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マージーでフォーキー、そしてテキサス

 様々な顔を持つポップなチカーノ・バンド、The Krayolasの09年作、Long Leaf Pineを聴きます。
 このバンドは、Tex-Mex Beatlesと評されるバンドで、アルバムの中には、いろいろと美味しい音が詰まっています。

 
Long Leaf Pine
The Krayolas

1. Marie Laveau (Hector Saldana)
2. Corrido Twelve Heads in a Bag (Hector Saldana)
3. So Happy (Hector Saldana)
4. Chola Song (Hector Saldana)
5. A-Frame (Hector Saldana, David Saldana)
6. Long Leaf Pine (Hector Saldana) 
7. Eleventh Sunday in Ordinary Time (Hector Saldana)
8. Find a Girl (Hector Saldana, David Saldana, Doug McFeggan)
9. Hurtin' Me Baby (Hector Saldana)
10. Fish Out of Water (Hector Saldana)
11. It's Gonna Be Easy (Atwood Allen)
12. I Wanna Fall in Love Again (Augie Meyers) vox organ,piano
13. Never Been Kissed (Hector Saldana)
14. Matter of Time (Hector Saldana)
15. Every Little Heart (Hector Saldana) 

 まず、バンドのおさらいをしましょう。
 バンドの編成は、ギター2本、ベース、ドラムスからなるギター・バンドです。
 メンバーは次のとおりです。

 Hector Saldna、リズム・ギター、リード・ボーカル
 David Saldana、ドラムス、ハーモニー・ボーカル(曲によりリード・ボーカルも)
 Van Baines、リード・ギター、ペダル・スチール、ハーモニー・ボーカル
 Abraham Humphrey、ペース

 そして、ゲストとして、Los TexmaniacsのMax Bacaがバホ・セストで、また、Shawn SahmのThe Tex Mex Experienceに参加していたMichael Guerraがアコーディオンで参加しています。
(テックスメックス・エクスペリエンスは、あれ1枚きりで終わりでしょうか? 好きだったんですが…。)

 また、ピアノでLuvine Eliasという人が参加している他、West Side Hornsが参加しています。
 ウエスト・サイド・ホーンズは、フル・アルバムを出したときは、もっと大人数だったはずですが、最近のクレジットでは、サックスのLouie BustosとトランペットのAl Gomezが二人で名乗ることが多いようです。
 ウェイン・ジャクスンとアンドルー・ラヴのメンフィス・ホーンズを連想しますね。
 クレイオラスとルイ・バストスとの付き合いは長いようです。

 そして、御大オーギー・マイヤースがキーボードで参加しています。

 曲は、ほとんどリズム・ギターのエクトール・サラダーニャが書いています。
 そのメロディは、ポップで親しみやすく、聴きやすいです。

 今作では、冒頭のMarie Laveauから、サー・ダグラス・クインテットを思わせるサウンドで迫ってきて痺れます。
 美しいメロディを持つ、スケールの大きさを感じさせる曲です。
 国境の南を感じさせる、Michael Guerraのアコーディオンの響きと、美しく流れるようなピアノのタッチが雰囲気満点です。
 4曲目のChola Songもそんな感じの曲ですね。
 良いです。

 さらに、マージー・ビート風の曲も登場します。
 A-Frameは、ホーン付きのマージー・ビートという感じの曲で、R&B色も漂っています。
 マージー路線では、 Matter of Timeも聴き逃せません。
 Matter of Timeでは、ジャラーンというギターの鳴りの繰り返しをバックに、甘酸っぱいメロディが展開します。

 また、Every Little Hearでは、物憂げなメロディに、ノーザン・ソウル風のベース・ラインが魅力的な曲で、途中で静かにインしてくるメキシカン・トランペットが素晴らしいアクセントになっています。

 一方で、今作の特徴としてハードなブギもやっています。
 So Happyでは、ハードなギターのトーンに不意を突かれた思いで、驚きます。
 アルバム・タイトル曲のLong Leaf Pineでは、ジョン・リーみたいなワン・コード風ブギのリズムに、クリーデンスの1stを思わせるヘビーなギター・ソロが迫ります。
 そして、 Find a Girlは、完全に初期のZ.Z.Topスタイルのハード・ブギをかっこよく決めていて、バンドの新たな一面を見る思いがしました。
 
 また今作では、フォーク・ロック調の曲もやっています。
 Hurtin' Me Babyでは、12弦ギターの美しいアルペジオにのせて、ダビッドがディラン風のボーカルを聴かせてくれます。
 まるで、バリー・マクガイアのEve Of Destructionみたいに聴こえる曲です。
 Never Been Kissedは、オルガンのロング・トーンが印象的なフォーク・ロックに仕上がっています。

 もちろん、チカーノ・ルーツが色濃く出ている曲も当然あります。
 Corrido Twelve Heads in a Bagは、バホ・セストの響きが印象に残る、途中でスペイン語になる曲で、ダビッドがリード・ボーカルをとっています。
 また、Eleventh Sunday in Ordinary Timeは、普通のロックンロール風に始まりますが、次第にジョー・キング・カラスコのような展開になり、このバンドに根差しているルーツを感じさせます。

 カバー曲にも注目です。
 It's Gonna Be Easyは、ダグ・サームとも親交が深い、アトウッド・アレンの作品で、この曲のダグ・バージョンは、ダグの名盤、Doug Sahm and Bandで聴くことができます。

 そして、I Wanna Fall in Love Againは、オーギー・マイヤースが書いた曲で、サー・ダグラス・クインテットで披露したあと、ソロ・アルバムでも吹き込んだオーギーのお気に入りの曲です。
 ここでも、オーギーが弾くヴォックス・オルガンが堪らない魅力を振りまいています。
 もっともっと聴きたいです。 

 とてもバラエティに富んだ内容になっていて、豊かな音楽性を感じる完成度の高いアルバムだと感じました。

 全体を通して印象的なのは、リード・ボーカルに絡んでくる、バックの二人のクローズド・ハーモニーです。
 テックス・メックス・ビートルズの通り名は、伊達ではないのでした。


Marie Laveauです。




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