2011年04月16日
リンカン・トラヴィス・デイヴィス
私は、Link DavisのLPを持っているはずだ、そう思って探しました。
私の頭にあったのは、くすんだオレンジ地(?)のジャケットに、Link Davisの顔のアップというものでした。
でも、目的のものは見つかりません。(…いつものことです)
そして、ようやく発見したのが、持っていることさえ忘れていた、このアルバムでした。
89年リリースの英Edsel盤です。
Side One
1. Big Mamou (Davis)
2. Pretty Little Dedon (Davis)
3. Mamou Waltz (Davis, Davis)
4. Hey Garcon (Jones, Peeples)
5. Lonely Heart (Davis, Leaders)
6. Time Will Tell (Davis)
7. Gumbo Ya Ya (Everybody Talks At Once)(Tyler, Austell)
8. Falling For You (Davis, Davis)
Side Two
1. Crawfish Crawl (Arnaud, Davis)
2. Yo're Little But You're Cute (G.Tucker, L.Davis, B.Quinn)
3. Mama Say So (Edwards, Davis)
4. Every Time I Pass Your Door (Davis, Quinn)
5. You Show Up Missing (B.Aunaud, M.Aunaud)
6. Cajun Love (Lynn)
7. Kajalena (Glenn, Thomas)
8. Va T'cacher (Go Hide Yourself)(L.Davis, Arnaud, A.Conway)
Link Davisをご存知でしょうか?
本名、Lincoln Travis Davis
彼は、1914年に、ダラスの東20マイル、ウィルズ・ポイントという小さな町で、8人兄弟の一人として生まれました。
ローティーンのころから、二人の兄弟とグループを組んで音楽活動を始めたようです。
そのスタイルは、ウエスタン・スイング、ヒルビリー、ケイジャン、ロカビリー、ロックンロール、ブルースなど、様々なルーツ・ミュージックに及んでいます。
主にフィドルを演奏しているイメージがありますが、実はサックスの名手でもありました。
50年代には、スタジオ・ミュージシャンとして、ヒット曲のバックでサックスをプレイしたこともありました。
これらの多くは、ノークレジットだと思われ、真偽は不明ですが、ビッグ・ボッパーの「シャンタリー・レース」でのプレイは彼だと記している文章を見かけます。
フィドルとサックスをプレイするというと、私などは、ロスト・プラネッツ・オブ・エア・メンのアンディ・ステインを連想します。
彼もケイジャン・フィドルの名手であるとともに、サックス・プレイヤーでもありました。
何しろ、カントリー系の曲では、美しいフィドルの音色でうっとりさせ、一方、ジャンプ・ブルースでは、サックスをブリブリと吹き鳴らして乗せまくります。
ウエスタン・スイング系のバンドでは、重宝される存在ですね。
実は、ステインの名前を出すまでもなく、リンク・デイヴィスの息子、リンク・デイヴィス・ジュニアもまた、複数の楽器を演奏するマルチ・プレイヤーでした。
ダグ・クリフォードが制作した、ダグ・サームの名盤、Groovers Paradiseに参加して多才ぶりを見せていたのが、リンク・ジュニアでした。
さて、このアルバムは、50年代前半に、コロンビア(オーケーを含む)に吹きこんだ曲をコンパイルしたものになっていて、編者には、レイ・トッピング、クリフ・ホワイトの名前がクレジットされています。
リンク・デイヴィスという人は、スタジオのエースでもあったわけで、想像するところ、それこそどんな音楽でも、求められれば演奏した人だと思います。
特に、このあとすぐにやってきた、ロックンロールの爆発の時代には、ロカビリーやロックンロールをやっただろうことは、容易に想像できることです。
(この人には、Matchboxがカバーした"Sixteen Chicks"という曲があります。)
事実この人は、テキサスの伝説的ギタリスト、ジョーイ・ロングらと、ブルースまでも吹き込んでいるようです。
(もっとも、黒人版ケイジャンともいうべきザディコは、ブルースにとても近い存在ですので、不思議はないですが…。)
そんな多彩なレパートリーを持つ人ではありますが、本アルバムでは、彼の最もパブリック・イメージに近いパフォーマンスばかりが詰め込まれています。
