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悲しい知らせに 空が泣いた

 今回は初物です。
 私は、こののバンドについて、ほとんど知識がありません。
 本盤は、11年にリリースされたもので、このバンドのおそらくは最新作だと思われます。

 フロント・マンのRick Broussardは、姓がケイジャンぽく、実際ルイジアナの出身なのかも知れませんが確認できていません。
 ただ、バンドの活動拠点はオースチンらしく、本盤の録音も同地で行われています。
 
 ジャケット・イラストの中央には、ローン・スターが描かれており、多分、テキサスのバンドなのだと思います。


Come And Take It
Rick Broussard's Two Hoots And A Holler

1. I Cried and Cried the Day Doug Sahm Died (Rick Broussard)
2. Me Not Calling (Rick Broussard)
3. If Nothing Changes (Rick Broussard)
4. Go Ahead and Cry (Rick Broussard)
5. Come and Take It (Rick Broussard)
6. Broussard Ballad (Rick Broussard)
7. Times They Are a Changin' (Bob Dylan) 
8. Every Bit as Proud (Kevin Hinks) 
9. Nothing at All (James Fildes, Rick Broussard)
10. Three Times for Jonny Minge (Rick Broussard)
11. Love Me Truly (Rick Broussard)
12. Over My Head in Blue (Rick Broussard)
13. Halden (is a Hell Raisin' Town) (Rick Broussard)

 私が、本盤に注目したのは、全て1曲目が理由です。
 Doug Sahmの名前を盛り込んだ曲名に、私の全監視システムが反応したのでした。

 "I Cried and Cried the Day Doug Sahm Died"
 「ダグ・サームが亡くなった日 ぼくは泣き続けた」

 うーん、はっきりと大きな釣り針が見えますが、喰いつかずにはいられません。
 この曲については後述します。

 まず、バンドの印象を中心に本盤の概略をご紹介します。
 バンド構成ですが、以下のとおりで、ギター2本、ベース、ドラムスからなる4人編成のギター・バンドです。  

Rick Broussard : lead vocals, guitar, mandolin, harmonica
Matt Brooks : lead guitar, harmony vocals, (bass on "Love Me Truly")
Brendon Biglow : bass(electric and standup), gang vocals
Eric C. Hughes : drums, percussions, gang vocals

 ただし、実際に音を聴くと分かりますが、本盤では多くのサポート・メンが参加しており、ゲストのサウンド抜きには語れない仕上がりになっています。
 サポート・メンのうち、特に重要と思われるメンツは、以下のとおりです。

Sean Orr : fiddle
Basil McJagger : keybaod
Bradley Williams : accordion. bajo sexto on "I Cried and Cried the Day Doug Sahm Died"
Johnny X. Reed : guitar(el. and gut) on "I Cried and Cried the Day Doug Sahm Died"
Jonathan Milton : penny whistle on "Times They Are a Changin'"
Mike Hardwick : steel guitar

 とりわけ、フィドルは、ほとんどの曲で活躍していて、その次がスチール・ギターでしょうか。

 裏ジャケの写真をご覧ください。
 ギターを構えてジャンプする躍動感あふれる写真から、私は当初、80年代のスプリングスティーンのようなアメリカン・ロックかと思いました。


 
 しかし、音を聴くと全く違いました。
 エレキ・ギターを中心とした編成ではありますが、受ける印象は、かなりアンプラグドなサウンドです。

 Rick Broussardの担当楽器を再度ご覧ください。
 マンドリンとハーモニカに注目です。
 ベーシストのBrendon Biglowは、スタンダップ・ベースも併用しつつ、エレキ・ベースではメロディックなプレイをしています。
 また、リード・ギターのMatt Brooksが、見事なユーティリティ・ギターリストで、アコギ、エレキともにセンスのあるフレーズを聴かせています。

 そして、繰り返しになりますが、サポート・メンのフィドル、スチール、アコーディオンなどが、本盤では欠かせない存在となっています。

 サウンドの構成は、アコースティックで軽快なスタイルのカントリー・ロック調のものと、トワンギーなエレキ・ギター・リフ、もしくはエレキ・ベースのランが魅力的な、ロッキン・カントリー調のものに大別されます。

 曲調は、カントリー調のファスト・スタイルがメインですが、そこにフォーク調やロッカ・バラード風のミディアム・スローを交えたものが加わり、いい感じのアクセントになっています。

 注目曲をいくつかご紹介します。

2. Me Not Calling   
12. Over My Head in Blue

 "Me Not Calling"は、フィドル、スチールが大らかな調べを奏でる、軽快なウエスタン・スイングで私の好みです。
 一方、"Over My Head in Blue"は、マンドリンのトレモロ・ソロが印象的なカントリー・ロックでこれもよいです。

3. If Nothing Changes
7. Times They Are a Changin'

 この2曲は、ともに疾走系のロックンロール・スタイルで演奏されています。
 "If Nothing Changes"は、バー・バンド系の楽しいロックンロールで、ウキウキ感満載の良曲です。

 そして、ディランのプロテスト・フォークの名作、"Times They Are a Changin'"が、何といっても聴きものです。
 ブレスレスかと思わせる忙しいボーカル、ドライヴするフィドル、ロッキン・ギター・ソロ、ハーモニカ、口笛(?)、そしてガッツ溢れる「ワン、ツー、スリー」のカウント・コールなど、性急感たっぷりの疾走系アレンジが新鮮です。
 (Penny Whistleというのは、例えば、硬貨を使った「草笛」のようなものでしょうか?)

5. Come and Take It
10. Three Times for Jonny Minge

 この2曲は、打って変わってダンス・ロックになっていて、どこかブリティッシュな香りもする、パンキーなファスト・ナンバーです。

4. Go Ahead and Cry
9. Nothing at All

 そして、この2曲は、アルバムのアクセントとなっているバラードです。
 "Go Ahead and Cry"でのギター・アルペジオ、ロッカ・バラード"Nothing at All"でのトワンギーなオブリが耳に残ります。

 さて、最後に、"I Cried and Cried the Day Doug Sahm Died"について、触れましょう。
 ミディアム・スローのナンバーで、アコーディオンの伴奏が強く印象に残る曲です。
 そこに、フィドル、スチール・ギターの美しい調べを交え、大らかなテキサスを感じさせるアレンジです。
 ここに、ピーピー鳴るオルガンがあれば、Doug Sahm讃歌としては完璧かな、と思ったりしました。
 でも、レクイエムとして、あえて能天気さを連想させる要素は排除したのかも知れません。

 歌詞は、Doug Sahmのレパートリーの曲名、"Beautiful Texas Sunshine"、"She's About a Mover"、"Mendocino"、"Rains Came"(以上登場順)が盛り込まれているのですが、いまいちよく理解できません。
 あるいは、これらの曲名を入れたり、さらに韻を踏ませたりするため、強引な歌詞になっているのかも知れません。
 以下に、文末で韻を踏ませていると思われる歌詞を、3例ほど抜書きします。

He was son of San Antone and a big hero of mine.
I can still see him prowling across the stage in the beautiful Texas sunshine.

In 1968, Doug made the cover of the Rolling Stone.
And then he hit with Mendocino and headed back to San Antone.

We could sure use a cat like that today.
That would speak his mind every time and still mean what he'd sey.

 ふたつめの一節の意味が気になります。
 これは、「1968年にダグ・サームがローリング・ストーン誌の表紙を飾った」と言っているのでしょうか?
 Sir Douglas Quintetが、サンフランシスコへ進出し、最初のメジャー・アルバムを出したのが68年でした。
 でも、あまり評判になったとは思えません。
 シングルがヒットしたのなら分かりますが、この当時のヒットらしいヒットは"Mendocino"くらいしかなく、これは翌69年のことでした。

 まあ、大したことは歌っていないと思います。
 大意としては、こんな感じでしょうか。

 彼は サンアントニオの誇り ぼくのヒーローだった
 テキサスの美しい陽射しのなか 今でも彼がステージを歩む姿が見える(Beautiful Texas Sunshine)
 彼のニュースを聞いたとき 雨が降ってきた(Rains Came)
 ダグ・サームが亡くなった日 ぼくは泣き続けた

 何気に、この曲のサポート・メンバーとして、Johnny X. Reedの名前がクレジットされているのが嬉しいです。
 John X. Reedは、元Freda and Firedogsのギタリストで、その解散後は、一時、Doug Sahmと行動を共にしていた人です。
 (Sir Douglas Quintetが70年代に行った、アルマディロ・ヘッドクォーターでの同窓会的ライヴに参加したため、幸運にもCDに記録されました。)

 もともとは、"I Cried and Cried the Day Doug Sahm Died"のみに関心があったのですが、通して聴いてみて、本盤がかなり気に入りました。

 ウエスタン・スイングあり、ロッキン・カントリーあり、トラッド・フォーク調あり、さらにグラス・カントリー風味までありで、(意外性も加味されて)美味しいアルバムです。
 



I Cried and Cried the Day Doug Sahm Died by Two Hoots and a Holler


このステージでは、アコーディオンが参加してないので
その分、フィドルとリード・ギターががんばっています。



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 Albert Leeの新譜を聴きました。
 早い時期に発売予定を知ってオーダーしていたのですが、実際に手に取るまでライヴ盤だということに気づいていませんでした。

 実は、私がAlbert Leeのアルバムを買うのは、これが2度目になります。
 伴奏者としてクレジットがあると、確実に購入のフラグがたつ人ですが、さて、本人のリーダー・アルバムとなるとどうでしょう。
 かなり昔、最初期のソロ・アルバムを買って以来です。

 ほとんど初めて聴くような気分です。
 
On The Town Tonight
Albert Lee & Hogan's Heroes

Disc 1
1. Your Boys (Albert Lee, Karen Lee)
2. Restless (Carl Perkins)
3. Song and Dance (Albert Lee)
4. Travellin' Prayer (Billy Joel)
5. Runaway Train (John Stewart)
6. Glory Bound (Gavin Povey)
7. Wheels (Chris Hillman, Gram Parsons)
8. I'll Never Get Over You (John Hiatt)
9. The World Is Waiting For the Sunrise (Eugene Lockhart, Ernest Seitz)
10. Rad Gumbo (Barrere, Clayton, Gradney, Kibbee, Park, Payne)
11. Highwayman (Jimmy Webb)
12. Breathless (Otis Blackwell)
Disc 2
1. Barnyard Boogie (Gray, Wilhelmina, Jordan)
2. Two Step Too (Delbert McClinton)  
3. I'm Coming Home (Charlie Rich)
4. You're Only Lonely (John David Souther)
5. Leave the Candle (Gary Brooker, Peter Sinfield)
6. On the Verge (Hugh Prestwood)
7. Let It Be Me (Becaud, Curtis, Delanoe)
8. Oh Darling (Lennon, McCartney)  
9. Leave My Woman Alone (Ray Charles)
10. 'Til I Gain Control Again (Rodney Crowell) 
11. Country Boy (Lee, Coulton, Smith)
12. Skip Rope Song (Jesse Winchester) 
13. Tear It Up (Burnette, Burnerre, Burlison)

