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シャーリー&カンパニー、しばしばジェシー

 今回は、Shirley GoodmanとJesse Hillのデュオ・アルバムを聴きました。
 制作はHeuy P. Meauxで、78年にCrazy Cajun Recordsからリリースされました。

 これはちょっと意表をつく取り合わせですね。
 さらに、アルバム・タイトルがBarbara Lynnの名作で、期待度のボルテージが高まります。


You'll Lose A Good Thing
Shirley & Co.
Jesse Hill

Side One
1. Ivory Tower
2. My Children (Malcom J. Rebenneck) 
3. You'll Lose A Good Thing (Heuy P. Meaux)
4. (Oh Baby) We Got A Good Thing Going (Heuy P. Meaux) 
5. Too Much Too Soon (Dale Ward) 
Side Two
1. Certainly Hurting Me (Shirley Goodman)
2. I Dare You (Shirley Goodman)
3. Can't Fight Love (Malcom J. Rebenneck, Jesse Hill) 
4. Just A Little Ugly Part 1 (Malcom J. Rebenneck, Jesse Hill)
5. Just A Little Ugly Part 2 (Malcom J. Rebenneck, Jesse Hill)

 まず、最初に確認しておきましょう。
 ジャケをご覧ください。

 アーティスト名ですが、Shirley & Jesseではなく、左上に大きくShirley & Co.、そしてその下段に少しフォントを抑えてJesse Hillと配置されています。
 (アルバム・タイトルのフォントは更に小さいです。)

 一般的には、Shirley Goodmanより、Jesse Hillの方が世間の認知度が高いと思うのですが、この当時はそうではなかったのでしょうか。

 R&Bファンなら、Jesse Hillの名前は比較的有名だと思います。
 もちろん、Allen Toussaint制作の"Ooh-Poo-Pah-Doo"ですね。

 ただ、正直、私は彼の単独アルバムを持っていません。
 ワン・ヒット・ワンダーの印象が強い人です。
 "Ooh-Poo-Pah-Doo"は、Ray Charles好きのToussaintの趣味が出た一連の作品のひとつですね。
 私の中では、"Mother In Law"とひとくくりにしてしまいがちな曲でした。

 今回、70年代ものではありますが、Jesse Hillをまとめて聴くことが出来たいい機会でした。
 そのボーカルは、例えるなら、Lee DoseyやRobert Parkerを連想させる、焼き芋をほおばったような発声で、どこかユーモラスな感じがします。

 一方、Shirley Goodmanは、主として50年代にShirley & Leeとしてヒットを飛ばした、甲高い声が最大の個性になっている女性シンガーで、一度聴くと忘れられない印象を残す人です。
 50年代にはいつくかのヒットがありますが、代表曲はやはり"Let The Good Time Roll"です。

 そんなShirleyですが、相棒のLeonard Leeとコンビ解消したあと、72年のStonesの「メインストリートのならず者」では、バック・コーラスで参加しているらしいです。
 そして、本盤の表記にある"Shirley & Co."名義で、75年に一発ヒットを出しました。

 Shirley & Co.は、正確にはShirley & Companyです。
 一部の曲を聴いた限りでは、別にグループという感じはしないです。
 なぜ、こういうクレジットなのか私は知りません。

 "Shame Shame Shame"というJimmy Reedのブルースをディスコ調でやって、それなりに注目されたようです。
 それが、78年リリースの本盤で、Jesse Hillよりフォントが大きく表記されている理由だと理解しましょうか。

 さて、中身を聴いていきましょう。
 基本は二人のデュオですが、数曲ソロがあり、以下の通りです。

 Shirley Goodmanのソロ

B2. I Dare You

 Jesse Hillのソロ

A2. My Children
B4. Just A Little Ugly Part 1
B5. Just A Little Ugly Part 2

 Jesse Hillの担当曲で、Dr. Johnがライター・クレジットされているのが目を惹きます。

 Shirley & Co.名義を使っていますが、アルバム全体の印象はディスコではなく、古いR&Bのそれで嬉しいです。
 
 ただ、往年のニューオリンズR&B調は希薄で、むしろ8ビートで快調に歌い飛ばす展開が爽快です。
 70年代うんぬんもあまり意識にのぼりません。

 冒頭のA1"Ivory Tower"は、ShirleyとJesseが交互にソロ・パートを歌い、徐々にデュエットして盛り上げていく8ビートの曲で、やはりShirleyが初登場する瞬間は、素直に「キター」とはしゃいでしまいます。
 面白いのは、カスタネットの連打が印象に残ることで、まるで疑似スペクター・サウンドみたいです。

 続くJesseのソロ曲"My Children"は、Jesseの個性がフルに発揮されたソウル・ダンス曲で、Lee Doseyを思わせるリッチな歌声で聴かせてくれます。
 ミーターズ風ニューオリンズ・ファンクをイメージしているのかも知れません。

 そして、アルバム・タイトル曲の"You'll Lose A Good Thing"です。
 まともじゃないだろうとは予期していましたが、この飛びまくった仕上がりは、さすがShirleyです。
 耳に馴染んだ、あの有名な歌詞が、とてつもなくハイ・ピッチなボーカルで歌われるこの感じ、予想以上でした。
 そして、曲調は、原曲がもつセンチメントなスロー・バラードではなく、ここでもやはり快調に飛ばすミディアム・アップです。

 Jesseの語り風のリードでスタートし、Shirleyにバトンを渡したあと、さらに交互に歌い継ぐ、ユニークというほかない構成です。
 知らずに聴けば、「なにかどこかで聴いたような歌詞だなあ」と"You'll Lose A Good Thing"をすぐに連想できない可能性が高いです。

 リズムは若干ノーザンに接近したアレンジかなと思いますが、Jesseのとぼけたキャラクターが全開で、対抗するようにニューオリンズ風味を発散しています。
 ノーザンを連想するのは、インプレッションズ風(というか、"It's Alright"風)のリズム・ギターが印象に残るせいですね。

 " (Oh Baby) We Got A Good Thing Going"は、ノーザン的な曲調がさらにはっきりしたアレンジで、これはシカゴではなくデトロイト調のダンス・ナンバーに仕上がっています。
 とはいえ、Shirleyのワン・アンド・オンリーの個性は何物も飲み込んで突き進むのでした。

 A面ラストの"Too Much Too Soon"は、ShirleyがShirley & Leeのあと、60年代に即席で組んだデュオ、Shirley & Alfredの吹き込みのセルフ・カバーです。
 その時の相棒のAlfredは、実はBrenton Wood(本名Alfred Jesse Smith)のことで、日本での知名度は低いのではないかと思いますが、重要なアーリー・ソウル・シンガーだと思います。

