2012年08月28日
オールドウェイヴ ボーダーウェイヴ
Sir Douglas Quintetが、80年代初期に所属していたTakama Records時代のスタジオ盤、"Border Wave"がCDリリースされました。
私の知る限りでは、オリジナル仕様でのCD化は初めてだと思います。
意外な気もしますよね。
Doug Sahmで、CD化の遅れというと、この少し後のSonet時代が(ファンの間では)長年の懸案です。
(近年になって、スウェーデン盤で、いくつか編集盤が出ました。)
でも、Takoma音源は、何となく、とっくにソフト化されたような印象を持ってしまいがちです。
Doug Sahmの他のTakoma音源はCD化済でしたが、実は本盤は(多分、おそらく、きっと)初CDなのでした。
1. Who'll Be the Next in Line (Ray Davies)
2. It Was Fun While It Lasted (Doug Sahm)
3. Down on the Border (Doug Sahm)
4. I Keep Wishing for You (Butch Hancock)
5. Revolutionary Ways (Doug Sahm)
6. Old Habits Die Hard (Doug Sahm)
7. You're Gonna Miss Me (Roky Rrickson)
8. Sheila Tequila (Doug Sahm)
9. Tonite, Tonite (Alvin Crow)
10. Border Wave (Doug Sahm)
Doug SahmのTakama音源のディスコグラフィーは以下のとおりです。
LP
80年 Hell Of A Spell : Doug Sahm (TAK 7075) ソロ名義第一作
81年 The Beat Of Sir Douglas Quintet : Sir Douglas Quintet (TAK 7086) 既発曲の新録音ベスト
81年 Border Wave : Sir Douglas Quintet (TAK 7088) 本盤のオリジナル・アナログ盤
83年 Live Texas Tornado : Sir Douglas Quintet (TAK 7095) オースティンとL.A.でのライヴが混在
86年 The Collection : Sir Douglas Quintet (英Castle CCSLP-133) 2枚組(TAK 7086+TAK 7088)
CD
86年 The Collection : Sir Douglas Quintet (英Castle CCSCD 133)1枚もの(TAK 7086+TAK 7088のB面)
86年 Live Texas Tornado : Sir Douglas Quintet (TAKCD 7095)
87年 The Beat Of Sir Douglas Quintet : Sir Douglas Quintet (TAKAMA CDP-72786)
98年 Live Texas Tornado : Sir Douglas Quintet (Fantasy/CDTAK 6505)(ジャケ違い)
99年 Hell Of A Spell : Doug Sahm (Fantasy/TAKCD 6507-2)
再発ものは、最初にリリースされた、代表的なもののみ記載しました。
Takama時代は、Doug Sahmが、マーキュリー(69-73)でのサンフランシスコ時代を経て、アトランティック(73)で傑作を出しながらもセールスにつながらず、その後ワーナーで1枚、ABCで1枚を出したあと、次第にメジャー・レーベルから離れていった時期です。
この頃、地元のAugieのレーベルからひっそり出していたアルバムを、スウェーデンのSonetから再発して、北欧とのつながりを深めています。
そして、Takamaを離れたあとは、本格的にスウェーデンへと活動の拠点を広げ、Sonetから新作をリリースするようになります。
本盤は、81年にオリジナルのLPが出されました。
そして、86年には英Castleから、Takoma製ベスト盤(TAK 7086)とのカップリングで、2枚組LPが作られます。
この時の2枚組は、AD面がTakama製ベスト、BC面が"Border Wave"という、変則的な構成になっていました。
同じ年に出された同名のCDは、(まだ2枚組CDが珍しかったのでしょうか)2枚組LPをベースに、"Border Wave"のA面5曲をオミットした形で、1枚物のCDにまとめられました。
これが、"Border Wave"の音源(の一部)を初めて使ったCDです。
(なお、近年、スウェーデン発の編集盤CDに一部の曲が収録されました。)
以降、私の知る範囲では、今回が、初めてオリジナル仕様でのCD化だと思います。
さて、本盤でのSir Douglas Quintetのサウンドは、他の時期とは何となく違う雰囲気があります。
ロック・コンボ的な側面を強く感じるサウンドで、曲によっては、Joe King Carrascoの初期を連想させるところもあります。
最大の特徴は、サイド・ギターのAlvin Crowの存在でしょう。
この人は、Doug Sahmの歴代サイドメンの中でも、特に個性的な一人だと思います。
本盤でのメンツは以下のとおりです。
Doug Sahm : lead vocals, guitar
Augie Meyers : organ
Alvin Crow : vocals, guitar
Johnny Perez : drums
Speedy Sparks : bass
add.
