2011年11月01日
ディスカバー・ウイリー・ガルシア
今回は、60年代イーストL.A.のチカーノ・ロックを代表するバンド、Thee Midnitersの元リード・シンガー、(Little )Willie Gのソロ・アルバムです。
本盤は、10年リリースとインフォされていますが、それが正しければ、おそらくは限定的に流通していたものだと思います。
私は、ほんの数か月前まで、その存在を全く知りませんでした。
このほかに、00年作、03年作とされているアルバムが、時を同じくして流通し始めました。
いずれも、多くの方が存在すら知らなかったアイテムではないでしょうか。
私は、近年のWillie Gは、ゴスペル歌手になったか、あるいは純粋に宗教活動に打ち込んでいるのではないかと考えていましたので、ソウル、ブルース・アルバムを録音していたことを知って驚きました。
1. Good Time Roll
2. Wall To Wall
3. Further On Up the Road
4. Change My Mind
5. Love of Mind
6. Green Grass
7. Driving Wheel
8. Still Call It the Blues
9. Don't Want No Wife
Willie Gは、ロス・ロボスのデイヴィッド・イダルゴが、もっとも偉大なチカーノ・シンガーと呼んだ人物です。
Doug Sahmの没後10年目にリリースされたトリビュート・アルバムでは、冒頭の1曲を担当する栄誉を担っていました。
さて、本盤は、サックスとトランペットの2管を擁するバンドをバックに吹き込まれた、ソウル、ブルースのカバー・アルバムです。
そのサウンドは、例えれば沈着冷静で、ソウルの汗とか熱気ではなく、また、ムード命でもなく、まるで青白く静かに燃える炎を思わせる、ジェントルでクールな、ナイト・ミュージック風のそれになっています。
スリルがないとか、退屈だとか言っているわけではありません。
むしろ逆で、ごてごてしたシンセ音や、甘いばかりのストリングスなどを排した、スマートかつスタイリッシュなサウンドに仕上がっています。
それでいて、60s70sのソウルの情熱を再現した素晴らしいアルバムだと思います。
順に聴いていきましょう。
本盤には、曲のクレジットが一切ないので、以下は推測で書いており、錯誤があるかも知れません。
まず、冒頭の"Good Time Roll"は、正確には"Let The Good Time Roll"です。
Joe Turnerや、Sharlie & Lee、さらにはEarl Kingまで、同名異曲が多数ありますが、ここで演奏されているのは、Louie Jordanのものです。
B.B.Kingの愛唱歌であり、あるいはお手本はB.B.盤かも知れません。
この曲も、B.B.も、Loiueもみんな大好きな私は、出だしから好印象を受けました。
ブレイクを効果的に使ったメリハリのあるアレンジ、そして間奏でのトランペットの独奏が素晴らしいです。
"Wall To Wall"は、かっこいいファンク・ナンバーです。
装飾を最小限に抑えたシンプルなリズム・セクションに、密に絡むホーン陣のクールなビート・リフに痺れます。
オリジナルは、マラコ時代のJohnnie Taylorだと思いますが、私は原曲のアレンジより、本盤のWillie Gのバージョンの方が数段好きです。
とにかくかっこよくて、出だしのカウントをとる歌詞から始まる部分など、ぜひともルーファス・トーマスにやらせたかったファンキー・ダンス・チューンになっています。
"Further On Up The Road"は、ブルースの大有名曲ですね。
Bobby Blandのあまたある初期の名作のひとつです。
イントロのフレーズが聴こえてくると、自然と心が騒ぐのでした。
バンドのアンサンブルが素晴らしく、私は、Doug Sahmの"West Side Sound Rolls Again"での同曲の素晴らしいバージョンを思い出しました。
Doug Sahm盤を若干簡素にしたような感じですが、ブルース・ギターのソロも流麗に決まっています。
"Change My Mind"は、もちろん、Tyrone Davisの"Can I Change My Mind"です。
リズム・ギターが、オリジナルのあの軽快なビートを素直に再現していて、清々しいアレンジです。
この曲は、サザン贔屓もノーザン贔屓も、みんな大好きなんじゃないでしょうか。
私の印象ですが、チカーノ・シンガーは、おしなべてシカゴ・ソウルを得意にしています。
とにかく、気持ちいいリズムにのせられます。
"Love of Mind"は、サックスとトランペットのデュオで始まる、ミディアム・リズムのブルースです。
この曲は、少し自信がないのですが、Bobby Blandのマラコ時代の"Love Of Mine"("Years Of Tears"収録)ではないでしょうか?
