2011年01月25日
グッド・オールド・ヒルビリー
少し前のことです。
私は、テキサスのごった煮音楽バンド、Larry Range & and his Lonely Knightsのライヴ盤をとりあげました。
そこに収録されている、I'm Gonna Leaveという曲の作者名が、Robert Williamsとクレジットされていたため、原曲は、Big Sandyのどれかのアルバムに入っているはず、と書きました。
ロバート・ウイリアムズは、ビッグ・サンディの本名です。
今回のアルバムは、くだんの曲を含む、Big Sandyの97年リリースの3rdアルバムです。
1. The Loser's Blues
2. Feelin' Kinda Lucky
3. Let's Make It …Tonite!
4. If I Knew Now (What I Knew Then)
5. What's It To Ya?
6. Have You Ever Had The Feelin' : Webb Pierce & Bob Wills
7. The Greatest Story Ever Told
8. Stranger Love
9. I'm Gonna Leave
10. Bug Tussle Saturday Night : L.Jeffries
11. Three Years Blind
12. Have & Hold
13. Big '49
14. Back Door Dan
以前から気になっていたバンドですが、機会を逸して、今まで入手していませんでした。
今回、ロンリー・ナイツがカバーした曲の原曲を聴くということを、このバンドに触れるための動機づけにしてみました。
なんにでも、ちょっとしたきっかけが必要なのです。
私が、このバンドに対して持っていたイメージは、スモール・コンボのネオ・ロカビリーからスタートして、ビッグ・バンド・スタイルのスイング・バンドになったグループだろうというものでした。
言ってみれば、ブライアン・セッツァーみたいな感じです。
それも、ブライアンよりも、ロカビリーに未練を残したサウンド、そんな風に思いこんでいたのです。
事実、ある程度は当たっていたようです。
しかし、ロカビリー時代から、音楽の方向性に修正を加えた彼らは、かなりの変貌を遂げたようです。
このアルバムからくみ取れるのは、決して私が事前に考えていたような音楽ではなかったのでした。
このアルバムは、全14曲入りですが、12曲までが、全てロバート・ウイリアムズこと、ビッグ・サンディの作品で占められています。
残る2曲のうち、1曲は、メンバーのスチール・ギタリスト、リー・ジェフリーズが書いた曲です。
そして、唯一1曲のみカバーがあって、 Have You Ever Had The Feelin'という曲が、ウェブ・ピアースとボブ・ウィルズのペンになる曲です。
私は、ボブ・ウィルズ・ファンですが、この曲はあまり記憶にありません。
ウィルズが他人に曲を書くというのは、あまり例がないと思うので、きっと彼の録音があるんでしょうが、ちょっとものぐさが出て、ディスクには当たらず、ネット検索のみで済ませたところ、ウェブ・ピアースに関してはヒットしました。
よって、ピアース盤はあるようです。
ウィルズ盤については、もう少し眠気が襲ってきていないときに再度調べたいと思います。
さて、そのサウンドですが、ビッグ・バンド・スイングではありません。
もちろん、ジャンプ・ブルースでもありせん。
カントリー系ではありますが、ウエスタン・スイングでさえないと言い切ってしまいましょう。
私の基準では、これはウエスタン・スイングとは言い難いです。
カテゴリーは、記号にすぎませんが、イメージを喚起するのに重宝します。
あえていうなら、これは、ヒルビリー・ブギとかの部類だと思います。
まず、楽器編成が決定的に不足しています。
ギター2本に、ベース、フィドル、スチール・ギター、そしてドラムスという編成です。
(アシュレイ・ハーソンという人のクレジットが、Take-Off Guitarという謎の表記になっています。)
ドラムスこそ入っていますが、スチール・ギターが縦横無尽に活躍する、ロッキン・リズムであっても、本質は古いスタイルのヒルビリーだと思います。
