2012年04月02日
ブラウン・ソウル 孤高のテハーノ
今回、かねてから欲しかったアルバムが手に入ったのでご紹介します。
サン・アントニオ出身のチカーノ・シンガー、Joe Jamaが04年にLa Luz Recordsからリリースしたものです。
私にとっては、彼の3枚目のコレクションになりました。
うち1枚は、全編スペイン語で歌うラテンものでしたので、英語で、なおかつR&B中心の演目は、やはり嬉しいです。
この人は、ほとんど日本では無名だと思いますが、私は、イーストLAでいう、Little Willie Gに比肩する人だと思っています。
まあ、Willie Gも、一部の好事家のみに知られているにすぎませんが…。
1. Southside Shuffle
2. Tired Of Being Alone (Al Green)
3. Too Close To The Border (Randy Garibay)
4. Make Somebody Happy (John Alexander Lightwood)
5. Beginning (Robert William Lamm)
6. 25 or 6 to 4 (Robert William Lamm)
7. Moondance (Van Morrison)
8. I'll Be Around (Randolph Thomas Bell)
9. The Next Time You See Me (Earl Forest, Bill Harvey)
10. Baby I'm For Real (Anna Gaye, Marvin Gaye)
11. Pappa Was A Rolling Stone (Barrett Strong, Jesse Norman Whitfield)
12. America The Beautiful (Katharine T. Bates)
名前のカナ表記は、私はジョー・ジャマとしていますが、ジョー・ハマと記している人もいるようです。
普通は、そっちのほうが正しいような気もします。
ただ、この人のJamaという姓は本名ではなく、ニックネームが元になったステージ・ネームです。
49年サン・アントニオ生れ、Joe Peralesというのが彼の本名です。
16歳のとき、チカーノ・ドゥワップ・グループの名門、Royal Jestersに参加(多分)、公演地の宿泊先で、ティーンネイジャーらしいバカ騒ぎを起こします。
このとき、半裸のパジャマ(Pajama)姿が滑稽だったことから、仲間たちから、Joe Pajamaとはやしたてられ、その後、Joe Jamming → Joe Jamas、そして現在のJoe Jamaへと落ち着いたとのことです。(彼自身が言っていますが、ネタの可能性もあります。でも、ネタだとしたら内容がつまんないですよね。)
元がパジャマですのでジャマかな、というのが私の考えですが、そんな元ネタは風化して、ハマと呼ばれている可能性はあると思います。
彼の名をコールするMCが聞きたいですね。
(残念ながら、ようつべには、あまり動画がありません。)
さて、この人はアフロ・アメリカンの音楽に強い影響を受けたシンガーであり、そしてオルケスタのベーシストでもあります。
ソロ・アルバムはあまりないと思われ、また、音楽活動の近況も私には知るすべがありませんが、最近では、Royal Jestersのリュニオン・ライヴ・アルバムにゲスト参加していました。
シンガーとしては、ウラに近い高音から低音の太い声までを屈指する人で、決して美声とは言い難いですが、味のあるいい歌手だと思います。
今作では、メンフィス・ソウルから、ブラス・ロック、ヴァン・モリスン(これはジャンルじゃないけど、そうとしか言いようがない)、フィリー・ソウル、モータウン、そしてアメリカ讃歌(愛国歌)まで、いろいろやってますが、違和感なくスンナリ聴けます。
本盤の参加メンバーは以下の通りです。
Joe Jama : lead vocals, bass guitar
Anthony Hernandez : keyboads
Xavier(Weasel) Portillo : drums
Ray Zule : guitar
Ralph Saenz : guitar
George Gonzales : guitar
David Alcocer : guitar
Louie Delgado : percussion
Jorge Alejandro : percussion
Rene Garcia : trombone
Gabe Pintor : saxaphones
Adrian Ruiz : trumpet
Al Gomez : trumpet
いつも思うのですが、ロックでは、サックス入りのサウンドは珍しくないですが、トランペットが加わると格段にゴージャス感が増しますよね。
まして、本盤のように、トロンボーンとのコンボだと最高です。
