2010年12月10日
ハイウェイ90サウンドに酔いしれて
久しぶりに楽しい新録アルバムの登場です。
このバンドについては、以前過去作を取り上げたことがありましたが、これは今年リリースされた最新作です。
アルバム・タイトルのネーミングも、アットホームなジャケット写真も雰囲気満点で、期待で胸が膨らみます。
1. Makes No Difference / Arturo Vasquez
2. My Life / Joe"Jama" Perales
3. Laughing To Keep From Crying / Davies, Mertinez
4. Chicano Brother / Martinez, Apolinar
5. Voy Sufriendo Por La Vida / Lopez
6. Don't Play With Love / Unknown
7. Juanita / Pinkerton
8. I Don't Care / Lopez
9. Leaving You / Panaqua
10. Lost My Love In The Big City / Lummie Fowler
11. Tell Me Darling / Martinez, Apolinar
12. Magic Of Love / fender, Vill
13. Poquita Fe / Jose Luis Rodriquez
14. Whatsa' Matter Con You / Martinez
15. Never Gonna Give You Up / Gamble, Huff, Butler
16. Cuatro Vidas / Justo Carreras
17. La Cucaracha Twist / Martinez
リーダーのLarry Langeは、彼らの音楽を、Highway 90 Soundと呼んでいます。
これが、一般的な名称なのか、彼が自らのバンド・サウンドを単に自称しているのか、私は知りませんが、なかなか魅力的なネーミングです。
ハイウェイのルート90号線は、東端のフロリダ州ジャクソンヴィルから、西端のテキサス州バーンホーンまで、フロリダ、アラバマ、ミシシッピの海岸線と、ルイジアナ、テキサスの中央を東西に横断する、5つの州をまたがる国道です。
05年には、カトリーナ台風により、ミシシッピとルイジアナの多くのハイウェイの橋が破損し、セントルイスやニューオリンズに大きな傷跡を残しました。
ニューオリンズの復興を唱えたチャリティCDの発売は記憶に新しいです。
ここで、バンドについて、おさらいをしましょう。
リーダーのラリー・レインジは、ベースとボーカルの担当です。
そして、ピアノ、オルガンのJackson Paine、ギター、ホーカルのGrady Pinkerton、ドラムスのMichael Christian、サックスのSteve ManningとJesse Botello、トランペットのMichael Prillamanからなる7人編成です。
アコーディオンなしのバンドですね。
加えて、フィーチャリング・ボーカリストとして、Joanna Ramirezという女性シンガーが参加しています。
さて、今回のアルバムでは、ラリー・レインジがライナーを書いており、収録各曲について、それぞれ短いコメントを綴っています。
それによれば、明確なコンセプトはないようですが、ライナーから読み取れる二つの重要なキー・ワードがあります。
それは、Oscar MartinezとIsidro Lopezという音楽家の名前です。
私は、Tex-Mexが好きですが、残念ながら、その歴史にはうといです。
文脈から読み取る限り、この二人は、オルケスタと呼ばれるチカーノ系のビッグ・バンドの大物シンガー、バンド・リーダーで、特にオスカー(ル)・マルチネスは、リーダー、コンポーザーとして、そしてイシドロ・ロペスは、シンガーとして重要な存在のようです。
今回の収録曲は、始めて聴く曲がほとんどでした。
以下、ラリーのライナーをもとに、簡単にまとめたいと思います。
まずMakes No Differenceですが、50年代のスペイン人歌手のアルツロ・バルケスが原曲だそうですが、本盤の演奏では、オスカー・マルチネスのバージョンをモデルにしたということです。
テキサスのコスミック・カウボーイこと、フロイド・ティルマンに同名のホンキー・トンク・ヒットがありますが、別の曲のようです。
こちらは、ホーンの鳴りが気持ちいい、三連のゆったりしたナンバーです。
