2012年05月01日
エア・フォース・ロック
皆さんは、もうDr. Feelgoodの4枚組Box Set、"All Through The City 1974-1977"は聴かれたでしょうか?
私は入手こそしましたが、聴き終えてしまうのが惜しくて、まだDisc1と2をチェックしただけで、ぐずぐすしています。
何度も聴いた内容ですが、パッケージやディスクが変わるだけで、ついつい嬉しくなる気持ちを抑えられません。
さて、今回のアルバムは、Dr. Feelgoodと少なからず関連があります。
少し前置きが長くなりそうですが、ご容赦ください。
1. Radio (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
2. Take That Job And Stuff It (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
3. Slow Down (Perkins)
4. Whatd I Say (Ray Charles)
5. Didn't I Tell You (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
6. Let The Good Times Roll (L. Lee)
7. Star Dreamin (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
8. Let It Rock (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
94年にLee Brilleauxが亡くなり、最後のオリメンがいなくなったあとのことです。
残ったメンツが、新たなボーカリストを加入させてバンドを継続すると知ったとき、私はもはや別のバンドだなと感じ、興味を失いました。
実はそれ以前から、ギターのSteve Walwynのプレイがあまりしっくりこず、冷め始めていたのでした。
そんな私でしたが、再び関心を持つことになります。
00年の"Chess Masters"のリリースを知り、つい手に取ったのです。
やはり、カバー集好きの私は、触手を伸ばさずにはいられなかったのでした。
そして、食わず嫌いを反省した私は、改めてスルーしてきたアルバムに注目するようになったのでした。
Lee Brilleauxの後を受けた最初のボーカリスト、Pete Gageが参加した唯一のアルバム、96年の"On The Road Again"は、繰り返し聴くうち、初めてSteve Walwynのギターも悪くないかもと思ったのでした。
さて、なかなか話が進みませんが、お許しください、そろそろ核心へ近づいています。
私は、"On The Road Again"でPete Gageに関心を持ちました。
そして、彼のキャリアを調べるうち、その過程で同姓同名のミュージシャンにぶつかったのです。
もう一人のPete Gageは、やはり英国人で、ただしギターリストです。
こちらのPete Gageがメンバーだったのが、今回の主人公、Geno Washingtonが60年代に組んでいたバンド、Gene Washingtpn & The Ram Jam Bandでした。
やっと話がつながりました。
この人は、過去に日本盤が出ていましたが、ソウル・ファンにも、ロック・ファンにも知名度が低い人でしょう。
Geno Washingtonはインディアナ州出身のアフロ・アメリカンで、60年代は、英国に駐留する合衆国空軍に所属するパイロットでした。
軍属を離れた彼は、既にバンドを組み、ボーカリストの交代を考えていたPete Gageの誘いを受け、そのまま英国に留まってバンド活動に参加します。
彼以外のメンバーは、全員白人青年らからなるホーン入りのバンド、それがRam Jam Bandでした。
このとき、リリースされた2枚のアルバムが評判となり、彼は母国よりもヨーロッパで成功したソウル・シンガー(?)となります。
メンフィス・ソウルから影響を受けたバンドは、中でもジャンプ・ナンバーに魅力があり、特にライヴ盤での激しいノリが、R&B好きのモッズに受けたのではないかと思います。
ようやく本題です。
本盤は、70年代に米国へ戻り音楽活動を継続したGenoが、81年にリリースしたソロ・アルバムです。
(ただし、なぜか録音はベルギーのスタジオになっています。)
60年代には、ソウル・レビュー風のサウンドをやっていた彼ですが、ここでは、ロックンロール、もしくはビート・バンド系のサウンドに乗せて歌っています。
それは、本盤を聴いたことがない方も、カバー曲のチョイスを見れば、なんとなく分かっていただけますよね。
ただし、クレジットに誤りがあります。
"Slow Down"は、作者がPerkinsと誤記されていますが、ここでやっているのは、もちろんBeatlesが有名にした、Larry Williamsのあの曲です。
そして、"Let The Good Times Roll"は、Louie Jordanに同名曲があり、B.B.Kingが愛唱歌としているので、そちらが有名ですが、作者名がLeeとなっていますので、Leonard Leeが書いたShirley & Leeの曲だと分かりますよね。
…と言いたいところですが、何とここでも間違っています。
演奏を聴けば、これがEarl Kingの曲で、別名"Come On"として知られている曲だと分かります。
うーん、気が抜けません。
さてここで、本盤とDr. Feelgoodとを結ぶ、もうひとつの繋がりを披露しましょう。
本盤をご存じの方、または今までの文章で分かったという方は、今少しおつきあいください。
本盤の参加メンバーは、以下のとおりです。
Geno Washington : vocals
Gordon Russell : guitars & backing vocals
Jude 'Judge' Baptiste : bass
Mick Lee : percussion & backing vocals
add.