Shawn Sham : vocals, guitar
従来のQuintetは、パーソナルなサイド・ギターが決まっていませんでした。
ギターは、Dougの1本だけのときが多く、時に応じてゲストが補助したりしていました。
Alvinによってサイド・ギターの固定化が確立し、その後ゆっくりとLouie Ortegaへの交代が行われていきます。
Alvinのメイン楽器はフィドルだと思いますが、本盤では一貫してギターを弾いています。
そして、ボーカリストでもあり、メインで歌う出番もあるほか、多くの曲でハーモニーをつけています。
実は、ウエスタン・スイング大好きという人なのですが、この頃は、しばしば初期のバディ・ホリーっぽいヒーカップを披露したりと、ロカビリー寄りの印象を受けます。
Alvin CrowのQuintetでの在籍期間は、正確には分かりません。
スタジオ盤への参加としては、本盤ないしは、同81年発売の"The Best Of Sir Douglas Quintet"からだと思います。
それでは、バンドを離れたのはいつ頃でしよう。
多分、Dougが北欧を活動の拠点にしだした頃から行動を別にして、オースティンに留まったのではないかと思います。
ただ、86年リリースの覆面バンド、Texas Mavericksの"Who Are These Masked Men?"では、Rockin' Leonの変名で参加して、ギターをを弾きました。
この時は、相変わらずの、バディ・ホリー風の唱法で、Johnny Cashの"Rock'n'Roll Ruby"を派手に決めて、ぶれない姿勢を見せています。
(ちなみに、Texas Mavericksのリード・ギター、Johnny Xの正体は、Louie Ortegaではなく、元Freda & The FiredogsのJohn X. Reedです。この時は、珍しくも、ギター3本体制だったのでした。)
さて、本盤のもうひとつの特徴は、ホーンレスだということです。
Doug Sahmは、10代のころから、ホーンをバックにした録音を数多く行ってきました。
Tribe時代のSir Douglas Quintetの頃から、それは自然に寄りそっていたのです
初期Quintetのホーンは、テナー・サックスのFrank Morinで、彼はマーキュリー時代の終わり(70年頃)まで、Doug Sahmと密な関係を続けていました。
Frank Morin(ts)の後は、お馴染みのRocky Morales(ts)、Louie Bostos(ts)、Charlie McBurney(tp)、Al Gomez(tp)らが頻繁に参加するようになりますが、中でもホーン一人体制の場合は、Rocky Moralesの参加率がダントツです。
リズム・ギターのAlvin Crowの個性、そしてホーンレス、これこそが本盤を他のアルバムとは印象の違う存在にしている要因だと思います。
アルバムは、Ray Daviesの作品、Kinksの"Who'll Be the Next in Line"の力強いカバーで始まります。
これがまた、特異な例で、Doug Sahmがブリティッシュ・ロックのカバーをやるのは非常にまれなことです。
他には、プロコム・ハルムの"Whiter Shade Of Pale"(青い影)くらいしか思いつきません。
選曲の面でも、珍しいアルバムだったわけです。
ホーンがないだけでなく、(Alvin Crowが参加しているにも関わらず)カントリー系の曲がないのも特徴です。
さて、本盤のメンツの動く姿を見ることが出来るライヴ映像があります。
CD、DVDともに出でいる、"Live From Austin TX"のSir Douglas Quintet盤です。
(これは、TV番組のAustin City Limitsの81年収録の映像で、Doug Sahmは、ファンにとって幸せなことに、ソロ名義(70年代)、Quintet名義(80年代)、Texas Tornados名義(90年代)と、3つの異なった時代がソフト化されています。)
映像を見ると、音だけでは気付かない、興味深い要素をいくつも発見します。
本盤の収録曲のうち、Austin City Limitsでやっているのは、次の6曲です。
(曲の並びは、ACLのセトリ順)
Down On The Border
I Keep Wishing For You
Who'll Be The Next In Line
Tonite, Tonite
Old Habits Die Hard
You're Gonna Miss Me
これらの映像を見てから、再度本アルバムを聴き返すと、さらに楽しいです。
まず、映像のAlvin Crowが若いです。
Aivinのギターは、シングル・カッタウェイのセミアコ(グレッチ?)で、基本的にサイドのみのプレイです。
そして、多くの曲でコーラスをつけています。
Doug Sahmはテレキャスター、Shawn Sahm(Dougの息子)はレスポールです。
Shawnは、ACLのセットリスト全17曲の内、7曲(上記6曲+1曲)に参加しています。
