2011年09月17日
シンディ・ウォーカー20選
これは、予想外にしっとりとしたアルバムでした。
Bob Wills & The Texas Playboysの最後期のリード・ボーカリストだった、Leon Rauschが、Cindy Walkerの楽曲を歌ったアルバムです。
Cindy Walkerは、ホンキートンク・カントリーの最も重要な女性ソングライターの一人で、多くのシンガーに曲を提供していますが、何と言ってもBob Willsのレパートリーへの貢献度が高い人です。
1. Close To You
2. That Would Sure Go Good
3. In The Misty Moonlight
4. Hotline
5. The Little Blue Bonnet Bar
6. Ruidoso
7. You Don't Know Me
8. You're From Texas
9. I'm A Music Man
10. Bubbles In My Beer
11. Inseparable From My Heart
12. The Day You Left Me
13. I Don't Care
14. Tucumacari Woman
15. Take Me In Your Arms And Hold Me
16. Don't Be Ashamed Of Your Age
17. The Heebee Jeebee Blues
18. China Doll
19. Two Glasses, Joe
20. On Silver Wings To San Antone
Cindy Walkerは、初期には自らシンガーとして録音していますが、私の聴いた限りでは、ソングライターとしての方が才能があった人だと思います。
本盤は、90年代の終わり頃にリリースされたと思われ、バンドには、元Texas Playboysの残党たちが参加しているのではないかと思います。
実質的には、Leon RauschとTommy Allsupを中心に組まれたプロジェクトのようです。
ギター、フィドル、ラップ・スチール、ドブロ、ピアノ、アコースティック・ベース、ドラムス、トランペット、トロンボーン、クラヴィネットからなる編成です。
ビッグ・バンド編成ですが、エレキ・ギターのロッキン・ソロといった、ネオ・スイングに定番の見せ場はなく、とてもおしゃれな大人のサウンドに仕上がっています。
ホーン陣も基本はミュート・サウンドで、ブリブリのブロウなど一切なく、小粋なフレーズがおしゃれ度に貢献しています。
最近、活字媒体であまり見かけなくなりましたが、少し前に話題になった、アコースティック・スイングを思わせるサウンドです。
Bob Willsの音楽は、徹底したダンス・ミュージックでしたが、彼は自らの音楽をウエスタン・スイングとは呼ばす、しばしばカントリー・ジャズと呼んでいました。
本盤では、ジャズの楽曲こそやっていませんが、その落ち着いたたたずまいは、ジャジーな雰囲気も感じます。
Asleep At The Wheelのリーダー、Ray Bensonが、ソロ作でジャジーなボーカル・アルバムを作ったことを思い出します。
ちなみに、Asleepつながりで言いますと、本盤にはゲストの一人として、初期のAsleepの女声ボーカリスト、Chris O'Connellが、コーラスで参加しています。
さて、中身を聴いていきましょう。
ざっと曲目を眺めて、驚きました。
ほとんど知っている曲がありません。
Bob Willsの楽曲の作者として、しばしば名前を見かけたはずなのですが、ここに収録されている曲で、すぐに思いつくのは、"You're From Texas"、"Bubbles In My Beer"くらいです。
このあたりは、MGM時代のBobのレパートリーでしょうか。
だとすれば、40年代ですね。
そして、"You Don't Know Me"は、よく知っている曲ですが、これはBob Willsでしたっけ?
