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タフでなければ 優しくなれない

 今回は、Dr. Feelgoodの96年作、"On The Road Again"でリード・ボーカルを担当した、Pete Gageのソロ・アルバムをご紹介します。
 Pete Gageは、主としてピアノとハーモニカをプレイする、ブルース系の英国人ボーカリストです。

 彼は、Lee Brilleauxの後を受けた最初のボーカリストでしたが、結果的に1作のみの参加にとどまりました。
 ただ、Dr. Feelgoodのヨーロッパ・ツアーなど、ライヴの活動期間はそれなりにあったようです。


Tough Talk
Pete Gage

1. Tough Talk Boogie (Pete Gage)
2. Bad Feeling (Pete Gage)  
3. Victim Of Your Love (Pete Gage)
4. Relaxing With My Baby (Pete Gage)
5. No Other Woman (But The One From Louisiana) (Juha Takanen, Pete Gage) 
6. Standing At The Crossroads Again (Mickey Jupp)
7. Mose (Pete Gage)  
8. Midnight Hour Blues (Leroy Carr)
9. Under My Skin (Pete Gage)
10. I Got A Right (Pete Gage)
11. Other Side Of The Street (Pete Gage)
12. Sweet Mercy (Pete Gage) 
13. Let The Four Winds Blow (D. Bartholemew, A. Domino)
14. Living In My Sin (Pete Gage)
15. Do Some Rock'n'Roll (Pete Gage)

 本盤は、10年にフィンランドのヘルシンキのレーベル、Goofin Recordsからリリースされました。
 録音もフィンランドで行われています。

 Pete Gageとフィンランドとのゆかりは、やはりDr. Feelgoodの北欧ツアーがきっかけだったのではないかと推測します。
 "On The Road Again"のリリースが96年ですので、それを受けて同年か翌年くらいに、スウェーデンやフィンランドを回ったのではないでしょうか。

 Pete Gageは、97年に初のソロ・アルバム"Out Of Hours"をリリースしています。
  (その前には、私は未入手ですが、Pete Gage Expression名義で95年に1枚出しているようです。)

 その"Out Of Hours"がヘルシンキ録音で、Goofin Recordsからのリリースでした。
 このアルバムは、サイドメンを使わない、純粋なピアノの弾き語りアルバムで、スロー・ブルースを中心にやっていました。

 対して、13年ぶりとなる本盤は、素晴らしい伴奏陣を得て、ビート・ロック、ブルース・ロックのスタイルでやっています。
 参加メンバーは、以下のとおりです。

Pete Gage : vocals, piano, harmonica(2,9)
Gypie Mayo : guitars(4,6,8,9,11,13), bass(8)
Archie Hamalainen : guitars(1,2,4,5,6,9,12,15)
Honnu Pikkarainen : guitar(3,10), organ(3,7)
Arto Makela : guitar(7,14)
Teuvo Lampinen : bass(3,10,11,12,14)
Teppo Nattila : bass(1,2,4,5,6,7,9,13,15)
Juha Takanen : drums, percussion(all), accordion(5)
produced by Pete Gage, Juha Takanen, Teppo Nattila

 このメンツだと、やはりGypie Mayoの参加が目を惹きますね。
 もちろん、Dr. Feelgoodの2代目ギターリストです。
 Wilcoに比べると、ほのかにアメリカンなテイストも感じる人で、私は大好きでした。 

 そして、そのほかのメンツは、英米系の名前とは少し違う感じですね。
 これを見ると、フィンランド系の名前は、語尾が「〜ネン」で終わるのか、などと妙なところに感心してしまいます。
  
 実は、Gypie Mayoはスペシャル・ゲストで、本盤でPete Gageを強力にサポートしているのは、Doctor's Orderというバンドのメンツなのでした。

 Doctor's Orderは、98年から活動しているフィンランドのトリオ編成のビート・バンドで、スタイルとしては、完全にDr. Feelgood、The Pirates系のバンドです。
 (98年というのは、10周年記念と銘打たれていた彼らの08年リリースの編集盤から逆算しました。
 同盤には、「リー・ブリローに捧げる」と献辞が記されています。)

 このバンドは、その活動の開始時期が、Dr. Feelgoodが北欧ツアーをした(と思われる)すぐ後であること、また、バンド名が、Dr. Feelgoodの84年作、"Doctors Orders"を連想させることなどから、ウラは取れていませんが、強いリスペクトを感じます。

 Doctor's Orderは、Piratesとも深い関わりがあり、これまでMick Greenをゲストに迎えたミニ・アルバムを出したほか、直近の2作では、同じくPiratesのボーカルで、ベーシストのJohnny Spenceをフロントに立て、名義までJohnny Spence & Doctor's Orderとしてアルバムをリリースしています。
 どうです?
 興味がわいてきましたか。

 ちなみに、Doctor's Ordersという、酷似した名前の別バンドが存在しますので、ご注意ください。
 バンド名の語尾に(s)がつかないほうが、フィンランドのロッキンR&Bバンドです。

 本盤の参加メンツのうち、ギターのArchie Hamalainen、ベースのTeppo Nattilaの二人がDoctor's Orderのメンバーです。
 なぜか、ドラムスのメンツのみ不参加です。

 そのかわりに、ドラムを叩いているJuha Takanenは、これまでDoctor's Orderのアルバムを何枚もプロデュースしている人です。
 (ベースのTeppo Nattilaは、本盤ではバックに徹していますが、Doctor's Orderのリード・ボーカルで、Pete Gageの97年のソロ作、"Out Of Hours"で、既に制作陣の一人として参加していました。)

 さて、そろそろ中身を聴いてみましょう。
 Doctor's Order勢がサポートとはいえ、当然、メインのPete Gageのスタイルに合わせた演奏になっています。
 ガチのビート・ロックもありますが、全体的には、スライドを使ったブルース・ロック調のものが耳を惹きます。
 そして、Pete Gage自身による、ピアノのソロが聴きものです。

 全て必聴といいたいです。
 しかし、あえて私の注目曲をいくつかご紹介します。

1. Tough Talk Boogie
3. Victim Of Your Love
4. Relaxing With My Baby
5. No Other Woman
6. Standing At The Crossroads Again
8. Midnight Hour Blues
13. Let The Four Winds Blow

 うーん、チョイスしすぎですね。
 まあ、その他の曲も捨て曲なしといいたいです。

 アルバムの冒頭を飾る"Tough Talk Boogie"は、本盤を象徴する1曲です。
 Pete Gageのタフなボーカルが、名刺がわりの一発で、ガツンときます。
 アーシーなスライドが、ブギを基調としたメロにはまっていて、Peteのブルージーな咽喉もたっぷり聴けます。
 このスタイルこそ、Pete Gageの根幹をなすものでしょう。

 一方、驚かされるのが、本盤では珍しいストレートなバラードの"Victim Of Your Love"です。
 ブルージーなマイナー・バラードなら他にもありますが、ここでは男気たっぷりに、ダイナミックな込みあげ系バラードをやっています。
 サビを前にして、絞り出すようにハスキーになるボーカルが、John Hiattを連想させます。
 胸にぐっとくる名唱です。 
 お奨めの1曲です。

 "Relaxing With My Baby"は、Gypieがギターを弾いた曲で、アルバート・キング風のスクイーズ系スロー・ブルースが聴けます。
 マイナー・ブルースでも、比較的からっと乾いたトーンがGypieらしいと感じました。

 "No Other Woman"は、飛び道具的な1曲です。
 ここでは、ケイジャン・ロックンロールをやっています。
 アコーディオンも加わり、とにかく、楽しさ一杯のダンス・チューンに仕上がっています。

 "Standing At The Crossroads Again"は、Micky Juppの作品で、Dr. Feelgoodが91年のアルバム"Primo"でやっていた曲です。
 人生の岐路(女が去っていくという、本人にとっては重大事件)に立った主人公の心情を歌った曲で、比喩として、十字路でロバート・ジョンスンとエルモア・ジェイムズに出会う描写があります。
 Feelgood盤では、Steve Walwynがギターを弾いていた曲を、ここではGypie Mayoがプレイしていて、とても興味深いです。
 この曲は、Dave Edmundsもやっていますね。
 ぜひ、聴き比べてみてください。



 "Midnight Hour Blues"は、リロイ・カーのカバーで、これはPeteの97年のピアノ・ブルース集、"Out Of Hours"をすぐに連想しました。
 "Out Of Hours"は、期待せずに聴いたせいもあり、予想以上に気に入ったアルバムでした。
 ここでは、バンドをバックに、ゆったりとウォーキン・ブルースしています。
 弾き語りでも、バンド形式でも、本質は変わらないPeteのブルース・ボーカルが聴けます。
 タフでドスの効いたスタイルと、柔らかい歌いくちの切り替えが、大変魅力的です。

 "Let The Four Winds Blow"は、ファッツ・ドミノの比較的後期の作品で、私はどちらかといえば、もっと初期の作品が好きです。
 ここでは、ニューオリンズ風のピアノの雰囲気は希薄で、メンフィスあたりの、例えばロスコー・ゴードンなんかを連想しました。

 その他、GypieがT-Boneのフルアコっぽいサウンドを聴かせる、ウエストコースト・ブルース風の"Other Side Of The Street"や、これぞDoctor's Oederの本領発揮という感じのビート・ブギ、"Under My Skin"なんかも良いです。
 "Under My Skin"は、いくつかあるDr. Feelgood直伝のスタイルの1曲で、思わず頬が緩みます。

 全体を通して、Peteのボーカルからは、汗やガッツといったワードが頭に浮かび、Lee Brilleauxを想い起こさせてくれます。
 とりわけ、それはファストな曲に顕著で、Birilleauxの在りし日の姿を思い出さずにはいられません。

 Doctor's Order勢のプレイという面でいいますと、一本調子のビート・ロックだけじゃない、別の一面を知ることが出来ました。
 ちなみに、Doctor's Orderの06年作、"The Doc Pack"(生産終了、未入手)では、Pete Gageがゲスト参加して、2曲でボーカルとハーモニカを披露しているらしいです。