 Brenton Woodの67年の代表曲、"Gimmie Little Sign"は、チカーノの人気曲でもあります。
 彼はルイジアナのシュリブポート出身ですが、ドゥワップからノーザンまで様々な曲調をこなせる、ユーティリティ・シンガーで、私は大好きです。

 さて、少し脱線しましたので戻ります。
 B面は、Shirleyをメインとする調子のいいノーザン・ダンサーで締める前半と、Jesseメインのニューオリンズ・ファンクでイナタく進行する後半に大別されます。

 Shirleyのソロ、"I Dare You"では、カスタネットとタンバリンの連打が効果的に使われていて、再びウォール・オブ・サウンドを連想させるアレンジになっています。

 "Can't Fight Love"は、Jesseに相性のいい(というかLee Doseyスタイル)のニューオリンズ・ファンクですが、ここではShirleyが最高の絡みをしていて、B面のハイライトです。

 そして、"Just A Little Ugly"もまた、同種のニューオリンズ・ファンクで、やはりLee Doseyを連想します。
 喧噪のSEを効果的に使った、くせになるグルーヴを持つ曲です。
 よく転がるピアノと跳ねるベースのアンサンブルに、ブラスのブロウが切り込んでくるところが良く、繰り返し聴きたくなります。

 70年代後半のこの時期にも、オールド・スタイルのR&Bをイナタく決めてくれた二人に拍手したいです。
 (Jesse Hillにも、俄然興味がわいてきました。)


Can't Fight Love by Shirley & Jesse




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スワンプ・ロッカーの休息

 今回は、スワンプ・ポップ・レジェンドの一人、Rod Bernardの70年代のアルバムを聴きました。

 Rod Bernardは、本アルバムのタイトル曲、バラードの"This Should Go On Forever"で知られるシンガーですが、Chuck Berryスタイルのロックンロールを好む一面を持っていた人でもありました。

 本盤は、Heuy P. Meauxの制作により、78年にCrazy Cajun Recordsからリリースされたものです。


This Should Go On Forever
& Other Bayou Classics
Rod Bernard

Side One
1. This Should Go On Forever (Miller, Jolivette)
2. Papa Thibodeaux (R. Bernard, E. Futch)  
3. If You Call This Happy, Baby (D. Snead) 
4. I Don't Miss You (D. Epps)  
5. Cajun Blue (G. Latimer) 
Side Two
1. Taxas Roller Coaster Feeling (Amos Boynton) 
2. Help Me Put Myself Together (G. Latimer) 
3. Wish I Could Get Up And Go To Bed (D. Epps) 
4. Colinda (Adapted by Rod Bernard) 
5. New Orleans Jail (Koppelman, Rubin)  

 70年代後半というのは、Huey P.Meauxが嬉々としてお気に入りのアーティストを手掛けた時期でした。
 特に78年前後は精力的にリリースしていて、スワンプ・ポップで思いつくところだけでも、次のようなアーティストをプロデュースしています。

 Tommy McLain : "If You Don't Love Me" (78年)
 T. K. Hulin : "As You Pass Me By Graduation Night" (78年)
 Warren Storm : "Family Rules" (78年)
 Rod Bernard : 本盤 (78年)  

 そして、テキサス系では次の二人

 Roy Head : "Rock 'n' Roll My Soul" (77年)
 Joey Long : "Flyin' High" (78年)
 Joey Long : "Rains Came" (78年) ……(これは未入手のため資料情報です。ジャケ写だけでも見たいです。)

 いずれも、Crazy Cajunからリリースしています。
 もちろん、切り札のFreddy FenderやB. J. Thomasは当然やっていますし、さらには、黒人ブルースマンも手掛けているはずです。

 さすが気を見るに敏、チャンスには一気に攻めますね。
 この時期を、仮にFreddy Fender特需と呼びましょう。
 75年に爆発したFreddy特需は、まもなく急速に冷えていきます。

 さて、本盤は、ヴィンテージ期のRod Bernardを知る方には、少し違った印象を受ける内容になっています。

 前述のとおり、彼の代表曲をひとつあげるなら、スワンプ・ポップ・バラードの"This Should Go On Forever"ですが、その他の多くの曲は、ケイジャンの隠し味をもつ古いスタイルのロックンロールなのです。
 英Aceからリリースされたコレクションのタイトルは、"Swamp Rock 'n' Roller"でした。

 しかし、本盤から受ける印象は、ほとんどポップ・カントリー・アルバムのそれです。
 伴奏は、ラップ・スチールが最も印象に残り、次いでドブロ、フィドルの順でしょうか。

 ケイジャンらしいケイジャンは、A2の"Papa Thibodeaux"だけ、おまけしてB4の"Colinda"くらいでしょう。

 "Colinda"とB5の"New Orleans Jail"は、ヴィンテージ期の作品の新録音ですが、元盤がロックンロールの元気さを感じるのに対して、本盤のバージョンはカントリー風味が強く、時代の違いを感じます。

 最もケイジャンを感じさせる曲、"Papa Thibodeaux"ですが、50年代から活躍するケイジャン・フィドラーにRufas Thibodeauxという人がいて、あるいはパパ・ルーファスのことを歌っている曲かも知れません。

 他に私が注目したのは、次の2曲です。

 "I Don't Miss You"  (A4)
 "Help Me Put Myself Together" (B2)

 "I Don't Miss You"は、正調カントリーですが、バックにフレンチ・ホルンのような音がリフを奏でていて、思わず耳を惹きます。

 "Help Me Put Myself Together"は、本盤で最も元気な曲です。
 ドブロをバックに快調に歌われる曲で、輝くような明るさを感じる、ウキウキ感たっぷりのメロを持つカントリーです。

 続く"Wish I Could Get Up And Go To Bed"がサッドなブルー・バラードなので、流れの変化が強く印象に残りました。
 "Wish I Could Get Up And Go To Bed"は、歌詞がゴスペルを連想させますが、悲しい曲調なので、単に日常のストレスを歌ったカントリー・ソングなのかも知れません。

 アルバム全体の印象は、もう少しケイジャン風味が強いほうが私の好みです。



Recorded In England by Rod Bernard


66年頃は、英国勢来襲を受けてこんな感じでやってました。



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テキサス遥か

 今回は、少しばかりレアなアイテムをご紹介します。
 Freda & The Firedogsのライヴ・アルバムです。

 クレジットによれば、79年1月20日のオースティンでのライヴを録音したもので、Joe Gracey(?)とBobby Earl Smithの制作となっています。
 私は、このバンドはもっと早い時期に解散していたと思っていました。