「Mind」と「Mine」、うーんどうでしょう。
Willie Gが、耳で覚えた可能性はありますよね。
歌詞はしっかりと聴き比べられていませんが、同じリズムを使った曲だと思います。
"Green Grass"は、"Don't Let The Green Grass Fool You"です。
この曲は、オリジナルは誰でしょう?
誰であれ、私は、何と言ってもWilson Pickettがフィリーに乗り込んで録音したバージョンが印象深いです。
Willie Gのバージョンは、伴奏のアレンジから、声の出し方は特に、Pickettを連想させる仕上がりです。
グレイト・カバーと言いたいです。
Willie Gが、サビの語尾を「〜 Green Grass Fool Ya !」と歌っているのが耳に残りました。
"Driving Wheel"は、ルーズベルト・サイクスの曲というより、もはやJunior Parkerの作品といっていいでしょう。
ここでも、お手本は明らかにParker盤です。
私は、ルーズベルト・サイクスも好きですが、ここではピアノよりブルース・ギターのソロが印象に残りました。
"Still Call It the Blues"は、再びマラコ時代のJohnnie Taylorが元ネタだと思います。
正しくは、"Still Called The Blues"で、"Wall To Wall"とは曲調が違いますが、両曲とも、近々楽しみなリイシューが予定されている、George Jacksonがらみの曲のはずです。
こちらは、Johnnie Taylorお得意の不倫ブルース(?)じゃないでしょうか。
"Don't Want No Wife"は、誤植なのかあえてなのか不明ですが、"Don't Want No Woman"だと思います。
オリジナルは、デューク時代のBobby Blandです。
これも問答無用の名作ですね。
アルバム全体をとおして、曲のチョイスや並べ方に好感が持てます。
じわじわと、聴き返すごとに味わい深くなっていくアルバムだと感じました。
ノーザン系が得意なのは予想どおりでしたが、特筆すべきは、Bobby BlandやJohnnie Taylorを好んで取り上げていることです。
Willie Gが、ブルーズン・ソウル好きであることがよく分かり、嬉しくなるのでした。
関連記事はこちら
心の扉を開けてくれ
バリオでロッキン
本盤は、10年リリースとインフォされていますが、それが正しければ、おそらくは限定的に流通していたものだと思います。
私は、ほんの数か月前まで、その存在を全く知りませんでした。
このほかに、00年作、03年作とされているアルバムが、時を同じくして流通し始めました。
いずれも、多くの方が存在すら知らなかったアイテムではないでしょうか。
私は、近年のWillie Gは、ゴスペル歌手になったか、あるいは純粋に宗教活動に打ち込んでいるのではないかと考えていましたので、ソウル、ブルース・アルバムを録音していたことを知って驚きました。
On The Cover
Willie G
Willie G
1. Good Time Roll
2. Wall To Wall
3. Further On Up the Road
4. Change My Mind
5. Love of Mind
6. Green Grass
7. Driving Wheel
8. Still Call It the Blues
9. Don't Want No Wife
Willie Gは、ロス・ロボスのデイヴィッド・イダルゴが、もっとも偉大なチカーノ・シンガーと呼んだ人物です。
Doug Sahmの没後10年目にリリースされたトリビュート・アルバムでは、冒頭の1曲を担当する栄誉を担っていました。
さて、本盤は、サックスとトランペットの2管を擁するバンドをバックに吹き込まれた、ソウル、ブルースのカバー・アルバムです。
そのサウンドは、例えれば沈着冷静で、ソウルの汗とか熱気ではなく、また、ムード命でもなく、まるで青白く静かに燃える炎を思わせる、ジェントルでクールな、ナイト・ミュージック風のそれになっています。
スリルがないとか、退屈だとか言っているわけではありません。
むしろ逆で、ごてごてしたシンセ音や、甘いばかりのストリングスなどを排した、スマートかつスタイリッシュなサウンドに仕上がっています。
それでいて、60s70sのソウルの情熱を再現した素晴らしいアルバムだと思います。
順に聴いていきましょう。
本盤には、曲のクレジットが一切ないので、以下は推測で書いており、錯誤があるかも知れません。
まず、冒頭の"Good Time Roll"は、正確には"Let The Good Time Roll"です。
