしでやっているようですので、これが彼らのやりたいスタイルなのでしょう。
 私的には、やはり、フィドルやホーンが欲しいところですが、信じるスタイルを貫くというのなら、それも美しいと思います。



Jim Strngerは、こんな人





バディ、ボブを歌う

 年齢を重ねるとともに、知らず知らずのうちに、過去のことを懐かしんでいる自分に気付くことがあります。

 そして思うのです。
 今の知識と経験を持ったまま10代や20代を過ごすことができたなら、どんなにか楽しくやれたろうか、あのことや、このことも、後悔することはなかったに違いないと…。


Buddy Emmons Sings Bob Wills
Buddy Emmons

1. Deep in the Heart of Texas
2. Bottle Baby Boogie
3. Boot Heel Drag
4. Deep Water
5. I Needed You
6. New Road Under My Wheels
7. Roley Poley
8. If No News is Good News
9. Four, Five Times
10. Twinkle, Twinkle Little Star
11. Time Changes Everything
12. End of the Line
 

 このアルバムは、Bob Willsのファンになり、とりあえずすぐに手に入るボブのアルバムを買い終えたあと、最初に踏み出したボブのカバー集めぐりの第一歩でした。

 当時、最も欲しかったマール・ハガードのボブ・ウィルズ・トリビュート盤は、入手困難でした。
 そんな中、手に入れることが出来たのは、普段は他人のバックで演奏に徹しているスチール・ギタリストが、自ら歌ったソロ・アルバムでした。

 私は、このアルバムを買った当時、Buddy Emmonsが何者か知らず(今でもさほど詳しくないですか)、とりあえず、ボブ・ウィルズを歌う、というタイトルに魅かれ、迷わず購入したのでした。

 そして、それは成功でした。
 このアルバムは、私のウエスタン・スイングへの愛情をいや増してくれた記念の1枚でもあります。

 バディ・エモンズは、レイ・プライスのバックでスチール・ギターを弾いて有名になった人らしく、その後ロジャー・ミラーのバンドでもやっていたようです。
 その経歴から、生粋のホンキー・トンク・カントリーの演奏者だとわかります。

 実はそのキャリアは古く、初期の録音には、ウェブ・ピアースのヒット曲、スローリーなどがあるようです。
 また、アーネスト・タブのテキサス・トルバドールズでの録音も経験しているようです。

 このアルバムは、76年リリースですが、前年にボブ・ウィルズが亡くなっています。
 そのあたりの経緯は不明ですが、恐らくボブが最後のアルバムの製作中に倒れたころ、バディは、既にこのアルバムにとりかかっていたか、計画中だったのだと思います。
 リリースのタイミングとしては、ボブの追悼アルバムとなりました。

 バディは本アルバムの製作について語っています。

 ボブ・ウィルズはお気に入りのフィドル奏者ではありませんでしたが、彼の歌は好きでした。
 でも、1953年に、Bottle Baby Boogieを聴いてから、根っからのボブ・ウィルズ・ファンに変身したのです。
 そして、私はいつか、彼のテキサス・プレイボーイズに入り、彼の音楽を共有する夢をいだきました。
 夢は実現しませんでしたが、今回、私は彼に敬意を表する機会を与えられ、満足しています。

 バディは、ソロ・アルバムを数枚だしており、私は未聴ですが、恐らくインスト中心だと思います。
 また、中身はジャズの可能性が高いと思います。

 しかし、このアルバムでは、自らボーカルを取って、コアなファンになるきっかけを作ったという、Bottle Baby Boogieを始め、お気に入りの曲を楽しげに演奏し、歌い飛ばしています。

 バックのメンツでは、お馴染みのジョニー・ギンブルや、バディ・スパイカーといった凄腕フィドラーの名前を見つけることができます。
 
 私が良く知らない曲も一部入っていますが、基本は名曲てんこもりのアルバムです。
 なかでも、Deep WaterRolly PoeyTime Changes Everythingは、誰がやっても悪くなりようがない名曲だと思います。

 ちなみに、先の2曲はいずれもフレッド・ローズの作品で、Time Changes Everythingは、トミー・ダンカンの作品です。
 ダンカンは、テキサス・プレイボーイズのボーカリストを最も長く務めた人で、ボブ・ウィルズが自らの名前を付けた新しい楽団を結成する際に引っ張ってきた歌手でした。

 私は、このアルバムの入手後、レイ・プライスとジョージ・ジョーンズのウィルズ集を手に入れ、数年前、ようやくマール・ハガードのウィルズ集を入手しました。

 その後も無名人であっても、ボブ・ウィルズ・ナンバーをカバーしているアルバムを見つけると、いそいそと購入してしまうのでした。




ビル・カーチェン盤、Bottle Baby Boogieです。





    >>次へ
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。