Live From The Old Soap Creek Saloon
Freda & The Firedogs

Side One
1. Someday Soon (Ian Tyson)
2. Honey Don't (Carl Perkins)
3. Dry Creek Inn (Bobby Earl Smith, Ronald David Howard)
4. Texas Me (Doug Sahm, F. Morin, J. Perez, Augie Meyer)
5. Easy Rider (Taj Majal)
Side Two
1. Eugene (Marcia Ball)
2. Honky-Tonk Downs Fairs (Dallas Frazier)
3. Make Me A Pallet (P.D.)
4. You Ain't Goin Nowhere (Bob Dylan)
5. I Got My Mojo Working (M. Morganfield)

 本盤がなぜレアなのかといいますと、二つの理由があります。
 まず、アルバムの存在自体がレアです。
 理由をひもとくため、Freda & The Firedogsについておさらいしましょう。

 Freda & The Firedogsは、70年代の始め、アトランティック・レコードの大物プロデューサー、ジェリー・ウェクスラーがテキサス州へと趣き、Willie Nelson、Doug Sahmに続いて契約しようとした3組目のアーティストでした。

 契約を視野にいれ、アルバム1枚分の録音まで行われたにも関わらず、結局バンド側の逡巡(?)から正式契約に至りませんでした。
 その後、Freda & The Firedogsは、成功を得ることなく自然消滅的に解散したのでした。

 Freda & The FiredogsのフロントであったFredaは、その後、Marcia Ball名義でソロデビューし、テキサスやルイジアナ音楽愛好家の注目を集めたため、幻となった過去の音源にも関心が寄せられました。

 消失したと伝えられていたテープの存在が明らかになり、Freda & The Firedogsの幻のデビュー盤がCD化され、ファンを喜ばせたのは、つい数年前のことです。

 Freda & The Firedogsの編成は以下の通りです。

Marcia Ball (piano, vocals)
John X. Reed (guitar, harmony vocals)
Bobby Earl Smith (bass, vocals)
Steve McDaniels (drums)
David Cook (steel guitar, rhythm guitar)

 Freda & The Firedogsは、ブルース、R&B、カントリー、フォークなどのルーツ・ミュージックに根差したバンドで、ブルースに強い影響を受けながらもカントリーも歌える女性ボーカルのFreda(Marcia)と、フォーキーな男性シンガー、ソングライターのBobby Earl Smithの二人を中心とするバンドでした。




 Freda & The Firedogs解散後は、Marcia Ballは前述のとおりソロ・デビューして成功し、ギターのJohn X. Reed、ベースのBobby Earl Smith、ドラムスのSteve McDanielsは、それぞれ明確な時期は不明ですが、Doug Sahmと活動をともにした時期がありました。

 John X. Reedは、Sir Douglas Quintetの同窓会的ライヴ・アルバム、"Back To The Dillo"ほかでクレジットがされています。
 また、Doug Sahmもゲスト参加した、テキサスの姉妹バンド、Texana Damesのアルバムでギターを弾いたりもしています。

 Steve McDanielsは、Doug SahmがTVライヴのオースティン・シティ・リミッツに出演した際、お馴染みのDoug人脈とともに参加して、ドラムを叩いています。

 Bobby Earl Smithは、Sir Douglas Quintetの元メンバー、フィドラーのAlvin Crowと活動をともにし、その後素晴らしいソロ・アルバムをリリースしています。

 本盤は、79年、Big Wheel Recordsからのリリースとなっていますが、そこへ至る経緯を私は知りません。
 レコード・デビューを逃した幻のバンドだったはずなのに、どうしてこいうアルバムが存在しているのでしょうか?
 これが一つ目のレアな理由です。

 私は、Doug Sahmのディスコグラフィーで、このアルバムの存在を初めて知りました。

 本盤には、なんと1曲だけとはいえ、Doug Sahmがゲスト参加して、自作曲、"Texas Me"を歌っているのです。
 得意の語りから曲に入る展開が見事に記録されていて、素晴らしいです。
 これって、ちょっと凄くないですか?
 これが、二つ目の、そして最大のレアな理由です。

 ただ、流通枚数など、そのレア度は不明です。
 私に入手出来たのですからさほどではないのかもしれませんが、珍品であるのは間違いないでしょう。
 私は、eBayに出品されているのに二度遭遇し、一度目は逃しましたが、数か月前、幸運にもついにゲットしました。

 本盤は、ライヴとしては熱気度や臨場感はさほどではありません。
 かろうじてライヴであることがわかる観客の控えめな歓声、拍手などが入っています。

 演奏は、スタジオ盤と比較するとラフな感はいなめませんが、バンドの個性は充分出ていると思います。
 バンドを支えているリズム隊、とりわけドラムスがいい感じです。
 また、ラップ・スチールもいい味を出しています。

 Freda(Marcia)、Bobbyともに、ボーカルの線が若干細いですが、繊細なフォーキー調の曲にはあっています。

 Bobbyが頑張る、Carl Parkinsの"Honey Don't"は、勢いがあってやはりいい曲ですね。
 John X. Reedのギターは、ほぼ完コピに近いです。

 Bobbyの自作、"Dry Creek Inn"は、スチールが入りますが、カントリー臭はなく、内省的なフォーク・ロックに仕上がっています。

 本盤のハイライト、Doug Sahmの"Texas Me"は、明らかにFiredogsの伴奏で演奏されていると感じました。
 ここまで聴いてきて耳になじんだドラムのフィル、スチールの響き、さらには短いけれどアーシーなギターのオブリも入ります。
 このギターは、Dougではなく、John X. Reedでしょう。

 アーシーなギター・ソロが前面に出る"Easy Rider"は、Freda(Marcia)が姉御肌のボーカルをとります。

 B面も聴きものが続きます。
 Freda(Marcia)の自作、"Eugene"は、ブギ基調で始まり、ほどなく完全にロックンロールになります。
 古いスタイルのロックンロールはやはり良いです。

 Bobbyがリードをとるフォーキーなナンバーを経て、さらに追い打ちをかけるように、ディランの"You Ain't Goin Nowhere"が歌われます。
 ここでは、Freda(Marcia)とデュエットしています。

 そして、オーラスは、ニューポートのマディ・ウォーターズで有名な"I Got My Mojo Working"です。
 ギターのイントロ、そしてリズム・パターンが、まんま「ミステリー・トレイン」で、つい頬が緩んでしまいます。

