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2024年10月08日

1337番:「難破船」(1)(モーパッサン短篇集より)

「難破船」を学習します.


難破船(1)L' épave (モーパッサン作)


難破船(1)
L' épave


−−−−−−−−−【1】−−−−−−−−−−−−−−

C' était hier, 31 décembre.

Je venais de déjeuner avec mon vieil ami Geor-
ges Garin. Le domestique lui apporta une lettre
couverte de cachets et de timbres étrangers.

Georges me dit:

−−Tu permets ?

−−Certainement.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 12月31日、昨日のことである.
 私は旧友のジョルジュ・ガランと昼食を終えたばかり
であった. 使用人が封印と外国切手のたくさんついた
1通の手紙を友人にもってきたのです.

  ジョルジュが私に言いました:

  「君、失敬していいかい?」

  「もちろんいいさ」



−−−−−−−−−⦅語句⦆−−−−−−−−−−−−−−−−

épave:[エパーヴ](f) 漂流物、漂着物、
   les épaves d'un naufrage / 難破船の漂流物;
   タイトルは定訳に従って難破船としたが、難破は
   naufragé、難破船はnavire naufragé である.
vieil ami:旧友;vieil は「昔からの」の意.
   尚、「年老いた友人」と言いたい場合は
   un ami vieux と形容詞は後方に置く.
domestique:[ドメスティック](名) 召使い、使用人
couverte:(p.passé) < couvrir (他) 覆う、包む
cachet:[カシェ](m) 封印
timbre:(m) 郵便切手
étranger(ère):(形) 外国の
permets:(直現2単) permettre (他) 許す、許可する
   ここでは手紙をこの場で読んでもいいかい?
   といっています.
certainement:(副) @確実に、たしかに、❷もちろん
これはtu permets に対する許可の返答.
   「読んでもいいですよ」
    友人とふたりでいるときは、手紙はあとで読む
    というのが相手を無視しないための最低限の
    マナーですが親しい場合は別なのでこういう
    許可表現になります.  


−−−−−−−−−《ひとこと》−−−−−−−−−−−−−−−−−

「私は」で始めましたが、実はje を「ぼくは」にしよう
かと迷いました.結論は、現段階では、この語り手が男
性である保証がないので、男女共通の「私は」で訳しま
した.
 それと「使用人」domestiqueですが、公式呼称は
employé de maison です. 


−−−−−−−−−−≪学習書≫ −−−−−−−−−−−−−−−−−

1:テキスト:17 - La petite Roque et 9 autres histoires
     に収められている“ L' épave”
2:参考翻訳書:「難破船」(モーパッサン全集11より)


1336番:ピエールとジャン(7)


ピエールとジャン(7)
PIERRE ET JEAN


−−−−−−−−−【7】−−−−−−−−−−−−

  Mᵐᵉ Roland s'était tout à fait réveillée
et regardait d'un air attendri le large
horizon de falaises et de mer.  Elle
mumura:
≪ Vous avez cependant fait une belle
pêche. ≫


−−−−−−−−−⦅訳⦆−−−−−−−−−−−−

ロラン夫人がすっかり目を覚ました.そしてうっと
りとした様子で水平線に浮かぶ断崖と海を眺めていま
した.そして呟きました.
 「そうは言うものの、あなた、大漁じゃありません
か.」
 
 
−−−−−−−−−〘語句〙−−−−−−−−−−−−

s'était réveillée:(直大過/3単)
tout à fait:完全に、まったく;その通りだ.
regardait:(直半過/3単) < regarder (他) 眺める
d'un air ~:〜な様子で
attendri, e:(形) 感動した、ほろりとした、
   優しい、
attendrir:(他) (相手の)心を動かす、感動させる
   ほろりとさせる
le large horizon:遠くの水平線
falaise:[ファレーズ](f) (特に海岸の)絶壁、断崖;
   les falaises de Normandie /
   ノルマンディー海岸の絶壁
mer:(f) 海
mumura:(直単過/3単) < mumurer (自/他) つぶやく 
cependant:(副) しかしながら、にもかかわらず
pêche:(f) ❶魚釣り、❷捕れた魚、漁獲高
avoir fait pêche ~:〜の漁獲高を得る
une belle pêche:大量の魚
belle:(形) < beau の女性形、❶美しい、
  ❷幸せな、快い、❸かなりの



1335番:「湖畔」(52)


湖畔(52)
IMMENSEE(52)


−−−−−−−−−【52】−−−−−−−−−−−−−−

−−Auf einem Platze, über welchem uralte
Buchen mit ihren Kronen zu einem durch-
sichtigen Laubgewölbe zusammenwuchsen,
machte die Gesellschaft halt.


−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−

−−ブナの古木がその樹冠で一体となって透明な
木の葉の丸天井を作っている広場で、一行は休憩
を取った.


−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−

der Platz:[es / Plätze] 場所、広場
uralt:[ウーア アルト](形) きわめて古い、太古の、
    大昔の、非常に年老いた、高齢の
   seit uralten Zeiten / ずっと昔から
die Buche:(-/-n) ブナ (山毛欅)
die Krone:[-/-n] 樹冠、梢
durchsichtig:(形) 透明な、透けて見える
Laubgewölbe:辞書不掲載→ Laub + gewölbe
das Laub:[-(e)s/ 複ナシ]⦅集合⦆木の葉
再度 das Laubgewölbe:[-s/-]
    丸天井のように頭上を覆う木の葉
das Gewölbe:[-s/-] 丸天井、丸屋根
zusammenwuchsen:(自) 一体となる
wachsen:(自) 成長する
wachsen−−wuchs−−gewachsen
die Gesellschaft:一行、パーティー、仲間
halt:(分離前綴り) < halten (自) 止まる、停止する
halt/machen:(自) 停止する、立ち止まる、休憩する



1334番:ロンドリ姉妹(47)


ロンドリ姉妹(47)


−−−−−−−【47】−−−−−−−−−−−−−−−

 C'était une jeune femme, toute jeune et
jolie, une fille du Midi assurément. Elle
avait des yeux superbes, d'admirables che-
veux noirs, ondulés, un peu crêpelés, tel-
lement touffus, vigoureux et longs, qu'ils
semblaient lourds, qu'ils donnaient rien
qu'à les voir la sensation de leur poids
sur la tête.


−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 その人は若い女性だった.全く若くきれいだ
った.思えらくは南仏の娘だった.目が最高だ
った.見事な黒髪だった.ウェーブがかかって
いて、やや縮れ毛、とてもふさふさしていて生
命力に溢れる長い髪で、何だか重そうに見える.
見ていると頭の上が髪で重たくてしようがない
んじゃないかと思えた.
 

−−−−−−−−⦅語句⦆−−−−−−−−−−−−−−−−

C'était une jeune femme:その人は若い女性だった.
人を同定する(人の正体を明かす)ときは
   elle ではなくc'est で導きます.
toute jeune:とても若い
jolie:美しい
une fille du Midi:南仏の娘
assurément:(副) 確かに、間違いなく.
superbe:(形) 極めて美しい、見事な、素晴らしい
admirable:本文 d'admirables のde は不定冠詞、
   複数不定冠詞 des は複数名詞の前に形容詞が
来るときはde に変わる.de はさらにエリジ
   ョンを受けてd' となっている.
   脱線しました.admirable 語義は
   (形) 驚異すべき、すばらしい、
Elle avait d'admirables cheveux noirs:
   彼女は見事な黒髪だった.
ondulé, e:(形) ❶波打った、波状の、
   ❷(髪が)ウェーブのかかった、
   cheveux ondulés / ウェーブのかかった髪
   ❸(道などが)うねった
crêpelé,e:(形) (髪が) 縮れた、縮れ毛の、
   細かくカールした
tellement:(副) とても、非常に;
tellement...que~:非常に…なので〜だ.   
touffu, e:[トゥフュ](形) 密生した、ふさふさした、
   bois touffu / 密生した森
vigoureux, se:[ヴィグルー, ルーズ](形) 力強い、頑健な、
    たくましい、発育のよい
long, e:(形) 長い
semblaient:(直半過/3複) < sembler (自)
sembler:(自)[à qn / 人には] 〜のように見える
lourd, e:(形) 重たい
donnaient:(直半過/3複) < donner (他)
    donner la sensation ~ / 〜の感じがする
sensation:(f) ❶感覚、感じ、❷興奮、センセーション
poids:[プワ](m) ❶重さ、❷体重、❸分銅、❹重み
à les voir:それ(彼女の髪)を見ていると、
donner la sensation de leur poids sur la tête:
   頭の上の髪の重みが感じられる
donner rien que la sensation de leur poids:
   髪の重みしか感じられない
donner rien qu'à les voir la sensation de leur poids:
そいつを見ていると髪の重みしか感じられない
          ↓
髪が重たくてしようがないんじゃないかと思う


1333番:イヴェット(7)


『イヴェット』(7)
Yvette


−−−−−−【7】−−−−−−−−−−−−−−−−

Les deux amis marchaient d'un pas lent,
un cigare à la bouche, en habit, le par-
dessus sur le bras, une fleur à la bouton-
nière et le chapeau un peu sur le côté
comme on le porte quelquefois, par non-
chalance, quand on a bien dîné et quand
la brise est tiède.