エレキ・ギターが目立つ曲でも、さほどモダンな感じはしません。
アップ・テンポの曲であっても、どこかほんわかムードが漂う演奏です。
ロカビリーのような、リヴァーブ一杯にエコーがかかったサウンドは一切でてきません。
ボブ・ウィルズは、自身の音楽を決してウエスタン・スイングとは呼ばず、カントリー・ジャズと呼んでいたそうです。
ボブの功績は、酒場やダンス・ホールの喧騒に対抗するため、いち早くドラムスとエレキ・ギターを導入し、さらに、ボーン陣を加えてジャズのビッグ・バンド編成を取り入れたことでした。
音楽の名称をどう呼ぼうが、その人の自由だとは思いますが、ボブのスタイルの基本は、フィドル・バンドに、エレキ・ギターの単音弾きと、サックスを中心としたホーンのリフを加えることだったと思います。
そして、その音楽はあくまでダンス・チューンでした。
このアルバムのサウンドは、ダンス・チューンではありますが、ホーンが入っていず、ハワイアンぽいスチール・ギターばかり目立っています。
ジャズっぽいのは、むしろギターで、ロカビリー要素が少なく、クリアでお上品なトーンを聴かせています。
まあ、曲によっては、ウエスタン・スイング調のものもないとは言い切れませんが、私的には物足りないサウンドなのでした。
とはいえ、ヒルビリー・ブギも好きな私としては、これはこれで良いと思います。
しかし、ロッキン・ビートを期待される人にはいささか退屈かもしれません。
そういう方には、あと10歳ほど年齢を重ねていただき、私のようにひよっていただくほかありません。
モダンさが感じられない理由としては、ピアノが入っていないということが大きいでしょう。
恐らく、鍵盤が入っていれば、随分と印象が違ったと思います。
ブギの演奏の基本は、やはり、はねるピアノです。
何度か聴いているうちに、このサウンドに慣れてきたようですが、パンク以降のロック・ファンには、かなり厳しい音だという思いは強いです。
ところで、ラリー・レインジ & ロンリー・ナイツがカバーした、I'm Gonna Leaveですが、どうやらクレジットの誤りのようです。
これは全く別の曲です。
なぜ、そういうことが起こったのか謎ですが、ロンリー・ナイツ盤は、ホーン・リフとピアノのアンサンブルが印象的な、ミディアム・アップのR&Bです。
対して、ビッグ・サンディ盤は、スチール・ギター中心のほのぼの系カントリー・ブギです。
ロンリー・ナイツ盤の正体が混沌としてきましたが、やはり順当なところでは、ニューオリンズR&Bのカバーか、レアなチカーノR&Bが原曲なのだろうと思います。
少しはものぐさを抑えて、レコード棚あさりをして、原曲探索をしようかなと思いだしています。
なお、このアルバムは、デイヴ・アルヴィンに特別な謝辞が贈られているほか、ファロン・ヤングとリチャード・ベリーの想い出に捧げられています。
ファロン・ヤングは、ナッシュビル・カントリーのスターですが、ソング・ライター時代のドン・ギブソンの曲や、同様に、ウイリー・ネルソンの曲をヒットさせたりして、彼らが世に出る契機のひとつとなった人だと思います。
一方、リチャード・ベリーは、Louie Louieのオリジネイターとして有名な人ですが、エタ・ジェイムズとRoll With Me Henryをデュエットした人でもありました。
そして、忘れてならないのが、コースターズの前身、ロビンズで、あのRiot in Cellblock Number Nineのリードを歌っていたことです。
ファロンはともかく、ベリーは、このアルバムのサウンドとは、関連性がうすいように思いますが、何かリスペクトするところがあったのでしょう。
ファロン・ヤングは、96年に65歳で、リチャード・ベリーは、97年に61歳で天に召されています。
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ようこそ、イヴァンジェリン・カフェへ
私は、テキサスのごった煮音楽バンド、Larry Range & and his Lonely Knightsのライヴ盤をとりあげました。
そこに収録されている、I'm Gonna Leaveという曲の作者名が、Robert Williamsとクレジットされていたため、原曲は、Big Sandyのどれかのアルバムに入っているはず、と書きました。
