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エドワード、ジョセフとウィルの息子

 英Jasmineから、Falconsの新しい編集盤CDがリリースされました。
 英Jasmineは、米国のノスタルジック音楽全般を精力的にリイシューしている再発専門レーベルです。

 本社はロンドンではないかと思いますが、パッケージにメイド・イン・チェコと記されているのが興味深いです。


You're So Fine 1956-1961
The Falcons

1. Baby That's It (Floyd,Floyd)
2. This Day (Hamilton)
3. Can This Be Christmas (Schofield)
4. Sent Up (Finnie, Rice)
5. I Wonder (unknown)(not originally Issued)
6. Something Hit Me (Kan) (not originally Issued)
7. Love At First Sight (Laired, Mosey)(not originally Issued)
8. This Heart Of Mine (Hamilton, Woods)
9. Romanita (unkown)
10. (When) You're In Love (schofield, West)
11. No Time For Fun (schofield, West)
12. Please Don't Leave Me Dear (schofield, West)
13. Juke Hop (Green) (not originally Issued)
14. Anytime, Anyplace, Anywhere (Morris, Tate)
15. Girl Of My Dreams (unknown)(not originally Issued)
16. Let It Be Me (Finnie, Stubbs, Stubbs)(not originally Issued)
17. I'll Never Find Another Girl Like You (Schofield)
18. Whose Little Girl Are You ? (unknown) (not originally Issued)
19. Just For You Love (Davis, Gordy, Gordy)
20. You're So Fine (Finney, Schofield, West))
21. Goddess Of Angels (Schofield, West)
22. You're Mine (unknown)
23. That's What I Aim To Do (Schofield, West)
24. You Must Know I Love You (Schofield, West)
25. Feels Good (unknown)
26. Billy The Kid (Kan)
27. You're On My Mind (unknown)
28. Anna (unknown)
29. (I Don't Want No) Part Time Love (Pickett, Schofield, West)(not originally Issued)
30. What To Do (unknown)(not originally Issued)

 Falconsは、ブラック・ボーカル・グループ、アーリー・ソウル、双方のファンともに大好きなグループだと思います。
 よく知られているように、Wilson Pickett、Eddie Floyd、(Sir)Mack Riceら、後にソロとして有名になったシンガーが多数在籍していた、デトロイトの名門グループです。

 Falconsは、ニューヨークの名門、Driftersと似たところがあります。
 クライド・マクファターのオリジナル・ドリフターズと、ベンE・キングのドリフターズ(クラウンズ)が、元々は別のグループだったように、ファルコンズも60年代半ばにグループの一新が行われます。
 ソニー・モンローをメインとするファルコンズです。

 本盤は、オリジナル・ファルコンズのレコード・デビューから、ピケット時代までをカバーしています。
 Falconsは、アナログ時代にDoo Wopに特化した(?)リイシュー・レーベル、Relic Recordsから、3枚の編集盤が作られていました。
 1枚目はジョー・スタッブズ時代、2枚目はピケット時代、3枚目は1,2枚目からもれた音源を集めた内容(だと思う)でした。

 Relicは、アナログ時代は隆盛でしたが、CD時代になって、膨大なカタログのCD化を進める中、米Rhinoや英Aceのような波に乗りきれず、フェードアウトしていきました。
 (アナログ時代に無双状態だった英Charlyも、生き残りはしましたが、衰退したという印象はいなめません。)

 RelicのCDは、私はアナログ盤を持っていないものを優先的に入手していました。
 CD棚をさっと探したところ、「モーリス・ウイリアムズ&ゾディアックス」と「チャネルズ(シャネルズ?)」が見つかりました。
 あるはずなのに、例によって行方不明なのが、コンピの"Soul Of Detroit"、Robert Ward & Ohio Untouhablesの"Hot Stuff"です。
 (後者は確認したいことがあったのですが…。)
 とりあえず、ジャケ画像のみ載せます。





 Falconsについては、ソニー・モンロー時代をまとめた編集盤CDを除けば、これまでCDを持っていませんでした。



 というわけで、今回の発売のインフォを見て楽しみにしていたのでした。

 本盤は、オリジナル・ファルコンズの以下の時期の音源を主に収録しています。

創設期
Eddie Floyd : lead tenor
Bob Manardo : tenor 
Tom Shetler : baritone 
Arnett Robinson : tenor 
Willie Schofield : bass

第二期
Eddie Floyd : lead tenor 
Joe Stubbs : lead tenor 
Mack Rice : baritone 
Willie Schofield : bass  
Lance Finnie : guitar 

第三期
Eddie Floyd : lead tenor
Wilson Pickett : lead tenor
Mack Rice : baritone
Willie Schofield : bass
Lance Finnie : guitar

 創設期は5人編成のボーカル・グループでしたが、ギターのランス・フィニーが加入してからは、4人のボーカル・プラス・ギタリストになっています。
 伴奏隊のうち、ランス・フィニーだけが正式メンバーとなったのは、何か理由があるのでしょうか。
 実は、Falconsは、フィニーの正式加入以前から、かっこいいギターが聴こえます。

 第三期のあと、一時期的に、Gene "Earl" Martinという人物がSchofieldと変わったりしましたが、Pickettの離脱後には、再度第二期の編成になったりしています。
 その後、オリジナル・ファルコンズからセカンド・ファルコンズへと移行していくのでした。

 さて、本盤は、創設期から第三期までの主な録音のうち、ピケットのアトランティックでの1stソロに収録された数曲をオミットした内容になっています。
 英Jasmineのこれまでの編集盤の例からいくと、これらを含む音源を多数加えて2枚組にするところでしょうが、今回はなぜか1枚ものにまとめています。

 アマゾン掲載のジャケ写真の右下には、「2CD SET」のロゴがありますが、これは実際に発売されたものにはありません。



 あるいは、当初は2枚組が企画され、プレス・リリースではアマゾン掲載の写真だったのかも知れません。
 (Jasmineのオフィシャル・サイトでは、正しい写真になっています。)

 さて、本盤は、主としてエディ・フロイド、ジョー・スタッブス、ウイルソン・ピケツトがリードをとった曲を中心に、ほぼ年代順に並べた編集となっています。
 
 2曲だけ、Little Beeという本名不明の女性シンガーがリードをとった曲があります。
 "Something Hit Me"と"Love At First Sight"がそうです。

 ところで、曲名の後に、(not originally Issued)と記されているものがありますが、これは発掘という意味での未発表曲ではなく、各レーベルで録音当時に発売しなかった音源という意味で、RelicでLPに収録されたものがほとんどです。(全く意味のない補記ですね。)

 本盤の収録曲で、私の知る範囲では、以下の4曲が初CD化(初ソフト化?)ではないかと思います。

2. This Day
3. Can This Be Christmas
8. This Heart Of Mine
9. Romanita

 最初の3曲が、Eddie Floydのリード、最後の1曲は、Mack Riceのリード・ボーカル曲で、"This Heart Of Mine"以外は、シングルのB面曲です。 
 この中では、古いスタイルで展開する曲に、新しさを感じさせるコーラスを付けた"This Heart Of Mine"が特に好きです。

 これだけでなく、本盤のEddie Floydのリード曲を聴くと、彼はFalcons時代から味があると思いました。
 ただ、本盤の後半に出てくるJoe Stubbsと比べてしまうと、やはり普通にうまいだけかな、とも感じます。
 これは、Joe Stubbsの個性の強さが比類のないものだからです。

 Joe Stubbsのリード曲、"You're So Fine"は、初期Falconsを代表するヒット曲で、アーリー・ソウルの名作です。
 私は、この曲を日本盤のコンピ「アメリカを聴こう」シリーズの1枚で初めて聴きました。

 この曲は、後期Falconsの代表曲、Pickettの"I Found a Love"の影に隠れがちです。
 (私の思うところ、楽曲としてのデュープ・ソウル・バラードのベスト3は、"I Found a Love"に、ガーネット・ミムズの"Cry Baby"とインプレッションズの"For Your Precious Love"だと考えています。)

 "You're So Fine"は、これらとは別の種類の魅力があり、やはり傑作だと思います。
 そして、私が昔から好きなのが、やっぱりStubbsのリード曲、トラック24の"You Must Know I Love You"です。
 これは、もっと評価していい曲じゃないでしょうか。

 他では、トラック11の"No Time For Fun"と、トラック12の"Please Don't Leave Me Dear"がいいです。
 この2曲のリードは誰でしょう?
 やはり、Eddie Floydかな。
 