メキシコというより、ニューオリンズR&Bか、スワンプ・ポップのようなアレンジになっています。
トラック2のMy Lifeは、ゲストのジョアンナ・ラミレスの、輝くようなボーカルをメインにした、素晴らしく躍動感あふれるナンバーです。
原曲は、Joe"Jama" Peralesという人らしく、ラリーは、サン・アントニオ・クラシックと評しています。
あくまで黒人音楽ファンのフィルターで聴きますと、弾けるようなノーザン・ソウル風のナンバーに聴こえます。
トラック3のLaughing To Keep From Cryingは、60年代のDoc&Salのサン・アントン・ソングをラリーが編曲したとのことですが、私は全く知らない人たちです。
トラック4のChicano Brotherは、いかにもという感じのホーンを生かした、チカーノ・インスト曲で、原曲はHank Of Funkというバンド(?)のようです。
トラック5のVoy Sufriendo Por La Vidaは、イシドロ・ロペスの古典をカバーしたものらしく、スペイン語で歌われるラテン・ナンバーです。
トラック6のDon't Play With Loveは、ジョアンナとラリーのデュエットが聴ける曲で、原曲はイーストLAのデュオ、Phill And Delだとのことです。
トラック7のJuanitaは、メンバーでギタリストのグラディ・ビンカートンが書いた50s風ロックンロールで、開放弦を使ったトワンギーなギターのイントロから始まるエネルギッシュな曲です。
私は、ドン&デューイを連想してしまいました。
トラック8のI Don't Careは、同名の有名カントリー曲がありますが、これはイシドロ・ロペスの曲だそうです。
曲調は、フレディ・フェンダーが歌うようなミディアム・バラードになっています。
トラック9のLeaving Youは、再びジョアンナとのデュエットで、スペイン語を交えて歌われる曲で、原曲は、SteveとRudyのSalas Brothersです。
Salas Brothersは、以前取り上げたLP、The History Of Latino Rock Vol.1-1956-1965 The Eastside Soud, East L.A.'s Greatest Hits、Artistsで、別の曲を聴いたことが有ります。
トラック10のLost My Love In The Big Cityは、ジョアンナのリードに男声が分厚いコーラスをつける、ドゥワップのカバーで、原曲はElginsというグループです。
トラック11のTell Me Darlingは、60年代のチカーノ・グループ、Spider and The Playboysが原曲で、ラリーはこの曲にもサン・アントン・クラシックと賛辞を贈っています。
Spider and The Playboysは、別の曲ですが、Chicano Soul : San Antonio Westside soundというコンピレーションCDで1曲聴いたことが有ります。
トラック12のMagic Of Loveは、フレディ・フェンダーのカバー曲で、作者も本人です。
ラリーによれば、フレディのレアなお宝曲だとのことです。
日本盤が出たIdeal音源をコンパイルしたアーフリー盤CD、Canciones De Mi Barrioで、スペイン語バージョン(Magia De Amor)を聴くことができます。
トラック13のPoquita Feは、メキシコのトリオ歌手、Los Tress Reyesのバラードを、ジョアンナが歌いあげています。
トラック14のWhatsa' Matter Con Youは、09年夏に、オスカー・マルチネスからラリーに贈られたのだそうですが、ラリーにぴったりのユルユルのチカーノ・ソウルに仕上がっています。
トラック15のNever Gonna Give You Upは、ギャンブル、ハフによるジェリー・バトラーの曲で、ジョアンナのリード・ボーカルに、男声コーラスが効果的に使われているフィリー・ソウル・カバーです。
トラック16のCuatro Vidasは、マリアッチと伝統的なトリオ曲をオルケスタ・スタイルでやったとのことですが、書いている私にも意味が分かっていません。
ラストのLa Cucaracha Twistは、オスカー・マルチネスの曲ですが、ツイストというよりポルカと言う感じの曲で、印象的なホーン・リフに、ときどき「クカラチャー」と合いの手が入るインスト・ナンバーです。
ゴキブリ・ツイストということでしょうか?
