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スルー・ザ・ロッキン50s

 久しぶりにこの人を聴きました。
 現役スワンプ・ポップ・シンガーのWayne Foretさんです。

 本盤は、99年にCSP Recordsからリリースされたものですが、当時の新録ではなく、73年初出のLPをCD化したものらしいです。
 この人が70年代にLPデビューしていたとは知りませんでした。

 Wayne Foretは、Clyde McPhattarも得意としている人ですが、スタイルとしては、ほぼFats Dominoマナーの人で、ゆったりしたその歌声にはいつも癒されます。


Rockin' 50s
Through The Years
Wayne Foret

1. I Trusted You
2. No More Loneliness
3. Caldonia
4. I Won't Cry   
5. I Cried Last Night   
6. Margie    
7. Just A Game  
8. Stranger To You
9. Have You Ever Had The Blues
10. Somebody Show Me The Way Home
11. Mr. Sandman  
12. Ready, Willing And Able

 全12曲、ニューオリンズR&B、またはスワンプ・ポップのエッセンスで満たされた温泉にどっぷり浸かる、そんなひと時を過ごせるアルバムになっています。

 全体的にイナタさ満点ですが、思ったほどB級ぽさは希薄です。
 もっとユルイ展開かと予想していたところ、曲のテンポこそほっこりですが、バンドの演奏はタイトでした。

 収録曲は、曲名のみで一切クレジットがありません。
 有名曲も混じっていますが、激渋のナンバーが多数入っています。
 ただ、スワンプ・ポップやニューオリンズR&Bファンなら、どこかで見かけたような曲名を見て心が騒がずにいられないでしょう。

 分かる範囲で書いていきます。
 
 まずは有名曲から

3. Caldonia
4. I Won't Cry
5. I Cried Last Night
11. Mr. Sandman 

 "Caldonia"は、もちろんLouie Jordanの大有名曲です。
 でも、ここでのアレンジは、ルイ盤よりもゆったりとしたテンポで、ニューオリンズR&B版"Caldonia"と言いたいです。
 この曲特有の挑発的なボーカル・スタイルは抑えられ、まったりゆるく歌われています。
 こういうのも、たまにはありでしょう。

 "I Won't Cry"は、何と言ってもDoug Sahmの名唱が忘れられません。
 Doug Sahmの名盤ソロ、"Juke Box Music"のオープニング曲でした。

 原曲は、Johnny Adamsで、彼は二度吹き込んでいます。
 Johnny Adamsは技巧派のソウル・シンガーで、私はDoug盤を初めて聴いたとき、なるほどJohnnyらしい歌い方、フェイクをうまく取り入れてるなあ、そう感じました。
 ところが、Johnny盤を聴き返すと、Dougがやっていたフェイクは、ごくごく控えめにしかやっていず、驚いたことを思い出します。

 Dougは、いかにもJohnnyがやりそうな歌い方をデフォルメしていたんですね。
 さすがDoug Sahmだと言うほかないです。
 Wayne盤は、Doug盤、Johnny盤に比べると若干見劣りしますが、アベレージでしょう。

 "I Cried Last Night"は、すぐには気付きにくいですが、よく聴けばCookie & the Cupcakesの"I Cried"だと分かります。
 Cookie & the Cupcakesのレパートリーの中では、比較的ロックンロール調の曲です。
 Wayne盤は、原曲よりもかなりゆったりしたテンポでやっていて、Fatsスタイルの演奏に仕上げています。

 "Mr. Sandman"は、Jimmy Donleyの"Please Mr. Sandman"ですね。
 この曲の作者クレジットはHeuy P. Meauxですが、Donleyが書いた曲を買い上げた可能性が高いと私は思います。
 この曲は、ガルフコーストの人気曲で、Sunny & Sunlinersもやっていました。
 もちろん、Doug SahmもFreddy Fenderも、ついでにJoe King Carrascoもやっています。

 次に渋い選曲を…。

1. I Trusted You
2. No More Loneliness
6. Margie
7. Just A Game
8. Stranger To You
9. Have You Ever Had The Blues

 "I Trusted You"と"Stranger To You"は、Johnnie Allanのレパートリーです。
 "I Trusted You"は、Jimmy Clantonに同名曲がありますが、こちらは、多分Johnny Allanの方だと思います。

 "No More Loneliness"は、現役スワンプ・ポップ・シンガーのGary Tが息子と組んだユニット、Duece of Heartsのレパートリーだと思います。
 今、手元にアルバムがないのですが、Gary Tは自作曲が多いため、彼の作品だと思います。

 "Margie"は、Fats Dominoのレパートリーですね。
 ただ、元々はエリントン・ナンバーかも知れません。
 Fatsスタイルの曲は、Wayneにとって安心安定の選曲で、至福の和みの時間を提供してくれます。

 "Just A Game"は大好きな曲です。
 Jimmy Donleyのレパートリーで、作者はやはりHeuy P. Meaux名義ですが、これは間違いなくDonleyの作品だと思います。
 共作者がDonleyととても近い人で、二人は他にもいくつか共作しています。
 このパターンの曲は、ほぼDonleyからMeauxが買い上げたケースだと思います。
 本盤は、三連曲のオンパレードですが、この曲は、中でも私が好きな必殺の哀愁三連曲です。

 "Have You Ever Had The Blues"は、Lloyd PriceのABC時代の曲ですね。
 Lloyd Priceは有名曲、佳曲が数ある中、このチョイスは渋いです。
 "Personality"の裏面だったような気がします(?)。

 最後に不明曲を…。

10. Somebody Show Me The Way Home
12. Ready, Willing And Able

 この2曲はよく分かりません。
 "Somebody Show Me The Way Home"は、古いポピュラー曲が元ネタかも知れません。
 でも、完全にニューオリンズR&Bスタイルでやっています。

 本盤は、味のあるWayne Foretのボーカルでほのぼのと和める1枚だと思います。
 ゆるゆるテンポの曲ばかりですが、リズム隊はタイトで、ホーン陣はリフもソロも聞かせます。
 ときおり挿入されるコンパクトなギター・ソロも良いです。

 Wayne Foretは、FatsスタイルのSwamp Popシンガーとして、特段のスリルやサプライズこそ希薄ですが、安心して聴けるアーティストだと改めて感じました。




Irene by Wayne Foret





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みんなのために歌を

 John Fogertyの新作が10月9日にヴァンガードからリリースされるらしいです。
 既にいくつかのニュース・サイトで紹介されていて、アマゾンUSでも予約が開始されました。

 ニュースの眼目は、"Proud Mary"を新録音するということで、どうやらジェニファー・ハドスンとデュエットするようです。

 また、"Proud Mary"に限る話だと思いますが、アラン・トゥーサン指揮のもと、ロッキン・ドプシーらの参加でニューオリンズ録音と伝えている記事もあるようです。


Wrote A Song For Everyone
John Fogerty

・ Proud Mary : Jennifer Hudson
・ Born on the Bayou : Kid Rock
・ Fortunate Son : Foo Fighters
・ Long as I Can See the Light : My Morning Jacket
・ Have You Ever Seen the Rain : Alan Jackson
・ Who’ll Stop the Rain : Bob Seger
・ Hot Rod Heart : Brad Paisley
・ Wrote a Song for Everyone : Miranda Lambert
・ Almost Saturday Night : Keith Urban
・ Someday Never Comes : Dawes

 "Proud Mary"の話が特筆されていますが、新作は、どうやら旬のアーティストを多数ゲストに迎え、過去の名作をやるという企画もので、デュエット集になるのだと思います。

 John Fogertyは、かなりの寡作なのに、新作を出すたびに大きな拍手で迎えられ、しばしばベストセラーになる、アメリカ人に愛されているシンガーなのだなと感じます。
 時代に迎合せず、頑固に自分の好きな音楽をやり続けている姿勢が、共感を呼ぶのではないかと思います。