 "No Time For Fun"からは、コースターズ風の楽しさを感じます。
 ロッキン・ギターも大活躍しています。

 そして、"Please Don't Leave Me Dear"の歌唱は、ジャッキー・ウイルソンを連想します。
 デトロイト周辺のシンガーは、どこかしらジャッキーへの憧憬を持っていそうですが、本盤収録曲に限れば、Eddie Floydと、Joe Stubbsの一部の歌唱に近い資質を感じました。
 Stubbsでは、トラック19の"Just For You Love"はいかがでしょう。

 一方で、聴きようによっては、Sam Cooke的なものもあります。
 例えば、トラック17の"I'll Never Find Another Girl Like You"とか…。
 これは、Floydのリードですね。

 "You're So Fine"は、今回繰り返し聴きました。
 そうすると、歌に入る前のイントロが、妙に気になってきたのです。
 このイントロの雰囲気って、何かに少し似てませんか?
 Sam Cookeの何か… かなり考えて、ようやく思いついたのが、Samではなく、Ovationsの"I'm Livin' Good"でした。
 どうでしょうか…あくまでイントロの印象です。

 さて、最後のあたり、Pickettのリード曲が続きます。
 トラック25の"Feels Good"からトラック29の"(I Don't Want No) Part Time Love"までです。
 さすが、バイタリティを感じる歌い方です。
 この時期のいくつかの曲は、Pickettのアトランティックの1ソロ、"In The Midnight Our"に収録されています。
 "Take This Love I've Got"と"Let's Kiss And Make Up"はそうだと思います。
 
 最後に入っている、トラック30の"What To Do"は、Ohio UntouchablesのBenny McCainがリードの曲で、Falcons名義で出されたようですが、Falconsの伴奏をOhio Untouchablesがやったというより、逆にOhio Untouchablesメインの曲のコーラスをFalconsがやったのかも知れません。

 "What To Do"は、Robert Ward & Ohio UntouchablesのCD(見つからないRelic盤)にも収録されています。
 これを聴き返して、同じ音源なのか確認したかったのですが、気持ちがあせるばかりで、現在のところまだ発見できていません。

 本盤は、Falconsの概要をさくっと知るには良いアルバムだと思います。



You Must Know I Love You by Falcons




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シャーリー&カンパニー、しばしばジェシー

 今回は、Shirley GoodmanとJesse Hillのデュオ・アルバムを聴きました。
 制作はHeuy P. Meauxで、78年にCrazy Cajun Recordsからリリースされました。

 これはちょっと意表をつく取り合わせですね。
 さらに、アルバム・タイトルがBarbara Lynnの名作で、期待度のボルテージが高まります。


You'll Lose A Good Thing
Shirley & Co.
Jesse Hill

Side One
1. Ivory Tower
2. My Children (Malcom J. Rebenneck) 
3. You'll Lose A Good Thing (Heuy P. Meaux)
4. (Oh Baby) We Got A Good Thing Going (Heuy P. Meaux) 
5. Too Much Too Soon (Dale Ward) 
Side Two
1. Certainly Hurting Me (Shirley Goodman)
2. I Dare You (Shirley Goodman)
3. Can't Fight Love (Malcom J. Rebenneck, Jesse Hill) 
4. Just A Little Ugly Part 1 (Malcom J. Rebenneck, Jesse Hill)
5. Just A Little Ugly Part 2 (Malcom J. Rebenneck, Jesse Hill)

 まず、最初に確認しておきましょう。
 ジャケをご覧ください。

 アーティスト名ですが、Shirley & Jesseではなく、左上に大きくShirley & Co.、そしてその下段に少しフォントを抑えてJesse Hillと配置されています。
 (アルバム・タイトルのフォントは更に小さいです。)

 一般的には、Shirley Goodmanより、Jesse Hillの方が世間の認知度が高いと思うのですが、この当時はそうではなかったのでしょうか。

 R&Bファンなら、Jesse Hillの名前は比較的有名だと思います。
 もちろん、Allen Toussaint制作の"Ooh-Poo-Pah-Doo"ですね。

 ただ、正直、私は彼の単独アルバムを持っていません。
 ワン・ヒット・ワンダーの印象が強い人です。
 "Ooh-Poo-Pah-Doo"は、Ray Charles好きのToussaintの趣味が出た一連の作品のひとつですね。
 私の中では、"Mother In Law"とひとくくりにしてしまいがちな曲でした。

 今回、70年代ものではありますが、Jesse Hillをまとめて聴くことが出来たいい機会でした。
 そのボーカルは、例えるなら、Lee DoseyやRobert Parkerを連想させる、焼き芋をほおばったような発声で、どこかユーモラスな感じがします。

 一方、Shirley Goodmanは、主として50年代にShirley & Leeとしてヒットを飛ばした、甲高い声が最大の個性になっている女性シンガーで、一度聴くと忘れられない印象を残す人です。
 50年代にはいつくかのヒットがありますが、代表曲はやはり"Let The Good Time Roll"です。

 そんなShirleyですが、相棒のLeonard Leeとコンビ解消したあと、72年のStonesの「メインストリートのならず者」では、バック・コーラスで参加しているらしいです。
 そして、本盤の表記にある"Shirley & Co."名義で、75年に一発ヒットを出しました。

 Shirley & Co.は、正確にはShirley & Companyです。
 一部の曲を聴いた限りでは、別にグループという感じはしないです。
 なぜ、こういうクレジットなのか私は知りません。

 "Shame Shame Shame"というJimmy Reedのブルースをディスコ調でやって、それなりに注目されたようです。
 それが、78年リリースの本盤で、Jesse Hillよりフォントが大きく表記されている理由だと理解しましょうか。

 さて、中身を聴いていきましょう。
 基本は二人のデュオですが、数曲ソロがあり、以下の通りです。

 Shirley Goodmanのソロ

B2. I Dare You

 Jesse Hillのソロ

A2. My Children
B4. Just A Little Ugly Part 1
B5. Just A Little Ugly Part 2

 Jesse Hillの担当曲で、Dr. Johnがライター・クレジットされているのが目を惹きます。

 Shirley & Co.名義を使っていますが、アルバム全体の印象はディスコではなく、古いR&Bのそれで嬉しいです。
 
 ただ、往年のニューオリンズR&B調は希薄で、むしろ8ビートで快調に歌い飛ばす展開が爽快です。
 70年代うんぬんもあまり意識にのぼりません。

 冒頭のA1"Ivory Tower"は、ShirleyとJesseが交互にソロ・パートを歌い、徐々にデュエットして盛り上げていく8ビートの曲で、やはりShirleyが初登場する瞬間は、素直に「キター」とはしゃいでしまいます。
 面白いのは、カスタネットの連打が印象に残ることで、まるで疑似スペクター・サウンドみたいです。

 続くJesseのソロ曲"My Children"は、Jesseの個性がフルに発揮されたソウル・ダンス曲で、Lee Doseyを思わせるリッチな歌声で聴かせてくれます。
 ミーターズ風ニューオリンズ・ファンクをイメージしているのかも知れません。

 そして、アルバム・タイトル曲の"You'll Lose A Good Thing"です。
 まともじゃないだろうとは予期していましたが、この飛びまくった仕上がりは、さすがShirleyです。
 耳に馴染んだ、あの有名な歌詞が、とてつもなくハイ・ピッチなボーカルで歌われるこの感じ、予想以上でした。
 そして、曲調は、原曲がもつセンチメントなスロー・バラードではなく、ここでもやはり快調に飛ばすミディアム・アップです。

 Jesseの語り風のリードでスタートし、Shirleyにバトンを渡したあと、さらに交互に歌い継ぐ、ユニークというほかない構成です。
 知らずに聴けば、「なにかどこかで聴いたような歌詞だなあ」と"You'll Lose A Good Thing"をすぐに連想できない可能性が高いです。

 リズムは若干ノーザンに接近したアレンジかなと思いますが、Jesseのとぼけたキャラクターが全開で、対抗するようにニューオリンズ風味を発散しています。
 ノーザンを連想するのは、インプレッションズ風(というか、"It's Alright"風)のリズム・ギターが印象に残るせいですね。

 " (Oh Baby) We Got A Good Thing Going"は、ノーザン的な曲調がさらにはっきりしたアレンジで、これはシカゴではなくデトロイト調のダンス・ナンバーに仕上がっています。
 とはいえ、Shirleyのワン・アンド・オンリーの個性は何物も飲み込んで突き進むのでした。

