2010年12月15日
罪人と聖者のはざ間で
このアルバムは、キューバン・トランペットの高らかなロング・トーンで始まり、本人によるオルガンと、リヴァーブのかかったサーフ調のエレキ・ギターがトワングし続けるなか、インストなのかと思い始めたころになって、ようやくボーカルが聴こえてきます。
ロイ・オービスンのような声を持ち、多数の楽器を操るマルチ・プレイヤーかつ、多重録音好きの機材オタク、Raul Maloの10年リリースの最新ソロ・アルバムです。
1. Sinners & Saints
2. Living For Today
3. San Antonio Baby
4. `Til I Gain Control Again
5. Staying Here
6. Superstar
7. Sombras
8. Matter Much To You
9. Saint Behind The Glass
このアルバムは、私にとって、初のラウール・マロ体験になります。
Mavericksのボーカリストとしては、いくつかのトリビュート盤などへの曲提供で知ってはいましたが、アルバム1枚を購入するのは初めてです。
今回、購入の動機付けとなったのは、このアルバムが持つ、いくつかの付加価値によるところが大きいです。
まず、このアルバムは、Asleep At The Wheelのリーダー、Ray Bensonのスタジオで録音されています。
そして、何と言っても、Augie Meyersが3曲でオルガンを弾いているのです。
これは、私が食指を動かすには充分すぎる理由です。
オーギーが参加しているのは、 Living For Today、San Antonio Baby、Superstarの3曲です。
いずれも、Vox Continental Organとクレジットされています。
私は、ラウール・マロにさほど興味がありませんでしたが、このアルバムを聴いて、いくつかの特徴に気付きました。
ドラム、ベース、ギター、メロトロンなど複数の楽器を演奏し、多重録音して好みのサウンドを作り上げていく、オタ系のなかなか親近感がわく人なのでした。
ただ、ひとつ気になったのは、オーギーをゲストで呼んでおきながら、アコーディオンにマイケル・グェルラという腕利きを別に用意して、全面的にまかせていることです。
どうせなら、オーギーに楽器を持ちかえさせて、もっと多くの曲に参加させて欲しかったと思います。
さて、オーギー参加曲ですが、Living For Todayは、サザン・フレイバーを感じさせる曲で、祈りのような本人の歌声と、トリーシャズという4人の女声コーラスが、教会音楽のような荘厳な雰囲気をかもしだしています。
このあたりは、ディレイニー&ボニーを連想させたりもします。
そんな中、本人が弾く緊張感のあるギターの背後から、オーギーのいつも変わらぬオルガンのリフが聴こえてきて、ほっとします。
ただ、控えめなフィーチャーであまり目立ってはいません。
San Antonio Babyは、80年代のSir Douglas Quintetかと思うような曲に仕上がっていて、こちらは活躍の場も多く、ごきげんです。
この曲は、タイトルからして期待を裏切らない鉄板の曲ですね。
そして、オーギーのプレイが最も冴えているのが、Superstarです。
この曲は、誰のことを歌っているのか、じっくり歌詞を読んでみたい気にさせるタイトルですが、ななめ読みした限りでは、固有名詞などのそそるワードはないようです。
それよりも、クレジットを見て驚いたのですが、この曲のみ、Shawn Sahmがギターで、Ernie Durawaがドラムスでゲスト参加しています。
デュラワは、元クインテットのメンバーで、ダグ・サームの初期のころからの盟友のひとりです。これは、嬉しいサプライズでした。
メキシカン・フレイバーのトランペットが耳に残る曲です。
オリジナル曲中心の組み立てですが、3曲のみカバーがあります。
`Til I Gain Control Againは、元ロザンヌ・キャッシュのだんなで、エミルー・ハリスのホット・バンド出身のカントリー・シンガー、ロドニー・クロウェルの曲です。
静かな雰囲気のフォーキーな曲です。
対して、Sombrasは、巻き舌多用のスペイン語で歌われる曲ですが、マカロニ・ウエスタンのような出だしがエキゾチックな曲です。
知らないだけで、有名な曲なのかも知れません。
ソンブラスとは、ソンブレロの親戚でしょうか?
そう思って聴くと、メキシコの砂丘に群生するサボテンが見えてきそうです。
そして、Saint Behind The Glassは、ロス・ロボスのカバーのようです。
私は、ロボスが、ザ・バンドのような雰囲気になっていきそうだと思った頃から離れていき、もう15年くらい聴いていないと思います。
ザ・バンドが嫌いなわけではなく、初期のロボスが好きなだけですが…。
というわけで、この曲の初出年も収録アルバムも知りません。
オリジナルでは、少し不思議な曲が2曲あります。
まず、Staying Hereですが、エルヴィスのサスピシャス・マインドを連想させる雰囲気を持った曲です。
嫌いになりようがないですが、どうも不思議なとまどいを感じます。
オマージュかも知れませんが、カバーしても面白かったかもと思います。
一聴して一番気になった曲が、Matter Much To Youです。
完全にロイ・オービスンを連想させる歌声ですが、それより曲そのもののメロが何かのパクリじゃないのと、頭の中でささやく声がするのですが、元歌が出てきません。
20分ほど考えた私が、やおらCD棚から引き出してきたのは、エヴァリー・ブラザーズのワーナー音源集でした。
お目当ての曲は、ソニー・カーティス作の名作、Walk Right Backです。
聴き比べると、違う曲であるのは明らかですが、全体のメロの雰囲気がかなり似ています。
サビの前の、胸キュン系のAメロのあたりが特にそうです。
これも、オマージュでしょうか?
