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ロックン・カントリー

 このジャケットはインパクトありますね。
 70年代のabc-Dot時代のアルバムの中では一番でしょう。
 手に取らずにはいられない、そんな秘めた魔力を感じます。


Rock'N'Country
Freddy Fender

Side 1
1. Vaya con Dios (Inez James, Buddy Pepper, Larry Russell)
2. You'll Lose a Good Thing (Huey P.Meaux, Barbara Lynn Ozen)
3. I Need You So (Mclain)
4. Mathilda (George Khoury, Huey Thierry)
5. My Happiness (Borney Bergantine, Betty Peterson)
6. Just Out of Reach of My Two Open Arms (Virgil F.Stewar)
Side 2
1. The Rains Came (Huey P.Meaux)
2. Take Her a Message (Huerta)
3. Since I Met You Baby (Ivory Joe Hunter) 
4. Big Boss Man (Luther Dixon, Al Smith)
5. I Can't Help It If I'm Still in Love With You (Hank Williams)

 これは、Freddy Fenderにとって、メジャー3枚目のアルバムになります。
 76年にリリースされたもので、Freddy Fenderの絶頂期、キャリアを代表する1枚でしょう。

 事実、後々まで彼の重要なレパートリーになる曲が、収録されています。
 まず、Barbara Lynnの"You'll Lose a Good Thing"(涙の片思い)と、Cookie & his Cupcakesの"Mathilda"です。

 Ivory Joe Hunterの"Since I Met You Baby"もありますね。
 この曲は、60年代にも吹き込んでいますから、Freddyのお気に入りなのでしょう。

 いずれもこの後、繰り返し録音することになる定番曲ですが、やはり、ここに収録されたバージョンが決定打だと言いたいです。
 とにかく、キャッチーな伴奏が素晴らしく、最高のポップ・ソングだと思います。

 先の2作に続き、Huey P.Meauxの制作です。
 バックは、Mickey Moodyおじさんを中心とする、お馴染みのシュガーヒル・スタジオの職人たちです。

 すべてが素晴らしいですが、Side1では、まず冒頭の"Vaya con Dios"の魅力に惹きこまれます。
 原曲は、古いポピュラー・ソングだと思われますが、50年代始めのLes Paul & Mary Fordのデュオ・ヒットが知られています。

 Freddy盤は、スペイン語での歌唱が最高に決まっていて、イントロから女性のバック・コーラスが始まる瞬間、何度聴いても期待で胸が一杯になります。
 日常を離れた夢の世界への誘いです。
 これはもう、70年代アメリカン・ポップスの宝と言ってしまいたいです。

 その後、有名曲が続き、踏み入った夢の中を、更に深く分け行らずにはいられません。
 哀愁のスワンプ・ポップ・バラード、"Mathilda"では、からっと明るい、だけど声に泣きを秘めた、Freddy独特の世界観が素晴らしく、これは多くの後輩シンガーたちのお手本になったはずです。
 ちなみに、作者の一人Huey Thierryは、Cookie & CupcakesのCookieの本名です。

 デビュー前のエルヴィスが、母へのプレゼントに吹き込んだ"My Happiness"を経て、Side1のラストは、"Just Out of Reach of My Two Open Arms"へと続きます。
 ここでは、それまでのオーソドックスな王道ポップス路線から少し舵を切って、軽く冒険を試みています。

 ソロモン・バークもジェントルに歌ったスタンダードですが、ここでは、「ンチャ、ンチャ」とレゲエ・ビートに乗せて、ウォーキング・テンポで歌っています。
 執拗にビートを刻むサイド・ギターに、もう1本のギターとドラムスのコンビが、ねちっこく絡むグルーヴが面白いです。

 さて、Side2は、Heuy P.Meaux作の"The Rains Came"でスタートします。
 歯切れのいいテンポで、明るくはずむようにFreddyが歌います。
 蕩けるようなフレーズで寄り添うスチールが、まるでデュエットの相方のようによく唄っています。

 この曲は、Doug SahmもSir Douglas Quintetでやっていました。
 ほんわかリズムのCralence 'Frogman' Henry盤もあります。

 ポップなFreddy盤もいいですが、ガッツが感じられるQuintet盤もいいです。
 ところで、昔から気になっていることがあるのですが、この曲のオリジネイターは誰でしょう。
 やはり、Big Samboとかいうシングル・オンリーの人でしょうか。

 かつて、Ivory Joe Hunterの日本盤で、Big SamboをおまけでいれていたCDがあったはずですが、買い逃しました。


 続くFreddyの自作、"Take Her a Message"がまたいい曲で、この時期は何をやってもいい感じです。
 
 そして最後は、Jimmy ReedとHank Williamsで締めです。
 "Big Boss Man"では、Jimmy Reed盤よりもテンポを上げて快調に飛ばします。

 Jimmy Reedは、John LeeやMuddy以上に、ルイジアナ・ブルースに影響を与えた存在でした。
 FreddyもJimmy Reedが好きに違いありません。
 モダンなピアノとブルージーなギターに、フィドルが混ざるさまがケイジャンぽいです。

 ラストの"I Can't Help It If I'm Still in Love With You"では、自分とは別の人を選んだ恋人へのつらい気持ちをしっとりと歌い上げます。
 手垢のついた素材ですが、ポップでありながらも、コマーシャルすぎない仕上がりは、この時期ならではのクオリティの高さだと思います。

 前作の流れをくみつつも、新しい試みへのチャレンジにも取り組んだ、素晴らしい1枚だと改めて感じました。



The Rains Cameです。




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