 A面ラストの"Too Much Too Soon"は、ShirleyがShirley & Leeのあと、60年代に即席で組んだデュオ、Shirley & Alfredの吹き込みのセルフ・カバーです。
 その時の相棒のAlfredは、実はBrenton Wood(本名Alfred Jesse Smith)のことで、日本での知名度は低いのではないかと思いますが、重要なアーリー・ソウル・シンガーだと思います。

 Brenton Woodの67年の代表曲、"Gimmie Little Sign"は、チカーノの人気曲でもあります。
 彼はルイジアナのシュリブポート出身ですが、ドゥワップからノーザンまで様々な曲調をこなせる、ユーティリティ・シンガーで、私は大好きです。

 さて、少し脱線しましたので戻ります。
 B面は、Shirleyをメインとする調子のいいノーザン・ダンサーで締める前半と、Jesseメインのニューオリンズ・ファンクでイナタく進行する後半に大別されます。

 Shirleyのソロ、"I Dare You"では、カスタネットとタンバリンの連打が効果的に使われていて、再びウォール・オブ・サウンドを連想させるアレンジになっています。

 "Can't Fight Love"は、Jesseに相性のいい(というかLee Doseyスタイル)のニューオリンズ・ファンクですが、ここではShirleyが最高の絡みをしていて、B面のハイライトです。

 そして、"Just A Little Ugly"もまた、同種のニューオリンズ・ファンクで、やはりLee Doseyを連想します。
 喧噪のSEを効果的に使った、くせになるグルーヴを持つ曲です。
 よく転がるピアノと跳ねるベースのアンサンブルに、ブラスのブロウが切り込んでくるところが良く、繰り返し聴きたくなります。

 70年代後半のこの時期にも、オールド・スタイルのR&Bをイナタく決めてくれた二人に拍手したいです。
 (Jesse Hillにも、俄然興味がわいてきました。)


Can't Fight Love by Shirley & Jesse




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女の子は君を狙ってる

 来月の話ではありますが、Curtis Mayfieldの仕事をまとめたレアなコンピがリリースされるようで、気になっています。
 "Curtis Mayfield's Windy City Winners"というタイトルです。
 ご存じでしょうか。

 今回は、そのコンピの目玉の一つでもある、The FascinationsのCDを引っ張り出してきました。
 97年にSeaquelからリリースされたものです。

 
Out To Getcha !
The Fascinations

The Fascinations
1. Girls Are Out to Get You (Mayfield)
2. You'll Be Sorry (Draper, Mayfield)
3. I'm so Lucky (He Loves Me) (Draper)
4. Such a Fool (Mayfield)
5. I'm in Love (Mayfield)
6. O.K. for You (Mayfield)
7. I Can't Stay Away from You (Mayfield)
8. Say It Isn't So [Take 4] [Take 4] (Mayfield)
9. Say It Isn't So [Take 8] [Take 8] (Mayfield)
10. Just Another Reason (Mayfield)
11. Hold On (Mayfield)
12. Trusting in You (Mayfield)
13. Crazy (unknown)
The Mayfield Singers
14. I've Been Trying (Mayfield)
15. If (Draper)
The Mayfield Players
16. If-Strumental (Draper)
17. Still Trying (Mayfield)
18. Don't Start None (Draper)
19. Little Bird (Draper)
20. Lucky (Draper)
21. Foolish One (Mayfield)
22. So Sorry (Mayfield)
23. Out to Get'cha (Mayfield)

 50年代も終わろうとしていた頃の話だと思います。
 自動車産業の街、デトロイトに、芸能界での成功を夢見る二人の女の子がいました。
 まだ、モータウンが一大帝国を築く前のことです。

 二人の女の子、シャーリーとマーサには、夢がありました。
 女の子だけのボーカル・グループを作ってアイドルになることです。
 夢いっぱいの二人は、既にグループ名を決めていました。
 Sabre-ettesです。

 ある日、二人は夢のため、最初の行動を起こします。
 メンバーを募集したのです。
 オーディションの結果、三人の女の子を加え、5人組のグループが結成されました。

 この時、加わったのが、ゴスペル・グループ出身のボスウェル姉妹とファーン・ブレッドソーという女の子でした。
 オリジナル・サブレッツのメンバーは以下のとおりです。

Shirley Walker
Martha Reeves
Bernadine Smith (Boswell)
Joanne Levell (Boswell)
Fern Bledsoe

 まもなく、彼女たちは、The Fascinationsと改名します。
 ただ、この5人組で実質的な活動をしたのかは不明です。
 なぜなら、発起人の一人、マーサ・リーヴスが60年にグループを去ったからです。

 以後、メンバーを補充することなく、4人組として活動することになります。
 そして、62年には、カーティスと出会い、彼の後押しでシカゴに活動の場を移します。

 一方、グループを離れたマーサは、下積みも経験しましたが、マーヴィン・ゲイのコーラスに参加したことからチャンスをつかみ、大きな成功を得ます。

 
 というわけで、ファッシネイションズは、マーサ・リーヴスの最初のグループというトリビアが物珍しいですが、実は実力派グループです。

 基本的には、キュートなガール・グループとしての魅力が前面に出ていますが、「たった今教会から来ました」という感じのパワフルな面も持ち合わせていたのです。

 本アルバムでは、まず冒頭の"Girls Are Out to Get You"に注目です。

 彼女たちの代表曲であり、新しいコンピでもオープニングを飾る名曲です。
 サビでの「ガールザー アウタ ゲッチャ」のリフレインが耳に残る、ウキウキ感爆発のシカゴ・ダンサーです。
 カーティス版シュープリームスといったところでしょうか。

 続く"You'll Be Sorry"は、うって変わってディープな雰囲気のイントロから、アリサ・フランクリンばりの高音域を屈指するリード・シンガーが、頭のてっぺんから素晴らしい声を出しています。

 スローではこの曲でしょう。
 私が最近特に注目している、ディープなノーザンです。
 このリードは、誰ですか?
 バーナディーンですか。

 ディープでは、もう1曲、"Hold On"もお奨めです。
 ここでは、キュートさは何処へやら、ストロングなボーカルがさく裂しています。
 やはり、高音域でのボーカルが光っています。

 ところで、本アルバムの半分は、別のグループの音源が入っています。
 インスト・バンドのMayfield Playersと、男性ボーカル・グループのMayfield Singersです。
 Mayfield Singersには、リロイ・ハトソンやダニー・ハサウェイが在籍していたとの話もあるようです。

 Mayfield Singersの"I've Been Trying"は名曲ですね。
 この曲をやっていたのは、ジェリー・バトラー在籍時のインプレッションズだったでしょうか?
 私は、初期のインプレッションズや、カーティス制作のジェリー・バトラー、ジーン・チャンドラーなどが好きです。 

 当時のカーティスの才能、先進性は、ずば抜けていたと思います。
 "Peaple Get Ready"のリリースが65年だというのが凄いです。
 ひとり、時代の先端を行って、既に完成していると感じます。

 同じ年、オーティスは「愛しすぎて」を、ソロモン・バークは"Got to Get You Off My Mind"を出しました。
 このあたり、歴史というものは、秩序だって順々と進んでいくのではなく、いろんなことが同時進行しているのだなと感じます。
 バークは確かに凄い人ですが、何となくオーティスより前の世代の人だと思いがちです。
 
 カーティスは、時代をリードして、ソウルの先頭を走っていたと思います。
 逆に言いますと、早熟でピークが早かった気もします。

 本アルバムは、前半のFascinationsがメインです。
 素晴らしいガールズ・サウンドを堪能できますが、そのいくつかは、モータウンのサウンドを模したスタイルと言えなくもないです。

 ではありますが、これもまた、まぎれもなくカーティスのDNAなのだとも感じました。
 至福の1枚です。



Girls Are Out to Get Youです。





ヘイ、アレックス

 Arthur Alexanderは、大好きな歌手です。
 今回、オリジナル・アルバム(だと思います)にボートラが追加されたCDを聴きました。
 ブックレット裏に、オリジナルのバック・カバーが復刻されていて、これを見るとカナダ盤が原盤のようです。