    
−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 二人はタバコを口にくわえて、外套を腕に掛
けて、1本の花を胸のボタンホールに挿して、
そして帽子を少し横にずらしてかぶり、ゆっく
りした歩調で歩いて行きました.それは腹が満
たされて、不精になり、生ぬるい風が吹いてい
たりするときに、しばしば見る体たらくだった.


−−−−−−⦅語句⦆−−−−−−−−−−−−−−−

un cigare à la bouche:タバコを口にくわえて
   中高と英語の授業で5文型を叩き込まれた
   私たちは、こういうふうに名詞が浮いてい
   のは許せないようです.しかしフランス語
   の小説は当たり前に出てきますので慣れて
   おきましょう.浮いた名詞と次の前置詞句
   は、「〜を…する」、という関係になります.
   パーマ屋さんのお客がこの浮いた名詞で、
   次の前置詞句がお客の注文の髪型です.
   「私の髪を〜にして」この公式にあてはめて
   「タバコ」に「口に加えて」という処置を
   加えて「タバコを口に加えて」となります.
en habit:礼服を着て、夜会服を着て、燕尾服を着て;
   homme en habit / 礼装の男性
pardessus:(m) 男性用のオーバー、外套
pardessus sur le bras;(パーマ処理客)外套を腕に掛けて
「掛けて」という動詞は読み手側で補います.
une fleur à la boutonnière:(パーマ処理客)
    花を1本ボタンホールに挿して
boutonnière:(f) ボタンホール
porter une fleur à la boutonnière
花を1本ボタンホールに挿して
porter がなくても訳せるように慣れて
    下さい.
le chapeau un peu sur le côté:
帽子を少し横かげんに被り
   (宝塚のスターたちがかこよくかぶって
    いるあんな感じです)
長文なので、comme の手前で切って訳します.    
comme on le porte quelquefois, par nonchalance,
le は帽子.ときどき不精でこうかぶる、と
言っています.

quand on a bien dîné et quand la brise est tiède.
たらふく食べたとき、風が生あたたかいとき

そういうときに帽子を横かぶりにする
と言っています.

nonchalance:[ノンシャラーンス](f) 無頓着、投げやり、不精
    懶惰(らんだ)、怠け癖
brise:[ブリーズ](f) そよ風、微風、風
tiède:[ティエード](形) ❶生ぬるい、❷生暖かい.



1332番:ペルル嬢(149)(最終回)


ペルル嬢(149)(最終回)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【149】−−−−−−−−−−−−−−
   
et pet-être aussi que cette courte étreinte
fera passer dans leurs veines un peu de
ce frisson qu'ils n'auront point connu, et
leur jettera, à ces morts ressuscités en
une seconde, la rapide et divine sensation
de cette ivresse, de cette folie qui donne
aux amoureux plus de bonheur en un
tressaillement, que n'en peuvent cueillir, en
toute leur vie, les autres hommes !


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

そしてまた、あるいはその束の間の抱擁が、その
血管の中に、彼らがこれまで少しも知らなかった
であろう戦慄の幾ばくかを流すことだろう.そし
てたちまちにして恋の蘇った死者たちに、生涯の
中で、他のどんな人たちも摘み取ることのできな
いほどの幸福を、この抱擁が一度の慄きの中に一
瞬に神々しい興奮と陶酔で、その幸福をふたりに
投げかけるだろう.  


−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

court, e:(形) 短い
étreinte:(f) 抱き締めること、抱擁.
ne ... point:少しも〜でない.
   Je n'aime point cela. / 私は少しもそれが
   好きではない.
fera passer:(使役、直単未3単) 流すだろう
   主語は「抱擁」.この抱擁が血管のなかに
   戦慄を流すだろう、と言っています.自然
   な日本語は「その抱擁で血管の中に戦慄が
   流れるだろう」となります.事物主語は
   しばしば「〜で」、と副詞句に置きかえて
   訳すと文のぎこちなさが和らぎます.
   ただしここでは文法理解のため直訳にしました.
   それから「戦慄」とはもちろん恋の戦慄です
   のでね.恐怖の戦慄ではありません.熊も
   お化けも登場しません.
morts:死者たち、ここではペルルさんとシャンタル
   さんのことですが、このふたりが恋愛におちい
   る道は「死者として」でしかないということ.
jettera:(直単未/3単) < jeter (他) 投げる
   単純未来の語幹は1人称単数現在の
   語幹を基にしているのでje jette の
   jette に rai, ras, ra, rons, rez, ront などを
   加えて作る.
ressuscité, e:(p.passé) < ressusciter
ressusciter:(他) 生き返らせる、(死者を)蘇らせる;
   Jésus ressuscita Lazare, dit l'Évangle. /
福音書によればイエスはラザロを蘇らせた.
en une seconde:ほんの一瞬
seconde:[スゴンド](f) ❶秒;❷一瞬、瞬時
rapide:(形) 速い、すばやい、急速な、
divin, e:[ディヴァン, ディヴィーヌ](形) ❶神の、神々しい、
   神のような、❷素晴らしい
sensation:[サンサスィヨン](f) ❶感覚、感じ、❷興奮
ivresse:(f) 酔い、夢中、陶酔
folie:(f) 狂気、狂気の沙汰、精神錯乱
amoureux:(m)(単複同形) 恋人、恋人たち、
   ただし単では女性にはamoureuse を用いる.
   les deux amoureux:恋人同士(男女1名づつ)
bonheur:(m) 幸福、喜び;
plus de bonheur que ~:比較級、que 以下のの主語は
   倒置されているles autres hommes 
les autres hommes:他の人たち
n'en peuvent cueillir:摘み取るこのできる
    ne は虚辞のne
plus de bonheur que n'en peuvent cueillir
les autres hommes:他の人たちが摘み取るこのできる
    幸福よりも多くの幸福
qui donne aux amoureux:その幸福を与える、と言って
    います.誰が?qui の先行詞が.それは?
それは、la rapide et divine sensation de cette
ivresse, de cette folie:陶酔と狂気の急行の神々しい
興奮が(より多くの幸福を与える)
tressaillement:(m) 身ぶるい、おののき
cueillir:[クイイール](他) 摘む
en toute leur vie:彼らの全生涯で


−−−−−−−−≪文法≫−−−−−−−−−−−−−−−−

小文字 et から始まっていますが、前回の長文を
途中で切ったためです.前回の文は、Et peut-
être que ~「〜ということがあるかもしれない」で
始まり、ポワン・ヴィルギュルという記号で終わ
っていました.;という記号です.ポワンとの違い
は、長文を途中で幾つかの文に分けて切るときに使う
記号がポワン・ヴィルギュル「;」で、普通のポワン
「.」は単純に終了するときに打つ記号です.

さて、そういうわけで、前回の文を合わせると、この
長文は Et peut-être que ~, et peut-être aussi que ~ とい
う構造になるのですが、文法上の主語も述語もなく、
que だけですが、これで「〜ということもあるだろう、
また〜ということもあるだろう」となります.
il y aura が脱落したと考えればいいと思います.なぜ
脱落したか?que のなかに単純未来をもってきている
ので、冗長になるのを避けたためだと思います.裁判
調書なら几帳面にIl y aura ce que ~ とする所でしょう.


 以上をもちまして、「ペルル嬢」の学習を終了いた
します.みなさまには149回の長きにわたり、おつ
き合いいただいたことに心から感謝申し上げます.
ありがとうございました.みなさまの今後の益々の
学究とご多幸を祈念いたします.
2024年10月8日.ゴタぴょん
 



1331番:ペルル嬢(148)


ペルル嬢(148)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【148】−−−−−−−−−−−−−−
   
Et peut-être qu'on soir du prochain
printemps, émus par un rayon de lune
tombé sur l'herbe, à leurs pieds, à travers
les branches, ils se prendront et se ser-
reront la main en souvenir de toute cette
souffrance étouffée et cruelle; 


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 もしかしたら、今度の春の宵にでも、このふたりが
木の枝を通り抜け、足元の草原に降り注ぐ月の光に誘
われて、そして押し殺されていたむごい苦悩を思い出
しながら、手に手を取り合い、お互い握り合うという
ことがあるかも知れない.
  
    
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

ému, e:[エミュ](形) 心を動かされた、感動した
tombé sur l'herbe:草の上に降り注ぐ(月光),
à leurs pieds:彼らの足元を(照らす),
à travers les branches:木々の枝を縫って(降り注ぐ),
ils se prendront:彼らがお互いに〜を取り合って
se serreront la main:手を握り合って、
en souvenir de ~ :〜を思い出しながら、
souffrance:(f) 苦しみ、苦悩;
étouffé, e:(形) 窒息した、押し殺された、
   抑えられた
cruel, le:(形) 残酷な、残忍な、 


1330番:ペルル嬢(147)

 
ペルル嬢(147)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【147】−−−−−−−−−−−−−−
   
Il était tard pour recommençat leur
torture et assez tôt pour qu'ils s'en
souvinssent avec attendrissement.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 今さらそれを知ったところで、彼らが恋こがれ思い
悩むには遅きに失するが、しみじみと思い出すという
ことなら遅くはない、じゅうぶん間に合っている.い
いタイミングだろう.
   
