2012年09月09日
ストックホルムの贈り物
北欧よ 白夜の国よ ありがとう
ストックホルム、イエテボリ、マルメ、全ての美しいスウェーデンの街々を統べる神々よ
今宵 サンアントニオ・レコードの製作スタッフに祝福を
私は、あなたがたの素晴らしい仕事を 心から支持します。
日の没さない国から 日出処の国へ届いた素晴らしい便り
月の光のもと 贈り物を開き、震える手でディスクをセットすると
全能の魔神が現れて 私の願いを聞き入れてくれるのでした。
(至福の時間)
そして…
全私が泣きました 歓喜の涙です。
1997年8月のストックホルム
Doug Sahmの完全未発表ライヴ音源がCDリリースされたのです。
1. Farmer John (Don Harris, Dewey Terry)
2. Talk To Me (Joe Seneca)
3. Nitty Gritty (Doug Sahm)
4. Nuevo Laredo (Doug Sahm)
5. Dealer's Blues (Doug Sahm)
6. Bad Boy (Lilian Armstrong, Avon Long)
7. (Is Anybody Goin' To) San Antone (Dave Kirby, Glen Martin)
8. Pick Me Up On Your Way Down (Harlan Howard)
9. Adios Mexico (Doug Sahm)
10. (Hey Baby) Que Paso (Augie Meyers, Bill Sheffield)
11. Wasted Days & Wasted Nights (Freddy Fender, Wayne Duncan)
12. She's About A Mover (Doug Sahm)
13. Mendocino / Dynamite Woman (Doug Sahm)
14. Meet Me In Stockholm (Doug Sahm)
15. Treat Her Right (Roy Head, Gene Kurtz)
本盤は、スウェーデンのSan Antonio Recordsからリリースされました。
私が入手したショップのインフォによれば、12年8月13日発売となっています。
レーベルは、Soundcarrier / Gazell、番号はDOUGALIVE1です。
Doug Alive 「ダグは生きている」ということでしょうか。
いかにもブートっぽい番号ですが、ディスク、パッケージの作りともに、オフィシャルといっていいレベルです。
単に大手からの販路がないだけで正規盤なんでしょうか。
当初は、スウェーデンを中心にEU圏内の一部のショップのみで流通していたようです。
それが、最近、各国アマゾンでも予約が開始されました。
(MP3ダウンロード・アルバムは、8月11日から先行販売されていたようです。)
本邦アマゾンのカタログ情報によれば、入荷するのはUS盤で、レーベルはGazellとなっています。
(もしかすると、US盤と読むのではなく、単にアメリカから輸入という意味かも知れません。)
パッケージは、三つ折りを畳んだデジパックで、中には署名のないライナーが掲載されています。
ライナーは、音源の編集(長すぎるMCをカットした等の記述がある)に関することに加え、まるで当時現場にいたかのような、コンサート・レポ風の文章になっています。
録音者とクレジットされている、Ad Koekkoekなる人物の文章なのかも知れません。
以下は、ライナーの記述を参考に、私の感想をまじえてご紹介します。
録音は、97年8月11日、ストックホルムのどこか、場所は明記されていません。
MCは一部カットしたとありますが、コンサートのセットリストは完全に収録したと誇らしげにライナー氏が書いています。
(収録時間は68分です。)
ただし、最後のトラック15のみ、97年8月2日のベルギー、ローケレン(Lokeren)という街のどこかでの演奏となっています。
当夜の参加メンバーは、以下の通りです。
Doug Sahm : guitar, lead vocals
Shawn Sahm : guitar, vocals
Jack Barber : bass
Fran Christina :drums
Al Gomez : trumpet
Rocky Morales : tenor saxophone
Arturo "Sauce" Gonzales : keyboads
