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ハワイアン・カウボーイ

 今回は、ハワイのカントリー・シンガーをご紹介します。
 ハワイはアメリカの州とはいえ、ちょっと不思議な感じです。
 「マウイのハワイアン・カウボーイ」を自称するこの人、さてどんなテイストなんでしょうか?
 実は、ファースト・コンタクトです。


My 9th Island Paniolo Ranch
Danny Estocado

1. Hook In My Heart (Kevin Wicker)
2. Volcanic Heart (William Nauman)
3. Ring of Fire (June Carter, Merle Kilgore)
4. Long Black Train (Josh Turner)
5. Keeper of the Key (Harlan Howard)
6. Po'o Wai U Makawao Rodeo (Danny Estocado)
7. Heart That You Own (Dwight Yoakam)
8. Wasted Days and Wasted Nights (Huey P. Meaux)
9. My 9th Island Paniolo Ranch (Danny Estocado)
10. It's Only Make Believe (Conway Twity, Jack Nance)
11. Hello Love (Betty Jean Robinson, Aileen Mnich)
12. Daddy's Home (William Henry Miller, James Sheppard)
13. Jesus Hold My Hand (Albert E. Brumley)
14. Pele Pu'uwai (William Nauman)
15. Sweet Spot (Mark May)
16. Pride and Joy (Stevie Ray Vaughan)

 プロフや最近の活動などの詳細は不明ですが、彼のサイトの情報によれば、オアフ島生まれで、94年CDデビュー、これまでに6枚のCDをリリースしています。
 主な活動の拠点は、ラスベガスらしき内容が記載されていました。

 そして、定期的にハワイへ戻って活動しているほか、毎年日本で公演を行っているとの記述がありました。
 実は、日本のカントリー・ファンの間では周知の人なんでしょうか?

 熊本や京都のカントリー・フェスに出ている人なのかな?
 どうも思い切り無知をさらけ出している気がしてきました。 

 本盤は05年のリリースですが、アマゾンのエントリーでは最近作です。
 既にかなり前という感じですが、くだんのサイトの記述ともあっています。

 とにかく、聴いてみましょう。
 
 ……。

 通して聴いて最初に頭に浮かんだのは、「ハワイのフレディ・フェンダー」というワードでした。
 本盤の録音はナッシュビルで、なーんだと拍子抜けする思いですが、70年代のFreddy Fenderの作品を思わせる、輪郭のくっきりしたポップなサウンドが、とても聴きやすいです。

 本盤では、"Wasted Days and Wasted Nights"をやっていますが、Freddy Fenderを連想したのは、それだけが理由ではありません。
 ミディアム、スローのバラードでの泣き節が、Freddy Fenderを思い起こさせるのでした。

 本盤では、さほど顕著には出てはいませんが、そこはかとなく漂うハワイアン・テイスト、ポリネシアン・フレイバーが色々と想像力をかきたててくれます。

 直接的には、"Po'o Wai U Makawao Rodeo"や"Pele Pu'uwai"のような曲ですね。
 とりわけ、"Pele Pu'uwai"です。
 ハワイ語(?)の不思議な懐かしい響き、いかにもな「らしい」音階、旋律を使ったメロに癒されます。
 こういった曲を、もっとバイリンガルでやれば、さらにFreddyっぽく感じることでしょう。

 ハワイ風味探しに気持ちがとられていましたが、何気に、ビッグ・カントリーをやっていて興味深い内容になっています。 

 ジョニー・キャッシュの名作から、ホンキートンク・マイスター、ハーラン・ハワードの作品、ドワイト・ヨーカムのしっとり系バラードまで、バラエティに富んだ選曲です。
 コンウェイの初期の名作ロッカ・バラード、"It's Only Make Believe"には意表を突かれました。

 まあ、意表を突くといえば、ラストのスティーヴィー・レイ・ヴォーン作品、"Pride and Joy"に勝るものはないですね。
 ここでは、ぶっとい迫力のシャッフル・ブルースに果敢に挑戦して、"Sweet Spot"と並んで、ブルージーなDannyが聴けます。

 そんな中、私のお奨めは、オリジナルでは、アルバム・タイトル曲の"My 9th Island Paniolo Ranch"、カバーでは、"Daddy's Home"です。

 "My 9th Island Paniolo Ranch"でいう、9番目の島とはなんでしょう。
 ハワイ州は、8つの島と100以上の小島で構成されています。
 この自作の軽快でポップなナンバーは、「ぼくがほんの子どもだったころ…」という歌詞で始まります。
 ハワイ生まれの気概みたいなことを歌っているのではないでしょうか。
 バックで適時入ってくる「掛け声」「囃子言葉」が雰囲気を盛っています。

 "Daddy's Home"は、ドワイト・ヨーカムのバラードとともに注目のバラードです。
 この曲こそ、最もFreddy Fenderを思わせる歌唱だと思います。
 泣き節が見事に決まったサービス・エース級の1曲でしょう。

 "Daddy's Home"の原曲は、Shep & LimeLitesが61年にリリースした、遅れてきたドゥ・ワップの名作でした。
 時は既にアーリー・ソウルが芽吹き始めていたころです。

 この曲の歌詞の最期は、"〜A Thousand Miles Away"と結ばれています。
 この"A Thousand Miles Away"のフレーズこそ、リーダーで作者のJame Sheppardが、以前に組んでいたグループ、The Heartbeats時代にヒットさせた、もうひとつのワン・ヒット・ワンダー曲のタイトルなのでした。

 Danny Estocadoは、なかなかに面白いアーティストだと思います。
 過去作では、もっとハワイ・ルーツに根差したアルバムもあるようなので、聴いてみたいです。

 ところで、思いつきを書かせてください。
 アメリカのもうひとつの飛び地、アラスカ州には、カントリー・シンガーはいるんでしょうか?
 もちろん、ここでイメージしているのは、エスキモーやカナダのイヌイットのような先住民族出身のシンガーです。
 どうでしょう?

 



Po'o Wai U Makawao Rodeo by Danny Estocado







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