 寡作と書きましたが、むしろ年齢を重ねた近年のほうが精力的にやっている印象があり、最近でも、TVショウのAmerican Idolで、優勝者と「雨を見たかい」や「バッド・ムーン・ライジング」を一緒に歌って喝采をあびたりとか、相変わらず「愛されているなあ、アメリカン・ヒーローなんだなあ」と改めて感じます。

 ただ、大物ゲスト多数参加の作品というのは、煮詰まってきているベテラン・アーティストにありがちな企画で、長年のファンとしては、新作は嬉しいですが、単純には喜べません。
 複雑な気持ちになってしまいます。
 私が望むのは、ごく普通のオリジナル・アルバムの方ですね。

 ブレス発表されている参加者を見ると、ロッキン・カントリー系の人が目につきますが、正直私は名前を知っている程度の人がほとんどです。

 キース・アーバンとか、ブラッド・ペイズリーとかは、リスペクトを受け、親交もありそうですが、いかにもな取り合わせで、さほどサプライズがないですね。
 多分、彼らのカントリー系の速弾きギター・ソロが聴けるのでしょう。

 アラン・ジャクソンも相性が良さそうですが、彼ももうベテラン組ですね。
 ベテランといえば、オールド・ロック・ファンとしては、密かにボブ・シーガーに期待です。
 出来れば、バラードじゃなくロックンロールをやってほしかったかも…。

 やっぱり、"Proud Mary"が目玉なのかな…。



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イッツ ジミー・エドワード

 追記しました。(斜体赤字部分)

 今回は、サンアントニオ・ソウル・グレイツの一人(だとかってに思っている)、Jimmy Edwardさんの06年リリースのアルバムをご紹介します。

 この人は、60年代から活動しているシンガーで、Sunny Ozunaとも少なからず関連があります。

 英語で歌うチカーノR&Bでキャリアをスタートさせ、その後次第にスパニッシュ・コミュニティに向けたラテン曲へと活動をシフトさせていったこと、年齢を重ねるにつれ、宗教曲への関心も深めているなどの共通点があります。


It's All Right
Jimmy Edward

1. Intro (Bob Gallarza)
2. La Que Se Fue (J. A. Jimenez)
3. Entrega Total (A. Pulido)
4. Vuelve Mi Amor (B. Bacharach, spanish lyrics : Alejandro Vasquez)
5. Sometimes (Gene Thomas)
6. Just A Dream (Jimmy Clanton)
7. If You Need Me (Pickett, Bateman)
8. Como Fue (Puarte)
9. Mi Lupita
10. Paloma Querida (J. A. Jimenez)
11. It's All Right (Curtis Mayfield)
12. I'm So Proud (Curtis Mayfield)

 Sunny Ozunaとの関連性は、音楽活動のキャリアそのものにもあります。

 Jimmy Edwardは、パーソナルな人物像がいまいちよく分からないのですが、本名はおそらくJimmy Trevino、もしくはJimmy Edward Trevino(これは普通に考えれば、正式名はJames Edward Trevino)で、サンアントニオを活動の拠点にしている人で、出身も同じではないかと想像します。

 これは、彼がキャリアの初期にJimmy Trevinoの名前を使っていたことからの推測です。

 Edwardというのは姓ではなく、ミドルネームもしくはイングリッシュ・コミュニティに向け命名したステージ・ネームかも知れません。
 ミドルネームを姓としていたシンガーでは、Raymond Charles Robinsonという大有名人がいました。

 私の感覚では、Edwardという姓はいかがかと思っています。
 語尾に"s"が付いたEdwardsなら、それなりにしっくりくる気がします。
 事実、Jimmy Edwardでググると、Jimmy Edwardsではありませんか?と訊ねられたりします。

 Jimmy Edwardは、60年代半ばころ、Danny and the Dreamersというバンドのリード・シンガーとして活動し、このころJimmy Trevinoと名乗っていました。
 フォー・トップスのカバー、"Ask The Lonely"などを歌って人気があったようです。
 また、このバンドの主力メンバーとなってから、Jimmy Edwardの名前を使うようになり、Little Jimmy Edward & the Dreamers Band名義でもレコードを出しているようです。

 そして70年代半ばになると、Sunny Ozunaのバンド、Sunny & the Sunlinersから分派したメンバーが創ったバンド(だと思います)、Latin Breedのリード・シンガーになります。
 Latin Breedは、スペイン語中心のテハーノ・オルケスタですが、Sunliners同様、カントリーやR&Bも売り物のひとつで、この時期にはオーティス・レディングの"Hard To Handle"をやったりもしているようです。

 そして、70年代後期にはソロになり、やはりスペイン語中心の活動をしますが、一方でウイルソン・ピケットの(あるいはバーク僧正の)"If You Need Me"のようなR&Bも歌い続け、そちらの需要にも応えています。

 "If You Need Me"は、彼の代表曲の一つとして長く歌い続けているようで、本盤でも新録音が収録されています。
 また、本盤ではやっていませんが、シングル盤、"If You Need Me"の裏面だった、"Memories"という曲がライヴでのバラードの定番曲で、やはり歌い続けているようです。

 本盤収録曲では、Jimmy Clantonのスワンプ・ポップの名作、"Just A Dream"もまた、彼のDreamers時代(60年代後期)のレパートリーでした。

 ここまで書いてきた初期のレパートリーの多くは、Latin Breed時代、ソロ時代ともに需要に応えて再録音しているようです。
 (などとつれづれと書いてきましたが、私が既聴なのは、Latin Breed以降の音源だけなので、出来れば古い音源が聴きたいと思っています。)

(追記)
 初期の音源のうち、Danny and the Dreamers時代の作品は、コンピCD、"Chicano Soul : San Antonio's Westside Sound (vol.1)"に収録されていて聴いていたことに気付きました。
 以下の3曲です。
"Ask The Lonely"
"Think Nothing About It"
"Baby Something's Wrong"
 ただし、ブックレットの表記によれば、最初の2曲のリード・ボーカルは、リーダーのDanny Martinezだということになっています。


 さて、本盤はヒューストンで録音されたもので、スタジオ録音ですが、なぜかレーベル・オーナーらしき人物とのスタジオでのレコーディング・トーク(?)でスタートします。
 トラック1がそれにあたりますので、実質上は11曲入りです。

 アルバムは、スペイン語での陽気なラテン曲で始まります。
 曲名を見ていると前半はスペイン語タイトルが続きますが、実は4曲目の" Vuelve Mi Amor"は、80年代ウエストコースト・ロック・ファンには懐かしい、クリストファー・クロスの「アーサーのテーマ 〜ニューヨーク・シティ・セレナーデ」のスパニッシュ・バージョンなのでした。

 ネタばれしてしまいましたが、知らずに聴けばきっと「あれっ これ知っている、何だっけ?」となること間違いないはずです。
 よく知った曲でも歌詞が違うとすぐに分からないもので、ましてや言語が違えばなおさらです。
 そして、曲が判明したときのスッキリ感は半端ないのでした。

 そして、続く"Sometimes"と"Just A Dream"の流れが、この手の音楽のファンにはたまりません。
 "Sometimes"は、もちろんGene Thomasのあの名作三連バラードです。

 Doug Sahmの愛唱歌であり、Freddy FenderもAugie Meyrersも、そしてSunny Ozunaもやっている永遠の名曲です。
 変わったところでは、サンフランシスコのガレージ・バンド、Flamin' Grooviesのバージョン(Dave Edmunds制作)もありました。

 Jimmy Edward盤は、語りから入る構成で、何を言っているのか解するため、もう少しヒアリング力が欲しいです。
 原曲よりもさらにスローに、ムーディーにやっていて、おしゃれなお酒を飲みながら聴きたい、ナイト・ミュージック風に仕上げています。