大人数のラテンでは普通なのでしょうが、この編成で古いジャンプやスイングを演るとはまりまくりで、私の大好物です。
全体のサウンドは、まさにそのホーン陣が花形と言っていいでしょう。
アルバムは、哀愁のメキシカン・トランペットの静かなイントロから、バンドが一斉に立ち上がってくる、ジャンプ系R&Bインスト、"Southside Shuffle "でスタートします。
おしゃれ、かつスリリングで、かっこいいです。
ボーカル曲のトップは、Al Greenのナンバーで始まります。
この"Tired Of Being Alone"という曲は、最近、Sam Cookeのカバー集で話題のトータス松本が大好きだと言っていた曲で、彼が03年に出した最初のカバー・アルバム、「トラベラー」で演っていました。
(ちなみに、私の好みでは、今回の「ツイスティン・ザ・ナイト・アウェイ」より「トラベラー」の方が好きです。)
サウンドは、あまりHiっぽさは感じず、所々Bobby Womackみたいに聞こえたりもしますが、Joe Jamaは、原曲にそって、ねちっこくウィスパーに歌っています。
おしゃれなリズム・ギターとオルガン(?)のロング・トーンが耳に残ります。
続く"Too Close To The Border"は、初めて聴く曲で、やはりオルガンの鳴りが印象的なシャッフル・ブルースです。
Bobby Blandに似合いそうな曲だと思いました。
原曲は分かりません。
そして、"Make Somebody Happy"は、フィリー・ソウルっぽい曲ですが、どうもSantanaのナンバーらしいです。
私は、サンタナについては、「哀愁のヨーロッパ」の泣きが大好き、程度のライト・リスナーです。
意識して聴いても、さほどラテンぽさは感じません。
ただ、ギター・ソロはそれっぽいですね。
それ以外は、ソウル・コーラス・グループの曲だと言われれば、信じるレベルです。
Jamaは、貫禄のリード・ボーカルを聴かせています。
続いて、"Beginning"から、"25 or 6 to 4"へと、Chicagoのカバーが連続できます。
私は、これまた、Chicagoもライトなリスナーで、初期のいくつかのヒット曲を知っているくらいです。
でも、"25 or 6 to 4"は、曲名は一致しませんでしたが、メロを聴いて、思わず座り直してしまいました。
「これ知ってるなあ」と独り言を言っていました。
バンドの編成からいって、この選曲は正解で、いい流れでアルバムが進行していると感じました。
この曲のみ、女性ボーカルがデュエットしています。
そして、問答無用の名曲、"Moondance"です。
同名アルバムは、A面の流れが最高に好きです。
ここでのJoe Jamaは、オリジナルの雰囲気をうまくなぞったアレンジで、物憂げ感をうまく表現しつつも、力強く歌いきっています。
やりきり感がいいです。
ホーン陣も、ブリブリではなく、ジャジーに迫っています。
次の"I'll Be Around"は、Spinnersの大ヒット曲のカバーですね。
フィリー・ソウルの中では、甘すぎないところが、私は気に入っているグループです。
ファルセットのメンのパートも、バリトンのパートも、一人でやりきっています。
コーラスとの絡みも決まってますが、もしかしたらコーラスも自身で入れている可能性はあります。
ムーディーな名曲にうっとりさせられます。
Junior Parkerの名作、"The Next Time You See Me"は、スイート・ソウル中心の展開のなか、素晴らしいアクセントになっていて、するりと聴き手の内側に侵入してきます。
ソウル・バラードから、一転ソリッドなブルースへと転換する流れが、とても効果的です。
ここでも、ほとんどオリジナルどおりに演っていて、素晴らしいです。
再び、静かに優しくスタートするバラード、"Baby I'm For Real"が、またもムードを一転させます。
ここでも、Joe Jamaが、スイートなテナーと、力強いバリトン・リードを一人で演じています。
原曲は、モータウンのソウル・グループ、Originalsですね。
そして、名門Temptationsの"Pappa Was A Rolling Stone"のカバーの登場です。
この時代のテンプスは、私はいまいちですが、本盤のこれまでの流れ的にはOKです。
ラストの"America The Beautiful"は、アメリカの愛国歌です。
私は、Elvisあたりを連想しましたが、Ray Charles盤が有名なようです。
古い歌だと思いますが、9.11で多くの歌手が取り上げ、さらに広まった曲ではなかったかと思います。
なぜ、本盤のラストがこの曲なのかは、よくわかりません。
ちなみに、アルバムがリリースされた04年は、大統領選挙の年でした。
共和党のジョージ・ブッシュ(テキサス出身、息子の方)が再選したのでした。
関連記事はこちら
ジョー・ジャマの音楽と人生
ウエストサイド・ソウル
ハイウェイ90サウンドに酔いしれて
ハーレムのダイスを転がせ