このアルバムは、チカーノの偉大な先達の古典に敬意に表した仕事であるとともに、小さなホール向きのローカル・ヒットにも眼を行き届かせた、素晴らしい内容に仕上がっていると思います。
このバンドのことを、私はかつてC級と評してしまいましたが、多分長いキャリアを持つ職人集団でありながら、いつまでもアマチュアイズムを失わない、愛すべきバンドだと思います。
私は、これを契機に、オスカー・マルチネスやイシドロ・ロペスのオリジナルなど、Tex-Mexの古典を聴きたいな、と思い始めています。
関連記事はこちら
チカーノ魂の片りんをみました
イーストLAの郷愁
このバンドについては、以前過去作を取り上げたことがありましたが、これは今年リリースされた最新作です。
アルバム・タイトルのネーミングも、アットホームなジャケット写真も雰囲気満点で、期待で胸が膨らみます。
San Antonio Serenade
Larry Lange And His Lonely Knights
featuring Joanna Ramirez
Larry Lange And His Lonely Knights
featuring Joanna Ramirez
1. Makes No Difference / Arturo Vasquez
2. My Life / Joe"Jama" Perales
3. Laughing To Keep From Crying / Davies, Mertinez
4. Chicano Brother / Martinez, Apolinar
5. Voy Sufriendo Por La Vida / Lopez
6. Don't Play With Love / Unknown
7. Juanita / Pinkerton
8. I Don't Care / Lopez
9. Leaving You / Panaqua
10. Lost My Love In The Big City / Lummie Fowler
11. Tell Me Darling / Martinez, Apolinar
12. Magic Of Love / fender, Vill
13. Poquita Fe / Jose Luis Rodriquez
14. Whatsa' Matter Con You / Martinez
15. Never Gonna Give You Up / Gamble, Huff, Butler
16. Cuatro Vidas / Justo Carreras
17. La Cucaracha Twist / Martinez
リーダーのLarry Langeは、彼らの音楽を、Highway 90 Soundと呼んでいます。
これが、一般的な名称なのか、彼が自らのバンド・サウンドを単に自称しているのか、私は知りませんが、なかなか魅力的なネーミングです。
ハイウェイのルート90号線は、東端のフロリダ州ジャクソンヴィルから、西端のテキサス州バーンホーンまで、フロリダ、アラバマ、ミシシッピの海岸線と、ルイジアナ、テキサスの中央を東西に横断する、5つの州をまたがる国道です。
05年には、カトリーナ台風により、ミシシッピとルイジアナの多くのハイウェイの橋が破損し、セントルイスやニューオリンズに大きな傷跡を残しました。
ニューオリンズの復興を唱えたチャリティCDの発売は記憶に新しいです。
ここで、バンドについて、おさらいをしましょう。
リーダーのラリー・レインジは、ベースとボーカルの担当です。
そして、ピアノ、オルガンのJackson Paine、ギター、ホーカルのGrady Pinkerton、ドラムスのMichael Christian、サックスのSteve ManningとJesse Botello、トランペットのMichael Prillamanからなる7人編成です。
アコーディオンなしのバンドですね。
加えて、フィーチャリング・ボーカリストとして、Joanna Ramirezという女性シンガーが参加しています。
さて、今回のアルバムでは、ラリー・レインジがライナーを書いており、収録各曲について、それぞれ短いコメントを綴っています。
それによれば、明確なコンセプトはないようですが、ライナーから読み取れる二つの重要なキー・ワードがあります。
それは、Oscar MartinezとIsidro Lopezという音楽家の名前です。
私は、Tex-Mexが好きですが、残念ながら、その歴史にはうといです。
文脈から読み取る限り、この二人は、オルケスタと呼ばれるチカーノ系のビッグ・バンドの大物シンガー、バンド・リーダーで、特にオスカー(ル)・マルチネスは、リーダー、コンポーザーとして、そしてイシドロ・ロペスは、シンガーとして重要な存在のようです。
今回の収録曲は、始めて聴く曲がほとんどでした。
以下、ラリーのライナーをもとに、簡単にまとめたいと思います。
まずMakes No Differenceですが、50年代のスペイン人歌手のアルツロ・バルケスが原曲だそうですが、本盤の演奏では、オスカー・マルチネスのバージョンをモデルにしたということです。
テキサスのコスミック・カウボーイこと、フロイド・ティルマンに同名のホンキー・トンク・ヒットがありますが、別の曲のようです。
こちらは、ホーンの鳴りが気持ちいい、三連のゆったりしたナンバーです。