 そして、まるでメドレーのようにしなやかに繋いでいくのは、これまた名作の"Just A Dream"です、
 静かなタッチのピアノの伴奏、美しい女性コーラスのハーモニーなど、"Sometimes"のムードを継承したアレンジでやっていて、誰がやっても悪くなりようがない名曲とはいえ、期待を裏切ることはありません。

 アルバムは、ラテン曲を挟みつつ、アーリー・ソウルの名作を力強く歌う、"If You Need Me"(ブルージーな間奏のギターもよい)から、カーティス・メイフィールドの名作2曲が、美しく展開して行きます。

 チカーノって、ドゥワップはもちろん、ノーザン(とりわけシカゴ・ソウル)、スイート・ソウルなどが好みなんですよね。
 同じバリオ地域でも、テキサスとカリフォルニアでは地域性の違いはあるんでしょうが、大きなくくりではそういう傾向があるように思います。

 日本人の好きなR&Bと、チカーノの好きなR&Bを比べると、似た傾向よりも違う傾向の方に強い興味を覚えます。

 本盤は、Jimmy Edwardのアルバムの中では、英語曲を多く収録していて、とても聴きやすいです。
 彼の英語曲中心の他のアルバムでは、ゴスペル集(?)ですが、98年の"You'll Never Walk Alone"というアルバムも聴きものだと思います。



If You Need Me by Latin Breed


2番の歌詞がスペイン語になるところがスリリングでたまりません。



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サンアントニオ・ソウル・グレイツ


 

ヌエボ・ワボ

 ジャケのポップさがツボにはまって、買うしかなかったCDです。
 しかも、内容が最高ときているので言うことなしです。
 Joe King Carrascoの初期の音源をまとめたゴキゲンな編集盤です。

 本盤は、発売年の記載がないのですが、おそらくは11年のリリースではないかと推測します。
 なぜなら、本盤をプレスしたAnaconda Recordsは、同じ年、Joe King Carrascoの過去の音源を多数復刻しているからです。
 タイトルの"Nuevo Wavo"は、"New Wave"という意味だと思います。


Nuevo Wavo
Joe King Carrasco & The Crowns

1. Houston El Mover
2. One More Time  (Roy Head)
3. Let's Get Pretty
4. Caca De Vaca
5. Bad, Bad Girls
6. Don't Bug Me Baby
7. Buena
8. Nervoused Out
9. Betty's World
10. I Get My Kicks On You
11. Party Doll  (Buddy Knox)
12. Gimme Sody, Judy
13. Susan Friendly
14. Federales
15. Wild 14
16. Bad Rap
17. Gin Baby Gin
18. That's The Love
19. Ta U La Ou Va

 とにかく、ジャケットのイラストに眼が惹きつけられました。

 全19曲入り、Joe King Carrascoのキャリアのうち、Crowns時代の最初期の音源を集めています。
 ロックのすう勢が、ニューウェイプへと向かっていた時代です。

 78年にDoug Sahm人脈が多数参加したオルケスタ、El Morino BandでデビューしたCarrascoは、翌79年にRior Recordsから、Joe King Carrasco and the Crowns名義の最初のアルバム、"Tales From The Crypt"をリリースします。
 これは、ニューヨーク録音でした。
 (この時期、Doug Sahm人脈のうち、John Perez、Speedy Sparksが引き続きCarrascoと関わっていました。)

 私は、Carrascoはきっとサンアントニオ録音が大半だろうと思っていたのですが、この時期はニューヨーク録音がメインだったようです。

 彼のオフィシャル・サイトには、初期のアルバムについて簡単に紹介したページがあります。
 それを読んでいると、手元にあるLPと矛盾があったりして、本人のサイトでも、記憶違いなどがあるのではと思ったりしています。

 彼のサイトによれば、Crowns初期のアルバム・リリースの流れは以下のとおりです。

79年 Tales From The Crypt  (米Rior盤) 12曲入り
81年 Party Safari (米Hannibal盤) 4曲入りEP
    上記79年盤と1曲重複、以下の2枚とは重複なし
81年 Joe King Carrasco and the Crowns (米Hannibal盤)12曲入り
    79年盤と7曲重複
81年 Joe King Carrasco and the Crowns (欧Stiff盤)12曲入り
    米盤と同名だが4曲が差し替えられている。

 しかし、私の手元にあるStiff盤LP(英盤ではなく独盤ですが)は、80年発売と記載されています。
 独盤のプリント・ミスという可能性もないとはいえませんが、どうも混乱します。
 米Hannibal盤を持っていないということもあり、何ともモヤモヤがつのります。

 ちなみに、79年の"Tales From The Crypt"は、84年に再発された際、ボートラとして"Party Weekend"が追加収録され、13曲入りとなりました。
 前年の83年に"Party Weekend"というLPが出ていますので、ここからタイトル曲を拝借して追加したのでしよう。
 現在流通している"Tales From The Crypt"のCDは、84年再発盤LPを元に00年にリリースされたもので13曲入りです。



 試みとして、本盤の内容を把握するため、並べ替えをしてみました。
 以下のとおりです。

79年 Tales From The Crypt  (米Rior盤) から
2. One More Time
3. Let's Get Pretty
4. Caca De Vaca
7. Buena
9. Betty's World
14. Federales
15. Wild 14
18. That's The Love

81年 Party Safari (米Hannibal盤) 4曲入りEPから
16. Bad Rap
17. Gin Baby Gin
19. Ta U La Ou Va

81(?)年 Joe King Carrasco and the Crowns (米Hannibal盤、欧Stiff盤 共通)から
6. Don't Bug Me Baby
8. Nervoused Out
10. I Get My Kicks On You
11. Party Doll
13. Susan Friendly

81(?)年 Joe King Carrasco and the Crowns (米Hannibal盤)から
1. Houston El Mover
12. Gimme Sody, Judy

不明
5. Bad, Bad Girls

 "Bad, Bad Girls"の出典が分かりませんでした。(最高に楽しいSDQライクなサウンドの曲です。)

 そして、何気に4曲入りEP、"Party Safari"は貴重盤だったんですね。
 何度か中古盤を目撃していましたが、購入せずスルーしていました。
 本盤に収録された3曲のうち、"Gin Baby Gin"と"Ta U La Ou Va"を収めたCDは、私の知る範囲では他にありません。

 ちなみに、本CDのクレジットでは、各曲個別のデータの記載はなく、全体として80年及び81年録音となっており、なおかつ録音場所はNew York、Austin、L.A.となっていて、何が正しいのか更に謎は深まるばかりです。

 同じ曲をオースティンやロスで再録音した可能性もないとは言えませんが、この間、メンバー交代もないので必要性に疑問があります。
 ありうる可能性としては、米Rior Records盤と米Hannibal Records盤では音源が違うということです。
 だとすれば、本CDの録音時期が80年81年になっていることとも符号します。

 とはいえ、米国欧州(ここでは英国)ともにオリジナル盤を持っていないので、確たる比較は出来ないのでした。

 などと、くだくだと綴ってきましたが、最初に書いた通り、内容は素晴らしいの一言です。
 非常に習慣性、中毒性の高い音楽で、クリス・カミングスのオルガンが鳴り始めると、脳みそがパブロフの犬状態になってしまいます。

 Sir Douglas Quintetのサウンドとの共通性も高く、Doug Sahmファンならニヤリとなるフレーズもそこかしこに散見しています。
 ロイ・ヘッドやバディ・ノックスのカバーも、独特の解釈が楽しいです。