全体的にレイドバックした雰囲気の曲が少なく、元気な曲、グルーヴィーな曲が多いです。
Alvinの作品で、自身がリード・ボーカルを務める"Tonite, Tonite"は、やはりヒーカップ調、かつガッツ溢れる歌声で、元気一杯にかっ飛ばすファスト・ナンバーです。
間奏のギター・ソロは、Dougです。
Dougのオリジナルも、力強く躍動感のあるサウンドがほとんどで、若きAlvinの存在が、知らずのうちにバンド全体に影響を与えている気がします。
(…近年のAlvin Crowは、二倍くらいの恰幅のいい体型になり、ゆったりとホンキートンクしています。)
そんな中、フォーキーな"I Keep Wishing For You"が目立ちます。
この曲は、(元)FlatlandersのButch Hancockの作品で、私は本人盤は未聴ですが、おそらく原曲は、ディランみたいなぶっきら棒なスタイルではないかと想像します。
本盤では、Dougの手によってメロディの輪郭が明確にされ、美しいミディアム・バラードになっています。
私が"I Keep Wishing For You"を初めて聴いたのは、Butchの盟友の一人、Joe Elyのバージョンで、確か、彼のライヴ盤"Live Shots"(のオマケの7インチ盤)で聴いたのでした。
当時、「なかなかいい曲だな」とは思いましたが、Doug盤を聴くまでは、それほどの曲だとは思っていませんでした。
Doug盤の仕上がりは、曲のポテンシャルを見事に引き出した、目が覚めるような素晴らしい仕事で、「ダグラス卿の魔法」とでも呼びたいです。
この曲での間奏のソロは、Dougが弾いています。
今回、本盤を久々にじっくり通して聴きました。
そして、ACLの映像を合わせて見て、改めて強烈な魅力に惹きこまれ痺れました。
やっぱり、Doug Sahmは、どの時代も最高です。
関連記事はこちら
Sir Douglas Quintet
至宝の五重奏団、彼方へ
魔法使いはヒップスター
白夜の国から
ストックホルムで会おう
ビニール・オンリーのクインテット
Alvin Crow
鞍の上の生活へ帰ろう
可愛い七つの子はフィドル弾き
ロッキン・レオンのふるさと
私の知る限りでは、オリジナル仕様でのCD化は初めてだと思います。
意外な気もしますよね。
Doug Sahmで、CD化の遅れというと、この少し後のSonet時代が(ファンの間では)長年の懸案です。
(近年になって、スウェーデン盤で、いくつか編集盤が出ました。)
でも、Takoma音源は、何となく、とっくにソフト化されたような印象を持ってしまいがちです。
Doug Sahmの他のTakoma音源はCD化済でしたが、実は本盤は(多分、おそらく、きっと)初CDなのでした。
Border Wave
Sir Douglas Quintet
Sir Douglas Quintet
1. Who'll Be the Next in Line (Ray Davies)
2. It Was Fun While It Lasted (Doug Sahm)
3. Down on the Border (Doug Sahm)
4. I Keep Wishing for You (Butch Hancock)
5. Revolutionary Ways (Doug Sahm)
6. Old Habits Die Hard (Doug Sahm)
7. You're Gonna Miss Me (Roky Rrickson)
8. Sheila Tequila (Doug Sahm)
9. Tonite, Tonite (Alvin Crow)
10. Border Wave (Doug Sahm)
Doug SahmのTakama音源のディスコグラフィーは以下のとおりです。
LP
80年 Hell Of A Spell : Doug Sahm (TAK 7075) ソロ名義第一作
81年 The Beat Of Sir Douglas Quintet : Sir Douglas Quintet (TAK 7086) 既発曲の新録音ベスト
81年 Border Wave : Sir Douglas Quintet (TAK 7088) 本盤のオリジナル・アナログ盤
83年 Live Texas Tornado : Sir Douglas Quintet (TAK 7095) オースティンとL.A.でのライヴが混在
86年 The Collection : Sir Douglas Quintet (英Castle CCSLP-133) 2枚組(TAK 7086+TAK 7088)
CD
86年 The Collection : Sir Douglas Quintet (英Castle CCSCD 133)1枚もの(TAK 7086+TAK 7088のB面)
86年 Live Texas Tornado : Sir Douglas Quintet (TAKCD 7095)