 全体を通して聴いてみて、まず思ったことがあります。
 それは、バラードを歌うAlbert Leeが新鮮で、興味深かったということです。

 Albert Leeのパブリック・イメージは(私の個人的な思いですが)、バンジョーの速弾き奏法を思わせる、カントリー系スーパー・ピッカーというものではないでしょうか。
 あるいは、独創的なロカビリー・ギターリストという感じでもいいです。

 そういったイメージどおりの演奏では、当然安心安定のプレイが聴けますが、一方で鍵盤系の楽器での弾き語りがあって、これがなんともじわじわと効いてくるのでした。

 ただ、ロカビリー系のプレイを得意としている人ではありますが、いわゆるトワンギン・スタイルとは少し違う気がします。
 トワンギンの定義が定かではありませんが、私の勝手な思いでは、ローポジの巻き弦、もっといえば開放弦をぶんぶんいわせる感じが、私の思うトワンギンです。
 もちろん曲にもよりますが、この人の場合、基本はそういったプレイではないですね。
 "Country Boy"での、歌伴での細かいピッキングがこの人の真骨頂でしょう。

 さて、本盤は10年の英国公演です。
 セットリストは、同じメンバー(Hogan's Heroes)で録った既発スタジオ盤での収録曲を中心に、Leeの意外な趣味(?)を垣間見ることが出来る内容ではないでしょうか。

 ビリー・ジョエルが一番のサプライズでしょうか?
 (私は"Travellin' Prayer"という曲は初めて聴きました。) 
 嬉しいカパーという意味では、Louie Jordanの"Barnyard Boogie"です。

 J. D. サウザーの"You're Only Lonely"のカバーも、やはり驚きました。
 メジャー・ヒットをやること自体がサプライズです。
 この曲のみ、エレキをアコギに持ち替えて弾き語っています
 スペクター風のイントロこそありませんが、普通に気持ちよさそうにカバーしています。

 その点、ロカビリー系の曲は安心安全の選曲で、期待を裏切らないグッドロッキンな速弾きが聴けます。

 Albert Leeは、それこそ数えきれないスタジオ・ワークをやっているはずで、本盤で"Let It Be Me"をやっていますが、Everly Brothersのバックもやったのではないでしょうか。
 彼のバラードでの歌い方は、DonだかPhilだか分かりませんが、Everly Brothersの影響大と感じました。

 私がAlbert Leeを知ったのは、Shakin' Stevensの"This Ole House"がきっかけで、初めて聴く種類のギタープレイに驚愕したものでした。

 世間的(ここでは音楽ファン)にはどうだったんでしょう?
 やはり、Emmylou Harrisのホット・バンドに参加したことが、大きく注目されたきっかけでしょうか。
 スタジオ盤でいうと、EmmylouのEpicの3rd、"Luxury Liner"への参加が77年で、ここから81年の"Evangeline"あたりまで連続7作に参加していました。
 当初こそ、James Burtonのセカンドというポジでしたが、すぐに不動のツー・トップとなり、ついにはJames Burtonが抜けてワン・トップになります。

 その間、79年にはShakyの1stソロ、"Take One"に参加、そして81年の2nd、"This Ole House"と、こちらは2作連続で参加しています。
 シングルでは、"This Ole House"のあと、"You Drive Me Crazy"とか、"Green Door"とか、当時リアル・タイムで聴いていました。
 当時は、あとの2曲もLeeのプレイだと思ってました。(正解はMicky Gee)

 そして、Emmylouのあと、Eric Claptonのバンドでセカンド・ギターをやっています。
 "Another Ticket"が81年、次の"Money and Cigarette"が83年です。

 この当時は、やはり想い出がありますね。
 "Money and Cigarette"収録のシングル、邦題「ロックンロール・ハート」"I've Got a Rock 'n' Roll Heart"は、トーナツ盤を今でも持ってます。
 コマーシャル過ぎると思う方もいるかも知れませんが、私は、リラックスした雰囲気の曲調、ギターのプレイともに大好きな曲です。
 "Money and Cigarette"には、ライ・クーダーが参加していましたが、"I've Got a Rock 'n' Roll Heart"では、アコギのサイドがLeeで、リードはEricかRyでしょうか?
 でも、Ericがサイドで、Leeはオルガンという気もします。

 さて、本盤のバック・バンド、Hogan's Heroesですが、リーダーのGerry Hoganは、英国のペダル・スチール・ギタリストで、Albert Leeとは古くからの知り合いのようです。
 Dave Edmundsの78年の"Trax On Wax 4"で、スチール・ギターを弾いている人です。
 また、84年には、Emmylou Harrisのホット・バンドに参加してツアーに同行しています。
 そのころのAlbert Leeは、Hot Bandを出たあとで、Claptonのバンドに在籍中か、そろそろ離れたころかも知れません。

 ちなみに、少しあと、John Fogertyが最初のカンバック(85' Centerfield")を果たしたころのことですが、John Fogerty's All Starsという名のバンドを組んでコンサートをしていた時期がありました。
 Albert Leeは、このAll Starsに参加していました。
 ベースはDuck Dunn、キーボードはBooker T. Jonesでした。

 このころのJohnは、Fantasy Recordsとの係争に終わりが見えなかったころで、自作でありながらCCRナンバーを歌わなかった時期です。
 その分、ハンク・バラードとか、スワン・シルバートーンズとか、今では珍しいレパートリーをやってます。

 脱線しました、軌道修正します。
 Hogan's HeroesのメンバーでピアノのGavin Poveyは、Shakyの82年の4th、"Give Me Your Heart Tonight"から、Geraint Watkinsの後釜として、Shakyのバンドに参加していました。
 87年の"Let's Boogie"まで在籍しています。
 Albert Leeとは、スタジオ盤ベースでは、やはり入れ替わり加入という感じですが、交流があった可能性は高いでしょう。

 Gavin Poveyは、ソロ・アルバムもある人で、私の印象では、乱暴に例えればロックンロール・リバイバリストといったところでしょうか。
 本盤では、自作の"Glory Bound"と、もう1曲でリード・ボーカルをとっています。

 Gavin Poveyは、Stiff所属のKirsty MacColl、Tracey Ullmanらガール・ポップ系シンガーの伴奏をやっているほか、なんと79年のInmatesの!stにケスト参加して、1曲オルガンを弾いています。
 また、Billy Blemnerの84年のソロ、"Bash"では2曲でピアノを弾いているのでした。

 そして、Texas Tornadosの91年作、"Zone Of Our Own"の収録曲、"Did I Tell You"が、Augie MeyersとGavin Poveyの共作とクレジットされていることに、今回気が付きました。
 (演奏には参加していません。)
 ただこの曲は、Texas Tornados盤が初出ではなく、Augieのソロ・アルバム、"Augies Back"が初出だと思うのですが、"Augies Back"ではGavin Poveyの単独クレジットになっています。
 理由は不明です。(ちょっと追及したくなってきました。)

 さて、本盤では、Gavin Poveyのほかにも、数曲でドラムのPeter Baronがリード・ボーカルをとっています。
 John Hiattの"I'll Never Get Over You"が、彼のリード・ボーカルです。
 この曲の原曲は、A&M録音とSanctuary録音の2種類があり、どちらも捨てがたい魅力があります。

 A&M録音は、93年の"Parfectly Good Guitar"の日本盤ボートラとして収録されたので、現在普及しているUS盤では聴くことが出来ません。
 Sanctuary録音は、01年の"The Tiki Bar Is Open"に収録されたもので、Sonny Landrethがギターを弾いています。
 Sonny Landrethは大好きで、素晴らしいです。(私はRyよりも好きです。)

 A&Mでギターを弾いたMichael Wardは、賛否あるかもしれませんが、私は好きです。
 "Buffalo River Home"のプレイが私のツボで、これがある限り多少のことはOKです。
 本盤では、Leeが普段とは違い、Claptonのウーマン・トーンを思わせる優しいソロを弾いていて聴きものです。

 思いつくまま綴ってきましたので、特記すべき点について、ここで整理したいと思います。

 Albert Leeがピアノの弾き語りをしている曲
Disc 1
11. Highwayman
12. Breathless (バンピン・ピアノ !!)
Disc 2
7. Let It Be Me
10. 'Til I Gain Control Again
12. Skip Rope Song

 ピアノのGavin Poveyがリード・ボーカルをとっている曲
Disc 1
6. Glory Bound
9. The World Is Waiting For the Sunrise

 ドラムスのPeter Baronがリード・ボーカルをとっている曲
Disc 1
8. I'll Never Get Over You
Disc 2
5. Leave the Candle
8. Oh Darling

 私は、本盤で、Albert Leeという人を再認識しました。
 超絶速弾き曲、"Country Boy"の人、というベタな固定観念を打ち破ってくれたアルバムになりました。



Country Boy by Albert Lee



Sweet Little Lisa by Albert Lee




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 唐突ですが、音楽ファンなら、ジャケ買いしたことが一度ならずあると思います。
 私はしょっちゅうです。
 
 そんな私のニッチな「ある ある」を のたまってみます。
 例えばこんな感じです。
 「Swamp Popのアルバムをジャケで買うと、裏をかかれることが多い」

 まあ、分かんないですよね、何言ってるのか。
 つまりは、こんなふうな例です。
 「近影がジャケに使われていたので新録だと思って買ったら、中身はヴィンテージ期の新しいベスト盤だった」
 逆に、「セピアな写真ジャケだったので古い録音を期待していたら、最近のライヴ盤だった」
 「あー あるある」と共感していただけましたか。

 今回は、Swamp Pop Legendの一人、Johnnie Allanの最近再発されたアルバムをご紹介します。


Louisiana Man
Johnnie Allan

1. Rubber Dolly (arr. J. Guillot)
2. Family Rules (Baker, Shuler)
3. What'cha Do (H. Simoneaux)
4. Please Accept My Love (Garlow)
5. Hippy Ti Yo (arr. J. Guillot)
6. Jolie Blon (arr. J.Guillot)
7. Sittin' And Thinkin' (C. Rich)
8. Your Picture (R. Guidry)
9. I Cried (B. Mizzell)
10. Lonely Days, Lonely Nights (J. Guillot)
11. Pardon Mr. Gordon (Bernard, Soileau)
12. Secret Of Love (Shuler, Willridge)
13. South To Louisiana (M. Phillips)
14. Mathilda (Khoury, Thierry)
15. Opelousas Sostan (Graeff, Palmer)
16. Sea Of Love (Khoury, Baptiste)
17. The Promised Land (C. Berry)
18. Sweet Dreams (D. Gibson)