Bart Decorte : guitars
Keith Bonsor : piano & clavinet
Edward Kuczinski : electric piano
気が付かれましたか?
ギターで参加しているのは、この数年後にJohnny Guitarの跡を継ぎ、Dr. Feelgoodの4代目ギターリストとなった、あのGordon Russellその人なのでした。
時系列でいいますと、本盤のリリースが81年で、翌82年にリリースされたのが、Johnny Guitarが参加した唯一のDr. Feelgoodのアルバム、"Fast Women and Slow Horses"でした。
私は、リズム隊の総入れ替えが行われた、80年代半ばのDr. Feelgoodが当初は気に入りませんでした。
まあ、演奏の良し悪しではなく、好き嫌いかも知れません。
例えば私の場合、ベースに関しては、好きなプレイは頭に浮かびますが、嫌いだと思う演奏はすぐに思いつきません。
その点、ドラムは好き嫌い双方の自覚があります。
新メンバーのKevin Morrisのドラムは、80年代アメリカン・ロックによくあった、おかずの少ない、バッシャン、バッシャンとジャストだけれど単調な、うるさいだけのスタイルで、私の好みではないです。
私は、ブリティッシュ・ロックのドラマーでは、Terry Williamsのシャッフルが好きです。
ですが、ギターのGordon Russellは好きでした。
Russellは、同じブルース・ベースのギターリストでも、WilcoやGypieに比べると、ロックンロール寄りのプレイだと思います。
どちらも好きですが、Russellのプレイは、バンドの軌道を少し修整した感じがして、単純に新鮮でした。
本盤でも、既にDr. Feelgoodで聴かせることになるスタイルの片りんがうかがえ、スイングするロックンロール・ビートが快感です。
先にカバー曲について触れましたが、メンバーで共作したオリジナルは、完全にビート・ロックで、スキン・ヘッドのジャケ写からは想像つかない音に仕上がっています。
Pub Rock、Dr. Feelgoodのファンなら、聴いて損のない好アルバムだと思います。
追記
Geno Washingtonとそっくりな名前のR&Bシンガーがいます。
Gino Washingtonという人で、こちらはデトロイトのシンガーで、別人ですが、アマゾンの検索では混在してヒットします。
ちなみに、Ginoさんもまた、日本では無名だと思いますが、なかなかに聴かせます。
私は入手こそしましたが、聴き終えてしまうのが惜しくて、まだDisc1と2をチェックしただけで、ぐずぐすしています。
何度も聴いた内容ですが、パッケージやディスクが変わるだけで、ついつい嬉しくなる気持ちを抑えられません。
さて、今回のアルバムは、Dr. Feelgoodと少なからず関連があります。
少し前置きが長くなりそうですが、ご容赦ください。
Put Out The Cat
Geno Washington
Geno Washington
1. Radio (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
2. Take That Job And Stuff It (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
3. Slow Down (Perkins)
4. Whatd I Say (Ray Charles)
5. Didn't I Tell You (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
6. Let The Good Times Roll (L. Lee)
7. Star Dreamin (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
8. Let It Rock (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
94年にLee Brilleauxが亡くなり、最後のオリメンがいなくなったあとのことです。
残ったメンツが、新たなボーカリストを加入させてバンドを継続すると知ったとき、私はもはや別のバンドだなと感じ、興味を失いました。
実はそれ以前から、ギターのSteve Walwynのプレイがあまりしっくりこず、冷め始めていたのでした。
そんな私でしたが、再び関心を持つことになります。
00年の"Chess Masters"のリリースを知り、つい手に取ったのです。
やはり、カバー集好きの私は、触手を伸ばさずにはいられなかったのでした。
そして、食わず嫌いを反省した私は、改めてスルーしてきたアルバムに注目するようになったのでした。
Lee Brilleauxの後を受けた最初のボーカリスト、Pete Gageが参加した唯一のアルバム、96年の"On The Road Again"は、繰り返し聴くうち、初めてSteve Walwynのギターも悪くないかもと思ったのでした。
さて、なかなか話が進みませんが、お許しください、そろそろ核心へ近づいています。
私は、"On The Road Again"でPete Gageに関心を持ちました。
そして、彼のキャリアを調べるうち、その過程で同姓同名のミュージシャンにぶつかったのです。
もう一人のPete Gageは、やはり英国人で、ただしギターリストです。
こちらのPete Gageがメンバーだったのが、今回の主人公、Geno Washingtonが60年代に組んでいたバンド、Gene Washingtpn & The Ram Jam Bandでした。