87年 The Beat Of Sir Douglas Quintet : Sir Douglas Quintet (TAKAMA CDP-72786)
98年 Live Texas Tornado : Sir Douglas Quintet (Fantasy/CDTAK 6505)(ジャケ違い)
99年 Hell Of A Spell : Doug Sahm (Fantasy/TAKCD 6507-2)
再発ものは、最初にリリースされた、代表的なもののみ記載しました。
Takama時代は、Doug Sahmが、マーキュリー(69-73)でのサンフランシスコ時代を経て、アトランティック(73)で傑作を出しながらもセールスにつながらず、その後ワーナーで1枚、ABCで1枚を出したあと、次第にメジャー・レーベルから離れていった時期です。
この頃、地元のAugieのレーベルからひっそり出していたアルバムを、スウェーデンのSonetから再発して、北欧とのつながりを深めています。
そして、Takamaを離れたあとは、本格的にスウェーデンへと活動の拠点を広げ、Sonetから新作をリリースするようになります。
本盤は、81年にオリジナルのLPが出されました。
そして、86年には英Castleから、Takoma製ベスト盤(TAK 7086)とのカップリングで、2枚組LPが作られます。
この時の2枚組は、AD面がTakama製ベスト、BC面が"Border Wave"という、変則的な構成になっていました。
同じ年に出された同名のCDは、(まだ2枚組CDが珍しかったのでしょうか)2枚組LPをベースに、"Border Wave"のA面5曲をオミットした形で、1枚物のCDにまとめられました。
これが、"Border Wave"の音源(の一部)を初めて使ったCDです。
(なお、近年、スウェーデン発の編集盤CDに一部の曲が収録されました。)
以降、私の知る範囲では、今回が、初めてオリジナル仕様でのCD化だと思います。
さて、本盤でのSir Douglas Quintetのサウンドは、他の時期とは何となく違う雰囲気があります。
ロック・コンボ的な側面を強く感じるサウンドで、曲によっては、Joe King Carrascoの初期を連想させるところもあります。
最大の特徴は、サイド・ギターのAlvin Crowの存在でしょう。
この人は、Doug Sahmの歴代サイドメンの中でも、特に個性的な一人だと思います。
本盤でのメンツは以下のとおりです。
Doug Sahm : lead vocals, guitar
Augie Meyers : organ
Alvin Crow : vocals, guitar
Johnny Perez : drums
Speedy Sparks : bass
add.
Shawn Sham : vocals, guitar
従来のQuintetは、パーソナルなサイド・ギターが決まっていませんでした。
ギターは、Dougの1本だけのときが多く、時に応じてゲストが補助したりしていました。
Alvinによってサイド・ギターの固定化が確立し、その後ゆっくりとLouie Ortegaへの交代が行われていきます。
Alvinのメイン楽器はフィドルだと思いますが、本盤では一貫してギターを弾いています。
そして、ボーカリストでもあり、メインで歌う出番もあるほか、多くの曲でハーモニーをつけています。
実は、ウエスタン・スイング大好きという人なのですが、この頃は、しばしば初期のバディ・ホリーっぽいヒーカップを披露したりと、ロカビリー寄りの印象を受けます。
Alvin CrowのQuintetでの在籍期間は、正確には分かりません。
スタジオ盤への参加としては、本盤ないしは、同81年発売の"The Best Of Sir Douglas Quintet"からだと思います。
それでは、バンドを離れたのはいつ頃でしよう。
多分、Dougが北欧を活動の拠点にしだした頃から行動を別にして、オースティンに留まったのではないかと思います。
ただ、86年リリースの覆面バンド、Texas Mavericksの"Who Are These Masked Men?"では、Rockin' Leonの変名で参加して、ギターをを弾きました。
この時は、相変わらずの、バディ・ホリー風の唱法で、Johnny Cashの"Rock'n'Roll Ruby"を派手に決めて、ぶれない姿勢を見せています。
(ちなみに、Texas Mavericksのリード・ギター、Johnny Xの正体は、Louie Ortegaではなく、元Freda & The FiredogsのJohn X. Reedです。この時は、珍しくも、ギター3本体制だったのでした。)
さて、本盤のもうひとつの特徴は、ホーンレスだということです。
Doug Sahmは、10代のころから、ホーンをバックにした録音を数多く行ってきました。
Tribe時代のSir Douglas Quintetの頃から、それは自然に寄りそっていたのです
初期Quintetのホーンは、テナー・サックスのFrank Morinで、彼はマーキュリー時代の終わり(70年頃)まで、Doug Sahmと密な関係を続けていました。