 今回の場合は後者でした。
 アルバム・ジャケは古い写真でしたが、中身は91年のロンドン公演(つまりライヴ盤)だったのです。
 参加したメンツは以下のとおりです。

Johnnie Allan : vocals
Harry Simoneaux : saxophone
Nick Pentelow : saxophone
Gary Rickards : lead guitar
Dave Travis : rhythm guitar
Stuart Colman : bass guitar
Geraint Watkins : piano & accordian
Bobby Irwin : drums

 このメンツを見て反応した方は、私のお友達です。
 Geraint Watkins、Bobby Irwinは、パブ・ロック・ファンなら誰でも知っている存在ですよね。
 二人とも、Dave EdmundsやNick Loweと深くつながっている職人たちです。

 Bobby Irwinは、Martin Belmont(g)、Paul Carrack(key)とともに、Nick LoweのCowboy Outfitsのメンバーだった人で、最近でも、Loweの最新作に参加していました。
 Robert Treherneの名前でクレジットされているのが彼です。

 そして、Stuart Colmanをご存知でしょうか?
 80年代の英国ロカビリー・スター、Shakin' Stevens全盛期のバンドのベーシストで、Shakyのソロ2ndの"This Ole House"から、5thの"The Bop Won't Stopまでを連続してプロデュースしていた人です。

 私の思うところ、Shakyの絶頂期は、1stから4thの"Give Me Your Heart Tonight"あたりまでではないでしょうか。
 ちなみに当時、私が一番聴いていたのは、2ndの"This Ole House"と3rdの"Shaky"です。
 (7thの"Lipstick Powder and Paint"は、Dave Edmunds製作でした。…あまり聴いてない、聴こう。)

 では、ギターリストのGary Rickardはご存じですか?
 この人は、Garaint Watkinsとともに、Cajun Rock'n'Roll band、Balham Alligatorsを組んでい(る?)た人です。
 (Bobby Irwinも近作では参加していたはずです。)

 このように、さすがロンドン公演だけあって、英国の南部音楽好き職人がばっちり参加していて期待大です。
 とりわけ、Cajun好きのBalham Alligators勢の参加がうれしいですね。

 さて、本盤は、92年にDeep Elen Recordsからリリースされたもののリイシューらしいです。
 私は全くの初見で、普通に新譜のような感覚で聴けました。

 アルバムは、ライヴらしくMCによる「Johnnie Allan !」のコールから始まります。
 ただ、観客の反応は、あまり拾われてなくて、曲の途中だけを聴くとスタジオ・テイクと言っても疑わない感じでしょう。
 曲終わりでのざわつきや、曲間でJohnnieが次の曲名を叫んだりするところが、かろうじてライヴだということを思い出させてくれます。

 セット・リストは、過去のJohnnie Allanのレパートリーから、有名曲(代表曲?)を中心にチョイスしていて、ほとんどサプライズなしという印象です。

 ケイジャン・トラッド曲のJohnnieアレンジ版も、想定の範囲内ですね。
 (Johnnie Allanの本名は、John Allen Guillotです。)

 バンド・サウンドの中心は、アコーディオンかと思いきや、ホーン陣がかっちりとした音を出していて、音の厚み、勢いともによくて、とても心地いいです。
 地元ルイジアナのバンド、例えばBoogie Kingsのようなアマチュアっぽさはなく、安心安定のバンド・サウンドです。

 めったに出番がないですが、哀愁曲でのギター・ソロもいい感じですよ。
 スワンプ・ポップ・ファンはもちろん、パブ・ロック・ファンも満足出来ると思います。
 この際、全て必聴と言い切ってしまいましょう。
 
 とはいえ、おせっかいを承知で、いくつか聴きどころを紹介しましょう。

 まずは、Johnnie Allanの代表曲を押えましょう。
 以下の曲たちです。

2. Family Rules
8. Your Picture
10. Lonely Days, Lonely Nights
13. South To Louisiana
17. The Promised Land

 この中で、最もスワンプ・ポップらしいのが、"Lonely Days, Lonely Nights"です。
 原曲は、58年にJinから出されました。
 私は、アナログLP時代に、英Krazy Kat盤、"Johnnie Allan & Krazy Kats 1959-1960's"で初めて聴いた曲です。

 当時、Johnnie Allanを聴く環境は、英Ace盤が入り口だったと思いますが、Jin盤が手に入らなければ、次はもう英Krazy Kat盤だったのです。
 ニッチな品ぞろえの輸入盤店へ入り浸っていたからこそ聴けたのでした。



 Johnnie Allanの曲では、"South To Louisiana"や"Promised Land"の方が有名でしょうが、私はこの曲や、本盤では演っていませんが、"You Got Me Whistling"のような曲が、より好きです。
 やっぱり、スワンプ・ポップは哀愁ですよね。(三連ならなおさら)

 他人のカバーも色々とやっていますが、Charlie Richの"Sittin' And Thinkin'"などは普通にかっこいいです。
 この曲は、RichのSun時代の曲で、Elvis Costelloのカバーが有名(?)ですね。

 スワンプ・ポップ・クラシックのカバーも気になります。
 曲名のあとにオリジネイターを記します。
 中には、ポップ・カントリーが元歌のものもありますが、完全にスワンプ・ポップとして(ファンには)認識されている曲ばかりです。

11. Pardon Mr. Gordon … Rod Bernard
14. Mathilda … Cookie and the Cupcakes
16. Sea Of Love … Phil Phillips
18. Sweet Dreams … Tommy McLain

 そして、Johnnie Allanといえば、ケイジャン・ルーツに根差した曲が出でくるのが特徴です。
 本盤では以下の曲あたりですね。

5. Hippy Ti Yo
6. Jolie Blon 

 "Jolie Blon"は、様々な表記がある曲です。
 例えば"Jole Blon"とか"Jolie Blonde"とか…。

 私は、P-vineから84年に出たDoug Sahmの日本盤LP、"Live! Goin' To San Antone"で初めて聴きました。
 このライヴ音源は、以後色々な形態で、繰り返しソフト化されることになります。
 同音源では、"Cotton Eyed Joe"も印象に残っているトラッド曲です。

 さて、本盤で私が一番反応したのは、"Please Accept My Love"という曲です。
 この曲の演奏前に、Johnnie Allanが人の名前を叫んでいるのです。
 私には「ジミー・ウィリス !」と聴こえたのですが、 これはおそらくJimmy Wilsonだと思われます。

 私は未聴だと思う(多分)のですが、58年にGoldbandから、同曲のシングルを出している人です。
 おそらく、この盤がオリジナルか、あるいはスワンプ・ポップ版のオリジナルだと思います。
 この曲は、2年後にElton Andersonという人も吹き込んでいて、こちらはメジャーのMercuryから出でいます。

 でも、Goldband関連でいうと、作者がGarlowとなっているので、Clarence Garlowの作者盤があるんじゃないでしょうか?
 こちらは、Garlowということでザディコ、ないしはダウンホームなブルースの可能性も高いですが、あるいは意表をついて、T-Bone風だったりしたら嬉しいです。
 (Garlowのギターは、T-Boneの影響も大として知られています。)

 私が初めて聴いたのは、なんとB.B.King盤で、長らくB.B.のオリジナル・レパートリーだと思っていた時期があります。
 今は好きですが、当初はいまいちと感じていた曲です。
 ブルージーではありますが、ブルースではなく、ブルース・バラードだったからです。

 B.B.のブルース・バラードが好きだと思うようになるまで、随分と時間がかかったと思います。
 私も昔は、純で狭義なブルース信者だったのでしょう。

 例によって脱線しまくりで、本盤の収録曲そのものについてばかり書いてしまいました。
 まあ、本盤の仕上がりについては、かなり最初の方で、結論を述べてしまっています。

 繰り返しておきましょう。
 Swamp Popファンはもちろん、Pub Rockファンにもお勧めの1枚です。


You Got Me Whistling by Johnnie Allan




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Johnnie Allan
輝きはやまない

Shakin' Stevens
テイク・ワン
ジス・オール・ハウス
やっかいごとはごめんだよ      
終わりだなんて言わないで      
涙はほんの少しだけ



リトル・ジュニアの不思議な旅

 これはいいです !
 久々に個人コレクションものとして、良盤だと思いました。
 大好きなJunior Parkerの新しい編集盤が、英Fantastic Voyageからリリースされました。

 映画「ミクロの決死圏」の原題を社名とする会社、Fantastic Voyageは、多分ここ数年前くらいから、地域別のR&Bのコンピを粛々と出していたという印象でしたが、昨年ころから、堰を切ったようにわらわらとリリースしだしたという感じの会社です。

 コンピでは、白黒混成の女性ロッキンR&B、ロカビリー集や、ロッキン・ウエディング・ソング集など、興味を惹かずにはいられない企画ものを出しています。
 
 コレクションでは、ロイ・ブラウン、ワイノニー・ハリスの新らしい編集盤(どちらも2枚組)がよくまとまっていて良いです。

 さて、そんな英国幻想的旅行社が、かなり頑張ってリリースしたのが本盤です。
 Junior Parkerの初期シングル集というテーマで、Modern、Sun、Dukeの音源をCD2枚にパッケージしています。
 この会社、デジパック仕様が多いのが特徴で、CD収納の省スペース化を図っている私には、美麗な装丁はよいですが、収納の面では困った社風ではあります。