You Better Move On
Arthur Alexander

1. You Better Move On (LP Version)(Arthur Alexander)
2. Love Letters (Edward Heyman, Victer Young)
3. Hey ! Baby ! (Margaret Cobb, Bluce Channel)
4. Funny How Time Slips Away (Willie Nelson)
5. Young World (Jerry Fuller)
6. A Thousand Stars (Gene Parson)
7. A Hundred Pounds Of Clay (Bob Elgin, Luther Dixon, Kay Rodgers)
8. Lover, Prease Come Back (Bill Swan)
9. Love Me Warm And Tender (Paul Anka)
10. The Wanderer (E.Maresca)
11. Don't Break The Heart That Loves You (Benny Davis, Ted Murray)
12. You're The Reason (Bobby Edwards, Mildred Imes)
13. Anna(Go To Him) (Alexander)
14. A Shot Of Rhythm And Blues (Thompson)
15. Go Home Girl (Alexander)
16. Soldier Of Love (Cason, Moon)
17. Dream Girl (Jerry Crutchfield)
18. You Don't Care (Willis, Ryals)
19. Black Night (Robinson)
20. You Better Move On (Single Virsion)(Alexander)

 トラック12の"You're The Reason"までがオリジナル・アルバム収録曲で、トラック13以下は、CD化の際に追加されたボートラです。
 ボーナス・トラックは、ほとんど良く知られた曲ばかりで、さほど美味しさはありません。

 ところが、逆にオリジナル盤収録曲は、これまでLP時代の英チャーリーのリイシューや、CD時代になってからの英エイスのリイシューに含まれていない曲がたくさん入っていて、私のような後追いのファンには嬉しいプレゼントです。

 恐らくは、アルバム・タイトル曲"You Better Move On"のヒットにあやかって急きょ作られたものではないでしようか。
 同曲とラストの"You're The Reason"を柱に、当時ヒットしていたであろう曲のカバーを散りばめた作りになっています。

 その選曲は、なかなか興味深いものがあります。
 私の注目は、以下の4曲です。

3. Hey ! Baby !
4. Funny How Time Slips Away
8. Lover, Prease Come Back
10. The Wanderer

 まず、ブルース・チャネルの"Hey ! Baby !"に驚きます。
 ビートルズの"Love Me Do"に、大きな影響を与えた曲として知られている曲です。
 原曲で、イントロのハーモニカをプレイしたのは、デルバート・マクリントンでした。
 このチョイスは、ハッピー・サプライズです。
 アーサー盤は、ほぼ原曲のアレンジどおりにカバーしています。

 "Funny How Time Slips Away"は、"Night Life"と並ぶ、ウイリー・ネルソンの初期の代表曲のカバーです。
 原曲は、ウイリー自身による、ガット・ギターの絶妙のバッキングが耳に残る、ブルージーなカントリー・バラードでした。
 ここでも、原曲のイメージを大事にしたカバーとなっていて、いい感じです。
 黒人のアーサー盤より、ウイリー盤の方が黒っぽく思えるのも面白い発見でした。

 "Lover, Prease Come Back"は、のちに"Lover Prease"として新たに録音し、ワーナーからリリースしている曲です。
 また、その未発表バージョン(別ミックス?)が、英エイスのリイシューCD、"The Monument Years"に収録されています。
 アーサーのお気に入りだったのでしょう。
 いい曲です。

 作者のビリー・スワンという人は、私がよくジョー・サウスと混同してしまう人です。
 白人ですよね?
 確かロカビリーの録音があったのでは…。
 ちなみに、オーギー・マイヤースは、86年のソロ作、"My Main Squeeze"で、"Lovers Prease"としてカバーしていました。

 "The Wanderer"は、問答無用でかっこいい曲です。
 原曲は、ディオン&ベルモンツですね。
 全体の不良っぽい作りがたまりません。
 一時期、ストレイ・キャッツが公演のオープニングで流していた曲でした。
 アーサー盤は、やはり原曲を変にフェイクしたりせず、ストレートにカバーしています。
 これはもう、曲の良さが光っています。

 その他の曲は、オールディーズ・ポップスと、カントリーのカバーだと思います。
 特に、ポップ・カントリーのカバーだと思われるものが、アーサーの持ち味にぴったりで、不思議といいますか、むしろ当然というべきなのでしょうか、その暖かい歌いくちに、改めて感心しました。

 最後に、冒頭に収録されている、"You Better Move On"のLPバージョンにも触れたいと思います。
 シングルを買わずに、この曲を目当てにLPを買った人は驚いたことでしょう。
 とてもトロピカルなアレンジがなされいていて、まるでドリフターズの一連のヒット曲を連想させる雰囲気です。
 アトランティック・レコード・サウンドとでも言いたい仕上がりですね。
 これはれこれで楽しいです。

 そういう視点で、再度通して聴きますと、全体的にアトランティック風のサウンドに感じました。
 もちろん、曲によって温度差はありますが、アーサーのこのハマり具合はお見事といいたいです。

 ボーナス・トラックは、むしろ不要な気もしますが、やはり聴き惚れずにはいられない、名曲ぞろいだと思います。
 "Anna"のドラムスには、いつ聴いても惹きつけられます。
 この不思議な魅力は何でしょう。

 この手のオリジナル・アルバムが他にもあるのなら、ぜひ聴いてみたいです。


Annaです。




関連記事はちら

オー・マイ・ゴータマ・シッダルタ
本家ヘタウマ
ピアノ・ウーマン
Hey Baby !



奇妙な感覚

 私は整理が出来ません。
 また、私は段どりが悪い人間です。
 かつて、そのことを指摘されたとき、あまりにも痛いところをつかれたため、相手が先輩だったにもかかわらず、「二度手間が好きなんです。」と逆切れしたことがありました。

 そんな私が、人生何度目かの「整理をする」という決意をしました。
 昨年の7月のことです。
 いつものよくある決意でしたが、ひとつだけ初めてのことを行いました。
 それが、このブログを始めるということだったのです。


One More Time
Billy Stewart

1. Billy's Blues, Part Two (Billy Stewart, Williams)'56 Chess1625
2. Fat Boy (Billy Stewart, Ellas McDaniel)'62 Chess1820
3. Reap What You Sow (Billy Stewart)'62 Chess1820
4. Sugar & Spice (Billy Stewart)'62 Chess1868
5. Strange Feeling (Billy Stewart)'63 Chess1868
6. Count Me Out (F.McKinly, C.Smith)'63 Chess1888
7. I Do Love You (Billy Stewart)'64 Chess1922
8. Keep Lovin' (Smith, Davis, Miner)'64 Chess1922
9. Sitting In The Park (Billy Stewart) '64 Chess LP1496
10. Love Me (Shena De Mell, Suger Pie DeSanto)'66 Chess1960
11. Summertime (George Gershwin, Dubose Heyward)'65 Chess LP1499
12. How Nice It Is (Billy Stewart)'65 Chess1941
13. Because I Love You (Miner, Smith, Davis)'65 Chess1948
14. Every Day I Have The Blues (Peter Chatman)'66 Chess LP1513
15. Secret Love (Sammy Fain, Paul F.Webster)'66 Chess1978
16. Cross My Heart (Pinchback, Henderson, Haygood)'67 Chess2002
17. One More Time (Willie Dixon)rec'68 previously unreleased
18. Golly Golly Gee (unknown)rec'67 previously unreleased
19. Tell Me The Truth (Johnnie Mae Dunson)'68 Chess2053
20. I'm In Love (Oh, Yes I Am) (Paul Gayten, Bobby Russell, Clarrence Henry)'69 Chess2063
 
 Billy Stewartは、日本ではほとんど人気がない人だと思います。
 日本では、ハイ・テナーの人って、人気が出にくいですね。
 これがファルセットになると、また別の需要があるんでしょうが、バリトン系のディープ・ソウル・シンガーが強い日本では、なかなかに苦戦します。

 そんななかで、私が好きなのは、クライド・マクファターです。
 ハイ・テナー・シンガーの王道を行く人ですね。

 その点、ビリー・スチュワートは、異端かも知れません。
 歌い方にすごい特徴があって、ワン・アンド・オンリーの魅力を感じます。
 それに、今回聴き返してみて思ったのですが、ハイ・テナーというほどは、常時高い声を出してませんね。
 思いこみはこわいです。
 
 さて、今回、初めて作者クレジットを意識して聴いたのですが、思いのほか自作がいいと思いました。
 "Reap What You Sow"、"Sugar & Spice"、"Strange Feeling"、"I Do Love You"など、すべてが水準以上の出来だと思います。

