2011年10月31日
輝きはやまない
スワンプ・ポップ・レジェンドの一人、Johnnie Allanの最近作を聴きました。
今年発売されたもので、彼にとって特別な意味合いを持つ1枚と位置付けられてるようです。
どういうことかと言いますと、裏ジャケにその解答があります。
そこには大きく「音楽生活60年」といった趣旨のことが書いてあるのでした。
1. La Bague Qui Brille [The Ring That Shines] (John A. Guillot)
2. Shine On (John A. Guillot)
3. Unfinished Business (Nichoison, Chapman)
4. Ça, Ça C'est Dur [It's, It's So Hard] (John A. Guillot)
5. La Mule À Fuselier (John A. Guillot)
6. I'm So Afraid of Losing You Again (Owen, Frazer)
7. Greener Grass on the Other Side of the Mountain (John A. Guillot)
8. Monde des Cadiens (John A. Guillot)
9. Homebound Train (John A. Guillot)
10. La Robe [The Dress] (John A. Guillot)
11. You Win Again (H. Williams)
12. Where Are You Jolie Blonde? (Guillot, Comeaux)
13. Ma Belle sophie (C. Guilbeaux)
14. (Hey, Hey, Hey) I Feel Like dancin' (John A. Guillot)
15. Round Again (M. Hennssee)
Johnnie Allanの音楽人生は、1951年、13歳のときに始まります。
プロのミュージシャンの下で、バック・バンドの一員として活動を行い、最初はリズム・ギターを弾き、後にドラムスを経て、スチール・ギターも経験しました。
1958年、自作曲"Lonely Days, Lonely Nights"を吹き込み、フロント・デビューします。
このとき、所属していたバンドを自分のバック・バンド化したのではないかと思います。
1951年を起点として、2011年で音楽生活60年というわけです。
ほとんどの収録曲で作者とクレジットされている、John A. Guillotは、Johnnie Allanの本名です。
フルネームは、John Allen Guillotで、ミドル・ネームのつづりがAllenなのが気になります。
欧米の名前って、表記や発音が違うけれど、起源が同じってありますよね。
ピーター、ピョートル、ペテロとか、ポール、パウロ、パウルとか…。
おそらく、AllanとAllenは、それぞれ同じ名前を起源とするものなんでしょう。
ミドル・ネームがAllanの有名人では、私は、Edger Allan Poeを連想します。
ミステリーや怪奇小説の元祖といわれるアメリカの作家です。
音楽関係では、ファースト・ネームになりますが、アラン・トゥーサンを連想します。
日本では、アランとカナ表記されるのが慣例ですが、スペルは、Allen Toussaintです。
さて、いつもながら脱線しましたので、軌道修正します。
中身を聴いていきましょう。
確認出来たわけではありませんが、おそらく本盤は、新作に加えて、過去の自作のお気に入り曲(とりわけケイジャン曲)を新たに録音してまとめた、自薦集になっているのだと思います。
冒頭の1曲目から、フレンチで迫ってきます。
フィドル、アコーディオン、ラップ・スチールが魅力的なメロを奏でる曲で、ブン、チャンチャン ブン、チャンチャンという、ケイジャンお得意のリズムを使った曲です。
本盤収録曲を大別する三つのパターンのひとつです。
フランス語のタイトルを持つ曲が、概ねこの系統に入ります。
バラードもありますが、アコとフィドルがメインのパーティ・チューンが基本です。
このケイジャン・スタイルのものが、本盤のメインになっています。
とりわけ、トラック12の"Where Are You Jolie Blonde?"から始まって、とトラック13の"Ma Belle sophie"、トラック14の"(Hey, Hey, Hey) I Feel Like dancin'"と続く流れが最高です。
このかっこよすぎるダンス・チューンには、誰もがノックアウトされるでしょう。
ちなみに、ケイジャン・クラシックのタイトルにもある、「Joli Blon(ジョリ・ブロン)」とは、「ブロンド美女」を指す言葉です。
Pretty Blondeですね。
また、曲によっては、ほとんどザディコと区別できない曲もあります。
フランス語だと思って聴いていたら、フレンチなまりの英語だったりして、楽しいです。
思わず、クリフトン・シェニエが聴きたくなりました。
ふたつめのパターンは、英語で歌うカントリーです。
アルバム・タイトルの"Shaine On"がそうですね。
こちらも、明るいミディアムもあれば、おセンチなバラードもあり飽きさせません。
"Shaine On"は、感傷的なバラードに仕上がっています。
リズムものは、カントリーの中でも古いスタイルのホンキートンクです。
フィドルとラップ・スチールが効果的に使われています。
ハンクの大有名曲では、ピアノが大活躍しています。
そして、三つ目のパターンが、ロックンロールです。
