2012年08月10日
月の砂漠を行く ジョン・ブル
Wes McGheeという英国人ロッカー(?)をご存知でしょうか?
もうかなりのベテランです。
今回、03年作ではありますが、あまり見かけなかったアルバムが再発されたため、期待しつつも、あまりハードルを上げないようにしながら聴きました。
1. Endless Road (Wes McGhee)
2. Hey Hey (White Weston Boot) (Wes McGhee)
3. Johnny Gotta Run (Wes McGhee)
4. Someone to Rely On (Wes McGhee)
5. Heartache Avenue (Wes McGhee)
6. Tejano Moon (Wes McGhee)
7. Drink Your Dreams Away (Wes McGhee)
8. I Wish I Had a Dime (Wes McGhee)
9. Gimme Some O'That (Wes McGhee)
10. Angel Dressed in Black (Wes McGhee)
11. Jesus Y Maria & the Border Guitars (Wes McGhee)
12. (Here On a) Saturday Night (Wes McGhee)
13. Moon On the Brazos (Wes McGhee)
南部米国人になりたかった英国人といえば、私などはまず、クラプトンの名前が浮かびます。
表明していない人の中にも、訊ねれば「私もそうだ」と言いいそうな人は少なくない気がします。
特に、黒人ブルースマンに対する憧れが強い人はありそうですね。
しかし、今回のWes McGhee先生は、テキサンになりたかったという人で、しかも思うだけでなく、70年代末から、音はもちろんのこと、ジャケもそれ風のアルバムを創り続けてきた、英国生まれの古参テキサス・オタなのでした。
私が最初に手にしたのは、多分80年の2nd"Airmail"で、ジャケは口髭をたくわえたカウボーイ・ハットのおじさんというものでした。
若いころの録音ですが、音はコースト・カントリーなどとは一線を画した、フォーキーかつボーダー・ソング風のカントリー・ロックでした。
あるいは、85年の2枚組ライヴ盤、"Thanks For The Chicken"だったかも知れません。
こちらはライヴということもあって、オースチン発アウトロー・カントリーの流行りを意識しつつも、R&B、ロックンロール、Tex-Mexなどなどを詰めこんだ、おもちゃ箱のような楽しいアルバムでした。
もちろん、どちらもアナログLP盤の時代の話です。
ボリュームがありますが、初めて聴くならこれがいいかも知れません。
本盤は、そんなWes McGheeの、相も変わらない「継続はちから」的なアルバムです。
Wes先生は、ギター系の楽器を得意としているユーティリティ・プレイヤーで、本盤でも、スパニッシュ・ギター、バホ・セスト、バリトン・ギター(6弦ベース?)などを演奏しているほか、アコーディオンまでやっています。
バンドのサウンドとしては、フィドルは比較的多用しますが、スチール・ギターは少なめで、ホーンが入ることも多いため、そういうイメージでのカントリー臭は薄い方だと思います。
ざっくり言えばフォーキーなんでしょうが、ボーダー・ソング的な異国情緒、そして無国籍なロマンティック路線(マカロニ・ウエスタン風?)サウンドも持ち技のひとつで、その雑種性はあまり他に例をみません。
さて、本盤は英国のベドフォード録音を中心に、3曲のみテキサス録音(Spicewood, TX)を含む内容になっています。
メンツの多くは古くからの仲間たちだと思いますが、嬉しいことにFred Krcがドラムスで4曲参加しています。
Fred Krcは、Freddie "Steady" Krcのステージ・ネームを持つ、テキサスのシンガー、ドラマーです。
Freddie Steady 5、Freddie Steady's Wild Countryという、二つのバンドのリーダーで、私は、英国60sビート好きのテキサンだという印象を持っています。
テキサス好きの英国人と英国ビート・バンド好きのテキサンという取り合わせは愉快です。
Fred Krcは、自らのバンドが軌道に乗る前、Wes McGheeのバンドでドラムを叩いていた人で、先に触れたライヴ盤などで彼のドラムが聴けます。
この二人の関係は現在も続いていて、お互いのバンドに、しばしばゲスト参加(その多くは全面参加)しています。
本盤でのFredは、テキサス録音のみに参加かと思いましたが、ばっちり英国録音にも参加していて、絆の深さを感じます。
さすがに、Freddie Steady 5のメンバーは誘わなかったようです。
そして、3曲のテキサス録音のうち、"Heartache Avenue"という曲にのみ、ベースでLarry Langeなる人物が参加しています。
この人もまた、Fred Krcと同時期にWes McGheeのバンドに参加していた人で、私は、サンアントニオのSwamp Pop、Tex-Mex大好きバンド、Larry Lange & his Lonely Knightsのリーダーその人ではないかと、以前に当ブログに書いてはしゃいだことがありました。
書いてから、ウラをとらないまま書いちゃったと思いましたが、同姓同名の別人という可能性も否定できないながら、担当楽器まで同じなのです。
(状況証拠ばかりですが、アルバムでFreddie Krcの曲もカバーしています。)
Larry langeもまた、単独で参加したようです。
Lonely Knightsのメンツが同道していれば確定なんですが…。
サンアントニオとスパイスウッドって、どれくらい距離があるんでしょう?