Ride With Me, Baby
The Singles 1952-1961
Little Junior Parker

Disc 1
1. You're My Angel (Herman Parker)
2. Bad Women, Bad Whiskey (Herman Parker, Jules Taub)
3. Love My Baby (Bobby Bland and Junior Parker) (Herman Parker, Sam Phillips)
4. Feelin' Good (Herman Parker)
5. Fussin' And Fightin' Blues (Herman Parker)
6. Love My Baby (Herman Parker, Sam Phillips)
7. Mystery Train (Herman ParKer, Sam Phillips)
8. Feelin' Bad (Herman Parker)
9. Dirty Friend Blues (Herman Parker)
10. Can't Understand (Herman Parker)
11. Please Baby Blues (Herman Parker)
12. Sittin', Drinkin' And Thinkin' (1953 Duke) (Herman Parker)
13. Sittin' At The Bar (Herman Parker)
14. Sittin' At The Window (Herman Parker)
15. Sittin', Drinkin' And Thinkin' (1954 Sun) (Herman Parker)
16. Love My Baby (Alt.take) (Herman Parker, Sam Phillips)
17. Backtracking (Herman Parker)
18. I Wanna Ramble (Herman Parker)
19. Can You Tell Me, Baby (Herman Parker)
20. Driving Me Mad (Dick Cole)
21. There Better Be No Feet (In Them Shoes) (Eddie "Tex" Curtis)
22. I'm Tender (Herman Parker)
23. Pretty Baby (1955) (Chester Burnett)
24. Mother-In-Law Blues (Don Robey)
25. That's My Baby (Angel Cartwright, Bill Harvey)
26. My Dolly Bee (Oscar Willis)
27. Next Time You See Me (Earl Forest, Bill Harvey)
Disc 2
1. That's Alright (Jimmy Rogers)
2. Pretty Baby (1956) (Chester Burnett)
3. Peaches (Joe Veasey, Don Robey)
4. Pretty Little Doll (Joseph Scott, Don Robey)
5. Wondering (Joseph Scott, Don Robey)
6. Sitting And Thinking (Joseph Scott, Don Robey)
7. Barefoot Rock (Charles Harper, Joseph Scott)
8. What Did I Do (Don Robey)
9. Sometimes (Don Robey)
10. Sweet Home Chicago (Robert Johnson)
11. I'm Holding On (Joseph Scott, Deadric Malone)
12. Five Long Years (Eddie Boyd)
13. Blue Letter (William Joiner, Deadric Malone)*
14. Stranded (Deadric Malone)
15. Dangerous Woman (Deadric Malone)
16. Belinda Marie (Deadric Malone)
17. You're On My Mind (Deadric Malone)
18. The Next Time (Deadric Malone) 
19. That's Just Alright (Deadric Malone) 
20. I'll Learn To Love Again (Deadric Malone)
21. Stand By Me (Herman Parker)
22. I'll Forget About You (Herman Parker, Pluma Davis)
23. Driving Wheel (Roosvelt Sykes)
24. Seven Days (Herman Parker, Deadric Malone)
25. How Long Can This Go On (Herman Parker)
26. In The Dark (Herman Parker, Deadric Malone)
27. Mary Jo (Thomas Braden)
28. Annie Get Your Yo Yo (Joseph Scott, Deadric Malone) 

 まず本題の前に、なぜ61年までなのか、ここは知りたいところです。
 Junior Parkerは早世した人(71年没:39歳)ですが、Dukeには60年代中期まで在籍したはずで、現に本家(当時の)米MCA発売のCD、"Backtracking 〜 Duke Recordings Vol.Two"では66年のシングルを収録していました。

 Dukeのシングルがコンプリートじゃないのは、続編の企画があるのでしょうか?
 でも、残りはかなり少ないはずで、なおかつ英Fantastic Voyageは、3枚組を普通に出している会社なので、どうせなら3枚組のシングル・コンプリート集にしてほしかったです。

 Bobby BlandのDuke時代が、2枚組CD×3セット(米MCA盤、日本盤はVol.1のみ出された。現在は全て入手困難)にまとめられたことに比べれば、やはり不遇という気はします。

 現在は、ユニバーサルに吸収されて(?)、マーキュリーも傘下なら、Parkerはデューク〜マーキュリーを横断するセットも可能ははず…。

 そして話は唐突に変わりますが、アルバム・タイトルの"Ride With Me, Baby"が気になります。
 このタイトルは、収録曲の曲名ではありません。
 あるいは、どの曲かの歌詞の一節である可能性は高いです。

 でもまあ、普通ならさほど気にせず、スルーするところですよね。
 アルバム・タイトルなんて、単に編者の好みや気分で付けられたかも知れないからです。

 今回私が気になったのは、Disc1-23とDisc2-2に収録された、"Pretty Baby"という曲の存在です。
 どちらも、作者はChester Burnettとなっていて同じ曲です。
 Chester Bernettが、Howlin' Wolfの本名であることは、(ブルース・ファンには)よく知られています。

 違うのは、Disc2の方が、シングルとして57年にリリースされたのに対して、Disc1の方は、先に録音されましたが、後に82年の英AceのLP、"I Wanna Ramble"で初めて世に出るまでお蔵入りしていたことです。
 ちなみに、ギターは、正規盤のDisc2がPat Hareで、Disc1はRoy Gainesです(どちらもかっこいい!!)。

 この"Pretty Baby"という曲は、これまでリリースされたMCAのCDや、DukeのLPでは、作者がHerman Parker、つまりJunior Parkerの自作となっていたのです。
 これは、単にFantastic Voyage盤のケアレス・ミスでしょうか。
 あるいは、最新の修正情報なのでしょうか?

 Howlin' Wolfには、"Pretty Baby"という曲はありましたっけ?
 よく分かりません。
 これこそ、タイトル違いで、歌詞やメロが同じものがあるのかも、などと思ったりします。

 "Pretty Baby"の正解が解き明かせぬまま、しかし、Wolfについて、あることに気が付きました。
 Howlin' Wolfの代表曲のひとつに、"Riding In The Moonlight"という曲があります。
 くだんの"Pretty Baby"とは、ひいきめに聴いてメロが若干似ていますが、全体の歌詞は違います。
 ただこの"Riding In The Moonlight"、実は別名があり、それが"Baby Ride With Me"というのです。

 熊家族が94年に出したHowlin' WolfのCD、"Memphis Days Definitive Edition 2"の1曲目は、"Baby Ride With Me (Ridin' in the Moonlight)"という表記になっています。
 そして、歌詞の中に、"Come On Ride With Me, Baby"というフレーズがあるのでした。

 そして、改めてJunior Parkerの"Pretty Baby"を聴き返したところ、"Ride With Me Baby"と歌っていたのでした。

 まあ、ブルースの歌詞の場合、オリジナルだと思っても、実は昔からある伝承的な常套句である可能性は高いです。
 とはいえ、ひとつの関連性を見つけました。

 アルバム・タイトルは、"Pretty Baby"の歌詞の一節から名付けられた、とりあえずそういう結論にしたいです。

 さて、そろそろ中身をじっくり聴いてみましょう。

 簡素なスモール・コンボ・スタイルから、ホーンを数管加えた編成、そしてゴージャスなビッグバンド・スタイルまで、いくつかの例外を除いて、ほぼ録音順に並べられているので、その音の変遷をたどりながら聴くだけでも楽しいです。

 Disc1の冒頭の3曲は、Matt Murphyがギターを弾いているんですが、意表をついてT-Boneみたいなプレイで、音もフルアコかセミアコっぽかったりします。
 ピアノの存在がモダンで、ジャンプ風にも聴こえます。
 ちなみに52年録音です。

 その後を引き継いだのが、弟(それとも兄?)のFloyd Murphyで、Disc1-4から1-8あたりは彼のギターなのでした。
 このあたりは53年録音なんですが、タイトなスモール・コンボ・スタイルです。
 今回、面白く思ったのは、有名な"Mystery Train"が案外ロッキン度がゆるくて、その裏面だった"Love My Baby"のプレイが、よりロカビリーの原石っぽく聴こえることです。 
 "Love My Baby"のカバーでは、クリス・スペディングを擁したロバート・ゴードン盤が懐かしいです。

 さらに、Floyd Murphyから、徐々にPat Hareへと移行していきますが、この二人は、Junior Parkerのギターリストとして双璧だと感じました。
 一時期、Roy Gainesも登場し、Bobby Blandの場合もそうですが、やはりDuke時代は素晴らしいメンツばかりですね。

 この時期の代表曲のひとつ、"Mother-In Low Blues"は、これまでのCD等ではPat Hareとなっていますが、本盤のライナーではFloyd Murphyとなっています。
 そして、"Next Time You See Me"は、確証はないが、おそらくFloydだろうと記しています。
 この曲も、これまではPat Hareだと言われていた曲です。 

 もし仮に、本盤の説が正しいとすれば、Pat Hareが弾いた代表曲は、"That's Alright"当たりということになます。
 その後、Pat Hareは、やんごとない事情(I'm Gonna Murder My Baby)で、57年ころを最後にセッションから消えることになります。

 さらに、ごくわずかですが、Clarence Hollimanが弾いた曲もあり、ついにはWayne Bennettの登場となるわけですが、ビロードのようなボーカルには、Bennettの優しい音色は相性抜群のように思えて、実はスリルに欠けるのではないか、と思ったりしています。
 まあ、名人同士ですので、曲によりますよね。

 "Sweet Home Chicago"、"Driving Wheel"、"Five Long Years"、"In The Dark"といった代表曲が、弾き人知らずなのが残念です。
 時期的には、Wayne Bennettの可能性はあります。
 もしそうだとすれば、相性抜群だと全面的に前言を翻します。

 今回の発見として、コーラス・グループを配した曲があり、これがゴスペル・カルテットみたいだと感じて興味深かったです。
 Disc2の以下の曲がそんな風です。

16. Belinda Marie
18. The Next Time
19. That's Just Alright

 3曲とも新鮮で、とりわけ"That's Just Alright"は、コール・アンド・レスポンスが印象に残ります。

 実は、本盤で私が初めて聴いた曲がかなりあり、上記3曲以外では、以下の曲がそうです。

Disc 1
25. That's My Baby
26. My Dolly Bee
Disc 2
4. Pretty Little Doll
8. What Did I Do
13. Blue Letter
20. I'll Learn To Love Again
27. Mary Jo

 これらの曲は、あるいは初CD化曲かも知れません。
 少なくとも、私の持っている既発のCD、LPには未収録でした。

 CD2枚組、至福の時間を過ごせました。



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サニーの歌声にダグを偲ぶ

 今回は、ひとつの呼びかけです。
 Doug Sahmのファンの皆さん、Sunny Ozunaを聴きましょう。

 音楽ファンの中には、アーティストが好きになっても、その本人の作品や同傾向の音楽にしか興味がないという方が、ときたまいらっしゃいます。

 私の場合、好きなアーティストが影響を受けた音楽が気になります。
 例えば、その彼がカバー曲をやり、それが気に入ったりすると、原曲を追っかけずにはいられないのでした。

 私を音楽好きにさせてくれたのは、ビートルズです。
 ビートルズのアルバムを少しずつ舐めるように聴き進めつつ、並行してやっていたのは、彼らに影響を受けたバンドを探して聴くことでした。

 しかし、所詮ビートルズを超える存在などないと気付いたとき、私はベクトルの向きを変えたのでした。
 ビートルズが影響を受けた音楽、ロックンロール、R&B、カントリー、ガール・グループなどをあさるようになったのです。
 それが全ての始まりでした。

 その後、CCRを知り、Doug Sahmを知って、この二組がまた大きな節目になりました。
 彼らの音楽の背景を追っかけることによって、私の嗜好は広がっていったのです。

