2010年12月30日
ようこそ、イヴァンジェリン・カフェへ
うーむ、どういえばいいんでしょう。
決してうまいバンドではありませんが、好意を持たずにはいられません。
このバンドを取り上げるのは3度目ですが、毎回楽しませてくれます。
今回は、ライヴ・アルバムなので、バンドの嗜好性というか、好きものぶりがもろに出ていて、もうたまりません。
全国のテキサス、ルイジアナ音楽好きの皆さん、今回もイナタイです。
1. Too Good to Be True
2. Ain't No Big Thing
3. Don't You Know
4. I Won't Cry
5. Just a Matter of Time
6. Ramona
7. Sick and Tired
8. All I Could Do Was Cry
9. Grady's Rhumba
10. Lights Out
11. You Can Make It If You Try
12. No Time for You
13. I'm Gonna Leave
14. Oo Wee Baby
15. Write Me a Letter
16. Tequila
17. Route 90
18. Don't Leave Me Baby
このアルバムは、多分09年にリリースされたもので、オースティンのイヴァンジェリン・カフェというライヴ・ハウス(?)での公演を収録したものです。
録音時期は明記されていません。
バンドのおさらいをしましょう。
ロンリー・ナイツは、ボーカルとベースのラリー・レインジを中心とする、チカーノ・スタイルの曲を得意とするバンドで、ギター、ピアノ(又はオルガン)、ドラムスのリズム隊に、テナー2本とバリトン1本のサックス、それにトランペット(又はトロンボーン)1本を加えた8人編成のバンドです。
さらに、今作ではゲストとして、ルディ・ゴンザレス、ディマス・ガルサ、ホアンナ・ラミレスという3人のボーカリストが参加しています。
このうち、ディマス・ガルサは、ラストのDon't Leave Me Babyでリード・ボーカルを取っていますが、この曲は、彼の自作で、原曲はDimas Garza & The Royal Jesters名義でリリースされています。
イントロだけ聴くと、サザン・ソウルかと思わせる哀愁の三連バラードです。
彼は、Tex-Mex、Chicano Soulのパイオニアと紹介されていますが、08年11月に心臓発作で天に召されました。68歳でした。
あるいは、この録音が最後のセッションだったのかも知れません。
さて、今作も同好の志にとっては、たまらない雰囲気の曲が続きます。
わかる範囲で簡単に紹介します。
まず、Ain't No Big Thingですが、原曲はシカゴのRadiantsで、チェスに録音していたボーカル・グループです。
デルズのように、ドゥワップからソウル・コーラスへと移り変わる時代を乗り切ったグループでした。
この曲は、ノーザン・ソウル・スタイルの曲ですが、チカーノ系のグループに人気がある曲のようで、Little Jr.Jessie & The Teardropsのほか、複数のグループのカバーがあるようです。
ロンリー・ナイツは、原曲よりも、こういったチカーノ・グループ盤で知ったのかも知れません。
Don't You Knowは、ジョニー・エイスのレパートリーで、普及しているCDで容易に原曲を聴くことができます。
エイスには、有名曲が複数あるなか、わざわざこの曲をチョイスしているのが興味深いです。
私も、エイスの同曲を聴き返すきっかけになりました。
ここでは、ドラムスのマイケル・クリスチャンがリード・ボーカルをとっています。
I Won't Cryは、いうまでもなく、ジョニー・アダムスの名曲ですが、ダグ・サーム盤は、ジョニー盤を凌駕する名演だと思います。
特にラストの「アイ・ウォン・クラーイ」のフェイクがたまりません。
Just a Matter of Timeは、有名なブルック・ベントン盤とは同名異曲で、ドン・ロビーの作曲パートナーだった、Fats Washingtonが書いた曲です。
こちらは、アップ・テンポの曲で、オリジネイターは不明です。
あるいは、作者本人かも知れません。
ここでは、女性ボーカリストのホアンナ・ラミレスがリードを歌っています。
Sick and Tiredは、ニューオリンズR&Bの有名曲で、多くの人がやっていますが、原曲はクリス・ケナーで、作者は本人とデイヴ・バーソロミューです。
ケナー盤は未聴ですが、多分原曲よりテンポを上げてやっていると思います。
ユーモラスかつ軽快なロックンロール調になっています。
All I Could Do Was Cryは、エタ・ジェイムズの初期の代表曲のひとつで、原曲はチェス録音です。
映画「キャデラック・レコード」では、エタ・ジェイムズ役のビヨンセ(!)がこの曲を歌うシーンが、大きなモチーフとなっていました。
ここでは、ルディ・ゴンザレスが、長いモノローグに続いて、思い入れたっぷりに歌っています。
Lights Outは、ドクター・ジョンのナンバーで、リトル・リチャード系のロックンロールです。
ギターのグラディ・ピンカートンがリード・ボーカルを担当しています。
1曲前のGrady's Rhumbaは、収録曲で唯一のオリジナル曲で、グラディの作のインスト・ダンス・ナンバーです。