How Do You Sleep by Doctor's Order




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エア・フォース・ロック




サンアントニオ・ソウル・グレイツ

 これは、はずれもあるな、そう思いながらも期待半分で聴きました。
 短い曲が、わずか12曲、とりとめなく入っています。
 色んなタイプの曲を、ノー・プランでぶち込みました、とりあえず一丁上がり、そんなチープ感が漂っています。

 …しかし
 しかし、私にとっては、何気に刺激たっぷりの盤でした。

 結論
 これは良いです。


All I Could Do Was Cry
Rudy Tee Gonzales y sus Reno Bops

1. All I Could Do Was Cry (B. Davis)
2. Crazy, Crazy, Crazy Baby
3. Tell Me What You Gonna Do (B. Peterson) she's about amover
4. Have Faith (B. Ferguson)  
5. In The Palm Of Your Hand (B. Spurlock)   
6. Further On Up The Road
7. It Was Just An Illusion (Rudy T. Gonzales)
8. Oh Baby, I'm Crying (Rudy T. Gonzales)  
9. The Phillie (Rudy T. Gonzales)  
10. Only You (Can Break My Heart) (Buck Owens)
11. A Pair Of Sevens (Rudy T. Gonzales)  
12. The Tables Have Turned (Parker) 

 Rudy Tee Gonzalesは、名前だけは知っていました。
  
 まず間違いなく、サン・アントニオ出身のチカーノ・シンガー(グループ)だと思います。
 Huey P. Meauxのレーベルの一つ、Taer Drop Recordsから、60年代(多分)にアルバムを出しています。 
 (ざっくりいって、Tear Dropは60年代のテキサス中心、Crazy Cajunは70年代のルイジアナ中心だと思います。)

 私は、Sunny Ozunaのファンとして、彼のように歌えるチカーノ・シンガーを探していました。
 Sunnyのように、というのは、英語で歌うChicano Soul(R&B)を得意としている歌手ということです。

 そんな条件のもと、私が出会い、聴くようになったのが、Joe Jamaであり、Little Willie Gでした。
 そして今回、私は、Rudy Tee Gonzalesを新たにお気に入りリストに追加したのでした。

 Huey P. Meauxは、Tear Drop Labelから、Rudy Tee GonzalesのLPを4枚リリースしています。
 これは、同レーベルでは2番目に多いリリース数で、Meauxのお気に入りだったのだと思います。
 (ちなみに、最多リリースは、Sunny & Sunlinersの6枚です。)

 本盤は、05年にテキサスのGolden Eagle Recordsからリリースされました。
 録音クレジット等全く記載がないため、いろいろと推測するほかありません。

 収録曲数が12曲と少なく、LPのストレートCD化の可能性もなくはないです。
 ただ、Tear Dropの4枚のLPには、該当するタイトルがありません。
 また、ジャケが近影をコラージュしたもので、仮にLPをCD化したものだとすれば、ジャケ、アルバム・タイトルともに変更したものだということになります。

 普通に考えれば、新たに組んだ編集盤ということでしよう。
 しかし、05年のリリースで12曲入りというのは、やはり少ないですね。
 何とも、もやもやが残りますが、この真相は、Tear DropのLPの内容を確認するほかないてず。

 実は、Tear Drop盤のストレート・リイシューと思われるCDが、Golden Eagleから3枚出ています。
 これらは、LPと全く同じタイトルのCDです。
 LP盤の実物を見たわけではないため、確定とはいえませんが、おそらく間違いないでしょう。
 
 残る1枚の内容がわかれば、すっきりします。
 あせらないで、自然に明らかになることを待ちたいです。



 では、音を聴いた印象はどうでしょうか?

 正直、分からないです。
 60年代のヴィンテージ録音のような曲もあれば、70年代か80年代の音のように聴こえる曲もあります。
 ただ、音圧のレベルが曲によって不安定で、寄せ集めのような気はします。
 少なくとも、アルバム単位で録音された音源ではないと思います。

 私の印象では、70年代の音源を一部含む、60年代中心の音源をコンパイルしたものではないかと考えます。
 とはいえ、これまでの経験から、私の耳は全くあてになりません。
 そろそろ、単純に音を楽しみましょう。

 すべてが注目曲といいたいですが、あえて選ぶなら次の5曲です。

1. All I Could Do Was Cry
3. Tell Me What You Gonna Do 
5. In The Palm Of Your Hand
6. Further On Up The Road 
9. The Phillie

 いずれも個性がはっきりした曲で、全くかぶっていません。
 
 "All I Could Do Was Cry"は、Chess時代のEtta Jamesのナンバーです。
 映画「キャデラック・レコード」で、Etta James役のビヨンセが歌っていました。

 Rudy Gonzalesのバージョンは、あたかもOscar Tony Jr.が歌う、"For Your Precious Love"のようです。
 この意味、分かりますか?

 イントロから、プリーチが延々と続き、「もしかして、このまま歌詞を語り風にやるだけで終わりなのか?」と勘ぐり始めたころ、やっとメロにのせて歌いだした途端、すぐに終了してしまうという荒ら技です。
 アルバム冒頭からやってくれます。
 この曲は、RudyのR&Bバラードの代表作かも知れません。

 "Tell Me What You Gonna Do"は、誰が聴いても、Sir Douglas Quintetの"She's About A Mover"を連想してしまう作りの曲です。
 そっくりとまではいいませんが、全体のリズム、オルガンのリフなど、姉妹曲とでもいいたい曲です。
 この曲は、Rudy版のテキサス・ガレージ・ロックでしょう。

 この系統では、"The Phillie"も、楽しい曲です。 
 こちらは、Sam The Sham & The Pharaohsの"Wooly Bully"のスタイルに近く、影響力の大きさを感じます。

 "In The Palm Of Your Hand"は、三連の美しいDoo Wopバラードです。
 このスタイルこそ、Rudy Gonzalesの真価が最も出ている曲だと思います。
 バックのハーモニーが、とても効果的に使われて、Rudyのリードを引き立てています。
 同様のスタイルでやった、"Oh Baby, I'm Crying"も素晴らしい出来です。

 "Further On Up The Road"は、もちろんBobby Blandの名作のカバーです。
 こちらは、ブルージーなRudyを代表する曲でしょう。
 ここでは、奇をてらったフェイクはなく、素直にオリジナルに沿ったアレンジでやっています。
 ホーンの鳴りがいいです。
 ブルース・ギターが、ソロでペンペンとチンピラっぽい音を出していて、大好きです。

 最後に、"Only You (Can Break My Heart)"についても触れておきましょう。
 この曲は、もしやPlattersの大有名曲(Buck Ram作)ではと思いましたが、クレジットどおりBuck Owensの曲でした。
 あちらは、"Only You (And You Alone)です。 

 さて、アルバムとしては、まとまりのなさが、かえって善玉カオス(?)という感じです。
 チカーノR&Bの好アルバムだと思います。
 こういうスタイルに需要があったのは、いい時代だったですね。

 Rudy Tee Gonzalesは、初期からスペイン語での歌唱曲も多く、その意味でもSunny Ozunaとよく似ています。
 カントリーの名曲たちを全編スペイン語でカバーした、その名も"Country"というアルバム(多分、Tear Drop原盤)もお奨めです。



unknown song by Rudy Tee Gonzales y sus Reno Bops




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Sunny Ozuna
サニーの歌声にダグを偲ぶ
おかえり ブラウン・ブラザー
こだまでしょうか、いいえだれでも
サニー・ミーツ・ジーン・トーマソン

Sunny & Sunliners
ハリウッドのサニー
泣いたサニーがもう笑った
ぼくらのチカーノ・ヒーロー

Joe Jama
ブラウン・ソウル 孤高のテハーノ
ジョー・ジャマの音楽と人生

Little Willie G
ディスカバー・ウイリー・ガルシア
心の扉を開けてくれ

Compilation
ウエストサイド・ソウル
チカーノ・タウンからの贈り物
ハーレムのダイスを転がせ
バリオでロッキン
イーストサイド・ワールドへようこそ
イーストL.A.の郷愁




ハワイアン・カウボーイ

 今回は、ハワイのカントリー・シンガーをご紹介します。
 ハワイはアメリカの州とはいえ、ちょっと不思議な感じです。
 「マウイのハワイアン・カウボーイ」を自称するこの人、さてどんなテイストなんでしょうか?
 実は、ファースト・コンタクトです。


My 9th Island Paniolo Ranch
Danny Estocado

1. Hook In My Heart (Kevin Wicker)
2. Volcanic Heart (William Nauman)
3. Ring of Fire (June Carter, Merle Kilgore)
4. Long Black Train (Josh Turner)
5. Keeper of the Key (Harlan Howard)
6. Po'o Wai U Makawao Rodeo (Danny Estocado)
7. Heart That You Own (Dwight Yoakam)
8. Wasted Days and Wasted Nights (Huey P. Meaux)
9. My 9th Island Paniolo Ranch (Danny Estocado)
10. It's Only Make Believe (Conway Twity, Jack Nance)
11. Hello Love (Betty Jean Robinson, Aileen Mnich)
12. Daddy's Home (William Henry Miller, James Sheppard)
13. Jesus Hold My Hand (Albert E. Brumley)
14. Pele Pu'uwai (William Nauman)
15. Sweet Spot (Mark May)
16. Pride and Joy (Stevie Ray Vaughan)

 プロフや最近の活動などの詳細は不明ですが、彼のサイトの情報によれば、オアフ島生まれで、94年CDデビュー、これまでに6枚のCDをリリースしています。
 主な活動の拠点は、ラスベガスらしき内容が記載されていました。

 そして、定期的にハワイへ戻って活動しているほか、毎年日本で公演を行っているとの記述がありました。
 実は、日本のカントリー・ファンの間では周知の人なんでしょうか?