 その長いキャリアの全てが駄作なしといいたい人ですが、とりわけこの初期Crowns時代は輝いていると思います。

 最近作で、Crownsをオリメンで再結成したCarrascoさん、まだまだ楽しませてくれると思います。


Houston El Mover by Joe King Carrasco and the Crowns




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ヒッチハイカーズ・ブルース

 私は、コンテンポラリーなブルースを聴く機会があまりありません。
 嫌いというわけではありませんが、積極的に聴くこともないです。 
 まあ、それがヒット曲なら、広く聴かれている理由があるとは思いますし、聴けば気に入るかも知れません。
 でもどうせ聴くなら、流行りものとかとは関係なく、ルーツをがっつり感じる古いスタイルが好きです。

 そんな私が、今回の主人公、Mighty Mo Rodgersを聴くことになったのは、どういう巡りあわせでしょう。
 その音楽性は、初めて聴いた私の耳には、とてもスムースでソフィスティケイトされたものだと感じました。

 しかし、彼は、必ずしも安定したメジャーとは言い切れず、事実近年はインディーズで活動しているようです。
 とはいえ、本盤のコンセプトが私の興味を惹くことがなければ、出会うことはなかったでしょう。  

 本盤は、アメ車の象徴、キャデラックをとばし、ウエストコーストからイーストコーストまで、ルート66の道程をめぐる旅を米国音楽の探訪になぞらえる内容になっています。
 (…と私は解釈して関心を惹かれ、入手しました。)

 本盤は11年にリリースされた、Mighty Mo Rodgersの最新作です。


Cadillac Jack
Mighty Mo Rodgers

1. Cadillac Jack Says "Bring the Fishtail Back" (Mighty Mo Rodgers)
2. Black Coffee and Cigarettes (Mighty Mo Rodgers)
3. Boogie To My Baby (Mighty Mo Rodgers)
4. Cadillac Ranch (American Stonehenge) (Mighty Mo Rodgers)
5. Motor City Blues (Mighty Mo Rodgers)
6. See America First (Mighty Mo Rodgers)
7. Tell Me Why (Mighty Mo Rodgers)
8. The Freddy Fender Song (Mighty Mo Rodgers)
9. God In My Car (Mighty Mo Rodgers)
10. Hitchhiker's Blues (Mighty Mo Rodgers)
11. My Blues, My Car and My Woman (Mighty Mo Rodgers)
12. West Coast Blues (Mighty Mo Rodgers)
13. Slow Dance With Me (Mighty Mo Rodgers)
14. Lights of America (Jan Eglen, Mighty Mo Rodgers)

 Mighty Mo Rodgersは、魅力的な声を持つシンガー、キーボーディストで、そのバンドの演奏はとてもソウルフルです。

 写真から感じる風貌は貫禄たっぷりで、経験値の高いベテランのブラック・アーティストだろうと思いました。
 しかし仮に、何の予備知識もなしにその歌声を聴いたなら、「もしかするとソウルフルな白人シンガーという可能性もあるかな」とふと思ったかも知れません。
 なぜなら、ブルージーでソウルフルですが、ロック以降の音楽だと感じるからです。

 彼が黒人であることを知ったうえで連想したのは、ロバート・クレイでした。
 そう思って聴きかえすと、ファンキーでメロウなビートに共通性を感じます。

 本盤の収録曲はすべて自作で、その音楽はブルージーです。
 ただ、いわゆるブルースマンとは少し違った肌触りを感じました。
 マイナー・ブルース調の曲が多くあり、それが売りだと思いますし、間奏のソロはブルースそのものだったりしますが、多くはブルース形式ではなく、ブルース・バラードとでも呼びたい音楽です。



 本盤の参加メンバーは以下のとおりです。

Mighty Mo Rodgers : vocals, keyboad
Burleigh Drummond : drums, percussion
Will MacGregor : bass on track1 to 11,13
Kevin Longden : guitar on track1 to 11,13
Dick Aven : saxophone, flute on track9,10,11,12
John Davis : dobro on track11
Mary Harris : strings on track2, keyboad on track6
Steve Guillory : guitar on track12,14
Albie Burks : bass on track12,14
Jan Edlen : oercussion on track14
Jim Gibson : guitar on track12
Nick Senelli : accordion on track8
Darryl Dunmore : harp on track5
Tollak Ollestad : harp on track3

 ソウルフルな歌声が素晴らしいです。

 特に、熱を帯びた声がハスキーになるところが魅力的で、サザン・ソウルのシンガーを連想せずにはいられません。
 ロバート・クレイのほかでは、例えば、リトル・ミルトンとか、ブルーズン・ソウル系の人を思い出します。

 本盤は、素晴らしくブルージーでソウルフルなバラードが次々に展開していくアルバムです。
 そんな中、"Motor City Blues"は、ブルース・ハープ入りで、雰囲気たっぷりに進行する、本盤では珍しくブルースそのものといった曲です。
 ただ白人の演奏なら、ブルース・ロックと呼んだかも知れません。
 (どうも、みかけに囚われがちです。)

 本盤は優れた曲が多く収録されていますが、いかんせん同じような曲が多いという印象を持ちます。
 そんな中、はっきりと言える聴きものは次の2曲です。

7. Tell Me Why
8. The Freddy Fender Song

 "Tell Me Why"は、鍵盤奏者であるMighty Mo Rodgersらしく、Jerry Lee Lewisを引き合いに、あのころのロックンロールの楽しさをハネるピアノに乗せて歌い飛ばす曲で、歌詞がいまいち理解できませんが、とりあえず「訳けを聞かせて」と繰り返しあおり続けます。
 曲中では、Chuck Berry、Fats Domino、Roy Orbison、Little Richard、John Lee Hooker、B. B. Kingの名前が次々と織り込まれています。

 "The Freddy Fender Song"は、クルージング中、ラジオから流れてきたFreddy Fenderの歌を聴いた主人公が、かつて人生のひと時を共に過ごした女性の想い出を振り返る曲です。
 曲中では、Freddyの代表曲、"Before The Next Teardrop Fall"と"You'll Lose A Good Thing"のタイトルが、歌詞の中にもじって盛り込まれています。
 曲調は、アコーディオンこそ控えめに入りますが、予期していたFreddyっぽさはさほどでもありません。
 最初は少し残念なアレンジかと思いましたが、何度も聴くうちに、イントロだけでぐっとくるお気に入り曲になりました。
 今はかなり良いバラードだと思っています。

 この人は、モダン・ブルース・ファンには聴かれている人なんでしょうか。
 もともとのリスナー層が知りたいものです。

 いずれにしても、ブルースからロックンロールへの道筋をたどる旅の試みは抗いがたい魅力に溢れていて、この人には、更に深く、オール・アメリカン・ミュージックの探求者となってほしいと感じました。




Cadillac Jack by Mighty Mo Rodgers





メープル・シロップ テキサス風味

 しかし、このバンド名でカナダって、どういうことなんでしょう。
 最初は、普通にテキサスのバンドだと思ってチョイスしました。

 今回は、カナダのテキサス音楽好き(?)のバンドをご紹介します。


Southern Exposure
The Texicanos

1. If You Were Not Born in Texas (Roger Arndt, Susan Hillman)
2. Dinero (Augie Meyers)
3. It Feels Like Forever (Lowry Olafson)
4. Mexico...Whatcha Doin' To Me (Roger Arndt, Susan Hillman)
5. Feelin' Kinda Lonely Tonight (Jamie O'Hara)
6. Heartaches Over Ice (Roger Arndt, Susan Hillman)
7. Do You Wanna Boogie Woogie (Roger Arndt)
8. Hestia's Waltz (Roger Arndt, Susan Hillman)
9. Rancho Grande (trad. arr. Roger Arndt)
10. Querencia (Roger Arndt)
11. Dark Days (Roger Arndt)
12. Ghost Riders in the Sky (Stan Jomes)