 最初はリズム隊に惹かれましたが、最後まで聴きとおすと、John X. Reedのアーシーなギターが好きになりました。
 今まで意識したことがなかったのですが、本盤でのプレイは光っています。

 聴き返すごとに、味わいがじわじわと沁みてくる、そんな1枚だと思います。


 さて、11月18日は、Doug Sahmの命日です。
 今日は、Dougのアルバムをたくさん聴いて過ごしたいと思っています。

 まずは、私にとってファースト・コンタクトとなった、"Midnight Sun"から聴いていきましょうか。



Be Real by Freda & The Firedogs




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セピア色のジェイムズ

 いやー、日本盤が出てたんですね。
 しかも、英文ライナーの完訳がついているそうで、ライナーだけ別に欲しいです。
 でも、価格が英盤の二倍もする日本盤は買いづらいです。

 今回は、英Aceのナイス・コレクション、James Burtonの初期の仕事集です。


The Early Years 1956-1969
James Burton

1. Susie-Q - Dale Hawkins (57)
2. Red Hot - Bob Luman (57)
3. Shirley Lee - Bobby Lee Trammel (57)
4. My Babe - Ricky Nelson (57)
5. Cannonball Rag - James Burton (61)
6. Don't Leave Me This Way - Ricky Nelson (58)
7. The Creep - The Shadows (57)
8. Stop Sneakin' Around - Ricky Nelson (60)
9. Swamp Surfer - Jimmy Dobro (63)
10. Make Up Your Mind Baby - Bob Luman (58)
11. Fireball Mail - Jim & Joe (63)
12. Blood from a Stone - Ricky Nelson (60)
13. Real Live Fool - Lee Hazlewood (65)
14. Daisy Mae - Jim & Joe (63)
15. Everybody Listen to the Dobro - Jimmy Dobro (63)
16. Guitar Player - Buddy Cagle (69)
17. Jimmy's Blues - Jimmy Burton (65)
18. Poor Boy Looking for a Home - The Green River Boys Feat. Glen Campbell (62)
19. See See Rider - The Everly Brothers (65)
20. Love Lost - Jimmy Burton (65)
21. A Child's Claim to Fame - Buffalo Springfield (67)
22. If You Want to Be My Woman - Merle Haggard (67)
23. Moonshine - James Burton & Ralph Mooney (68)
24. Corn Pickin' - James Burton & Ralph Mooney (68)
25. Someday, Someday - The Shindogs (65)
26. Why - The Shindogs (65)
27. Just for a While - Carol Williams (56)
28. Tryin' to Be Someone - David & Lee (62)

 James Burtonは、私が最も好きなギタリストの一人です。
 ミスター・テレキャスターですね。
 私が初めて彼の存在を知ったのは、Elvisのラスベガス公演(?)「オン・ステージ」の記録映画で、バンマスをしている姿を見たのでした。

 Jamse Burtonという名前を意識して音を聴いたのは、米Rhinoがギター・マガジンと共同制作した、カントリー・ギターのコンピの収録曲で、ちょうど本盤のトラック24に入っている、"Corn Pickin'"が出会いだと思います。

 同盤の他の収録曲より、明らかに先へ行っていると感じ、感激したものでした。
 本盤は、続編も出る予定らしく、そちらには多分大物シンガーとのセッションがかなり入っているんでしょうが、今回の収録曲は初めて聴くものがほとんどでした。

 英文ライナーには、いろいろと興味深いことが書いてあるんでしょうね。 
 やはり内容が気になります。

 収録曲のリリース時期と音を聴いた印象からいいますと、必ずしも録音順にレコードになっていないんだろうと想像します。

 ミスター・テレキャスターと言われる彼ですが、ジャケ写を見ると、シングル・カッタウェイのセミアコを構えています。
 これは、グレッチでしょうか。
 ブックレットの写真でも、Ricky Nelsonと写っているものでは、やはりセミアコを持っています。

 私は以前から、"Susie Q"のプレイがJames Burtonだという話を聞いて、不審に思っていました。
 現在の彼のプレイとは違いすぎると感じましたし、何よりギターの音色が違う気がしたからです。

 私は、Dale Hawkinsのアナログ盤で、"Susie Q"を聴いたときから、別人じゃないかと疑っていました。
 Daleのヴィンテージ録音の単独CDも持っていますが、"Susie Q"はアナログ盤とさほど音の印象は変わりません。

 しかし、今回の盤の音は明らかにクリアで、見違える(聞き違える)ようです。
 楽器の音の分離がよくて、ギターがはっきり聴こえます。
 とはいえ、Jamesのプレイだと思い直したわけでもありません。

 このプレイやトーンの印象の違いは、セミアコとソリッド・ギターの違いのせいなんでしょうか?
 本盤でも、中盤以降の収録曲は、まさにJames Burtonといったイメージの演奏が散見しています。
 でも、頭の5〜6曲はかなり受ける印象が違いませんか。

 本盤の最初の方には、ロカビリーの伴奏が固まって入っています。
 でも、聴けばわかりますが、案外ロカビリー・ギターの定番である、マール・トラヴィス風のプレイが出てきません。
 このあたりが、余計に分かりにくくしている原因のひとつかも知れません。

 James Burtonは、Dale Hawkinsとは"Susie Q"だけの縁だったんでしょうか。
 その他の曲でも伴奏したのか、あまり言及している文章を読んだことがありません。

 はっきりしているのは、Ricky Nelsonのバックを長くやったということですね。
 Nelsonのインベリアル時代の多くの曲で伴奏していると思います。

 ただ、一方で、Bob Lumanのバックもやっていて、リリース年だけをみると、時期がダブッているんですよね。
 このあたり、どちらか一方のバックが主でツアーなどにも同行し、もう一方はスタジオ・セッションだけの間柄だったんでしょうか。
 英文ライナーに答えがあるかもと思うと、やはり読みたいです。

 本盤には未収録ですが、Bob Lumanの伴奏をつけたものでは、"Mystery Train"が素晴らしいプレイです。
 録音年がはっきり分かりませんが、Scotty Mooreのプレイと比べると、かなり新しいセンスに満ちたプレイに聴こえます。
 Bob Lumanとも、細く長いつながりがあって、60年代後半以降にも一緒にやっていたのかも知れません。 

 James Burtonは、フラット・ピックを普通に親指と人差し指で持つほかに、中指1本だけにバンジョー用のフィンガー・ピックを付けています。
 フィンガー・ピックは、常につま弾くわけではないと思いますが、これと3弦のライト・ゲージこそが彼のチキン・ピッキン奏法の肝なんだと思います。
 このスタイルにしたのがいつからなのかも、ライナーに記載があるなら知りたいものです。