メキシコというより、ニューオリンズR&Bか、スワンプ・ポップのようなアレンジになっています。
トラック2のMy Lifeは、ゲストのジョアンナ・ラミレスの、輝くようなボーカルをメインにした、素晴らしく躍動感あふれるナンバーです。
原曲は、Joe"Jama" Peralesという人らしく、ラリーは、サン・アントニオ・クラシックと評しています。
あくまで黒人音楽ファンのフィルターで聴きますと、弾けるようなノーザン・ソウル風のナンバーに聴こえます。
トラック3のLaughing To Keep From Cryingは、60年代のDoc&Salのサン・アントン・ソングをラリーが編曲したとのことですが、私は全く知らない人たちです。
トラック4のChicano Brotherは、いかにもという感じのホーンを生かした、チカーノ・インスト曲で、原曲はHank Of Funkというバンド(?)のようです。
トラック5のVoy Sufriendo Por La Vidaは、イシドロ・ロペスの古典をカバーしたものらしく、スペイン語で歌われるラテン・ナンバーです。
トラック6のDon't Play With Loveは、ジョアンナとラリーのデュエットが聴ける曲で、原曲はイーストLAのデュオ、Phill And Delだとのことです。
トラック7のJuanitaは、メンバーでギタリストのグラディ・ビンカートンが書いた50s風ロックンロールで、開放弦を使ったトワンギーなギターのイントロから始まるエネルギッシュな曲です。
私は、ドン&デューイを連想してしまいました。
トラック8のI Don't Careは、同名の有名カントリー曲がありますが、これはイシドロ・ロペスの曲だそうです。
曲調は、フレディ・フェンダーが歌うようなミディアム・バラードになっています。
トラック9のLeaving Youは、再びジョアンナとのデュエットで、スペイン語を交えて歌われる曲で、原曲は、SteveとRudyのSalas Brothersです。
Salas Brothersは、以前取り上げたLP、The History Of Latino Rock Vol.1-1956-1965 The Eastside Soud, East L.A.'s Greatest Hits、Artistsで、別の曲を聴いたことが有ります。
トラック10のLost My Love In The Big Cityは、ジョアンナのリードに男声が分厚いコーラスをつける、ドゥワップのカバーで、原曲はElginsというグループです。
トラック11のTell Me Darlingは、60年代のチカーノ・グループ、Spider and The Playboysが原曲で、ラリーはこの曲にもサン・アントン・クラシックと賛辞を贈っています。
Spider and The Playboysは、別の曲ですが、Chicano Soul : San Antonio Westside soundというコンピレーションCDで1曲聴いたことが有ります。
トラック12のMagic Of Loveは、フレディ・フェンダーのカバー曲で、作者も本人です。
ラリーによれば、フレディのレアなお宝曲だとのことです。
日本盤が出たIdeal音源をコンパイルしたアーフリー盤CD、Canciones De Mi Barrioで、スペイン語バージョン(Magia De Amor)を聴くことができます。
トラック13のPoquita Feは、メキシコのトリオ歌手、Los Tress Reyesのバラードを、ジョアンナが歌いあげています。
トラック14のWhatsa' Matter Con Youは、09年夏に、オスカー・マルチネスからラリーに贈られたのだそうですが、ラリーにぴったりのユルユルのチカーノ・ソウルに仕上がっています。
トラック15のNever Gonna Give You Upは、ギャンブル、ハフによるジェリー・バトラーの曲で、ジョアンナのリード・ボーカルに、男声コーラスが効果的に使われているフィリー・ソウル・カバーです。
トラック16のCuatro Vidasは、マリアッチと伝統的なトリオ曲をオルケスタ・スタイルでやったとのことですが、書いている私にも意味が分かっていません。
ラストのLa Cucaracha Twistは、オスカー・マルチネスの曲ですが、ツイストというよりポルカと言う感じの曲で、印象的なホーン・リフに、ときどき「クカラチャー」と合いの手が入るインスト・ナンバーです。
ゴキブリ・ツイストということでしょうか?
このアルバムは、チカーノの偉大な先達の古典に敬意に表した仕事であるとともに、小さなホール向きのローカル・ヒットにも眼を行き届かせた、素晴らしい内容に仕上がっていると思います。
このバンドのことを、私はかつてC級と評してしまいましたが、多分長いキャリアを持つ職人集団でありながら、いつまでもアマチュアイズムを失わない、愛すべきバンドだと思います。
私は、これを契機に、オスカー・マルチネスやイシドロ・ロペスのオリジナルなど、Tex-Mexの古典を聴きたいな、と思い始めています。
マイ・ライフを演奏する映像がありました。
関連記事はこちら
チカーノ魂の片りんをみました
イーストLAの郷愁
【テキサス・ミュージックの最新記事】
投稿者:エル・テッチ|02:38|テキサス・ミュージック
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