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トミーのお気に入り

 このハスキー・ボイスには、得も言われぬ魅力があってはまります。
 私は、昔、Freddy Fenderとデュエットした曲での二人のからみが最高に好きでした。
 Freddyのスムースな高音と、この人の息苦しそうなかすれ声が不思議とマッチしていたのでした。

 本盤は、Huey P.Meauxの制作で78年にCrazy Cajunからリリースされたものです。
 Tommy McLainの60年代のシングルの新録音を中心に、彼のお気に入り曲集になっています。


If You Don't Love Me
& His All Time Favorites
Tommy McLain
 

Side One 
1. Tender Years (Darrell Edwards, George Jone)
2. Honky Tonk (Doggett, Scott, Butler, Shepherd)
3. Wasted Days & Wasted Nights (B. Huerta)
4. Before The Next Teardrop Falls (V. Keith, B. Peters)
5. Sweet Dreams (Don Gibson)'66 jin 197
Side Two
1. Where You Been Baby (Tommy McLain)
2. No Tomorrows Now (Tommy McLain)
3. If You Don't Love Me (Why Don't You Leave Me Alone)
4. Before I Grow Too Old (A. Domino)
5. Tennessee Blues (Bobby Charles Guidry)
6. When It Rains (It Really Pours) (Tommy McLain) 

 「フェイヴァリッツ」とか、「トレジャー」とかのタイトルが好きです。
 そのアーティストが煮詰まったときの企画盤の場合もありますが、しばしば好カバー集であることが多いです。

 本盤のサウンドは、何となく、いつものシュガーヒル・スタジオのものとは雰囲気が違う気がします。
 ただ、Huey MeauxとMickey Moodyの黄金コンビの制作で間違いありません。

 個別のミュージシャンがクレジットされていないので、確信はないですが、あるいは、Tommy McLainのツアー・バンドが参加しているのかも知れません。
 少なくとも、ハモンド・オルガンは、彼自身が弾いていると思います。

 本盤の売りは、やはり、Freddy Fenderの大ヒット曲、"Wasted Days & Wasted Nights"と"Before The Next Teardrop Falls"のTommy盤が入っていることですね。
 Freddy Fenderのヒット・バージョンは、74年にリリースされ、翌年にベストセラー・アルバム、"Before The Next Teardrop Falls"に収録されました。

 本盤の"Before The Next Teardrop Falls"では、2ndヴァースで、別の男性がデュエットしますが、誰か分かりません。

 冒頭の"Tender Years"は、ホンキートンク・カントリー・レジェンド、George Jonesのカバーだと思いますが、オリジナルを収録したアルバムが行方不明で、無念にも聴き比べが出来ませんでした。
 中期のGeorge Jonesらしい、スムースかつジェントルなバラードです。
 Tommy盤のシングルは、68年にJinからリリースされました。

 次の"Honky Tonk"は、Bill Doggettの有名R&Bインストのカバーです。
 原曲は、オルガン曲ですが、ここでは、ギターとサックス中心のアレンジになっています。
 ワイルドさと、チープさを併せ持ったような不思議なテイストに仕上がっています。

 A面ラストの"Sweet Dreams"は、Tommy McLainの代表曲の新録です。
 原曲は、ナッシュビル・ポップ・カントリーのシンガー・ソングライター、Don Gibsonの自演盤です。

 この人は、Ray Charlesの大ヒット「愛さずにいられない」の作者でもあります。
 無数のカバーがありますが、一般的には、Patsy Cline盤で知られています。
 Tommy盤のシングルは、66年にJinからリリースされました。

 B面のアタマの2曲は、このアルバムで初めて聴いた曲です。
 どちらも良い曲です。
 
 でも、本盤のハイライトは、やはり3曲目の" If You Don't Love Me (Why Don't You Leave Me Alone)"ですね。

 この曲は、Tommy McLain自作の一世一代の失恋バラードです。
 Freddy Fenderも、77年のアルバム"If You Don't Love Me"でカバーしていました。
 Tommyの原曲は、72年に吹き込まれています。

 続く2曲は、誰がやっても悪くなりようがない名作ですね。
 "Before I Grow Too Old"は、Fats Domino作となっていますが、Bobby Charlesとの共作だったような気が…。
 Tommyのかすれ声がいい感じにのっています。
 Tommy盤のシングルは、68年にJinからリリースされました。

 "Tennessee Blues"もまた、問答無用の名作です。
 Bobby Charlesの72年のベアズヴィル盤は、みんな大好きですよね。

 こちらも多数のカバーがあると思いますが、私は、Doug Sahmのバージョンと、親父を思わせる声で歌ってくれた、Shawn Sahmによる新生Texas Tornados盤が特に印象に残っています。
 ここでは、ライヴ風の演出がされていて、ドラムのエンディングがフェード・アウトせず、それ風の終わり方をしています。

 "When It Rains (It Really Pours)"は、同名異曲が複数あると思います。
 「降れば土砂降り」とか、「泣きっ面に蜂」といった訳で知られる、ことわざが元になっているのが理由ではないでしょうか。

 Elvisがカバーした、Billy The Kid Emersonの作品や、Parcy Sledgeの同名曲は、いずれも別の曲だったような気がします。
 こちらは、Tommyの自作で、Freddy Fenderも、78年のアルバム"Swamp Gold"でカバーしていました。

 ジャケ良し、選曲良し、パフォーマンス良しの好盤だと思います。


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