テキサスの広さって、日本人にはイメージがわかないです。
さて、色々な味わいを楽しめるのがWesの音楽です。
今回は、その一端を紹介するため、次の5曲について触れます。
1. Endless Road
2. Hey Hey (White Weston Boot)
4. Someone to Rely On
6. Tejano Moon
12. (Here On a) Saturday Night
"Endless Road"は、オープニングの曲ということで、明るく爽やかな曲を持ってきています。
カントリー・ロックなんでしょうが、歌声がフォーキーで、少しトーキング風な歌い回しが渋くて魅力的です。
メロディックなベース、きれいなマンドリンの響き、Wes自身が弾くギターの爽やかなフレーズなど、高く豊かな音楽性を印象づける1曲目に仕上がっています。
"Hey Hey (White Weston Boot)"は、コンフント・スタイルでやった楽しさ満点の曲で、Wesの弾くバホ・セストのリズムが耳に残ります。
アコーディオン、フィドルの流麗な演奏が、パーティ・ソングらしい雰囲気を盛り上げる中、Wes得意のスパニッシュ・ギターのオブリ、短い間奏のソロが効いています。
Wes流のTex-Mexです。
"Someone to Rely On"は、スタックスを連想させるサウンドで、ベース主導のイントロからスタートします。
そこへカットインしてくるクリアなトーンのギターが、まるでクロッパーみたいで好きです。
"Tejano Moon"は、ロマンチックなバラードで、美しいメキシカン・トラッペットの響きの中、静かに進行します。
私は、夜の砂漠を行く、そんなイメージで聴きました。
巻き弦中心にトワンギーな音色を奏でる単弦メロ弾きが、Wesの真骨頂という感じです。
"(Here On a) Saturday Night"は、アルバムも終盤になって、なんと疾走系のロックンロールを披露してきます。
80sアメロク風のサウンドで、ボブ・シーガーばりに爽快に飛ばすWesは、それまでのイメージとずれがありますが、「この程度は若いころやり尽くしたけど、今だって簡単にできるんだぜ」…そんな風な言葉を脳内再生してしまいました。
なにが(どの路線が)メインなのか、分かりづらい人ではあります。
でも、カオスな趣味嗜好大好きな私としては、長く音楽活動を続けて、時折りは驚かせてほしい、そんな風に思うのでした。
関連記事はこちら
Wes McGhee
翼よ あれがテキサスの灯だ
Freddie Steady Krc
時間に忘れられたロックンロール
Larry Lange & his Lonely Knights
コンタクト落とした !
ハイウェイ90サウンドに酔いしれて
ようこそ、イヴァンジェリン・カフェへ
チカーノ魂の片りんを見ました
もうかなりのベテランです。
今回、03年作ではありますが、あまり見かけなかったアルバムが再発されたため、期待しつつも、あまりハードルを上げないようにしながら聴きました。
Mexico
Wes McGhee
Wes McGhee
1. Endless Road (Wes McGhee)
2. Hey Hey (White Weston Boot) (Wes McGhee)
3. Johnny Gotta Run (Wes McGhee)
4. Someone to Rely On (Wes McGhee)
5. Heartache Avenue (Wes McGhee)
6. Tejano Moon (Wes McGhee)
7. Drink Your Dreams Away (Wes McGhee)
8. I Wish I Had a Dime (Wes McGhee)
9. Gimme Some O'That (Wes McGhee)
10. Angel Dressed in Black (Wes McGhee)
11. Jesus Y Maria & the Border Guitars (Wes McGhee)
12. (Here On a) Saturday Night (Wes McGhee)
13. Moon On the Brazos (Wes McGhee)
南部米国人になりたかった英国人といえば、私などはまず、クラプトンの名前が浮かびます。
表明していない人の中にも、訊ねれば「私もそうだ」と言いいそうな人は少なくない気がします。
特に、黒人ブルースマンに対する憧れが強い人はありそうですね。
しかし、今回のWes McGhee先生は、テキサンになりたかったという人で、しかも思うだけでなく、70年代末から、音はもちろんのこと、ジャケもそれ風のアルバムを創り続けてきた、英国生まれの古参テキサス・オタなのでした。
私が最初に手にしたのは、多分80年の2nd"Airmail"で、ジャケは口髭をたくわえたカウボーイ・ハットのおじさんというものでした。
若いころの録音ですが、音はコースト・カントリーなどとは一線を画した、フォーキーかつボーダー・ソング風のカントリー・ロックでした。
あるいは、85年の2枚組ライヴ盤、"Thanks For The Chicken"だったかも知れません。
こちらはライヴということもあって、オースチン発アウトロー・カントリーの流行りを意識しつつも、R&B、ロックンロール、Tex-Mexなどなどを詰めこんだ、おもちゃ箱のような楽しいアルバムでした。
もちろん、どちらもアナログLP盤の時代の話です。
ボリュームがありますが、初めて聴くならこれがいいかも知れません。
本盤は、そんなWes McGheeの、相も変わらない「継続はちから」的なアルバムです。
