2011年03月21日
銀の月光の下で
Jackie Wilsonのちょっと面白い編集盤が出ていることを知ったので聴いてみました。
09年に英Jasmineからリリースされたものなんですが、この英jasmineというレーベルは、最近、私が気になって注目している会社です。
Billy Ward and the Dominoes
1. You Can't Keep A Good Man Down (Ward, Marks)
2. Rags To Riches (Adler, Rose)
3. Christmas In Heaven (Ward)
4. Until The Real Thing Comes Along (Cahn, Chaplin, Freeman, Holiner, Nichols)
5. I'm Gonna Move To The Outskirts Of Town (Jordan, Weldon)
6. Three Coins In The Fountain (Cahn, Styne)
7. St Therese Of The Roses (Harris, Strauss)
8. St Louis Blues (Handy)
Jackie Wilson
9. Reet Petite (The Finest Girl You Ever Want To Meet) (Carlo, Gordy)
10. By The Light Of The Silvery Moon (Madden, Edwards)
11. To Be Loved (Gordy, Carlo, Gordy)
12. Come Back To Me (Wilson)
13. As Long As I Live (Tucker, Weatherspoon)
14. I'm Wanderin' (Carlo, Gordy)
15. We Have Love (Gordy, Carlo, Gordy)
16. Singin' A Song (Wilson, Wilson, Wilson)
17. Lonely Teardrops (Gordy, Carlo, Gordy)
18. In The Blue Of The Evening (D'Artega, Adair)
19. That's Why (I Love You) (Gordy, Carlo, Gordy)
20. Love Is All (Lehmonn, Lebowsky)
21. Danny Boy (Weatherly)
22. Right Now (Wolf, Starr)
23. You Better Know It (Wilson, Henry)
24. Etcetra (Carlo, Gordy)
25. Hush A Bye (Scott, Belasco)
英Jasmineは、独Bear Familyと少し似た雰囲気をもった会社で、もともとは古いカントリーのリイシューを中心にリリースしていた会社ですが、数年前からリズム&ブルースにも力を入れるようになりました。
現在は、月4,5枚のペースで、カントリー、リズム&ブルース、スイング、ポピュラー・ソングなどをリリースしています。
ちなみに、今名前をあげたサブ・ジャンルには、それぞれ「古い」という修飾語が付きます。
独Bear Familyと英Jasmineの共通点は、コンセプトを持ったリイシューを提供しようという姿勢です。
英Jasmineは、シングル両面のコンプリート集や、CD2枚組に複数のオリジナル・アルバムを収録するなど、なかなかアイデアが豊富で、魅力的な仕事に取り組んでいます。
一方、独Bear Familyは、ノー・アイデアこそコンセプトという感じで、徹底してコンプリート集、レア音源の発掘に取り組んでいます。
2つの会社は、一見差異が多いように感じられますが、実は共通点が多い会社なのでした。
大きな違いをいえば、英Jasmineが廉価盤レーベルのイメージがあることです。
事実、内容に比して安価という印象があります。
対して、独Bear Familyは、ギリシヤ、アイルランド危機や、勝ち組のドイツが乗っかっている世界通貨安政策など、ユーロ危機が叫ばれるさまざまな要因の中で、なぜか値崩れしないレーベルです。
独Bear Familyでは、好評のRocksシリーズに続き、新たにBalladシリーズがリリースされ始めていて、注目です。
もう少し安価になればいいのですが…。
さて、本アルバムです。
このアルバムは、ジャッキー・ウイルソンの50年代のシングル集となっていますが、興味深いのは、ジャッキーがソロになる前に在籍していたグループ、Billy Ward and the Dominoesの音源が収録されていることです。
トラック1から8までが、ジャッキーがリードを取るドミノズの作品になります。
ビリー・ワード&ザ・ドミノズは、ドリフターズを組む前のクライド・マクファターが在籍して、リード・シンガーを務めていたボーカル・グループです。
ブルージーなスタイルのグループで、バード・グループとドゥ・ワップの中間くらいに位置する時期のグルーブですね。
同系統のグループでは、クローバーズや、ファイヴ・ロイヤルズなどがあげられます。
収録された8曲の中で、どうしても注目してしまうのは、Rags To Richesでしょう。
この曲は、ドミノズがオリジナルなのでしょうか?