 なかでも、"Strange Feeling"が素晴らしいです。
 出だしから、いきなりトップ・ギアで突っ走るような、手加減なしのすごさです。
 声をあたかも楽器のように、縦横無尽に屈指しています。
 いろんなポジションを瞬時に行き来するさまに、圧倒されます。

 この世界は、ビリーにしか出させない独特のものだと思います。
 この曲は、コンピにもよくチョイスされているんじゃないでしょうか。
 ビリーの代表曲のひとつだと思います。

 そして、スイートなスロー・バラードでは、"I Do Love You"がいいですね。
 ここでは、かなり高い声を出しています。
 いかにも、チカーノに好まれそうなサウンドだと思いました。

 チカーノといえば、Sunny & Sunlinersとビリー・スチュワートの関係も、私の関心を高めてくれます。
 サニー・オスナに影響を与えた黒人シンガーとしては、しばしばリトル・アンソニーの名前が出されますが、ビリー・スチュワートも忘れてはいけない一人だと思います。
 サニー&サンライナーズは、"Sittin In The Park"と、"Cross My Heart"をカバーしていました。
  
 このアルバムの収録曲は、60年代の録音がほとんどですが、1曲だけ56年リリースの曲があり、たいへん興味深いです。
 なぜかといいますと、この曲のバックには、ボ・ディドリーと相棒のジェロームが参加しているのです。 
 もちろん、ボがギターを、ジェロームがマラカスを担当しています。

 ここでのギターが、50sロカビリーか、サーフかという感じで、他の曲とまるで違う雰囲気を作っています。
 ただ、ボ得意のジャングル・ビートも、トレモロ・リフも出てきません。
 リバーブ(?)のかかったドラムスをバックに、ギターが飛びまくって単弦弾きをしまくっています。
 クレジットを見なければ、ボだとは気付かないです。

 この曲のギターが、ボだと思って聴くと、次の"Fat Boy"も、ボが参加しているのではないかと想像してしまいます。
 この曲の伴奏者はUnkwonとなっていますが、同じようなギターが聴けます。

 "Fat Boy"での、ビリーの共作者Ellas McDanielが、ボ・ディドリーの本名であるのは、よく知られているところです。
 ただ、ボとビリーの相性はどうでしょうか。
 まあ、他の曲が良すぎると言っておきましょう。

 他にも、作者クレジットで気になる曲がいくつかあります。
 Love Meは、シュガー・パイ・デサントの名前があり、驚きます。
 これは、ビリーのスタイルに合わせたような曲で、彼の魅力を引き出していると感じました。

 そして、ウイリー・ディクスンが書いた"One More Time"は、未発表曲だったようですが、ビリーの通常のスタイルとは違うタイプの曲です。
 しかし、このリズム&ブルース臭は、別の魅力を見せてくれていてよいです。
 このタイプがもっとあるなら聴いてみたいです。

 ポール・ゲイトン、クラレンス・ヘンリー作の曲があるのも興味深いですね。
 I'm In Love (Oh, Yes I Am) という曲です。
 これがなんとも、王道のスイート・ソウル・バラードに仕上がっていて、ニューオリンズのセカンド・ラインとかを想像して身構えていると、肩すかしをくらわされます。
 曲としては満足です。
 しかし、ニューオリンズR&Bスタイルのビリーも聴きたかったなと思います。

 最後に、"Summertime"にも触れておきたいと思います。
 この大スタンダードを、ビリーは唯我独尊の世界で調理しています。
 バックのオケが大仰な気もしますが、この世界は誰も真似できないと思いますので、やはり「有り」です。

 さまざまな魅力を見せてくれる、美味しい1枚です。

 この時代が最盛期なのでしょうが、たとえ習作時代であったとしても、私は50年代の録音がもっと聴いてみたいなと、密かに考えています。



Strange Feelngです。




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ウエストサイド・ソウル



きみたちはひとりじゃない

 Roy Hamiltonをじっくり聴いてみました。
 これは、英Jasmineから10年にリリースされた編集盤で、2枚組の50年代シングル・コレクションです。
 これを聴いて、私は自分の思いこみの誤りに気が付きました。

 私は、ロイ・ハミルトンという人は、もっと退屈な歌手だと思っていたのです。
 しかし、実際に聴いた彼は、私の予想とは違い、思ったより良い歌手だったのでした。

 
The Difinitive '50s Singles Collection
Roy Hamilton

Disc: 1
1. You'll Never Walk Alone (Rodgers, Hammerstein) R&B#1
2. I'm Gonna Sit Right Down And Cry (Biggs, Thomas)
3. If I Loved You (Rodgers, Hammerstein) R&B#4
4. So Let There Be Love (Cook)
5. Ebb Tide (Maxwell, Sigman) R&B#5
6. Beware (Twomey, Wise, Weisman)
7. Hurt (Jacobs) R&B#8
8. Star Of Love (Hinkson, Hamilton)
9. I Believe (Graham, Stillman, Drake)
10. If You Are But A Dream (Fulton, Jaffe, Bonx)
11. Unchained Melody (North, Zaret) R&B#1, Pop#9
12. From Here To Eternity (Wells, Karger)
13. Forgive This Fool (Cook) R&B#10, Pop#30
14. You Wanted To Change Me (Freed, Moore)
15. A Little Voice (Hamilton)
16. All This Is Mine (Richards, Reid)
17. Without A Song (Youmans, Eliscu, Rose) Pop#77
18. Cuban Love Song (Fields, McHugh, Stothart)
19. Everybodys Got A Home (Rodgers, Hammerstein) Pop#42
20. Take Me With You (David, Carr)
21. There Goes My Heart (Davis, Silver)
22. Walk Along With Kings (Merrill)
23. Somebody Somewhere (Loesser)
24. Since I Fell For You (Johnson)
25. I Took My Grief To Him (Horton, Laverne, Cook)
26. Chained (Hamilton)
Disc: 2
1. A Simple Prayer (Kohen)
2. A Mothers Love (Owens)
3. My Faith My Hope My Love (Burford, Ronald)
4. So Long (Morgan, Harris, Melsher) R&B#14
5. The Aisle (Dawn Smith, Weiner)
6. That Old Feeling (Fain, Brown)
7. (All Of A Sudden) My Heart Sings (Rome, Herpin)
8. I'm Gonna Lock You In My Heart (Thomas)
9. The Right To Love (Raleigh, Wolf)
10. Don't Let Go (Stone) R&B#2, Pop#13
11. Crazy Feelin (Sharp, Teifer)
12. In A Dream (Otis, Benton, Colacral)
13. Lips (Leiber, Staller)
14. Jungle Fever (Cook)
15. Wait For Me (Stone)
16. Everything (Benton, Otis)
17. Pledging My Love (Robey, Washington) Pop#45
18. My One And Only Love (Mellin, Wood)
19. It's Never Too Late (Cook)
20. Somewhere Along The Way (Gallop, Adams)
21. I Need Your Lovin (Cook) R&B#14, Pop#62
22. Blue Prelude (Bishop, Jenkins)
23. Time Marches On (Sedaka) Pop#84
24. Take It Easy Joe (Cook)
25. A Great Romance (Dixon, Dean, Schowalter)
26. I'm On My Way Back Home (Singleton, Bell, Watkins)

 黒人シンガーではありますが、あくの強さがないです。
 むしろ、その音楽は白っぽいとさえいえるかも知れません。

 しかし私は、思いのほか気に入りました。
 そして、そのロイのサウンドを聴きながら、ある考えが頭をよぎっていたのです。

 ロイのパフォーマンスのいくつかは、仮に白人シンガーによるものだとすれば、充分以上に黒っぽいと言われたに違いないと…。

 ライナーによれば、彼は若かりし日、ジョージアの教会のクワイアで歌っていたとのことです。
 白人向けのスムースな歌声を聴かせているイメージが強いロイですが、この人もルーツは教会にあったのでした。

 さて、2枚組のうち、ディスク1は主として50年代前半、ディスク2は後半の録音を収録しています。
 ロイの代表曲の大半はディスク1に収められていますが、この50年代前半の時期は、ロイが(あるいはプロデューサーが)ナット・コールあたりを意識していた時期だと思われます。

 代表曲、You'll Never Walk Aloneは、54年のNo,1リズム・アンド・ブルース・ヒットです。
 この曲は、多分カバーが多数あると思いますが、60sビート・ファンとしては、ジェリー&ペイスメイカーズ盤ですね。
 まあ、当時はそれほど好きではなかったですが…。