    
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

recommençât:(接半過/3単) < recommencer ()
torture:(f) ❶耐え難い苦しみ、❷責苦、拷問
tôt:(副) 早く
se souvinssent de ~:[スーヴァンス](接半過/3複)
< se souvenir de ~ / 〜を思い出す、覚えている
attendrissement:(m) 感動、同情;
  pleurer d'ttendrissement / ほろりとして涙ぐむ

1329番:ペルル嬢(146)


ペルル嬢(146)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【146】−−−−−−−−−−−−−−
   
Je me demandais: ≪ Ai-je eu tort ?
Ai-je eu raison ? ≫ Ils avaient cela dans
l'âme comme on garde du plomb dans
une plaie fermée. Maintenant ne seront-ils
pas plus heureux ?


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 私は何度も自問していました: 「私は間違ってい
たのだろうか?それとも正しかったのだろうか?」
彼らはこのことを、まるで鉛を傷口に残したまま、治
したように、心の奥底にずっと仕舞っていたのだ.こ
の今は彼らはより幸福を感じてはいまいか?
   
    
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−
me demandais:(直半過/1単) < se demander (pr)
se demander:(pr) ❶自問する; ❷不思議に思う
   本文は❶の意味.
tort:[トール](m) 間違い、誤り;
avoir tort:間違っている、
avoir raison:正しい
âme:[アーム](f) 魂、霊魂、
plomb:[プロン](m) 鉛
plaie:[プレ](f) 傷、傷口、
   panser une plaie / 傷口に包帯をする
fermé, e:(形、p.passé) < fermer (他) 閉じる
seront-ils:(直単未/3複) 〜だろうか? < être
   この単純未来は、現在の推量を表す.  .
heureux, se:(形) 幸福な、幸せな

1328番:ペルル嬢(145)


ペルル嬢(145)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【145】−−−−−−−−−−−−−−
   
Je m'en allai à grands pas, le cœur
secoué, l'esprit plein de remords et de
regrets. Et parfois aussi j'étais content;
il me semblait que j'avais fait une chose
louable et nécessaire.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 私は大股歩きで立ち去っていきました.心が動揺
していました.後悔と自責の念でいっぱいでした.
そしてときどき満足感にも浸りました:私にはそれ
がほめられてしかるべき、必要不可欠なことのよう
に思えたのでした.
  
    
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

secoué, e:(形、p.passé) secouer (他)
揺さぶる、激しく動かす、 
remords:(m) 悔恨、後悔、良心の呵責、自責の念、
regret:(m) 後悔、悔い、残念さ、
louable:(形) 称賛すべき、< louer (他) ほめる、
    称賛する
nécessaire:(形) 必要な、不可欠の、


1327番:ペルル嬢(144)


ペルル嬢(144)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【144】−−−−−−−−−−−−−−
   
Je criai: ≪ Au secours ! au secours !
Mlle Perle se trouve mal. ≫
Mme Chantal et ses filles se précipitèrent,
et comme on cherchait de l'eau, une
serviette et du vinaigre, je pris mon chapeau
et je me sauvai.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 私は叫びました: 「助けてください! 誰か!
ペルルさんが倒れました.」
 シャンタル夫人と娘さんたちが駆けつけました.
そして、みんなは、やれ水だ、やれタオルだ、やれ
ワインビネガーだのと言って取りに行ったりしてい
るうちに、私は自分の帽子を取って、そそくさと、
その場を立ち去りました.
 
    
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

au secours !:たすけて!
secours:[スクール](m) 助け、救助、救い
se trouve mal:❶気を失う;❷気分が悪い、
se précipitèrent:(直単過/3複) < se précipiter
se précipiter:(pr) 駆けつける、突進する 
précipiter:(他) (高いところから)落とす、
     突き落とす
serviette:(f) タオル
vinaigre:(m) 酢、ビネガー、(気付け薬?)
me sauvai:(直単過/1単) 私は逃げ出した;
se sauver: (pr) 逃げ出す、急いで立ち去る



1326番:ペルル嬢(143)

 
ペルル嬢(143)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【143】−−−−−−−−−−−−−−
   
Sa figure pâle me paru s'alloner un peu;
ses yeux toujours ouverts, ses yeux calmes
se fermèrent tout à coup, si vit qu'il sem-
blaient s'être clos pour toujours. Elle glissa
de sa chaise sur le plancher et s'y affaissa
doucement, lentement, comme aurait fait une
écharpe tombée.



−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 ペルルさんの青白い顔はいくぶん憂いに沈んでい
るかのように見えました.目は相変わらず大きな目
です.物静かな、その目が突然閉じたものだから、
そのまま永久に開かないような気にもなりました.
彼女は座っていた椅子から床の上に滑り落ちました.
 
    

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

s'alloner:(pr) ❶長くなる、伸びる;
   ❷憂う
   Son visage s'allongeait. /
   彼(女)は浮かぬ顔をしていた.
clos(e):(形, p.passé) 閉まった; < clore
pour toujours:永久に、いつまでも
affaissa:(直単過/3単) < affaisser (他)
affaisser:(他) たわませる、沈下させる
doucement:(副) そっと、静かに、穏やかに
   ゆるやかに、やさしく、
lentement:(副) ゆっくりと、 静かに
écharpe:(f) 襟巻、スカーフ、肩掛け

  

1325番:ペルル嬢(142)


ペルル嬢(142)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【142】−−−−−−−−−−−−−−
   
Elle tressaillit: ≪ Comment, il pleurait ?
−−Oh ! oui, il pleurait !
−−Et pourquoi ça ? ≫
Elle semblait très émue. Je répondis:
 ≪ À  votre sujet.
−−À mon sujet ?
−−Oui, Il me racontait combien il vous avait
aimée autrefois; et combien il lui en avait
coûté d'épouser sa femme au lieu de vous... ≫


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 ペルルさんは身震いしました.「あの人が泣いたで
すって?」
 「そう!そうなのです.泣いておられました!」
 「でもまたどうして?」
ペルルさんはとても動揺したような様子でした.私は
返答しました:
 「あなたのせいなんですよ.」
 「私のせいですって?」
 「はい、確かに.シャンタルさんは私に語って聞
かせてくださいましたよ.昔はどれほどあなたのこ
とが好きだったかという話をね.そして彼にとって
あなたではなく今の奥さんと結婚することがどれほ
ど苦痛だったかを聞かされましたよ.」

    

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

tressaillit:(直単過/3単) < tressaillir [tresajirトレサイール]
tressaillir:(自) 身震いする、おののく、びくっとする
ça:(中性指示代名詞) それ、これ、あれ、cela の代用
  話言葉ではcela より多用される.ここではシャン
  タルさんが泣いていたことを指す 
  Et pourquoi ça ? /
   泣いていたって、どうしてよ?
ému(e):(形) 心を動かされた、感動した、興奮した、
  動揺した、se sentir ému / 感動する、動揺する、
   répondre d'un voix ému /
   (興奮で)うわずった声で答える   
   Elle semblait très émue. / 彼女はひどく動揺した
   ように見えた.
sujet:(m) ❶主題、話題;❷理由、原因、
   ❸(試験の)問題、❹⦅文法⦆主語、
   ここでは❷À votre sujet / あんたのせいだ.
coûter:【非人称】
    Il en coûte.../ 〜が辛い、苦しい
Il en coûte à qn de + 不定詞
    (〜にとって…するのが辛い、苦しい
épouser:(他) (と)結婚する;
   Il a épousé ma sœur. /
   彼は私の姉(妹)と結婚した.

    

1324番:ペルル嬢(141)


ペルル嬢(141)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【141】−−−−−−−−−−−−−−
   
Et je lui dis tout bas, comme font les
enfants qui cassent un bijou pour voir
dedans: ≪ Si vous aviez vu pleurer M.
Chantal tout à l'heure, il vous aurait fait
pitié. ≫


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 そして私は、中が何なのかペンダントを壊す子供た
ちのように、小さな声でペルルさんに言いました:
 「さっきシャンタルさんが泣いていらしたのですが、
それをあなたがご覧になっていたら、きっと同情なさ
っていたことでしょう.」

    

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

bijou:(m) 宝石、装身具、アクセサリー
   訳本は「ペンダント」となっていたので、辞書
   を引き直したところ、bijou とは、ネックレス
   (collier)、ブローチ(broche)、イヤリング
(broche d'oreilles)とありました.さらにロワイ
   ヤル中辞典ではmédaillon (ロケット)、
   pendentif (ペンダント)がありました.
Si vous aviez vu pleurer M. Chantal tout à l'heure,
il vous aurait fait pitié:(条件法過去)
   <Si + 直説法大過去、条件法過去>のセット
   です.「もし〜だったとしたら…だったことで
   しょう」と、すんでしまったことを「もしも
   〜だったら」と過去の仮定的想像をする言い
   回しです.ここは「もしもあなたがシャンタル
   さんがさっき泣いていたのを見ていたら、あな
   たは、哀れみを感じていたことでしょう」


1323番:ペルル嬢(140)


ペルル嬢(140)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【140】−−−−−−−−−−−−−−

Je la regardais, je voyais battre son cœur
sous son corsage à guimpe, et je me de-
mandais si cette douce figure candide avait
gémi chaque soir, dans l'épaisseur moite de
l'oreiller, et sangloté, le corps secoué de
sursauts, dans la fièvre du lit brûlant.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

私はペルルさんを眺めていました.胸飾りのついた
ブラウスの下で彼女の心臓が動悸を打つのがわかり
ました.私はこの優しい無邪気な顔が毎晩、湿っぽ
い枕にうずくまり、呻いでいたことがあったのだろ
うか、そして焦げ付くような熱いベッドの中で、体
を震わせすすり泣いたことがあったのだろうかと思
ってみたりしました.
    