 本盤には、変名で出したJimmy Dobro名義の作品など、興味深い曲がたくさん入っています。
 Jamesは、ドブロの名手でもありました。
 エミルー・ハリスの初期のアルバムなどでのプレイが特に印象に残っています。

 本盤の前半は、おそらくはセミアコ時代のJameのプレイが楽しめます。
 そして、中盤から後半にかけては、Jamesのパブリック・イメージに近い演奏のオン・パレードになり、そのスマートでシャープな響きに酔わされます。

 Merle HaggardやGlen Campbellとのセッション、Buffalo Springfieldの伴奏までが含まれていたりして、興味は尽きませんが、有名人らの伴奏はこんなものではないです。
 Merle Haggardには腕利きの専属リードがいますし、Glen Campbellは彼自身が達人ですが、それでもJamesにお座敷がかかったということですよね。
 まさにミュージシャンズ・ミュージシャンですね。

 続編にも大いに期待します。


Hello Mary Lou by Ricky Nelson with James burton


ここで使ってるのはフェンダー・ジャズ・マスター?



This Is The Night by Bob Luman


こちらも50年代ですが、テレキャスターを弾く姿が写っています。



James Burton "Tiger man" Guitar solo 1970 with Elvis.







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 これは、賛否両論あるんじゃないでしょうか。
 Joe King Carrascoの今年リリースされたニュー・アルバムです。

 ただし、録音は94年のものです。
 私は最初、発掘ライヴ盤かと思いましたが、しっかりとスタジオ・オリジナル・アルバムでした。


Tattoo Laredo
Joe King Carrasco

1. Another Snake in the Grass (Joe King Carrasco) 
2. Care to Explain (Tanya & Joe King) 
3. Crawl (Joe King Carrasco) 
4. Dirty Job (Joe King Carrasco)
5. Hurts to Hurt (Joe King Carrasco)
6. Last Call (Joe King Carrasco)
7. One Love (Joe King Carrasco) 
8. Prisoner (Joe King Carrasco)
9. Steal Your Love (Joe King Carrasco) 
10. Won't Let You Fall (Joe King Carrasco)

 この音源は、一度も世に出たことはないんでしょうか?
 クレジットには、"Recorded 1994 Remastered and released June 2011"とあります。
 今回初お目見えだとすると、 17年もお蔵入りしていたことになります。

 全曲オリジナルのスタジオ録音盤が、今まで眠っていた理由、そして今年唐突にリリースされた理由ともに不明です。
 とりあえず、通して聴いてみましょう。

 今作のパーソネルは、以下の通りです。

Joe King Carrasco (guitar, vocals)
Chris Stephenson (keyboard , vocals)
Tom Cruz (lead guitar electric)
Chuggy Hernandez (bass, vocals)
Havier Zentino (drums)

Additional musicians:
Gil Herman (sax, vocals)
Onelio Mednia (trumpet)
Jerry Quinterio (keyboards)
Louis Murillo (percussions)
Laurence Roscoe (background vocals, guitar)
Richard Kagel (vocal)

 まず、最初の感想は、従来私たちが持っていた、Joe King Carrascoのパブリック・イメージとは若干違う音楽だな、というものでした。

 ここに展開されているものは、Tex-Mexロックンロールとか、ニューウェイヴ風Tex-Mexとかいった、Carrascoのイメージに直結するものとは、少しずれています。

 私が本盤から感じるのは、例えるなら、疾走感のある80s風ロックンロールです。
 このスタイル自体は嫌いではありません。
 むしろ好きな部類に属します。

 でも、Carrascoがやる必要があったのでしょうか。
 94年がどういう音楽が流行っていたのか、思い出せません。
 というか、そもそも時代の流行音楽にはあまり興味がない人なのでした。

 80s風ロックンロールに例えたのは、ポブ・シーガーあたりを連想したからです。
 さらにメジャーでいうなら、スプリングスティーンや、ヒューイ・ルイスなんかに通じるかもしれません。

 冒頭の1曲、"Another Snake in the Grass"は、いかした南部風ギターのイントロから、ワイルドなボーカルの掛け声が入り、そしてディッキー・ベッツかのような流麗な音色のギター・ソロが流れ、「おっ」と期待が高まりました。

 しかし、続いて「バッシャン、バッシャン」というジャストなドラムが聴こえてきて、少しなえました。
 そこから80s風ロックンロールという言葉がまず浮かんだのです。 
 
 続けて聴いていくと、徐々にドラムスがドライヴし始めて私好みになっていきます。
 「なかなかいいじゃん」と思いました。
 疾走感たっぷりのロックンロールです。

 Carrascoのボーカルといえば、頓狂なイメージがありましたが、ここではミック・ジャガーか、ピーター・ウルフみたいに(褒めすぎ?)ワルな雰囲気を醸し出していてかっこいいです。
 ボーカルの背後では、リード・ギターがサザン・ロック風のソロを弾きまくっています。
 曲は、スタートしたときの印象のまま突っ走って終わります。




 ここで私は考えました。
 「かっこいい、でもCarrascoである必要はない」と…。
 ここには、従来のCarrasco流儀のパーティ・スタイルがありません。
 はっちゃけて、おふざけで、ユーモラスで、何よりもダンス・チューンであったはずの音楽の痕跡が見当たりません。

 このスタイルは、続く"Care to Explain"、"Crawl"でも継承されています。
 疾走感たっぷりのロックンロールで、スタイルとしては私は好きですが、正直なところCarrascoに求めていたものは別のものでした。

 そういう意味では、"Dirty Job"は普通に気に入りました。
 サックスがしきりとおかずを入れてくるロックンロールで、George Thorogoodを連想させるところもあります。
 歌詞の中で、「ビーバップ・ア・ルーラ」と叫んだりもしています。
 何より、オールド・スタイルのブギ・ギターがいいです。

 続く"Hurts to Hurt"は異色作です。
 Carrascoの従来のスタイルに近い感じで始まりますが、次第にポップ度が増していき、ついには甘酸っぱいマージー・ビート調になります。
 リバプール・サウンド風のコーラスもその印象をいや増しています。
 これは面白いです。

 "Last Call"は、デトロイトかフィリー産のバンドがやりそうなダンス・ロックになっていて、Carrascoスタイルそのものではないですが、これは相性がぴったりはまっています。
 ロマンティックスあたりを連想するかっこいい曲に仕上がっています。