ロバート・ウイリアムズは、ビッグ・サンディの本名です。
今回のアルバムは、くだんの曲を含む、Big Sandyの97年リリースの3rdアルバムです。
Feelin' Kinda Lucky
Big Sandy and his Fly Rite Boys
Big Sandy and his Fly Rite Boys
1. The Loser's Blues
2. Feelin' Kinda Lucky
3. Let's Make It …Tonite!
4. If I Knew Now (What I Knew Then)
5. What's It To Ya?
6. Have You Ever Had The Feelin' : Webb Pierce & Bob Wills
7. The Greatest Story Ever Told
8. Stranger Love
9. I'm Gonna Leave
10. Bug Tussle Saturday Night : L.Jeffries
11. Three Years Blind
12. Have & Hold
13. Big '49
14. Back Door Dan
以前から気になっていたバンドですが、機会を逸して、今まで入手していませんでした。
今回、ロンリー・ナイツがカバーした曲の原曲を聴くということを、このバンドに触れるための動機づけにしてみました。
なんにでも、ちょっとしたきっかけが必要なのです。
私が、このバンドに対して持っていたイメージは、スモール・コンボのネオ・ロカビリーからスタートして、ビッグ・バンド・スタイルのスイング・バンドになったグループだろうというものでした。
言ってみれば、ブライアン・セッツァーみたいな感じです。
それも、ブライアンよりも、ロカビリーに未練を残したサウンド、そんな風に思いこんでいたのです。
事実、ある程度は当たっていたようです。
しかし、ロカビリー時代から、音楽の方向性に修正を加えた彼らは、かなりの変貌を遂げたようです。
このアルバムからくみ取れるのは、決して私が事前に考えていたような音楽ではなかったのでした。
このアルバムは、全14曲入りですが、12曲までが、全てロバート・ウイリアムズこと、ビッグ・サンディの作品で占められています。
残る2曲のうち、1曲は、メンバーのスチール・ギタリスト、リー・ジェフリーズが書いた曲です。
そして、唯一1曲のみカバーがあって、 Have You Ever Had The Feelin'という曲が、ウェブ・ピアースとボブ・ウィルズのペンになる曲です。
私は、ボブ・ウィルズ・ファンですが、この曲はあまり記憶にありません。
ウィルズが他人に曲を書くというのは、あまり例がないと思うので、きっと彼の録音があるんでしょうが、ちょっとものぐさが出て、ディスクには当たらず、ネット検索のみで済ませたところ、ウェブ・ピアースに関してはヒットしました。
よって、ピアース盤はあるようです。
ウィルズ盤については、もう少し眠気が襲ってきていないときに再度調べたいと思います。
さて、そのサウンドですが、ビッグ・バンド・スイングではありません。
もちろん、ジャンプ・ブルースでもありせん。
カントリー系ではありますが、ウエスタン・スイングでさえないと言い切ってしまいましょう。
私の基準では、これはウエスタン・スイングとは言い難いです。
カテゴリーは、記号にすぎませんが、イメージを喚起するのに重宝します。
あえていうなら、これは、ヒルビリー・ブギとかの部類だと思います。
まず、楽器編成が決定的に不足しています。
ギター2本に、ベース、フィドル、スチール・ギター、そしてドラムスという編成です。
(アシュレイ・ハーソンという人のクレジットが、Take-Off Guitarという謎の表記になっています。)
ドラムスこそ入っていますが、スチール・ギターが縦横無尽に活躍する、ロッキン・リズムであっても、本質は古いスタイルのヒルビリーだと思います。
エレキ・ギターが目立つ曲でも、さほどモダンな感じはしません。
アップ・テンポの曲であっても、どこかほんわかムードが漂う演奏です。