You Can Make It If You Tryは、多くの人にとって、ストーンズ盤が最初の出会いだと思います。
私もそうでした。
原曲は、ヴィージェイのジーン・アリスン盤です。
成せばなる、成さねばならぬ何事も、という意味ですね。
ここでは、再びドラムスのマイケルがリードを取っています。
No Time for Youは、私は未聴ですが、サンアントニオのグループ、Commandsが原曲のようです。
このあたりは、原曲探しの虫がうずきます。
I'm Gonna Leaveは、知らない曲ですが、作者がRobert Williamsとなっており、これは、90年代にデビューしたロカビリー〜スイング・バンドのリーダー、Big Sandyの本名だと思います。
Big Sandy & his Flyrite Trio (Boys)のどれかのアルバムに入っていると思います。
Tequilaは、いうまでもなく大有名インストです。
ここでは、合いの手だけでなく、サックス・ブロウのところに、スペイン語の歌詞がかなりフィーチャーされています。
Route 90は、作者の一人にClarence Garlowの名前があるため、原曲はガーロウ盤かも知れません。
ガーロウなら、ザディコの可能性が高いですが、曲はSweet Little Sixteenの改作のような感じで、歌詞は、おそらくルート90号線の沿道の街の名前を盛り込んだものだと思います。
Sweet Little Sixteenと、Back In USAを合体させたような曲ですね。
何曲か原曲が不明の曲がありました。
作者は次のとおりです。
Too Good to Be True/Ray Pennigton作(カントリー系?)
Ramona/DeLeon作
Oo Wee Baby/unknown (ドゥワップのHarptonesに同名曲がありますが、違うようです。ロッキンR&Bです。)
Write Me a Letter/unknown (私好みの三連バラードで、これは特に原曲を知りたいです。)
とにかく、ホーンの鳴りが気持ちよくて、楽しませてくれるバンドです。
Tex-Mexルーツを感じさせるバンド(コンフント系)はいくつもありますが、チカーノ・ソウルのルーツに根差した白人のバンドは貴重だと思います。
原曲がソウルやR&Bであっても、少年時代に聴いたチカーノ・グループのカバーが、大きな原体験になっている人たちではないかと思います。
私は今、サンアントニオや、イーストLAの60sチカーノ・グループを、もっと聴きたいと思っています。
関連記事はこちら
ハイウェイ90サウンドに酔いしれて
チカーノ魂の片りんを見ました
イーストLAの郷愁
決してうまいバンドではありませんが、好意を持たずにはいられません。
このバンドを取り上げるのは3度目ですが、毎回楽しませてくれます。
今回は、ライヴ・アルバムなので、バンドの嗜好性というか、好きものぶりがもろに出ていて、もうたまりません。
全国のテキサス、ルイジアナ音楽好きの皆さん、今回もイナタイです。
Live At Evangeline Cafe
Larry Lange And His Lonely Knights
Larry Lange And His Lonely Knights
1. Too Good to Be True
2. Ain't No Big Thing
3. Don't You Know
4. I Won't Cry
5. Just a Matter of Time
6. Ramona
7. Sick and Tired
8. All I Could Do Was Cry
9. Grady's Rhumba
10. Lights Out
11. You Can Make It If You Try
12. No Time for You
13. I'm Gonna Leave
14. Oo Wee Baby
15. Write Me a Letter
16. Tequila
17. Route 90
18. Don't Leave Me Baby
このアルバムは、多分09年にリリースされたもので、オースティンのイヴァンジェリン・カフェというライヴ・ハウス(?)での公演を収録したものです。
録音時期は明記されていません。
バンドのおさらいをしましょう。
ロンリー・ナイツは、ボーカルとベースのラリー・レインジを中心とする、チカーノ・スタイルの曲を得意とするバンドで、ギター、ピアノ(又はオルガン)、ドラムスのリズム隊に、テナー2本とバリトン1本のサックス、それにトランペット(又はトロンボーン)1本を加えた8人編成のバンドです。
さらに、今作ではゲストとして、ルディ・ゴンザレス、ディマス・ガルサ、ホアンナ・ラミレスという3人のボーカリストが参加しています。
このうち、ディマス・ガルサは、ラストのDon't Leave Me Babyでリード・ボーカルを取っていますが、この曲は、彼の自作で、原曲はDimas Garza & The Royal Jesters名義でリリースされています。
イントロだけ聴くと、サザン・ソウルかと思わせる哀愁の三連バラードです。
彼は、Tex-Mex、Chicano Soulのパイオニアと紹介されていますが、08年11月に心臓発作で天に召されました。68歳でした。
あるいは、この録音が最後のセッションだったのかも知れません。
さて、今作も同好の志にとっては、たまらない雰囲気の曲が続きます。