 今回のアルバムは、Doug SahmのアイドルだったSunny Ozunaが04年にリリースした編集盤です。



30 Grandes Exitos
Sunny Ozuna

1. Reyna de Mi Amor (Sunny Ozuna)
2. El Resbalon (Irma Ramirez)
3. Al Baile Me Fui (R. De La Garza)
4. Mi Secretito
5. Tu Movida (B. M. Heredia)
6. Con Golpes de Pecho (Felipe Jimmenez)
7. Ven Que Te Quiero
8. Ya Nunca Vuelvas (J. Antonio Lopez)
9. Carino Nuevo (Jose Espinosa)
10. La Del Monito Blanco
11. Lastima Es Mi Mujer (Juan Gabriel)
12. El Wiri-Wire
13. Pago Al Cantado (Juan Hernandez)
14. El Reganado (Juan Compusno)
15. Triste y Lastimado (Sunny Ozuna)
16. El Chiflidito
17. Besando Botellas (R. Ortega Contreras)
18. El Golpe Traidor (Manuel Valdez)
19. El Bodeguero
20. Lady (L. Richie)
21. Como Es El
22. La Movida
23. Que Se Junten Nuestros Brazos (Cornelio Reyna)
24. Amorcito de Mi Vida (Ramon Ayala)
25. Que Voy Hacer (Freddie Martinez)
26. Yo Quiero Saber de Ti
27. Borracho Perdido (R. Buendia)
28. Los Besos Que Te Di
29. Just Because (Lloyd Price)
30. Ay Amorcito

 全30曲、たっぷりとSunny Ozunaの魅力が詰まったアルバムになっています。
 もともとのソースは、Freddie Recordsで過去に吹き込んだ音源からのチョイスなのではないかと思います。

 曲名から分かりますように、ほとんどがスペイン語で歌われているもので、ブラス勢を含むビッグ・バンドで演奏される、ラテン系音楽(テハーノ・ミョージック)で構成されています。

 そのキャリアの初期には、チカーノR&Bを多くのレパートリーにしていたSunnyですが、近年は、スパニッシュ・コミュニティへ向けた活動が中心になっているようです。

 さて、そんな近年の活動を俯瞰できる本盤にも、珍しく英語の題名の曲がひっそりと収録されていました。
 トラック29の"Just Because"です。

 原曲は、もちろんLloyd Priceで、私はジョン・レノンの名盤「ロックンロール」で初めて知った曲です。
 歌前にジョンが語りから入る演出が素晴らしく、「スタンド・バイ・ミー」を始め、かのアルバムは名演ぞろいですが、私は特に好きな1曲です。

 思い出せないのですが、私がジョンのバージョンを聴いて感激していた頃、ロイド・プライスのオリジナルは容易に聴くことが出来たのでしょうか?

 当時、ロイド・プライスのABC時代の音源が流通していたのか、今となってはよく分かりません。
 私の関心は、Chuck BerryやLittle Richard、Sam Cookeらへの方が高かったのは間違いありません。
 結果として、私がオリジナルを聴いたのは、かなり経ってからのことになります。

 Lloyd PriceのABC時代といえば、私はずっと88年リリースのMCA盤を愛聴していましたが、昨年、英Jasmineから、スペシャルティ、ABC時代をまたぐ2枚組CDが出て、廉価ということもあって買いました。

 両時代のシングルの両面を順に収録した優れもので、オリジナル版"Lawdy Miss Clawdy"から、ABC時代の代表曲、"Just Because"、"Stagger Lee"、"Parsonality"、ついでに"The Chicken and The Bop"(Doug Sahmが"Juke Box Music"でカバー)も一気に聴けます。

 英Jasmineは、米国のノスタルジー音楽のリイシューを精力的に行っている会社で、パッケージに「メイド・イン・チェコ」と記されているのが興味深いです。
 (英Jasmineが対象としている音楽は、ビッグ・バンド・ジャズ、ジャズ(ポピュラー)・ボーカル、ラテン、ウエスタン、ヒルビリー、ブルーグラスなどが中心でしたが、近年はロックンロール、R&B、ティーン・ポップなどにも力を入れています。)

 さて、"Just Because"というと、Elvisのレパートリーに同名曲があって、私の原曲探求は、思わず脇道へそれたりしたものでした。

 Lloyd Priceの作品は、R&Bバラードの名曲のひとつだと思いますが、実はDoug Sahmもカバーを出しています。
 (すみません。やはり、話はそっちへと向かうのでした。)

 Doug Sahm盤は、Dougのキャリアの初期、62年のRenner Records時代の45s、"Two Hearts In Love"のB面にカップリングされていました。

 これは、アナログLPでは、Renner音源をコンパイルした86年の"Texas Road Runner"、CDでは、00年の"In The Begginnings"(豪AIM盤…音が悪く残念)でしか聴けません。
 (AIM盤は、他盤でCD化されているHarlem音源を含むもので、Renner音源のコンプリートCDはまだ作られていません。)

 さて、本題に戻ります。

 Sunny Ozunaの"Just Because"を聴きましょう。


若き日のSunny Ozuna


 一見無造作ながら、印象的なピアノのイントロに続いて、ラップ・スチールをバックに曲が始まると驚きます。

 なんと、タイトル表記こそ英語ですが、中身はスペイン語で同曲を歌ったものなのでした。
 想定出来たはずなのですが、ここは英語を予想(期待)していたので、驚きです。

 しかし、すぐにそんなことはどうでもよくなります。
 Sunnyの力強い喉の響きに、その魅力ある歌い回しに、一瞬でとりこにさせられました。

 そして、ここからが、今回私が本当に言いたかったことです。
 
 この曲でのSunny Ozunaのボーカルが、Doug Sahmにそっくりなのです!!
 (同志のみなさん そう思いませんか !?)

 Doug Sahmの歌声を、一度も聴いたことがない方には申し訳ないです。

 Dougがスペイン語で全編歌うことはまずないですが、仮にもし歌ったら、きっとこんな風になるに違いない、いえ、眼を閉じて聴けば、Doug Sahmにしか聴こえない、そう言い切りたいくらいです。

 この場合、ガチで聴き比べるのは止めましょう。
 ガチに比べればそれは違うでしょう。
 でも、声のかすれ具合や、高いパートを歌う時の声の張り方、しばしば鼻にかかり声がこもるところなど、とにかく雰囲気が似ているのです。

 私は、かつてレフティ・フリーゼルの比較的後期のヒット曲、"Saginaw Michigan"を初めて聴いたとき、マール・ハガードの歌い方にそっくりだと感じたことを思い出しました。

 レフティがハグのアイドルであり、ハグがレフティのように歌いたいと努力したことは(カントリー・ファンの間では)有名です。
 これなどは、往年のスターが、一周回って、かつて自分の影響下に出てきて、新しい波を起こして成功した後輩に、逆に影響を受けたという代表例です。

 Sunny Ozunaが、Doug Sahmに特別な感情を持っていたかどうか、私には分かりません。
 でも、きっとお互いを刺激しあう、親密な関係だったに違いない、と二人のファンとしては、幸福な想像をめぐらせずにはいられないのでした。



Just Because by Sunny Ozuna




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ダーティー・ドッグ・ワルツ

 今回は、Swamp Pop Legendの一人、Warren StormのHuey P. Meaux関連の音源のコレクション、"King Of The Dance Halls 〜 Crazy Cajun Recordings"を聴き返します。
 本CDは、00年に英Edselからリリースされました。


King Of The Dance Halls
Crazy Cajun Recordings
Warren Storm

1. They Won't Let Me In (Wolfe)
2. Jack and Jill (Barry)
3. Daydreamin' (Cantrell, Claunch, Deckelman)
4. Four Dried Beans (Meaux)
5. I Walk Alone (Wilson)
6. Love Me Cherry (Gaines, Willis)
7. Honky Tonkin' (McClinton)
8. Mr. Cupid (Unidentified)
9. Rip It Up (Blackwell, Marascalco)
10. Love Rules the Heart (Thibodeaux)
11. Don't Fall in Love (Love)
12. The Gypsy (Reid)
13. Don't Let It End This Way (Ravett)
14. If You Really Want Me to, I'll Go (McClinton)
15. Tennesse Waltz (King, Stewart)
16. Just a Moment of Your Time (Lewing, Ozuna)
17. Stop and Think It over / Breaking up Is Hard to Do (Graffiano)(Bourgeois, Meaux)
18. The Rains Came (Meaux)
19. The Prisoner's Song (Massey)
20. Think It Over (Meaux)
21. Please Mr. Sandman (Meaux)
22. Blue Monday (Bartholomew, Domino)
23. But I Do (Gayton, Guidry)
24. Things Have Gone to Pieces (Payne)
25. Sometimes a Picker Just Can't Win (Unidentified)
26. King of the Dance Halls (Mayes, Romans)

 最初に通して音を聴いた印象ですが、後半の数曲が明らかに違う時期のものと感じますが、その他については70年代の音源かな、と大した根拠もなく考えました。
 それは、Huey Meauxが70年代後半以降、積極的に50s60sの彼のアイドルをレコーディングしていることを知っていたからです。

 しかし、ライナーを眺めたところ、Warren Stormについてはそんな簡単なストーリーではないようです。
 ライナーは、John BrovenがWarrenから聞き取った数回のインタビューをもとに構成されています。

 簡単にまとめてみるとこんな感じでしょうか。
 
 Warren Stormは、37年にLafayetteから20マイルほど南の町で生まれました。
 今年で75歳になるわけですね。

 58年から63年にかけて、J.D.Millerのもとでスタジオ・ドラマーとして修業したようです。
 この時期、ナッシュビルの綺羅星のようなスタジオ・エースと仕事をし、貴重な経験を積んでいます。
 ニューオリンズでも仕事をし、ドラムのメイン・インフルエンスはアール・パーマーだそうです。

 J.D. Miller発のExcello関連では、Slim Harpo、Lightnin' Slim、Lazy Lester、Lonesome Sundownら、スワンプ・ブルース・マンのバックを務めたようです。
 すごいメンツですね。

 そして、63年にHuey Meauxと契約します。
 ただ当時、Meauxがベースとなるスタジオを持っていなかったため、Miller時代以上に、様々なスタジオで録音に参加したようで、相当の数をこなし、誰が歌うのか知らずにリズム・トラックを録ることは普通にあったようです。

 Huey P. Meauxが、Jacksonにシュガーヒル・スタジオを持ったのは73年のことでした。
 最初は、ヒューストンではなく、ミシシッピのジャクソンにあったんですね。 

 本CDの収録曲では、"The Gypsy"が64年ナッシュビル録音、"Jack and Jill"、"Love Rules The Heart"がジャクソン録音らしいです。
 "The Gypsy"はSir Douglas Quintetもカバーしていました。

 予想に反して、60年代録音がかなりあって少し驚きました。

 その他の収録曲では、Delbert McClintonを2曲もやっているのが眼を惹きます。
 "If You Really Want Me to, I'll Go"は、やはりSir Douglas Quintetがやっています。

 しかし、今回私が一番注目したのは、"Tennessee Waltz"です。
 これは、ライナーによれば67年録音(Tear Drop)らしいのですが、驚くべきことにSam Cookeのバージョン(正確にはOtis Redding盤)を元にしたものになっているのです。
 このサザン・ソウル・スタイルの仕上げはほんとに驚きます。