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

battre:(自/他)(ここでは自) 打つ、たたく、
   (心臓が) 動悸を打つ
corsage:(m) ブラウス
guimpe:[ガンプ](f)❶【服飾】ギンプ(女性用の
    袖のない胸衣) ❷ウィンプル(尼僧の
    用いる白い頭布)❸胸飾り、胸当て;
se demander:(pr) 自問する、。考える
candide:[カンディド](形) 純真な、無邪気な
avait gémi:(直大過去) < gémir (自) (苦痛に)うめく、
épaisseur:(f) ❶厚さ、厚み;❷濃さ、濃密さ、
    ❸豊かさ、❹奥、深いところ
moite:(形) 湿っぽい、湿り気のある、 
oreiller:(m) 枕
sangloté:(p.passé) < sangloter (自) すすり泣く、 
    むせび泣く
secoué:(p.passé) < secouerr (他) 揺さぶる、
    激しく動かす、
sursaut:(m) びくっとすること、思わず跳び上がる
   こと、辞書不掲載ですが、ぴくぴく痙攣する
   ことを言っているだと思います.むせび泣き
   体を痙攣させた、あるいは、むせび泣き見悶
   えした
fièvre:(f) (病気による)熱
lit:[リ](m) ベッド、寝台
brûlant(e):(形/p.pré) 燃えるような、焼けるような
    熱い、熱烈な、< brûler (他) 焼く、燃やす
    焦がす


1322番:ペルル嬢(139)

 
ペルル嬢(139)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【139】−−−−−−−−−−−−−−

mais un besoin me venait aux lèvres, un
besoin harcelant de l'interroger, de savoir
si, elle aussi, l'avait aimé, lui; si elle
avait souffert comme lui de cette longue
souffrance secrète, aiguë, qu'on ne voit
pas, qu'on ne sais pas、qu'on ne devine
pas, mais qui s'échappe la nuit, dans la
solitude de la chambre noire.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 しかしある欲求が頭をもたげてきたのです.質問し
たい、知りたいというあくなき欲求でした.ペルルさ
のほうでもシャンタルさんを愛していたのだろうか知
りたい、彼女のほうでもシャンタルさんのように長年
人知れず、秘密の激しい恋の悩みに苦しんでいたのか
どうかを、人の見えない恋に、人の知らない思いに、
人の言い当てられない愛に、苦しんでいたのかどうか、
暗い部屋の中で、そっと漏れるかもしれない苦しみが
あるのかどうか、きいてみたいと思いました.
    

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

besoin:(m) ❶必要、❷欲求:
un besoin me venait aux lèvres:
〜の気持ちがのど元まで登ってきた
lèvre:(m) 唇
†harcelant:(p.pré) < harceler (他)
†harceler (他) 休みなく攻撃を繰り返す
interroger:(他) interroger qn 
     (人に)尋ねる、質問する
besoin harcelant de l'interroger:聞き出したいという
     ひっきりなしの欲望
de savoir:知りたくて
si, elle aussi, l'avait aimé, lui:彼女のほうでも彼を
     好きだったのかどうかを
souffert:(p.passé) < souffrir (自) 苦しむ
si elle avait souffert:ペルルさんも苦しんだのかどうか
comme lui:シャンタルさんと同じように
souffrance:(f) 苦しみ、苦悩;
de:[前置詞](原因を示す) 〜のために
de cette longue souffrance secrète:
   長きにわたるこの密かな苦しみのために
elle avait souffert comme lui:
   ペルルさんもシャンタルさんのように苦しんで
   きた.
si elle avait souffert comme lui:
ペルルさんもシャンタルさんのように苦しんで
   きたのかどうか
aigu(ë):[エギュ](形) ❶先の尖った、鋭い;
   ❷激しい、急性の、
qu'on ne voit pas:人に見えない
qu'on ne sais pas:人のしらない
devine:(直現/3単) deviner (他) 見抜く、推察する
   言い当てる
qu'on ne devine pas:人が予測できない
s'échappe: < s'échapper (pr) [de から]逃げる、出る
   脱走する、漏れる、立ち去る、そっと出て行く 
qui s'échappe la nuit:夜に漏れる苦悩
dans la solitude de la chambre noire:.暗い部屋でひとり
   のときに


1321番:ペルル嬢(138)


ペルル嬢(138)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【138】−−−−−−−−−−−−−−

Il me semblait que je voyais en elle,
comme J'avais vu tout à l'heure dans
l'âme de M. Chantal, que j'apercevais, d'un
bout à l'autre, cette vie humble, simple et
dévouée;


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 私はペルルさんの中に、先ほど私が気づいたシ
ャンタルさんの心の中にあるようなものを見まし
た.そのつつましやかで素朴で献身的な人生の端
から端までを見てしまいました.


    
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−
*œ の上に鼻母音記号~ がどうしても乗ら
  ないのでœ~としています.
d'un bout à l'autre:端から端まで、徹頭徹尾
humble:[œ~bl](形) 謙虚な、控えめな、
    へりくだった
dévoué(e):(形) 献身的に仕える、献身的な
    忠実な


−−−−−−−−≪文構造≫−−−−−−−−−−−−−−−

je voyais en elle:「私は彼女の中に見た」,何を
見たかというと、目的語は後ろの方、cette vie
humble 「そのつつましやかな人生」です.comme
以下の挿入のため、後ろに廻りました.
なぜ、後ろにまわったか?つつましやかだからだよ.

1320番:ペルル嬢(137)


ペルル嬢(137)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【137】−−−−−−−−−−−−−−

Moi, j'avais rejoint Mlle Perle et je la
regardais, tourmenté par une curiosité ardente,
une curiosité qui devenait une souffrance.
Elle avait dû être bien jolie en effet, avec
ses yeux doux, si grands, si calmes, si
larges qu'elle avait l'air de ne les jamais
fermer, comme font les autres humains. Sa
toilette était un peu ridicule, une vraie
toilette de vieille fille, et la déparait sans la
rendre gauche.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 私は再びペルルさんと相まみえ、激しい好奇心から
彼女を不自然なほどまじまじと眺めていました.それ
はもう苦しくなるほどの好奇心でした.実際のところ、
甘いその目を見れば、彼女は美人だったに違いありま
せん.かくも大きな目といい、穏やかな目といい、人
が閉じるようには閉じたことがないのでは、と思うほ
どの目をしていました.身なりはいささか滑稽だった.
まさしく老婦人の着るものを着ていた.そのため彼女
の美しさは損なわれていたが、不格好とまでは行かな
かった.
   

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

rejoint:(p.passé) < rejoindre (他)
rejoindre (他) (人と)再び一緒になる、合流する
tourmenté(e):(形) ❶苦しんでいる、苦悩に満ちた
    ❷不自然な
curiosité:[キュリオジテ](f) 好奇心
ardent(e):(形) 熱い、激しい、熱心な
souffrance:[スフランス](f) 苦しみ、苦悩
humain(e):[ユマン, ユメヌ](形) 人間の、人間的な
toilette:(f) 装い、身なり、おしゃれ、婦人服
ridicule:(形) こっけいな、おかしな、
déparait:(直半過3単) < déparer (他)
déparer: (他) の美しさを損なう
rendre: < rendre + 直接目的 + 属詞 >
    〜を…にする
gauche:(形) ぎこちない、不自然な、
sans la rendre gauche:彼女を不格好にするという
   ことはなく.

1319番:ペルル嬢(136)


ペルル嬢(136)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【136】−−−−−−−−−−−−−−

Il descendit en effet, en se frottant les
yeux avec son mouchoir. On s'inquiéta;
chacun voulut chercher le grain de pous-
sière qu'on ne trouva point, et on raconta
des cas semblables où il était devenu né-
cessaire d'aller chercher le médecin.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 シャンタルさんは私の言葉通り、ハンカチで目をこ
すりながら、降りてゆきました.めいめいが目の埃を
見つけようとしましたが、さっぱり見つかりませんで
した.似たようなケースで医者を呼ばなくてはならな
いことがあったという話も出ました.
 

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

en effet:その言葉通り、なるほど、確かに、
en se frottant:(ジェロンディフ) < se frotter (pr)
frotter:(他) こする、
se frotter (pr) 自分の〜をこする
s'inquiéta:(直単過3単) < s'inquiéter (pr) 心配する、
    [de を] 心配する、
inquiéter (他) 心配させる、
chacun:それぞれの人が
voulut chercher le grain de poussière:ゴミ粒を見つけて
   やろうとしました.
qu'on ne trouva point:しかしそれはまったく見つかり
   ませんでした.
et on raconta:さらに誰かが語ってきかせました.
des cas semblables:似たようなケースを
semblable:(形) 似たような
des cas où il était devenu nécessaire:必要になったケース
nécessaire d'aller chercher le médecin:
    医者を呼びに行く必要.