 そして、ヒットこそしていませんが、I'm Gonna Sit Right Down And Cryがいいです。
 この曲は、エルヴィス盤の印象が強く、大好きな曲です。
 ビートルズには、BBC録音がありました。
 ロイのバージョンはおとなしめですが、曲そのものが良く聴き惚れずにはいられません。

 その他、Ebb TideやUnchained Melodyといった有名なヒットもありますが、私にはそれほど迫ってきません。

 それよりも、ディスク2の方が、私には好感度が高い曲が多いです。
 50年代後半になると、教会への回帰といいますか、あるいはアーリー・ソウル時代到来ということでしょうか、私好みのパフォーマンスが増えているように思います。

 こちらは、曲によっては、チャーリー・リッチや、60年代後半の原点回帰時代のエルヴィスあたりを思わせる、ソウルフルな咽喉を聴かせています。

 私の思うところ、エルヴィスのアップのパフォーマンスに大きな影響を与えたのが、ジャッキー・ウイルソンだとすれば、スローのそれはロイ・ハミルトンかも知れない、そう私は思うようになりました。
 この二人に共通するのは、時にセミ・オペラチックになる歌い方でしょうか。
 後期のエルヴィスのバラードを好まない方もいるでしょうが、いまいちど聴き返してみましょう。

 ディスク2では、ステレオ録音の最初のR&Bヒットといわれている(らしい)、58年のDon't Let Goが最高にいかしています。
 この曲は、ジェシー・ストーン(チャールズ・カルホーン他別名多数)が書いた曲で、私は長い間、てっきり白人ライターの手によるヒルビリー・ブギだと思っていました。

 私には、アスリープ・アット・ザ・ホイール盤や、ビル・カーチェン盤の印象が強い名曲です。
 これは何度聴いても良いですね。
 声の出し方など、エルヴィスが憧れたのも分かる気がします。
 オーギー・マイヤースもソロ・アルバムでやっていました。

 アップでは、I'm Gonna Lock You In My Heartも調子のいい曲で、私などは、ボブ・ウィルズあたりにウエスタン・スイング・スタイルでやってほしかった曲です。

 また、もうひとつのスートン作品、Wait For Meでは、いかしたゴスペル調コーラスとロカビリー風のギターがミックスされた、これも再評価したい佳曲です。
 ある意味、ロイは、カントリー・ソウルの隠れた(?)パイオニアかも、などと思ったりもします。

 そういった認識のもと聴き返すと、スローの曲がソウルフルに聴こえてくるから不思議です。
 この時期の録音は、こ綺麗なストリングスや、お上品なコーラスなどが若干気にかかるとはいえ、ロイのボーカルからは色気が感じられます。
 
 ジョニー・エイスのPredging My Loveは、誰がやっても名曲ですが、間奏でロイのジェントルなモノローグが入り、アダルトな雰囲気で迫ります。
 
 50年代最後のヒット曲、I Need Your Lovinでは、野卑にやろうとしても上品さが隠しきれないといったきらいもありますが、ボップな魅力が出たパフォーマンスだと思います。

 ポップな魅力といえば、A Great Romanceも好きな曲です。
 そして、ラストのスロー、I'm On My Way Back Homeは、ソロモン・バークの初期のカントリー・カバー曲と共通するアーリー・ソウルの魅力を感じます。
 
 ロイは40歳で早世した人で、60年代が晩年ということになりますが、私はぜひ聴いてみたいと思うようになりました。



Don't Let Goです。




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オーギーに首ったけ






銀の月光の下で

 Jackie Wilsonのちょっと面白い編集盤が出ていることを知ったので聴いてみました。
 09年に英Jasmineからリリースされたものなんですが、この英jasmineというレーベルは、最近、私が気になって注目している会社です。


Here Comes Jackie Wilson 1953-1958
Jackie Wilson
 
Billy Ward and the Dominoes
1. You Can't Keep A Good Man Down (Ward, Marks)
2. Rags To Riches (Adler, Rose)
3. Christmas In Heaven (Ward)
4. Until The Real Thing Comes Along (Cahn, Chaplin, Freeman, Holiner, Nichols)
5. I'm Gonna Move To The Outskirts Of Town (Jordan, Weldon)
6. Three Coins In The Fountain (Cahn, Styne)
7. St Therese Of The Roses (Harris, Strauss)
8. St Louis Blues (Handy)
Jackie Wilson
9. Reet Petite (The Finest Girl You Ever Want To Meet) (Carlo, Gordy)
10. By The Light Of The Silvery Moon (Madden, Edwards)
11. To Be Loved (Gordy, Carlo, Gordy)
12. Come Back To Me (Wilson)
13. As Long As I Live (Tucker, Weatherspoon)
14. I'm Wanderin' (Carlo, Gordy)
15. We Have Love (Gordy, Carlo, Gordy)
16. Singin' A Song (Wilson, Wilson, Wilson)
17. Lonely Teardrops (Gordy, Carlo, Gordy)
18. In The Blue Of The Evening (D'Artega, Adair)
19. That's Why (I Love You) (Gordy, Carlo, Gordy)
20. Love Is All (Lehmonn, Lebowsky)
21. Danny Boy (Weatherly)
22. Right Now (Wolf, Starr)
23. You Better Know It (Wilson, Henry)
24. Etcetra (Carlo, Gordy)
25. Hush A Bye (Scott, Belasco)

 英Jasmineは、独Bear Familyと少し似た雰囲気をもった会社で、もともとは古いカントリーのリイシューを中心にリリースしていた会社ですが、数年前からリズム&ブルースにも力を入れるようになりました。

 現在は、月4,5枚のペースで、カントリー、リズム&ブルース、スイング、ポピュラー・ソングなどをリリースしています。
 ちなみに、今名前をあげたサブ・ジャンルには、それぞれ「古い」という修飾語が付きます。

 独Bear Familyと英Jasmineの共通点は、コンセプトを持ったリイシューを提供しようという姿勢です。
 英Jasmineは、シングル両面のコンプリート集や、CD2枚組に複数のオリジナル・アルバムを収録するなど、なかなかアイデアが豊富で、魅力的な仕事に取り組んでいます。

 一方、独Bear Familyは、ノー・アイデアこそコンセプトという感じで、徹底してコンプリート集、レア音源の発掘に取り組んでいます。
 2つの会社は、一見差異が多いように感じられますが、実は共通点が多い会社なのでした。

 大きな違いをいえば、英Jasmineが廉価盤レーベルのイメージがあることです。
 事実、内容に比して安価という印象があります。
 対して、独Bear Familyは、ギリシヤ、アイルランド危機や、勝ち組のドイツが乗っかっている世界通貨安政策など、ユーロ危機が叫ばれるさまざまな要因の中で、なぜか値崩れしないレーベルです。 

 独Bear Familyでは、好評のRocksシリーズに続き、新たにBalladシリーズがリリースされ始めていて、注目です。
 もう少し安価になればいいのですが…。

 さて、本アルバムです。
 このアルバムは、ジャッキー・ウイルソンの50年代のシングル集となっていますが、興味深いのは、ジャッキーがソロになる前に在籍していたグループ、Billy Ward and the Dominoesの音源が収録されていることです。

 トラック1から8までが、ジャッキーがリードを取るドミノズの作品になります。
 ビリー・ワード&ザ・ドミノズは、ドリフターズを組む前のクライド・マクファターが在籍して、リード・シンガーを務めていたボーカル・グループです。
 ブルージーなスタイルのグループで、バード・グループとドゥ・ワップの中間くらいに位置する時期のグルーブですね。
 同系統のグループでは、クローバーズや、ファイヴ・ロイヤルズなどがあげられます。

 収録された8曲の中で、どうしても注目してしまうのは、Rags To Richesでしょう。
 この曲は、ドミノズがオリジナルなのでしょうか?
 Tex-Mex音楽のファンには、お馴染みの曲ですね。
 Sunny and the Sunlinersのレパートリーです。

 サニー・オスナは、この曲を何度も繰り返し吹き込んでいると思います。
 60年代のヴィンテージ期はもちろん、リバイバル期以降、現在にいたるまで、折につけ新たに録音していると思われます。
 私の手元にある近作では、03年のGoing Back In Timeでやっています。
 また、少し古いですが、89年のSunny's Goldでは、Talk To Meとのメドレーで吹き込まれています。