Janne Lindgren : steel guitar
既発のアントンズでのライヴ盤と比べると、基本的なメンツの揃え方は同じですが、北欧公演ということもあり、同行者は一部違っています。
基本は、Augie Meyersが不参加ということで、それはアントンズ盤と変わりません。
(アントンズ盤は、曲によって一部メンツにばらつきがあり、全て同一日ではなく、複数の公演の演奏が混ざっているのではと想像します。)
オーギーがいれば、お呼びがかからなかったと思われる鍵盤奏者は、アントンズ盤と同じく、アルツロ・ソース(愛称)・ゴンザレスです。
ソース・ゴンザレスは、ダグとは70年代からの付き合いで、タグの没後、ウエストサイド・ホーンズのリズム隊の一員となり、Rocky Moralesとともに、バンド・リーダー的な存在となった人です。
(最近は、健康不安が伝えられています。)
そして、ドラムスは、Fabulous Thunderbirdsのフラン・クリスティーナです。
この人は、テキサスの一流どころのセッションに多数参加していて、T-Birds以外では、Stevie Ray Vaughn、Jimmie Vaughn、Marcia Ballらのレコーディング、そして系統の違うところでは、Asleep At The Wheelとのセッション(79年"Served Live"、80年"Framed")にも参加しています。
ダグとの共演は、ソフト化されたものでは、初めてかも知れません。
ちなみに、アントンズ盤のドラムスは、George Rainsでした。
ベースのJack barber、トランペットのAl Gomez、サックスのRocky Moralesは、アントンズ盤と同じです。
ダグとの付き合いの長さでは、Rocky、Jack、Alの順でしょうか。
そして、Dougの息子、Shawn Sahmがギターで参加しています。
この人は、リード・ギターも弾く人ですが、80年代初めの、Sir Douglas QuintetのAustin City Limitsのライヴでは、まだリードの大半は親父のDougが弾いていました。
しかし、本盤のライナー氏によれば、Dougは主にサイドを担当し、多くの曲でShawnがソロを弾いたとしています。
また、多くの曲でコーラスをつけています。
ちなみに、アントンズ盤では、Derek O'BrienとDenny Freemanがギターで参加していました。
Derek O'Brienは、Texas TornadosのAustin City Limitsにゲスト参加して、要所でソロを弾いている人です。
一方、Denny Freemanは、ソロのギター・インスト・アルバムを2枚も出している人ですが、Derekと共演したアントンズ盤では、Dennyがサイドに回っていました。
スチール・ギターのJanne Lindgrenは、おそらく唯一現地のアーティストではないかと思います。
さて、本盤でのLast Real Texas Blues Bandは、アントンズ盤とは少し演奏の色合いが違います。
基本のメンバー構成は同じにもかかわらず、セットリストを変えたため、結果として、とても興味深い演奏となっているのです。
アントンズでは、ブルース、リズム&ブルースなどに特化したセトリでした。
しかし、このストックホルム公演では、それに加え、アントンズではやらなかった、テックス・メックス、カントリーなどをやっています。
このため、ゲストにスチール・ギターリストこそ迎えてはいますが、本来ならまだ足りません。
オリジナルでは、フィドルやアコーディオンをフューチャーしていた曲を、ラップ・スチール、キーボード、ギターが代替しているのです。
これが本盤を大変興味深く、希少なものにしています。
まず、最初に結論めいたことを書かせてください。
本盤に収められた演奏は、単に珍しいだけでなく、素晴らしい内容だと思います。
録音の出力レベルが若干低いようですが、バランスは一定ですので問題ありません。
少し音量を上げて聴き、別のディスクに替えるとき、元に戻してください。
公演全体を通して、Doug Sahmの歌唱、バンドのパフォーマンスともに素晴らしいです。
そして、曲間のDougの早口のしゃべりが絶好調で、これでもカットしたのなら、元は凄い量なんだろうなあ、と推察します。
この2年後に急逝してしまうなんて、当日居合わせた幸福な人は、信じられない気持ちで当時の想い出を振り返ったことでしょう。
ストックホルム、イエテボリ、マルメ、全ての美しいスウェーデンの街々を統べる神々よ
