2011年11月18日
テキサス遥か
今回は、少しばかりレアなアイテムをご紹介します。
Freda & The Firedogsのライヴ・アルバムです。
クレジットによれば、79年1月20日のオースティンでのライヴを録音したもので、Joe Gracey(?)とBobby Earl Smithの制作となっています。
私は、このバンドはもっと早い時期に解散していたと思っていました。
Side One
1. Someday Soon (Ian Tyson)
2. Honey Don't (Carl Perkins)
3. Dry Creek Inn (Bobby Earl Smith, Ronald David Howard)
4. Texas Me (Doug Sahm, F. Morin, J. Perez, Augie Meyer)
5. Easy Rider (Taj Majal)
Side Two
1. Eugene (Marcia Ball)
2. Honky-Tonk Downs Fairs (Dallas Frazier)
3. Make Me A Pallet (P.D.)
4. You Ain't Goin Nowhere (Bob Dylan)
5. I Got My Mojo Working (M. Morganfield)
本盤がなぜレアなのかといいますと、二つの理由があります。
まず、アルバムの存在自体がレアです。
理由をひもとくため、Freda & The Firedogsについておさらいしましょう。
Freda & The Firedogsは、70年代の始め、アトランティック・レコードの大物プロデューサー、ジェリー・ウェクスラーがテキサス州へと趣き、Willie Nelson、Doug Sahmに続いて契約しようとした3組目のアーティストでした。
契約を視野にいれ、アルバム1枚分の録音まで行われたにも関わらず、結局バンド側の逡巡(?)から正式契約に至りませんでした。
その後、Freda & The Firedogsは、成功を得ることなく自然消滅的に解散したのでした。
Freda & The FiredogsのフロントであったFredaは、その後、Marcia Ball名義でソロデビューし、テキサスやルイジアナ音楽愛好家の注目を集めたため、幻となった過去の音源にも関心が寄せられました。
消失したと伝えられていたテープの存在が明らかになり、Freda & The Firedogsの幻のデビュー盤がCD化され、ファンを喜ばせたのは、つい数年前のことです。
Freda & The Firedogsの編成は以下の通りです。
Marcia Ball (piano, vocals)
John X. Reed (guitar, harmony vocals)
Bobby Earl Smith (bass, vocals)
Steve McDaniels (drums)
David Cook (steel guitar, rhythm guitar)
Freda & The Firedogsは、ブルース、R&B、カントリー、フォークなどのルーツ・ミュージックに根差したバンドで、ブルースに強い影響を受けながらもカントリーも歌える女性ボーカルのFreda(Marcia)と、フォーキーな男性シンガー、ソングライターのBobby Earl Smithの二人を中心とするバンドでした。
Freda & The Firedogs解散後は、Marcia Ballは前述のとおりソロ・デビューして成功し、ギターのJohn X. Reed、ベースのBobby Earl Smith、ドラムスのSteve McDanielsは、それぞれ明確な時期は不明ですが、Doug Sahmと活動をともにした時期がありました。
John X. Reedは、Sir Douglas Quintetの同窓会的ライヴ・アルバム、"Back To The Dillo"ほかでクレジットがされています。
また、Doug Sahmもゲスト参加した、テキサスの姉妹バンド、Texana Damesのアルバムでギターを弾いたりもしています。
Steve McDanielsは、Doug SahmがTVライヴのオースティン・シティ・リミッツに出演した際、お馴染みのDoug人脈とともに参加して、ドラムを叩いています。
Bobby Earl Smithは、Sir Douglas Quintetの元メンバー、フィドラーのAlvin Crowと活動をともにし、その後素晴らしいソロ・アルバムをリリースしています。
本盤は、79年、Big Wheel Recordsからのリリースとなっていますが、そこへ至る経緯を私は知りません。
レコード・デビューを逃した幻のバンドだったはずなのに、どうしてこいうアルバムが存在しているのでしょうか?
これが一つ目のレアな理由です。
私は、Doug Sahmのディスコグラフィーで、このアルバムの存在を初めて知りました。
本盤には、なんと1曲だけとはいえ、Doug Sahmがゲスト参加して、自作曲、"Texas Me"を歌っているのです。
得意の語りから曲に入る展開が見事に記録されていて、素晴らしいです。
これって、ちょっと凄くないですか?
