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みたび路上へ

 ルート66をテーマにしたコンピレーションの、シリーズ第三弾がリリースされました。
 制作は、第一弾から一貫して手掛けている、Asleep At The Wheelのドラマー、David Sanger先生です。

 1枚目を出したころは、続編など想定していなかったのではないかと思います。
 その結果、本盤のタイトルも、Vol.3などとナンバリングされることもなく、わずかに"More"の単語がそれをうかがわせているだけです。


Even More Songs of Route 66
From Here to There

1. Be Thankful For What You Got (William Davaughn) Emily Gimble
2. Travelin' Mood (James Wayne) Seth Walker
3. Rockin' Down The Highway (Tom Johnston) Bruce Hughes
4. White Line Fever (Merle Haggard) Dale Watson
5. Little Floater (Terry Adams) Elizabeth McQueen
6. 99 Miles From L.A. (Albert Hammond, Hal David) Claire Small
7. On The Road Again (Floyd Jones, Alan Wilson) Carolyn Wonderland
8. Pickin' California Slaid (Jason Ekland) Cleaves
9. Hit The Road, Jack (Percy Mayfield) Tim Curry
10. Truckin' Man (Dale Watson, David Biller) Jason Roberts
11. Willin' (Lowell George) Band Of Heathens  
12. Route 66 (Bobby Troup) Mike Barfield
13. The Road (Danny O'Keefe) Matt the Electrician  

 実は、当プログでは、過去の2枚を取り上げていました。
 当時、2枚目までは出ていたのですが、まさか3枚目が出るとは…。

 いずれのディスクも、多くの無名人、無名バンドを含む内容になっています。
 当時は、おぼろげながら思っていたことですが、収録アーティストの多くは、主としてオースティンを拠点に活動している人たち、及びDave Sangerのセッション・コネクションから参加することになった人たちだと思います。

 まず、シリーズの変遷をおさらいしましょう。




98年 Songs of Route 66 : All-American Highway
01年 More Songs of Route 66 : Roadside Attractions
12年 Even More Songs Of Route 66 : From Here To There

 このタイトルの流れって、例えば古い日本映画風に言うと「続〜」「続々〜」って感じですかね。
 私は、「またまた〜」とか、「ご存じ〜」なんてのも好きです。

 先の2作は、ルート66そのものをテーマにした曲、ルート66の沿道の街を歌った曲などが集められていました。

 本シリーズの特徴は、できるだけ既発曲ではなく、本盤のための新録音をコンパイルしていることです。
 さすがに、1枚目は、"Route 66"のオリジナル曲や、代表的なカバー曲を押えていましたが、2枚目では、基本的に当該盤のための新録音を集めるという美しい構成で攻めています。

 本盤でも、その編纂スタイルを継承していますが、コンセプトに関しては、先の2枚と比べると少しゆるめた(?)感じで、必ずしもルート66とゆかりのある曲ばかりではないようです。
 本盤でのキーワードは、旅、路上、放浪、などではないかと思います。

 アルバムは、初めて聴くシンガーがほとんどです。
 まず、テキサス・フィドル・レジェンド、Johnny Gimbleの孫娘、Emily Gimbleの歌でスタートします。
 カントリーぽさは皆無といってよく、歌い方もアレンジもアンニュイで、おしゃれなブラック・ミュージック風です。

 続くSeth Walkerなるシンガーの"Travelin' Mood"は、過去2枚のアルバムに近い選曲です。
 地名を読み込んだ曲で、ニューオリンズ・ファンク風です。
 この人にアルバムがあって、こういう曲をもっとやっているのなら、少し気になります。、

 そして、ドゥービー・ブラザーズのカバーが登場します。
 Bruce Hughesもまた、私にとって初見のシンガーです。
 "Rockin' Down The Highway"は、チャイナ・グローヴとか、ロング・トレイン・カミンとかに比べるとあまり知られていない曲だと思いますが、初期ドゥービーでは、16ビート以外の良作のひとつだと思います。
 ドゥービーは、旅に関する曲を多くやっているイメージがあります。

 次はDale Watsonです。
 やっと少しは知っているシンガーが出てきました。
 でも、本コンピ・シリーズで聴いている程度です。

 Dale Watsonは、本シリーズの2枚目、"More Songs Of …"に2曲収録されていて、今回の1曲と合わせて計3曲は、本シリーズ最多収録数です。
 "White Line Fever"は、Merle Haggardのカバーで、ゆったりめのテンポで、渋くジェントルな雰囲気でやっています。
 マール・ハガードも、ホーボー・ソングをたくさん歌っているので、本コンピ向けの人ですね。
 服役経験者のハグの出世作は、逃亡者の歌でした。

 Elizabeth McQueenは、Dave Sangerのパートナーです。
 彼女は、Sangerと結婚して、Asleep At The Wheelに加入しました。
 Asleepでのベスは、ノスタルジックな曲を好んでやっていますが、加入前のアルバムで、パブ・ロック大好き女子の正体を明かしていました。

 ベスは、本盤では、NRBQの"Little Floater"をやっています。
 "Wild Weekend"収録曲ですが、必要なときに行方不明なため、ライヴ盤"Tokyo"でQバージョンを聴き返しました。
 ほとんど記憶になかった曲でしたが、こういうきっかけで気になる曲になっていくんでしょうね。
 風を切るような清々しい歌い方で、全盛期のカーリーン・カーターを可愛らしくしたような仕上がりになっています。

 過去の2枚では、制作のDave Sangerが、かなりドラムを叩いていましたが、本盤では奥さんのベスが、他の参加者の曲で、いくつかハーモニーをつけています。

 続いて、なかなか興味をひく曲、歌唱が続きます。
 ジョン・リーのロック版のような、Carolyn Wonderlandの"On The Road Again"、圧倒的に曲が存在感を主張しているTim Curryによる"Hit The Road, Jack"が耳をひきます。
 とはいえ、Tim Curryさんは、Ray好きが良く出ている好演だと思います。

 そして、Asleepのフィドラー、Jason Robertsが歌う"Truckin' Man"は、かっこいいトワンギーなロッキン・カントリーです。
 曲は、Dale Watsonの作品のようです。
 ギターは、Daleかと思いましたが、Jason Allenという人でした。
 Jason Robertsは、2枚目の"More Songs Of …"に続いて2度目の登場です。

 そして、"Willin'"を演奏するBand Of Heathensは、珍しく私がアルバムを持っているバンドです。
 これは、先の"Hit The Road, Jack"同様、曲そのものの魅力が突き抜けています。
 ですが、名曲の補正を差し引いても、とてもいい雰囲気に仕上がっています。

 本盤は、多くの方にとって、無名人ばかりのアルバムだと思います。
 過去の2枚も、私にとって当初はそうでした。
 でも、その後、2組のアーティストが、私の新たなお気に入りになりました。
 不思議なことに、両者とも、全く別のアプローチで好きになり、本シリーズのコンピでファースト・コンタクトしていたことは、後から気付いたのでした。

 過去の記事を読むと、その2組にはさほど注目していず、つくづく自分の見る目のなさ(聴く耳のなさ?)を痛感します。

 さて、本盤はどうでしょうか?



Route 66 by Bobby Troup, Nat King Cole,
Chuck Berry, Rolling Stones etc etc



Little Floater by NRBQ with Phil Woods




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