 「テキシカーノ」って、何か造語ですかね。
 これで、テキサン・カナディアン(そんな概念があるとして)とは解せないと思うんですが…。

 ウェブからの限られた情報によれば、本盤の主役たちは、カナダのブリティッシュ・コロンビア州あたりを本拠とするバンドではないかと思います。

 本盤は、同州のボーエン・アイランドで録音され、05年にリリースされました。

 本作に参加したメンバーは、以下のとおりです。

Roger Arndt : lead vocals, guitars, fiddle, banjo, accordion, bajo sexto
Ruby Red : bass, lead vocal on track8,12
Richard Baker : guitars, bass on track12
Kendra Arndt : lead vocal on track6
Alex Alegria : vocals on track2,9, spanish translations
Ron Thompson : lead guitar on track7,9, 6-string banjo on track8
Michael Creber : piano on track7
Bruce Hamilton : peddle steel on track1,6
Moritz Behm : ghost fiddle on track8

 このうち、リード・ボーカルで、多くの楽器を持ち替えて演奏するバンド・リーダー、Roger Arndtは、カナダ生まれながら、サンアントニオでの居住経験がある人で、なんとベトナム戦争の退役軍人らしい(?)です。
 生年がわかりませんが、それなりの年齢ですね。
 このバンドが、テキサスの音楽を愛好するのは、この人によるんでしょう。

 しかし、ベトナム戦争のとき兵役を回避するため、アメリカからカナダへ渡った若者がいたという話がありますが、逆に派兵しなかったカナダから、わざわざ米国軍に従軍し、さらに遠い異国で戦ったというのは、サンアントニオにいた時期が、彼の人生によほど大きな影響を与えたのでしょうか。

 このRogerと、英国生まれの女性ベーシスト、Ruby RedことSusan Hillmanがバンドの中心メンバーではないかと思われます。

 あと、ギターのRichard Bakerは、カナダの有名な(私は知りませんが…)Doug and the Slugsというロック・バンド出身らしいです。



 本盤は、1曲目から、ごきげんなボブ・ウィルズ・スタイルの正調ウエスタン・スイングで始まります。
 この曲の印象はかなり強いです。
 ウエスタン・スイング好きの私は、一発で気に入りました。

 そして、続いて演奏されるのは、Augie Meyersの作品、"Dinero"です。
 "Money"を意味するスペイン語です。
 歌詞の内容は分かりませんが、陽気なパーティ・チューンです。
 この曲のクレジットには、"A tribute to the Texas Tornados"と添え書きがされています。

 この曲のAugie Meyers自身のバージョンは、90年のTexas Tornadosの1stで初めて発表されました。
 その後、96年のAugieのソロ・アルバム、"Alive And Well At Lake Taco"で再演されています。
 (Texas Tornadosの2枚のライヴ盤でも聴くことができます。)

 この最初の2曲の流れこそ、私がこのアルバムに惹きこまれた理由です。
 アコースティック・スイングっぽいアルバムといえるかも知れません。

 哀愁漂うフォーキーな曲から、正調ホンキートンク・カントリーまでが展開するなか、アルバムのアクセントとなっているのは、7曲目の"Do You Wanna Boogie Woogie"です。

 これは、ウキウキ感満点に快調に飛ばすカントリー・ブギで、モダンさを醸し出すローリン・ピアノが最高にはまっています。
 ジャジーなトーンでスイングするエレキ・ギターのソロもごきげんです。
 コディ司令の失われた惑星の空挺楽団を思い出します。

 トラッドの"Rancho Grande"や、"Ghost Riders in the Sky"も決まっています。
 "Rancho Grande"は、ポップス風の味付けがされていて、Freddy Fenderのバージョンに近いスタイルでやっています。

 今の所、本盤以降のリリースは不明ですが、もう少し聴いてみたいと思わせるバンドです。



La Bamba by The Texicanos







爆走! トナカイ・ビート 

 フィンランドは、はるか昔、スウェーデンに支配されていました。
 そのためか、フィンランド語とともにスウェーデン語も公用語らしいです。
 どうも北欧なんて一括りにしてしまいがちですが、フィンランドはスウェーデンと比べると馴染みが薄い印象があります。

 スウェーデンの音楽でいうと、やはりABBAでしょうか。
 オールディーズ好きには、ボッパーズなんてバンドが浮かびます。(もはや、おっさんだけが知っている存在かも)
 小説だと、マルティン・ベック・シリーズが懐かしいです。(大好きでした。)

 その点、フィンランドはどうなんでしょう?
 五木寛之には、ロシアやスペインなどと並んで、北欧の国を舞台にした優れた小説がありました。
 フィンランドで連想するのは「青年は荒野をめざす」とか、もっと直接的には「霧のカレリア」とかかな…。
 でも、音楽だと何ですかね。

 スウェーデンと似た下地があるのなら、アメリカの古い音楽が好まれる風潮があっても可笑しくないです。
 スウェーデンは、80年代、まだ米Rhinoも英Aceも手を付けていなかった時期から、ルート66とか、ミスターR&Bといったブート・レーベルが、盛んにジャンプ・ブルースのリイシューを手掛けていました。
 私は、ワイノニー・ハリスも、ロイ・ブラウンも、スウェーデン盤で初めて音を聴きました。

 今回は、フィンランドのグッド・ロッキンなビート・バンド、Doctor's Orderの08年リリースのアルバムをご紹介します。


Seleccion Grade
10 Aniversario Reserva
Doctor's Order

1. How Do You Sleep At Night (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
2. Los Mas Rapidos Muchachos (Hamalainen, Nattila)
3. She's Hot, I'm Not (Nattila)
4. When The Shit Hits The Fan (Nattila)
5. Big Fat Mam' (Hamalainen, Nattila)
6. Boogie Kind Of Thing (Hamalainen, Nattila)
7. Shut Up! (Hamalainen, Nattila, Tuominen)
8. Wham Bam With The Medicine Man (Hamalainen, Nattila)
9. Holy Moly (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
10. Hittin' The Big Mungo Note (Hamalainen, Nattila)
11. Keep It Under Hundred (Hamalainen, Nattila)
12. Big Bad Doc (Hamalainen, Nattila)
13. So It Is (Hamalainen)
14. You Live, You Learn (Hamalainen, Nattila, Tuominen)
15. Doctor In Disguise (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
16. Money Talks, Bullshit Walks (The Drummer Song Part 1) (Nattila)
17. Einstein (The Drummer Song Part 2) (Nattila)

 Doctor's Orderは、98年ころから活動を開始したのではないかと思われます。
 それは、本盤のタイトルからもうかがえます。
 本盤の表題は、Grande選出の10周年記念盤という意味だと思います。

 "Grande"というのは、ギターのArto Hamalainenのニックネームです。
 このバンドは、ギター、ベース、ドラムスという最少編成のビート・バンドで、三人にはそれぞれニックネームがあります。

 ベーシスト、リード・ボーカルのTeppo Nattilaのニックネームは"Teddy Bear"、ドラムスのKimmo Oikarinenは"Mighty Man"です。
 そして、先代のドラマー、Tuominenのニックネームは"Dirty Harry"でした。

 全17曲、理屈抜きで楽しめるアルバムになっています。

 基本は、シンプルでパンキッシュなロックンロール、ビート・ロックです。
 スピード感満点のビートの中で繰り出される小粋なギターのフレーズは、ロックンロール・ギターのリフの、ありったけを陳列したショーケースのようです。

 また、曲によっては、ボトルネックを使ったギター・ブギがアグレッシブに突っ走ります。
 この手の曲が思いのほかあって、ハウンド・ドッグ・テイラーみたいに聴こえる曲もあります。

 さらに、ボーカルとハープ、またギターとハープとが掛け合う曲が熱いです。、
 とにかく、攻撃的なビートが、コンパクトかつタイトにまとまって押し寄せてきます。

 Dr Feelgood、The Pirates直系のタフなサウンドが快感そのものです。
 とりわけ、ブルース・ハープが活躍する曲では、最初期のDr Feelgoodを連想せずにはいられません。
 また、スライドを交えたハードなブギでは、初期のZ. Z. Topを思わせる曲もあります。