それもチャック・ベリー・スタイルのもので、「あれっ この人はこんな感じだったっけ?」と嬉しい戸惑いを覚えました。
スワンプ・ポップ・レジェンドで、ロックンロール(ロカビリーではない)をやる人って、すぐ思いつくのは、Rod Bernardです。
バラードの"This Soiuld Go On Forever"で知られる人ですが、実は、"Maybellene"や"Mamphis"をレパートリーにしていた人なのでした。
彼の英Aceから出た編集盤のタイトルは、"Swamp Rock 'n' Roller"でした。
Jonnie Allanは、Rod Bernardに全く負けていません。
トラック3の"Unfinished Business"、トラック9の"Homebound Train"が、完全にチャック・ベリー・スタイルの曲で、アルバムの中で、効果的な曲の並びもあって、とても印象づけられます。
リズム・ギターがDave Edmunds並みに力強い"Unfinished Businessで胸がときめき、まんま"Let It Rock"みたいな"Homebound Train"の魅力的なフックにわくわくします。
"Homebound Train"はブギですが、間奏の軽快なピアノの左手に切り込んでくるのが、アコーディオンのオブリなのが何ともケイジャンらしくて可笑しいです。
早いフレーズを弾いても、のどかさがにじみ出てしまってます。
"Homebound Train"は、Johnnieの自作となっていますから、彼がベリー・フリークなのは間違いないです。
アルバム・ラストの"Round Again"は、力強いコーラスの出だしから、さらに大きく盛り上がっていく曲で、手拍子がとても効果的に使われています。
分厚い男声のコーラスが見事で、Johnnieのリードが加わるところもスリリングです。
まるで、ゴスペル・クワイアみたいに聴こえます。
もしかすると、本当にゴスペル曲なのかも知れません。
本盤は、スワンプ・ポップとしてみれば、R&Bテイストが若干希薄ですが、そんなことを忘れさせる別の魅力に溢れている素晴らしいアルバムだと思います。
時にケイジャン・カントリーであり、時にケイジャン・ロックロールです。
Freddy Fenderが、スパニッシュ、イングリッシュのバイリンガルを代表する歌手なら、Johnnie Allanは、フレンチ、イングリッシュのバイリンガルを代表するシンガーだと思いました。
ともに、素晴らしい泣きのバラードもありつつ、根っこはパーティ・チューンであることが共通しています。
本盤は、Johnnie Allanの音楽生活60年を祝う記念作ですが、よくある豪華ゲストに頼ったベテラン・スターのお祭り的企画盤ではありません。
現役シンガーの力作だと強く感じました。
今年発売されたもので、彼にとって特別な意味合いを持つ1枚と位置付けられてるようです。
どういうことかと言いますと、裏ジャケにその解答があります。
そこには大きく「音楽生活60年」といった趣旨のことが書いてあるのでした。
Shine On
Johnnie Allan
Johnnie Allan
1. La Bague Qui Brille [The Ring That Shines] (John A. Guillot)
2. Shine On (John A. Guillot)
3. Unfinished Business (Nichoison, Chapman)
4. Ça, Ça C'est Dur [It's, It's So Hard] (John A. Guillot)
5. La Mule À Fuselier (John A. Guillot)
6. I'm So Afraid of Losing You Again (Owen, Frazer)
7. Greener Grass on the Other Side of the Mountain (John A. Guillot)
8. Monde des Cadiens (John A. Guillot)
9. Homebound Train (John A. Guillot)
10. La Robe [The Dress] (John A. Guillot)
11. You Win Again (H. Williams)
12. Where Are You Jolie Blonde? (Guillot, Comeaux)
13. Ma Belle sophie (C. Guilbeaux)
14. (Hey, Hey, Hey) I Feel Like dancin' (John A. Guillot)
15. Round Again (M. Hennssee)
Johnnie Allanの音楽人生は、1951年、13歳のときに始まります。
プロのミュージシャンの下で、バック・バンドの一員として活動を行い、最初はリズム・ギターを弾き、後にドラムスを経て、スチール・ギターも経験しました。
1958年、自作曲"Lonely Days, Lonely Nights"を吹き込み、フロント・デビューします。
このとき、所属していたバンドを自分のバック・バンド化したのではないかと思います。
1951年を起点として、2011年で音楽生活60年というわけです。
ほとんどの収録曲で作者とクレジットされている、John A. Guillotは、Johnnie Allanの本名です。
フルネームは、John Allen Guillotで、ミドル・ネームのつづりがAllenなのが気になります。
欧米の名前って、表記や発音が違うけれど、起源が同じってありますよね。
ピーター、ピョートル、ペテロとか、ポール、パウロ、パウルとか…。
おそらく、AllanとAllenは、それぞれ同じ名前を起源とするものなんでしょう。