1318番:ペルル嬢(135)


ペルル嬢(135)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【135】−−−−−−−−−−−−−−

Puis il se plongea la figure dans sa cuvette.
Quand il en sortit, il ne me parut pas encore
présentable; mais j'eus l'idée d'une petite ruse.
Comme il s'inquiétait, en se regardant dans la
glace, je lui dis: ≪ Il suffira de raconter que
vous avez un grain de poussière dans l'œil, et
vous pourrez pleurer devant tout le monde au-
tant qu'il vous plaira. ≫


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

それからシャンタルさんは洗面器に顔を浸けた.
洗面器から顔を出したときは、まだ人前に出せるよ
うな顔ではないように思えましたが、私はちょっと
した思いつきが浮かびました.彼が鏡で自分の姿を
見て心配したとき、私は言いました.「あなたは目に
ゴミ粒が入った」と言うだけでじゅうぶんです.そ
うすれば、みんなの前で、あなたの気のすむまで泣
いていられますから.」
 

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

se plongea:(直単過3単) < se plonger (pr)
se plonger (pr):[dans に] ひたる、潜る
plonger:(自) (水中に)潜る、
plonger:(他) ❶(水に)浸す、漬ける、浸ける、沈める;
   ❷突き刺す、突っ込む
cuvette:(f) 洗面器
en:ここでは < de + sa cuvette >
en sortit:(直単過3単) 洗面器から顔を上げた、
présentable:[プレザンターブル](形) 見苦しくない、
   人前に出せる、きちんとした、
eus:(直単過1単) < avoir
idée:(f) 着想、アイデア、思いつき、考え
ruse:[リューズ](f) 策略 
s'inquiétait:(直半過3単) < s'inquiéter (pr) 心配する
inquiéter (他) 心配させる
en se regardant:自分の姿を見ると
glace:(f) 鏡、姿見
dis:(直単過1単) < dire (自) 言う
  文法手がかりからは現在形もありうるが、文解釈
  の要素は文法以外にもストーリー展開も物を言う.
  よってここは過去形である.直説法単純過去1単.
suffira:(直単未来3単) <
suffire:(物が主語) 十分である、足りる、間に合う、
raconter:(他) 語る、話す 
grain:(m) (砂や埃などの)粒
poussière:(f) ほこり、ちり
œil:[ウイユ](m) 目
  Maman, j'ai une poussière dans l'œil ! .
ママ、目にゴミが入ったよ.
autant que + 直説法:〜するだけ、〜の範囲内で
plaira:(直未来3単) < plaire (自) 〜の気に入る、
  〜に好かれる
autant qu'il vous plaira:あなたの気のすむまで


1317番:ペルル嬢(134)

ペルル嬢(134)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【134】−−−−−−−−−−−−−−

Il me serra la main: ≪ Oui... oui... il y a
des moments difficiles... ≫


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 シャンタルさんは私の手を握りしめた.「いいんだ、
いいんだ.辛い時もあるものさ、人生は...」
 
 
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−
* 3単単純過去という表記は混乱の恐れがあるので
 (直単過3単)と略します.直説法単純過去3人称
 単数形の略号です. 
  
serra:(直単過3単) < serrer (他) 握り締める、
   しっかりつかむ


1316番:ペルル嬢(133)

ペルル嬢(133)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【133】−−−−−−−−−−−−−−

Je le pris par les mains et l'entraînai
dans sa chambre en murmurant: ≪ Je vous
demande pardon, je vous demande bien par-
don, monsieur Chantal, de vous avoir fait
de la peine... mais... je ne savais pas... vous...
vous comprenez... ≫


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 私はシャンタルさんの両手を取って、彼の部屋へ連
れて行きました.こう呟きながら: 「ごめんなさい、
シャンタルさん、本当にごめんなさい.こんな辛い思
いをさせてしまって.何も知らなかったものですから.
どうか、わかって下さいね...」
 
 
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

entraînai:(直単過1単) < entraîner (他) ❶引っぱる
  ❷連れて行く
peine:(f) 苦しみ、悲しみ、辛いこと
faire de la peine:悲しい思いをさせる
faire de la peine à qn :(人を)悲しませる


1315番:ペルル嬢(132)


ペルル嬢(132)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【132】−−−−−−−−−−−−−−

Et il commença à s'essuyer consciencieuse-
ment la figure avec le linge qui, depuis
deux ou trois ans, essuyait toutes les mar-
ques de l'ardoise, puis il apparut, moitié
blanc et moitié rouge, le front, le nez, les
joues et le menton barbouillés de craie, et
les yeux gonflés, encore pleins de larmes.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 それからシャンタルさんは黒板消しのタオルで顔を
拭き始めた.そのタオルはこの2、3年来、スレートの
黒板に書いたビリヤードの得点を消してきたものだっ
た.だもので彼の顔は、半分が白く、また半分は赤く
色がついた.額も鼻も両頬もあごも、チョークで塗り
たくられて、目はまだ溢れる涙で膨れ上がっていた.
 
 
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−

s'essuyer:(pr) 自分の体を拭く、自分の〜を拭く
consciencieusement:(副) 良心的に、まじめに、
   丹念に
figure:(f) 顔、顔つき、表情
linge:(m) ❶布類、❷下着類、❸布切れ
essuyait:(直半過3単) < essuyer (他) 拭く、拭う
marque:(f) ❶得点、得点表、❷印
ardoise:(f) ❶石盤石、スレート、❷石盤
apparut:(直単過3単) appaître (自) 〜のように見える
   現れる
moitié:(f) 半分
front:(m) ひたい(額)
menton:(m) あご(顎)
barbouillés:(p.passé/m/pl) < barbouiller
barbouiller:(他) 汚す、書きなぐる、塗りたくる
craie:[クレ](f) 白墨、チョーク、
   écrire à la craie sur le tableaui noir. /
チョークで黒板に書く.

1314番:ペルル嬢(131)

 
ペルル嬢(131)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【131】−−−−−−−−−−−−−−

Il bégaya: ≪ Oui... oui... Je vien... pauvre
fille !... Je vien... dites-lui que j'arrive. ≫


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 彼はどもりながら、「ああ、わかった.行くとも.
気の毒な人よ.今行く、そう言ってくれないか.」

 
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

bégaya:(直単過3単) < bégayer [ベゲイエ](自)
   どもる、口ごもる
pauvre fille:可哀そうな人(シャンタル氏の本心はペル
   ルさんだったことがはっきりした今は可哀そう)
dites-lui que j'arrive:今行くと言ってくれないか.



1313番:ペルル嬢(130)


ペルル嬢(130)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【130】−−−−−−−−−−−−−−

Puis, je me précipitai vers son mari, et le
saisissant par les coudes: ≪ Monsieur Chantal,
mon ami Chantal, écoutez-moi; votre femme
vous appelle, remettez-vous, remettez-vous vite,
il faut descendre; remettez-vous. ≫


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 それから私はこの奥様の旦那のほうへ駆け寄って、
その両肘をつかんで言いました.「シャンタルさん、
わが友、シャンタルさん、奥様がお呼びですよ.
さあ、元気を取り戻して、早く、ほら降りて行かなく
ちゃ.しっかりしてくださいな. 

 
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

me précipitai:(直単過1単) < se précipiter (pr)
se précipiter: (pr) 駆けつける、突進する
précipiter:(他) (高所から)落とす、突き落とす
saisissant:(p.pré) < saisir (他) をつかむ
coude:(m) 肘
remettez-vous: < se remettre (pr)
se remettre: (pr) 回復する、立ち直る
vite:早く、急いで
il faut descendre:降りて行かなくてはなりません.

1312番:ペルル嬢(129)

ペルル嬢(129)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【129】−−−−−−−−−−−−−−

Et soudain, la voix de Mme Chantal résonna
dans l'escalier: ≪ Est-ce bientôt fini, votre
fumerie ? ≫
J' ouvris la porte et je criai: ≪ Oui, madame,
nous descendons. ≫


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 そのとき突然シャンタルの奥方の声が階段のほうから
鳴り響きました. 「もうおタバコは、そろそろお済み
なのですか?」
 私はドアを開けて叫びました:「はい奥様、もう降り
て行きますから.」


 
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

* 3単単純過去のように表記してきました略号ですが、
今回より直説法単純過去は直単過と書きます.
従来の「3単単純過去」は「3単直単過」とします.
(直を入れることで単単という紛らわしさを避けます)

Et:辞書には「そのとき」という訳はないのですが、話
  の展開上、自然な日本語は「突然」と共に用いる言
  葉としては「そのとき」がいいかなと思います.
soudain:(副) 突然
résonna:(3単直単過) < résonner (自) 鳴る、響く
dans l'escalier:階段のところで
bientôt:(副) まもなく、すぐに、やがて
fumerie:(f) ❶喫煙; ❷アヘン吸飲
ouvris: (直単過1単) < ouvrir (他) 開ける
criai:(直単過1単) < crier [クリエ] (自) 叫ぶ
   大声を出す
nous descendons:(1複直現) 私たちは降りる.
   が直訳ですが、実際の意味するところは
   「今降りて行きます」となります.あれ?
   それは近接未だから < aller + 不定詞 > 
  では?とのご意見もあるでしょうが、
   それよりも至急であるという印象を与えます.
   「めしだぞ」と言われると、
   「J'arrive」(今行きます)のほうが
   「Je vais arriver maintenant」よりも早い
   イメージがあるようです. 
    