Frank Morin(ts)の後は、お馴染みのRocky Morales(ts)、Louie Bostos(ts)、Charlie McBurney(tp)、Al Gomez(tp)らが頻繁に参加するようになりますが、中でもホーン一人体制の場合は、Rocky Moralesの参加率がダントツです。
リズム・ギターのAlvin Crowの個性、そしてホーンレス、これこそが本盤を他のアルバムとは印象の違う存在にしている要因だと思います。
アルバムは、Ray Daviesの作品、Kinksの"Who'll Be the Next in Line"の力強いカバーで始まります。
これがまた、特異な例で、Doug Sahmがブリティッシュ・ロックのカバーをやるのは非常にまれなことです。
他には、プロコム・ハルムの"Whiter Shade Of Pale"(青い影)くらいしか思いつきません。
選曲の面でも、珍しいアルバムだったわけです。
ホーンがないだけでなく、(Alvin Crowが参加しているにも関わらず)カントリー系の曲がないのも特徴です。
さて、本盤のメンツの動く姿を見ることが出来るライヴ映像があります。
CD、DVDともに出でいる、"Live From Austin TX"のSir Douglas Quintet盤です。
(これは、TV番組のAustin City Limitsの81年収録の映像で、Doug Sahmは、ファンにとって幸せなことに、ソロ名義(70年代)、Quintet名義(80年代)、Texas Tornados名義(90年代)と、3つの異なった時代がソフト化されています。)
映像を見ると、音だけでは気付かない、興味深い要素をいくつも発見します。
本盤の収録曲のうち、Austin City Limitsでやっているのは、次の6曲です。
(曲の並びは、ACLのセトリ順)
Down On The Border
I Keep Wishing For You
Who'll Be The Next In Line
Tonite, Tonite
Old Habits Die Hard
You're Gonna Miss Me
これらの映像を見てから、再度本アルバムを聴き返すと、さらに楽しいです。
まず、映像のAlvin Crowが若いです。
Aivinのギターは、シングル・カッタウェイのセミアコ(グレッチ?)で、基本的にサイドのみのプレイです。
そして、多くの曲でコーラスをつけています。
Doug Sahmはテレキャスター、Shawn Sahm(Dougの息子)はレスポールです。
Shawnは、ACLのセットリスト全17曲の内、7曲(上記6曲+1曲)に参加しています。
全体的にレイドバックした雰囲気の曲が少なく、元気な曲、グルーヴィーな曲が多いです。
Alvinの作品で、自身がリード・ボーカルを務める"Tonite, Tonite"は、やはりヒーカップ調、かつガッツ溢れる歌声で、元気一杯にかっ飛ばすファスト・ナンバーです。
間奏のギター・ソロは、Dougです。
Dougのオリジナルも、力強く躍動感のあるサウンドがほとんどで、若きAlvinの存在が、知らずのうちにバンド全体に影響を与えている気がします。
(…近年のAlvin Crowは、二倍くらいの恰幅のいい体型になり、ゆったりとホンキートンクしています。)
そんな中、フォーキーな"I Keep Wishing For You"が目立ちます。
この曲は、(元)FlatlandersのButch Hancockの作品で、私は本人盤は未聴ですが、おそらく原曲は、ディランみたいなぶっきら棒なスタイルではないかと想像します。
本盤では、Dougの手によってメロディの輪郭が明確にされ、美しいミディアム・バラードになっています。
私が"I Keep Wishing For You"を初めて聴いたのは、Butchの盟友の一人、Joe Elyのバージョンで、確か、彼のライヴ盤"Live Shots"(のオマケの7インチ盤)で聴いたのでした。
当時、「なかなかいい曲だな」とは思いましたが、Doug盤を聴くまでは、それほどの曲だとは思っていませんでした。
Doug盤の仕上がりは、曲のポテンシャルを見事に引き出した、目が覚めるような素晴らしい仕事で、「ダグラス卿の魔法」とでも呼びたいです。
この曲での間奏のソロは、Dougが弾いています。
今回、本盤を久々にじっくり通して聴きました。
そして、ACLの映像を合わせて見て、改めて強烈な魅力に惹きこまれ痺れました。
やっぱり、Doug Sahmは、どの時代も最高です。
Who'll Be The Next In Line by Sir Douglas Quintet
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至宝の五重奏団、彼方へ
魔法使いはヒップスター
白夜の国から
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