2011年03月06日
イーストL.A.発、キャリ・メックス
このところ、例の事件がらみで、Yahoo知恵袋が話題になっていますね。
ネットをよく活用している方なら周知のサイトです。
現在、フェイスブックが大きな注目を集めていますが、Yahoo知恵袋も掲示板タイプの原初型ソーシャル・サイトだと思います。
もうひとつ、メジャーな口コミ・サイトでは、教えてgooというのがありまして、調べ物なら、私はこちらの方をお勧めします。
私は、質問したこともあるのですが、その場合は、両方のサイトに同じ質問をアップしていました。
最近の例では、次のような質問をしています。
「チカーノ音楽のアルバムには、よくスカル(どくろ)のイラストが使われているようですが、理由をご存知の方は、ご教示下さい」
これは、残念ながら無回答でした。
1か月くらい前のことです。
1. Everything Will Turn Out Alright (Jesus Cuevas)
2. The Vibe (Jesus Cuevas)
3. I Never Thought (Jesus Cuevas)
4. Los Chucos Suaves (Lalo Guerrero)
5. She Wakes Up Cryin' (Jesus Cuevas, David Ramos)
6. Una Pura Y Dos Con Sal (Enrique Sanchez Alonso)
7. What's In My Heart (Jesus Cuevas)
8. The Coffee Song (James Barrios)
9. Un Puno De Tierra (Carlos Coral)
10. My Brother's Keeper (David Ramos)
11. Keep A Knockin' (Richard W. Penniman)
12. Calmen Su Rollo (Jesus Cuevas)
ロス・ファビュロコスの待望の2ndアルバムがリリースされました。
ジャケットをご覧ください。
見事に、どくろジャケです。
さて、1stも素晴らしかったですが、本作でも完成度の高い、かっこいい演奏を聴かせてくれます。
本作では、メキシカン・ルーツへの傾斜が顕著になっていますが、これを正統進化と呼んで喜ぶかどうかは、聴きての好み次第だと思います。
ライナーの筆者、ジョン・コンクエストは、彼らの音楽を、ロカビリー、ロックンロール、リズム&ブルース、コンフント、ザディコ、ノルテーニョをミックスした、キャリ・メックス(Cali-Mex〜California-Mexican Music)と呼んでいます。
メンバーの核は、ボタン・アコーディオン奏者で、オリジナル曲の大半を書いているヘスス・クエバスと、ギターのデヴィッド・キッド・ラモスです。
ヘスス・クエバスのアコーディオンは、前作では、ほのぼの感を醸し出している印象が強かったですが、本作では、それに増して哀愁味を特に感じさせるプレイをしています。
これは、もともとメロディのせいなのか、それとも、アコのプレイが、メロディにそういった味付けしているのか考えるところです。
オリジナル曲は、陽気なロックンロールがほとんどですが、どこか哀愁漂う旋律だと感じる印象が強いです。
一方、ギターのキッド・ラモスは、バホ・セスト他の楽器もプレイする、ユーティリティ・プレイヤーで、ライナーによれば、ジェイムズ・ハーマン、ハリウッド・ファッツ(ハリウッド・ブルー・フレイムス)、ファビュラス・サンダーバーズ、マニッシュ・ボーイズなどでギターを弾いていたというようなことが書かれています。
全てが正式参加だったのか不明ですが、私の知る範囲では、一時期、Tバーズの正式メンバーだったのは間違いありません。
前作に比べると、パホ・セストの印象が薄まっているように思います。
また同様に、前作で鮮烈な印象を与えた、トレモロを多用した、スパニッシュ・ギターの演奏が本作にはなく、エレキ・ギターがメインのサウンドとなっているように感じます。
ギターに関しては、私は前作の方が好みです。
さて、収録曲ですが、まず冒頭のEverything Will Turn Out Alrightでは、私はロス・ロボスの「狼はいかに生き残るのか?」を連想しました。
かっこいいロックンロールでありながら、どこか寂しげな、あの哀愁を感じさせるメロディを思い出していただきたいです。
これは、他のオリジナル曲でも共通した印象を受けました。
本作には、複数のゲストが参加していますが、その多くは、Delta Groove Musicのレーベル・メイトたちのようです。
中でも特記されているのは、同じイーストL.A.のラテン・ルーツ・バンド、Blazersのマヌエル・ゴンサレスで、2曲目のThe Vibeでラブボード(?)を演奏しています。
ブレイザースは、ロス・ロボスのセサール・ロサスや、ドワイト・ヨーカムのプロデューサー、ピート・アンダーソンとも親交が深いバンドです。
ライナーでは、この曲をザディコっぽいと評していますが、まあそう聴けなくもないです。
ラブボードというのは、ウォッシュ・ボードと同じようなものでしょうか?