 熊本や京都のカントリー・フェスに出ている人なのかな?
 どうも思い切り無知をさらけ出している気がしてきました。 

 本盤は05年のリリースですが、アマゾンのエントリーでは最近作です。
 既にかなり前という感じですが、くだんのサイトの記述ともあっています。

 とにかく、聴いてみましょう。
 
 ……。

 通して聴いて最初に頭に浮かんだのは、「ハワイのフレディ・フェンダー」というワードでした。
 本盤の録音はナッシュビルで、なーんだと拍子抜けする思いですが、70年代のFreddy Fenderの作品を思わせる、輪郭のくっきりしたポップなサウンドが、とても聴きやすいです。

 本盤では、"Wasted Days and Wasted Nights"をやっていますが、Freddy Fenderを連想したのは、それだけが理由ではありません。
 ミディアム、スローのバラードでの泣き節が、Freddy Fenderを思い起こさせるのでした。

 本盤では、さほど顕著には出てはいませんが、そこはかとなく漂うハワイアン・テイスト、ポリネシアン・フレイバーが色々と想像力をかきたててくれます。

 直接的には、"Po'o Wai U Makawao Rodeo"や"Pele Pu'uwai"のような曲ですね。
 とりわけ、"Pele Pu'uwai"です。
 ハワイ語(?)の不思議な懐かしい響き、いかにもな「らしい」音階、旋律を使ったメロに癒されます。
 こういった曲を、もっとバイリンガルでやれば、さらにFreddyっぽく感じることでしょう。

 ハワイ風味探しに気持ちがとられていましたが、何気に、ビッグ・カントリーをやっていて興味深い内容になっています。 

 ジョニー・キャッシュの名作から、ホンキートンク・マイスター、ハーラン・ハワードの作品、ドワイト・ヨーカムのしっとり系バラードまで、バラエティに富んだ選曲です。
 コンウェイの初期の名作ロッカ・バラード、"It's Only Make Believe"には意表を突かれました。

 まあ、意表を突くといえば、ラストのスティーヴィー・レイ・ヴォーン作品、"Pride and Joy"に勝るものはないですね。
 ここでは、ぶっとい迫力のシャッフル・ブルースに果敢に挑戦して、"Sweet Spot"と並んで、ブルージーなDannyが聴けます。

 そんな中、私のお奨めは、オリジナルでは、アルバム・タイトル曲の"My 9th Island Paniolo Ranch"、カバーでは、"Daddy's Home"です。

 "My 9th Island Paniolo Ranch"でいう、9番目の島とはなんでしょう。
 ハワイ州は、8つの島と100以上の小島で構成されています。
 この自作の軽快でポップなナンバーは、「ぼくがほんの子どもだったころ…」という歌詞で始まります。
 ハワイ生まれの気概みたいなことを歌っているのではないでしょうか。
 バックで適時入ってくる「掛け声」「囃子言葉」が雰囲気を盛っています。

 "Daddy's Home"は、ドワイト・ヨーカムのバラードとともに注目のバラードです。
 この曲こそ、最もFreddy Fenderを思わせる歌唱だと思います。
 泣き節が見事に決まったサービス・エース級の1曲でしょう。

 "Daddy's Home"の原曲は、Shep & LimeLitesが61年にリリースした、遅れてきたドゥ・ワップの名作でした。
 時は既にアーリー・ソウルが芽吹き始めていたころです。

 この曲の歌詞の最期は、"〜A Thousand Miles Away"と結ばれています。
 この"A Thousand Miles Away"のフレーズこそ、リーダーで作者のJame Sheppardが、以前に組んでいたグループ、The Heartbeats時代にヒットさせた、もうひとつのワン・ヒット・ワンダー曲のタイトルなのでした。

 Danny Estocadoは、なかなかに面白いアーティストだと思います。
 過去作では、もっとハワイ・ルーツに根差したアルバムもあるようなので、聴いてみたいです。

 ところで、思いつきを書かせてください。
 アメリカのもうひとつの飛び地、アラスカ州には、カントリー・シンガーはいるんでしょうか?
 もちろん、ここでイメージしているのは、エスキモーやカナダのイヌイットのような先住民族出身のシンガーです。
 どうでしょう?

 



Po'o Wai U Makawao Rodeo by Danny Estocado






遊び人ら 国境の南にたむろする

 今回は、初物です。(もちろん、私にとって)
 初めてこのバンドの名前を知った時、字づらから間違った覚え方をしてしまいました。
 よく見ればすぐにわかるのですが、Tejano Gigolos(テハーノ・ジゴロズ)だと思ったのです。
 当然、頭にあったのはTex-Mex系のバンドでした。

 しかし、二度見するまでもなく、正しくはTijuana Gigolosです。
 Tijuanaはメキシコの街の名前、Gigoloはもう英語化してるのでしょうが、もともとはフランス語で、意味はまあ分かりますよね。
 一体、どういうバンドなんでしょうか?


Do Ya Wanna Go ?
Tijuana Gigolos

1. Blind Man Walkin' (Marty Steinhausen)
2. Oh Me Oh My (Marty Steinhausen)
3. Ice Cream Cone (Marty Steinhausen)
4. Le Bigga Mack (Marty Steinhausen)
5. Cajun Jukebox (Marty Steinhausen)
6. Haley's Comet (Dave Alvin)
7. 25 to Life (Marty Steinhausen)
8. Mas Fina (Marty Steinhausen)
9. The Letter (Marty Steinhausen)
10. Days and Days (Marty Steinhausen)  
11. El Fuego Del Sol (Marty Steinhausen)
12. Knock Knock (Marty Steinhausen)
13. South of the Border (Marty Steinhausen)
14. Jeff's Banana (Pick Your Own Damn Fruit) (Jeff Boehmer)
15. Do Ya Wanna Go? (Marty Steinhausen)

 Tijuanaという街からは、レイモンド・チャンドラーの小説(「長いお別れ」?)を連想します。
 私立探偵フィリップ・マーロウが、テリー・レノックスの事件で関わりを持った(?)街でした。

 この街のカナ表記は、ティファナか、ティワナかなんて、訳者のあとがきでしたか、書評だったかで話題になっていたのではないかと思います。

 当時、私は中2くらいだったと思います。
 中1でエドガー・ライス・バローズ(John Carter, Tarzan)に出会い読書の面白さを知り、中2でハワード(Conan)やチャンドラーを知って、さらに夢中になって翻訳小説を読みまくったものでした。
 あれっ 何の話でしたっけ?

 メキシコは、アメリカの4つの州と接していて、東端はテキサス、西端はカリフォルニアに接しています。
 Tijuana(ティファナ)は、メキシコの北西端にあって、カリフォルニア州の南端と接する街です。

 このバンドの本拠地ですが、ウェブから限られた情報を見る限り、ネブラスカ州リンカーンのような気がします。
 それでは、なぜティファナと名乗っていいるのか、という話になりますが、よくわかりません。
 でも、少なくともメキシコのバンドではないだろうと思います。

 本盤を聴いたところ、予想と違う展開で進行し、驚きました。
 当初、Tex-Mex系のバンドだ思っていたのですが、アーシーなカントリー・ロック("Oh Me Oh My")だったり、ケイジャン・カントリー("Cajun Jukebox")だったり、シャープなインスト・ブルース("Jeff's Banana")だったりして、「えっ」という感じです。

 マカロニ・ウエスタンのテーマみたいな曲("El Fuego Del Sol")までやっています。
 さらに、ロカビリーっぽい曲("Days and Days")もあり、ヒーカップ、マンブルを屈指したボーカルが聴けます。
 
 本盤は、05年にリリースされたもので、あるいは、このバンドの1stかも知れません。
 (この後に、もう1枚出でいます。)

 参加メンバーは、以下の通りです。

Marty Steinhausen : guitars, vocals(1,2,3,5,,8,9,11,12,13,15), bass(14)
Tony Meza : congas, bongos, percussion, vocals(6,7,10,12)
Jeff Boehmer : bass, guitar(14)
Tom Harvill : organ, piano, vocals
Dave Robel : drums
guest
Justin G. Jones : cowbell on "Le Bigga Mack"
David Fowler : fiddle on "Cajun Jukebox"
Benjamin Kushner : harmonies on "The Letter"
Joyce Durand : harmonica on "South of The Border"

 メンバーの編成は、ギター、ベース、鍵盤、ドラム、パーカッションからなる5人組です。
 主としてリード・ボーカルをとるのは、ほとんどの曲を書いているギターのMarty Steinhausen(ドイツ系?)で、パーカッションのTony Mezaがセカンド・ボーカルとして4曲ほどリードをとっています。
 Tony Mazaのボーカルは、若干荒い気もしますが、アルバムの中でいいアクセントになっています。

 既に何度か聴き返しているのですが、聴き返すたびに好感度が上がります。
 
 特筆したい曲があります。
 "Oh Me Oh My"です。

 ただ、この曲は、バンドを代表する曲といえるかどうかは難しいです。
 何しろ、いろんなタイプの曲をやるバンドなので、もしかすると突然変異的な1曲かも知れません。
 (見極めるため、もっとアルバムが聴きたいです。)

 あるいは、"Ice Cream Cone"のような、疾走系で不良っぽいロックンロールこそ本質かも、とも思います。
 それでも、"Oh Me Oh My"を、ぜひとも推したい理由があります。
 それは、この曲が、John Fogertyの歌唱を連想させてくれる、最高の曲だからです。

 CCRは、私にとって、Beatlesの次に、その後のレコード漁りの指標になったバンドでした。
 Beatlesからは、50sロックンロール、ロカビリー、ブラック・ハーモニー・グループ、ガール・グループなどに導かれました。

 そして、CCR(John Fogerty)からは、MGsを始めとするメンフィス・ソウル、カントリー、ジャグ・バンド、ゴスペル・カルテットなどに関心を寄せるきっかけを得たのでした。