曲調は、いわゆるケイジャン・ツー・ステップやウエスタン・スイング(本当は、この二つは分けられませんが…。)、歌は、クレオールなまり(?)たっぷりの(クリフトン・シェニエを連想させる)特徴あるスタイルです。
本作の音を聴く限り、さほど大編成(ホーンが入ったビッグ・バンド)ではなく、ヒルビリー・バンドに近いような音に聴こえますが、ジャケット写真では、エレキ・ギター、スチール・ギター、サキソフォン、フィドルという、完全にウエスタン・スイング・バンドに見えます。
当然、ドラムスが後ろに隠れていると思われます。
おとなしめのサウンドと言う意味では、ハンク・トンプソンなどに近いイメージです。
しかし、やはり特徴的なのは、ケイジャン音楽をルーツとしたサウンドです。
代表曲"Big Mamou"は、私は完全にトラッドだと思い込んでいました。
ここでは、リンク作となっており、他のアーティストのカバーでも同様のクレジットになっているようで、そうなのでしょう。
もはや、ケイジャン・ソングの大スタンダードだと思います。
「アー、ハッハッ、ホー、ハッハッ」といった囃し言葉も楽しい名曲です。
ギャレット、サーム、テイラー・バンドも、クイーン・アイダをゲストに迎えてカバーしていました。
私が、初めてケイジャン音楽を意識したのは、多分、80年代のダグ・サームのライヴ盤だと思います。(ついこの間のようにも思えますが、もう30年近くたってますね)
最初の1曲は、「ジョリ・ブロン」だったと思います。
この楽しいパーティ・ダンス・チューンの、一種独特のノリに、一発で虜になりました。
ここには、そういった楽しい(ただし、主として英語圏向けの)ケイジャン・ミュージックが詰まっています。(ローカル・レーベルに録音したものはもっとフレンチ度が高いです。)
その多くは、ウエスタン・スイングに取り込まれ、血となり肉となったと思います。
私は以前から、ボブ・ウィルズとルイ・ジョーダンは、同じコインの両面だと思っていました。
黒人音楽と白人音楽の違いこそあれ、ウエスタン・スイングとジャンプ・ブルースは、バンドの編成も似ていますよね。
それでは、ホプ・ウィルズとリンク・デイヴィスの関係はどうでしょうか?
ボブ・ウィルズは、ずっと後年になっても、ウェイロン・ジェニングスに「テキサスでは、ポブ・ウィルズが今でも王様だ」と歌われ、讃えられた人でした。
リンク・デイヴィスのことを「ケイジャンのボブ・ウィルズ」と呼ぶと、彼は泉下で怒るでしょうか。
さて、このアルバムは音がよく、とても聴きやすいです。
ダンス・チューンはあくまでウキウキと楽しく、ワルツはひたすらメロデイックで美しく、素晴らしいです。
そして、プレ・ロックンロール調の曲は、ポップで、かつ快調にスイングしています。
本編集盤では、ケイジャン、ヒルビリー・スタイルのウエスタン・スイングが堪能できました。
次は、ロカビリーや、ブルースを演奏するリンク・ディヴィスの別の面を聴きたいと思います。
関連記事はこちら
沼地のフレンチ・ポップス
私の頭にあったのは、くすんだオレンジ地(?)のジャケットに、Link Davisの顔のアップというものでした。
でも、目的のものは見つかりません。(…いつものことです)
そして、ようやく発見したのが、持っていることさえ忘れていた、このアルバムでした。
89年リリースの英Edsel盤です。
Big Mamou
Link Davis
Link Davis
Side One
1. Big Mamou (Davis)
2. Pretty Little Dedon (Davis)
3. Mamou Waltz (Davis, Davis)
4. Hey Garcon (Jones, Peeples)
5. Lonely Heart (Davis, Leaders)
6. Time Will Tell (Davis)
7. Gumbo Ya Ya (Everybody Talks At Once)(Tyler, Austell)
8. Falling For You (Davis, Davis)
Side Two
1. Crawfish Crawl (Arnaud, Davis)
2. Yo're Little But You're Cute (G.Tucker, L.Davis, B.Quinn)
3. Mama Say So (Edwards, Davis)
4. Every Time I Pass Your Door (Davis, Quinn)
5. You Show Up Missing (B.Aunaud, M.Aunaud)
6. Cajun Love (Lynn)
7. Kajalena (Glenn, Thomas)
8. Va T'cacher (Go Hide Yourself)(L.Davis, Arnaud, A.Conway)
Link Davisをご存知でしょうか?