ロイ・オービスンのような声を持ち、多数の楽器を操るマルチ・プレイヤーかつ、多重録音好きの機材オタク、Raul Maloの10年リリースの最新ソロ・アルバムです。
Sinners & Saints
Raul Malo
Raul Malo
1. Sinners & Saints
2. Living For Today
3. San Antonio Baby
4. `Til I Gain Control Again
5. Staying Here
6. Superstar
7. Sombras
8. Matter Much To You
9. Saint Behind The Glass
このアルバムは、私にとって、初のラウール・マロ体験になります。
Mavericksのボーカリストとしては、いくつかのトリビュート盤などへの曲提供で知ってはいましたが、アルバム1枚を購入するのは初めてです。
今回、購入の動機付けとなったのは、このアルバムが持つ、いくつかの付加価値によるところが大きいです。
まず、このアルバムは、Asleep At The Wheelのリーダー、Ray Bensonのスタジオで録音されています。
そして、何と言っても、Augie Meyersが3曲でオルガンを弾いているのです。
これは、私が食指を動かすには充分すぎる理由です。
オーギーが参加しているのは、 Living For Today、San Antonio Baby、Superstarの3曲です。
いずれも、Vox Continental Organとクレジットされています。
私は、ラウール・マロにさほど興味がありませんでしたが、このアルバムを聴いて、いくつかの特徴に気付きました。
ドラム、ベース、ギター、メロトロンなど複数の楽器を演奏し、多重録音して好みのサウンドを作り上げていく、オタ系のなかなか親近感がわく人なのでした。
ただ、ひとつ気になったのは、オーギーをゲストで呼んでおきながら、アコーディオンにマイケル・グェルラという腕利きを別に用意して、全面的にまかせていることです。
どうせなら、オーギーに楽器を持ちかえさせて、もっと多くの曲に参加させて欲しかったと思います。
さて、オーギー参加曲ですが、Living For Todayは、サザン・フレイバーを感じさせる曲で、祈りのような本人の歌声と、トリーシャズという4人の女声コーラスが、教会音楽のような荘厳な雰囲気をかもしだしています。
このあたりは、ディレイニー&ボニーを連想させたりもします。
そんな中、本人が弾く緊張感のあるギターの背後から、オーギーのいつも変わらぬオルガンのリフが聴こえてきて、ほっとします。
ただ、控えめなフィーチャーであまり目立ってはいません。
San Antonio Babyは、80年代のSir Douglas Quintetかと思うような曲に仕上がっていて、こちらは活躍の場も多く、ごきげんです。
この曲は、タイトルからして期待を裏切らない鉄板の曲ですね。
そして、オーギーのプレイが最も冴えているのが、Superstarです。
この曲は、誰のことを歌っているのか、じっくり歌詞を読んでみたい気にさせるタイトルですが、ななめ読みした限りでは、固有名詞などのそそるワードはないようです。
それよりも、クレジットを見て驚いたのですが、この曲のみ、Shawn Sahmがギターで、Ernie Durawaがドラムスでゲスト参加しています。
デュラワは、元クインテットのメンバーで、ダグ・サームの初期のころからの盟友のひとりです。これは、嬉しいサプライズでした。
メキシカン・フレイバーのトランペットが耳に残る曲です。
オリジナル曲中心の組み立てですが、3曲のみカバーがあります。
`Til I Gain Control Againは、元ロザンヌ・キャッシュのだんなで、エミルー・ハリスのホット・バンド出身のカントリー・シンガー、ロドニー・クロウェルの曲です。
静かな雰囲気のフォーキーな曲です。
対して、Sombrasは、巻き舌多用のスペイン語で歌われる曲ですが、マカロニ・ウエスタンのような出だしがエキゾチックな曲です。
知らないだけで、有名な曲なのかも知れません。
ソンブラスとは、ソンブレロの親戚でしょうか?
そう思って聴くと、メキシコの砂丘に群生するサボテンが見えてきそうです。
そして、Saint Behind The Glassは、ロス・ロボスのカバーのようです。
私は、ロボスが、ザ・バンドのような雰囲気になっていきそうだと思った頃から離れていき、もう15年くらい聴いていないと思います。
ザ・バンドが嫌いなわけではなく、初期のロボスが好きなだけですが…。
というわけで、この曲の初出年も収録アルバムも知りません。
オリジナルでは、少し不思議な曲が2曲あります。
まず、Staying Hereですが、エルヴィスのサスピシャス・マインドを連想させる雰囲気を持った曲です。
嫌いになりようがないですが、どうも不思議なとまどいを感じます。
オマージュかも知れませんが、カバーしても面白かったかもと思います。
一聴して一番気になった曲が、Matter Much To Youです。
完全にロイ・オービスンを連想させる歌声ですが、それより曲そのもののメロが何かのパクリじゃないのと、頭の中でささやく声がするのですが、元歌が出てきません。
20分ほど考えた私が、やおらCD棚から引き出してきたのは、エヴァリー・ブラザーズのワーナー音源集でした。
お目当ての曲は、ソニー・カーティス作の名作、Walk Right Backです。
聴き比べると、違う曲であるのは明らかですが、全体のメロの雰囲気がかなり似ています。
サビの前の、胸キュン系のAメロのあたりが特にそうです。
これも、オマージュでしょうか?
こちらが、Matter Much To Youを歌うラウールです。
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