わかる範囲で簡単に紹介します。
まず、Ain't No Big Thingですが、原曲はシカゴのRadiantsで、チェスに録音していたボーカル・グループです。
デルズのように、ドゥワップからソウル・コーラスへと移り変わる時代を乗り切ったグループでした。
この曲は、ノーザン・ソウル・スタイルの曲ですが、チカーノ系のグループに人気がある曲のようで、Little Jr.Jessie & The Teardropsのほか、複数のグループのカバーがあるようです。
ロンリー・ナイツは、原曲よりも、こういったチカーノ・グループ盤で知ったのかも知れません。
Don't You Knowは、ジョニー・エイスのレパートリーで、普及しているCDで容易に原曲を聴くことができます。
エイスには、有名曲が複数あるなか、わざわざこの曲をチョイスしているのが興味深いです。
私も、エイスの同曲を聴き返すきっかけになりました。
ここでは、ドラムスのマイケル・クリスチャンがリード・ボーカルをとっています。
I Won't Cryは、いうまでもなく、ジョニー・アダムスの名曲ですが、ダグ・サーム盤は、ジョニー盤を凌駕する名演だと思います。
特にラストの「アイ・ウォン・クラーイ」のフェイクがたまりません。
Just a Matter of Timeは、有名なブルック・ベントン盤とは同名異曲で、ドン・ロビーの作曲パートナーだった、Fats Washingtonが書いた曲です。
こちらは、アップ・テンポの曲で、オリジネイターは不明です。
あるいは、作者本人かも知れません。
ここでは、女性ボーカリストのホアンナ・ラミレスがリードを歌っています。
Sick and Tiredは、ニューオリンズR&Bの有名曲で、多くの人がやっていますが、原曲はクリス・ケナーで、作者は本人とデイヴ・バーソロミューです。
ケナー盤は未聴ですが、多分原曲よりテンポを上げてやっていると思います。
ユーモラスかつ軽快なロックンロール調になっています。
All I Could Do Was Cryは、エタ・ジェイムズの初期の代表曲のひとつで、原曲はチェス録音です。
映画「キャデラック・レコード」では、エタ・ジェイムズ役のビヨンセ(!)がこの曲を歌うシーンが、大きなモチーフとなっていました。
ここでは、ルディ・ゴンザレスが、長いモノローグに続いて、思い入れたっぷりに歌っています。
Lights Outは、ドクター・ジョンのナンバーで、リトル・リチャード系のロックンロールです。
ギターのグラディ・ピンカートンがリード・ボーカルを担当しています。
1曲前のGrady's Rhumbaは、収録曲で唯一のオリジナル曲で、グラディの作のインスト・ダンス・ナンバーです。
You Can Make It If You Tryは、多くの人にとって、ストーンズ盤が最初の出会いだと思います。
私もそうでした。
原曲は、ヴィージェイのジーン・アリスン盤です。
成せばなる、成さねばならぬ何事も、という意味ですね。
ここでは、再びドラムスのマイケルがリードを取っています。
No Time for Youは、私は未聴ですが、サンアントニオのグループ、Commandsが原曲のようです。
このあたりは、原曲探しの虫がうずきます。
I'm Gonna Leaveは、知らない曲ですが、作者がRobert Williamsとなっており、これは、90年代にデビューしたロカビリー〜スイング・バンドのリーダー、Big Sandyの本名だと思います。
Big Sandy & his Flyrite Trio (Boys)のどれかのアルバムに入っていると思います。
Tequilaは、いうまでもなく大有名インストです。
ここでは、合いの手だけでなく、サックス・ブロウのところに、スペイン語の歌詞がかなりフィーチャーされています。
Route 90は、作者の一人にClarence Garlowの名前があるため、原曲はガーロウ盤かも知れません。
ガーロウなら、ザディコの可能性が高いですが、曲はSweet Little Sixteenの改作のような感じで、歌詞は、おそらくルート90号線の沿道の街の名前を盛り込んだものだと思います。
Sweet Little Sixteenと、Back In USAを合体させたような曲ですね。
何曲か原曲が不明の曲がありました。
作者は次のとおりです。
Too Good to Be True/Ray Pennigton作(カントリー系?)
Ramona/DeLeon作
Oo Wee Baby/unknown (ドゥワップのHarptonesに同名曲がありますが、違うようです。ロッキンR&Bです。)
Write Me a Letter/unknown (私好みの三連バラードで、これは特に原曲を知りたいです。)
とにかく、ホーンの鳴りが気持ちよくて、楽しませてくれるバンドです。
Tex-Mexルーツを感じさせるバンド(コンフント系)はいくつもありますが、チカーノ・ソウルのルーツに根差した白人のバンドは貴重だと思います。
原曲がソウルやR&Bであっても、少年時代に聴いたチカーノ・グループのカバーが、大きな原体験になっている人たちではないかと思います。
私は今、サンアントニオや、イーストLAの60sチカーノ・グループを、もっと聴きたいと思っています。
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