2011年04月25日
マムーから来た男たち
テキサス、ルイジアナ・ミュージックのファンなら、一聴の価値があるアルバムです。
製作の経緯こそよくわかりませんが、ともに地元では有名、しかし全国的知名度は今いちという二人がカップリングされた1枚です。
1. Rice And Gravy Blues : Link Davis (Davis)
2. Something To Ease My Pain : Joey Long
3. If You See My Baby : Joey Long
4. The Guy From Big Mayou : Link Davis
5. Little Red Boat : Link Davis
6. I Need Someone : Joey Long (Portz Tucker)
7. Lealla : Joey Long (Longeria)
8. Cockroach : Link Davis (Smith, Davis)
9. Bon Tu Ru La : link Davis (Davis)
10. The Blues Just Walked In : Joey Long
11. Grasshopper : Link Davis (Davis)
12. Beatle Bug : Link Davis
13. The Rains Came : Joey Long
14. Cajun Doll : Link Davis
Joey Longは、ヒューイ・モーのシュガー・ヒル・スタジオの名人ギタリストであり、ダグ・サームがカバーした、"I'm Glad For Your Sake"のお手本になった人です。
そして、Link Davisは、ケイジャン界のボブ・ウィルズともいうべき巨人で、フィドルとサックスをプレイするマルチ・プレイヤーでした。
この二人に共通するのは、スタジオのエースとして、かなりの数のポップ・ソングの伴奏をやっただろうと思われること、そして自らの名義で優れた録音を残しながらも、決して広く評価されていないと思われることです。
それでも、Link Davisは、数枚のアルバムが流通していますが、Joey Longは、まず音源を聴くことに苦労します。
その意味で、この1枚は貴重です。
相変わらず、コレクタブルズの仕事は安易なつくりだと感じますが、この1枚に関しては、そういった不満を超えて、他ではやらない仕事を、よくぞやってくれたと言いたいです。
さて、収録曲ですが、普通に思えば、ふたりのシングルを適当に配置しただけの安易な仕事に感じます。
聴く前の私は、そう思っていました。
しかし、通して聴いた最初の感想は「?」でした。
「これは、不思議なアルバムだ。」
「収録曲は、それぞれの名義で出されているが、バックの音に非常に共通性を感じる。」
「曲目表を確認しないと、どちらの曲なのか分からない曲や、完全に逆に受け取る曲がある。」
ということです。
Link Davisは、ケイジャン調のウエスタン・スイングを得意としています。
彼の代表曲"Big Mamou"は、多くのシンガーに取り上げられていて、もはやスタンダードといっていいと思います。
そんな彼の全く別の一面を、このアルバムでは聴くことが出来ます。
ここに収録されているLink Davisの曲、
それはブルースです。
リズム&ブルースです。
そして、そのバックを支えているのは、黒っぽいリズム隊と、ブルージーで手数の多い、アグレッシヴなギターなのです。
一方、Joey long名義の曲を聴きましょう。
ここでは、彼得意のブルースのほか、ロックンロール、ロカビリー、そしてスワンプ・ポップなどを聴くことが出来ます。
しかし、気になることがあります。
何となく感じるこの感覚はなんでしょう。
ここで聴けるギターは、Link Davisのバックで鳴っているギターと同じものではないでしょうか?
例えば、Link Davis名義の冒頭の曲、"Rice And Gravy Blues"からしてそうです。
ここでは、スクイーズやビブラートより、細かいアタック重視のせわしないギターのフレーズが、たえず歌のバックで鳴っています。
そして、今度はJoey Long名義の曲、"Something To Ease My Pain"を聴きましょう。
ここでは、ジョーイ自身が吹くハープと合わせ、1曲前の曲と何となく似た印象を与えるギターを聴くことができます。
ただ、歌いながらということもあり、ここではオブリガード中心のプレイです。
逆に、Joey Longのロカビリー、"Lealla"のバックでとてもタフなリフを吹いているサックスに注目しましょう。
これが、Link Davisのプレイだという可能性はないでしょうか?