サン・アントニオ出身のチカーノ・シンガー、Joe Jamaが04年にLa Luz Recordsからリリースしたものです。
私にとっては、彼の3枚目のコレクションになりました。
うち1枚は、全編スペイン語で歌うラテンものでしたので、英語で、なおかつR&B中心の演目は、やはり嬉しいです。
この人は、ほとんど日本では無名だと思いますが、私は、イーストLAでいう、Little Willie Gに比肩する人だと思っています。
まあ、Willie Gも、一部の好事家のみに知られているにすぎませんが…。
Leigh Street Blues
Joe Jama
Joe Jama
1. Southside Shuffle
2. Tired Of Being Alone (Al Green)
3. Too Close To The Border (Randy Garibay)
4. Make Somebody Happy (John Alexander Lightwood)
5. Beginning (Robert William Lamm)
6. 25 or 6 to 4 (Robert William Lamm)
7. Moondance (Van Morrison)
8. I'll Be Around (Randolph Thomas Bell)
9. The Next Time You See Me (Earl Forest, Bill Harvey)
10. Baby I'm For Real (Anna Gaye, Marvin Gaye)
11. Pappa Was A Rolling Stone (Barrett Strong, Jesse Norman Whitfield)
12. America The Beautiful (Katharine T. Bates)
名前のカナ表記は、私はジョー・ジャマとしていますが、ジョー・ハマと記している人もいるようです。
普通は、そっちのほうが正しいような気もします。
ただ、この人のJamaという姓は本名ではなく、ニックネームが元になったステージ・ネームです。
49年サン・アントニオ生れ、Joe Peralesというのが彼の本名です。
16歳のとき、チカーノ・ドゥワップ・グループの名門、Royal Jestersに参加(多分)、公演地の宿泊先で、ティーンネイジャーらしいバカ騒ぎを起こします。
このとき、半裸のパジャマ(Pajama)姿が滑稽だったことから、仲間たちから、Joe Pajamaとはやしたてられ、その後、Joe Jamming → Joe Jamas、そして現在のJoe Jamaへと落ち着いたとのことです。(彼自身が言っていますが、ネタの可能性もあります。でも、ネタだとしたら内容がつまんないですよね。)
元がパジャマですのでジャマかな、というのが私の考えですが、そんな元ネタは風化して、ハマと呼ばれている可能性はあると思います。
彼の名をコールするMCが聞きたいですね。
(残念ながら、ようつべには、あまり動画がありません。)
さて、この人はアフロ・アメリカンの音楽に強い影響を受けたシンガーであり、そしてオルケスタのベーシストでもあります。
ソロ・アルバムはあまりないと思われ、また、音楽活動の近況も私には知るすべがありませんが、最近では、Royal Jestersのリュニオン・ライヴ・アルバムにゲスト参加していました。
シンガーとしては、ウラに近い高音から低音の太い声までを屈指する人で、決して美声とは言い難いですが、味のあるいい歌手だと思います。
今作では、メンフィス・ソウルから、ブラス・ロック、ヴァン・モリスン(これはジャンルじゃないけど、そうとしか言いようがない)、フィリー・ソウル、モータウン、そしてアメリカ讃歌(愛国歌)まで、いろいろやってますが、違和感なくスンナリ聴けます。
本盤の参加メンバーは以下の通りです。
Joe Jama : lead vocals, bass guitar
Anthony Hernandez : keyboads
Xavier(Weasel) Portillo : drums
Ray Zule : guitar
Ralph Saenz : guitar
George Gonzales : guitar
David Alcocer : guitar
Louie Delgado : percussion
Jorge Alejandro : percussion
Rene Garcia : trombone
Gabe Pintor : saxaphones
Adrian Ruiz : trumpet
Al Gomez : trumpet
いつも思うのですが、ロックでは、サックス入りのサウンドは珍しくないですが、トランペットが加わると格段にゴージャス感が増しますよね。
まして、本盤のように、トロンボーンとのコンボだと最高です。
大人数のラテンでは普通なのでしょうが、この編成で古いジャンプやスイングを演るとはまりまくりで、私の大好物です。