今宵 サンアントニオ・レコードの製作スタッフに祝福を
私は、あなたがたの素晴らしい仕事を 心から支持します。
日の没さない国から 日出処の国へ届いた素晴らしい便り
月の光のもと 贈り物を開き、震える手でディスクをセットすると
全能の魔神が現れて 私の願いを聞き入れてくれるのでした。
(至福の時間)
そして…
全私が泣きました 歓喜の涙です。
1997年8月のストックホルム
Doug Sahmの完全未発表ライヴ音源がCDリリースされたのです。
Live In Stockholm
Doug Sahm
Last Real Texas Blues Band
Doug Sahm
Last Real Texas Blues Band
1. Farmer John (Don Harris, Dewey Terry)
2. Talk To Me (Joe Seneca)
3. Nitty Gritty (Doug Sahm)
4. Nuevo Laredo (Doug Sahm)
5. Dealer's Blues (Doug Sahm)
6. Bad Boy (Lilian Armstrong, Avon Long)
7. (Is Anybody Goin' To) San Antone (Dave Kirby, Glen Martin)
8. Pick Me Up On Your Way Down (Harlan Howard)
9. Adios Mexico (Doug Sahm)
10. (Hey Baby) Que Paso (Augie Meyers, Bill Sheffield)
11. Wasted Days & Wasted Nights (Freddy Fender, Wayne Duncan)
12. She's About A Mover (Doug Sahm)
13. Mendocino / Dynamite Woman (Doug Sahm)
14. Meet Me In Stockholm (Doug Sahm)
15. Treat Her Right (Roy Head, Gene Kurtz)
本盤は、スウェーデンのSan Antonio Recordsからリリースされました。
私が入手したショップのインフォによれば、12年8月13日発売となっています。
レーベルは、Soundcarrier / Gazell、番号はDOUGALIVE1です。
Doug Alive 「ダグは生きている」ということでしょうか。
いかにもブートっぽい番号ですが、ディスク、パッケージの作りともに、オフィシャルといっていいレベルです。
単に大手からの販路がないだけで正規盤なんでしょうか。
当初は、スウェーデンを中心にEU圏内の一部のショップのみで流通していたようです。
それが、最近、各国アマゾンでも予約が開始されました。
(MP3ダウンロード・アルバムは、8月11日から先行販売されていたようです。)
本邦アマゾンのカタログ情報によれば、入荷するのはUS盤で、レーベルはGazellとなっています。
(もしかすると、US盤と読むのではなく、単にアメリカから輸入という意味かも知れません。)
パッケージは、三つ折りを畳んだデジパックで、中には署名のないライナーが掲載されています。
ライナーは、音源の編集(長すぎるMCをカットした等の記述がある)に関することに加え、まるで当時現場にいたかのような、コンサート・レポ風の文章になっています。
録音者とクレジットされている、Ad Koekkoekなる人物の文章なのかも知れません。
以下は、ライナーの記述を参考に、私の感想をまじえてご紹介します。
録音は、97年8月11日、ストックホルムのどこか、場所は明記されていません。
MCは一部カットしたとありますが、コンサートのセットリストは完全に収録したと誇らしげにライナー氏が書いています。
(収録時間は68分です。)
ただし、最後のトラック15のみ、97年8月2日のベルギー、ローケレン(Lokeren)という街のどこかでの演奏となっています。
当夜の参加メンバーは、以下の通りです。
Doug Sahm : guitar, lead vocals
Shawn Sahm : guitar, vocals
Jack Barber : bass
Fran Christina :drums
Al Gomez : trumpet
Rocky Morales : tenor saxophone
Arturo "Sauce" Gonzales : keyboads