 どの曲もみんな同じようなテイストなんじゃないかって?
 そのおりです。
 実のところ、バリエーションは少ないです。

 断言しましょう。
 バラードは1曲もないです(キリッ)。

 全体から受ける印象は、同じような曲がこれでもか、これでもかと続くアルバムという風に感じるかも知れません。
 でも、曲ごとに様々な工夫がなされていて、一見シンプルでも、私などはアイデアの宝庫だと思います。
 また、ラウドかも知れませんが、ノイジーではありません。

 さて、本盤は活動10周年記念盤です。
 収録曲の構成は、過去のアルバム収録曲からのセレクトが15曲、新曲が2曲です。
 以下に、曲を並び替えてみました。
 このうち、現在流通しているのは、07年の6曲入りミニ・アルバム、"Cutthroat and Dangerous"だけです。 

00年 : Doctor's In Disguise
13. So It Is
15. Doctor In Disguise

02年 : The Real Thing
1. How Do You Sleep At Night
2. Los Mas Rapidos Muchachos
5. Big Fat Mam'
8. Wham Bam With The Medicine Man
9. Holy Moly

04年 : Shut Up Doc !
6. Boogie Kind Of Thing
7. Shut Up!
11. Keep It Under Hundred
14. You Live, You Learn
16. Money Talks, Bullshit Walks (The Drummer Song Pat 1)

06年 : The Doc Pack
4. When The Shit Hits The Fan
17. Einstein (The Drummer Song Part 2)

07年 : Cutthroat and Dangerous
12. Big Bad Doc

New !
3. She's Hot, I'm Not
10. Hittin' The Big Mungo Note

 Doctor's Orderは、本盤のあと、The PiratesのJohnny Spenceをリード・ボーカルに迎えたアルバムを2枚リリースしています。
 これらは、いずれもJohnny Spence & Doctor's Order名義で出されました。

09年 Full Throttle No Brakes
11年 Hot And Rockin'

 これらは、Piratesの新作と言ってもいい感じに仕上がっていて、Doctor's Orderのメンツから敬愛する先達へ向けた愛を感じます。
 私は、故Mick Greenの個性がPiratesの方向性を左右していたと思っていましたが、彼抜きでも、Johnny Spenceが全く不変の音楽をやっていることに改めて驚かされました。

 最近作の"Hot And Rockin'"では、"A Shot Of Rythm & Blues"、"All Night Walker"などの古いR&Bのカバーが最高です。
 このあたりの感想は、懐古趣味が入っているかも知れません。
 この2作は、細かいことを言いますと、ポール・バーリソン風味が薄まったThe Piratesの新作という感じに、私は捕えました。

 最後に、本盤の収録曲について、気になることを書きます。
 先述のように、本盤収録曲は、過去作からのセレクトになっています。
 過去のアルバムのほとんどは、現在生産終了となっており入手が困難なため、その救済措置として本盤は価値があると思います。

 そこで気になるのは、この収録曲が新録なのか、過去作からの再収録なのかということです。
 私は、残念ながら"The Doc Pack"以前のアルバムを持っていず、聴き比べすることが出来ません。
 私としては、どちらかと言えば、過去録音のチョイスであってほしいです。

 しかし、クレジットには、08年録音と記されています。
 また、参加メンバーのクレジットに、過去のメンツの名前がありません。
 Doctor's Orderは、ギターとベースはオリメンから変わっていませんが、ドラムスは3代目なのです。

 現在のドラマーは、本盤ないしは、私が未入手の前作、"Live At Puistoblues"(7曲入り限定盤EP-CD、08年、入手困難)からの参加だと思われます。
 クレジットを信じるなら、過去作の新録音ということになります。
 うーん、そうなんでしょうか。

 そこで、唯一過去作を持っているアルバムの収録曲を比較してみました。
 "Cutthroat And Dangerous"が初出の"Big Bad Doc"です。

 本盤には、この曲に関して特記があり、きちんとMick Green参加とクレジットがあります。
 この曲が収録されていた"Cutthroat And Dangerous"は、06年末録音の07年リリースです。
 わずか2年前の録音であり、再収録の方がむしろ普通のように思いますが、私の聴く限り、新録音だと思いました。

 本盤収録曲は、07年盤と比べてボーカルが始まるまでのイントロが長く、間奏のソロも若干違うように聴こえます。
 これを聴く限り、Mick Greenのリフは譜面ではなく、その日のフィーリングなのかと思ったのでした。

 どうも、くだくだとすみません。
 ごちゃごちゃ考えずに、シンプルに音を楽しめ、そんな声が聴こえてきそうです。
 Don't Think, Feel …ですね。



Big Bad Doc by Doctor's Order




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ジプシー・ギター・マン

 私はコレクターではない、そう思っています。
 人にもそう言っています。

 そんな私が、気になるふたつの言葉があります。
 それは、こんな言葉です。

 「迷ったら買え」(…次の機会はない、後悔するぞ)
 「欲しがり続ければ、いつか手に入る」(…手に入らなかったからといって、くよくよするな)

 いずれも、アイテム収集にあたっての心構えですが、相反しているかのように聞こえます。
 厳密には、前段は事に当たっての行動基準で、後段は心の持ちようと言えるかも知れません。
 短期の真理と長期の真理と言い換えましょうか。

 ものにこだわる限り、心の葛藤は常にやってくるのでした。


The Rains Came
Joey Long

Side One
1. The Rains Came (Huey P. Meaux)
2. Don't Got No Education (J. Longoria)
3. I'm Gonna Preserve Your Love (J. Longoria)
4. Treasure Of Your Love (B. DeVorzon)
5. If I Should Need You (J. Rhodes)
Side Two
1. You Can't Give Back The Love (Jack Rhodes, Porter Jordan)
2. Funky Junky Woman (J. Longoria)
3. Part Time Love (C. Hammond)
4. Cajun Country (J. Longoria)
5. Midnight Blue (J. Longoria)

 Joey Longの名前は、数年前から常に私の心の中にあり、わずかでも情報が欲しい、1曲でも多く音が聴きたいと思っていました。

 私には、そんな存在が何人かいます。
 Joey Long、Buck Rogers、Gene Thomas、この三人こそ、数年に渡って私の関心を惹き続けている人たちです。
 いずれも、アイテムの絶対数が少なく、露出も少ない人たちです。
 ウェブ上にも、限られた情報があるのみです。

 そんな中、今回、私が以前から欲しかったアルバムを入手することが出来ました。
 Joey Longの70年代のアナログLP盤です。

 本盤は、Huey P. MeauxのCrazy Cajun Recordsから78年にリリースされたもので、以前に入手した"Flying High"というLPと合わせ、同レーベルから出された彼のアルバムは全て入手出来たことになります。

 Joey Longは、ルイジアナ出身のギターリストで、10代からプロとして演奏していました。
 ホンキートンク・カントリーからブルースまで、何でも弾きこなす人で、ヒューストンでHuey P. Meauxの眼に留まり、関係を深めた人です。

 Meauxのシュガーヒル・スタジオで他人の伴奏を数多くやった人で、本人のリーダー作がどれくらいあるのか、私にはよく分かりません。
 Meauxは、複数のレーベルを持っていましたが、そのひとつであるTear Drop Recordsのカタログには(LPは)ないようです。

 まあ普通に考えて、そんなにLPが作れた人だとは思えないので、シングルがどれくらい、どこのレーベルから出ているのか、気長に探していきたいと思います。

 これまで私が入手出来たのは、次の3種のフォーマット、計5アイテムです。

CD
"The Guys From Big Mamou" 94年 (Collectables COL-CD 5341) 米盤
Link Davisとのカップリング盤、全14曲中、Joey Longの曲は6曲。各曲のソースは不明ですが、"The Rians Came"は、70年代のCrazy Cajun録音ではないかと思います。