 テネシー・ワルツといえば、Patti Pageのポピュラー盤が最も有名ですが、オリジナルはヒルビリー(又はウエスタン・スイング)のPee Wee King盤です。
 この州歌にもなった大有名曲は、当初はインストだったところ、歌詞がつけられて広く知られるようになっていきます。

 実は、ヒルビリーのCowboy Copas盤が47年に出され、それが最初のようですが、翌48年に作者のPee Wee King盤、そして50年にPatti Page盤が出て大ヒットします。
 一般的に原曲はPee Wee King、ヒット盤はPatti Pageとして知られています。
 そして、日本では江利チエミ盤ですね。

 パティ・ペイジ盤は、何といってもボーカルの多重録音が印象的でした。
 ビートルズ(とりわけポール)のダブル・トラックを連想しますよね。

 この曲は、あまりにも有名ですが、あえて内容を簡単に言いますと、恋人とダンスを踊っていると、古い友人に出会ったので紹介したところ、二人が恋に落ちてしまい、大切な恋人をとられてしまった。
 あの日流れていたテネシー・ワルツが忘れられない、くらいの歌です。

 この曲の歌詞は、ビル・モンローのケンタッキー・ワルツの影響下に書かれたと言われていて、ケンタッキー・ワルツが聴ける方は、試しに聴き比べてみると面白いと思います。(メロディは全く違います。)
 ケッタッキーでソフトに表現されている部分が、テネシーでは具体的な歌詞になったという感じです。 

 さて、テネシー・ワルツの歌詞は、歌手によって多少の違いがあります。
 基本的には、男性が歌うか女性が歌うかで違います。
 これはHerをHimに変えるという、よくあるパターンで、性別に特化した言葉がない英語では、ごく普通にあることです。

 それよりも、気になるのは出だしで、江利チエミ盤では、一般に知られている"I was dancin'"ではなく、"I was waltzin'"と歌っています。
 これは、カントリーのヒット盤、Paty Cline盤がそうで、江利チエミ盤(日本語まじり盤)を書いた作詞家がパッツィ・クラインが好きだったのかも、なんて思ったりします。
 (ただ、Pee Wee Kingも両方のパターンがあるようです。)  

 さて、サム・クックがテネシー・ワルツを発表したのは、アルバム"Ain't That Good News"で、64年ころだと思います。
 エイトビートのアレンジで、初めて聴いたときは、新鮮というよりフェイクせずにしっとりとバラードで歌えばいいのに、と思いました。
 その後、同じアレンジで、コパのライヴ盤でもやっていて、私はスタジオ盤よりも好きです。

 まず歌の視点ですが、サム盤では「introduced him 〜 (恋人を)彼に紹介した」としているので、男性の立場で歌っています。
 これは、Pee Wee King盤と同じですが、パティ・ペイジもパッツィ・クラインも当然女性視点です。

 また、原曲の「Only You Know 〜 あなたなら分かる」の部分は、パティ・ペイジ盤では「Now I Know 〜 今の私になら分かる」となっていて、大抵その歌詞が使われていると思いますが、サム盤は原曲どおり"Only You Know"です。
 
 でも、今回はそんな程度の話ではありません。

 歌詞の内容は、先述のとおりですが、さっと聴くと「悲しく辛い想い出」くらいのイメージです。
 ところが、サム盤には、原曲にはない歌詞があるのです。
 以下のとおりです。

That dirty dog stole my baby away from me Oh yeah
But I remember that night
And that beautiful Tennessee Waltz
Only you know Just how much, how much I lost Oh yeah
You know that I lost my, lost my baby
That night they kept on playin'
That beautiful
That wonderful
That marvelous
That glorious
That beautiful Tennessee Waltz

 実は、この歌詞を初めて意識したのは、柳ジョージ&レイニーウッド盤(80年:Woman and I...Old Fashioned Love Songs収録)でした。

 初めて聴いたときは、弾むような最高のアレンジに、心底驚いたことを覚えています。
 これが、サム・クックをお手本にしたものだと気づいたのはかなり経ってからでした。
 ("Good News"も"At Copa"もあまり聴いていませんでした。)
 昨年の訃報で一番ショックを受けたのは彼の訃報でした。

 歌詞に戻りましょう。
 まず、印象的なのは、締めの歌詞、"beautiful Tennessee Waltz"にいくまでにタメにタメることです。

 ザット・ビューティフル
 ザット・ワンダフル
 ザット・マーベラス
 ザット・グローリアス

 ときて、ようやく
 ザット・ビューティフル・テネシーワルツ

 と決めの歌詞へ到達するのでした。
 この部分は、何度聴いてもわくわくさせられます。

 さて、最初の印象はそうなんですが、実は何度も聴くうち、耳について離れない歌詞は他にもあることに気付きます。

 "dirty dog stole my baby away from me" です。
 「卑劣な犬が私から彼を盗んで逃げた」

 この歌詞からは、なんとも女性の怨念を感じますね。
 マイ・ベイビーなので、性別は特定できませんが、この言い回しの主は女性じゃないでしょうか?
 日本的な言い回しなら「この泥棒猫 !」なんて言葉を連想します。

 サムは男性視点で歌っているはずなので、私の感じ方が偏っているのでしょうか?
 
 しかし、何よりも気になるのは、この歌詞の出所です。
 アレンジはともかく、この歌詞は、サムのオリジナルなんでしょうか?
 気になります。
 もし、サムのオリジナルではなく、誰かのお手本があるのなら知りたいです。

 分かる範囲の時系列では、こんな感じでしょうか。

47年 Cowboy Copas
48年 Pee Wee king
50年 Patti Page
59年 Bobby Comstock (rock vir.のはしり。ただし歌詞は従来のもの。)

……この間にミッシング・リンクがあるのか? それともサムの独創?

64年 Sam Cooke (歌詞を追加。以下はSam盤の追加歌詞を準用。)
66年 Otis Redding (Sam盤をもとにテンポを落としている。)
67年 Warren Storm (Otis盤を意識している。)
76年? 柳ジョージ (アルバトロス"Take One"の客演。サム盤を意識したアレンジ)
80年 柳ジョージ&レイニーウッド (Woman and I...Old Fashioned Love Songs収録) 

 (補足) 
 柳ジョージは、レイニーウッドのデビュー前、アルバトロスというバンドにゲスト参加した音源が貴重です。
 ここでは、"Change Is Gonna Come"、"You're No Good"、"Tennessee Waltz"の3曲をやっていますが、"Tennessee Waltz"は、既にサムをお手本にやっていて、80年のレイニーウッド盤の原形です。





Tennessee Waltz by 柳ジョージ&レイニーウッド




Tennessee Waltz by Sam Cooke at the Copa









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 Sunny Ozunaが好きです。
 Sunny Ozunaは、Doug SahmがSir Douglas Quintetを結成する以前からリスペクトしていたチカーノ・シンガーです。

 私が、Sunny Ozunaを聴いたきっかけは、もちろんDoug Sahmです。
 大好きなDoug Sahmがアイドルにしていたアーティストは、全て影響を受けて好きになりました。

 Bobby Blandしかり、Junior Parkerしかり、T-Bone Walkerしかりです。
 Bob Willsが好きになったのも、直接的にはAsleep At The WheelやCommander Coddy & his Lost Planet Of Airmaenからですが、最初のきっかけはやはりDoug Sahmでした。

 Doug Sahmが、Sunny & Sunglowsの最初のヒット、"Just A Moment (Of Your Time)"のカバーをリリース(Harlem盤)したのは61年のことで、その時Doug Sahmは20歳でした。
 当時は、英国ビートの襲来はおろか、まだBeatlesさえデビューする前で、嵐の前の時代ですね。

 Sunny & Sunglowsのオリジナル(Kool盤)は、2年前の59年にリリースされています。
 なんとそれは、Sunny Ozunaが16歳の時のことで、実はSunnyはDougよりも2歳年下なのでした。

 時は流れ、Doug Sahmはミレニアムを迎えることなく早世しましたが、彼のヒーローは、いくどかの困難を克服して現在も現役です。

 今回は、Sunny Ozunaが昨年リリースした最新作です。
 夏から秋ごろ(多分)に出されたのだと思いますが、ショップとのやりとりがうまくいかず、私は今年1月になってやっと入手出来ました。

 久しぶりに全編英語で歌っているアルバムです。 

 
Brown Brother Of Soul
Sunny Ozuna

1. Back In Love Again
2. What's Your Name (Claude Johnson)
3. You've Lost That Loving Feeling (Phil Spector, Cynthia Weil, Larry Mann)
4. Just A Little Bit Mo' (Sunny Ozuna)
5. I'm Not Ready To Say Goodbye (Sunny Ozuna)
6. Pledging My Love (Don Robey, Ferdinand Washington)
7. A New Life (Sunny Ozuna)
8. Baby, Baby, Baby (Sunny Ozuna)
9. I'm Sorry (Ellas McDaniel, Harvey Fuqua, Alan Freed)
10. Them Changes (Buddy Miles)
11. Baby I Love You (Sunny Ozuna)
12. Satisfaction Guaranteed

 Sunny Ozunaは、43年サンアントニオで生まれ、ローティーンの時に既にプロのバンド(Sunglows)に参加して音楽活動を開始しています。 

 Sunny OzunaがSunny & Sunglowsを脱退し、Sunny & Sunlinersへと移行した時期は、いまいちよく分かりません。
 実際の活動はともかく、レコードのリリース時期でいいますと50年代でSunny & Sunglowsは終了します。
 Sunny脱退後のSunglowsは、単にSunglows(一時的にJoe Brabo & Sunglows)、またはLos Fabulous Sunglowsなどと名乗り、別の道を歩みます。

 Sunny & Sunlinersは、結成時期こそよく分かりませんが、63年頃からHeuy P. MeauxのTear Drop Recordsで世に知られるようになります。
 Sunny & Sunlinersの代表曲、"Talk To Me"が出たのがこの時期で、63年です。
 "Talk To Me"は、Little Willie Johnの"Talk To Me、Talk To Me"のカバーですが、Sunny & Sunliners盤の方がナショナル・ヒットになりました。

 ほとんど同内容ながら、Sunny & Sunglows、Sunny & Sunlinersと別名義で出ているLP、CDがありますが、"Talk To Me"、"Golly Gee"、"Put Me In Jail"、"Carino Nuevo"、"Rags To Riches"などの代表曲は、いずれもSunliners時代の作品です。

 さて、本盤は、11年にKeyloc Recordsからリリースされました。
 バンドの編成は、若干シンセが気になりますが、サックス(バリトン、テナー各1)、トランペット×2、トロンボーン×1の5管のホーン陣を擁するオルケスタで、オールド・スタイルのチカーノR&Bを聴かせてくれています。
 ラテン・ファンクもいいですが、やはりこのタイプが私のストライクです。

 また、曲によっては、Ruben Ramos、Johnny Hernandezの二人が、ゲスト・ボーカルで参加していて盛り上げています。


左からJohnny、Sunny、Ruben


 Johnny Hernandezは、Little Joeの実弟で、音楽プロデューサーであるとともに、自身もシンガーとして、Little Joe のバンドでリード・ボーカルをとったり、ソロでは近年、ブルース、R&Bのカバー集、"This Time"という注目作を出したりしています。

 Don & Juanの"What's Your Name"、Righteous Brothersの"You've Lost That Loving Feeling"の両曲で、Sunnyと絡むもう一人のボーカルが、それぞれどちらかなのでしょう。
(私には判別できません。)

 "What's Your Name"という曲は、私はDoug Sahmの名作ソロ、"Juke Box Music"で知りました。
 ドゥワップに近いソウル・デュオとしては、最高の1曲ですね。
 私は、原曲はRhinoのDoo Wop Boxで聴きました。

 Sunny Ozunaの"Pledging My Love"とか、いかにもという選曲(悪いはずがない)もありますが、ボ・ディドリーのR&Bバラード、"I'm Sorry"なんていう興味深いチョイスもあります。
 どうですか、聴きたいでしょう?