Wes先生は、ギター系の楽器を得意としているユーティリティ・プレイヤーで、本盤でも、スパニッシュ・ギター、バホ・セスト、バリトン・ギター(6弦ベース?)などを演奏しているほか、アコーディオンまでやっています。
バンドのサウンドとしては、フィドルは比較的多用しますが、スチール・ギターは少なめで、ホーンが入ることも多いため、そういうイメージでのカントリー臭は薄い方だと思います。
ざっくり言えばフォーキーなんでしょうが、ボーダー・ソング的な異国情緒、そして無国籍なロマンティック路線(マカロニ・ウエスタン風?)サウンドも持ち技のひとつで、その雑種性はあまり他に例をみません。
さて、本盤は英国のベドフォード録音を中心に、3曲のみテキサス録音(Spicewood, TX)を含む内容になっています。
メンツの多くは古くからの仲間たちだと思いますが、嬉しいことにFred Krcがドラムスで4曲参加しています。
Fred Krcは、Freddie "Steady" Krcのステージ・ネームを持つ、テキサスのシンガー、ドラマーです。
Freddie Steady 5、Freddie Steady's Wild Countryという、二つのバンドのリーダーで、私は、英国60sビート好きのテキサンだという印象を持っています。
テキサス好きの英国人と英国ビート・バンド好きのテキサンという取り合わせは愉快です。
Fred Krcは、自らのバンドが軌道に乗る前、Wes McGheeのバンドでドラムを叩いていた人で、先に触れたライヴ盤などで彼のドラムが聴けます。
この二人の関係は現在も続いていて、お互いのバンドに、しばしばゲスト参加(その多くは全面参加)しています。
本盤でのFredは、テキサス録音のみに参加かと思いましたが、ばっちり英国録音にも参加していて、絆の深さを感じます。
さすがに、Freddie Steady 5のメンバーは誘わなかったようです。
そして、3曲のテキサス録音のうち、"Heartache Avenue"という曲にのみ、ベースでLarry Langeなる人物が参加しています。
この人もまた、Fred Krcと同時期にWes McGheeのバンドに参加していた人で、私は、サンアントニオのSwamp Pop、Tex-Mex大好きバンド、Larry Lange & his Lonely Knightsのリーダーその人ではないかと、以前に当ブログに書いてはしゃいだことがありました。
書いてから、ウラをとらないまま書いちゃったと思いましたが、同姓同名の別人という可能性も否定できないながら、担当楽器まで同じなのです。
(状況証拠ばかりですが、アルバムでFreddie Krcの曲もカバーしています。)
Larry langeもまた、単独で参加したようです。
Lonely Knightsのメンツが同道していれば確定なんですが…。
サンアントニオとスパイスウッドって、どれくらい距離があるんでしょう?
テキサスの広さって、日本人にはイメージがわかないです。
さて、色々な味わいを楽しめるのがWesの音楽です。
今回は、その一端を紹介するため、次の5曲について触れます。
1. Endless Road
2. Hey Hey (White Weston Boot)
4. Someone to Rely On
6. Tejano Moon
12. (Here On a) Saturday Night
"Endless Road"は、オープニングの曲ということで、明るく爽やかな曲を持ってきています。
カントリー・ロックなんでしょうが、歌声がフォーキーで、少しトーキング風な歌い回しが渋くて魅力的です。
メロディックなベース、きれいなマンドリンの響き、Wes自身が弾くギターの爽やかなフレーズなど、高く豊かな音楽性を印象づける1曲目に仕上がっています。
"Hey Hey (White Weston Boot)"は、コンフント・スタイルでやった楽しさ満点の曲で、Wesの弾くバホ・セストのリズムが耳に残ります。
アコーディオン、フィドルの流麗な演奏が、パーティ・ソングらしい雰囲気を盛り上げる中、Wes得意のスパニッシュ・ギターのオブリ、短い間奏のソロが効いています。
Wes流のTex-Mexです。
"Someone to Rely On"は、スタックスを連想させるサウンドで、ベース主導のイントロからスタートします。
そこへカットインしてくるクリアなトーンのギターが、まるでクロッパーみたいで好きです。
"Tejano Moon"は、ロマンチックなバラードで、美しいメキシカン・トラッペットの響きの中、静かに進行します。
私は、夜の砂漠を行く、そんなイメージで聴きました。
巻き弦中心にトワンギーな音色を奏でる単弦メロ弾きが、Wesの真骨頂という感じです。
"(Here On a) Saturday Night"は、アルバムも終盤になって、なんと疾走系のロックンロールを披露してきます。
80sアメロク風のサウンドで、ボブ・シーガーばりに爽快に飛ばすWesは、それまでのイメージとずれがありますが、「この程度は若いころやり尽くしたけど、今だって簡単にできるんだぜ」…そんな風な言葉を脳内再生してしまいました。
なにが(どの路線が)メインなのか、分かりづらい人ではあります。
でも、カオスな趣味嗜好大好きな私としては、長く音楽活動を続けて、時折りは驚かせてほしい、そんな風に思うのでした。
Soy Extranjero by Wes McGhee
87年のロンドン公演、ドラムはFred Krc
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