"Anthorogy" 00年 (Blues Factory BFY 47029) オランダ盤(?)
14曲入り、上記コレクタブルズ盤と4曲が重複(ただし、一部ミックス違いがある可能性あり)
上記同様、各曲のソースは不明ですが、"The Rians Came"は、70年代のCrazy Cajun録音ではないかと思います。

12インチLP
"The Rains Came" 78年 (Crazy Cajun CC-1027)
10曲入り、上記2枚のCDとは、表題曲の1曲のみが重複。
他の9曲はおそらく未CD化ではないかと思います。
表題曲は、シングルと同じバージョンだと思いますが未確認です。

"Frying High" 78年 (Crazy Cajun CC-1049)
10曲入り、上記のCD、LPとは重複なし。
おそらく全て未CD化だと思われます。

7インチ・シングル
"I'm Grad For Your Sake"/"The Lights Have Gone Out" (Running Bear 45-8300)
A面が、Doug Sahmの愛唱歌であるため、どうしても欲しかった7インチ盤。
上記のCD、LP、いずれにも未収録。
両曲とも、コンピCDにも未収録だと思われますが、収録CDがあるのなら、ぜひ入手したいです。

 さて、本盤の全体の印象ですが、これまで聴いたCD、LPの中で最も聴きごたえがあると思います。
 ブルースに聴きものが多く、なかなかにサイケで強力なフレーズが刺激的です。

 本盤は、スワンプ・ポップ・バラードの表題曲、"The Rains Came"を柱に、ブルースやソウル風の曲をうまく配置したアルバムだと思いました。

 "The Rains Came"は、比較的ゆるいアレンジでやっています。
 この曲は、Big Samboという黒人サックス・プレイヤーがオリジナルの曲で、Heuy Meauxが、自身が手掛けるアーティストに繰り返し吹き込ませている曲です。

 すぐに思いつくところだけでも、以下のようなアーティストが録音しています。

Sir Douglas Quintet
Freddy Fender
Warren Storm
Doug Kershaw
B. J. Thomas
Quintet (Doug Sahm抜きで作られた唯一のアルバムでやっています。)

 とりあえず、当分はこのアルバムを味わい尽くしたいと思います。

 でも、人間の欲は際限がありません。
 早くも、もっともっとという思いが募ってきています。



4 O'lock Blues by Joey Long


この曲は、"Anthorogy"に収録されています。



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The Rains Came
アンクル・サンボズ・キャビン
ロックン・カントリー
ビニール・オンリーのクインテット
テキサス熱中時代
テックス・マニアのうたげ
ダーティ・ドッグ・ワルツ
懐かしのアーケイディア
もっとジミーの好きなもの



夢はキングサイズベッドで

 コンピレーション・アルバムが好きです。
 たとえダブリが満載でもファン心情をくすぐるものがあれば、たとえコンセプトが究極にニッチでも、いーえ、それならかえって「その意気やよし!」と嬉しくなってしまうのでした。

 つい先だって、これは誰得なんだろう? そう思うコンピCDを見つけました。
 テキサスはサン・アントニオのガレージ・ロックをコンパイルしたアルバムです。
 Home Cooking Recordsが編纂して、Collectables Recordsが95年にリリースしたものです。

 このいかにも一般受けしそうにないコンセプトの仕掛け人は、Roy C. Amesさんという人で、この制作チームは、Doug Sahmの初期作品集や、Harlem Recordsのレーベル・コンピをCD化した布陣と同じです。

 うーん、Roy C. Amesさん、期待を裏切らない人ですね。
 これは入手するほかないです。


Classic Rock
from San Antonio, Texas 1958-1979

1. Sally Let Your Bangs Hang Down   (J. Olenn)  Johnny Olenn & The Jokers
2. One More Time (org. varsion)  (Head, Gibson, Bulton, Frazier, Buie, Pennington)  Roy Head & The Traits
3. One More Time (national varsion)  (Head, Gibson, Bulton, Frazier, Buie, Pennington)   Roy Head & The Traits
4. Sapphire   (J. Corduway)  Doug Sahm
5. Little Girl  (Gerick, Jones)   Pandora'Box
6. I Want You To Love Me (Ray Libert, T. Calderon) Ray Libert
7. Crazy Baby (R. London) Robb London
8. Henrietta (Fore, Hichfield) J. Dee & The Offbeats
9. Why Why Why (Doug Sahm) Doug Sahm
10. Don't Be Blue : Roy Head & The Traits
11. You're Late Miss Kate (Fore, Hichfield) J. Dee & The Offbeats
12. Mary Jane (R. London) Robb London
13. Set Me Free (B. Morrison) Bill Morrison & His Band
14. Don't Be Shy (Allison) Gary Middleton

 このCDは、残念ながら、全体的に音がよくないです。
 とはいえ、音なんて、アナログLP時代は細かいことはいいませんでした。
 そうですよね、同世代の皆さん。
 最近は、私もついつい言ってしまいがちですが…。

 もう、聴けるだけで嬉しい、そんな風に考えられたのは、思えば幸せな時代だったのかも知れません。
 ジャンプ・ブルースが手に入らなくて、スウェーデン盤のブートを漁ったことが懐かしい想い出です。
 今の若者たちは、スクラッチ・ノイズの彼方から聴こえる憧れの音楽なんて、そんな感慨を味わうことはないんだろうなあ…。

 さて、構えることなく聴きましょう。
 まあ、構えるような内容でもないです。

 Doug Sahmの初期作品が2曲入っていますが、この時期の作品は、いまやNorton Recordsから、ほぼコンプリート集が出て、有難みは少なくなりました。
 本盤リリースと同じ95年に、Roy C. AmesさんがDoug Sahmの初期音源のCD化への最初の仕掛けを行っています。
 このあたりの復刻CD化の流れは、だいたいこんな感じです。

95年 "Doug Sahm His Early Years" (Collectables COL-5559)
Roy C. Ames編纂14曲入り、別テイク1曲収録。

00年(98年?) "Doug Sahm In The Begining" (AIM 1308) 
豪盤。同じく14曲入りだが、上記盤とは2曲が別の曲。

00年 "Doug Sahm San Antonio Rock" (Norton ced-274) 
18曲入り。10代のとき他人の伴奏をやった4曲を収録。

 Doug Sahmの話になると脱線しそうなので、軌道修正します。

 期待していなかったのに、興味深かったのは、Roy Headの"One More Time"が2バージョン収録されていて、しかも続けて収録されているため、その違いがよく分かることです。

 オリジナル(TNT)は、思いのほかブルージーで攻撃的なギターをバックに、手拍子とタンバリンの連打を重ねるという手作り感満載のつくりです。
 …音がこもりまくっています。

 一方、全国盤(Septer?)のほうは、まずボーカル・エコーが深めで、なおかつブラス陣を前面にたてたアレンジです。
 アグレッシブなギターは、歌伴ではホーン・リフに隠れてオフ気味のため、間奏でのソロが引きたってとても効果的です。

 そして、終わったと見せかけるブレイクのあと、サビをもう一回繰り返すアレンジになっています。
 聴きやすさでは全国盤の圧勝ですね。
 ローカル盤は、比較するとチープなつくりが際立ちますが、それよりも音がこもりすぎだと感じました。

 Jimmy Deeの"Henrietta"が聴けるのも嬉しいです。
 この曲は、一時期かなり追っかけた曲でした。
 "Henrietta"は、海外サイトではロカビリーと紹介されることが多いですが、日本人の感覚ではスクリーム系ロックンロールじゃないでしょうか?