本名、Lincoln Travis Davis
彼は、1914年に、ダラスの東20マイル、ウィルズ・ポイントという小さな町で、8人兄弟の一人として生まれました。
ローティーンのころから、二人の兄弟とグループを組んで音楽活動を始めたようです。
そのスタイルは、ウエスタン・スイング、ヒルビリー、ケイジャン、ロカビリー、ロックンロール、ブルースなど、様々なルーツ・ミュージックに及んでいます。
主にフィドルを演奏しているイメージがありますが、実はサックスの名手でもありました。
50年代には、スタジオ・ミュージシャンとして、ヒット曲のバックでサックスをプレイしたこともありました。
これらの多くは、ノークレジットだと思われ、真偽は不明ですが、ビッグ・ボッパーの「シャンタリー・レース」でのプレイは彼だと記している文章を見かけます。
フィドルとサックスをプレイするというと、私などは、ロスト・プラネッツ・オブ・エア・メンのアンディ・ステインを連想します。
彼もケイジャン・フィドルの名手であるとともに、サックス・プレイヤーでもありました。
何しろ、カントリー系の曲では、美しいフィドルの音色でうっとりさせ、一方、ジャンプ・ブルースでは、サックスをブリブリと吹き鳴らして乗せまくります。
ウエスタン・スイング系のバンドでは、重宝される存在ですね。
実は、ステインの名前を出すまでもなく、リンク・デイヴィスの息子、リンク・デイヴィス・ジュニアもまた、複数の楽器を演奏するマルチ・プレイヤーでした。
ダグ・クリフォードが制作した、ダグ・サームの名盤、Groovers Paradiseに参加して多才ぶりを見せていたのが、リンク・ジュニアでした。
さて、このアルバムは、50年代前半に、コロンビア(オーケーを含む)に吹きこんだ曲をコンパイルしたものになっていて、編者には、レイ・トッピング、クリフ・ホワイトの名前がクレジットされています。
リンク・デイヴィスという人は、スタジオのエースでもあったわけで、想像するところ、それこそどんな音楽でも、求められれば演奏した人だと思います。
特に、このあとすぐにやってきた、ロックンロールの爆発の時代には、ロカビリーやロックンロールをやっただろうことは、容易に想像できることです。
(この人には、Matchboxがカバーした"Sixteen Chicks"という曲があります。)
事実この人は、テキサスの伝説的ギタリスト、ジョーイ・ロングらと、ブルースまでも吹き込んでいるようです。
(もっとも、黒人版ケイジャンともいうべきザディコは、ブルースにとても近い存在ですので、不思議はないですが…。)
そんな多彩なレパートリーを持つ人ではありますが、本アルバムでは、彼の最もパブリック・イメージに近いパフォーマンスばかりが詰め込まれています。
曲調は、いわゆるケイジャン・ツー・ステップやウエスタン・スイング(本当は、この二つは分けられませんが…。)、歌は、クレオールなまり(?)たっぷりの(クリフトン・シェニエを連想させる)特徴あるスタイルです。
本作の音を聴く限り、さほど大編成(ホーンが入ったビッグ・バンド)ではなく、ヒルビリー・バンドに近いような音に聴こえますが、ジャケット写真では、エレキ・ギター、スチール・ギター、サキソフォン、フィドルという、完全にウエスタン・スイング・バンドに見えます。
当然、ドラムスが後ろに隠れていると思われます。
おとなしめのサウンドと言う意味では、ハンク・トンプソンなどに近いイメージです。
しかし、やはり特徴的なのは、ケイジャン音楽をルーツとしたサウンドです。
代表曲"Big Mamou"は、私は完全にトラッドだと思い込んでいました。
ここでは、リンク作となっており、他のアーティストのカバーでも同様のクレジットになっているようで、そうなのでしょう。
もはや、ケイジャン・ソングの大スタンダードだと思います。
「アー、ハッハッ、ホー、ハッハッ」といった囃し言葉も楽しい名曲です。
ギャレット、サーム、テイラー・バンドも、クイーン・アイダをゲストに迎えてカバーしていました。
私が、初めてケイジャン音楽を意識したのは、多分、80年代のダグ・サームのライヴ盤だと思います。(ついこの間のようにも思えますが、もう30年近くたってますね)
最初の1曲は、「ジョリ・ブロン」だったと思います。
この楽しいパーティ・ダンス・チューンの、一種独特のノリに、一発で虜になりました。
ここには、そういった楽しい(ただし、主として英語圏向けの)ケイジャン・ミュージックが詰まっています。(ローカル・レーベルに録音したものはもっとフレンチ度が高いです。)
その多くは、ウエスタン・スイングに取り込まれ、血となり肉となったと思います。
私は以前から、ボブ・ウィルズとルイ・ジョーダンは、同じコインの両面だと思っていました。
黒人音楽と白人音楽の違いこそあれ、ウエスタン・スイングとジャンプ・ブルースは、バンドの編成も似ていますよね。
それでは、ホプ・ウィルズとリンク・デイヴィスの関係はどうでしょうか?
ボブ・ウィルズは、ずっと後年になっても、ウェイロン・ジェニングスに「テキサスでは、ポブ・ウィルズが今でも王様だ」と歌われ、讃えられた人でした。
リンク・デイヴィスのことを「ケイジャンのボブ・ウィルズ」と呼ぶと、彼は泉下で怒るでしょうか。
さて、このアルバムは音がよく、とても聴きやすいです。
ダンス・チューンはあくまでウキウキと楽しく、ワルツはひたすらメロデイックで美しく、素晴らしいです。
そして、プレ・ロックンロール調の曲は、ポップで、かつ快調にスイングしています。
本編集盤では、ケイジャン、ヒルビリー・スタイルのウエスタン・スイングが堪能できました。
次は、ロカビリーや、ブルースを演奏するリンク・ディヴィスの別の面を聴きたいと思います。
Big Mamouです。
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投稿者:エル・テッチ|02:26|ケイジャン、ザディコ
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