やっと話がつながりました。
この人は、過去に日本盤が出ていましたが、ソウル・ファンにも、ロック・ファンにも知名度が低い人でしょう。
Geno Washingtonはインディアナ州出身のアフロ・アメリカンで、60年代は、英国に駐留する合衆国空軍に所属するパイロットでした。
軍属を離れた彼は、既にバンドを組み、ボーカリストの交代を考えていたPete Gageの誘いを受け、そのまま英国に留まってバンド活動に参加します。
彼以外のメンバーは、全員白人青年らからなるホーン入りのバンド、それがRam Jam Bandでした。
このとき、リリースされた2枚のアルバムが評判となり、彼は母国よりもヨーロッパで成功したソウル・シンガー(?)となります。
メンフィス・ソウルから影響を受けたバンドは、中でもジャンプ・ナンバーに魅力があり、特にライヴ盤での激しいノリが、R&B好きのモッズに受けたのではないかと思います。
ようやく本題です。
本盤は、70年代に米国へ戻り音楽活動を継続したGenoが、81年にリリースしたソロ・アルバムです。
(ただし、なぜか録音はベルギーのスタジオになっています。)
60年代には、ソウル・レビュー風のサウンドをやっていた彼ですが、ここでは、ロックンロール、もしくはビート・バンド系のサウンドに乗せて歌っています。
それは、本盤を聴いたことがない方も、カバー曲のチョイスを見れば、なんとなく分かっていただけますよね。
ただし、クレジットに誤りがあります。
"Slow Down"は、作者がPerkinsと誤記されていますが、ここでやっているのは、もちろんBeatlesが有名にした、Larry Williamsのあの曲です。
そして、"Let The Good Times Roll"は、Louie Jordanに同名曲があり、B.B.Kingが愛唱歌としているので、そちらが有名ですが、作者名がLeeとなっていますので、Leonard Leeが書いたShirley & Leeの曲だと分かりますよね。
…と言いたいところですが、何とここでも間違っています。
演奏を聴けば、これがEarl Kingの曲で、別名"Come On"として知られている曲だと分かります。
うーん、気が抜けません。
さてここで、本盤とDr. Feelgoodとを結ぶ、もうひとつの繋がりを披露しましょう。
本盤をご存じの方、または今までの文章で分かったという方は、今少しおつきあいください。
本盤の参加メンバーは、以下のとおりです。
Geno Washington : vocals
Gordon Russell : guitars & backing vocals
Jude 'Judge' Baptiste : bass
Mick Lee : percussion & backing vocals
add.
Bart Decorte : guitars
Keith Bonsor : piano & clavinet
Edward Kuczinski : electric piano
気が付かれましたか?
ギターで参加しているのは、この数年後にJohnny Guitarの跡を継ぎ、Dr. Feelgoodの4代目ギターリストとなった、あのGordon Russellその人なのでした。
時系列でいいますと、本盤のリリースが81年で、翌82年にリリースされたのが、Johnny Guitarが参加した唯一のDr. Feelgoodのアルバム、"Fast Women and Slow Horses"でした。
私は、リズム隊の総入れ替えが行われた、80年代半ばのDr. Feelgoodが当初は気に入りませんでした。
まあ、演奏の良し悪しではなく、好き嫌いかも知れません。
例えば私の場合、ベースに関しては、好きなプレイは頭に浮かびますが、嫌いだと思う演奏はすぐに思いつきません。
その点、ドラムは好き嫌い双方の自覚があります。
新メンバーのKevin Morrisのドラムは、80年代アメリカン・ロックによくあった、おかずの少ない、バッシャン、バッシャンとジャストだけれど単調な、うるさいだけのスタイルで、私の好みではないです。
私は、ブリティッシュ・ロックのドラマーでは、Terry Williamsのシャッフルが好きです。
ですが、ギターのGordon Russellは好きでした。
Russellは、同じブルース・ベースのギターリストでも、WilcoやGypieに比べると、ロックンロール寄りのプレイだと思います。
どちらも好きですが、Russellのプレイは、バンドの軌道を少し修整した感じがして、単純に新鮮でした。
本盤でも、既にDr. Feelgoodで聴かせることになるスタイルの片りんがうかがえ、スイングするロックンロール・ビートが快感です。
先にカバー曲について触れましたが、メンバーで共作したオリジナルは、完全にビート・ロックで、スキン・ヘッドのジャケ写からは想像つかない音に仕上がっています。
Pub Rock、Dr. Feelgoodのファンなら、聴いて損のない好アルバムだと思います。
追記
Geno Washingtonとそっくりな名前のR&Bシンガーがいます。
Gino Washingtonという人で、こちらはデトロイトのシンガーで、別人ですが、アマゾンの検索では混在してヒットします。
ちなみに、Ginoさんもまた、日本では無名だと思いますが、なかなかに聴かせます。
Radio by Geno Washington
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投稿者:エル・テッチ|00:35|パブ・ロック、バー・バンド
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