馴染み深い曲ばかりと思っていたので、改めて確認したこのラインナップは驚きです。
こんなにも未知の曲ばかりとは…。
でも、もしかすると、過去に聴いてあまり印象に残っていなかっただけで、聴いた曲があるのかも知れません。
本盤は、私に眼を洗うような清々しい感覚を与えてくれました。
とにかく、優れた作品がたくさん入っています。
(あえて1曲だけあげるとすると、美しくも軽妙なワルツ、"China Doll"が最高です。)
今回私は、Cindy Walkerには、私の知らない素晴らしい曲が、まだまだたくさんあることを知って、心から嬉しくなりました。
本盤で新たにお気に入りとなった曲たちは、じっくりとオリジナルを探したいと思いだしています。
Cindy Walkerのトリビュート・アルバムは、Willie Nelsonも作っていて、そちらは、実質的にはBob Willsのレパートリー中心の作品集でした。
Cindy Walker集の名を借りた、アナザー・Bob Wills名作選とでもいうべき作品集に仕上がっていたのです。
近年のWillieの仕事では、特に好きな1枚です。
ともかく、本盤は良いです。
ただ、若い人たちには、のどかなサウンドがもどかしいかも知れません。
ロック・ファンには、毒もなく、攻撃性のかけらも感じられないないことに、退屈される方もいることと思います。
しかし、私も10代から20代初めには、レアなロカビリーばかり探して聴いていたものでした。
そんな私が、今ではいっぱしのおじさんになって、日向ぼっこソング好きになっています。
(私は、Kinksのお昼寝ものやティータイム・ソングが大好きです。)
曲調が攻撃的でないからといって、刺激がないわけではありません。
私は、本盤を聴いて、心豊かな気持ちにさせられました。
ウエスタン・スイングに関心がある方には、ぜひ推薦したい1枚です。
ただし、Asleepのように、ジャンプやブギはやっていません。
私は、Bob WillsとLouie Jordanは、同じコインの裏表だと思っていますが、ここで聴けるのは、オールド・タイムの要素が勝ったサウンドです。
なお、本盤は、Vol.1となっていますが、Vol.2が出たのかどうか私は知りません。
Leon Rauschは、近年、Asleep At The Wheelとの共演盤を作って、元気な歌声を披露してくれました。
当然、そちらも推薦盤です。
就寝前に、寝床に文庫本を持ち込んで、好きな文章を追いながら、流しっぱなしにしたい、そんな音楽です。
関連記事はこちら
まるごとパブ・ロック
ロッキン・レオンのふるさと
Bob Wills & The Texas Playboysの最後期のリード・ボーカリストだった、Leon Rauschが、Cindy Walkerの楽曲を歌ったアルバムです。
Cindy Walkerは、ホンキートンク・カントリーの最も重要な女性ソングライターの一人で、多くのシンガーに曲を提供していますが、何と言ってもBob Willsのレパートリーへの貢献度が高い人です。
Close To You
A 20 Song
Salute To The Music Of Cindy Walker Vol.1
Leon Rausch
A 20 Song
Salute To The Music Of Cindy Walker Vol.1
Leon Rausch
1. Close To You
2. That Would Sure Go Good
3. In The Misty Moonlight
4. Hotline
5. The Little Blue Bonnet Bar
6. Ruidoso
7. You Don't Know Me
8. You're From Texas
9. I'm A Music Man
10. Bubbles In My Beer
11. Inseparable From My Heart
12. The Day You Left Me
13. I Don't Care
14. Tucumacari Woman
15. Take Me In Your Arms And Hold Me
16. Don't Be Ashamed Of Your Age
17. The Heebee Jeebee Blues
18. China Doll
19. Two Glasses, Joe
20. On Silver Wings To San Antone
Cindy Walkerは、初期には自らシンガーとして録音していますが、私の聴いた限りでは、ソングライターとしての方が才能があった人だと思います。
本盤は、90年代の終わり頃にリリースされたと思われ、バンドには、元Texas Playboysの残党たちが参加しているのではないかと思います。
