2011年06月28日
アリゲーター・バイユー、クロコダイル・スワンプ
最近、期待していたいくつかの新作が、いずれも「それなり」の出来で、ファンとしては普通に楽しめたとはいえ、他の人に薦めるほどまではいかず、どうも悶々とする日々が続いています。
例えば、NRBQの新作(あまり語っている方も少ないように思います)、P.J.O'Connellの新作(こちらも同様)などがそれに当たります。
実は、NRBQの新作(!!)は、思いのほか良くて複雑な気分になりました。
私は(複雑ではありますが)、若いメンバーの音が気に入りました。
ただ、繰り返し聴いて、周りにやんやと吹聴するほどではなかったのでした。
そして、普段から、NRBQの特徴として感じていた「混沌と狂気」は、Terry Adamsに起因するところが大なのだと、改めて強く思ったところです。
私は、Joeyぬきでも、NRBQが成立しているような印象を持ち、ショックでした。
今後は、Spampinato Brothersにも、ぜひアルバムを創ってもらって、NRBQなるものの正体を、再度見つめなおす機会をファンに与えてほしいものです。
さて、今回は、比較的新しめのSwamp Pop Singerのアルバムを聴きました。
1. She's Mine (Jarvis, Nicholson)
2. Alligator Bayou (Futch)
3. Dark End of the Street (C. Moman, D. Penn)
4. Fooled Around and Fell in Love (E. Bishop)
5. Ya Ya (Levy, Lewis)
6. Goodbye Time (Hicks, Murrah)
7. It Wasn't Supposed to Happen (Collet)
8. I'm Gonna Find Another You (Mayer)
9. Hang Up My Rock and Roll Shoes (C. Willis)
10. Harry Hippie (J. Ford)
11. Take Me in Your Loving Arms (Guilbeau)
12. Sweet Soul Music (A. Conley, S. Cooke, O. Redding)
13. First You Cry (D. Egan, Flett)
14. Louisiana Christmas Day (Cox)
15. To Love Somebody (B. Gibb, R. Gibb)
Ryan Foretは、99年に兄弟と思われるBrandon Foretと組み、1stアルバム"Dance With Me"でCDデビューしています。
Ryanは、キーボードとリード・ボーカル、Brandonはドラムスを担当していました。
その後、数枚のアルバムをリリースし、その間、メンバーの追加、交代などを経て現在に至っているようです。
アルバムは、以下の通りです。
Dance With Me : 99'
Lost In The 50s : 01'
Hey Good Lookin' : 03'
Tee Nah Nah : 05'
She's Mine : 07'
現在バンド名は、Ryan Foret and Foret Traditionとなり、その編成は、以下のように変わってきています。
Ryan Foret : vocals, keyboad
Jason Parfait : saxophone, bass, backgroud vocals
Jame Spells : trampet
Wade Pavolini : guitar
Lynn Boudreaux : drums
また、今作へは以下のメンバーが参加しており、このうちの幾人かは、元メンバーで、おそらく準メンバー的存在かと思われます。
Brandon Foret : guitar, drums
Jeremy Billiot : bass
Alan Maxwell : bass
Lupe Valdiviez Jr. : drums
Gary Usie : drums
Mark Templet : guitar
Dwight Breland : steel guitar, acoustic guitar
Travis Thibodaux : Keyboad, organ, backgrand vocals
彼らは、自分たちが演奏する音楽として、Swamp Pop、R&B、Soul、Funk、Motown、Country、Top40、80's Rock、Zydecoなどの名前をあげています。
Swamp Popを真っ先に挙げているのが嬉しい、いわゆるバー・バンドというやつです。
ルーツ系中心ではありますが、観客が求めるなら、喜んでTop40もプレイしますよ、という感じなのでしょう。
ホーン陣を含むサウンドはしっかりしており、この手のバンドにありがちなB級っぽさも、あまり感じさせません。
メインのRyan Foretのボーカルは、曲によっては、どこかPercy Sledgeの声を連想させるものがあります。
(特に1曲目の"She's Mine"がそんな感じです。)
非常に丁寧な歌いくちで、適当な比喩が思いつきませんが、あえていうなら、私は、Percyからヘタうまっぽさを差し引き、くっきり輪郭を明確にしたような印象を受けます。
ただ、ヘタうまというのは、ある意味、褒め言葉でもありますから、必ずしも単に持ち上げているわけではありません。
この当たり、彼の歌声に魅力を感じるかは、好みにもよるでしょう。
私は好きです。
そして、うまい人だとも思います。
選曲の妙も素晴らしく、聴きやすいです。
カバー曲には、高難度の渋い有名曲から、手あかがついたようなオールディーズまで、さまざまですが、どれもアベレージ・クラスか、それ以上だと思います。