 "Oh Me Oh My"は、いかにもJohn Fogertyが書きそうなメロを持つ、カントリー・ロックに仕上がっています。
 だけでなく、ボーカルの高音の出し方など、雰囲気がまんまJohn Fogertyという感じで、聴き惚れました。
 全てのJohn Fogertyファンにお奨めの1曲です。

 そして、もう1曲、"Haley's Comet"にも注目です。
 この曲は、元Blastersの中心メンバーだった、Dave Alvinとルーツ系シンガー・ソングライターのTom Russellが書いた曲で、作者盤のほか、Texas Tornadosのカバーがあります。

 ロックンロール・レジェンドの一人、ビル・ヘイリーの晩年の生活、孤独な最期を歌った曲で、「彗星が落ちた」という比喩が印象的です。
 (良く知られているように、彼のパンド名はコメッツでした。)

 アメリカで落ち目になったヘイリーは、ヨーロッパに活路を見出します。
 当初、大きなリスペクトを持って迎えられたヘイリーでしたが、その人気は長続きしませんでした。
 ロックンロールの危険で反抗的なイメージは、マーロン・ブランドから、エルヴィスやジェイムズ・ディーンへと受け継がれ、髪の薄い中年のヘイリーは、時代から置いていかれようとしていたのです。 
 かつてのスターに訪れた現実のペーソスと、栄光時代の幻覚を、疾走感たっぷりのアレンジで描写するロックンロールがかっこいいです。

 アーシーなロックンロールから、カントリー・ロック、ケイジャン・カントリー、シャッフル・ブルース、ウエスタン(?)・インスト、異国情緒漂うボーダー・ソング、繊細で内省的なバラードまで、ごった煮感満載で、まだ正体がつかめない、まだまだ底が深いんじゃないか、そう期待させてくれる好バンドだと思います。

 2ndが入手困難なのが残念です。
  (MP3アルバムは購入できます。)

 まあ、あせらずにいれば、そのうちいつか入手できるでしょう。



Oh Me Oh My by Tijuana Gigolos




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彗星はアメリカの心に沈む






エア・フォース・ロック

 皆さんは、もうDr. Feelgoodの4枚組Box Set、"All Through The City 1974-1977"は聴かれたでしょうか?

 私は入手こそしましたが、聴き終えてしまうのが惜しくて、まだDisc1と2をチェックしただけで、ぐずぐすしています。
 何度も聴いた内容ですが、パッケージやディスクが変わるだけで、ついつい嬉しくなる気持ちを抑えられません。

 さて、今回のアルバムは、Dr. Feelgoodと少なからず関連があります。
 少し前置きが長くなりそうですが、ご容赦ください。


Put Out The Cat
Geno Washington

1. Radio (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
2. Take That Job And Stuff It (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
3. Slow Down (Perkins)
4. Whatd I Say (Ray Charles)
5. Didn't I Tell You (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
6. Let The Good Times Roll (L. Lee)
7. Star Dreamin (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
8. Let It Rock (W. Washington, M. Lee, G. Russell)

 94年にLee Brilleauxが亡くなり、最後のオリメンがいなくなったあとのことです。
 残ったメンツが、新たなボーカリストを加入させてバンドを継続すると知ったとき、私はもはや別のバンドだなと感じ、興味を失いました。
 実はそれ以前から、ギターのSteve Walwynのプレイがあまりしっくりこず、冷め始めていたのでした。

 そんな私でしたが、再び関心を持つことになります。
 00年の"Chess Masters"のリリースを知り、つい手に取ったのです。
 やはり、カバー集好きの私は、触手を伸ばさずにはいられなかったのでした。

 そして、食わず嫌いを反省した私は、改めてスルーしてきたアルバムに注目するようになったのでした。
 Lee Brilleauxの後を受けた最初のボーカリスト、Pete Gageが参加した唯一のアルバム、96年の"On The Road Again"は、繰り返し聴くうち、初めてSteve Walwynのギターも悪くないかもと思ったのでした。

 さて、なかなか話が進みませんが、お許しください、そろそろ核心へ近づいています。

 私は、"On The Road Again"でPete Gageに関心を持ちました。
 そして、彼のキャリアを調べるうち、その過程で同姓同名のミュージシャンにぶつかったのです。

 もう一人のPete Gageは、やはり英国人で、ただしギターリストです。
 こちらのPete Gageがメンバーだったのが、今回の主人公、Geno Washingtonが60年代に組んでいたバンド、Gene Washingtpn & The Ram Jam Bandでした。

 やっと話がつながりました。
 この人は、過去に日本盤が出ていましたが、ソウル・ファンにも、ロック・ファンにも知名度が低い人でしょう。

 Geno Washingtonはインディアナ州出身のアフロ・アメリカンで、60年代は、英国に駐留する合衆国空軍に所属するパイロットでした。
 軍属を離れた彼は、既にバンドを組み、ボーカリストの交代を考えていたPete Gageの誘いを受け、そのまま英国に留まってバンド活動に参加します。

 彼以外のメンバーは、全員白人青年らからなるホーン入りのバンド、それがRam Jam Bandでした。
 このとき、リリースされた2枚のアルバムが評判となり、彼は母国よりもヨーロッパで成功したソウル・シンガー(?)となります。
 メンフィス・ソウルから影響を受けたバンドは、中でもジャンプ・ナンバーに魅力があり、特にライヴ盤での激しいノリが、R&B好きのモッズに受けたのではないかと思います。

 ようやく本題です。
 本盤は、70年代に米国へ戻り音楽活動を継続したGenoが、81年にリリースしたソロ・アルバムです。
 (ただし、なぜか録音はベルギーのスタジオになっています。)

 60年代には、ソウル・レビュー風のサウンドをやっていた彼ですが、ここでは、ロックンロール、もしくはビート・バンド系のサウンドに乗せて歌っています。
 それは、本盤を聴いたことがない方も、カバー曲のチョイスを見れば、なんとなく分かっていただけますよね。

 ただし、クレジットに誤りがあります。
 "Slow Down"は、作者がPerkinsと誤記されていますが、ここでやっているのは、もちろんBeatlesが有名にした、Larry Williamsのあの曲です。

 そして、"Let The Good Times Roll"は、Louie Jordanに同名曲があり、B.B.Kingが愛唱歌としているので、そちらが有名ですが、作者名がLeeとなっていますので、Leonard Leeが書いたShirley & Leeの曲だと分かりますよね。

 …と言いたいところですが、何とここでも間違っています。
 演奏を聴けば、これがEarl Kingの曲で、別名"Come On"として知られている曲だと分かります。
 うーん、気が抜けません。


 さてここで、本盤とDr. Feelgoodとを結ぶ、もうひとつの繋がりを披露しましょう。
 本盤をご存じの方、または今までの文章で分かったという方は、今少しおつきあいください。
 本盤の参加メンバーは、以下のとおりです。

Geno Washington : vocals
Gordon Russell : guitars & backing vocals
Jude 'Judge' Baptiste : bass
Mick Lee : percussion & backing vocals
add.
Bart Decorte : guitars
Keith Bonsor : piano & clavinet
Edward Kuczinski : electric piano

 気が付かれましたか?
 ギターで参加しているのは、この数年後にJohnny Guitarの跡を継ぎ、Dr. Feelgoodの4代目ギターリストとなった、あのGordon Russellその人なのでした。

 時系列でいいますと、本盤のリリースが81年で、翌82年にリリースされたのが、Johnny Guitarが参加した唯一のDr. Feelgoodのアルバム、"Fast Women and Slow Horses"でした。

 私は、リズム隊の総入れ替えが行われた、80年代半ばのDr. Feelgoodが当初は気に入りませんでした。
 まあ、演奏の良し悪しではなく、好き嫌いかも知れません。

 例えば私の場合、ベースに関しては、好きなプレイは頭に浮かびますが、嫌いだと思う演奏はすぐに思いつきません。

 その点、ドラムは好き嫌い双方の自覚があります。
 新メンバーのKevin Morrisのドラムは、80年代アメリカン・ロックによくあった、おかずの少ない、バッシャン、バッシャンとジャストだけれど単調な、うるさいだけのスタイルで、私の好みではないです。
 私は、ブリティッシュ・ロックのドラマーでは、Terry Williamsのシャッフルが好きです。

 ですが、ギターのGordon Russellは好きでした。
 Russellは、同じブルース・ベースのギターリストでも、WilcoやGypieに比べると、ロックンロール寄りのプレイだと思います。
 どちらも好きですが、Russellのプレイは、バンドの軌道を少し修整した感じがして、単純に新鮮でした。

 本盤でも、既にDr. Feelgoodで聴かせることになるスタイルの片りんがうかがえ、スイングするロックンロール・ビートが快感です。

 先にカバー曲について触れましたが、メンバーで共作したオリジナルは、完全にビート・ロックで、スキン・ヘッドのジャケ写からは想像つかない音に仕上がっています。

 Pub Rock、Dr. Feelgoodのファンなら、聴いて損のない好アルバムだと思います。




 追記
 Geno Washingtonとそっくりな名前のR&Bシンガーがいます。
 Gino Washingtonという人で、こちらはデトロイトのシンガーで、別人ですが、アマゾンの検索では混在してヒットします。
 ちなみに、Ginoさんもまた、日本では無名だと思いますが、なかなかに聴かせます。



Radio by Geno Washington




グッド・ロッキン・ダディ

 英国ピアノ・ロッカーのアルバムをご紹介します。
 ただし、新譜ではありません。
 私が入手したものは、英盤(アイルランド盤?)のCDで、リリース年のクレジットがありません。
 まあ、ミレニアム以降に出されたリイシュー盤だと思います。

