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心の鍵を開けてくれ

 なかなかに、豪華なメンツを揃えたコンピレーションです。
 このアルバムは、ドン・アイマスというトーク・ショウのホストの呼びかけで作られた、難病患者への支援を目的とした、チャリティ・アルバムのようです。
 大物アーティストが多数参加していますが、収益の全ては、慈善団体に寄付されるとのことです。


The Imus Ranch Record

1. Silver Springs : Patty Loveless
2. Lay Down Sally : Delbert McClinton
3. Mamas Don't Let Your Babies Grow Up To Be Cowboys : Lucinda Williams
4. You Better Move On : Levon Helm
5. Life Has Its Little Ups And Downs : Raul Malo
6. I Ain't Never : Little Richard
7. I Don't See Me In Your Eyes Anymore : Randy Travis
8. Fight For Your Right To Party : Big & Rich
9. What A Difference A Day Makes : Willie Nelson
10. Give Back The Key To My Heart : Dwight Yoakam
11. What Happened : Bekka Bramlett
12. Welfare Music : John Hiatt
13. Satisfied Mind : Vince Gill


 私がこのアルバムに興味を持ったのは、ドワイト・ヨーカムが歌う、Give Back The Key To My Heartが収録されているからです。

 しかし、他のメンツもすごいです。
 収録曲は、それぞれ、このアルバムのために吹き込まれたもののようです。
 収録アーティストのファンなら、贔屓のアーティストの1曲のために、購入する価値は充分あると思います。

 参加しているのは、ルーツ・ミュージックの大物ばかりですので、おそらくは、贔屓以外の曲も楽しめると思います。

 私がもうけものだと思ったのは、デルバート・マクリントンのLay Down Sallyが、そして、リヴォン・ヘルムのYou Better Move Onが聴けることです。

 もちろん、ジョン・ハイアットのアルバム未収録曲が聴けるのも嬉しいです。

 変わり種では、カントリーをカバーした、リトル・リチャードなんていうのもありますし、ベッカ・ホワイトの曲の作者の一人が、アル・アンダースンだということも興味深いです。

 ウイリー・ネルソンは、いつもながらの歌声を聴かせてくれています。
 まさにアメリカの国民的歌手ですね。

 私がこのアルバムで、最も気にいったのは、ランディ・トラヴィスのI Don't See Me In Your Eyes Anymoreです。
 ランディは、昔聴いていましたが、私はかなりご無沙汰でしたので、懐かしさがつのるとともに、その素晴らしさに驚きました。

 ランディの歌の背後で聴ける、流麗なストリングスは、レイ・チャールズのABC録音のそれを連想させるもので、既視感にとらわれたような懐かしい感覚に包まれます。

 私は、必ずしもレイのABC録音を好むわけではありませんが、あの空気感を再現したような音づくりには、感激せずにいられませんでした。
 このあたりの感覚は、実際に聴いていただく以外、私の貧困な語彙では伝えきれません。 

 さて、当初の目的であるドワイト・ヨーカムの曲に話を移したいと思います。
 私は、ドワイトが好きですが、今回の真の目的は収録曲そのものにあります。
 彼が歌っているGive Back The Key To My Heartは、ダグ・サームの曲なのでした。

 ダグ・サーム好きの私としては、彼の曲のカバーというだけで、触手が動くのです。
 
 この曲は、76年のTexas Rock For Country Rollersで初めて録音され、その後、98年のSDQ'98(又は同年、Get ALife)で再吹き込みされました。
 ダグは、翌99年に天に召されています。

 ダグが、自分のお気に入りの曲を繰り返し録音することは、ままあることですが、この曲の場合は、少し別の事情があるように思います。

 この曲は、アンクル・テュペロが93年のAnodyneで取り上げ、同アルバムでは、ダグ・サームがリード・ボーカルで参加したのでした。



 つまり、SDQ'98の5年前、Anodyneへのゲスト参加が、実は2度めの吹き込みになるのです。

 若い世代からのリスペクトは、ダグの心を動かすものがあったのだと思います。
 そのことが、SDQ'98での再演への動機となったのかも知れません。

これが、他の再演曲とは、少し事情を異にするのではないかと私が考える中身です。

 その後、私の知る限りでは、オージー・バンドのThe Revelatorsが、01年のアルバム、Floating Bridgeでカバーしています。



 そして、今コンピでのドワイト盤の登場は03年でした。
 ドワイト盤は、ニュー・トラディション・カントリー風になっていて、他のバージョンとは印象が違います。

 ただ、ロッキン・リズムに乗ろうとも、男女の別れを暗示する歌であることに変わりはありません。
 少なくとも1番の歌詞は…。
 
 ぼくの写真を 壁から外してくれ
 ぼくのテレビを 返してくれ
 そんなこと なんでもないさ
 でも 返しているあいだに
 ぼくの心へとつなぐ 鍵を開けてくれ
 そして ぼくの愛を川のように 
 まっすぐ君の心へ流してくれ

 このあたりまでは、愛の終わりに抗う比喩のようです。
 でも、2ndヴァースでは、「君はコカインという友を得た」と急展開して、ヘヴィになります。

 しかも、英語の歌詞って、韻を踏んでいるので、うまいなぞかけみたいに、「整いました」ならいいですが、そうでない場合は、一生懸命訳しても徒労の場合がありますので、注意が必要ですね。





 ランディがやった曲は、スタンダードっぽいですが、チャーリー・リッチ盤がありました。




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