Rod Stewartが「グレイト・ロック・クラシックス」で取り上げた、Elvin Bishopの"Fooled Around and Fell in Love"が、Ryanの声質にあった曲で、いい感じに気持ちよく歌っているのがわかります。
聴きもののひとつだと思います。
また、ウエストコースト・カントリー・ロック風の"Goodbye Time"は、しみじみと聴かせる序盤から、次第にドラマチックに展開していくバラードで、これもRyanにあった曲だと思います。
一方、同じように素直にやっても、"Hang Up My Rock and Roll Shoes"のような曲では、少し硬さが感じられ、まじめさが仇になっているように思います。
ユーモラスな歌い方が出来れば、さらによいと思いましたが、これが彼の個性でしょう。
その点、"Ya Ya"は、アレンジに一工夫していて、こちらはいい感じです。
私の趣味的には、Jim Fordの"Harry Hippie"をやっているのが嬉しいです。
この曲は、Bobby Womackのために書かれた曲で、Bobbyの優しい歌いくちが素晴らしく、すぐに好きになった曲でした。
Jim本人の録音もありますが、ここでの、Ryanのお手本は、Bobby Womack盤だと思われ、丁寧に誠実な歌声を聴かせてくれています。
Jim Fordは、R&Bテイストのカントリー系シンガー、ソングライターで、Bobby Womackには、他にも"Point Of No Return"を書いていて、こちらも名唱名演です。
そして、なぜか、パブ・ロック勢に人気がある人で、"JuJu Man"という曲は、Brinsley Schwarz時代のNick Loweが、そしてDave Edmundsがソロでカバーし、多分その流れで、Flamin' Grooviesもやっています。
また、渋いところでは、Nick Loweの"36inches High"がFordの曲です。
ちなみに、近々、Jim Fordの69年の1stアルバムが、最新のリマスターで、ストレート・リイシューされる予定です。
"First You Cry"は、David Eganが書いた曲で、Percy Sledgeや、Little Buster Forehandの名カバーがある素晴らしいスロー・バラードです。
David Eganは、白人ピアニスト、シンガーで、近年は、Swamp Popのオールスター・グループ、Lil' Band O' Goldに参加して活動しています。
私は、Eganの新録盤も含めた中でも、Little Buster盤が特に好きです。
ここでのRyan Foret盤も素晴らしい仕上がりになっているので、聴きものだと思います。
本盤で初めて知ったアーティストですが、過去盤を遡りたいと思わせる人です。
関連記事はこちら
変わらずにいるということ
ブルーズン・ソウル・ブラザーズ
元祖ヘタウマ
例えば、NRBQの新作(あまり語っている方も少ないように思います)、P.J.O'Connellの新作(こちらも同様)などがそれに当たります。
実は、NRBQの新作(!!)は、思いのほか良くて複雑な気分になりました。
私は(複雑ではありますが)、若いメンバーの音が気に入りました。
ただ、繰り返し聴いて、周りにやんやと吹聴するほどではなかったのでした。
そして、普段から、NRBQの特徴として感じていた「混沌と狂気」は、Terry Adamsに起因するところが大なのだと、改めて強く思ったところです。
私は、Joeyぬきでも、NRBQが成立しているような印象を持ち、ショックでした。
今後は、Spampinato Brothersにも、ぜひアルバムを創ってもらって、NRBQなるものの正体を、再度見つめなおす機会をファンに与えてほしいものです。
さて、今回は、比較的新しめのSwamp Pop Singerのアルバムを聴きました。
She's Mine
Ryan Foret and Foret Tradition
Ryan Foret and Foret Tradition
1. She's Mine (Jarvis, Nicholson)
2. Alligator Bayou (Futch)
3. Dark End of the Street (C. Moman, D. Penn)
4. Fooled Around and Fell in Love (E. Bishop)
5. Ya Ya (Levy, Lewis)
6. Goodbye Time (Hicks, Murrah)
7. It Wasn't Supposed to Happen (Collet)
8. I'm Gonna Find Another You (Mayer)
9. Hang Up My Rock and Roll Shoes (C. Willis)
10. Harry Hippie (J. Ford)
11. Take Me in Your Loving Arms (Guilbeau)
12. Sweet Soul Music (A. Conley, S. Cooke, O. Redding)
13. First You Cry (D. Egan, Flett)
14. Louisiana Christmas Day (Cox)
15. To Love Somebody (B. Gibb, R. Gibb)
Ryan Foretは、99年に兄弟と思われるBrandon Foretと組み、1stアルバム"Dance With Me"でCDデビューしています。
Ryanは、キーボードとリード・ボーカル、Brandonはドラムスを担当していました。
その後、数枚のアルバムをリリースし、その間、メンバーの追加、交代などを経て現在に至っているようです。
アルバムは、以下の通りです。
Dance With Me : 99'