ミドル・ネームがAllanの有名人では、私は、Edger Allan Poeを連想します。
ミステリーや怪奇小説の元祖といわれるアメリカの作家です。
音楽関係では、ファースト・ネームになりますが、アラン・トゥーサンを連想します。
日本では、アランとカナ表記されるのが慣例ですが、スペルは、Allen Toussaintです。
さて、いつもながら脱線しましたので、軌道修正します。
中身を聴いていきましょう。
確認出来たわけではありませんが、おそらく本盤は、新作に加えて、過去の自作のお気に入り曲(とりわけケイジャン曲)を新たに録音してまとめた、自薦集になっているのだと思います。
冒頭の1曲目から、フレンチで迫ってきます。
フィドル、アコーディオン、ラップ・スチールが魅力的なメロを奏でる曲で、ブン、チャンチャン ブン、チャンチャンという、ケイジャンお得意のリズムを使った曲です。
本盤収録曲を大別する三つのパターンのひとつです。
フランス語のタイトルを持つ曲が、概ねこの系統に入ります。
バラードもありますが、アコとフィドルがメインのパーティ・チューンが基本です。
このケイジャン・スタイルのものが、本盤のメインになっています。
とりわけ、トラック12の"Where Are You Jolie Blonde?"から始まって、とトラック13の"Ma Belle sophie"、トラック14の"(Hey, Hey, Hey) I Feel Like dancin'"と続く流れが最高です。
このかっこよすぎるダンス・チューンには、誰もがノックアウトされるでしょう。
ちなみに、ケイジャン・クラシックのタイトルにもある、「Joli Blon(ジョリ・ブロン)」とは、「ブロンド美女」を指す言葉です。
Pretty Blondeですね。
また、曲によっては、ほとんどザディコと区別できない曲もあります。
フランス語だと思って聴いていたら、フレンチなまりの英語だったりして、楽しいです。
思わず、クリフトン・シェニエが聴きたくなりました。
ふたつめのパターンは、英語で歌うカントリーです。
アルバム・タイトルの"Shaine On"がそうですね。
こちらも、明るいミディアムもあれば、おセンチなバラードもあり飽きさせません。
"Shaine On"は、感傷的なバラードに仕上がっています。
リズムものは、カントリーの中でも古いスタイルのホンキートンクです。
フィドルとラップ・スチールが効果的に使われています。
ハンクの大有名曲では、ピアノが大活躍しています。
そして、三つ目のパターンが、ロックンロールです。
それもチャック・ベリー・スタイルのもので、「あれっ この人はこんな感じだったっけ?」と嬉しい戸惑いを覚えました。
スワンプ・ポップ・レジェンドで、ロックンロール(ロカビリーではない)をやる人って、すぐ思いつくのは、Rod Bernardです。
バラードの"This Soiuld Go On Forever"で知られる人ですが、実は、"Maybellene"や"Mamphis"をレパートリーにしていた人なのでした。
彼の英Aceから出た編集盤のタイトルは、"Swamp Rock 'n' Roller"でした。
Jonnie Allanは、Rod Bernardに全く負けていません。
トラック3の"Unfinished Business"、トラック9の"Homebound Train"が、完全にチャック・ベリー・スタイルの曲で、アルバムの中で、効果的な曲の並びもあって、とても印象づけられます。
リズム・ギターがDave Edmunds並みに力強い"Unfinished Businessで胸がときめき、まんま"Let It Rock"みたいな"Homebound Train"の魅力的なフックにわくわくします。
"Homebound Train"はブギですが、間奏の軽快なピアノの左手に切り込んでくるのが、アコーディオンのオブリなのが何ともケイジャンらしくて可笑しいです。
早いフレーズを弾いても、のどかさがにじみ出てしまってます。
"Homebound Train"は、Johnnieの自作となっていますから、彼がベリー・フリークなのは間違いないです。
アルバム・ラストの"Round Again"は、力強いコーラスの出だしから、さらに大きく盛り上がっていく曲で、手拍子がとても効果的に使われています。
分厚い男声のコーラスが見事で、Johnnieのリードが加わるところもスリリングです。
まるで、ゴスペル・クワイアみたいに聴こえます。
もしかすると、本当にゴスペル曲なのかも知れません。
本盤は、スワンプ・ポップとしてみれば、R&Bテイストが若干希薄ですが、そんなことを忘れさせる別の魅力に溢れている素晴らしいアルバムだと思います。
時にケイジャン・カントリーであり、時にケイジャン・ロックロールです。
Freddy Fenderが、スパニッシュ、イングリッシュのバイリンガルを代表する歌手なら、Johnnie Allanは、フレンチ、イングリッシュのバイリンガルを代表するシンガーだと思いました。
ともに、素晴らしい泣きのバラードもありつつ、根っこはパーティ・チューンであることが共通しています。
本盤は、Johnnie Allanの音楽生活60年を祝う記念作ですが、よくある豪華ゲストに頼ったベテラン・スターのお祭り的企画盤ではありません。
現役シンガーの力作だと強く感じました。
Promised Land by Johnnie Allan (1983)
【ケイジャン、ザディコの最新記事】
投稿者:エル・テッチ|00:46|ケイジャン、ザディコ
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