 オリジナル盤は、楽曲の出版年のデータ等から、おそらく98年ころのリリースではないかと推測します。


  
Come On And Dance
Gavin Povey
& The Good Rockin' Daddys

1. Coma On And Dance (Gavin Povey)
2. Looks Likes Love (Gavin Povey)
3. Did I Tell You (Gavin Povey, Augie Meyers)
4. That's The Time (Gavin Povey)
5. Who's That Guy (Gavin Povey)
6. Hold Me Back (Gavin Povey)
7. Glory Bound (Gavin Povey)
8. Call Me Soon (Gavin Povey)
9. Hold Me Close (Gavin Povey, Phil Nelson) 
10. What It Is (Gavin Povey, Phil Nelson)

 Gavin Poveyは、プロフがあまり分からない人です。
 英国の鍵盤奏者で、現在は、Albert Leeのバック・バンド、Hogans Heroesの一員としでピアノやオルガンを弾いています。

 Albert Leeのライヴ盤を聴いたとき、この人は歌いたい人なんだと感じました。
 Leeの公演のセットリストでは、2曲程度、リード・ボーカルをとっています。

 Gavin Poveyは、80年代の英国ロカビリー・スター、Shakin' Stevensの全盛期のアルバム数枚で、ピアノを弾いていた人です。
 Shakyのファンである私は、Albert Leeのアルバムに彼の名前を発見して、俄然関心がわいてきたのです。
 しかも単にバックの人ではなく、自作曲を歌っていることから、ソロ活動はないのかと考えたのです。
 そして、少し調べました。

 結果、よく分かりません。
 ただ、言えることがあります。
 本盤は、おそらく本人のリーダー作としては、現在入手可能な唯一のアルバムだろうということです。

 本作の収録曲は、全て自作で、楽曲の出版は最も古いもので85年、新しいもので98年とクレジットされています。
 これらから、古い曲は、ソングライターとして他人に提供してきたものか、あるいはバンドなど別名義で、本盤以前に録音があるのではないかと考えましたが、調べきれませんでした。

 他人の伴奏では、パブ・ロック、ニューウェイブの時代に、いくつかの痕跡があるようです。

 79年のInmatesの1st、80年のLew Lewisの1stでピアノを弾いています。
 そして、その後まもなく、Shakin' Stevensのバンドに参加します。
 また、この間、84年にはBilly Blemnerのソロ作、"Bash"に参加し、やはりピアノを弾いています。

 興味深いのは、Augie Meyersとの関係です。
 本盤に収録されている曲、"Did I Tell You"は、Augieとの共作で、出版クレジットは85年となっています。
 Augieとは、どういう経緯でつながりが出来たのでしょう。 

 "Did I Tell You"は、Augieも吹き込んでいて、86年の"Augies Back"、同年の"My Main Squeez"と2枚のソロ作で取り上げたほか、Texas Tornadosの91年作、"Zone of Our Own"でも再演しています。

 "Augies Back"がロンドン録音で、Gavin Poveyがサポートメンの一人として参加していましたので、そのあたりがゆかりとなったのかも知れません。

 ところで、"Did I Tell You"は、二人の共作名義ですが、Augieの作風を強く感じさせるつくりの曲です。
 それは、本盤のその他の曲と聴き比べれば明らかです。
 仮に、Gavin Poveyの主導で書かれたとすれば、Gavinが完全にAugieをイメージして書いたのでしょう。

 Augie Meyersのファンなら、このGavin Poveyのバージョンはぜひ聴いていただきたいです。
 ここで、アコーディオンを弾いているのはPoveyです。
 (さらに言いますと、"Did I Tell You"は、Flaco Jimenezもアーフリー時代にカバーしていますので、そちらも聴くほかないですね。)

 ここで、遅ればせながら、本盤の参加メンバーをご案内します。
 以下の通りです。

Gavin Povey : lead vocals, keyboads, accordion, bass
John Dillon : drums on Track1,7
Geoff 'Hound Dog' Haves : guitar & b.vox on track1,7
Jimmy Smith : guitar on track3,6
Fran Byrne : drums on track4,5,8,10
Rod Quinn : drums on track2,9
John McLoughlin : guitar on track2,4,5,8,9,10
John Rafferty : rhythm guitar : on track2

 うーん、誰一人知らないなあ…。
 私の今までの守備範囲には入ってこなかった人たちなのでしょう。

 本盤でのGavin Poveyの大半の演奏は、直球のロックンロール・ピアノで、さらに言えばライト・テイストなブギウギが基本という感じです。
 ボーカルには特段のあくがないですが、クールな雰囲気があります。

 "That's The Time"のような、ニューオリンズR&Bスタイルの三連曲もやっていて、ボーカルはFatsぽかったりしますが、ピアノのプレイは、Fats DominoでもHuey Smithとかの系統でもなく、歌伴で、ポロンポロンときれいなフレーズをいれるところなどは、フロイド・クレイマー風だったりして不思議です。

 早い曲はジャンプ系ですが、かといって、Amos Milburnのような怒涛の打楽器プレイでもないです。
 どちらかといえば、ムーン・マリカンやメリル・ムーアらを連想させる、転がるようなヒルビリー・ブギ・ピアノです。
 
 本盤では、あえて黒っぽさを抑え気味にしている気がします。
 それでも、にじみでてくるのは、ジャンプやジャイブ、ウエスタン・スイングなどのブギ曲のテイストです。
 マンブルぽいボーカルが曲に被さってくると、ピアノ系のロカビリアンという感じにも聴こえます。

 全体的には、ざっくりと、おかずの少ない、ライト・テイストのブギウギ・プレイといってしまいましょう。
 
 中には、スラッピングが聴こえる曲がありますが、クレジットが正しければ、本人のプレイということになります。
 また、ギター陣が良い感じで、Rockpileを連想させるバッキング・プレイは、やはり麻薬のような魅力があります。

 そして、トラック7の"Glory Bound"は、Albert Leeのライヴ盤でやっていた曲です。
 歌詞の中に、グローリーとか、ハレルヤとか出てくるのが特徴で、セイクレッド・ソングなんでしょうか。

 アルバムの終盤の2曲では、ポップ・カントリー調のミディアム・リズムの曲もやっていて、よい感じです。
 とりわけ、ラストの曲は、黒人シンガーがやれば、アーリー・ソウル風に聞こえそうな良曲です。

 本盤は、Gavin Poveyが、自身の資質のうち、あえてカントリー、ロカビリー・サイドのそれを前面に打ち出そうとしたアルバムだと感じました。
 それでも、ときおり顔をのぞかせ、滲み出てしまう、ほのかなR&Bテイストが、私にはたまりません。



Looks Like Love by Gavin Povey


これは、ギターがメインの曲ですね



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Shakin' Stevens
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Augie Meyers
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テックス・マニアのうたげ


 今回は、Los Texmaniacsの最新作をご紹介します。
 Los Texmaniacsは、Tejas Brothersや、イーストL.A.のLos Fabulocosとともに、私が注目しているTex-Mexバンドです。

 本盤は、彼らの初のライヴ盤になります。
 録音時期は、クレジットがなく不明ですが、09年リリースの前作の収録曲を含む内容になっています。 


Live In Texas
Los Texmaniacs

1. Lucerito  
2. Lollypop Polka  
3. A Mover El Bote (Matias Munoz)
4. Rain, Rain (Huey P.Meaux)
5. Por Una Mujer Casada
6. El Pajualazo
7. Stranded (fea, Willie J. Blues)
8. Viva Seguin
9. Cuando Me Dejes De Amar
10. Que Bonita Chaparrita (Henry Gomez)
11. Sacate Los Piojos Chencha
12. Escaleras De La Carcel
13. Cancion Mixteca
14. Dame Tu Amor Baby (Studio Version)
15. Que Suerte La Mia (Studio Version)

 本盤は、テキサスのローズデイル公園でのライヴとなっていて、野外公演の収録なんでしょうか。
 トラック13までがそのライヴ音源です。
 加えて、2曲のスタジオ録音がボートラとして追加されています。

 収録曲のうち、過去作にスタジオ・テイクがあるものは、以下のとおりです。

1stアルバム "A Tex-Mex Groove" : 04年
チョイスなし

2ndアルバム "About Time" : 07年
4. Rain, Rain
9. Cuando Me Dejes De Amar
10. Que Bonita Chaparrita

3rdアルバム "Border Y Bailes" : 09年
1. Lucerito 
2. Lollypop Polka
3. A Mover El Bote

 ここで、Los Texmaniacsについて、おさらいしておきましょう。
 中心人物はMax Bacaという人で、バンドは、彼の弾くバホ・セスト(12弦ギター)とアコーディオン奏者とのデュオという、伝統的なコンフント・スタイルをベースにしたバンドだと思います。

 出身は、おそらくサン・アントニオだと思われますが、活動拠点はオースティンかも知れません。
 また、イーストL.A.のチカーノ・バンドとも交流があるか、もしくはウエストコーストで活動期間があるバンドではないかとも推察します。

 04年リリースの1stアルバムの頃は、バホ・セスト、アコーディオン、ベースというトリオ編成で、正式メンバーとしてはドラムレスのバンドでした。
 この時、Max Bacaの相棒としてアコを弾いたのが、様々なTex-Mex系バンドでセッションしている、Michael Guerraという人です。

 Michael Guerraは、Shawn SahmのTex-Mex Experienceに参加していた人で、あのバンドはどうなったんでしょう?
 Shawn Sahmが、新生Texas Tornadosを組んだ時点で自然消滅したのかな。
 Shawnとは交流が深いようで、Michaelは、そのTexas Tornadosの復活作へも参加したほか、少し以前のShawnのソロ作では、Max Bacaとともににクレジットされていました。

 その他、初期のLos Lobosを彷彿させる、Los Lonely Boysのアルバムへの参加をはじめ、Augie Meyersのソロ作、Krayolas(Tex-Mex Beatles !)のアルバム、Raul Malo(Mavericksのリード・シンガー)のソロ作など、色々とお呼びがかかっている人気者です。
 ただ、ツアーよりもスタジオを選んだのでしょうか、彼は1stのみでバンドを離れます。

