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ストックホルムの贈り物

 北欧よ 白夜の国よ ありがとう
 ストックホルム、イエテボリ、マルメ、全ての美しいスウェーデンの街々を統べる神々よ
 今宵 サンアントニオ・レコードの製作スタッフに祝福を

 私は、あなたがたの素晴らしい仕事を 心から支持します。

 日の没さない国から 日出処の国へ届いた素晴らしい便り
 月の光のもと 贈り物を開き、震える手でディスクをセットすると 
 全能の魔神が現れて 私の願いを聞き入れてくれるのでした。

  (至福の時間) 

 そして…
 全私が泣きました 歓喜の涙です。

 1997年8月のストックホルム
 Doug Sahmの完全未発表ライヴ音源がCDリリースされたのです。


 
Live In Stockholm
Doug Sahm
Last Real Texas Blues Band

1. Farmer John (Don Harris, Dewey Terry)
2. Talk To Me (Joe Seneca)
3. Nitty Gritty (Doug Sahm)
4. Nuevo Laredo (Doug Sahm)
5. Dealer's Blues (Doug Sahm)
6. Bad Boy (Lilian Armstrong, Avon Long)
7. (Is Anybody Goin' To) San Antone (Dave Kirby, Glen Martin)
8. Pick Me Up On Your Way Down (Harlan Howard)
9. Adios Mexico (Doug Sahm)
10. (Hey Baby) Que Paso (Augie Meyers, Bill Sheffield)
11. Wasted Days & Wasted Nights (Freddy Fender, Wayne Duncan)
12. She's About A Mover (Doug Sahm)
13. Mendocino / Dynamite Woman (Doug Sahm)
14. Meet Me In Stockholm (Doug Sahm)
15. Treat Her Right (Roy Head, Gene Kurtz) 

 本盤は、スウェーデンのSan Antonio Recordsからリリースされました。
 私が入手したショップのインフォによれば、12年8月13日発売となっています。

 レーベルは、Soundcarrier / Gazell、番号はDOUGALIVE1です。
 Doug Alive 「ダグは生きている」ということでしょうか。
 いかにもブートっぽい番号ですが、ディスク、パッケージの作りともに、オフィシャルといっていいレベルです。

 単に大手からの販路がないだけで正規盤なんでしょうか。
 当初は、スウェーデンを中心にEU圏内の一部のショップのみで流通していたようです。
 
 それが、最近、各国アマゾンでも予約が開始されました。
 (MP3ダウンロード・アルバムは、8月11日から先行販売されていたようです。)

 本邦アマゾンのカタログ情報によれば、入荷するのはUS盤で、レーベルはGazellとなっています。
 (もしかすると、US盤と読むのではなく、単にアメリカから輸入という意味かも知れません。)

 パッケージは、三つ折りを畳んだデジパックで、中には署名のないライナーが掲載されています。
 ライナーは、音源の編集(長すぎるMCをカットした等の記述がある)に関することに加え、まるで当時現場にいたかのような、コンサート・レポ風の文章になっています。
 録音者とクレジットされている、Ad Koekkoekなる人物の文章なのかも知れません。

 以下は、ライナーの記述を参考に、私の感想をまじえてご紹介します。

 録音は、97年8月11日、ストックホルムのどこか、場所は明記されていません。
 MCは一部カットしたとありますが、コンサートのセットリストは完全に収録したと誇らしげにライナー氏が書いています。
 (収録時間は68分です。)

 ただし、最後のトラック15のみ、97年8月2日のベルギー、ローケレン(Lokeren)という街のどこかでの演奏となっています。

 当夜の参加メンバーは、以下の通りです。

Doug Sahm : guitar, lead vocals
Shawn Sahm : guitar, vocals
Jack Barber : bass
Fran Christina :drums
Al Gomez : trumpet
Rocky Morales : tenor saxophone
Arturo "Sauce" Gonzales : keyboads
Janne Lindgren : steel guitar

 既発のアントンズでのライヴ盤と比べると、基本的なメンツの揃え方は同じですが、北欧公演ということもあり、同行者は一部違っています。
 基本は、Augie Meyersが不参加ということで、それはアントンズ盤と変わりません。
 (アントンズ盤は、曲によって一部メンツにばらつきがあり、全て同一日ではなく、複数の公演の演奏が混ざっているのではと想像します。)