1311番:ペルル嬢(128)


ペルル嬢(128)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【128】−−−−−−−−−−−−−−

Moi, effaré, honteux, j'avais envie de me
sauver et je ne savais plus que dire, que
faire, que tenter.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 私は、狼狽するやら、恥ずかしいやらで、その場を
逃げ出したいほどでした.もはや私にはどう声をかけ
ればいいのやら、どうしてあげればいいのやら、何を
やってみれば収まるのやら知るすべもありませんでし
た.  
 
 
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

effaré(e):(形) 仰天した、ぎょっとした、おびえた、
   Elle m'a regardé d'un air effaré /
彼女はぎょっとした様子で私を見た.
< effarer:(他) 仰天させる、おびえ上がらせる、
   狼狽させる、
   Cette nouvelle a effaré les auditeurs. /
このニュースは聴取者を驚かせた.
honteux(se):(形) ❶恥ずべき;❷[de が] 恥ずかしい
se sauver:(pr) 逃げ出す
tenter:(他) 試みる、ためしてみる



1310番:ペルル嬢(127)

 
ペルル嬢(127)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【127】−−−−−−−−−−−−−−

Il lâcha la bille qu'il tenait de la main
gauche, saisit à deux mains le linge à craie,
et, s'en couvrant le visage, se mit à sangloter
dedans. Il pleurait d'une façon désolante et
ridicule, comme pleure une éponge qu'on presse,
par les yeux, le nez et la bouche en même
temps. Et il toussait, crachait, se mouchait
dans le linge à craie, s'essuyait les yeux,
éternuait, recommençait à couler par toutes les
fentes de son visage, avec un bruit de gorge
qui faisait penser aux gargarismes.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 彼は左手に持っていた玉を放して、両手で黒板拭き
をつかんで、それで顔を覆って、その中で嗚咽し始め
た.その泣きようといえば、痛ましくもあり、滑稽で
もありました.押さえたスポンジが目から鼻から口か
ら同時に出たものによって涙を流しているようでした.
そして彼は黒板消しに顔を入れて何度も咳をしたり、
痰を吐いたり、洟をかんだり、さらにはそれで目を拭っ
たり、くしゃみをくり返したり、そしてうがいを思わせ
るような音とともに、顔中の穴という穴から再び涙が流
れ出ていたのでした.
  
 
 
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

lâcha:(3単単純過去) < lâcher (他) 放す、落とす;
J'ai lâché son bras. / 私は彼(女)の手を放した.
bille:[ビユ](f) ❶玉突きの玉;❷顔、頭;❸ビー玉
   ❹丸太;辞書では別見出しになっていたので
   別系統語かも知れないです.
   尚本文は玉突きの玉ですが、玉と球、さらに
   ボールという表現法があります.どれでもいい
   と思いますが、ネットではボールの名で広告が
   出ていました.
tenait:(3単半過去) < tenir
saisit:(2群規則動詞:3単単純過去=直現3単) < saisir
saisir:(他) つかむ、捕らえる、握る 
linge:[ランジュ](m) 布きれ
craie:[クレ](f) 白墨、チョーク
à:(前)【用途・目的】〜用の
linge à craie:シャンタル家の「黒板拭き」(= éponge)
s'en couvrant:(en それで)(se 自分の顔を)p.pré (couvrir)
couvrant:覆いながら < couvrir (他) 覆う
visage:(m) 顔
mit:(3単単純過去) < mettre
se mettre à + 不定詞:〜し始める
sangloter:(自) すすり泣く、むせび泣く、嗚咽する
désolant(e):(形、p.pré) < désoler (他)
désoler: (他) (ひどく) 悲しませる、
pleurait:(3単半過去) < pleurer (自) 泣く、涙を流す 
une façon désolante:悲しさを訴えるような仕草で
ridicule:(形) 滑稽な
éponge:(f) スポンジ
presse:(直現3単) < presser (他) 押す
par les yeux:目から
en même temps:同時に
toussait:(3単半過去) < tousser (自) 咳をする
crachait:(3単半過去) < cracher (自) 痰を吐く、唾を吐く
moucher:(他) 洟をかむ
se mouchait:(3単半過去) < se moucher (= moucher) 
s'essuyait:(3単半過去) < s'essuyer (pr) 自分のからだを拭く
   自分の〜を拭く、
éternuait:(3単半過去) < éternuer (自) くしゃみをする 
recommençait:(3単半過去) < recommener (他) 再び始める
recommencer à + 不定詞:再び〜し始める
couler:[クーレ](自) 流れる、流れ出る、漏れる
fente:[ファント](f) ❶割れ目、裂け目;:❷すき間;
   ❸⦅服飾⦆ポケットの開口部
par toutes les fentes de son visage:顔中の穴という穴から
gorge:(f) のど、のどもと、咽喉 
gargarisme:(m) うがい、うがい薬、
faisait penser aux gargarismes:うがいを連想させる


−−−−−−−−−−≪文構造≫−−−−−−−−−−−−−−−−

comme pleure une éponge qu'on presse, par les yeux,
le nez et la bouche en même temps.
comme のあとの文は倒置されています.
comme + V + S = comme pleure une éponge
(スポンジが涙を流して泣くように)
     


1309番:ペルル嬢(126)


ペルル嬢(126)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【126】−−−−−−−−−−−−−−

Et, une curiosité hardie me poussant
tout à coup, je prononçai:
  ≪ C'est vous qui auriez dû l'épouser,
monsieur Chantal ? ≫
Il tressaillit, me regarda, et dit:
  ≪ Moi ? épouser qui ? ≫ 
−−Mlle Perle.
−−Pourquoi ça ?
−−Parce que vous l'aimiez plus que
votre cousine. ≫
  Il me rergarda avec des yeux étranges,
ronds, effarés, puis il balbutia:
≪ Je l'ai aimée... moi ? ... Comment ? qu'est-
ce qu'il t'a dit ça ? ≫
 −−Parbleu, ça se voit... et c'est même à
cause d'elle que vous avez tardé si longtemps
à épouser votre cousine qui vous attendait
depuis six ans.≫


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 そして突然、大胆な好奇心が私を駆り立てました.
私は言ったのです.
 「シャンタルさん、あなたこそ彼女と結婚すべきだっ
たんじゃないですか?」
 彼はびくっとして、私を見ました.そして言いました.
 「私がだって?いったい誰とだね?」
−−ペルルさんとですよ.
−−どうしてさ?
−−だって、あの人のことを、奥様より、愛していら
っしゃるのですから.」

 彼は不思議そうにそしてぎょっとしたようにを丸くし
て私を見つめ、それから口ごもるように言いました.
 「私が彼女を愛していたって?...一体どうして?
誰がそんなことを君に言ったんだね?」
−−そりゃ、わかりますよ.それがために、あなた
は従妹さんとの結婚を6年も待たせるほど長々と遅ら
せてしまったんだもの.

 
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

curiosité:[キュリオジテ](f) 好奇心、せんさく癖
†hardie:[アルディ](形) 大胆な、思い切った
poussant:(p.pré) < pousser (他) 押す、
pousser qn à + 不定詞:(人)を〜するよう駆り立てる 
prononçai:(1単単純過去) < prononcer (他)
prononcer: (他) (言葉などを)発する、口にする、
   言う、述べる、しゃべる
auriez:(2複半過去) < avoir
dû:(p.passé) < devoir
auriez dû + 不定詞:〜だったに違いない
épouser:(他) (と)結婚する
tressaillit:(3単単純過去) < tressaillir [トレサイール](自)
   ❶身ぶるいする、おののく、びくっとする、
   ❷ふるえる 
regarda:(3単単純過去) < regarder (他) 見る
aimiez:(2複半過去) < aimer (他) 愛する  
étrange:(形) 奇妙な、不思議な、
rond(e):(形) 丸い、丸々とした、
effaré(e):(形) 仰天した、ぎょっとした、おびえた、
balbutia:(3単単純過去) < balbutier [バルビュスィエ] (自)
balbutier:(自) 口ごもる、もぐもぐ言う 
parbleu:(間投詞)[古語調] そうだとも、勿論、
ça se voit:見ればわかる、すぐにわかる、
    Ça se voit. それはわかりますよ..
tardé:(p.passé) < tarder (自) 遅れる、
tarder à + 不定詞:〜するのが遅れる


1308番:ペルル嬢(125)


ペルル嬢(125)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【125】−−−−−−−−−−−−−−

Je regardais M. Chantal et il me semblait
que je pénétrais dans son esprit, que je pé-
nétrais tout à coup dans un de ces humbles
et cruels drames des cœurs honnêtes, des
cœurs droits, des cœurs sans reproches, dans
un de ces drames inavoués, inexplorés, que
personne n'a connu pas même ceux qui en
sont les muettes et résignées victimes


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 私はシャンタル氏を見ました.私は彼の心の中を見
抜いたように思えました.突然、清廉で真っすぐで非
の打ちどころのない心にある、まだ告白されたことの
ない、誰も知らない未踏襲の惨めで残酷なドラマのひ
とつを、この犠牲者たちを無言にさせ、観念させるに
至った惨劇のひとつを見抜いてしまったような気がし
ました.