Joe Turnerや、Sharlie & Lee、さらにはEarl Kingまで、同名異曲が多数ありますが、ここで演奏されているのは、Louie Jordanのものです。
B.B.Kingの愛唱歌であり、あるいはお手本はB.B.盤かも知れません。
この曲も、B.B.も、Loiueもみんな大好きな私は、出だしから好印象を受けました。
ブレイクを効果的に使ったメリハリのあるアレンジ、そして間奏でのトランペットの独奏が素晴らしいです。
"Wall To Wall"は、かっこいいファンク・ナンバーです。
装飾を最小限に抑えたシンプルなリズム・セクションに、密に絡むホーン陣のクールなビート・リフに痺れます。
オリジナルは、マラコ時代のJohnnie Taylorだと思いますが、私は原曲のアレンジより、本盤のWillie Gのバージョンの方が数段好きです。
とにかくかっこよくて、出だしのカウントをとる歌詞から始まる部分など、ぜひともルーファス・トーマスにやらせたかったファンキー・ダンス・チューンになっています。
"Further On Up The Road"は、ブルースの大有名曲ですね。
Bobby Blandのあまたある初期の名作のひとつです。
イントロのフレーズが聴こえてくると、自然と心が騒ぐのでした。
バンドのアンサンブルが素晴らしく、私は、Doug Sahmの"West Side Sound Rolls Again"での同曲の素晴らしいバージョンを思い出しました。
Doug Sahm盤を若干簡素にしたような感じですが、ブルース・ギターのソロも流麗に決まっています。
"Change My Mind"は、もちろん、Tyrone Davisの"Can I Change My Mind"です。
リズム・ギターが、オリジナルのあの軽快なビートを素直に再現していて、清々しいアレンジです。
この曲は、サザン贔屓もノーザン贔屓も、みんな大好きなんじゃないでしょうか。
私の印象ですが、チカーノ・シンガーは、おしなべてシカゴ・ソウルを得意にしています。
とにかく、気持ちいいリズムにのせられます。
"Love of Mind"は、サックスとトランペットのデュオで始まる、ミディアム・リズムのブルースです。
この曲は、少し自信がないのですが、Bobby Blandのマラコ時代の"Love Of Mine"("Years Of Tears"収録)ではないでしょうか?
「Mind」と「Mine」、うーんどうでしょう。
Willie Gが、耳で覚えた可能性はありますよね。
歌詞はしっかりと聴き比べられていませんが、同じリズムを使った曲だと思います。
"Green Grass"は、"Don't Let The Green Grass Fool You"です。
この曲は、オリジナルは誰でしょう?
誰であれ、私は、何と言ってもWilson Pickettがフィリーに乗り込んで録音したバージョンが印象深いです。
Willie Gのバージョンは、伴奏のアレンジから、声の出し方は特に、Pickettを連想させる仕上がりです。
グレイト・カバーと言いたいです。
Willie Gが、サビの語尾を「〜 Green Grass Fool Ya !」と歌っているのが耳に残りました。
"Driving Wheel"は、ルーズベルト・サイクスの曲というより、もはやJunior Parkerの作品といっていいでしょう。
ここでも、お手本は明らかにParker盤です。
私は、ルーズベルト・サイクスも好きですが、ここではピアノよりブルース・ギターのソロが印象に残りました。
"Still Call It the Blues"は、再びマラコ時代のJohnnie Taylorが元ネタだと思います。
正しくは、"Still Called The Blues"で、"Wall To Wall"とは曲調が違いますが、両曲とも、近々楽しみなリイシューが予定されている、George Jacksonがらみの曲のはずです。
こちらは、Johnnie Taylorお得意の不倫ブルース(?)じゃないでしょうか。
"Don't Want No Wife"は、誤植なのかあえてなのか不明ですが、"Don't Want No Woman"だと思います。
オリジナルは、デューク時代のBobby Blandです。
これも問答無用の名作ですね。
アルバム全体をとおして、曲のチョイスや並べ方に好感が持てます。
じわじわと、聴き返すごとに味わい深くなっていくアルバムだと感じました。
ノーザン系が得意なのは予想どおりでしたが、特筆すべきは、Bobby BlandやJohnnie Taylorを好んで取り上げていることです。
Willie Gが、ブルーズン・ソウル好きであることがよく分かり、嬉しくなるのでした。
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心の扉を開けてくれ
バリオでロッキン