実質的には、Leon RauschとTommy Allsupを中心に組まれたプロジェクトのようです。
ギター、フィドル、ラップ・スチール、ドブロ、ピアノ、アコースティック・ベース、ドラムス、トランペット、トロンボーン、クラヴィネットからなる編成です。
ビッグ・バンド編成ですが、エレキ・ギターのロッキン・ソロといった、ネオ・スイングに定番の見せ場はなく、とてもおしゃれな大人のサウンドに仕上がっています。
ホーン陣も基本はミュート・サウンドで、ブリブリのブロウなど一切なく、小粋なフレーズがおしゃれ度に貢献しています。
最近、活字媒体であまり見かけなくなりましたが、少し前に話題になった、アコースティック・スイングを思わせるサウンドです。
Bob Willsの音楽は、徹底したダンス・ミュージックでしたが、彼は自らの音楽をウエスタン・スイングとは呼ばす、しばしばカントリー・ジャズと呼んでいました。
本盤では、ジャズの楽曲こそやっていませんが、その落ち着いたたたずまいは、ジャジーな雰囲気も感じます。
Asleep At The Wheelのリーダー、Ray Bensonが、ソロ作でジャジーなボーカル・アルバムを作ったことを思い出します。
ちなみに、Asleepつながりで言いますと、本盤にはゲストの一人として、初期のAsleepの女声ボーカリスト、Chris O'Connellが、コーラスで参加しています。
さて、中身を聴いていきましょう。
ざっと曲目を眺めて、驚きました。
ほとんど知っている曲がありません。
Bob Willsの楽曲の作者として、しばしば名前を見かけたはずなのですが、ここに収録されている曲で、すぐに思いつくのは、"You're From Texas"、"Bubbles In My Beer"くらいです。
このあたりは、MGM時代のBobのレパートリーでしょうか。
だとすれば、40年代ですね。
そして、"You Don't Know Me"は、よく知っている曲ですが、これはBob Willsでしたっけ?
馴染み深い曲ばかりと思っていたので、改めて確認したこのラインナップは驚きです。
こんなにも未知の曲ばかりとは…。
でも、もしかすると、過去に聴いてあまり印象に残っていなかっただけで、聴いた曲があるのかも知れません。
本盤は、私に眼を洗うような清々しい感覚を与えてくれました。
とにかく、優れた作品がたくさん入っています。
(あえて1曲だけあげるとすると、美しくも軽妙なワルツ、"China Doll"が最高です。)
今回私は、Cindy Walkerには、私の知らない素晴らしい曲が、まだまだたくさんあることを知って、心から嬉しくなりました。
本盤で新たにお気に入りとなった曲たちは、じっくりとオリジナルを探したいと思いだしています。
Cindy Walkerのトリビュート・アルバムは、Willie Nelsonも作っていて、そちらは、実質的にはBob Willsのレパートリー中心の作品集でした。
Cindy Walker集の名を借りた、アナザー・Bob Wills名作選とでもいうべき作品集に仕上がっていたのです。
近年のWillieの仕事では、特に好きな1枚です。
ともかく、本盤は良いです。
ただ、若い人たちには、のどかなサウンドがもどかしいかも知れません。
ロック・ファンには、毒もなく、攻撃性のかけらも感じられないないことに、退屈される方もいることと思います。
しかし、私も10代から20代初めには、レアなロカビリーばかり探して聴いていたものでした。
そんな私が、今ではいっぱしのおじさんになって、日向ぼっこソング好きになっています。
(私は、Kinksのお昼寝ものやティータイム・ソングが大好きです。)
曲調が攻撃的でないからといって、刺激がないわけではありません。
私は、本盤を聴いて、心豊かな気持ちにさせられました。
ウエスタン・スイングに関心がある方には、ぜひ推薦したい1枚です。
ただし、Asleepのように、ジャンプやブギはやっていません。
私は、Bob WillsとLouie Jordanは、同じコインの裏表だと思っていますが、ここで聴けるのは、オールド・タイムの要素が勝ったサウンドです。
なお、本盤は、Vol.1となっていますが、Vol.2が出たのかどうか私は知りません。
Leon Rauschは、近年、Asleep At The Wheelとの共演盤を作って、元気な歌声を披露してくれました。
当然、そちらも推薦盤です。
就寝前に、寝床に文庫本を持ち込んで、好きな文章を追いながら、流しっぱなしにしたい、そんな音楽です。
It's A Good Day by Leon Rausch and Asleep At The Wheel
関連記事はこちら
まるごとパブ・ロック
ロッキン・レオンのふるさと
【ウエスタン・スウィングの最新記事】
投稿者:エル・テッチ|14:35|ウエスタン・スウィング
この記事へのコメント