アップ・テンポの曲で、曲調より、楽器編成からくる印象で評しているような気もします。
3曲目のI Never Thoughtは、本作唯一のスロー・ナンバーで、スワンプ・ポップを連想させる、哀愁の三連バラードに仕上がっています。
サックスをフィーチャーしたサウンドで、本作収録曲では、比較的ストレートにリズム&ブルースを感じさせる作品となっています。
私のお気に入り曲でもあります。
5曲目のShe Wakes Up Cryin'も、7曲目のWhat's In My Heartも、一見陽気なロックンロール調ですが、やはり、どこか哀愁を感じさせ、これを暗く感じる場合もあれば、あるいは、日本人好みのセンチメントと受け取る場合もあると思います。
このあたりは、その人を取り巻く環境や、それこそ体調に左右される可能性もあります。
8曲目のThe Coffee Songは、ベーシストのジェイムズ・バリオスが書いた曲ですが、クエバスの作品と明らかに違った印象を受けます。
胸キュン60sポップスを思わせるメロディで、ベース・ラインなどは、私は、アーサー・アレクサンダーのアンナを連想してしまいました。
さて、メキシカン・ルーツに根差した音楽性を特徴とするバンドですが、本作では一歩進んで、直接メキシカン・シンガーのカバーをいくつかやっています。
4曲目のLos Chucos Suavesの作者、Lalo Guerreroは、ライナーでは、パチューコの偉人と紹介されていて、多分ロス・ロボスの「パパの夢」に参加して、ナレーションをやっていた人だと思います。
パチューコというのは、もともとは、反抗児くらいの意味だと思いますが、そこから転じて、彼らが好んで聴いた音楽を指すようになったようで、ここでは、メキシコ音楽ランチェラの中でも、ラテン音楽にアフロ・アメリカンの音楽をミックスした、より大衆向けのものを指していると私は考えています。
ここでは、ルンバ調のメロをぬって、本来はメキシカン・トラペットが高らかにロング・トーンを奏でるだろうところで、キッドのエレキ・ギター・ソロが宙を舞います。
6曲目のUna Pura Y Dos Con Salは、メキシコのシンガー、Cuco Sanchezの曲で、作者のEnrique Sanchez Alonsoは、彼のフルネームだと思います。
9曲目の Un Puno De Tierraは、多くの人がやっている曲のようですが、ここでは、Antonio Aguilarのバージョンにインスパイアされたもののようです。
このへんは、どのような音楽だというのが正解でしょうか?
マリアッチも、コンフントも、音楽性よりも、もともとは楽器編成を指す言葉だと思いますので、やはりランチェラでしょうか。
ジャンルの名称など、所詮は記号に過ぎないと承知していても、ついこだわってしまうのでした。
最後に、リトル・リチャードのカバー、Keep A Knockin'に触れたいと思います。
やっとこさ、有名曲が出てきたと思いましたが、ここでは、何とスペイン語でやっていて、驚きます。
しかも、サックスこそ入っていますが、ピアノレスで、エレキ・ギター・ソロがメインのアレンジなので、原曲のイメージはほとんどありません。
前作で、ジョニー・バーネット・トリオのLonesome Tears In My Eyesを、スパニッシュ・アレンジのミディアム・ダンス・チューンでやった時ほどの衝撃はありませんが、今回のようなアレンジでやったKeep A Knockin'も、私は他に例を知りません。
クリフトン・シェニエのザディコ・バージョンもユニークでしたが、こちらの方がより原曲から遠い印象を受けました。
本作は、前作同様、素晴らしい出来だと思います。
両作では、若干肌触りの違いを感じますが、どちらが良いと思うかは、それこそ好みでしょう。
私は、このアルバムを通じて、テックス・メックスから、さらにメキシコ音楽へも興味が広がりました。
また、L.A.ベースのラティーノ音楽と、サンアントニオ・ベースのテハーノ音楽の微妙な違いにも関心を深めるきっかけにもなったと思います。
もちろん、共通性に比べれば些細なことだと思いますが…。
さて、最後に、書き出しのスカル問題について、補足したいと思います。
私は、最近これが答えではないかと思う内容を見つけました。
カトリックには、死者の日という日本のお盆に似た慣習があるようですが、なかでもメキシコのそれには、どくろを信仰する伝承があるようです。
恐らくは、メキシコと関連が深いスペイン語圏では、この影響が伝わっているのではないかと思います。
ふとした思いつきで、試しに「どくろ信仰」とワードで検索したところ、答えを見つけたのでした。
関連記事はこちら
メヒコ・アメリカーナ
ネットをよく活用している方なら周知のサイトです。
現在、フェイスブックが大きな注目を集めていますが、Yahoo知恵袋も掲示板タイプの原初型ソーシャル・サイトだと思います。