 一般的には、トニー・ベネット盤がよく知られているようですので、おそらくは、古いポピュラー・ソングが原曲だと思われますが、リズム&ブルースでは、ドミノズ盤が最初のような気がします。
 だとすれば、サニー&サンライナーズに直接の影響を与えたバージョンである可能性は高いと思います。

 サニー&サンライナーズがお手本とした黒人ボーカル・グループとしては、まずLittle Anthony & the Imperialsが上げられます。
 もし、ドミノズに関する推測が当たっていれば、サニー・オスナを推しメンとする私としては、彼が影響を受けた重要グループとして見直したい思いです。
 ドミノズ盤では、ジャッキーのオペラチックな、ろうろうとした歌声が特徴的な仕上がりになっています。

 さて、ジャッキーのソロ録音も聴きましょう。
 ここに収められているのは、初期の音源ばかりです。
 ベリー・ゴーディ絡みの曲が多いことに改めて気付かされます。
 そして、通常のベスト盤なら当然入っているだろう曲が入っていません。

 私は、それほどジャッキー・ファンというわけではなかったので、CDではベスト盤を1枚、コパのライヴを1枚持っているくらいです。
 そんな私が、ジャッキーの曲といって思いつくのは、Reet Petite、Higher and Higherは別格として、次に思いつくのは、I'll Be SatisfiedとA Woman, A Lover, A Friendです。

 そういう意味では、この編集盤は若干物足りないところもありますが、今まで知らなかった曲の魅力を知らせてくれた1枚になりました。

 By The Light Of The Silvery Moonは、リトル・リチャード盤の印象が強烈な曲で、大好きな曲ですが、リチャード盤が特異なバージョンである可能性は高いです。
 原曲は、ポピュラー・ヒットでしょうか?
 あるいは、ゴスペルでしょうか?
 あくの強いリチャード盤で知っていた曲を、別のスタイルで聴けたのが嬉しかったです。
 ジャッキー盤を聴く限りでは、ポピュラー・ヒットが元ネタのような気がします。
 ここでは、ジャッキーが細かい発声の技巧を使っています。

 ジャッキーの自作では、Come Back To Meが面白いです。
 スタイルとしては、ドゥ・ワップのような感じですが、ジャッキーの歌い方がワイルドで、ラヴァーン・ベイカーみたいです。
 古いスタイルの曲を新しい感覚で聴かせた隠れた佳曲だと思いました。

 世界一のお調子者ソングとしては、Etcetraも面白いです。
 ジャッキーには、こういう曲があっています。
 作者を見ると、ベリー・ゴーディでした。

 この初期時代をドキュメントしたアルバムは、ゴーディの曲の良さで魅力を開花させつつも、様々な新しい試みにも取り組む姿が捉えられている、そんな1枚だと思います。



ドミノズ盤、Rags To Richesです。




 

お涙ちょうだいませ

 コンピレーションが好きです。
 以前、さほど期待せずに買って、予想外に気に入った1枚です。
収録されているアーティストのバラエティさもマルです。


Tearjerkers

1.Losers Weepers : Etta James
2.She Will Break Your Heart : Laula Lee
3.You Left The Water Running : Maurice And Mac
4.Since I Fell For You : Fontella Bass
5.I Can't Make It WithoutYou : Fred Hughes  
6.Somewhere Crying : Irma Thomas
7.Only Time Will Tell : Etta James
8.Temptation 'Bout To Get Me : Night Brothers
9.I Had A Talk With My Man : Mitty Collier
10.Nothing But Tears : Merlena Shaw
11.Need To Belong : Laura Lee
12.Without A Woman : Kip Anderson
13.You'll Never Know : Fontella Bass
14.After The Laughter (Here Come The Tears) : Gene Chandler
15.It's Mighty Hard : Laura Lee
16.I'd Rather Go Blind : Etta James
17.Have Pity On Me : Billy Young
18.Drown In My Own Tears : Mitty Collier
19.Yours Until Tomorrow : Irma Thomas
20.I Fooled You This Time : Gene Chandler


 このアルバムは、05年にリリースされた、チェス録音の編集盤の1枚なんですが、アルバム・タイトルのTearjerkerというのは、「お涙頂戴もの」くらいの意味でしょうか。

 失恋ソング中心のコンピということで正解ですか? 
 そういったコンセプトで編まれたために、ノーザンもサザンも混在した内容になっていて、かえって新鮮な感じです。

 エタ・ジェイムズやアーマ・トーマスといった、チェスのマッスルショールズ詣での定番をきっちり押さえつつも、キップ・アンダースンのWithout A Womanみたいな、コンピでしか聴けない名演を収録してくれたのが、まずうれしいです。
 待ってましたという感じですね。

 エタ・ジェイムズは、I'd Rather Go Blindが最高なのは当然ですが、アルバムあたまのLosers Weepersもまた、傑作だと思います。

 そして、アーマ・トーマスのSomewhere Cryingでは、イントロが始まると期待で胸が一杯になります。
 この緊張感がたまりません。
 これもまた、最高の南部録音の収穫のひとつでしょう。

 シカゴのダンディズムを体現する、ナイト・ブラザーズのTemptation 'Bout To Get Meは、やはり素晴らしいです。
 シャウトからリリースされた、現在所在不明の単独アルバムが聴きたくなりました。
 
 単独アルバムといえば、数年前に素晴らしいリイシューが出た、ミッティ・コリアは、代表曲、I Had A Talk With My Manを聴くことが出来ます。
 唐突ですが、彼女の動く姿を、ホス・アレンのThe Beat!!!!で見たときは、感激したものです。
 不意に思い出してしまいました。

 また、サザン系が多い中で、ノーザンの良さをきっちり味合わせてくれる、ジーン・チャンドラーの曲が、アルバムの素晴らしいスパイスになっています。
 After The Laughterは、最高のシカゴ・ソウルといいたいです。
 でも、これってチェスでしたっけ?
 もしかして、MCAとか、ユニバーサル系の音源が普通に混ざっているのでは…。 

 そして、私のお気に入りは、ローラ・リーが、カーティス・メイフィールドの作品をサザンのバックでやった、Need To Belongです。
 初めて聴いた時から気に入っていましたが、久しぶりに聴いて、やっぱり名演だと感じました。
 イントロが、まんまピープル・ゲット・レディ風なのも、胸に迫ってきます。

 久しぶりに聴きましたが、ビリー・ヤングが入っていたのに驚きました。
 嬉しいど忘れです。
 どうせなら、ジェイムズ・フェルプスとか、シュガー・バイ・デサントとかも入れてほしかったです。
 ビリー・スチャワートも、失恋ものがなかったですかね…。

 そして、フォンテラ・バスは、レスキュー・ミーだけじゃないことを認識させてくれます。

 ラストの2曲、アーマ・トーマスとジーン・チャンドラーは、曲順を逆にしてもよかったのでは…。
 アーマ・トーマスのYours Until Tomorrow は、まさにアルバム・コンセプトにふさわしい1曲だと思います。

 まあ、普段聴き逃しているような、隠れた好曲を再確認させてくれる、こういったコンピは本当に有難いです。

 チェスは、シカゴ・ブルースだけじゃない、と改めて認識させてくれる、好編集盤だと思います。




ローラ・リーのNeed To Belongです。



ギターがブルースを奏でるとき

 ミスター・ムーンライト
 ある夏の夜 あなたはやってきた
 あなたの光は 夢をかなえ
 ぼくの世界に あの子をくれた
 あの子は今 ぼくのもの
 ぼくらは あなたを愛してる

 Roy Lee Johnsonという人のことは、このアルバムで初めて知りました。

 このアルバムは、手に入れてからかなりたつんですが、ある理由から、まともに聴き通したことがありませんでした。
 でも、新たな状況が発生したため、本気で聴くことにしたのです。