 
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

regardais:(1単半過去) < regarder (他) 見る、眺める
   調べる
semblait:(3単半過去) < sembler (他)
il me semblait que ~:私には〜であるように思えた.
pénétrais:(1単半過去) < pénétrer (自) 入り込む
   [dans の中に] 入る
pénétrer (他) (人の意図を)見抜く、洞察する、見破る
   考えを見抜く
dans son esprit:彼の心の中を
tout à coup:[トゥタクー] 突然; 
  Tout à coup, elle a éclaté de rire. /
突然彼女は大声で笑い出した.
humble:[アーンブル](形)❶ 謙虚な、控えめな;
   ❷(名詞の前) [文]貧しい、しがない、
   みすぼらしい、取るに足らない、
cruel(le):(形) ❶残酷な、残忍な、冷酷な、むごい、
   ❷厳しい、つらい、苦しい、
drame:(m) ❶劇的事件、惨事、悲劇;❷劇、ドラマ
honnête:[オネト](形) 正直な、誠実な、清廉な
droit(e):(形) ❶真っすぐな、正しい、垂直の;❷右の
reproche:[ルプロッシュ](m) 非難、批判
inavoué(e):[イナヴウエ](形) 告白されない、自ら認めない
inexploré(e):探検されていない、未踏査の、未調査の、
connu:(p.passé) < connaître (他) 知っている
sont:(直現3複) < être
en être:❶[à まで]達している、進んでいる;
    ❷[参加・仲間] Il en est. / 彼はそれに加わって
いる.1枚かんでいる.
[pour を]損した、
muet, muette:[ミュエ, ミュエット](形) ❶ 口が利けない、
   ❷(一時的に)声が出ない
   Il est muet de naissance. /
   彼は生まれつき口が利けない.
   rester muet d'étonnement / 驚きのあまり声も出ない 
résigné(e):(形) あきらめた、観念した、
   Il accepta d'un air résigné. /
   彼は観念した様子で引き受けた.
victime:(f) 犠牲者、被害者


1307番:ペルル嬢(124)


ペルル嬢(124)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【124】−−−−−−−−−−−−−−

Il se tut encore. Je demandai: ≪ Pourquoi
ne ne s'est-elle pas mariée ? ≫

Il répondit, non pas à moi, mais à ce mot
qui passait, ≪ mariée ≫.

≪ Pourquoi ? pourquoi ? Elle n'a pas voulu...
pas voulu. Elle avait pourtant trente mille
francs de dot, et elle fut demandée plusieurs
fois... elle n'a pas voulu ! Elle semblait triste
à cette époque-là. C'est quand j'épousai ma
cousine, la petite Charlotte, ma femme, avec
qui j'étais fiancé depuis six ans. ≫



−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 彼は再び黙った.私は尋ねた.「なぜあの人は結婚を
しなかったのですか?」

 シャンタル氏は、、私にではなく、この結婚と呼ばれ
るこの言葉に対して答えていた.

 「なぜだって?なぜ? 彼女は望んでいなかった...
結婚は望んでいなかった.だが3万フランの持参金はあ
ったし、何度も結婚の申し込みはあったよ.だが彼女は
それを望まなかったのだ.この時代は彼女が悲しそうに
見えていた.それは私が従妹のシャルロットと結婚した
頃だった.今の家内だよ.婚約から6年越しだったよ.
 
 
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

pourtant:しかし、けれども、
épousai:(1単単純過去) < épouser (他) (と)結婚する


−−−−−−−−−≪話の謎≫−−−−−−−−−−−−−−−

今回は謎が1つあります.たしか、赤ん坊のペルルさん
を迎え入れたときの持参金は1万フランだったはずなの
に、3万フランに増えている.なんで?株?投資信託?


1306番:ペルル嬢(123)


ペルル嬢(123)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【123】−−−−−−−−−−−−−−
   
 Il reprit, au bout d'une minute: ≪ Cristi,
qu'elle était jolie à dix-huit an... et gracieuse...
et parfaite... Ah ! la jolie... joie... joie... et bonne...
et brave... et charmante fille !... Elle avait des
yeux... des yeux bleu... transparents... clairs... comme
je n'en ai jamais vu de pareils... Jamais ! ≫


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−
 
 シャンタル氏はしばらくたってから、また話を続けた.
「クリスティ、あの子の18歳の頃の何と美しかったこ
とか.何と優雅だったか、非の打ちどころがなかったよ.
ああ、美しかった...本当に、本当に、そして人がよく
て、勇気もあった.そして、かわいい娘だったよ.青い
目をしていたよ.青い目だった.透き通るような青だっ
た.そして澄んでいた.あれほど澄んだ目は見たことが
なかったよ.一度たりともね.」



−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

reprit:(3単単純過去) < reprendre (他)
reprendre: (他) (言葉を)続ける、再び始める
au bout d'une minute:しばらくののち
Cristi:(人名) クリスティ、これもペルルさんの名前
   その後のqu' は関係代名詞ではなく感嘆文の導入
   詞、「クリスティ、彼女の18の頃の何と美しかっ
   たことか」(qu'elle était jolie à dix-huit an)
gracieux(se):(形) 優雅な、しとやかな、やさしい
parfait(e):(形) 申し分のない、完璧な、
charmant(e):(形) かわいい、感じがいい、すてきな、
transparent(e):[トランスパラン(ト)](形) 透明な、
   透けて見える



1305番:ペルル嬢(122)


ペルル嬢(122)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【122】−−−−−−−−−−−−−−
   
 Moi, je restais en face de lui, adossé à
la muraille, les mains appuyées sur ma queue
de billard inutile.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

私は壁にもたれたまま、両手をもう使っていない玉突
き棒に載せて、彼のほうに向いたままだった.
 

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

restais:(3単半過去)
adossé:(p.passé) < adosser (他) [à, contre に]
   もたせかける、(を)背にして置く、
muraille:(f) 壁、城壁、外壁
appuyées:(p.passé/f/pl) < appuyer (他) []
queue:(f) ❶ (動物の)尾、尻尾、❷柄、軸、
     ❸(ビリヤードの)キュー.
billard:[ビヤール](m) 玉突き、ビリヤード 
inutile:[イニュティル](形) 役に立たない、無用の、無駄な



−−−−−−−−−≪情景描写≫−−−−−−−−−−−−−−−
  
「私は壁にもたれたまま、両手をもう使っていない玉
突き棒に載せて、彼のほうを向いたままだった」

たしかに本文を訳すとこうでした.しかしチェックの
ため、翻訳本を見るとちょっと違う.どういうことか
と言いますと、シャンタル氏は玉突き台に足をぶらぶ
らさせて座っている.そしてその彼と面と向き合うな
ら、聞き手の私は立っているしかありません.椅子と
いう言葉が出てこなかったためです.ですからここは
翻訳文ではこんな風になっております:

「私は壁にもたれたまま、両手をもう使っていない玉
突き棒に載せて、彼のほうに面と向かって立ったまま
だった」

言葉だけに責任をもつのが通訳.情景にまで責任をもつ
のが翻訳なのかも知れません.来世は翻訳家を目指して
今からお勉強しましょう.


1304番:ペルル嬢(121)


ペルル嬢(121)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【121】−−−−−−−−−−−−−−
   
Un peu rouge la voix sourde, il parlait pour
lui maintenant parti dans ses souvenirs, allant
doucement, à travers les choses anciennes et
les vieux événements qui se réveillaient dans
sa pensée, comme on va, en se promenant,
dans les vieux jardins de famille où l'on fut
élevé, et où chaque arbre, chaque chemin,
chaque plante, les houx pointus, les lauriers
qui sentent bon, les ifs, dont la graine
rouge et grasse s'écrase entre les doigts, font
surgir, à chaque pas, un petit fait de notre
vie passée, un de ces petits faits insignifiants
et délicieux qui forment le fond même, la
trame de l'existemce .



−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

いくぶん顔を赤らめ、口ごもった声になって、思い出か
ら浮かび上がったものを今や自分のためのように話した.
思い出は思考の中で、甘く漂い古き事柄を渡り進み、蘇
る懐かしい事件を駆け巡った.それは自分が育った古い
懐かしい家の庭を散歩するかのようだった.それぞれの
樹木が、それぞれの小道が、それぞれの植物が、尖った
ヒイラギが、香りのいい月桂樹が、その赤く豊かな種子
が指の中ではじけるイチイが、それらが一歩一歩と歩む
ごとに過ぎし日々の些細な出来事ですら現れだすのだ.
心の奥底さえ筋書きに形成する、取るに足らない出来事、
甘い、そして小さな様々な出来事を蘇らすのである. 