もうひとつ、メジャーな口コミ・サイトでは、教えてgooというのがありまして、調べ物なら、私はこちらの方をお勧めします。
私は、質問したこともあるのですが、その場合は、両方のサイトに同じ質問をアップしていました。
最近の例では、次のような質問をしています。
「チカーノ音楽のアルバムには、よくスカル(どくろ)のイラストが使われているようですが、理由をご存知の方は、ご教示下さい」
これは、残念ながら無回答でした。
1か月くらい前のことです。
Dos
Los Fabulocos
Los Fabulocos
1. Everything Will Turn Out Alright (Jesus Cuevas)
2. The Vibe (Jesus Cuevas)
3. I Never Thought (Jesus Cuevas)
4. Los Chucos Suaves (Lalo Guerrero)
5. She Wakes Up Cryin' (Jesus Cuevas, David Ramos)
6. Una Pura Y Dos Con Sal (Enrique Sanchez Alonso)
7. What's In My Heart (Jesus Cuevas)
8. The Coffee Song (James Barrios)
9. Un Puno De Tierra (Carlos Coral)
10. My Brother's Keeper (David Ramos)
11. Keep A Knockin' (Richard W. Penniman)
12. Calmen Su Rollo (Jesus Cuevas)
ロス・ファビュロコスの待望の2ndアルバムがリリースされました。
ジャケットをご覧ください。
見事に、どくろジャケです。
さて、1stも素晴らしかったですが、本作でも完成度の高い、かっこいい演奏を聴かせてくれます。
本作では、メキシカン・ルーツへの傾斜が顕著になっていますが、これを正統進化と呼んで喜ぶかどうかは、聴きての好み次第だと思います。
ライナーの筆者、ジョン・コンクエストは、彼らの音楽を、ロカビリー、ロックンロール、リズム&ブルース、コンフント、ザディコ、ノルテーニョをミックスした、キャリ・メックス(Cali-Mex〜California-Mexican Music)と呼んでいます。
メンバーの核は、ボタン・アコーディオン奏者で、オリジナル曲の大半を書いているヘスス・クエバスと、ギターのデヴィッド・キッド・ラモスです。
ヘスス・クエバスのアコーディオンは、前作では、ほのぼの感を醸し出している印象が強かったですが、本作では、それに増して哀愁味を特に感じさせるプレイをしています。
これは、もともとメロディのせいなのか、それとも、アコのプレイが、メロディにそういった味付けしているのか考えるところです。
オリジナル曲は、陽気なロックンロールがほとんどですが、どこか哀愁漂う旋律だと感じる印象が強いです。
一方、ギターのキッド・ラモスは、バホ・セスト他の楽器もプレイする、ユーティリティ・プレイヤーで、ライナーによれば、ジェイムズ・ハーマン、ハリウッド・ファッツ(ハリウッド・ブルー・フレイムス)、ファビュラス・サンダーバーズ、マニッシュ・ボーイズなどでギターを弾いていたというようなことが書かれています。
全てが正式参加だったのか不明ですが、私の知る範囲では、一時期、Tバーズの正式メンバーだったのは間違いありません。
前作に比べると、パホ・セストの印象が薄まっているように思います。
また同様に、前作で鮮烈な印象を与えた、トレモロを多用した、スパニッシュ・ギターの演奏が本作にはなく、エレキ・ギターがメインのサウンドとなっているように感じます。
ギターに関しては、私は前作の方が好みです。
さて、収録曲ですが、まず冒頭のEverything Will Turn Out Alrightでは、私はロス・ロボスの「狼はいかに生き残るのか?」を連想しました。
かっこいいロックンロールでありながら、どこか寂しげな、あの哀愁を感じさせるメロディを思い出していただきたいです。
これは、他のオリジナル曲でも共通した印象を受けました。
本作には、複数のゲストが参加していますが、その多くは、Delta Groove Musicのレーベル・メイトたちのようです。
中でも特記されているのは、同じイーストL.A.のラテン・ルーツ・バンド、Blazersのマヌエル・ゴンサレスで、2曲目のThe Vibeでラブボード(?)を演奏しています。
ブレイザースは、ロス・ロボスのセサール・ロサスや、ドワイト・ヨーカムのプロデューサー、ピート・アンダーソンとも親交が深いバンドです。
ライナーでは、この曲をザディコっぽいと評していますが、まあそう聴けなくもないです。
ラブボードというのは、ウォッシュ・ボードと同じようなものでしょうか?
