2011年03月03日
グラッド・フォー・ヨ・セイク
何とも大きな勘違いをしていました。
私は、この人はロッキン・カントリー系の人かと思い込んでいたのでした。
ところが、聴いてびっくりです。
99年リリースの彼のこの1stは、スティーヴィー・レイ・ヴォーンを連想させる、ブルース・ロック・アルバムだったのでした。
1. Time To Burn (Jake Andrews, Fontain Brown)
2. Cry Baby (Mike Kindred)
3. The Hard Way (David Grisson, Jake Andrews, Chuck Propnet)
4. Just You And Me (Jake Andrews)
5. You've Got To Know (Jake Andrews)
6. I Don't Wanna Go Home (Jake Andrews)
7. It All Passed Me By (Jake Andrews)
8. Lover To Cry (Jake Andrews, Fontain Brown)
9. Nobody's Fault But Mine (Jake Andrews)
10. I'm Glad For Your Sake (But Sorry For Mine) (Tinturn, Lawrence)
11. Moment To Love (Jake Andrews)
12. Drivin' Wheel (Roosevelt Sykes)
13. Too Sorry (Doyle Bramhall)
かなりかっこいいブルース・ギターが聴けます。
この感想は、思いこみがひっくり返ったことからくるサプライズが、印象を大きくしている可能性はあります。
しかし、そういったことを割り引いても、かなりいけているというのが、私の偽らない気持ちです。
特に、レイ・ヴォーンが得意にしていた、シャッフル系のロッキン・ブルースがいかしています。
なかでも、マイク・キンドレル(誰? 有名ブルースマンの本名?)作のCry Babyと、ドイル・ブラムホールが書いた、Too Sorryが、私のお気に入りです。
こういった曲での、ヘヴィなリズム・リフを聴いているだけで、嬉しくなってきます。
間奏のソロも含め、最もレイ・ヴォーンを連想させるタイプの曲だと思います。
そして、それは成功しています。
また、The Hard Wayのような、アタックの強いフレーズで始まるブルース・ロックは、別の魅力を聴かせてくれます。
さらに、Just You And Me では、Tバーズを思わせるブルージーなロックンロールをやったり、I Don't Wanna Go Homeでは、ボ・ディドリー風のジャングル・ビートにもチャレンジしています。
かと思えば、It All Passed Me Byでは、スローをやらせても聴かせることを証明してくれます。
ここでは、効果的使われているオルガンをバックに、切々とボーカルを聴かせています。
予想以上に、懐の深いアーティストだと感じました。
簡単に、レイ・ヴォーンのフォロワーなどとは言いたくない人です。
さて、ジェイク・アンドルーズは、80年オースティン生まれということですから、まだ30歳を超えたばかりです。
しかし、どうも音楽キャリアは長いようで、5歳のときにギターを手にして以来、プロのギタリストだった父親にまとわりつき、音楽の現場の空気を吸って育ったようです。
彼の父は、ジョン・アンドルーズといい、トレイシー・ネルソンがソロ・デビューする前に在籍していたバンド、Mother Earthでギターを弾いていた人なのでした。
私は、手持ちのマザーアースのアルバム、Make A Joyful Noiseをチェックしたところ、そこには、John Cameron Andrews : Guitarsというクレジットを確かに見つけることができたのでした。
マザーアースは、リトル・ウイリー・ジョンから、ハンク・ウイリアムスのナンバーまでをレパートリーにしていた、60年代のルーツ・ロック・バンドです。
Make A Joyful Noiseでは、ダグ・サームのI Wanna Be Your Mama Againをやっていて、それが私をマザーアースに引き合わせるきっかけとなりました。
そして、くしくも、私がジェイク・アンドルーズに注目したのも、ダグ・サーム絡みなのでした。
10曲目のI'm Glad For Your Sake (But Sorry For Mine)は、ダグ・サームの作品ではありませんが、彼のレパートリーとして知られる曲で、この曲では、何とダグ・サームがゲスト参加して、ピアノを弾いているのでした。
99年リリースのアルバムですから、前年くらいに録音したのでしょうか。
ダグが参加した最晩年のセッションのひとつなのでしょう。
さて、I'm Glad For Your Sake (But Sorry For Mine)ですが、ダグのお気に入りの曲だと思われ、ライヴのMCでは、確かジョーイ・ロングの名前を出していたような気がします。
そのため、私は、つい最近まで、ジョーイ・ロングがオリジナルかと思っていました。