これが、二つ目の、そして最大のレアな理由です。
ただ、流通枚数など、そのレア度は不明です。
私に入手出来たのですからさほどではないのかもしれませんが、珍品であるのは間違いないでしょう。
私は、eBayに出品されているのに二度遭遇し、一度目は逃しましたが、数か月前、幸運にもついにゲットしました。
本盤は、ライヴとしては熱気度や臨場感はさほどではありません。
かろうじてライヴであることがわかる観客の控えめな歓声、拍手などが入っています。
演奏は、スタジオ盤と比較するとラフな感はいなめませんが、バンドの個性は充分出ていると思います。
バンドを支えているリズム隊、とりわけドラムスがいい感じです。
また、ラップ・スチールもいい味を出しています。
Freda(Marcia)、Bobbyともに、ボーカルの線が若干細いですが、繊細なフォーキー調の曲にはあっています。
Bobbyが頑張る、Carl Parkinsの"Honey Don't"は、勢いがあってやはりいい曲ですね。
John X. Reedのギターは、ほぼ完コピに近いです。
Bobbyの自作、"Dry Creek Inn"は、スチールが入りますが、カントリー臭はなく、内省的なフォーク・ロックに仕上がっています。
本盤のハイライト、Doug Sahmの"Texas Me"は、明らかにFiredogsの伴奏で演奏されていると感じました。
ここまで聴いてきて耳になじんだドラムのフィル、スチールの響き、さらには短いけれどアーシーなギターのオブリも入ります。
このギターは、Dougではなく、John X. Reedでしょう。
アーシーなギター・ソロが前面に出る"Easy Rider"は、Freda(Marcia)が姉御肌のボーカルをとります。
B面も聴きものが続きます。
Freda(Marcia)の自作、"Eugene"は、ブギ基調で始まり、ほどなく完全にロックンロールになります。
古いスタイルのロックンロールはやはり良いです。
Bobbyがリードをとるフォーキーなナンバーを経て、さらに追い打ちをかけるように、ディランの"You Ain't Goin Nowhere"が歌われます。
ここでは、Freda(Marcia)とデュエットしています。
そして、オーラスは、ニューポートのマディ・ウォーターズで有名な"I Got My Mojo Working"です。
ギターのイントロ、そしてリズム・パターンが、まんま「ミステリー・トレイン」で、つい頬が緩んでしまいます。
最初はリズム隊に惹かれましたが、最後まで聴きとおすと、John X. Reedのアーシーなギターが好きになりました。
今まで意識したことがなかったのですが、本盤でのプレイは光っています。
聴き返すごとに、味わいがじわじわと沁みてくる、そんな1枚だと思います。
さて、11月18日は、Doug Sahmの命日です。
今日は、Dougのアルバムをたくさん聴いて過ごしたいと思っています。
まずは、私にとってファースト・コンタクトとなった、"Midnight Sun"から聴いていきましょうか。
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テキサスのご婦人がた
Freda & The Firedogsのライヴ・アルバムです。
クレジットによれば、79年1月20日のオースティンでのライヴを録音したもので、Joe Gracey(?)とBobby Earl Smithの制作となっています。
私は、このバンドはもっと早い時期に解散していたと思っていました。
Live From The Old Soap Creek Saloon
Freda & The Firedogs
Freda & The Firedogs
Side One
1. Someday Soon (Ian Tyson)
2. Honey Don't (Carl Perkins)
3. Dry Creek Inn (Bobby Earl Smith, Ronald David Howard)
4. Texas Me (Doug Sahm, F. Morin, J. Perez, Augie Meyer)
5. Easy Rider (Taj Majal)
Side Two
1. Eugene (Marcia Ball)
2. Honky-Tonk Downs Fairs (Dallas Frazier)
3. Make Me A Pallet (P.D.)
4. You Ain't Goin Nowhere (Bob Dylan)
5. I Got My Mojo Working (M. Morganfield)
本盤がなぜレアなのかといいますと、二つの理由があります。
まず、アルバムの存在自体がレアです。
理由をひもとくため、Freda & The Firedogsについておさらいしましょう。
Freda & The Firedogsは、70年代の始め、アトランティック・レコードの大物プロデューサー、ジェリー・ウェクスラーがテキサス州へと趣き、Willie Nelson、Doug Sahmに続いて契約しようとした3組目のアーティストでした。
契約を視野にいれ、アルバム1枚分の録音まで行われたにも関わらず、結局バンド側の逡巡(?)から正式契約に至りませんでした。
その後、Freda & The Firedogsは、成功を得ることなく自然消滅的に解散したのでした。
Freda & The FiredogsのフロントであったFredaは、その後、Marcia Ball名義でソロデビューし、テキサスやルイジアナ音楽愛好家の注目を集めたため、幻となった過去の音源にも関心が寄せられました。
消失したと伝えられていたテープの存在が明らかになり、Freda & The Firedogsの幻のデビュー盤がCD化され、ファンを喜ばせたのは、つい数年前のことです。