全体のサウンドは、まさにそのホーン陣が花形と言っていいでしょう。
アルバムは、哀愁のメキシカン・トランペットの静かなイントロから、バンドが一斉に立ち上がってくる、ジャンプ系R&Bインスト、"Southside Shuffle "でスタートします。
おしゃれ、かつスリリングで、かっこいいです。
ボーカル曲のトップは、Al Greenのナンバーで始まります。
この"Tired Of Being Alone"という曲は、最近、Sam Cookeのカバー集で話題のトータス松本が大好きだと言っていた曲で、彼が03年に出した最初のカバー・アルバム、「トラベラー」で演っていました。
(ちなみに、私の好みでは、今回の「ツイスティン・ザ・ナイト・アウェイ」より「トラベラー」の方が好きです。)
サウンドは、あまりHiっぽさは感じず、所々Bobby Womackみたいに聞こえたりもしますが、Joe Jamaは、原曲にそって、ねちっこくウィスパーに歌っています。
おしゃれなリズム・ギターとオルガン(?)のロング・トーンが耳に残ります。
続く"Too Close To The Border"は、初めて聴く曲で、やはりオルガンの鳴りが印象的なシャッフル・ブルースです。
Bobby Blandに似合いそうな曲だと思いました。
原曲は分かりません。
そして、"Make Somebody Happy"は、フィリー・ソウルっぽい曲ですが、どうもSantanaのナンバーらしいです。
私は、サンタナについては、「哀愁のヨーロッパ」の泣きが大好き、程度のライト・リスナーです。
意識して聴いても、さほどラテンぽさは感じません。
ただ、ギター・ソロはそれっぽいですね。
それ以外は、ソウル・コーラス・グループの曲だと言われれば、信じるレベルです。
Jamaは、貫禄のリード・ボーカルを聴かせています。
続いて、"Beginning"から、"25 or 6 to 4"へと、Chicagoのカバーが連続できます。
私は、これまた、Chicagoもライトなリスナーで、初期のいくつかのヒット曲を知っているくらいです。
でも、"25 or 6 to 4"は、曲名は一致しませんでしたが、メロを聴いて、思わず座り直してしまいました。
「これ知ってるなあ」と独り言を言っていました。
バンドの編成からいって、この選曲は正解で、いい流れでアルバムが進行していると感じました。
この曲のみ、女性ボーカルがデュエットしています。
そして、問答無用の名曲、"Moondance"です。
同名アルバムは、A面の流れが最高に好きです。
ここでのJoe Jamaは、オリジナルの雰囲気をうまくなぞったアレンジで、物憂げ感をうまく表現しつつも、力強く歌いきっています。
やりきり感がいいです。
ホーン陣も、ブリブリではなく、ジャジーに迫っています。
次の"I'll Be Around"は、Spinnersの大ヒット曲のカバーですね。
フィリー・ソウルの中では、甘すぎないところが、私は気に入っているグループです。
ファルセットのメンのパートも、バリトンのパートも、一人でやりきっています。
コーラスとの絡みも決まってますが、もしかしたらコーラスも自身で入れている可能性はあります。
ムーディーな名曲にうっとりさせられます。
Junior Parkerの名作、"The Next Time You See Me"は、スイート・ソウル中心の展開のなか、素晴らしいアクセントになっていて、するりと聴き手の内側に侵入してきます。
ソウル・バラードから、一転ソリッドなブルースへと転換する流れが、とても効果的です。
ここでも、ほとんどオリジナルどおりに演っていて、素晴らしいです。
再び、静かに優しくスタートするバラード、"Baby I'm For Real"が、またもムードを一転させます。
ここでも、Joe Jamaが、スイートなテナーと、力強いバリトン・リードを一人で演じています。
原曲は、モータウンのソウル・グループ、Originalsですね。
そして、名門Temptationsの"Pappa Was A Rolling Stone"のカバーの登場です。
この時代のテンプスは、私はいまいちですが、本盤のこれまでの流れ的にはOKです。
ラストの"America The Beautiful"は、アメリカの愛国歌です。
私は、Elvisあたりを連想しましたが、Ray Charles盤が有名なようです。
古い歌だと思いますが、9.11で多くの歌手が取り上げ、さらに広まった曲ではなかったかと思います。
なぜ、本盤のラストがこの曲なのかは、よくわかりません。
ちなみに、アルバムがリリースされた04年は、大統領選挙の年でした。
共和党のジョージ・ブッシュ(テキサス出身、息子の方)が再選したのでした。
関連記事はこちら
ジョー・ジャマの音楽と人生
ウエストサイド・ソウル
ハイウェイ90サウンドに酔いしれて
ハーレムのダイスを転がせ
【チカーノ、テハーノの最新記事】
この記事へのコメント