 オーギーがいれば、お呼びがかからなかったと思われる鍵盤奏者は、アントンズ盤と同じく、アルツロ・ソース(愛称)・ゴンザレスです。
 ソース・ゴンザレスは、ダグとは70年代からの付き合いで、タグの没後、ウエストサイド・ホーンズのリズム隊の一員となり、Rocky Moralesとともに、バンド・リーダー的な存在となった人です。
 (最近は、健康不安が伝えられています。) 

 そして、ドラムスは、Fabulous Thunderbirdsのフラン・クリスティーナです。
 この人は、テキサスの一流どころのセッションに多数参加していて、T-Birds以外では、Stevie Ray Vaughn、Jimmie Vaughn、Marcia Ballらのレコーディング、そして系統の違うところでは、Asleep At The Wheelとのセッション(79年"Served Live"、80年"Framed")にも参加しています。
 ダグとの共演は、ソフト化されたものでは、初めてかも知れません。
 ちなみに、アントンズ盤のドラムスは、George Rainsでした。

 ベースのJack barber、トランペットのAl Gomez、サックスのRocky Moralesは、アントンズ盤と同じです。
 ダグとの付き合いの長さでは、Rocky、Jack、Alの順でしょうか。

 そして、Dougの息子、Shawn Sahmがギターで参加しています。
 この人は、リード・ギターも弾く人ですが、80年代初めの、Sir Douglas QuintetのAustin City Limitsのライヴでは、まだリードの大半は親父のDougが弾いていました。
 しかし、本盤のライナー氏によれば、Dougは主にサイドを担当し、多くの曲でShawnがソロを弾いたとしています。
 また、多くの曲でコーラスをつけています。


Shawn Sahm


 ちなみに、アントンズ盤では、Derek O'BrienとDenny Freemanがギターで参加していました。
 Derek O'Brienは、Texas TornadosのAustin City Limitsにゲスト参加して、要所でソロを弾いている人です。
 一方、Denny Freemanは、ソロのギター・インスト・アルバムを2枚も出している人ですが、Derekと共演したアントンズ盤では、Dennyがサイドに回っていました。

 スチール・ギターのJanne Lindgrenは、おそらく唯一現地のアーティストではないかと思います。

 さて、本盤でのLast Real Texas Blues Bandは、アントンズ盤とは少し演奏の色合いが違います。
 基本のメンバー構成は同じにもかかわらず、セットリストを変えたため、結果として、とても興味深い演奏となっているのです。

 アントンズでは、ブルース、リズム&ブルースなどに特化したセトリでした。
 しかし、このストックホルム公演では、それに加え、アントンズではやらなかった、テックス・メックス、カントリーなどをやっています。
 このため、ゲストにスチール・ギターリストこそ迎えてはいますが、本来ならまだ足りません。
 オリジナルでは、フィドルやアコーディオンをフューチャーしていた曲を、ラップ・スチール、キーボード、ギターが代替しているのです。
 これが本盤を大変興味深く、希少なものにしています。

 まず、最初に結論めいたことを書かせてください。
 本盤に収められた演奏は、単に珍しいだけでなく、素晴らしい内容だと思います。
 録音の出力レベルが若干低いようですが、バランスは一定ですので問題ありません。
 少し音量を上げて聴き、別のディスクに替えるとき、元に戻してください。

 公演全体を通して、Doug Sahmの歌唱、バンドのパフォーマンスともに素晴らしいです。
 そして、曲間のDougの早口のしゃべりが絶好調で、これでもカットしたのなら、元は凄い量なんだろうなあ、と推察します。
 この2年後に急逝してしまうなんて、当日居合わせた幸福な人は、信じられない気持ちで当時の想い出を振り返ったことでしょう。

 
 コンサートは、ドン&デューイの"Farmer John"のカバーで始まります。
 この曲は、従来からレパートリーだったのでしょうか?
 少なくとも、ソフト化されたものでは、初お目見えの曲だと思います。

 チカーノの間では、オリジナルよりも、イーストL.A.のガレージ・バンド、The Premiersのバージョンで親しまれている曲だと思います。
 The Premiers盤は、イーストL.A.のR&Rコンピの常連曲です。
 (私の場合は、初めて聴いたサーチャーズ盤が最も思い入れがあります。)
 冒頭、楽器がハウンリングしているハプニングが、そのまま記録されています。
 初めて聴くDougのバージョンが、ただただ新鮮で(ファンとして)感激するばかりです。
 素晴らしいホーンのリフをぬって、ショーンが、ジミー・ヴォーンばりのコンパクトかつブルージーなソロを弾いています。(2ndソロはDougかも?)