Freda & The Firedogsの編成は以下の通りです。
Marcia Ball (piano, vocals)
John X. Reed (guitar, harmony vocals)
Bobby Earl Smith (bass, vocals)
Steve McDaniels (drums)
David Cook (steel guitar, rhythm guitar)
Freda & The Firedogsは、ブルース、R&B、カントリー、フォークなどのルーツ・ミュージックに根差したバンドで、ブルースに強い影響を受けながらもカントリーも歌える女性ボーカルのFreda(Marcia)と、フォーキーな男性シンガー、ソングライターのBobby Earl Smithの二人を中心とするバンドでした。
Freda & The Firedogs解散後は、Marcia Ballは前述のとおりソロ・デビューして成功し、ギターのJohn X. Reed、ベースのBobby Earl Smith、ドラムスのSteve McDanielsは、それぞれ明確な時期は不明ですが、Doug Sahmと活動をともにした時期がありました。
John X. Reedは、Sir Douglas Quintetの同窓会的ライヴ・アルバム、"Back To The Dillo"ほかでクレジットがされています。
また、Doug Sahmもゲスト参加した、テキサスの姉妹バンド、Texana Damesのアルバムでギターを弾いたりもしています。
Steve McDanielsは、Doug SahmがTVライヴのオースティン・シティ・リミッツに出演した際、お馴染みのDoug人脈とともに参加して、ドラムを叩いています。
Bobby Earl Smithは、Sir Douglas Quintetの元メンバー、フィドラーのAlvin Crowと活動をともにし、その後素晴らしいソロ・アルバムをリリースしています。
本盤は、79年、Big Wheel Recordsからのリリースとなっていますが、そこへ至る経緯を私は知りません。
レコード・デビューを逃した幻のバンドだったはずなのに、どうしてこいうアルバムが存在しているのでしょうか?
これが一つ目のレアな理由です。
私は、Doug Sahmのディスコグラフィーで、このアルバムの存在を初めて知りました。
本盤には、なんと1曲だけとはいえ、Doug Sahmがゲスト参加して、自作曲、"Texas Me"を歌っているのです。
得意の語りから曲に入る展開が見事に記録されていて、素晴らしいです。
これって、ちょっと凄くないですか?
これが、二つ目の、そして最大のレアな理由です。
ただ、流通枚数など、そのレア度は不明です。
私に入手出来たのですからさほどではないのかもしれませんが、珍品であるのは間違いないでしょう。
私は、eBayに出品されているのに二度遭遇し、一度目は逃しましたが、数か月前、幸運にもついにゲットしました。
本盤は、ライヴとしては熱気度や臨場感はさほどではありません。
かろうじてライヴであることがわかる観客の控えめな歓声、拍手などが入っています。
演奏は、スタジオ盤と比較するとラフな感はいなめませんが、バンドの個性は充分出ていると思います。
バンドを支えているリズム隊、とりわけドラムスがいい感じです。
また、ラップ・スチールもいい味を出しています。
Freda(Marcia)、Bobbyともに、ボーカルの線が若干細いですが、繊細なフォーキー調の曲にはあっています。
Bobbyが頑張る、Carl Parkinsの"Honey Don't"は、勢いがあってやはりいい曲ですね。
John X. Reedのギターは、ほぼ完コピに近いです。
Bobbyの自作、"Dry Creek Inn"は、スチールが入りますが、カントリー臭はなく、内省的なフォーク・ロックに仕上がっています。
本盤のハイライト、Doug Sahmの"Texas Me"は、明らかにFiredogsの伴奏で演奏されていると感じました。
ここまで聴いてきて耳になじんだドラムのフィル、スチールの響き、さらには短いけれどアーシーなギターのオブリも入ります。
このギターは、Dougではなく、John X. Reedでしょう。
アーシーなギター・ソロが前面に出る"Easy Rider"は、Freda(Marcia)が姉御肌のボーカルをとります。
B面も聴きものが続きます。
Freda(Marcia)の自作、"Eugene"は、ブギ基調で始まり、ほどなく完全にロックンロールになります。
古いスタイルのロックンロールはやはり良いです。
Bobbyがリードをとるフォーキーなナンバーを経て、さらに追い打ちをかけるように、ディランの"You Ain't Goin Nowhere"が歌われます。
ここでは、Freda(Marcia)とデュエットしています。
そして、オーラスは、ニューポートのマディ・ウォーターズで有名な"I Got My Mojo Working"です。
ギターのイントロ、そしてリズム・パターンが、まんま「ミステリー・トレイン」で、つい頬が緩んでしまいます。
最初はリズム隊に惹かれましたが、最後まで聴きとおすと、John X. Reedのアーシーなギターが好きになりました。
今まで意識したことがなかったのですが、本盤でのプレイは光っています。
聴き返すごとに、味わいがじわじわと沁みてくる、そんな1枚だと思います。
さて、11月18日は、Doug Sahmの命日です。
今日は、Dougのアルバムをたくさん聴いて過ごしたいと思っています。
まずは、私にとってファースト・コンタクトとなった、"Midnight Sun"から聴いていきましょうか。
Be Real by Freda & The Firedogs
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