 1stの"A Tex-Mex Groove"は、Los Lobos勢のバックアップのほか、Augie Meyers(key)、Sawn Sahm(g)、Ruben Ramos(vo)らが協力していて、華々しいデビューという感じです。 
 "She's About A Mover"のカバーをやっていて、それが、私がこのバンドに興味を持ったきっかけでした。

 2ndの"About Time"は、私が最初に入手したアルバムです。
 1stの路線を正統進化させたもので、伝統的音楽からの影響とポップなロックンロールのスタイルを融合させた素晴らしい作品で、やはりLos Lobos勢やAugie Meyersがゲスト参加しています。

 そして、このアルバムから、アコーディオンがDavid Fariasにチェンジし、現在まで続くツー・トップ体制が確立します。
 また、ドラムスが正式にに加入しました。

 対して、3rdアルバムの"Border Y Bailes"は、完全に伝統音楽の探求へとシフトしたコンセプト・アルバムになっています。
 アカデミックな性格を打ち出したもので、メキシカン・アメリカンのルーツに根差した、ポルカ、クンビア、ランチェラ、ボレロなどの伝統音楽のショーケースになっています。



 スペイン語中心のアルバムなので、前2作と比較するととっつきやすさは後退しています。
 バンドは、このアルバムでグラミーを受賞しました。
 そして、このときからベーシストが交代し、現在の編成になります。
 以下のとおりです。

Max Baca : bajo sexto, vocals
David Farias : Accordion, vocals
Oscar Garcia : bass, vocals
Lorenzo Martinez : drums

 本盤のセット・リストは、2ndと3rdからの選曲と、新たなレパートリーで構成されています。
 ここでの伝統曲は、あくまで皆が踊って集えるチューンとして、ポップな英語曲となんの違和感もなく溶け合っています。

 フォーク・ダンス曲のような"Viva Seguin"も、Doug Sahm盤、Freddy Fender盤が有名なスワンプ・バラードの"Rains Came"(本盤では"Rain Rain"と表記)も、流れるように展開して、耳に心地いいです。

 ざっくりいって、このバンドは、やはりバホ・セストとアコーディオンのデュオを核とした、ごきげんなダンス・バンドです。

 さらに言えば、テックス・メックスの王道を行く、豊かな音楽性を持ったポップ・バンドだと言いたいです。



Que Bonita Chaparrita by Los Texmaniacs




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リッチマンの歌
君にだって起こるさ

Los Fabulocos
イーストL.A.発キャリ・メックス
メヒコ・アメリカーノ

The Krayolas
マージーでフォーキー、そしてテキサス
テツクス・メックス・ビートルズ

Raul Malo
罪人と聖者のはざ間で





正統 王様バンド降臨 !

 カラスコに外れなし!!

 やみくもに叫んでしまいました すみません。
 でも、最近の高アベレージをみていると、思わずそう言いたくなります。

 今回は、Joe King Carrascoの最新作をご紹介します。
 前作からさほどのインターバルなしに、早くも新作がリリースされました。
 しかも嬉しいことに、表記こそスペイン風ですが、Joe King Carrasco and The Crownsの31年ぶりの再会アルバムなのです。

 彼らは、昨年11年に合流し、どうやら6月に再会記念公演を、さらには8〜9月にテキサスの州内各地を回って追加公演を行ったようです。

 そして、スタジオに戻った彼らの最新の成果が、ここに届けられたというわけです。
 これが期間限定の同窓会なのか、それとも本格的な再結成なのか、今後の展開が気になるところです
 興味深く見守りたいです。


Que Wow
Joe King Carrasco y Los Crowns Originales !

1. Drug Thru the Mud (Joe King Carrasco)
2. Que Wow (Joe King Carrasco)
3. Havin a Ball (Joe King Carrasco)
4. Nacho Daddy (Joe King Carrasco)
5. Yo Soy Tuyo (Joe King Carrasco)
6. My Lil Anna (Joe King Carrasco)
7. 1313 Jamaica (Joe King Carrasco)
8. Pachuco Hop (Joe King Carrasco, Johnny Perez)
9. Vamos a Matar El Chango (Joe King Carrasco)
10. Macho Grande (Joe King Carrasco)
11. Rosa La Famosa (Joe King Carrasco)
12. Right On Catcheton (Joe King Carrasco)
13. Bandido Rock (Joe King Carrasco)
14. Drug Thru the Mud (Hidden Radio Track) (Joe King Carrasco)

 はっきりいって、オリメンが誰だったのか、認知していませんでした。
 しかし、ひとつだけはっきり言えることがあります。

 キーボード&アコーディオンのKris Cummings女史のピーピー・サウンドと、Joeの声質こそが、Crownsサウンドの要だったのだ……と。
 メンバーを再確認しましょう。
 ジョーにブラッドにミゲル(マイク)にクリス、以下のとおりです。

Joe King Carrasco : guitars, vocals
Kris Cummings : keyboad, accordion, vocals
Mike Navarro : drums, percussion, vocals
Brad Kizer : bass, vocals

 こうやってみると、シンプルですね。
 ギターが1本なんですよ。
 久々に、ハードかつラテン志向のリード・ギターリストが不在の編成で、とても新鮮です。

 そのかわり、よく歌うジャバラと鍵盤が、バンド・サウンドのカラーを決定していることに、改めて気づかされます。


裏ジャケ(ドクロ見参!!)


 さて、Joe King Carrascoのキャリアは、乱暴に分けると以下のようになります。

Joe King Carrasco and El Molino (デビュー作、1作のみ。最初はカセットでリリースされた。)
Joe King Carrasco and The Crowns (ざっくり80年代)
Joe King Carrasco y Las Coronas (ざっくり90年代以降)

 この間、ソロ名義のものもありますが、メンツはCoronasである場合が多いようです。

 最初のバンド、El Molinoは、リズム隊、ホーン陣ともに大充実のオルケスタで、メンツは、Augie Meyers(key),Speedy Sparks(b), Ernie Durawa(dr), Charlie MacBurney(tp), Luie Bustos(sax), Rokey Morales(sax)ほかを擁する最高のバンドでした。
 このメンツは、完全にDoug Sahm人脈で、バンマスはおそらく、トランペットのCharlieだと思われます。
 この編成に近い楽団をDoug Sahmの作品でいいますと、名盤"Westside Sound Rolls Again"です。
 素晴らしさが想像できますよね。

 このあと、すぐにスモール・コンボ化して、新たに結成したのがCrownsで、オルガンとアコの能天気サウンドが印象的でした。
 Carrascoの作品は、ほとんどオースティンで録音されていますが、Crowns時代には例外的にニューヨーク録音があります。

 次いで、Coronasでは、リード・ギターが加入したのが特徴で、時にハードに、時にラテン風に派手に弾きまくり、好き嫌いがあるかも知れませんが、やはり能天気さは不変です。

 そして、今回のCrowmsの再集結盤ということになります。

 ところで、冒頭に31年ぶりの再会と書きましたが、これはライナー氏の文を引用したものです。
 しかし、この31年というのは、実はハテナです。

 仮に本盤の録音を11年として、そこから起算したとして、31年前を計算すると80年になります。
 Crowns名義の同名タイトルのアルバムがリリースされたのが80年で、おそらくはそこから数えているのでしょう。
 しかし、その前年に、既にCrowns名義で"Tales From The Crypt"が出ていて、正確にはここから計算すべきでしょう。

 なぜなら、80年のアルバムでは、早くもドラムスのチェンジが行われているからです。
 オリジナルを名乗る以上、本盤に参加したMike Navarroを加えた編成時点から数えるべきでしょう。
 その後まもなく、Dick Rossという人とチェンジして、バンドが変わっても、この人が長くタイコを叩くことになります。
 90年代には、一時期、Javler Zentenoという人が叩いていますが、アルバムとしては1枚だけ(のはず)です。

 さて、そろそろ中身を聴いていきましょう。
 Joe King Carrascoは初心者だけど、Nick Loweは大ファンだという方は、Nick Loweの"Half a Boy and Half a Man"を思い出してください。
 あんな感じのサウンドを思い描いていただければ、そう遠くはありません。

 実は、Joe King Carrasco & The Crownsの同名タイトルのアルバムは、英国では、Stiff Recordsからリリースされていて、Nick Loweともレーベル・メイトだった時期があったのでした。
(同じ年に出た同名の米盤は、収録曲に数曲違いがあります。)

 うーむ、懐かしくて涙がでそうですね。
 私が持っているのは、Stiffのラベルのカラー盤ですが、なぜかメイド・イン・西ドイツです。
 (時代を感じますね。)

 当時は、Joe King Carrasco版、"You're Gonna Miss Me"(または"96 Tears"か"Gloria")ともいうべき"Let's Get Prety"とか、あのあたりの曲が好きで、繰り返し聴いたものでした。

 さて、本盤の収録曲のうち、過去作の再演が数曲あります。
 まず、そのあたりから整理してみましょう。
 以下の4曲がそれです。

8. Pachuco Hop
10. Macho Grande
11. Rosa La Famosa
13. Bandido Rock

 "Pachuco Hop"と"Bandido Rock"の2曲は、87年のアルバム"Badido Rock"収録曲の新録音です。
 私が持っているアナログLPは、仏New Rose盤です。

 そして、"Macho Grande"は、08年のサントラ盤、"Rancho No Tengo"収録曲の新録音です。
 くだんのアルバムは、いつものメンツが全く参加せず、Joe King Carrascoのギター以外は、ほとんどのパートを、Gene Moriartyという人が一人で多重録音している変則アルバムでした。
 (私は、映画は未視聴ですが、このサントラはよいです。モリアーティ教授(と呼びたい)に任せたサウンドは、カラスコの個性を弱めることなく、別の魅力をみせることに成功しています。アーシーでレイドバックしたカラスコが聴けるのはこれだけです。)

