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エル・ビーバップ・キッドの逆襲

 今回は、またまた英Krazy Katのヴィニール盤です。
 86年にリリースされたもので、レイ・トッピング先生がコンパイルしています。
 中身は、我らがチカーノ・ヒーロー、Freddy Fenderです。


The Early Years 1959-1963
Freddy Frender

Side One
1. I'm Gonna Leave
2. Wasted Days & Wasted Nights
3. Mean Woman
4. Crazy Baby
5. Wild Side Of Life
6. You're Something Else For Me
7. Going Out With The Tide
8. San Antonio Rock

Side Two
1. Louisiana Blues
2. Since I Met You Baby
3. Little Mama
4. You Told Me You Loved Me
5. I Can't Remember When I Didn't Love You
6. Only One
7. Find Somebody New
8. Roobie Doobie


 この時代の音源というのは、CD化されていましたっけ?

 この人は37年生まれですから、22歳から26歳までの時期に当たります。
 
 まず思うのは、早くもかなり完成されているなあということ、そして、70年代にNO.1カントリー・ヒットを連発した最盛期のレパートリーが、すでにいくつも顔をのぞかせているという事に対する驚きです。

 Wasted Days & Wasted NightsSince I Met You BabyWild Side Of Lifeの3曲は、ABC時代に新たに録音され、シングル・カットされた曲です。

 このうち、自作のWasted Days & Wasted Nightsは、彼が持つ4曲のNo.1ヒットのうちのひとつで、ここでのバージョンがプロトタイプと言うことになります。

 また、ヒットこそしていなくても、Crazy BabyGoing Out With The TideOnly Oneなどは、その後何度も吹き込むことになる、定番中の定番曲です。
 Only Oneは、Holy Oneという表記でも録音されている名曲バラードです。

 まあ、フレディ・フェンダーといえば、泣きのバラードですね。
 そして、英語とスペイン語による、必殺のバイリンガル・パターンがこの人の売りです。
 芸人でいえば、営業ネタですね。

 ジョニー・ロドリゲスなどもそうですが、1番の歌詞を英語で歌い、2番をスペイン語、そして間奏を挟んで再び英語に戻るなんていうのは、おきまりのパターンとはいえ、好きな人には、もうたまりません。

 日本人は、基本的には、おしなべて保守的で協調性を重視する傾向があると思います。
 「和を持って尊しとなす」の精神は、我々民族のDNAの中に、深く静かに根付いているのではないでしょうか?

 日本人は、様式美を好みます。
 ハード・ロックの黎明期に、いち早く熱狂的に受け入れたのは、精神的な土壌があったのだと思います。

 多くの人が、水戸黄門を支持し続けるのはなぜでしょう。
 関西でいえば、吉本新喜劇の変わらない人気の秘密はなんなのでしょう。

 これらは、先の展開が読めたりします。
 物語が急展開して、はらはらさせられても、受けて側は知っているのです。
 そろそろ、いつものおきまりの場面がくることを。
 しかも、今か今かと、それを待っているのです。

 そして、分かっていながらも、いつもの展開が繰り広げられると、喝采せずにはいられないのでした。
 受けての予想を裏切りながら、決して期待を裏切らないというのが、最も美しい展開だと思います。
 これこそ、まさに黄金の定番様式だと言いたいです。

 ヒスパニックのシンガーのライヴDVDなどを観ていて、英語の歌詞から、スペイン語の歌詞にさりげなく切り替わったときに、観客が一瞬の沈黙をおいて、「わあっ」と盛り上がるのは、ソフトを観たり聴いたりしている側にとっても、思わず一体化して心を動かされる瞬間です。 
 
 ヒスパニックの共同体意識の発露と言ってしまえば、それこそ味気ないですので、単純に多くの人々の感動を疑似共有して、心を熱くしましょう。

 さて、このアルバムの収録曲は、いずれも魅力的なものばかりです。

 Wild Side Of Lifeは、カーター・ファミリーのI'm Thinking Tonight of My Blue Eyesのメロディを借りた曲です。
 いえ、あるいは、どちらもルーツを同じくする、古い伝承曲が元歌かも知れません。
 A.P.カーターも、レッドベリーも、民衆から採集した曲を自分なりに組み立てて、自作として発表していました。  

 ラジオ時代、レコード時代の始まる前から歌は存在し、口伝え、耳伝いに伝承されていったのだと思います。
 
 20年代、カーター・ファミリーとジミー・ロジャースが、最初のラジオ・スターとなった偉人たちです。
 彼らが譜面に残し、優れたパフォーマンスをレコードに記録しなければ、散逸した曲は確実にあったと思います。
  
 You're Something Else For Meは、ジミー・リードの改作のような曲ですが、もしかしたら、私が知らないだけで、完全にリードの曲かも知れません。

 このアルバムには、作者名のクレジットが一切ないので、何とも言えませんが、この曲では、Ain't That Something Baby、Yeah, You're Something Else For Meという歌詞が繰り返し歌われているように聴こえます。

 Going Out With The Tideも好きな曲です。
 フレディが、この曲をトミー・マクレインとデュエットしていたバージョンは、どのアルバムに入っていたのでしょう?
 急に聴きたくなってきました。

 San Antonio Rockは、なんとも想像力を掻き立てる魅力的な題名ですが、何のことはない、イントロが始まると「ああっ」と得心する曲です。
 これは、ボブ・ウィルズの代表曲、San Antonio Roseのロックンロール・インスト盤なのでした。

 全曲にわたって、ちまちまと思いつきに過ぎないコメントを綴るのも煩雑なだけですので、このへんにしておきたいと思います。

 全体を通して、改めて聴いてみて、やはりその魅力、歌手としての力に感服しました。
 フレディ・フェンダーは、偉大な歌手だったと思います。

 私がフレディから連想するシンガーがいます。
 それは、ロイ・オービスンです。
 二人とも、泣きのバラードを得意としている点が共通しています。

 そして、キャリアの初期がロックンロールが爆発した時期であり、最盛期にはあまりやらなかったようなロックンロールを、初期にはかなり吹き込んでいることも同じです。
 また、実はリードが弾けるギタリストでもありました。

 これは、大人たちに混じって、タフな10代を過ごしたに違いない、ひとつの証しだと思います。
 歌うだけでなく、様々なことが求められる時代だったのでしょう。
 彼らのギター・テクは、必要に迫られて形作られたものだったのだと思います。 

 このアルバムには、ロイがやってもおかしくない曲が入っています。
 Mean Womanは、実際にやっていたような気も…。

 ところで、後回しにしてきましたが、A面1曲目に、I'm Gonna Leaveという曲が入っています。
 作者不明ですが、この曲こそ、昨日の記事で言及した曲と同じものなのでした。

 ラリー・レインジと彼のロンリー・ナイツがライヴ盤でやっていた曲であり、なぜかそのアルバムで、ビッグ・サンディ(ロバート・ウイリアムズ)作と誤記されていた曲なのです。

 これがフレディの自作なのか、黒人グループのカバーなのか、はたまたチカーノ・グループのカバーなのか、興味は尽きませんが、今日私が、腰を冷やしながらも、レコード棚を探索した成果が、この小さなトリビアなのでした。

 引き続き、偶然というサイコロが、思いを寄せる目を出してくれるまで、気長に待ち続けたいと思います。




I'm Gonna Leaveです。





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