 また、Sunnyの自作とクレジットされている"Baby Baby Baby"が、まんまFreddy Fenderで有名なBuck Rogersの"Crazy Baby"だったりして笑えます。

 ムーディーでドリーミーなバラードでは、"I'm Not Ready To Say Goodbye"が酔わせてくれます。

 さらに、AOR風のおしゃれ曲も紛れていたりして、いろいろありますが、得意のノーザン・ダンサー系の曲がかっこよく決まっていて、やはり良いです。

 その他、"Them Changes"なんてのもやっています。

 次作は、スペイン語のテハーノ・オルケスタの可能性が高いですが、今作のようなアルバムをぜひとも連投してほしいものです。




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土曜の夜は あげあげカーニバル

 今回は、64年(?)リリースのアナログLP盤をご紹介します。
 こちらは、昨年入手したもので、サウス・ルイジアナのスワンプ・ポップ・レジェンド、Rod BernardとWarren Stormが組んだバンドの唯一のアルバムです。(多分…。)

 Rod Bernardは、50年代に"This Should Go On Forever"、60年代には"Colinda"などのヒットを持つスワンプ・ポップ・シンガーです。
 そして、Warren Stormは、スタジオのドラマーであるとともに、50年代に"Prisoner's Song"のヒットを持つシンガーでした。

 本盤は、Carol J. Rachouという人の制作で、La Louisianne Recordsから出されたものです。


 
The Shondells At The Saturday Hop
The Shondells

Side One
1. Mountain Of Love (vo. Rod Bernard)
2. Tutti-Fruti (vo. Warren Storm)
3. Hi Heel Sneakers (vo. Skip Stewart)
4. Memphis (vo. Rod Bernard)
5. Teen Age Letter (vo. Warren Storm)
6. Money (vo. Skip Stewart)
Side Two
1. Mule Train (vo. Rod Bernard)
2. Lucille (vo. Warren Storm)
3. Twist And Shout (vo. Skip Stewart)
4. Promised Land (vo. Rod Bernard)
5. Slow Down (vo. Warren Storm)
6. If You Want To Be Happy (vo. Skip Stewart)

 私はよく知らなかったのですが、Wikiを見ると、Carol Rachouなる人は、JinのFloyd Soileau、GoldbandのEddie Shuler、Crazy CajunのHuey Meaux、そしてJ. D. Millerらと並んで併記されるような、スワンプ・ポップの代表的な制作者の一人のようです。

 彼のレーベル、La Louisianne(語尾に注目)ですが、私の知る範囲では、"I Got Roaded"のLil' Bob and the Lollipopsが在籍していました。

 "I Got Roaded"は、酔っ払いを歌った人気曲で、Los LobosやRobert Crayが初期のアルバムでカバーしていましたね。
 Lil' Bob and the Lollipopsは、黒人ボーカル&インスト・グループで、"I Got Roaded"はリーダーのBob Camilleの自作でした。

 アナログ盤で、ほかにLa Louisianne盤を持っていないかと思い、King KarlとGuitar Gableあたりを確認したかったのですが所在不明でした。
 (J. D. Millerのアウトテイク集を精力的に出していたFlyright盤だった気もしますが…。)

 いろいろと棚を探っていたところ、灯台もと暗し、92年リリースの英AceのコンピCD、"Lafayette Saturday Night"の曲目に眼が止まりました。
 どうやら、このCDは、La Louisianne関連の音源をコンパイルしたもののようです。

 私は、今回のLP盤でShondellsを初めて聴いたと思いこんでいたのですが、なんと"Lafayette Saturday Night"に、2曲が収録されていました。
 A4の"Memphis"とB5の"Slow Down"です。
 うーん、全く記憶に残っていませんでした。 
 当該CDをお持ちの方は、よければお聴きください。

 さて、The Shondellsですが、私は、Rod BernardとWarren Stormが組んだバンドだと単純に考えていたのですが、どうもテレビ番組ないしはラジオ番組用の(ためだけの)ハウス・バンドのように思えてきました。

 本盤のジャケにも、KLFY-TVというロゴが描かれたTVカメラが写りこんでいます。
 もうひとり、Skip Stewartという人がメインで参加していますが、全く知らない人です。
 そして、各曲名のあとに、カッコ書きで注記したのが、その曲のリード・ボーカルになります。

 アルバム・タイトルの"At The Staurday Hop"が、Rod Bernardがホストを務めた番組名らしいのですが、おそらくは、当時いくつかあったティーンネイジャーがロックンロールに合わせて踊る番組だと思われ、The Shondellsは、その専属バンドだったのではないかと思います。

 また、私の思うところ、番組の演奏シーンではリップ・シンクでやっていて、本盤の中身は、そのかぶせ用に録られた音源ではないかと推察します。

 さて、番組がオンエアされた(と思われる)64年は、ブリティッシュ・インヴェイジョンの来襲の年であり、やっているレパートリーこそ50sという感じですが、その演奏は英国ビート・バンド風のものになっています。
 サウス・ルイジアナらしさは希薄で、ホーン・リフもなければ、三連のピアノもありません。

 完全なギター・バンド・スタイルですね。
 ただ、英国ビート風とはいいましたが、メロディックなマージー系では全くなく、またR&B系をやっているにも関わらず、ロンドン系のような青くさい黒さも感じられない、そんな印象を受けました。
 このあたりが南部なんでしょうか。

 収録曲で、個性が出ていると私が思ったのは、両面のアタマの曲です。
 A1の"Mountain Of Love"とB1の"Mule Train"は、いずれもRod Bernardのボーカル曲ですが、どこかケイジャン・ルーツを匂わせる一味違うなと感じる曲です。

 カバーでは、Warren StormのLittle Richardものが印象に残りましたが、やはりピアノレスが寂しいです。

 そんな中、選曲のセンスで惹きつけられたのが、Skip Stewartが歌う、Jimmy Soulの"If You Want To Be Happy"です。
 原曲は、ポップで能天気なアーリー・ソウルで、どちらかといえば関心が薄い曲でしたが、こうしてギター・バンド・アレンジで聴くとなかなか新鮮です。

 …とはいっても、サプライズ効果で点数が甘くなっていますので、もし本盤を入手されたなら、ハードルを上げずに虚心で聴いてください。

 多分、番組は短期で終了したのではないかと思います。

 本盤は、スワンプ・ポップ・ファン向けのコレクターズ・アイテムでしょう。




If You Wanna Be Happy by Jimmy Soul





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ジス・タイム 〜 ダグ・ソング拾遺2

 Mr.Pitifulさんのブログで、英Aceが"Story Of American Studios"なるコンピをリリースすることを知りました。

 アメリカン・スタジオって、すぐに音のイメージがわかなかったんですが、曲目リストを見て、「ああ、なるほど」と思い出すとともに、同じメンフィスでも、スタックスやハイと比べて「あまりぱっとしないなあ」、「無条件で好きなのは一部の曲だけかな」と思ってしまいました。
 (好きなアーティストは沢山入っているのにね。)

 選曲もどうなんでしょう。
 一部のレア曲は興味しんしんだけど、メジャーなアーティストの選曲のいくつかが「?」です。

 ところで、くだんのCDが出ることで、Chips Momanが、英Aceの人気(?)コンピ、プロデューサー、ソングライター・シリーズに名前を連ねることはなくなったのでしょうか?
 彼の制作の代表作の多くは、かなり入ることになると思うので…。

 私にとって、ソングライターとしてのChips Momanは、"Do Right Woman - Do Right Man"よりも、"The Dark End Of The Street"よりも、まずはBox Topsの"The Letter"、そして、Waylon Jenningsの"Luckenbach, Texas (Back To Basics Of Love)"です。
 両曲とも大好きです。
 対して、先のサザン・ソウル2曲は、同じように好きでも、共作者のDan Pennのイメージが強すぎます。

 という前ふりから強引に展開させますが、今回は、そんなChips Moman作の"This Time"で、ワン・ヒット・ワンダー・シンガーとなった、Troy Shondellのベスト盤を聴きます。

 

This Time The Best Of Troy Shondell
Troy Shondell

1. This Time (Chips Moman)'61 #6 prod by Chips Moman
2. I Got a Woman (Ray Charles)'63 prod by Snuff Garrett
3. Gone (Rogers)'62
4. Na-Ne-No (Dino)'62 prod by Phil Specter
5. The Glider (Straigis) prod by Phil Specter
6. Girl After Girl (Shelton)'61
7. Just Because (Lloyd Price)'62 prod by Snuff Garrett
8. Tears From an Angel (Sheely, Deshannon)'62 #77 prod by Snuff Garrett
9. Island In the Sky (Shelton)'62 #92 prod by Phil Specter
10. Some People Never Learn (Shelton)'62
11. I Don't Know (Shelton)
12. No Fool Like an Old Fool (Shelton)'63
13. Thinkin' (Shelton)
14. Little Miss Tease (Burgess, Wallace)'64 Troy Shondell & His Snowmen
15. Trouble (Burgess)'64 Troy Shondell & His Snowmen

 私は、Troy Shondellという人をほとんど知りません。
 いわゆる一発屋だと思いますが、一時期は、米国英国ともにとても人気があった人のようです。

 私が知るきっかけとなったのは、Rod BernardやWarren Stormが参加したサウス・ルイジアナのバンド、The Shondellsを調べていたときのことで、Tommy James & The Shondellsとともに、検索に引っかかったのが、このTroy Shondellさんでした。