 "One Love"は、ライトなレゲエ調のリズムで演奏される曲です。
 ちなみに、マーリーの名作とは関係ありません。
 リード・ギターが歌心を感じさせるメロディを紡いでいきます。

 このあたりまで聴いて思ったのは、キーボードがほとんど印象に残らないことでした。
 従来のCarrascoサウンドは、「ピーピー」と歌いまくるキーボードやアコーディオンなど、能天気さを印象づける音のカラーがありましたが、本作ではほとんど感じません。
 バンドのカラーを決定づけているのは、明らかに南部風のスライド中心のギターです。

 "Prisoner"、"Steal Your Love"は、再び前半と似たスタイルの、走り抜けるロックンロールです。
 そして、ラストの" Won't Let You Fall"は長く流麗なギター・ソロを聴かせるナンバーで、このバンドをリードしているのが誰かその存在感を改めて主張しています。

 いくつかのダンス・ナンバーはあったのですが、印象としては、最後までパーティ・チューンなしで終わった、Carrascoらしさの希薄なアルバムだったというのが感想です。

 繰り返しになりますが、私は疾走感のあるロックンロールが嫌いではありません。
 むしろ大好きです。
 でもそれに、より相応しい人は別にいる、そう思ってしまいました。

 この時期、Joe King Carrascoが、ストレートにかっこいい、80s風ロックンロールを試してみた作品なのかも知れません。
 彼の音楽人生の1ページとして、これはこれでいいアルバムなのでしょう。

 でも、でも…です。
 誰もCarrascoのような音楽はできません。
 ですから、やはりCarrascoらしいクレイジーな音楽をやってほしいと強く思いました。



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カオスの人 ジョセフ・ロンゴリア 

 私が以前から強い関心を持ちながらも、遅々として全体像が把握できないミュージシャンがいます。
 その代表が、Gene Thomas、Buck Rogers、そしてJoey Longです。
 マイナーどころばかりですみません。 

 今回は、テキサスの白人ブルース・ギタリストにして、スタジオの伝説のエース、でも、その実体がほとんど伝えられていない人、Joey Longの70年代のソロ・アルバムが手に入ったので、わくわくしながら聴いてみました。

 本盤は、Huey Meauxの制作により、彼のCrazy Cajun Recordsから78年にリリースされました。
 実際に現場を仕切ったのは、Meauxの片腕であるMickey Moodyだと思いますが、アレンジャーとして、Dr. Johnの名前がクレジットされているのが興味深いです。


Flyin High
Joey Long

Side One
1. Tormented Love (Jack Rhodes) 
2. Lovers Land (Jack Rhodes)  
3. Jezebell Gables (Joseph Longoria)
4. House Of The Rising Sun (Alan Price)  
5. Please Mr. Mirror (Joseph Longoria)
Side Two
1. Four O'Clock A.M. Part 1 (Joseph Longoria)
2. Four O'Clock A.M. Part 2 (Joseph Longoria)
3. Blue Taer (Kurney Revett) 
4. Send Me Some Lovin' (77-14) 
5. Keen Teen Baby (Leroy Martin) 

 音を聴く前に、最初にジャケット・デザインについてお知らせします。
 一見してよく分からない構図だと思いますが、これは、4機のジェット機の航空ショー(?)のワン・カットだと思われます。

 なんだか変な爪のようなものが見えますが、飛行機雲の軌跡を捕えたものです。
 謎解きをすれば「なーんだ」という感じですね。
 (私は、ネットでジャケ写を見たとき、なんて趣味の悪いデザインなんだと思っていました。)

 さて、早速聴いてみましょう。
 通して聴いてみて、一気に色々な感情があふれてきました。
 何から説明しましょう。

 とりあえず、相も変わらずのいい加減なつくりの話をします。
 Crazy Cajun、またまたやってくれてます。

 本盤は、裏ジャケ、レコードのラベルとも、収録曲の表記は上記のとおりです。 
 B4の"Send Me Some Lovin'"の作者クレジットが変ですが、この程度はかわいいものです。

 本盤のB面は5曲の題名が記載されていますが、実は6曲入りなのです。
 どうしてこうなったのか、また、再プレスのときにも誰も修正しないのはなぜか、など疑問は尽きませんが事実です。

 B1に収録されている曲のタイトルが全く記載されていず(ジャケ、ラベルとも)、初めて聴くと、頭が混乱します。
 それというのも、表記では、B1とB2が"Four O'Clock A.M."のPart1、Part2となってますが、明らかに別の曲なのです。

 実際にB1は歌もの(R&B)なのに対して、B2の"Four O'Clock A.M. Part 2"は、ブルース・ハープとギターが印象的なジミー・リード・スタイルのインストなのでした。
 対してB3は少し違いますが、やはりブルース・ギターのインストです。

 私は、ここで「あれっ」と思いましたが、不審に思いつつもそのまま聴いていくと、"Send Me Some Lovin'"であるべき曲が全く別のメロで、「ブルー・ティアー」という歌詞を歌っているではありませんか。
 ここで、はっきりと確信しました。
 B面の1曲目のタイトルが欠落しており、全て1曲づつずれているのです。

 タイトルが漏れているB1の曲は、クライド・マクファターの"Just to Hold My Hand"のカバーだと思います。
 これは名曲ですね。
 ホーン・アレンジがかっこよく決まっています。

 さて、少しいらいらをおさめて、仕切り直しましょう。

 本盤は、Joey Longのイメージそのもののサイケなブルースと、これは意外なポップな歌ものが混在した内容になっています。

 他人の曲を歌ったA1,A2は、Joeyが案外うまいテナーを聴かせるポップ・ソングで、「あれっ」と思います。
 しかし、A3の自作、"Jezebell Gables"は、ダミ声でワイルドに歌うブルージーR&Bです。
 ブッカーTを連想させるオルガンに、サイケなブルース・ギターが被さってきます。

 続く"House Of The Rising Sun"は、もちろん「朝日のあたる家」ですが、前曲と同じ路線で、サイケなブルージー・ギターがラフなボーカルにコール&レスポンスするアレンジが印象的です。

 そして、A面ラストの"Please Mr. Mirror"は、きどった美声を聴かせるジャジーなポップ・ソングになっていて、その落差に驚きます。

 困りもののB面をさっと聴きましょう。
 干されている"Just to Hold My Hand"は、本盤ではかなり私好みに仕上がっています。
 これはいいです。

 2曲のインストを経て、歌ものの"Blue Taer"は、ポップな曲ですが、これは意外にもなかなかです。
 一方、オルガンが「ピーピー」とチープな伴奏をする、"Send Me Some Lovin'"は、Joeyのリトル・リチャードばりのヒーカップが聴きものです。
 だんだん調子が出てきました。