ロカビリーのような、リヴァーブ一杯にエコーがかかったサウンドは一切でてきません。
ボブ・ウィルズは、自身の音楽を決してウエスタン・スイングとは呼ばず、カントリー・ジャズと呼んでいたそうです。
ボブの功績は、酒場やダンス・ホールの喧騒に対抗するため、いち早くドラムスとエレキ・ギターを導入し、さらに、ボーン陣を加えてジャズのビッグ・バンド編成を取り入れたことでした。
音楽の名称をどう呼ぼうが、その人の自由だとは思いますが、ボブのスタイルの基本は、フィドル・バンドに、エレキ・ギターの単音弾きと、サックスを中心としたホーンのリフを加えることだったと思います。
そして、その音楽はあくまでダンス・チューンでした。
このアルバムのサウンドは、ダンス・チューンではありますが、ホーンが入っていず、ハワイアンぽいスチール・ギターばかり目立っています。
ジャズっぽいのは、むしろギターで、ロカビリー要素が少なく、クリアでお上品なトーンを聴かせています。
まあ、曲によっては、ウエスタン・スイング調のものもないとは言い切れませんが、私的には物足りないサウンドなのでした。
とはいえ、ヒルビリー・ブギも好きな私としては、これはこれで良いと思います。
しかし、ロッキン・ビートを期待される人にはいささか退屈かもしれません。
そういう方には、あと10歳ほど年齢を重ねていただき、私のようにひよっていただくほかありません。
モダンさが感じられない理由としては、ピアノが入っていないということが大きいでしょう。
恐らく、鍵盤が入っていれば、随分と印象が違ったと思います。
ブギの演奏の基本は、やはり、はねるピアノです。
何度か聴いているうちに、このサウンドに慣れてきたようですが、パンク以降のロック・ファンには、かなり厳しい音だという思いは強いです。
ところで、ラリー・レインジ & ロンリー・ナイツがカバーした、I'm Gonna Leaveですが、どうやらクレジットの誤りのようです。
これは全く別の曲です。
なぜ、そういうことが起こったのか謎ですが、ロンリー・ナイツ盤は、ホーン・リフとピアノのアンサンブルが印象的な、ミディアム・アップのR&Bです。
対して、ビッグ・サンディ盤は、スチール・ギター中心のほのぼの系カントリー・ブギです。
ロンリー・ナイツ盤の正体が混沌としてきましたが、やはり順当なところでは、ニューオリンズR&Bのカバーか、レアなチカーノR&Bが原曲なのだろうと思います。
少しはものぐさを抑えて、レコード棚あさりをして、原曲探索をしようかなと思いだしています。
なお、このアルバムは、デイヴ・アルヴィンに特別な謝辞が贈られているほか、ファロン・ヤングとリチャード・ベリーの想い出に捧げられています。
ファロン・ヤングは、ナッシュビル・カントリーのスターですが、ソング・ライター時代のドン・ギブソンの曲や、同様に、ウイリー・ネルソンの曲をヒットさせたりして、彼らが世に出る契機のひとつとなった人だと思います。
一方、リチャード・ベリーは、Louie Louieのオリジネイターとして有名な人ですが、エタ・ジェイムズとRoll With Me Henryをデュエットした人でもありました。
そして、忘れてならないのが、コースターズの前身、ロビンズで、あのRiot in Cellblock Number Nineのリードを歌っていたことです。
ファロンはともかく、ベリーは、このアルバムのサウンドとは、関連性がうすいように思いますが、何かリスペクトするところがあったのでしょう。
ファロン・ヤングは、96年に65歳で、リチャード・ベリーは、97年に61歳で天に召されています。
トリオ編成の、ロカビリー時代の彼らによるDon't Be Cruelです。
このころなら、ロック・ファンも聴けますね。
このころなら、ロック・ファンも聴けますね。
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投稿者:エル・テッチ|02:04|カントリー、ブルーグラス
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