Tex-Mex音楽のファンには、お馴染みの曲ですね。
Sunny and the Sunlinersのレパートリーです。
サニー・オスナは、この曲を何度も繰り返し吹き込んでいると思います。
60年代のヴィンテージ期はもちろん、リバイバル期以降、現在にいたるまで、折につけ新たに録音していると思われます。
私の手元にある近作では、03年のGoing Back In Timeでやっています。
また、少し古いですが、89年のSunny's Goldでは、Talk To Meとのメドレーで吹き込まれています。
一般的には、トニー・ベネット盤がよく知られているようですので、おそらくは、古いポピュラー・ソングが原曲だと思われますが、リズム&ブルースでは、ドミノズ盤が最初のような気がします。
だとすれば、サニー&サンライナーズに直接の影響を与えたバージョンである可能性は高いと思います。
サニー&サンライナーズがお手本とした黒人ボーカル・グループとしては、まずLittle Anthony & the Imperialsが上げられます。
もし、ドミノズに関する推測が当たっていれば、サニー・オスナを推しメンとする私としては、彼が影響を受けた重要グループとして見直したい思いです。
ドミノズ盤では、ジャッキーのオペラチックな、ろうろうとした歌声が特徴的な仕上がりになっています。
さて、ジャッキーのソロ録音も聴きましょう。
ここに収められているのは、初期の音源ばかりです。
ベリー・ゴーディ絡みの曲が多いことに改めて気付かされます。
そして、通常のベスト盤なら当然入っているだろう曲が入っていません。
私は、それほどジャッキー・ファンというわけではなかったので、CDではベスト盤を1枚、コパのライヴを1枚持っているくらいです。
そんな私が、ジャッキーの曲といって思いつくのは、Reet Petite、Higher and Higherは別格として、次に思いつくのは、I'll Be SatisfiedとA Woman, A Lover, A Friendです。
そういう意味では、この編集盤は若干物足りないところもありますが、今まで知らなかった曲の魅力を知らせてくれた1枚になりました。
By The Light Of The Silvery Moonは、リトル・リチャード盤の印象が強烈な曲で、大好きな曲ですが、リチャード盤が特異なバージョンである可能性は高いです。
原曲は、ポピュラー・ヒットでしょうか?
あるいは、ゴスペルでしょうか?
あくの強いリチャード盤で知っていた曲を、別のスタイルで聴けたのが嬉しかったです。
ジャッキー盤を聴く限りでは、ポピュラー・ヒットが元ネタのような気がします。
ここでは、ジャッキーが細かい発声の技巧を使っています。
ジャッキーの自作では、Come Back To Meが面白いです。
スタイルとしては、ドゥ・ワップのような感じですが、ジャッキーの歌い方がワイルドで、ラヴァーン・ベイカーみたいです。
古いスタイルの曲を新しい感覚で聴かせた隠れた佳曲だと思いました。
世界一のお調子者ソングとしては、Etcetraも面白いです。
ジャッキーには、こういう曲があっています。
作者を見ると、ベリー・ゴーディでした。
この初期時代をドキュメントしたアルバムは、ゴーディの曲の良さで魅力を開花させつつも、様々な新しい試みにも取り組む姿が捉えられている、そんな1枚だと思います。
09年に英Jasmineからリリースされたものなんですが、この英jasmineというレーベルは、最近、私が気になって注目している会社です。
Here Comes Jackie Wilson 1953-1958
Jackie Wilson
Jackie Wilson
Billy Ward and the Dominoes
1. You Can't Keep A Good Man Down (Ward, Marks)
2. Rags To Riches (Adler, Rose)
3. Christmas In Heaven (Ward)
4. Until The Real Thing Comes Along (Cahn, Chaplin, Freeman, Holiner, Nichols)
5. I'm Gonna Move To The Outskirts Of Town (Jordan, Weldon)
6. Three Coins In The Fountain (Cahn, Styne)
7. St Therese Of The Roses (Harris, Strauss)
8. St Louis Blues (Handy)
Jackie Wilson
9. Reet Petite (The Finest Girl You Ever Want To Meet) (Carlo, Gordy)
10. By The Light Of The Silvery Moon (Madden, Edwards)
11. To Be Loved (Gordy, Carlo, Gordy)
12. Come Back To Me (Wilson)
13. As Long As I Live (Tucker, Weatherspoon)
14. I'm Wanderin' (Carlo, Gordy)
15. We Have Love (Gordy, Carlo, Gordy)
16. Singin' A Song (Wilson, Wilson, Wilson)
17. Lonely Teardrops (Gordy, Carlo, Gordy)
18. In The Blue Of The Evening (D'Artega, Adair)
19. That's Why (I Love You) (Gordy, Carlo, Gordy)
20. Love Is All (Lehmonn, Lebowsky)
21. Danny Boy (Weatherly)
22. Right Now (Wolf, Starr)
23. You Better Know It (Wilson, Henry)
24. Etcetra (Carlo, Gordy)
