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ヒルビリーでワルツ

 昔、ひとりのロック少年がいました。
 彼は、ビートルズが大好きで、最初はビートルズから影響を受けたロックを聴いていましたが、ほどなくビートルズに代わるものなどないという、しごく当然のことに気付く事になります。

 そして、彼はベクトルの変更を行います。
 ビートルズの影響を受けた音楽を追うのではなく、ビートルズに影響を与えた音楽を探求することにしたのでした。

 初めは、50年代のロックンロールやリズム・アンド・ブルースでした。
 ロカビリーやガール・グループも追っかけました。
 容易に手に入らない音楽を追うことは、楽しくもあり、もどかしくもありました。

 そんな彼は、さらに一歩先へと進む決意をします。
 
 そのきっかけとして購入した2枚のアルバムがありました。
 そのうちの1枚は、B.B.Kingの日本盤LPです。

 そして、もう1枚が、Bill Monroeの日本盤LPだったのです。


Bill Monroe Singles Collection Vol.1 1950-1951
Bill Monroe 

Side One
1. The Old Fiddler
2. Travelin' Blues
3. Alabama Waltz
4. My Little Georgia Rose
5. Those Gambler's Blues*
6. Angels Rock Me To Sleep*
7. Swing Low Sweet Chariot*

Side Two
1. Prisoner's Song*
2. Blaekman's Blues
3. My Carolina Sunshine Girl*
4. Ben Dew Berry's Final Run*
5. Bluegrass Ramble
6. Kentucky Waltz*
7. I'll Meet You In Church Sunday Morning


 B.B.Kingは、さらに黒人音楽の深部へと踏み込むために選びました。
 では、Bill Monroeを選んだ理由はなんだったのでしょう。

 もちろん、米国白人音楽の代表として選んだわけですが、なぜハンク・ウイリアムズではなかったのでしょう。
 
 実は、当時の私が持っていたビル・モンローのパブリック・イメージが、最も混じりけのない、白人大衆音楽の核のような存在だったからだと思います。

 このアルバムの最初の印象は、B.B.のそれとさほど変わりがありませんでした。
 やはり、ポップで親しみやすい音楽の世界からやってきたロック少年には、とっつきやすい音楽とはとても言えないものでした。

 そして、実はこのアルバム収録曲のいくつかは、ビル・モンローの録音のなかでも特異なものだったのです。
 今改めてみると、ライナーには、そのことが書かれていますが、当時の私はよく理解していませんでした。
 
 私は、その後、モンローのMCAの各種ベストや、初期のコロンビアのボックスを聴き、また、モンロー・ブラザーズのコンプリート集を聴いたりもしました。

 そして、ようやくこのモンローとのファースト・コンタクトが特別なものであったと、ようやく気付けたのでした。

 このアルバムの収録曲の中には、モンローとしてはあまり例のない、カントリー・スタイルでの吹き込みを含んでいたのでした。 
  
 私がブルーグラスに対して持つパブリック・イメージは、モンローよりもフラット・アンド・スクラッグスにより近いものがあります。

 簡単にいえば、「じゃじゃ馬億万長者」です。
 これは、ある程度の年齢の日本人にとって、共通のイメージかと思います。
 つまりは、スクラッグス・スタイルのバンジョーです。

 私は、コロンビアのモンローの初期音源を聴いて、驚いたことを覚えています。
 ここには、あのバンジョーのサウンドがまだありません。
 途中から、ブルーグラス・ボーイズに、アール・スクラッグスとレスター・フラットが参加しますが、当初は特徴的なバンジョーを聴くことは出来なかったのでした。

 さて、このアルバムです。
 ここには、ブルーグラス・ボーイズではなく、ナッシュビルの名人セッション・メンが伴奏をつけた曲が6曲含まれています。
 それこそ、モンローのカントリー・スタイルの曲でした。

 ここには、若き日のグラディ・マーティンや、オーウェン・ブラッドリーが参加しています。
 
 結論から言いますと、私は、ここに収められているカントリー・セッションが気に入っています。
 ブルーグラス・ファンには異論があるかも知れませんが、私は好きです。

 ソリッドなブルーグラス・スタイルと比べると、ひよったサウンドのようにも感じますが、捨てがたい味があると思います。
 ついでにいえば、私は、モンロー・ブラザーズが好きですし、ルーヴィン・ブラザーズも好きです。

 とりわけ、ゴスペルとジミー・ロジャース・ナンバーが興味深いです。
 モンローのロジャース好きは有名ですが、従来のソリッドなブルーグラス・スタイルが素晴らしいのはもちろんですが、ここでのほんわかしたカントリー・スタイルの曲も味わい深いと思います。

 ブルーグラス・スタイルのTraveling Bluesも、カントリー・スタイルで演奏された、My Carolina Sunshine Girlもどちらも好きです。

 こういうのを聴くと、ジミー・ロジャースはいいなあと、改めて思います。
 (でも、本当はジミー・ロジャースを好きになったのは、マール・ハガードのロジャース集を聴いてからなので、後になってから、遡ってこのアルバムの良さに気付いたのだと思います。)

 とりあえず、ファストでドライヴしまくるブルーグラス・スタイルの曲はかっこいいです。
 そして、オーウェン・ブラッドリーの転がるピアノや、グラディの単弦弾きをぬって聴こえる、モンローのトレモロもまた、これはこれでよい感じなのでした。
 ロンサムなヨーデルにも痺れます。

 私は、とことんまではブルーグラスの熱心なファンになりませんでしたが、このアルバムを聴き返すと、初めて聴いた当時の新鮮な反応が蘇ってきて、嬉しくなるのでした。

 私のモンロー熱は、何かのきっかけで、時々ぶりかえしたりします。
 ハーブ・ペダーセンのCan You Hear Me Callingを聴いたときは、いてもたってもいられなくなって、コロンビアのCDを探しまくり、確かに原曲が収められていることを確認して、幸福な気持ちになりました。

 このアルバムに収められた50年代初期のモンローの音源は、彼の代表曲とは別の意味で、いつまでも特別な想いを持って聴き続けて行くと思います。




Kentucky Waltzです。





 

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