 続いて"Talk To Me"の前奏からブレイクして、Dougが「サニー・オズナ・ビューティフル・ソング…○△○△…リトル・ウイリー・ジョン…」と早口で呟いています。
 ここだけに限らず、本盤はDougのMCがたっぷり記録されているので、英語の聞き取りが得意な方がうらやましいです。
 (多分、たいしたことは言ってないと思いますが、ファンは些細なことも知りたいものです。)
 間奏で、ロッキーの素晴らしいテナー・ソロが聴けます。
 ソースのオルガンは、教会風でブッカーTみたいにも聴こえます。


Doug and Shawn


 "Nitty Gritty"は、アトランティックの2枚目で発表した、Dougのオリジナルです。
 ここでは、「ジェリー・ウェクスラーがどうたら、ディランが何とか…」と言っています。
 ギターのカッティングと、ホーン陣の演奏が特に印象に残る、素晴らしい出来です。
 曲の最後に、Dougが「テックス・メックス・レゲエ! ンガッ ンガッ ンガッ」と叫んでいます。
 私には、レゲエというより、フォーク・ダンス曲に聴こえます。
 明るく楽しい仕上がりです。

 "Nuevo Laredo"は、何といってもイントロが印象的な曲です。
 前奏のトレモロ・ギターから、メキシカン・トランペットのロング・トーンへ続く流れが、いつ聴いても良いです。
 全体を通して、アル・ゴメスのペット、そしてソース・ゴンザレスのオルガンのプレイが頑張っています。
 ソースの演奏が、オーギーの「ピーピー」サウンドとの違いをはっきりと気付かせてくれる曲です。

 "Dealer's Blues"、この選曲は珍しいです。
 そして、うれしいです。
 名盤、"Doug Sahm and Band"の収録曲ですが、この曲のライヴ音源は初めて聴きました。
 ここでも、Dougが「ジェリー・ウェクスラーうんぬん…」と何か言っているようです。
 ブルージーなギターは、Doug自身のような気がします。
 ここでも、ロッキーの素晴らしいソロを聴くことが出来ます。

 "Bad Boy"は、アントンズでもやっていましたが、私はまだ原曲をきいたことがありません。
 もちろん、ビートルズが有名にした、「近所に悪がきが引っ越してきた」で始まるLarry Williamsの曲ではありません。
 オリジナルは、Lil' Hardin Armstrong & Her Swing Orchestraの36年盤だそうです。
 そして、リル・ハーディン・アームストロングは、サッチモの2番目の奥さんで、彼女自身が、シンガー、ピアニスト、作曲家、バンドリーダーらしいです。
 原曲は、きっとビッグ・バンドのスイング・ジャズなんだろうと想像しますが、ここでのDoug版は、ナイト・ミュージック風のスタイリッシュかつ、おしゃれなスタイルでやっていて、「ボンヨンヨヨヨヨン…」というコーラス・フレーズを、観客にも一緒に歌うよう促します。
 観客の一人(?)が律儀に応えている声が聴こえます。

 "(Is Anybody Goin' To) San Antone"は、あまりにも有名なDougのレパートリーです。
 オリジナルは、黒人カントリー・シンガーのCharlie PrideのNo.1ヒットです。
 ところが、本盤の曲クレジットの記述によれば、70年のBake Turner盤がオリジナルとしています。
 Wikiをチェックしたところ、やはり70年のチャーリー盤がオリジナルと記述されていました。
 ただ、Wikiには、Bake Tutnerの名前こそ記載されていませんが、スウェーデン語盤の作詞家に関する記述があり、どうやらスウェーデン語の歌詞のローカル・ヒットがあるようです。 
 この曲では、スチール・ギターが大きくフューチャーされ、前奏からラストまで、フィドルのパートを代わって担当しています。

 "Pick Me Up On Your Way Down"は、ホンキートンク・カントリーのカバーです。
 多くの人がやっている、ハーラン・ハワードの作品です。
 オリジナルは、58年のWebb Pierce盤でしょうか。
 でも、Dougは、Charlie Walkerの名前を出しているので、そっちがお手本かも知れません。
 この曲は、ゲストのスチール・ギターリストに配慮した選曲のような気もします。
 有名カバーでは、Hank Thompsonのウエスタン・スイング盤、Buck Owensのコースト・カントリー盤があります。
 ヒットはしていないと思いますが、カントリー・ロックでは、ブリトーズもやっていた曲です。