 "Rosa La Famosa"は、11年リリースのライヴ盤、"En La Ruta Maya"(録音は08年)でやっていた曲です。
 私の知る範囲では、スタジオ・テイクを収録したアルバムはないと思います。
 でも、普通はありそうですよね。
 あるいは、私が未入手のアルバムに収録されいるのかも知れません。
 (MCA盤で未入手のものがあります。)

 うーん、気になってきました。
 最近、アナコンダ・レコードから、過去の音源の復刻が進んでいるようなので、チェックしたいところです。
 (ただ、ストレート・リイシューではなく、ジャケもタイトルも、選曲も違う新編集盤が複数でていて、お宝を含むのか、全て既出曲のみなのかが判別しがたく、ファン泣かせです。)

 とまれ、細かいことはなしで、とにかく聴きましょう。
 30数年の時の流れを超えて、あの懐かしいサウンドが部屋中に広がっていきます。
 全身が音に反応します。
 捨て曲一切なし 最高です。

 私の好みでは、とりわけ"Drug Thru the Mud"に痺れます。
 4人のアンサンブルが、最高に決まった瞬間を捉えた名演だと思います。
 もはや、麻薬のような習慣性のある音楽としか言いようがないです。

 元も子もないかもしれませんが、この際言ってしまいしょう。
 やっぱり、Joe King Carrascoは、どんなスタイルでも楽しい……と。
 あー 言っちゃった。

 今作は、人によってはノスタルジックな感傷にひたれる作品かも知れません。
 (私にはそうです。)
 クリスのリフのループは、デジャヴ感満載でぐいぐいと効いてきます。

 先に名前をあげた曲以外は、新曲のはずですが、ほとんどが以前から知っていた曲だ、そんな気がしてなりません。
 魔法にかけられたような気分です。
 今現在の私は、Coronasの何倍も、このOriginal Crownsが好きです。
 曲によっては、Krisのオルガンが、もろAugieのプレイを連想させて涙がちょちょぎれそうです。

 Coronasと比べると、狂気の部分が抑えられて、若干サウンドが大人になった気もしますが、これを「味」とか「年輪」と呼ぶのは、彼らには似合わないです。
 どの時代でも、根源にあるのはひとつだからです。

 能天気で無条件に楽しいサウンド、体験していない方は聴くほかないです。
 ほんとに…。

 いつかこのバンドで、新生Texas Tornadosとの共演盤を作って、Augie、Flaco、Krisのバトルを実現してほしいです。
 (Texas Tornadosの96年作、"4Aces"では、Carrascoがゲスト参加して、DougとFreddyがデュオしたCarrascoのカバー曲、"Tell Me"でギターを弾いていました。) 


Drug Thru The Mud by Joe King Carraso y Los Crowns 2011




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バッパビリー・スイング

 アコースティック・スイングって、最近とんと話題を聞かないんですが、私が情報にうといだけでしょうか?
 まあ、レココレとかも、気になる記事がないと立ち読みで済ましちゃう人なので、世間知らずかも知れません。

 かつて、鈴木カツさんや宇田和弘さんが著作のタイトルに使ってたりして、それなりに用語として露出していた時期もありましたが、さほど高まることもなく沈静化したんじゃないか、というのが私の印象です。

 当時は、ジョン・ミラーとか、ルウ・ロンドンとか、私の嗜好に合っていたのでしょう、随分と感化されたものでした。

 でも、言葉の流行り廃りとは関係なく、音楽は存在します。
 ジャネット・クラインなど、それなりに話題になっている人がいても、グッドタイム・ミュージックとか、単に別の名前で呼ばれていることもありますよね。

 アコースティック・スイングでも、グッドタイム・ミュージックでもいいのですが、そういった言葉から自由にイメージしてください。
 今回は、そんな(?)アルバムです。

 

Bop-A-Billy Swing !
Recorded Live !
Beats Walkin'

1. Lady Be Good (Gershwin)
2. Suger Moon (Wills, Walker)
3. My Window Faces The South (Livingston, Silver, Parish)
4. Straight, No Chaser (Monk)
5. Eating Right Out of Your Hard (Bass) 
6. Honeysucle Rose (Waller, Razaf)
7. Old Fashioned Love (Mack, Johnson)
8. Route 66 (Troup)
9. Wonderful World (Welss, Thiele)
10. Heart of a Clown (Nelson, Rollins, Kane)
11. Choo Choo Ch'Boogie (Horton, Gabler, Darling)
12. Goin' Away Party (Walker)
13. Reckon I'm a Texan Till Die (Wood, Butler)
14. House of Blue Lights (Jacobs)

 Beats Walkin'というバンドをご紹介します。

 まあ、バンドというより、グループと呼びたい感じですね。
 ボーカルは若々しく、艶もありますが、ジャケ裏の写真を見る限り、かなり年配のメンツで構成されているようです。

 基本のメンバーは4人で、ギター、ベース、スチール・ギター、ドラムスという編成です。
 さらに、本盤では、サックスとフィドルがゲスト参加しています。

 メイン・ボーカルは、ギターの女性とドラムスの男性が分け合っている感じですが、ほかの2人もそれぞれ1曲づつリード・ボーカルをとっています。
 詳細は、以下のとおりです。

Wendi Bourne : guitar, vocals on tracks 1,2,6,8,10,12
Jim Cohen : pedal steel guitar, match-bro, vocals on tracks 5
Bob Lewis : bass, vocals on track 11
Chuck Lindsey : drums, vocals on tracks 3,7,9,14
guest :
Troy Corley : tenor saxophone
Joel Glassman : fiddle

 本盤は、01年のフィラデルフィア公演のライヴ録音で、02年にリリースされました。
 彼らは、どうやらペンシルバニア州出身らしいこと、この前にもう1枚アルバム(97年)があること、このグループの情報は、ほとんどこれが全てです。

 私は、ジャズについてはほとんど門外漢ですが、セロニアス・モンクくらいは知っています。
 まあ、「ラプソディ・イン・ブルー」(だけ)を知っている程度ですから、ごくごく普通のレベルです(?)
 トラック4のインスト、"Straight, No Chaser"は、初めて聴きました。
 「ラプソディー」とは全くイメージが違う曲ですね。

 そして、ファッツ・ウォーラーも同様です。
 "Honeysucle Rose"は、有名だと思いますが、やはり曲名は知っているけれどメロと一致しない、そんな程度でした。
 ここでは、スチール・ギターが主役になって頑張っています。

 さて、本盤には、作者がWalkerとなっている曲が複数収録されています。
 "Suger Moon"と"Goin' Away Party"がそうです。
 これらは、いずれもCindy Walkerのことで、ヒルビリー〜ホンキートンク時代の人気女性コンポーザーです。
 多くのシンガーに曲を提供していますが、私にとっては、Bob Willsの名作をいくつも書いた人として大好きな人です。

 "Suger Moon"では、そのBob Willsとの共作名義になっています。
 当然、Bob Wills & His Texas Playboysのレパートリーです。

 カバーでは、Asleep At The Wheel盤がお奨めです。
 ライヴ盤でもやっていました。
 ジャジー、かつレイジーな雰囲気を持つ曲で、いかにもRay Bensonが好きそうな曲です。
 本盤では、軽快で楽しげなアレンジでやっています。

 "Goin' Away Party"は、多分初めて聴く曲で、原曲は知りません。
 ライナーには、レスリー・ゴアからインスパイアされて書かれた曲、みたいなことが書かれています。
 でも、レスリー・ゴアって、ぶりぶりの60sアメリカン・ポップスのイメージですよね。
 ここで言われているのは、やはり代表曲の"It's My Party"なんでしょうか?
 曲名からいってそんな感じですよね。
 "It's My Party"のアンサー・ソングですか(?)
 でも、こちらはバラードなのでした。

 余談ですが、Willie Nelsonが、Cindy Walkerの曲ばかりを歌ったアルバムを出しています。
 結果的に、Bob Willsのレパートリー中心の選曲になっていました。

 そのBob Willsは、本盤でも主役級の扱いです。
 このBeets Walkin'というバンドは、ジャズ小唄的な曲とBob Willsが好きなんだと思います。
 "My Window Faces The South"と"Old Fashioned Love"の2曲が、Bob Willsの有名曲のカバーです。

 とりわけ、"My Window Faces The South"は、多くのカバーがある人気曲です。
 ロック・ファンには、Commander Cody & His Lost Planet Airmen盤がお奨めですが、もちろん、Asleep盤もよいです。
 この曲は、誰がやっても外れなしの名曲だと思います。

 "Old Fashioned Love"は、知名度ではかなり劣りますが、これも良い曲です。
 スリー・ドッグ・ナイトの大ヒット曲は、"Old Fashioned Love Song"で別の曲です。

 "Old Fashioned Love"は、元は古いジャズのピアノ・インストかも知れません。
 いつの時点かで、誰かヒルビリー系歌手が歌詞を付けて、この形にしたのではないかと思います。
 でも、オリジナルはともかく、やはりこの曲はBob Wills盤が最高です。
 Bob Willsのヒット盤は、47年にリリースされています。
 この曲は、マール・ハガードも、Bob Willsのトリビュート・アルバムで演っていました。

 その他、ルイ・ジョーダンの"Choo Choo Ch'Boogie"や、定番の"Route 66"まで、いずれも小粋で軽快なボーカルで、おしゃれかつ爽やかに歌っています。
 曲によっては、男女ボーカルのかけあいなどもあり、マンハッタン・トランスファーを連想させたりもします。

 "Choo Choo Ch'Boogie"では、スチール・ギターが列車の走りの爽快感を、サックスが力強く邁進するさまを表現しています。

 かと思えば、サッチモの"Wonderful World"では、ほとんど直球勝負でうっとり歌いあげていて、サッチモを意識しつつも、過度なダミ声になって物まねになりそうなのをこらえています。

 ラストは、これまた定番の"House of Blue Lights"で締めです。
 ロックンロール・ファンには、もちろんChuck Berry盤ですね。
 原曲はよく分かりませんが、ヒルビリー・ブギ・ピアニストのメリル・ムーア盤がポピュラーにした曲だと思います。
 メリル・ムーアは、ムーン・マリカンとともに、ジェリー・リー・ルイスのお手本になった人です。

 もちろん、Jerry Lee Lewisもやっていて、その他、Commander Cody & His Lost Planet Airmen盤、Asleep At The Wheel盤もあります。
 Chuck Berry直系では、George Thorogood盤もあり、ちょっとラウドてすが聴きものです。
 本盤では、少しテンポをゆったりめにして、リラックスした雰囲気でやっています。

 レパートリーから、全体的にカントリー寄りかと思われるかも知れませんが、意外とカントリー臭は希薄で、特にスチール・ギターのサウンド、フレーズにそれを感じます。
 ピアノレスにも関わらず、モダンな雰囲気を感じさせる、大人のサウンドに仕上がっています。

 ロッキン・サウンドはもちろんいいですが、たまにはスインギーというのもいかがでしょうか。




My Window Faces The South by Beats Walkin'




San Antonio Rose 〜 Hey Good Lookin' 〜 
Don't Fence Me In 〜 Smoke! Smoke! Smoke! 〜 etc etc…
by Beats Walkin'


あれっ MCでテキサス・スイング・バンドって紹介されてますね?