ジョーイ・ロングは、その音源を入手するのが困難な人で、私のわずかなコレクションの中では、ジョーイによるI'm Glad〜は聴くことが出来ません。
少し調べたのですが、どうも古いポピュラー・ソングが原曲のような気がします。
たとえば、ミュージカルの劇中歌が元になったジャズ・スタンダードのような…。
私のリサーチは、全くたいしたことがないので、このあたりは聞き流してください。
私は、いくつかの古いバージョンを手に入れ、聴き比べました。
ジャズのアンディ・カーク盤を手に入れました。
これは、ディキシーランド・スタイルのビッグ・バンドの伴奏で聴かせるもので、優しくジェントルな歌声がムーディなパフォーマンスです。
同じくジャズでは、ダイナ・ワシントン盤があり、残念ながら未入手ですが、試聴したところ、ダイナらしいブルース表現が素晴らしいバージョンでした。
これはよいです。
ただ、ダグのお手本とは思いずらいです。
カントリーでは、カウボーイ・コーパス盤があり、これも手に入れましたが、あっけからんとした、くせのないボーカルが、カントリー臭さを感じさせないバージョンになっています。
これもまた、ダグが憧れるとは思えません。
最も有名なのは、どうやらレイ・チャールズ盤のようです。
アトランティックの前に、スイングタイムに吹き込んだもので、このころは、よく言われるとおり、レイが、チャールズ・ブラウンやナット・コールの真似をしていた時代でした。
スロー・アレンジの静かなブルー・バラードです。
レイは確かにすごい人ですが、しかし、このころの音楽は、まだそれほどの影響力があったとは思えません。
実は、これかなと思ったバージョンを手に入れました。
ニューオリンズのR&Bシンガー、ジョー・ジョーンズ(You Talk Too Muchの人です)によるもので、アレンジは最もダグ盤に近いです。
ゆったりとしたホーンのビートにのせて、カントリー風味のボーカルを聴かせています。
これで決まりかと思いましたが、どうもジョーンズ盤はリイシュー盤では聴けますが、録音当時はお蔵入りしていた未発表曲のようです。
やはり、ジョーイ・ロング盤があるのでしょうか?
ジョーイがジョー・ジョーンズのセッションで弾いて気に入り、後に自分名義でも吹き込んだという想像はどうでしょう。
、そしてそれを聴いた少年ダグが感化され、後に自ら吹き込んだ、そんな風なことを夢想してしまうこのころなのでした。
この曲と、ジョーイ・ロングについては、引き続き、気長に追っかけて行くつもりです。
関連記事はこちら
Hey Baby !
伝説の人、ジョーイ・ロングの謎
私は、この人はロッキン・カントリー系の人かと思い込んでいたのでした。
ところが、聴いてびっくりです。
99年リリースの彼のこの1stは、スティーヴィー・レイ・ヴォーンを連想させる、ブルース・ロック・アルバムだったのでした。
Time To Burn
Jake Andrews
Jake Andrews
1. Time To Burn (Jake Andrews, Fontain Brown)
2. Cry Baby (Mike Kindred)
3. The Hard Way (David Grisson, Jake Andrews, Chuck Propnet)
4. Just You And Me (Jake Andrews)
5. You've Got To Know (Jake Andrews)
6. I Don't Wanna Go Home (Jake Andrews)
7. It All Passed Me By (Jake Andrews)
8. Lover To Cry (Jake Andrews, Fontain Brown)
9. Nobody's Fault But Mine (Jake Andrews)
10. I'm Glad For Your Sake (But Sorry For Mine) (Tinturn, Lawrence)
11. Moment To Love (Jake Andrews)
12. Drivin' Wheel (Roosevelt Sykes)
13. Too Sorry (Doyle Bramhall)
かなりかっこいいブルース・ギターが聴けます。
この感想は、思いこみがひっくり返ったことからくるサプライズが、印象を大きくしている可能性はあります。
しかし、そういったことを割り引いても、かなりいけているというのが、私の偽らない気持ちです。
特に、レイ・ヴォーンが得意にしていた、シャッフル系のロッキン・ブルースがいかしています。
なかでも、マイク・キンドレル(誰? 有名ブルースマンの本名?)作のCry Babyと、ドイル・ブラムホールが書いた、Too Sorryが、私のお気に入りです。
こういった曲での、ヘヴィなリズム・リフを聴いているだけで、嬉しくなってきます。
間奏のソロも含め、最もレイ・ヴォーンを連想させるタイプの曲だと思います。
そして、それは成功しています。
また、The Hard Wayのような、アタックの強いフレーズで始まるブルース・ロックは、別の魅力を聴かせてくれます。
さらに、Just You And Me では、Tバーズを思わせるブルージーなロックンロールをやったり、I Don't Wanna Go Homeでは、ボ・ディドリー風のジャングル・ビートにもチャレンジしています。