Lost In The 50s : 01'
Hey Good Lookin' : 03'
Tee Nah Nah : 05'
She's Mine : 07'
現在バンド名は、Ryan Foret and Foret Traditionとなり、その編成は、以下のように変わってきています。
Ryan Foret : vocals, keyboad
Jason Parfait : saxophone, bass, backgroud vocals
Jame Spells : trampet
Wade Pavolini : guitar
Lynn Boudreaux : drums
また、今作へは以下のメンバーが参加しており、このうちの幾人かは、元メンバーで、おそらく準メンバー的存在かと思われます。
Brandon Foret : guitar, drums
Jeremy Billiot : bass
Alan Maxwell : bass
Lupe Valdiviez Jr. : drums
Gary Usie : drums
Mark Templet : guitar
Dwight Breland : steel guitar, acoustic guitar
Travis Thibodaux : Keyboad, organ, backgrand vocals
彼らは、自分たちが演奏する音楽として、Swamp Pop、R&B、Soul、Funk、Motown、Country、Top40、80's Rock、Zydecoなどの名前をあげています。
Swamp Popを真っ先に挙げているのが嬉しい、いわゆるバー・バンドというやつです。
ルーツ系中心ではありますが、観客が求めるなら、喜んでTop40もプレイしますよ、という感じなのでしょう。
ホーン陣を含むサウンドはしっかりしており、この手のバンドにありがちなB級っぽさも、あまり感じさせません。
メインのRyan Foretのボーカルは、曲によっては、どこかPercy Sledgeの声を連想させるものがあります。
(特に1曲目の"She's Mine"がそんな感じです。)
非常に丁寧な歌いくちで、適当な比喩が思いつきませんが、あえていうなら、私は、Percyからヘタうまっぽさを差し引き、くっきり輪郭を明確にしたような印象を受けます。
ただ、ヘタうまというのは、ある意味、褒め言葉でもありますから、必ずしも単に持ち上げているわけではありません。
この当たり、彼の歌声に魅力を感じるかは、好みにもよるでしょう。
私は好きです。
そして、うまい人だとも思います。
選曲の妙も素晴らしく、聴きやすいです。
カバー曲には、高難度の渋い有名曲から、手あかがついたようなオールディーズまで、さまざまですが、どれもアベレージ・クラスか、それ以上だと思います。
Rod Stewartが「グレイト・ロック・クラシックス」で取り上げた、Elvin Bishopの"Fooled Around and Fell in Love"が、Ryanの声質にあった曲で、いい感じに気持ちよく歌っているのがわかります。
聴きもののひとつだと思います。
また、ウエストコースト・カントリー・ロック風の"Goodbye Time"は、しみじみと聴かせる序盤から、次第にドラマチックに展開していくバラードで、これもRyanにあった曲だと思います。
一方、同じように素直にやっても、"Hang Up My Rock and Roll Shoes"のような曲では、少し硬さが感じられ、まじめさが仇になっているように思います。
ユーモラスな歌い方が出来れば、さらによいと思いましたが、これが彼の個性でしょう。
その点、"Ya Ya"は、アレンジに一工夫していて、こちらはいい感じです。
私の趣味的には、Jim Fordの"Harry Hippie"をやっているのが嬉しいです。
この曲は、Bobby Womackのために書かれた曲で、Bobbyの優しい歌いくちが素晴らしく、すぐに好きになった曲でした。
Jim本人の録音もありますが、ここでの、Ryanのお手本は、Bobby Womack盤だと思われ、丁寧に誠実な歌声を聴かせてくれています。
Jim Fordは、R&Bテイストのカントリー系シンガー、ソングライターで、Bobby Womackには、他にも"Point Of No Return"を書いていて、こちらも名唱名演です。
そして、なぜか、パブ・ロック勢に人気がある人で、"JuJu Man"という曲は、Brinsley Schwarz時代のNick Loweが、そしてDave Edmundsがソロでカバーし、多分その流れで、Flamin' Grooviesもやっています。
また、渋いところでは、Nick Loweの"36inches High"がFordの曲です。
ちなみに、近々、Jim Fordの69年の1stアルバムが、最新のリマスターで、ストレート・リイシューされる予定です。
"First You Cry"は、David Eganが書いた曲で、Percy Sledgeや、Little Buster Forehandの名カバーがある素晴らしいスロー・バラードです。
David Eganは、白人ピアニスト、シンガーで、近年は、Swamp Popのオールスター・グループ、Lil' Band O' Goldに参加して活動しています。
私は、Eganの新録盤も含めた中でも、Little Buster盤が特に好きです。
ここでのRyan Foret盤も素晴らしい仕上がりになっているので、聴きものだと思います。
本盤で初めて知ったアーティストですが、過去盤を遡りたいと思わせる人です。
The Old Lake by Foret Tradition
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