 ラストの" Keen Teen Baby"は、元気なホーンの入った三連のニューオリンズR&Bで、オフ気味に聴こえてくる、せわしないピアノの連打が効いているいい曲です。

 本盤では、"Just to Hold My Hand"とともに、特にDr. Johnのテイストを感じさせてくれた曲でした。

 本盤を聴いても、まだまだよくわからない人だというのが正直な感想です。

 ただ言えることは、凶器系のブルース・ギターリストとしての顔と、意外にも「歌える」人の顔を併せ持つ、カオスな人だったのでした。




 

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ごきげんメックス・テックス

 このCDは、最近になって入手しました。
 04年にリリースされた、Los TexManiacsの1stアルバムです。
 2ndと3rdは、早くに聴いていたのですが、この1stとはなかなか縁がなく、やっと聴けたという感じです。
 まあ、あせらずにいれば、いつか手に入るということでしょう。


A Tex-Mex Groove
Los TexManiacs

1. Ando Buscando un Amor (F. G. Ojeda)
2. Hey Baby (Bruce Chanel)
3. Dos Corazones (Fred Zimmerle)
4. Cielito Lindo (Quirino Mendoza y Cortez)
5. Mi Vacacion (Max Baca)
6. China de Los Ojos Negros (Pedro Rocha)
7. Cerca del Mar (Chico Navarro)
8. Hey Good Lookin' (Hank Williams)
9. Esperando Tu Querer (Mike & Jacinto Saucedo)
10. Cayo una Lagrima (D.A.R.)
11. She's About a Mover (Doug Sahm)

 今作はメジャー・デビュー作ですが、既に伝統的な音楽とポップなスタイルとの配分が絶妙なブレンドとなっていて、とても聴きやすいアルバムになっています。
 これを受けた2ndも、そういった流れを引き継いだ路線でした。

 そして、09年リリースの3rdは、そこからさらに新たな一歩を踏み出すべく、メキシカン・ルーツをさら探求した意欲作となりました。
 中身は、明るいパーティ・チューンが中心ですので楽しく聴けますが、一方で古い伝統的なスタイルの楽曲が延々と続く展開には、好き嫌いが分かれるかも知れません。

 3rdアルバムは、結果としてその年のグラミーを獲得し、大きな成功を得ました。
 メキシカン・ルーツに根差した豊かな音楽性が、改めて高く評価されたわけですが、若干アカデミックな感のある3rdを受けて、次作の方向性が気になるところです。

 さて、その原点となる本作です。
 Los TexManiacsは、本作の時点では、いまいちパーソネル・メンバーがはっきりしません。

 事実上本盤では、バホ・セストのMax Bacaと、アコーディオンのMichael Guerra(プロデューサー)という、高い演奏力を持つ二人の双頭バンドからなっていて、そのスタイルの基本は、伝統的なコンフント・デュオのロック・コンボ版だと思います。

 はっきりとメンツが確立したのは3rdアルバムで、本盤では多くの強力なゲストがサポートしています。

 スティーヴ・バーリン、デイヴィッド・イダルゴ、セサール・ロサスという、ロス・ロボス勢がほぼ全面参加しています。 
 また、フラコ・ヒメネス、オーギー・マイヤース、そして、なんとショーン・サームも参加しているらしいです。
 (ちなみに、Michael Guerraは、Shawn Sahmのバンド、Tex-Mex Experienceに参加していました。)

 エレキのギター・ソロが聴こえてくると、これはセサールかショーンかと気になります。
 ("Hey Good Lockin'"でのブルージーなギターは、おそらくセサールでしょう。)

 また、アコーディオンは、フラコかグエラかと同様に気にかかりますが、そんな背後で、淡々と弾き続けるオーギーのオルガンは、特別に我を主張するわけでもないにも関わらず、繰り返し聴くごとにその印象が増していくのでした。

 スペイン語で歌う曲が大半なのですが、選曲が見事なのでしょう。
 懐かしさを感じさせる、どこかで聴いたようなメロディの流れに癒されます。

 一方、英語曲では、ブルース・チャネルの"Hey Baby"のカバーが新鮮です。
 改めて曲の良さを再確認しました。
 素晴らしい名作の原曲でハーモニカを吹いたのは、デルバート・マクリントンでした。
 この曲のイントロが、ビートルズの"Love Me Do"に影響を与えたことはよく知られています。

 曲に対する思い入れのせいもありますが、私は、本盤のハイライトの1曲といいたいです。
 とりわけ、ハーモニカのパートを担当するアコが素晴らしく、何の違和感も感じさせません。
 このプレイは、グエラでしょうか。

 その他、全体を通して、明るいメキシカン・トラッド風の曲が聴かせます。
 ロボス勢が参加した曲は、はっきりと特定できませんが、おそらくはブルージーな曲調のものに関わっているのだと思います。

 Freddy Fenderのバージョンも楽しい、"Cielito Lindo"は、やっぱり名曲です。
 このアコは、フラコでしょうか。
 「アイ アイ ア ヤー」のフレーズが耳に残ります。
 やはり、スペイン語の曲が良いです。

 抒情的なポレロの"Cerca del Mar"、メキシカン・トランペットが印象深く、オルケスタ風サウンドに料理した、"Esperando Tu Querer"が、中でも私のお気に入りです。

 本作での英語曲は、結果的にスペイン語曲をより際立たせるアクセントの役割をになっています。
 優れたスパニッシュ・ポップ・アルバムと呼びたいです。

 ボートラとして追加された、Doug Sahmの"She's About A Mover"は、明らかに他の曲とは雰囲気が違っています。
 あるいは、ショーンがギターを弾いたのは、この1曲だけかも知れません。

 そして、この曲のリード・ボーカルは誰でしょう?
 ショーンかなとも思いますが、違うような気もします。
 Max BacaがDoug Sahm風に歌っているのかも知れません。
 少なくとも、ショーンはコーラスでは参加しているはずです。

 アルバムのバランスとしては、不要な追加曲だったかも知れませんが、この曲の存在が、私をこのバンドに出会わせてくれました。

 オーギーは、本盤への参加を契機として、本バンドとの交流を深めているようです。



Augie Meyers and Los TexManiacs




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ディスカバー・ウイリー・ガルシア

 今回は、60年代イーストL.A.のチカーノ・ロックを代表するバンド、Thee Midnitersの元リード・シンガー、(Little )Willie Gのソロ・アルバムです。