アップ・テンポの曲で、曲調より、楽器編成からくる印象で評しているような気もします。
3曲目のI Never Thoughtは、本作唯一のスロー・ナンバーで、スワンプ・ポップを連想させる、哀愁の三連バラードに仕上がっています。
サックスをフィーチャーしたサウンドで、本作収録曲では、比較的ストレートにリズム&ブルースを感じさせる作品となっています。
私のお気に入り曲でもあります。
5曲目のShe Wakes Up Cryin'も、7曲目のWhat's In My Heartも、一見陽気なロックンロール調ですが、やはり、どこか哀愁を感じさせ、これを暗く感じる場合もあれば、あるいは、日本人好みのセンチメントと受け取る場合もあると思います。
このあたりは、その人を取り巻く環境や、それこそ体調に左右される可能性もあります。
8曲目のThe Coffee Songは、ベーシストのジェイムズ・バリオスが書いた曲ですが、クエバスの作品と明らかに違った印象を受けます。
胸キュン60sポップスを思わせるメロディで、ベース・ラインなどは、私は、アーサー・アレクサンダーのアンナを連想してしまいました。
さて、メキシカン・ルーツに根差した音楽性を特徴とするバンドですが、本作では一歩進んで、直接メキシカン・シンガーのカバーをいくつかやっています。
4曲目のLos Chucos Suavesの作者、Lalo Guerreroは、ライナーでは、パチューコの偉人と紹介されていて、多分ロス・ロボスの「パパの夢」に参加して、ナレーションをやっていた人だと思います。
パチューコというのは、もともとは、反抗児くらいの意味だと思いますが、そこから転じて、彼らが好んで聴いた音楽を指すようになったようで、ここでは、メキシコ音楽ランチェラの中でも、ラテン音楽にアフロ・アメリカンの音楽をミックスした、より大衆向けのものを指していると私は考えています。
ここでは、ルンバ調のメロをぬって、本来はメキシカン・トラペットが高らかにロング・トーンを奏でるだろうところで、キッドのエレキ・ギター・ソロが宙を舞います。
6曲目のUna Pura Y Dos Con Salは、メキシコのシンガー、Cuco Sanchezの曲で、作者のEnrique Sanchez Alonsoは、彼のフルネームだと思います。
9曲目の Un Puno De Tierraは、多くの人がやっている曲のようですが、ここでは、Antonio Aguilarのバージョンにインスパイアされたもののようです。
このへんは、どのような音楽だというのが正解でしょうか?
マリアッチも、コンフントも、音楽性よりも、もともとは楽器編成を指す言葉だと思いますので、やはりランチェラでしょうか。
ジャンルの名称など、所詮は記号に過ぎないと承知していても、ついこだわってしまうのでした。
最後に、リトル・リチャードのカバー、Keep A Knockin'に触れたいと思います。
やっとこさ、有名曲が出てきたと思いましたが、ここでは、何とスペイン語でやっていて、驚きます。
しかも、サックスこそ入っていますが、ピアノレスで、エレキ・ギター・ソロがメインのアレンジなので、原曲のイメージはほとんどありません。
前作で、ジョニー・バーネット・トリオのLonesome Tears In My Eyesを、スパニッシュ・アレンジのミディアム・ダンス・チューンでやった時ほどの衝撃はありませんが、今回のようなアレンジでやったKeep A Knockin'も、私は他に例を知りません。
クリフトン・シェニエのザディコ・バージョンもユニークでしたが、こちらの方がより原曲から遠い印象を受けました。
本作は、前作同様、素晴らしい出来だと思います。
両作では、若干肌触りの違いを感じますが、どちらが良いと思うかは、それこそ好みでしょう。
私は、このアルバムを通じて、テックス・メックスから、さらにメキシコ音楽へも興味が広がりました。
また、L.A.ベースのラティーノ音楽と、サンアントニオ・ベースのテハーノ音楽の微妙な違いにも関心を深めるきっかけにもなったと思います。
もちろん、共通性に比べれば些細なことだと思いますが…。
さて、最後に、書き出しのスカル問題について、補足したいと思います。
私は、最近これが答えではないかと思う内容を見つけました。
カトリックには、死者の日という日本のお盆に似た慣習があるようですが、なかでもメキシコのそれには、どくろを信仰する伝承があるようです。
恐らくは、メキシコと関連が深いスペイン語圏では、この影響が伝わっているのではないかと思います。
ふとした思いつきで、試しに「どくろ信仰」とワードで検索したところ、答えを見つけたのでした。
ロス・ファビュロコス、メキシカン・ルーツを歌う
関連記事はこちら
メヒコ・アメリカーナ
【チカーノ、テハーノの最新記事】
この記事へのコメント