 この曲は、John Fogertyがお蔵入りになった幻の3rdソロ・アルバム(アサイラム)でカバーしていた曲で、Doug Sahmもライヴ盤でやっていたため(未入手ですが、"Country Groove"をB面とするDoug Sahm名義の76年の7インチ盤があるようです。)、一時期、私がたいへん関心を寄せていた曲です。

 過去記事で、この当たりのことをくだくだと書いていますので、よければご覧ください。
 当時は、ようつべでしか聴けないと思っていましたが、今なら本盤以外でも、以下のCDで聴けることが分かっています。

96年 "Dot Rock 'n' Roll" (英Ace) 
Dot Recordsのレーベルロックンロール・コンピ。
元はTNTですが、全国盤はDotから配給されました。

99年 "That'll Flat Git It! Vol.5" (独Bear Family) 
熊家族のレーベル別ロカビリー・コンピのDot編。

07年 "The Golden Age Of American Rock 'n' Roll, Vol.11" (英Ace) 
ビートルズ登場以前のヒットを網羅したコンピ・シリーズの1枚。

 ちなみに、Jimmy Deeの59年リリースのシングル、"Rock-Tick-Tock"(TNT 161)では、17歳のDoug Sahmがリード・ギターを弾いているらしいです。
 (上記のNorton盤、"Doug Sahm San Antonio Rock"に収録。)

 その他の曲は、いかにもローカルな感じがしますが、案外心地よく和めたります。
 時代の空気感みたいなものに、理由不明の好感を持ちます。

 もしかすると、今はその価値にさほど気付いていないだけかも知れません。
 このレアな無名曲たちを、いつか宝物と感じるときがくるかも知れないな、そんなことを夢想すると楽しいです。



Henritta by Jimmy Dee & The Offbeats




Henrietta by John Fogerty




Henrietta by Doug Sahm







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オーキー・フロム・レイト60s

 今回は、おそらくほとんどの方がご存じないだろうと思われるアーティストをご紹介します。
 サザン・ロック、ブルース・ロック系のギターリスト、シンガーのDavid Doverさんです。
 この人は、オクラホマ州タルサの出身で、本名をDavid Dover Barberといいます。

 私が勝手に推測するところ、この人はファンが高じてプロになった人で、録音機材好きのオタク系ミュージシャンではないかと思います。


Mississippi Mud
David Dover

1. You Rascal You (Sam Theard)
2. The Jealous Kind (Robert Guidry)
3. Mississippi Mud (David Dover)
4. Place in Your Heart (Manny Charlton)
5. It Came Out of the Sky (John Fogerty)
6. Slide Man (David Dover)
7. Dust My Broom (Robert Johnson)
8. Take Care of Me (David Dover)
9. Fool for Your Stockings (Beard, Gibbons)
10. Peter Gunn (Henry Mancini)

 David Doverは、通常はバンド編成で録音してはいますが、曲によっては全てのパートを自ら演奏することもまれではありません。
 そして、これはまず間違いないと思うのですが、60s70sロックの熱心なファンであり、何よりもJohn Fogertyの熱狂的なファンだろうと思います。
 私がそう思うのには理由があります。

 David Doverは、これまで4枚のアルバムをリリースしています。
 以下のとおりです。

04年 Seal Of Approval (この1枚のみ、David Dover Band名義。下の3枚はソロ名義)
05年 Mississippi Mud
05年 Veterans Day
10年 Dover Soul

 これらは、いずれも自身のレーベルからリリースしており、まだメジャーからの配給はないようです。
 
 今回、4枚のうち、どれを取り上げようかと考えました。
 最近作の"Dover Soul"にしよう、一旦はそう思ったのですが、結局考え直しました。

 4枚には、ほとんど音楽性の違いはありません。
 ただ、1stがサウンド的に若干しょぼい気がします。

 私の思うところ、バンド名義の1stが最もオタクっぽい音で、なぜか一人多重録音の匂いがします。
 これは、リズム隊が弱く感じるからだと思います。
 とりわけ、ドラムスが弱いように思います。
 きちんと額面どおりバンドでやっているとすれば、録音が悪いのかミックスのバランスが悪いのか、私にはリズム隊の音が軽く感じられます。

 アルバムの構成では、1st、2ndは有名曲のカバーを中心に、自作曲を交えるというスタイルです。
 対して、3rdは、ほぼ自作曲でまとめています。
 5年のブランクを開けて出された4thは、自作曲を抑え目にして、再び1st、2ndに近い構成に戻しています。

 というわけで(?)、音に若干不満がある1stはまず外し、カバー曲が多く、音楽的嗜好がわかりやすい2ndを選びました。
 本盤の参加メンバーは、以下の通りです。

David Dover : vocals, guitars(all), keys(2,3,4,5,6,8),bass(3), drums(3,4)
Rick Paul : guitar(2,4)
Rick Potter : guitars(2)
Michael Vines : screaming lead guitar(10)
C. J. Anderson : bass(1,2,4,5,6,7,8,9,10)
Rick Heck : drums(1,2,6,7,8)
Terry Brawley ; drums(5,10)
Stanley Lindley : drums(9)
Rick Morrow : keys(1,7,10)
Dave Russell : sax(1,2,10)
Jimmy 'Junior' Markham ; harmonica(8)

 最初の方で、この人は、John Fogertyのファンだろうと書きました。
 David Doverは、リリースした4枚のアルバムで、必ずJohn Fogertyのカバーをやっています。
 次のとおりです。

1st : 110 In The Shade
2nd : It Came Out of The Sky
3rd : Run Through The Jungle
4th : Who'll Stop The Rain

 "110 In The Shade"以外は有名曲ばかりですね。
 "110 In The Shade"は、唯一John Fogertyのソロ・アルバムからのチョイスで、97年の"Blue Moon Swamp"収録曲です。
 "Hundred And Ten In The Shade"と表記されていた曲で、ゴスペルっぼい曲調の作品です。
 残りの3曲は、いずれもCCRの曲で、説明不要の作品ばかりですね。

 David Doverは、もともとJohn Fogertyと声質が似ています。
 さらに、大好きな曲をやるということで、これらの曲では思い入れたっぷりにやっています。
 
 本盤では、冒頭の曲、"You Rascal You"が、John Fogertyの曲ではありませんが、Johnが75年のソロ2作目でやっていた曲です。
 どれだけ好きなんだ、と言いたいです。

 各アルバムのカバー曲からも、この人の趣味嗜好をうかがってみたいと思います。

1st : She Caught The Katy タジ・マハールのカバー
    Never Ending Song Of Love ディレイニー&ボニーのカバー
    Run Run Rudolph チャック・ベリーのカバー
    It's Not My Cross To Bear オールマン・ブラザーズのカバー 
    From Small Things デイヴ・エドモンズのカバー
    Life Is Hard ジョニー・ウインターのカバー

2nd : The Jealous Kind ボビー・チャールズのカバー
    Dust My Broom エルモア・ジェイムズ(ロバート・ジョンスン)のカバー
    Fool For Your Stocking Z. Z. トップのカバー

4th : Same Old Blues J. J. ケイルのカバー(ただし、本人のお手本はフレディ・キング盤らしいです。)
    Johnny B. Goode チャック・ベリーのカバー(何とChuck Berry本人と共演しています。ライヴ録音)

 音を聴かなくても、何となくどんなタイプの人か想像できてきていませんか?
 ルーツ・ミュージック好きの方なら、少なくとも、彼のカバー曲のチョイスに、好感をいだく人は少なくないと思います。

 趣味っぽい、アマチュアイズムもうかがわせながら、だからこそ共感できる部分が多々ある人だと思います。
 まあ、メジャーで出せないのには、それなりの理由があるとは思います。
 雌伏に不思議の雌伏なしではあります。

 とはいえ、B級、C級好みの奇特な皆さん、一度ご賞味されてはいかがでしょう。



Mississippi Mud by David Dover





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