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電子化と媒体への愛着について

 先日、書店へ行ってきました。
 私にとっては、多分、年単位での久々の訪問です。
 本好きの私が、これほど足が遠のいていた理由は、ふたつあります。

 ひとつは、電子書籍で、これが長期的な理由(?)と言っていいでしょう。
 これについては、後述します。

 もうひとつは、私が今年初めに負ったアクシデントに起因します。
 私は、今年になってから3回入院し、うち2回は手術もしました。
 詳細は、今回の話題にとって重要ではないので、単に一時的に自立歩行不可となったといっておきます。
 私は、つい先日、杖を手放し、完全自立歩行する許可を得ました。
 アクシデントから、ここまで回復するのに9か月かかりました。
 これが、短期的(本人にとって9か月は長かったですが)理由です。
 
 さて、私は、年末までに一定の区切りを迎えられる予定です。(とりあえずの治療終了。経過観察ヘ移行。)
 つい最近、病院で言われたのは、日常的な歩行訓練の励行です。
 約9か月間、自身の体重を支えていなかった私の下肢は、筋肉が落ちています。
 完全回復には、病院での筋トレに加え、日ごろからの訓練が必要だというわけです。
 出来るだけ外出して歩くこと、さらに、徐々に外出の距離を伸ばすよう指導されたのです。

 先日私は、それまでのごく近い距離ではなく、電車に乗って1駅往復するという、大きな冒険を成し遂げたのでした。
 駅の階段は不安な要因でしたが、実は自宅の階段に比べれば、駅のそれはとても優しいステップ幅、高さであることが分かりました。
 こういうことは、まさに体験しなければ分かりませんね。

 ここで、思い出したことを書かせてください。
 実は私は、近所にありながら(自立歩行許可が出るまで)、コンビニを利用しませんでした。
 コンビニの入り口は(有名チェーンはすべて)、押すか引くかしないと入れないドアで、しかも手を放すと元に戻ろうとするため、車椅子はもちろん、松葉づえでも一人で出入りすることは困難でした。
 これは、おそらく防犯上からの構造ではないかと推察しますが、歩行困難な人には大きなバリアーです。
 (あと、これは防犯と関係があるのか不明ですが、私の知る(駐車場のある)多くのコンビニは、入口へのアプローチがフラットではなく段差があり(健康なあなたは気づいていない)、車椅子での進入が困難です。)
 
 さて、私的なことをくどくどと、そして、問題提起的なことはあっさりと書きました。
 当ブログの趣旨(私の趣味嗜好の紹介)と外れるからです。
 
 本題に入ります。
  
 今回は、私がここ数年(とりわけ当プログを休んでいた期間)、夢中になっていた(今も継続中)のテーマについて、少し語りたいと思います。

 私は、電子書籍が好きです。
 電子書籍とは、デジタル・データ化された書籍のことで、テキストや画像等を紙に印刷するのではなく、デジタル・データ・ファイルとして提供し、専用のアプリケーションで閲覧させるものです。

 ファイルは2種類に大別でき、ひとつは文章をデキスト・データとして埋め込み、フォントを拡大縮小してもレイアウトが自動調整するもので、これをリフロー型ファイルと言います。
 一方、絵や写真などの画像を多く含み、レイアウトを崩すことが出来ないもの(雑誌や漫画等)をファイル化したものがあります。
 この種類のファイルは、ページ全体のレイアウトが固定のため、拡大すると画面からはみ出したりします。
 これを仮にイメージ・ファイルと呼びます。(有名なPDFがこの仲間です。)

 さて、話は約2年半ほど前に遡ります。
 楽天がカナダの電子書籍サービス(ショップ・サイトからガジェットまで)のKoboを買収して子会社化し、日本で楽天koboをスタートさせました。
 ですが、始まってまもなく、コンテンツ数の水増しを指導されるなどトラブル続出で、かなり多難な出だしでした。
 
 そして、少し遅れてAmazonがKindleのサービスを開始しました。
 Kindleは、Amazon com(米アマゾン)発の電子書籍サービスで、日本での開始が待たれていたものです。
 このAmazon JapanのKindleスタートは、電子書籍の黒船といわれ、先行サービス組からは脅威であるとともに、逆に、いまいち盛り上がらない日本の電子書籍事業を、本格的に隆盛させるためのカンフル剤として期待されていたものでした。

 電子書籍サービスは、日本でも独自の展開をしていましたが、さほど話題になることもなく、停滞気味でした。
 そのひとつの原因として、ビューワー(読書ツール)の問題があります。
 電子書籍をスムーズに楽しむためには、魅力的な機器と使いやすいリーダー・アプリケーションが必要です。