When A Guitar Plays The Blues
Roy Lee Johnson

1. Mister Moonlight (Piano Red) : 1961 Okeh
2. Love Is Amazing (Dr. Feelgood & Intterns) : 1960 Okeh
3. Sea Breeze (Piano Red) : 1960 Okeh
4. Black Pepper Will Make You Sneeze : 1962 Okeh
5. Too Many Tears : 1962 Okeh
6. Nobody Does Something for Nothing : 1963 Okeh
7. Busybody : 1963 Okeh
8. I'm So Happy : unissued
9. My Best Just Ain't Good Enough : 1965 Columbia
10. Love Birds : unissued
11. When a Guitar Plays the Blues : 1965 Columbia
12. Plowing Playboy : unissued
13. That's All I Need : unissued
14. Slowly I'm Falling in Love with You : 1965 Columbia
15. Two Doors Down [Instrumental] : 1965 Columbia
16. Stanback Headache Powder : 1965 Columbia
17. It's All Over : 1965 Columbia
18. Busybody [2] : unissued
19. So Anna Just Love Me : 1967 Josie
20. Boogaloo #3 : 1967 Josie
21. Cheer Up Daddy's Comin' Home : 1968 Philips
22. Guitar Man : 1968 Philips
23. Can You Handle It : unissued
24. Chunk Some Love : unissued
25. Take Me Back and Try Me : 1968 Pilips
26. She Put the Whammy on Me : 1968 Philips
27. Don't Do This to Me - Roy Lee Johnson, Curtis Smith : unissued
28. Two Wrongs (Won't Make It Right) - Roy Lee Johnson, Curtis Smith : unissued
29. Come Here Baby - Roy Lee Johnson, Curtis Smith : unissued
30. I've Got a Feeling - Roy Lee Johnson, Curtis Smith : unissued


 ビートルズのMister Moonlightといえば、何といってもアタマのジョンのシャウトのインパクトが強烈でした。 
 66年の来日の時、首都高速を走るビートルズを乗せた車の映像のバックに流れたのが、ミスター・ムーライトでした。

 …という話を耳タコで聞いていましたが、くだんの映像を少し前、やっとブートDVDで観ました。
 
 そして、この曲のオリジネイターは、ドクター・フィールグッドこと、ピアノ・レッドだという情報にも、何の疑問も持っていませんでした

 しかし、ビートルズのバージョンを聴いてから、何年になるのでしょう。
 原曲がドクター・フィールグッド(ピアノ・レッド)名義であるのは間違いないようですが、ボーカルを取っているのが、インターンズのギタリストであるロイ・リー・ジョンソンという人物だということを、このアルバムで初めて知りました。

 そして、ロイは、ほぼ全ての曲の作者でもあります。

 09年に出されたこのアルバムは、デジパックに厚いブックレットが綴じ込まれた、最近のベアファミリーお得意の仕様盤です。

 オーケー、コロンビア、ジョシー、フィリップからリリースされた録音が、未発表曲も含めて30曲も、てんこ盛りで収録されています。

 しかし、30曲入りCDというのは、どうでしょう?
 内容豊富でうれしい半面、ちょっと、いえ、かなりヘヴィです。
 就寝前にかけたりすると、最後まで聴き終える前に眠ってしまうことが多いです。
 歳でしょうか?

 眠ったことに気付いた私は、再び再生するんですが、やはり後半の曲に達する前に再び睡魔に負けることがほとんどです。
 結果的に、アタマの数曲は、覚えてしまうほど聴いていたりする半面、いつまでたっても後半の曲が聴けなかったりします。

 このアルバムの注目は、ミスター・ムーンライトだけではありません。
 後半に収録されている、フィリップ盤は、なんとリック・ホール制作のフェイム録音なのでした。

 楽ソウルの佐野さんも感涙したと記されている、Cheer Up, Daddy's Coming HomeTake Me Back And Try Meは、やはりサザン・ソウル・ファンは必聴でしょう。
 (私には、若干、声にサッドな雰囲気が不足しているようにも思えますが…。)

 そして、ロイ・ブキャナンがカバーした、アルバム・タイトル曲、When A Guitar Plays The Bluesもまた、聴き逃し厳禁の必殺ブルースです。
 ここは、眠気を吹き飛ばして聴きましょう。(…と自分に言いきかせてます。)

 39ページに及ぶ詳細なブックレットには、興味深い写真が満載で、長文の英文がうらめしいです。
 とりわけ、ロバート・ウォードとロイ・リーが一緒に写っている写真には興奮せざるをえません。

 特に、出だしなどに、かなり類似性が感じられる、Love Is Amazing(Roy Lee作、本盤収録)と、Your Love Is Amazing(R.Ward作、Fear No Evil収録、60年代オハイオ・アンタッチャブル盤もあり)の微妙な関係など、興味は尽きません。
 (ロイ・リー盤では、サム・クックばりの、「アイ・ノウ、アイ・ノウ…」のフレーズが印象的です。) 
 
 ロイ・りーとロバート・ウォードは、お互いに影響を与えあっていたのでしょう。
 Slowly I'm Falling in Love with Youでは、ウォードを連想せずにはいられない、ビヤビヤ・ギターが聴けます。

 ブルース・ギターのアグレッシブな切れ味では、ウォードに軍配が上がるかな、とも現時点では思いますが、ロイ・リーの新録があれば、ぜひ聴いてみたいものです。

 改めて全体を聴き通してみて、アーリー・ソウル・スタイルから、フェイム録音のサザン・ソウル・バラード、そして、切れ味鋭いブルースまで、その充実した高い音楽性にお腹一杯になりました。
 素晴らしい60年代録音の決定盤だと思います。
(ただし、ミスター・ムーンライトは、ビートルズ盤が圧倒的過ぎて、拍子抜けするほど、あくがないように感じます。)
 
 さて、冒頭で少し触れましたが、「そのうちに聴けばいいや」と、後回しにしていたこのCDを、私がしっかり聴く気になったのには理由があります。

 なんと、ロイ・リーの70年代のスタックス盤が出るのです。(もう出たのかな?)
 (Something Specialには期待大です。)
 というわけで、ベーシックなアイテムを、あせっておさらいしようとした私なのでした。








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ロバート・ウォード、びやびやギターの怪人

 想像してみて下さい。
 買い逃していたアルバムを発見したときって、どんな気持ちですか?

 私がこのアルバムを買った時のことは、もうほとんど覚えていませんが、声に出して喜びたいのを懸命に堪えたことだけは、よく記憶しています。


Hot Stuff
Robet Ward

1. I'm Tired
2. Forgive Me Darling
3. Up Town
4. Your Love Is Real
5. Something For Nothing
6. Touch Me Not
7. I'm Gonna Cry A River
8. Workout
9. Your Love Is Amazing
10. Hot Stuff
11. She's My Heart's Desire
12. What To Do
13. Let's Kiss And Make Up
14. Take This Love I've Got
15. The Swim
16. I Found A Love
17. My Love Is Strictly Reserved For You
18. Fear No Evil
19. Deeper In Love
 

 何しろ、ロバート・ウォードとオハイオ・アンタッチャブルズによる60年代の録音なのです。

 しかも、あの蜘蛛の巣のロゴのRelic盤なのです。
 私はサザン・ソウル.好きですが、Doo Wopをマニアックに掘り起こしていたRelicは、アナログ時代から大注目の会社でした。

 当時から、グレイトなファルコンズをまとめて聴けるのは、このレーベルだけでした。
 なぜかノーザンを偏愛する英国でさえ、多分今でも、ファルコンズのリイシューはないと思います。(サニー・マンロー時代の一部の音源は出ています。)

 ジョー・スタッブズ時代とウイルソン・ピケット時代を、それぞれ1枚ずつまとめたアルバムは、中身はもちろん、パッケージ・デザインも含めて最高のアイテムでした。

 このアルバムは、レリックの五本の指に入る渾身の仕事の1枚だと思います。

 ブラック・トップから出た、再発見アルバム(特に1枚目)が大好きだったので、そのアルバムでも再演していた曲のオリジナルがごっそり聴けるこのアルバムは、はっきり言って宝です。

 まず、ビブラートというか、トレモロ風のギターに大きな特徴がある人で、さらにディープかつスモーキーなボーカルもたまりません。
 ブラック・トップ盤での切れ味鋭いギターは、この60年代の録音でもたっぷり聴く事が出来ます。

 この人は、既に60年代からギターをビヤビヤ言わせていたのでした。
 個性の塊、正にワン・アンド・オンリーの怪人です。

 ディープ・ソウルからブルージーR&B、ファンクまで、全編にわたってかっこよすぎます。
 ロバート・ウォードは、リトル・ミルトンが、ビッグ・ブルースのコピーをやっていた頃から、すでにブルーズン・ソウルを体現していた人だったと思います。

 当時のデトロイトは、ノーザンだけじゃなくディープもすごかったという生きた証しが彼です。
 ノー・クレジットで反則ですが、バックを務めたファルコンズの超名作も、ちゃっかり収録されています。


           Your Love Is Real by Robert Ward





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