全く裏をとらずに書いていますが、Link Davisは、ビッグ・ボッパーの「シャンタリー・レース」でサックスを吹いたという話が、一部で伝わっています。
このへんのくだりは、話を面白くしたい願望がかなり入っていますので、話半分で聞いて下さい。
とにかく、私は、二人のパフォーマンスが交互に収録されていたりするにも関わらず、全く違和感なく、このアルバムを聴き通すことができました。
むしろ、自然な流れを感じたくらいです。
10曲目のJoey Long名義の曲、"The Blues Just Walked In"は、眼をつむって聴けば、間違いなくLink Davisのレコードだと感じたと思います。
この曲は、ラップ・スチールも入ったケイジャン・カントリー風のナンバーで、驚きです。
また、Link Davis名義の曲、"Grasshopper"や、"Cockroach"は、基本的にはジャンプ・ブルース・スタイルの曲で、そのボーカルは、まるでワイノニー・ハリスのように聴こえます。
これまた驚くほかないです。
クレジットが誤っている、などのありえない大逆転のない限り、このアルバムでは、ふたりが役割交換したかのような、驚きのパフォーマンスをいくつか聴くことが出来ます。
終盤には、Joeyによる"Rains Came"、そしてLinkによる"Cajun Doll"という、スワンプ・ポップをスタイリッシュに歌いあげた和みの2曲が待っています。
とりわけ、Linkのパフォーマンスは、ジェントルでオールドタイミーな魅力に満ちた仕上がりになっています。
まあ、2曲とも必聴でしょう。
今回は、かなり私の妄想の暴走と、一部願望による展開となりました。
しかし、一つ言いたいことは、もしあなたがテキサス、ルイジアナの音楽のファンで、このアルバムを見かけたなら、ためらわずに買いましょう、ということです。
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7. Lealla : Joey Long (Longeria)
8. Cockroach : Link Davis (Smith, Davis)
9. Bon Tu Ru La : link Davis (Davis)
10. The Blues Just Walked In : Joey Long
11. Grasshopper : Link Davis (Davis)
12. Beatle Bug : Link Davis
13. The Rains Came : Joey Long
14. Cajun Doll : Link Davis
Joey Longは、ヒューイ・モーのシュガー・ヒル・スタジオの名人ギタリストであり、ダグ・サームがカバーした、"I'm Glad For Your Sake"のお手本になった人です。
そして、Link Davisは、ケイジャン界のボブ・ウィルズともいうべき巨人で、フィドルとサックスをプレイするマルチ・プレイヤーでした。
この二人に共通するのは、スタジオのエースとして、かなりの数のポップ・ソングの伴奏をやっただろうと思われること、そして自らの名義で優れた録音を残しながらも、決して広く評価されていないと思われることです。
それでも、Link Davisは、数枚のアルバムが流通していますが、Joey Longは、まず音源を聴くことに苦労します。
その意味で、この1枚は貴重です。
相変わらず、コレクタブルズの仕事は安易なつくりだと感じますが、この1枚に関しては、そういった不満を超えて、他ではやらない仕事を、よくぞやってくれたと言いたいです。
さて、収録曲ですが、普通に思えば、ふたりのシングルを適当に配置しただけの安易な仕事に感じます。
聴く前の私は、そう思っていました。
しかし、通して聴いた最初の感想は「?」でした。
「これは、不思議なアルバムだ。」
「収録曲は、それぞれの名義で出されているが、バックの音に非常に共通性を感じる。」
「曲目表を確認しないと、どちらの曲なのか分からない曲や、完全に逆に受け取る曲がある。」
ということです。
Link Davisは、ケイジャン調のウエスタン・スイングを得意としています。
彼の代表曲"Big Mamou"は、多くのシンガーに取り上げられていて、もはやスタンダードといっていいと思います。
そんな彼の全く別の一面を、このアルバムでは聴くことが出来ます。
ここに収録されているLink Davisの曲、
それはブルースです。
リズム&ブルースです。
そして、そのバックを支えているのは、黒っぽいリズム隊と、ブルージーで手数の多い、アグレッシヴなギターなのです。
一方、Joey long名義の曲を聴きましょう。
ここでは、彼得意のブルースのほか、ロックンロール、ロカビリー、そしてスワンプ・ポップなどを聴くことが出来ます。
しかし、気になることがあります。
何となく感じるこの感覚はなんでしょう。
ここで聴けるギターは、Link Davisのバックで鳴っているギターと同じものではないでしょうか?
例えば、Link Davis名義の冒頭の曲、"Rice And Gravy Blues"からしてそうです。
ここでは、スクイーズやビブラートより、細かいアタック重視のせわしないギターのフレーズが、たえず歌のバックで鳴っています。
そして、今度はJoey Long名義の曲、"Something To Ease My Pain"を聴きましょう。
ここでは、ジョーイ自身が吹くハープと合わせ、1曲前の曲と何となく似た印象を与えるギターを聴くことができます。
ただ、歌いながらということもあり、ここではオブリガード中心のプレイです。
逆に、Joey Longのロカビリー、"Lealla"のバックでとてもタフなリフを吹いているサックスに注目しましょう。
これが、Link Davisのプレイだという可能性はないでしょうか?
全く裏をとらずに書いていますが、Link Davisは、ビッグ・ボッパーの「シャンタリー・レース」でサックスを吹いたという話が、一部で伝わっています。
このへんのくだりは、話を面白くしたい願望がかなり入っていますので、話半分で聞いて下さい。
とにかく、私は、二人のパフォーマンスが交互に収録されていたりするにも関わらず、全く違和感なく、このアルバムを聴き通すことができました。
むしろ、自然な流れを感じたくらいです。
10曲目のJoey Long名義の曲、"The Blues Just Walked In"は、眼をつむって聴けば、間違いなくLink Davisのレコードだと感じたと思います。
この曲は、ラップ・スチールも入ったケイジャン・カントリー風のナンバーで、驚きです。
また、Link Davis名義の曲、"Grasshopper"や、"Cockroach"は、基本的にはジャンプ・ブルース・スタイルの曲で、そのボーカルは、まるでワイノニー・ハリスのように聴こえます。
これまた驚くほかないです。
クレジットが誤っている、などのありえない大逆転のない限り、このアルバムでは、ふたりが役割交換したかのような、驚きのパフォーマンスをいくつか聴くことが出来ます。
終盤には、Joeyによる"Rains Came"、そしてLinkによる"Cajun Doll"という、スワンプ・ポップをスタイリッシュに歌いあげた和みの2曲が待っています。
とりわけ、Linkのパフォーマンスは、ジェントルでオールドタイミーな魅力に満ちた仕上がりになっています。
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今回は、かなり私の妄想の暴走と、一部願望による展開となりました。
しかし、一つ言いたいことは、もしあなたがテキサス、ルイジアナの音楽のファンで、このアルバムを見かけたなら、ためらわずに買いましょう、ということです。
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投稿者:エル・テッチ|01:15|ケイジャン、ザディコ
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