Janne Lindgren : steel guitar
既発のアントンズでのライヴ盤と比べると、基本的なメンツの揃え方は同じですが、北欧公演ということもあり、同行者は一部違っています。
基本は、Augie Meyersが不参加ということで、それはアントンズ盤と変わりません。
(アントンズ盤は、曲によって一部メンツにばらつきがあり、全て同一日ではなく、複数の公演の演奏が混ざっているのではと想像します。)
オーギーがいれば、お呼びがかからなかったと思われる鍵盤奏者は、アントンズ盤と同じく、アルツロ・ソース(愛称)・ゴンザレスです。
ソース・ゴンザレスは、ダグとは70年代からの付き合いで、タグの没後、ウエストサイド・ホーンズのリズム隊の一員となり、Rocky Moralesとともに、バンド・リーダー的な存在となった人です。
(最近は、健康不安が伝えられています。)
そして、ドラムスは、Fabulous Thunderbirdsのフラン・クリスティーナです。
この人は、テキサスの一流どころのセッションに多数参加していて、T-Birds以外では、Stevie Ray Vaughn、Jimmie Vaughn、Marcia Ballらのレコーディング、そして系統の違うところでは、Asleep At The Wheelとのセッション(79年"Served Live"、80年"Framed")にも参加しています。
ダグとの共演は、ソフト化されたものでは、初めてかも知れません。
ちなみに、アントンズ盤のドラムスは、George Rainsでした。
ベースのJack barber、トランペットのAl Gomez、サックスのRocky Moralesは、アントンズ盤と同じです。
ダグとの付き合いの長さでは、Rocky、Jack、Alの順でしょうか。
そして、Dougの息子、Shawn Sahmがギターで参加しています。
この人は、リード・ギターも弾く人ですが、80年代初めの、Sir Douglas QuintetのAustin City Limitsのライヴでは、まだリードの大半は親父のDougが弾いていました。
しかし、本盤のライナー氏によれば、Dougは主にサイドを担当し、多くの曲でShawnがソロを弾いたとしています。
また、多くの曲でコーラスをつけています。
Shawn Sahm
ちなみに、アントンズ盤では、Derek O'BrienとDenny Freemanがギターで参加していました。
Derek O'Brienは、Texas TornadosのAustin City Limitsにゲスト参加して、要所でソロを弾いている人です。
一方、Denny Freemanは、ソロのギター・インスト・アルバムを2枚も出している人ですが、Derekと共演したアントンズ盤では、Dennyがサイドに回っていました。
スチール・ギターのJanne Lindgrenは、おそらく唯一現地のアーティストではないかと思います。
さて、本盤でのLast Real Texas Blues Bandは、アントンズ盤とは少し演奏の色合いが違います。
基本のメンバー構成は同じにもかかわらず、セットリストを変えたため、結果として、とても興味深い演奏となっているのです。
アントンズでは、ブルース、リズム&ブルースなどに特化したセトリでした。
しかし、このストックホルム公演では、それに加え、アントンズではやらなかった、テックス・メックス、カントリーなどをやっています。
このため、ゲストにスチール・ギターリストこそ迎えてはいますが、本来ならまだ足りません。
オリジナルでは、フィドルやアコーディオンをフューチャーしていた曲を、ラップ・スチール、キーボード、ギターが代替しているのです。
これが本盤を大変興味深く、希少なものにしています。
まず、最初に結論めいたことを書かせてください。
本盤に収められた演奏は、単に珍しいだけでなく、素晴らしい内容だと思います。
録音の出力レベルが若干低いようですが、バランスは一定ですので問題ありません。
少し音量を上げて聴き、別のディスクに替えるとき、元に戻してください。
公演全体を通して、Doug Sahmの歌唱、バンドのパフォーマンスともに素晴らしいです。
そして、曲間のDougの早口のしゃべりが絶好調で、これでもカットしたのなら、元は凄い量なんだろうなあ、と推察します。
この2年後に急逝してしまうなんて、当日居合わせた幸福な人は、信じられない気持ちで当時の想い出を振り返ったことでしょう。
【テキサス・ミュージックの最新記事】