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 今回、かねてから欲しかったアルバムが手に入ったのでご紹介します。
 サン・アントニオ出身のチカーノ・シンガー、Joe Jamaが04年にLa Luz Recordsからリリースしたものです。
 私にとっては、彼の3枚目のコレクションになりました。
 うち1枚は、全編スペイン語で歌うラテンものでしたので、英語で、なおかつR&B中心の演目は、やはり嬉しいです。

 この人は、ほとんど日本では無名だと思いますが、私は、イーストLAでいう、Little Willie Gに比肩する人だと思っています。
 まあ、Willie Gも、一部の好事家のみに知られているにすぎませんが…。


Leigh Street Blues
Joe Jama

1. Southside Shuffle
2. Tired Of Being Alone (Al Green) 
3. Too Close To The Border (Randy Garibay) 
4. Make Somebody Happy (John Alexander Lightwood) 
5. Beginning (Robert William Lamm)
6. 25 or 6 to 4 (Robert William Lamm) 
7. Moondance (Van Morrison) 
8. I'll Be Around (Randolph Thomas Bell)  
9. The Next Time You See Me (Earl Forest, Bill Harvey)
10. Baby I'm For Real (Anna Gaye, Marvin Gaye) 
11. Pappa Was A Rolling Stone (Barrett Strong, Jesse Norman Whitfield)
12. America The Beautiful (Katharine T. Bates)

 名前のカナ表記は、私はジョー・ジャマとしていますが、ジョー・ハマと記している人もいるようです。
 普通は、そっちのほうが正しいような気もします。
 ただ、この人のJamaという姓は本名ではなく、ニックネームが元になったステージ・ネームです。

 49年サン・アントニオ生れ、Joe Peralesというのが彼の本名です。
 16歳のとき、チカーノ・ドゥワップ・グループの名門、Royal Jestersに参加(多分)、公演地の宿泊先で、ティーンネイジャーらしいバカ騒ぎを起こします。
 このとき、半裸のパジャマ(Pajama)姿が滑稽だったことから、仲間たちから、Joe Pajamaとはやしたてられ、その後、Joe Jamming → Joe Jamas、そして現在のJoe Jamaへと落ち着いたとのことです。(彼自身が言っていますが、ネタの可能性もあります。でも、ネタだとしたら内容がつまんないですよね。)

 元がパジャマですのでジャマかな、というのが私の考えですが、そんな元ネタは風化して、ハマと呼ばれている可能性はあると思います。
 彼の名をコールするMCが聞きたいですね。
 (残念ながら、ようつべには、あまり動画がありません。)

 さて、この人はアフロ・アメリカンの音楽に強い影響を受けたシンガーであり、そしてオルケスタのベーシストでもあります。
 ソロ・アルバムはあまりないと思われ、また、音楽活動の近況も私には知るすべがありませんが、最近では、Royal Jestersのリュニオン・ライヴ・アルバムにゲスト参加していました。

 シンガーとしては、ウラに近い高音から低音の太い声までを屈指する人で、決して美声とは言い難いですが、味のあるいい歌手だと思います。

 今作では、メンフィス・ソウルから、ブラス・ロック、ヴァン・モリスン(これはジャンルじゃないけど、そうとしか言いようがない)、フィリー・ソウル、モータウン、そしてアメリカ讃歌(愛国歌)まで、いろいろやってますが、違和感なくスンナリ聴けます。

 本盤の参加メンバーは以下の通りです。 

Joe Jama : lead vocals, bass guitar
Anthony Hernandez : keyboads
Xavier(Weasel) Portillo : drums
Ray Zule : guitar
Ralph Saenz : guitar
George Gonzales : guitar
David Alcocer : guitar
Louie Delgado : percussion
Jorge Alejandro : percussion
Rene Garcia : trombone
Gabe Pintor : saxaphones
Adrian Ruiz : trumpet
Al Gomez : trumpet



 いつも思うのですが、ロックでは、サックス入りのサウンドは珍しくないですが、トランペットが加わると格段にゴージャス感が増しますよね。
 まして、本盤のように、トロンボーンとのコンボだと最高です。
 大人数のラテンでは普通なのでしょうが、この編成で古いジャンプやスイングを演るとはまりまくりで、私の大好物です。

 全体のサウンドは、まさにそのホーン陣が花形と言っていいでしょう。

 アルバムは、哀愁のメキシカン・トランペットの静かなイントロから、バンドが一斉に立ち上がってくる、ジャンプ系R&Bインスト、"Southside Shuffle "でスタートします。
 おしゃれ、かつスリリングで、かっこいいです。

 ボーカル曲のトップは、Al Greenのナンバーで始まります。
 この"Tired Of Being Alone"という曲は、最近、Sam Cookeのカバー集で話題のトータス松本が大好きだと言っていた曲で、彼が03年に出した最初のカバー・アルバム、「トラベラー」で演っていました。
 (ちなみに、私の好みでは、今回の「ツイスティン・ザ・ナイト・アウェイ」より「トラベラー」の方が好きです。)
 サウンドは、あまりHiっぽさは感じず、所々Bobby Womackみたいに聞こえたりもしますが、Joe Jamaは、原曲にそって、ねちっこくウィスパーに歌っています。
 おしゃれなリズム・ギターとオルガン(?)のロング・トーンが耳に残ります。

 続く"Too Close To The Border"は、初めて聴く曲で、やはりオルガンの鳴りが印象的なシャッフル・ブルースです。
 Bobby Blandに似合いそうな曲だと思いました。
 原曲は分かりません。

 そして、"Make Somebody Happy"は、フィリー・ソウルっぽい曲ですが、どうもSantanaのナンバーらしいです。
 私は、サンタナについては、「哀愁のヨーロッパ」の泣きが大好き、程度のライト・リスナーです。
 意識して聴いても、さほどラテンぽさは感じません。
 ただ、ギター・ソロはそれっぽいですね。
 それ以外は、ソウル・コーラス・グループの曲だと言われれば、信じるレベルです。
 Jamaは、貫禄のリード・ボーカルを聴かせています。

 続いて、"Beginning"から、"25 or 6 to 4"へと、Chicagoのカバーが連続できます。
 私は、これまた、Chicagoもライトなリスナーで、初期のいくつかのヒット曲を知っているくらいです。
 でも、"25 or 6 to 4"は、曲名は一致しませんでしたが、メロを聴いて、思わず座り直してしまいました。
 「これ知ってるなあ」と独り言を言っていました。
 バンドの編成からいって、この選曲は正解で、いい流れでアルバムが進行していると感じました。
 この曲のみ、女性ボーカルがデュエットしています。 

 そして、問答無用の名曲、"Moondance"です。
 同名アルバムは、A面の流れが最高に好きです。
 ここでのJoe Jamaは、オリジナルの雰囲気をうまくなぞったアレンジで、物憂げ感をうまく表現しつつも、力強く歌いきっています。
 やりきり感がいいです。
 ホーン陣も、ブリブリではなく、ジャジーに迫っています。

 次の"I'll Be Around"は、Spinnersの大ヒット曲のカバーですね。
 フィリー・ソウルの中では、甘すぎないところが、私は気に入っているグループです。
 ファルセットのメンのパートも、バリトンのパートも、一人でやりきっています。
 コーラスとの絡みも決まってますが、もしかしたらコーラスも自身で入れている可能性はあります。
 ムーディーな名曲にうっとりさせられます。

 Junior Parkerの名作、"The Next Time You See Me"は、スイート・ソウル中心の展開のなか、素晴らしいアクセントになっていて、するりと聴き手の内側に侵入してきます。
 ソウル・バラードから、一転ソリッドなブルースへと転換する流れが、とても効果的です。
 ここでも、ほとんどオリジナルどおりに演っていて、素晴らしいです。

 再び、静かに優しくスタートするバラード、"Baby I'm For Real"が、またもムードを一転させます。
 ここでも、Joe Jamaが、スイートなテナーと、力強いバリトン・リードを一人で演じています。
 原曲は、モータウンのソウル・グループ、Originalsですね。

 そして、名門Temptationsの"Pappa Was A Rolling Stone"のカバーの登場です。
 この時代のテンプスは、私はいまいちですが、本盤のこれまでの流れ的にはOKです。

 ラストの"America The Beautiful"は、アメリカの愛国歌です。
 私は、Elvisあたりを連想しましたが、Ray Charles盤が有名なようです。
 古い歌だと思いますが、9.11で多くの歌手が取り上げ、さらに広まった曲ではなかったかと思います。

 なぜ、本盤のラストがこの曲なのかは、よくわかりません。
 ちなみに、アルバムがリリースされた04年は、大統領選挙の年でした。
 共和党のジョージ・ブッシュ(テキサス出身、息子の方)が再選したのでした。




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