 最初は、「Troy ShondellとThe Shondellsには関係があるのでは」と色めきたちましたが、どうやら無関係らしいと知り冷めました。

 本CDを手に取った最初の印象は、どうもごく普通のティーン・ポップ・アイドルだな、という感想でした。
 ただ、レパートリーを見ると、なかなか趣味のいい曲をやっています。

 リバティに所属していた関係で、フィル・スペクターやスナッフ・ギャレットのプロデュースを受けているのが興味深いです。
 とはいえ、ウォール・オブ・サウンドとかは、あまり過度の期待はしないほうがいいです。
 また、スナッフ・ギャレットからは、エディ・コクランなんかを連想します。
 ギャレットは、バディ・ホリーともエディ・コクランとも関係があった人で、エディ・コクランには、クリケッツをバックにした録音があります。 

 Troy Shondellは、全体的には、普通にティーン・ポップとして耳ざわりよく聴きとおせます。

 

 さて、そろそろ、今回の目的の曲、"This Time"に注目しましょう。

 私とこの曲との出会いは、Sir Douglas Quintetの83年のアルバム、"Midnight Sun"でした。
 最初は、この曲がChips Moman作であることなど全く知らず、予断なく好きになりました。
 やはり、Doug Sahmの歌声は何度聴いてもファンには堪らない魅力にあふれていますね。

 単純に好きだった曲で、珍しくオリジナルがどうとか気にしていませんでしたが、あるとき、鼓動が高まる出来事に遭遇します。
 英Kentのレーベル・コンピ、"Dial Records Southern Soul Story"で、"This Time"を歌うClarence "Frogman" Henry盤を聴いてしまったのです。

 この時の高まりは半端じゃなかったです。
 一人で、"This Time"のオリジナルはカエル男だったんだあ、などと盛り上がったものでした。
 もちろん、すぐに誤りであることに気が付きました。
 初めて調べて見る気になったのです。

 "This Time"のオリジネイターは、今まで名前の出ていない人だと思いますが、61年のTroy Shondell盤がヒットし、この曲を有名にしたのは間違いありません。
 Troy Shondellの曲といっていいと思います。

 そして、Doug Sahmが私をこの曲に導いてくれたのでした。
 Doug Sahmによって知った名曲、聴き過ごしてたけれど魅力に気づかされた曲はたくさんあります。

 これらの曲もまた、私にとって、ダグ・ソング拾遺として数えたい1曲なのでした。



PS
作者名にSheltonとあるのは、Gary Sheltonで、Troy Shondellの本名です。



This Time by Troy Shondell




This Time by Sir Douglas Quintet




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ブルー・アイド・ハンサム・マン

 これはかっこいい !!
 事前に期待していなかっただけに、嬉しさはひとしおです。
 今回は、スワンプ・ポップ・レジェンドの一人、T. K. Hulinが07年にリリースしたアルバムをご紹介します。

 本CDは、Gulf Coast Soul Recordsなる会社から出されていますが、No.が2001ときれいな番号であり、あるいはこのCDを出すために作られたレーベルかも、などと想像してしまいます。


Larger Than Life
T. K. Hulin

1. Get Up, Get Down (K. Gamble, L. Huff)
2. Hold Me, Thrill Me, Kiss Me (Harry Noble)
3. It's Not Unusual (G. Mills, D. L. Reed)
4. I'll Still Be Your Friend (Eddy Raven)
5. Hard To Be (Dyle Bramhall, Stevie Ray Vaughan)
6. It Turns Me Inside Out (Jan L. Crutchfield)
7. Having A Party (Sam Cooke)
8. Don't Fight It (Steve Cropper)
9. Riding With The King (John Hiatt)
10. I'm Gonna Find Another You (John Mayer)
11. Hallejulah, I Love Her So (Ray Charles)
12. You Raise Me Up (B. J. Thomas, R. U. Lucland)
13. Unconditional (Bryant, Hengber, Rutherford)

 T. K. Hulinは、本名をAlton James Hulin(ヒューラ? 英語風ならヒューリン)といい、T.K.というのはニックネームで、彼のおじさんが付けたらしいです。

 残念なことに、そもそもの意味は明らかにされていません。
 でも、彼の友人たちは、何か理由があってのことか、あるいはT.K.という文字に後付けしたのか不明ですが、"The King"という意味で使っていたらしいです。
 The King Hulinというわけです。 

 ルイジアナ州出身で、おそらくケイジャンだと思いますが、情報があまりなく、どちらかと言えば、シンガーとしてより、ソングライターとして認知されている人なのかも知れません。

 代表作は、63年にリリースした"I'm Not a Fool Anymore"で、Doug Sahmを筆頭に、多くのシンガーにカバーされているスワンプ・ポップの名作のひとつです。
 翌64年には、"As You Pass Me By Graduation Night"を発表し、この2曲が代名詞的な存在になりました。

 さて、T. K. Hulinですが、彼の音源は現在あまり流通していません。
 オリジナルLP(?)では、78年にHuey P. Meauxが制作したCrazy Cajun盤、"As You Pass Me By Graduation Night"があり、編集盤ではStarflite盤(これもMeauxのレーベル)の"Hit Memories By T. K. Hulin Volume One"というものがあります。
 (…Volume Twoが出たかどうか不明です。)

 私は後者は未入手ですが、収録曲は、サイト掲載の裏ジャケ写真から読み取ったところ、70年代以降の録音だろうと思います。
 
 初期のシングルのいくつかは、当初LK(自主制作盤?)から出され、まもなくスマッシュから全国配給されたと思われます。

 こういった60年代のシングルは、LP化されているのでしょうか?
 単独はむりでも、マーキュリー系のレーベル・コンピに収録されている可能性はありますね。

 CDでは、私の知る限り、HulinのオリジナルCDは、07年リリースの本盤だけです。
 編集盤では、99年に英Edselから出された、"I'm Not a Fool Anymore 〜 Crazy Cajun Recordings"があり、現在最も入手しやすいものだと思います。 
 中身は、78年のLP、"As You Pass Me By Graduation Night"の収録曲全てに加え、さらに"Hit Memories By T. K. Hulin Volume One"の一部が含まれています。(…と思います。)

 そろそろ内容に触れていきましょう。
 本盤の参加ミュージシャンは、以下のとおりです。

T.K. Hulin - vocals
Charles Ventre - keyboards, vocals
Tony Ardoin - electric/acoustic guitar
Mike Burch/Larry 'B-Lou' Hulin - drums
Larry Badon - bass
The Bayou Soul Horns ;
Jason Parfait - tenor sax
James Spells - trumpet
Alex Melton - baritone sax
Guests ;
Richard Comeaux - pedal steel
Beau Thomas - violin
Tony Daigle - acoustic guitar, triangle, percussion
Roddie Romero - slide guitar
George Toups - bass

 そのサウンドは、78年のCrazy Cajun盤のイメージ(ゆるいカントリー風の仕上げ)とはまるで違い、タイトで躍動感あふれるバンド演奏がかっこいいです。

 例えて言うなら、Delbert McClintonに近い感じをイメージしていただきたいです。
 スワンプ・ポップというより、ブルージーなロック、またはファンキーなソウル・レビュー風の曲が次から次へと出てきます。
 ベタに言うなら、ブルー・アイド・ソウル・アルバムです。



 1曲目の"Get Up, Get Down"からして、スピード感満点のソウル・ナンバーで、ギャンブル、ハフ作となってますが、私は原曲を知りません。
 フィリーっぽい大甘なストリングスを排除したアレンジで、甘茶系の方には不満かもしれませんが、私は好きです。
 このスリリングなアタマの1曲で、本盤が傑作だろうという予感がしてきて、わくわくしました。

 軽快かつジェントルな" Hold Me, Thrill Me, Kiss Me"で、Hulinの素晴らしい咽喉に痺れます。

 そして、続くのは、Tom Jonesの"It's Not Unusual"です。
 この曲は、何かのTVCFに使われていたので耳になじんでいますね。
 オリジナルの強烈な印象が強いですが、Hulin盤も負けていません。
 アベレージ以上の出来だと思います。
 ただ、この選曲は少しサプライズでした。

 次の"I'll Still Be Your Friend"が、心に染み入るような素晴らしいバラードで、原曲は何でしょう?
 美しいピアノのバックに流れる、流麗なラップ・スチールの調べが隠し味になっています。

 そして、驚きの1曲が登場します。
 Vaughan Brothersが唯一のアルバム、"Family Style"でやっていた"Hard To Be"です。
 これはもう、曲自体が問答無用の名曲のうえ、ここでのカバーも素晴らしいです。
 基本的に、オリジナルのアレンジを生かした仕上げになっていて、かっこいいホーン陣を従えた2本のギターが最高にスイング&ドライヴしていて、言うことなしです。
 これは、ドイル・ブラムホール(息子の方?)とレイ・ヴォーンの共作だったんですね。

 "It Turns Me Inside Out"は、どこかで聴いたようなメロを持つ曲です。
 サッドかつムーディな曲で、サビこそわずかに違いますが、これはElvisで有名な"In The Ghetto"を連想せずにはいられない曲です。
 曲としては、私は"In The Ghetto"よりも好きです。
 ちなみに、"In The Ghetto"は、Bobby Blandもやってましたね。

 "Having A Party"は、説明不要の有名曲ですね。
 彼の唱法からは、特段、サム・クック・フレイバーは感じませんが、次のビケットの"Don't Fight It"と同様、オリジナルを意識しつつも、無理につくろうとはせず、自分らしく歌っているのがとても好感が持てました。
 この力強いソウル名曲の連発は、バラード曲の後を受けて、素晴らしく効果的な配置になったと感じます。

 そして、またまた予想外の選曲が来ます。
 John Hiatt作の"Riding With The King"です。
 Hiattの曲としては、それほどの良曲でもないですが、クラプトンが取り上げたため有名になりましたね。
 まあ、あれはB. B. Kingとの共演盤という意味からチョイスされたんでしょう。
 ここでもバンドの一体感が素晴らしいです。

 Ray Charlesの"Hallejulah, I Love Her So"は、手垢のつくほどの有名曲ですが、Sam Cookeから、Wilson Pickettときて、この曲がくると、改めてT. K. Hulinの音楽人生の原風景みたいなものが感じられます。

 Hulinは、ケイジャンやカントリーに負うところも多いはずですが、本盤は、とりわけブラック・ミュージックへの愛情を強く打ち出した1枚になりました。
 "Hallejulah, I Love Her So"は、イントロを聴いた瞬間から、悪くなりようがない、そう感じさせる力強い仕上がりになっています。

 そして、美しいピアノの伴奏が素晴らしい、ドラマチックなバラード、"You Raise Me Up"が聴き手を厳かにクロージングへと導いていきます。

 ひいき目もありますが、この際、傑作アルバムだと言い切ってしまいましょう。




Hard To Be by T. K. Hulin




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