 それまでは、PC向けだったり、今となっては懐かしいSharpのザウルスのようなPDA(携帯情報端末)向けのアブリケーションだったりしました。
 また、携帯電話時代になり、ケータイ小説という別の流れも生まれました。
 これらツールやそれに伴うソフトは、それなりの盛衰があったのだと思いますが、黒船の来航をもって、本当の変革がやってきます。
 
 Amazon Kindleの日本上陸こそが、業界を活性化させ、新たな事業参入組の登場と、老舗の危機感からの奮起を促したのでした。
 そして、予想されたことが静かに進行しているのだと思います。
 自然淘汰です。
 魅力のある、使いやすい、蔵書数の多い、事業の安定性が高い(すぐに潰れたりしない)サービスが残り、そうでないものが消えていくことになります。
 (ただ、今のところ、新規組があっさり撤退という例はあるようですが、大手老舗が潰れたという話は未だないようです…。)
 
 さて、私が利用している電子書籍サービスのうち、上位4社の利用状況は次のとおりです。

kobo : 約3000冊 

ebookapan : 約1300冊

booklive : 約600冊

kindle : 約500冊

 私は、電子書籍を始めた当初、ソニーのリーダーとショップを専ら使っていましたが、現在は上記のような感じです。
 (ソニーは否定していますが、撤退のうわさがあり、事実、アメリカでは撤退しました。)

 様々なトラブルがあったにも拘らず、また現在も、端末、システムともに不具合が残ったままですが、私の利用一位はKoboです。
 これは、Koboがクーポン作戦で、最も値引きキャンペーンを多くやっているからです。
 日々の利用での値引きが多いほど、ついつい利用するものです。
 これで、事業運営の信頼度が高まれば、多少の問題は今後も目をつむれます。

 ebookjapanは、電子コミック事業の巨人です。
 コミックの蔵書数では本邦1位でしょう。
 さらに、システムの使いやすさ、分かりやすさ、そして(個人的見解ですが)洗練さが私の好みです。
  
 bookliveは、テキスト系の蔵書数では1位かもしれません。
 ただし、専用端末のLidioはいまいちでした。
 現状は、Kindle よりも買っていますが、今後は伸びが減るでしょう。

 Kindleは、端末の出来が素晴らしいです。
 フォントの大小の種類が増えればもっといいです。
 値引きのサービスが、日本上陸直後に比べて改悪されているのが残念です。
 潰れそうにないという安心感の高さが他社に勝っています。

 私の利用実態は、小説等のテキスト系はKoboを常用、ついでKindleです。
 利用端末は、それぞれ専用の6インチ端末がベターです。

 コミックは、ebookjapanに一本化したいと思うほど気に入っています。
 コミックや雑誌の利用端末は、10インチの汎用タブレットを使っています。(Nexus10)
 コミックや雑誌のようなイメージ・ファイルは、ある程度大きなディスプレイが必要です。
 6インチ端末を無理して使っている人は、10インチ端末を使うと世の中が変わるでしょう。ホントに。

 私は、時々考えます。
 かつて、レコードがCDへと変わっていったときのことを。
 私は、抵抗した組です。
 レコードに対する愛着は深いものでした。
 特に、当初のCDがスペックの低いものを含んでいたことから、「それみたことか」と自身の判断の正しさを誇っていたほどです。
 しかし、技術の進歩は、あっという間に凡人の認識など超越していったのです。
 価格が下がり、なおかつ質が向上したとき、私はあっさり転向しました。
 現在の私は、CDに愛着をもつようになり、欧米で主流のダウンロード配信には魅力を感じません。
 
 電子書籍について、興味がない人も多いようです。
 紙の本に強い愛着を持っている人は、読み手だけでなく、実作者にも存在します。
 エンタメ系の有名作家では、宮部みゆき、東野圭吾などがその代表でしょう。
 でも、彼らの主要な作品が電子化されるのは、きっと遠いことではないと思います。

 さて、私は音楽のストリーミング配信には魅力を感じています。
 購入した音楽ファイルは、端末に保存するのではなく、クラウド上で管理し、聴きたいときにクラウド上の音楽ファイルを再生するという技術です。
 これの利点は、自分の端末のストレージを圧迫しないことです。
 (ただし、ネットが繋がる環境にある、という条件があります。)

 私は、ジャケットやブックレットに強い愛着があり、音楽ファイルだけ購入というのは味気がなくて(今のところ)耐えられません。
 しかし、最近のアルバムの音楽ファイルには、ジャケット写真のファイルや、ブックレットのテキストを付属させる試みが増えつつあり、心が動きつつあります。
 欧米では、完全にCDが下火になっており、ダウンロード配信ではない通常のCDを、わざわざ"Physical CD"と呼んでいます。
 (一方で、レコードの復活が静かに進行していて、私には謎です。)
 
 音楽と書籍の電子化は、単純にひとくくりには出来ませんが、共通する利点、課題を含んでいるのではないかと思います。



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