かと思えば、It All Passed Me Byでは、スローをやらせても聴かせることを証明してくれます。
ここでは、効果的使われているオルガンをバックに、切々とボーカルを聴かせています。
予想以上に、懐の深いアーティストだと感じました。
簡単に、レイ・ヴォーンのフォロワーなどとは言いたくない人です。
さて、ジェイク・アンドルーズは、80年オースティン生まれということですから、まだ30歳を超えたばかりです。
しかし、どうも音楽キャリアは長いようで、5歳のときにギターを手にして以来、プロのギタリストだった父親にまとわりつき、音楽の現場の空気を吸って育ったようです。
彼の父は、ジョン・アンドルーズといい、トレイシー・ネルソンがソロ・デビューする前に在籍していたバンド、Mother Earthでギターを弾いていた人なのでした。
私は、手持ちのマザーアースのアルバム、Make A Joyful Noiseをチェックしたところ、そこには、John Cameron Andrews : Guitarsというクレジットを確かに見つけることができたのでした。
マザーアースは、リトル・ウイリー・ジョンから、ハンク・ウイリアムスのナンバーまでをレパートリーにしていた、60年代のルーツ・ロック・バンドです。
Make A Joyful Noiseでは、ダグ・サームのI Wanna Be Your Mama Againをやっていて、それが私をマザーアースに引き合わせるきっかけとなりました。
そして、くしくも、私がジェイク・アンドルーズに注目したのも、ダグ・サーム絡みなのでした。
10曲目のI'm Glad For Your Sake (But Sorry For Mine)は、ダグ・サームの作品ではありませんが、彼のレパートリーとして知られる曲で、この曲では、何とダグ・サームがゲスト参加して、ピアノを弾いているのでした。
99年リリースのアルバムですから、前年くらいに録音したのでしょうか。
ダグが参加した最晩年のセッションのひとつなのでしょう。
さて、I'm Glad For Your Sake (But Sorry For Mine)ですが、ダグのお気に入りの曲だと思われ、ライヴのMCでは、確かジョーイ・ロングの名前を出していたような気がします。
そのため、私は、つい最近まで、ジョーイ・ロングがオリジナルかと思っていました。
ジョーイ・ロングは、その音源を入手するのが困難な人で、私のわずかなコレクションの中では、ジョーイによるI'm Glad〜は聴くことが出来ません。
少し調べたのですが、どうも古いポピュラー・ソングが原曲のような気がします。
たとえば、ミュージカルの劇中歌が元になったジャズ・スタンダードのような…。
私のリサーチは、全くたいしたことがないので、このあたりは聞き流してください。
私は、いくつかの古いバージョンを手に入れ、聴き比べました。
ジャズのアンディ・カーク盤を手に入れました。
これは、ディキシーランド・スタイルのビッグ・バンドの伴奏で聴かせるもので、優しくジェントルな歌声がムーディなパフォーマンスです。
同じくジャズでは、ダイナ・ワシントン盤があり、残念ながら未入手ですが、試聴したところ、ダイナらしいブルース表現が素晴らしいバージョンでした。
これはよいです。
ただ、ダグのお手本とは思いずらいです。
カントリーでは、カウボーイ・コーパス盤があり、これも手に入れましたが、あっけからんとした、くせのないボーカルが、カントリー臭さを感じさせないバージョンになっています。
これもまた、ダグが憧れるとは思えません。
最も有名なのは、どうやらレイ・チャールズ盤のようです。
アトランティックの前に、スイングタイムに吹き込んだもので、このころは、よく言われるとおり、レイが、チャールズ・ブラウンやナット・コールの真似をしていた時代でした。
スロー・アレンジの静かなブルー・バラードです。
レイは確かにすごい人ですが、しかし、このころの音楽は、まだそれほどの影響力があったとは思えません。
実は、これかなと思ったバージョンを手に入れました。
ニューオリンズのR&Bシンガー、ジョー・ジョーンズ(You Talk Too Muchの人です)によるもので、アレンジは最もダグ盤に近いです。
ゆったりとしたホーンのビートにのせて、カントリー風味のボーカルを聴かせています。
これで決まりかと思いましたが、どうもジョーンズ盤はリイシュー盤では聴けますが、録音当時はお蔵入りしていた未発表曲のようです。
やはり、ジョーイ・ロング盤があるのでしょうか?
ジョーイがジョー・ジョーンズのセッションで弾いて気に入り、後に自分名義でも吹き込んだという想像はどうでしょう。
、そしてそれを聴いた少年ダグが感化され、後に自ら吹き込んだ、そんな風なことを夢想してしまうこのころなのでした。
この曲と、ジョーイ・ロングについては、引き続き、気長に追っかけて行くつもりです。
Time To Burnです。
関連記事はこちら
Hey Baby !
伝説の人、ジョーイ・ロングの謎
【テキサス・ミュージックの最新記事】
投稿者:エル・テッチ|02:34|テキサス・ミュージック
この記事へのコメント