25. Hush A Bye (Scott, Belasco)
英Jasmineは、独Bear Familyと少し似た雰囲気をもった会社で、もともとは古いカントリーのリイシューを中心にリリースしていた会社ですが、数年前からリズム&ブルースにも力を入れるようになりました。
現在は、月4,5枚のペースで、カントリー、リズム&ブルース、スイング、ポピュラー・ソングなどをリリースしています。
ちなみに、今名前をあげたサブ・ジャンルには、それぞれ「古い」という修飾語が付きます。
独Bear Familyと英Jasmineの共通点は、コンセプトを持ったリイシューを提供しようという姿勢です。
英Jasmineは、シングル両面のコンプリート集や、CD2枚組に複数のオリジナル・アルバムを収録するなど、なかなかアイデアが豊富で、魅力的な仕事に取り組んでいます。
一方、独Bear Familyは、ノー・アイデアこそコンセプトという感じで、徹底してコンプリート集、レア音源の発掘に取り組んでいます。
2つの会社は、一見差異が多いように感じられますが、実は共通点が多い会社なのでした。
大きな違いをいえば、英Jasmineが廉価盤レーベルのイメージがあることです。
事実、内容に比して安価という印象があります。
対して、独Bear Familyは、ギリシヤ、アイルランド危機や、勝ち組のドイツが乗っかっている世界通貨安政策など、ユーロ危機が叫ばれるさまざまな要因の中で、なぜか値崩れしないレーベルです。
独Bear Familyでは、好評のRocksシリーズに続き、新たにBalladシリーズがリリースされ始めていて、注目です。
もう少し安価になればいいのですが…。
さて、本アルバムです。
このアルバムは、ジャッキー・ウイルソンの50年代のシングル集となっていますが、興味深いのは、ジャッキーがソロになる前に在籍していたグループ、Billy Ward and the Dominoesの音源が収録されていることです。
トラック1から8までが、ジャッキーがリードを取るドミノズの作品になります。
ビリー・ワード&ザ・ドミノズは、ドリフターズを組む前のクライド・マクファターが在籍して、リード・シンガーを務めていたボーカル・グループです。
ブルージーなスタイルのグループで、バード・グループとドゥ・ワップの中間くらいに位置する時期のグルーブですね。
同系統のグループでは、クローバーズや、ファイヴ・ロイヤルズなどがあげられます。
収録された8曲の中で、どうしても注目してしまうのは、Rags To Richesでしょう。
この曲は、ドミノズがオリジナルなのでしょうか?
Tex-Mex音楽のファンには、お馴染みの曲ですね。
Sunny and the Sunlinersのレパートリーです。
サニー・オスナは、この曲を何度も繰り返し吹き込んでいると思います。
60年代のヴィンテージ期はもちろん、リバイバル期以降、現在にいたるまで、折につけ新たに録音していると思われます。
私の手元にある近作では、03年のGoing Back In Timeでやっています。
また、少し古いですが、89年のSunny's Goldでは、Talk To Meとのメドレーで吹き込まれています。
一般的には、トニー・ベネット盤がよく知られているようですので、おそらくは、古いポピュラー・ソングが原曲だと思われますが、リズム&ブルースでは、ドミノズ盤が最初のような気がします。
だとすれば、サニー&サンライナーズに直接の影響を与えたバージョンである可能性は高いと思います。
サニー&サンライナーズがお手本とした黒人ボーカル・グループとしては、まずLittle Anthony & the Imperialsが上げられます。
もし、ドミノズに関する推測が当たっていれば、サニー・オスナを推しメンとする私としては、彼が影響を受けた重要グループとして見直したい思いです。
ドミノズ盤では、ジャッキーのオペラチックな、ろうろうとした歌声が特徴的な仕上がりになっています。
さて、ジャッキーのソロ録音も聴きましょう。
ここに収められているのは、初期の音源ばかりです。
ベリー・ゴーディ絡みの曲が多いことに改めて気付かされます。
そして、通常のベスト盤なら当然入っているだろう曲が入っていません。
私は、それほどジャッキー・ファンというわけではなかったので、CDではベスト盤を1枚、コパのライヴを1枚持っているくらいです。
そんな私が、ジャッキーの曲といって思いつくのは、Reet Petite、Higher and Higherは別格として、次に思いつくのは、I'll Be SatisfiedとA Woman, A Lover, A Friendです。
そういう意味では、この編集盤は若干物足りないところもありますが、今まで知らなかった曲の魅力を知らせてくれた1枚になりました。
By The Light Of The Silvery Moonは、リトル・リチャード盤の印象が強烈な曲で、大好きな曲ですが、リチャード盤が特異なバージョンである可能性は高いです。
原曲は、ポピュラー・ヒットでしょうか?
あるいは、ゴスペルでしょうか?
あくの強いリチャード盤で知っていた曲を、別のスタイルで聴けたのが嬉しかったです。
ジャッキー盤を聴く限りでは、ポピュラー・ヒットが元ネタのような気がします。
ここでは、ジャッキーが細かい発声の技巧を使っています。
ジャッキーの自作では、Come Back To Meが面白いです。
スタイルとしては、ドゥ・ワップのような感じですが、ジャッキーの歌い方がワイルドで、ラヴァーン・ベイカーみたいです。
古いスタイルの曲を新しい感覚で聴かせた隠れた佳曲だと思いました。
世界一のお調子者ソングとしては、Etcetraも面白いです。
ジャッキーには、こういう曲があっています。
作者を見ると、ベリー・ゴーディでした。
この初期時代をドキュメントしたアルバムは、ゴーディの曲の良さで魅力を開花させつつも、様々な新しい試みにも取り組む姿が捉えられている、そんな1枚だと思います。
ドミノズ盤、Rags To Richesです。
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