 "Adios Mexico"は、82年の"Quintessence"初出のDougの自作曲です。
 Texas Tornadosのメンツでも、新たに録音しています。
 この曲あたりになると、Dougのボルテージがかなり上がっていて、間奏のソロ回しの際、いつものクセで、思わず「フラコ!」と呼びかけてしまっています。
 そしてさらに、ソースのオルガン・ソロの前には、何と「オーギー、オーギー、オーギー」と3回も連呼しています。
 フラコのアコーディオン・ソロは、(ライナーによれば)ショーンがギターで代替しています。
 ここは、他では聴けない演奏でしよう。


Arturo "Sauce" Gonzales

 "(Hey Baby) Que Paso"は、オーギーの自作の代表曲のひとつです。
 多くのテキサスの若手シンガーがカバーしているニュー・スタンダードです。
 ここでは、当然とはいえ、Dougのリード・ボーカルが聴けます。
 オーギー抜きの編成はこのバンドくらいなので、希少かつ貴重なパフォーマンスです。
 ソースのオルガンが、これまたオーギーとは一味違う個性を発揮しています。
 Texas TornadosのAustin City Limitsの映像を見ると、この曲では、オーギーがアコーディオンを弾きながらリード・ボーカルをとり、Dougがオルガンを弾いていました。
 本盤では、バホ・セストっぽいストローク・パターンやベース・ランが聴こえますので、Dougが楽器を持ち替えたか、エレキのまま抑え目にそれ風のプレイをしたのだと思います。
 サビではブレイクを入れて、観客に「ヘイ、ベイビー、ケパソ」と歌わせています。

 "Wasted Days & Wasted Nights"は、何度やったかわからない曲でしょう。
 ここでは、ソースがピアノで三連のリズムを弾いています。(多分)
 やはり、ロッキーのテナー・ソロが最高です。

 "She's About A Mover"は、オーギー不在を思い出させてくれる曲です。
 この曲では、さすがに、ソースがオーギーのメイン・リフをコピーしています。
 ときおり入れるオブリは、ソースの個性が出ていて、別の彩りを添えています。
 ライナー氏によれば、ギター・ソロはショーンで、親父さんはサイドに回ったということです。

 次は、"Mendocino / Dynamite Woman"のメドレーです。
 この2曲をセットでやるのは、83年のTakomaのライヴ盤、"Live Texas Tornado"時代からのお約束です。
 ここも、ライナー氏によれば、ソロはショーンだということです。
 私は、この2曲では、ヒットした"Mendocino"より、"Dynamite Woman"の方が好きでした。
 でも、このライヴ音源はどちらも素晴らしい出来です。
 "Mendocino"のカバーでは、ウィルコ・ジョンソン盤が可愛らしい(?)珍品です。

 "Meet Me In Stockholm"は、まさにスウェーデンのファンに対する感謝状のような曲でしょう。
 メジャーとの契約が終わり、ヨーロッパの独立レーベルに活動の拠点を移したころのDougは、マニアックなのにポップという、絶妙のバランスで自由なアルバムづくりを行い、傑作を連発しました。
 おそらくは、自らを受け入れて歓迎してくれた、北欧に強い思い入れがあるのではと思います。

 当時の彼の心境は、この曲以外でも、"Train To Trondheim"、"No Way Like Norway"、"Ballad of the Wasa"、"Viking Girl"などの曲に込められているのではないかと思います。
 同じ頃、"Can't Go Back to Austin"なんて曲も歌っていました。
 Dougは、曲の初めに「グレイト・メモリーズ、ラースに捧げる」みたいなことを言っています。
 北欧での友人(もしや、ヴァイキング・ガールの名前?)でしょうか?

 最後は、"Treat Her Right"です。
 この曲のみ、別の日(8月2日)別会場(ベルギー)での演奏とクレジットされています。
 特徴のあるイントロが流れた段階でわくわくします。
 Roy Headは、Dougのアイドルの一人だと思われ、シングルをプロデュースしたこともあります。
 (マーキュリーのコンプリート・ボックスに収録)
 ここでは、なぜかロッキーが蒸気船の汽笛のような音を数回吹いて、メンバーが、すわハウリングかと驚いているような、そんなハプニングが記録されています。


Fran Christina


 いやー、良かったです。
 堪能しました。
 Doug人脈の常連はもちろん、フランもソースも素晴らしかったです。
 San Antonio Recordsのスタッフさん、感謝の言葉しかないです。
 ぜひ、あなた方をミスター・ムーンライトと呼ばせてください。 

 ある夏の夜 あなたはやってきて 私に幸福の魔法をかけてくれた
 ぼくらは あなたを愛しています
 もう一度 戻ってきてほしい

 そして、できるものなら、今後もDoug Sahmの貴重な音源を発掘してほしいです。




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