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王様、アメリカン・ロックする

 これは、賛否両論あるんじゃないでしょうか。
 Joe King Carrascoの今年リリースされたニュー・アルバムです。

 ただし、録音は94年のものです。
 私は最初、発掘ライヴ盤かと思いましたが、しっかりとスタジオ・オリジナル・アルバムでした。


Tattoo Laredo
Joe King Carrasco

1. Another Snake in the Grass (Joe King Carrasco) 
2. Care to Explain (Tanya & Joe King) 
3. Crawl (Joe King Carrasco) 
4. Dirty Job (Joe King Carrasco)
5. Hurts to Hurt (Joe King Carrasco)
6. Last Call (Joe King Carrasco)
7. One Love (Joe King Carrasco) 
8. Prisoner (Joe King Carrasco)
9. Steal Your Love (Joe King Carrasco) 
10. Won't Let You Fall (Joe King Carrasco)

 この音源は、一度も世に出たことはないんでしょうか?
 クレジットには、"Recorded 1994 Remastered and released June 2011"とあります。
 今回初お目見えだとすると、 17年もお蔵入りしていたことになります。

 全曲オリジナルのスタジオ録音盤が、今まで眠っていた理由、そして今年唐突にリリースされた理由ともに不明です。
 とりあえず、通して聴いてみましょう。

 今作のパーソネルは、以下の通りです。

Joe King Carrasco (guitar, vocals)
Chris Stephenson (keyboard , vocals)
Tom Cruz (lead guitar electric)
Chuggy Hernandez (bass, vocals)
Havier Zentino (drums)

Additional musicians:
Gil Herman (sax, vocals)
Onelio Mednia (trumpet)
Jerry Quinterio (keyboards)
Louis Murillo (percussions)
Laurence Roscoe (background vocals, guitar)
Richard Kagel (vocal)

 まず、最初の感想は、従来私たちが持っていた、Joe King Carrascoのパブリック・イメージとは若干違う音楽だな、というものでした。

 ここに展開されているものは、Tex-Mexロックンロールとか、ニューウェイヴ風Tex-Mexとかいった、Carrascoのイメージに直結するものとは、少しずれています。

 私が本盤から感じるのは、例えるなら、疾走感のある80s風ロックンロールです。
 このスタイル自体は嫌いではありません。
 むしろ好きな部類に属します。

 でも、Carrascoがやる必要があったのでしょうか。
 94年がどういう音楽が流行っていたのか、思い出せません。
 というか、そもそも時代の流行音楽にはあまり興味がない人なのでした。

 80s風ロックンロールに例えたのは、ポブ・シーガーあたりを連想したからです。
 さらにメジャーでいうなら、スプリングスティーンや、ヒューイ・ルイスなんかに通じるかもしれません。

 冒頭の1曲、"Another Snake in the Grass"は、いかした南部風ギターのイントロから、ワイルドなボーカルの掛け声が入り、そしてディッキー・ベッツかのような流麗な音色のギター・ソロが流れ、「おっ」と期待が高まりました。

 しかし、続いて「バッシャン、バッシャン」というジャストなドラムが聴こえてきて、少しなえました。
 そこから80s風ロックンロールという言葉がまず浮かんだのです。 
 
 続けて聴いていくと、徐々にドラムスがドライヴし始めて私好みになっていきます。
 「なかなかいいじゃん」と思いました。
 疾走感たっぷりのロックンロールです。

 Carrascoのボーカルといえば、頓狂なイメージがありましたが、ここではミック・ジャガーか、ピーター・ウルフみたいに(褒めすぎ?)ワルな雰囲気を醸し出していてかっこいいです。
 ボーカルの背後では、リード・ギターがサザン・ロック風のソロを弾きまくっています。
 曲は、スタートしたときの印象のまま突っ走って終わります。




 ここで私は考えました。
 「かっこいい、でもCarrascoである必要はない」と…。
 ここには、従来のCarrasco流儀のパーティ・スタイルがありません。
 はっちゃけて、おふざけで、ユーモラスで、何よりもダンス・チューンであったはずの音楽の痕跡が見当たりません。

 このスタイルは、続く"Care to Explain"、"Crawl"でも継承されています。
 疾走感たっぷりのロックンロールで、スタイルとしては私は好きですが、正直なところCarrascoに求めていたものは別のものでした。

 そういう意味では、"Dirty Job"は普通に気に入りました。
 サックスがしきりとおかずを入れてくるロックンロールで、George Thorogoodを連想させるところもあります。
 歌詞の中で、「ビーバップ・ア・ルーラ」と叫んだりもしています。
 何より、オールド・スタイルのブギ・ギターがいいです。

 続く"Hurts to Hurt"は異色作です。
 Carrascoの従来のスタイルに近い感じで始まりますが、次第にポップ度が増していき、ついには甘酸っぱいマージー・ビート調になります。
 リバプール・サウンド風のコーラスもその印象をいや増しています。
 これは面白いです。

 "Last Call"は、デトロイトかフィリー産のバンドがやりそうなダンス・ロックになっていて、Carrascoスタイルそのものではないですが、これは相性がぴったりはまっています。
 ロマンティックスあたりを連想するかっこいい曲に仕上がっています。

 "One Love"は、ライトなレゲエ調のリズムで演奏される曲です。
 ちなみに、マーリーの名作とは関係ありません。
 リード・ギターが歌心を感じさせるメロディを紡いでいきます。

 このあたりまで聴いて思ったのは、キーボードがほとんど印象に残らないことでした。
 従来のCarrascoサウンドは、「ピーピー」と歌いまくるキーボードやアコーディオンなど、能天気さを印象づける音のカラーがありましたが、本作ではほとんど感じません。
 バンドのカラーを決定づけているのは、明らかに南部風のスライド中心のギターです。

 "Prisoner"、"Steal Your Love"は、再び前半と似たスタイルの、走り抜けるロックンロールです。
 そして、ラストの" Won't Let You Fall"は長く流麗なギター・ソロを聴かせるナンバーで、このバンドをリードしているのが誰かその存在感を改めて主張しています。

 いくつかのダンス・ナンバーはあったのですが、印象としては、最後までパーティ・チューンなしで終わった、Carrascoらしさの希薄なアルバムだったというのが感想です。

 繰り返しになりますが、私は疾走感のあるロックンロールが嫌いではありません。
 むしろ大好きです。
 でもそれに、より相応しい人は別にいる、そう思ってしまいました。

 この時期、Joe King Carrascoが、ストレートにかっこいい、80s風ロックンロールを試してみた作品なのかも知れません。
 彼の音楽人生の1ページとして、これはこれでいいアルバムなのでしょう。

 でも、でも…です。
 誰もCarrascoのような音楽はできません。
 ですから、やはりCarrascoらしいクレイジーな音楽をやってほしいと強く思いました。



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