 本盤は、10年リリースとインフォされていますが、それが正しければ、おそらくは限定的に流通していたものだと思います。
 私は、ほんの数か月前まで、その存在を全く知りませんでした。

 このほかに、00年作、03年作とされているアルバムが、時を同じくして流通し始めました。
 いずれも、多くの方が存在すら知らなかったアイテムではないでしょうか。

 私は、近年のWillie Gは、ゴスペル歌手になったか、あるいは純粋に宗教活動に打ち込んでいるのではないかと考えていましたので、ソウル、ブルース・アルバムを録音していたことを知って驚きました。 



On The Cover
Willie G

1. Good Time Roll  
2. Wall To Wall
3. Further On Up the Road
4. Change My Mind
5. Love of Mind
6. Green Grass
7. Driving Wheel
8. Still Call It the Blues
9. Don't Want No Wife  

 Willie Gは、ロス・ロボスのデイヴィッド・イダルゴが、もっとも偉大なチカーノ・シンガーと呼んだ人物です。
 Doug Sahmの没後10年目にリリースされたトリビュート・アルバムでは、冒頭の1曲を担当する栄誉を担っていました。

 さて、本盤は、サックスとトランペットの2管を擁するバンドをバックに吹き込まれた、ソウル、ブルースのカバー・アルバムです。

 そのサウンドは、例えれば沈着冷静で、ソウルの汗とか熱気ではなく、また、ムード命でもなく、まるで青白く静かに燃える炎を思わせる、ジェントルでクールな、ナイト・ミュージック風のそれになっています。

 スリルがないとか、退屈だとか言っているわけではありません。
 むしろ逆で、ごてごてしたシンセ音や、甘いばかりのストリングスなどを排した、スマートかつスタイリッシュなサウンドに仕上がっています。
 それでいて、60s70sのソウルの情熱を再現した素晴らしいアルバムだと思います。

 順に聴いていきましょう。
 本盤には、曲のクレジットが一切ないので、以下は推測で書いており、錯誤があるかも知れません。

 まず、冒頭の"Good Time Roll"は、正確には"Let The Good Time Roll"です。

 Joe Turnerや、Sharlie & Lee、さらにはEarl Kingまで、同名異曲が多数ありますが、ここで演奏されているのは、Louie Jordanのものです。

 B.B.Kingの愛唱歌であり、あるいはお手本はB.B.盤かも知れません。
 この曲も、B.B.も、Loiueもみんな大好きな私は、出だしから好印象を受けました。
 ブレイクを効果的に使ったメリハリのあるアレンジ、そして間奏でのトランペットの独奏が素晴らしいです。

 "Wall To Wall"は、かっこいいファンク・ナンバーです。
 装飾を最小限に抑えたシンプルなリズム・セクションに、密に絡むホーン陣のクールなビート・リフに痺れます。

 オリジナルは、マラコ時代のJohnnie Taylorだと思いますが、私は原曲のアレンジより、本盤のWillie Gのバージョンの方が数段好きです。
 とにかくかっこよくて、出だしのカウントをとる歌詞から始まる部分など、ぜひともルーファス・トーマスにやらせたかったファンキー・ダンス・チューンになっています。

 "Further On Up The Road"は、ブルースの大有名曲ですね。
 Bobby Blandのあまたある初期の名作のひとつです。
 イントロのフレーズが聴こえてくると、自然と心が騒ぐのでした。

 バンドのアンサンブルが素晴らしく、私は、Doug Sahmの"West Side Sound Rolls Again"での同曲の素晴らしいバージョンを思い出しました。
 Doug Sahm盤を若干簡素にしたような感じですが、ブルース・ギターのソロも流麗に決まっています。

 "Change My Mind"は、もちろん、Tyrone Davisの"Can I Change My Mind"です。
 リズム・ギターが、オリジナルのあの軽快なビートを素直に再現していて、清々しいアレンジです。
 この曲は、サザン贔屓もノーザン贔屓も、みんな大好きなんじゃないでしょうか。
 私の印象ですが、チカーノ・シンガーは、おしなべてシカゴ・ソウルを得意にしています。
 とにかく、気持ちいいリズムにのせられます。

 "Love of Mind"は、サックスとトランペットのデュオで始まる、ミディアム・リズムのブルースです。
 この曲は、少し自信がないのですが、Bobby Blandのマラコ時代の"Love Of Mine"("Years Of Tears"収録)ではないでしょうか?
 「Mind」と「Mine」、うーんどうでしょう。
 Willie Gが、耳で覚えた可能性はありますよね。
 歌詞はしっかりと聴き比べられていませんが、同じリズムを使った曲だと思います。 

 "Green Grass"は、"Don't Let The Green Grass Fool You"です。
 この曲は、オリジナルは誰でしょう?
 誰であれ、私は、何と言ってもWilson Pickettがフィリーに乗り込んで録音したバージョンが印象深いです。

 Willie Gのバージョンは、伴奏のアレンジから、声の出し方は特に、Pickettを連想させる仕上がりです。
 グレイト・カバーと言いたいです。
 Willie Gが、サビの語尾を「〜 Green Grass Fool Ya !」と歌っているのが耳に残りました。

 "Driving Wheel"は、ルーズベルト・サイクスの曲というより、もはやJunior Parkerの作品といっていいでしょう。
 ここでも、お手本は明らかにParker盤です。
 私は、ルーズベルト・サイクスも好きですが、ここではピアノよりブルース・ギターのソロが印象に残りました。

 "Still Call It the Blues"は、再びマラコ時代のJohnnie Taylorが元ネタだと思います。
 正しくは、"Still Called The Blues"で、"Wall To Wall"とは曲調が違いますが、両曲とも、近々楽しみなリイシューが予定されている、George Jacksonがらみの曲のはずです。
 こちらは、Johnnie Taylorお得意の不倫ブルース(?)じゃないでしょうか。

 "Don't Want No Wife"は、誤植なのかあえてなのか不明ですが、"Don't Want No Woman"だと思います。
 オリジナルは、デューク時代のBobby Blandです。
 これも問答無用の名作ですね。

 アルバム全体をとおして、曲のチョイスや並べ方に好感が持てます。
 じわじわと、聴き返すごとに味わい深くなっていくアルバムだと感じました。

 ノーザン系が得意なのは予想どおりでしたが、特筆すべきは、Bobby BlandやJohnnie Taylorを好んで取り上げていることです。

 Willie Gが、ブルーズン・ソウル好きであることがよく分かり、嬉しくなるのでした。




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