−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

un peu rouge:いくぶん顔を赤らめ
sourd(e):[スール, スルド](形) ❶耳が遠い、耳が聞こえない
❷(音が)こもった、にぶい;
bruit sourd / にぶい音、 
voix sourde / 内にこもった声
parti dans ses souvenirs:自分の思い出から出た(話)
allant doucement:甘く、ほんのりと
à travers les choses anciennes:昔のことが行き交う
les vieux événements qui se réveillaient:
   蘇る懐かしい出来事の数々
pensée:(f) 考え、思い、心
dans sa pensée:想念の中で
comme on va, en se promenant:散歩に出かけるように
dans les vieux jardins de famille:懐かしいわが家の庭で
   où l'on fut éléve:そこで自分が育った
et où chaque arbre, chaque chemin:どの樹木も、どの道も
chaque plante:どの植物も
†houx:[ウー](m) ヒイラギ、モチノキ
pointu(e):[ポワンテュ](形) とがった、鋭い、
laurier:[ロリエ](m) ❶ゲッケイジュ(月桂樹)、
   ❷月桂樹の葉
sentent bon:(直現3複) よい香りがする、
if:[イフ](m)⦅植物⦆ イチイ
graine:[グレーヌ](f) 種、種子
gras(se):(形) ❶脂肪質の、脂肪分の多い、❷太った、
   ❸豊富な、肥沃な、豊かな、❹肉太の、ぶ厚い;
écraser:(他) ❶押しつぶす、踏みつぶす、粉々にする、
   ❷(車が)轢く、❸圧倒する、
s'écrase:(pr) ❶つぶれる、粉々になる、❷(飛行機が)
   墜落する、❸押し合う;
   ❹[話]おとなしくしている
surgir:[スュルジール](自) (ふいに)立ち現れる、浮かび出る;
   Un camion surgit du brouillard.
トラックが霧の中から現れた.
vie passée:過ぎ去りし日々
insignifiant(e):[アンスィニフィヤン, ト] (形) 下らない、
   取るに足らない
fait:(m) 出来事、起こったこと、
délicieux:(形) 非常に気もちのよい、えも言われぬ、
   ごく快適な、魅力的な、 
forment:(直現3複) < former (他) 形作る
trame:[トラム](f) 横糸、入り組んだ事件の背景、筋書き
existence:(f) ❶存在、❷生活、生き方.


1303番:ペルル嬢(120)


ペルル嬢(120)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant

−−−−−−−−−IV−−−−−−−−−

−−−−−−−−【120】−−−−−−−−−−−−−−
   
M. Chantal se tut. Il été assis sur le
billard, les pieds ballants, et il maniait une
boule de la main gauche, tandis que de la
droite il tripotait un linge qui servait à ef-
facer les points sur le tableau d'ardoise et
que nous appelions ≪ le linge à craie ≫.



−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 シャンタル氏は黙った.彼は玉突き台の上に座り両足
をぶらぶらさせていた.そして左手で球のひとつと戯れ
ながら右手で布をさわっていた.その布は石盤上の得点
を消すためのものだったが、私たちはそれを黒板拭きと
呼んでいました.


−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

se tut:(3単単純過去) < se tair (pr) 黙る、 
Il été assis sur le
billard:[ビヤール](m) ❶ビリヤード、玉突き;
   ❷玉突き台
ballant(e):(形) 揺れて、振れている
maniait:(半過去3単) < manier (他) 手で扱う、
   操作する;navire facile à manier / 操縦の簡単な船
boule:[ブル](f) 球、玉、球形のもの
tandis que:(接続句) ❶【同時】〜している間、
   〜しているときに、
tripotait:(半過去3単) < tripoter (他) さわる、
   いじりまわす、
   tripoter sa barbe / ひげをしょっちゅうさわる
linge:[ラーンジュ](m) ❶家庭用木綿製品、リネン製品;
   ❷洗濯物、、
servait à:(3単半過去) < servir à ~: 〜に役立つ
servir:(自/他) (に)役に立つ
effacer:(他) 消す
point:(m) 得点、点数
tableau:(m) 黒板
ardoise:(f) 石盤石、スレート、粘板岩、
appelions:(1複半過去) < appel
craie:[クレ](f) 白墨、チョーク
linge à craie:(m) 「黒板拭き」と訳しておきますが
黒板拭きに相当するフランス語は éponge です.



1302番:ペルル嬢(119)


ペルル嬢(119)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【119】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Ma mère elle-même fut tellement émue
par la reconnaissance passionée et le
dévouement un peu craintif de cette mignonne
et tendre créature, qu'elle se mit à l'appeler:
 ≪ Ma fille. ≫ Parfois quand la petite avait
fait quelque chose de bon, de délicat, ma
mère relevait ses lunettes sur son front,
ce qui indiquait toujours une émotion chez
elle et elle répétait: ≪ Mais c'est une perle,
une vraie perle, cette enfant ! ≫ − Ce nom
en resta à la petite Claire qui devint et
demeura pour nous Mlle Perle.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

母でさえ、この可愛くてやさしい子の心からの感謝や
少しばかりおどおどした献身的な姿には、心を動かされ
て「わが娘や」と呼び始めたほどでした.この子が何か
いいことや素晴らしいことをしたときにはときどき、母
は顔の眼鏡を上げていました.それは彼女が感動したと
きにを示すいつもの仕草でした.そして母はくり返し言
うのでした.「この子はまるで真珠だわ.本物の真珠よ.
この子は!」−−この呼び名がクレールにはずっと残る
ことになって、私たちの間で、「ペルルお嬢さん」の名前
になって、そのまま残ったのです.

 

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

ému(e):(形) 心を動かされた、感動した、
reconnaisdsance:(f) 感謝、
passioné(e):(形) 情熱的な、熱中した、熱列な;
reconnaisdsance passionée:心からの感謝
dévouement:[デヴーマン](m) 献身、忠誠、犠牲的精神
craintif(ve):(形) 臆病な、おどおどした、
mignon, onne:(形) (小さくて)かわいい、すてきな
mignon(ne):(n) 可愛い子、
tendre:(形) やさしい、愛情深い、
créature:[クレアチュール](f) 創造物、人間
se mit à + 不定詞:(3単単純過去)
   < se mettre à + 不定詞:〜し始める、
   に着手する、とりかかる
appeler:(他) 呼ぶ
parfois:(副) ときには、ときどき
quelque chose de délicat:優美な振舞い
relevait:(3単半過去) < relever (他) 立て直す、
   起こす、高くする
lunette:(f)[複数形で用いる] 眼鏡
indiquait:(3単半過去) < indiquer (他) 指し示す 
ce qui indiquait:示していたこと
émotion:[エモスィオン](f) 気持ちの高ぶり、感動
répétait:(3単半過去) < répéter (他) 繰り返す
perle:[ペルル](f) 真珠
devint:(3単単純過去) < devenir (自) 〜になる
demeura:(3単単純過去) < demeurer (自)
   とどまる、残る


−−−−−−−−−−−≪追記≫−−−−−−−−−−−−−−−−

学習後に訳本(岩波文庫)をチェックしたところ、
「真珠」には「申し分ない人のこと」という説明が
本文中カッコ内に載っておりました.


1301番:ペルル嬢(118)

   
ペルル嬢(118)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【118】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Claire comprit cette situation avec une
singulière intelligence, avec un instinct sur-
prenant; et elle sut prendre et garder la
place qui lui était laissée, avec tant de tact,
de grâce et de gentillesse, qu'elle touchait
mon père à le faire plerurer.



−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

クレールはこの立場を不思議なほどの知能と驚くべ
き本能で理解したのでした.そしてこの子は自分が求
められている本分を理解し守ったのですが、それも実
に如才なく、エレガントに、心優しく振舞うので、父
の心を動かし、涙させたほどだった.

 

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

Claire:(ペルルさんの苗字) クレール
  ペルルさんは養女になったのだから本来はシャンタ
  ル家の苗字を名乗るはずですが、格式にこだわるシ
  ャンタル家によってクレールという苗字がつけられ、
  マリー・シモーヌ・クレールと命名された.  
comprit:(3単単純過去) < comprendre (他)
comprendre:(他) わかる、理解する 
singulier(ière):(形) 風変わりな、奇抜な、かわった、
  一風変った情熱的、
intelligence:[アンテリジャンス](f) 知能、聡明さ、頭のよさ
surprenant(e):(形) 意外な、驚くべき
tact:[タクト](m) 機転、敏感、如才なさ、
avoir du tact / 機転が利く、如才がない、
grâce:(f) 好意、恩恵、(神の)恵み、天賦の才能、
   感謝、優雅、優雅さ、しとやかさ
gentillesse:[ジャンティエス](f) 親切、心遣い、親切な言動、
touchait:(3単半過去) < toucher (他) 感動させる、
〜の心に触れる[衝撃を与える]
à le faire plerurer:彼をして涙させるまでに

1300番:ペルル嬢(117)


ペルル嬢(117)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【117】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Aussi, dès que l'enfant put comprendre,
elle lui fit connaître son histoire et fit
pénétrer tout doucement, même tendrement
dans l'esprit de la petite, qu'elle était pour
les Chantal une fille adoptive, recueillie,
mais en somme une étrangère.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 だもので、この子が理解できる年齢になるとすぐ、
母は、この子の生い立ちを話して聞かせ、お前はシ
ャンタル家にとって養女であること、要するによそ
者なのだと、やさしく傷つけぬよう気を使いながら
精髄に教え込んだ.
 

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

aussi:ここでは(副)ではなく(接) [文頭位置]
   (接) だから、それ故に
dès que:〜するとすぐ
l'enfant:この子(ペルルさん)
put comprendre:(3単単純過去) 副詞節の中は基本的に
   主節の時制と一致させる.,
pénétrer:(自・他) 入り込む、浸透する、
   入り込ませる、浸透させる
elle lui fit connaître son histoire:母はペルルさんに生い立
   ちを知らしめた.(faire + 不定詞=使役)
et fit pénétrer tout dans l'esprit:そしてすっかり骨身に
いきわたらせた.
tendrement:やさしく、思いやりをもって、
   愛情を込めて 
esprit:(m) 精神、精髄、
adoptif(ve):(形) 養子縁組の
recueilli(e):[ルクーィ](形) 瞑想にふけった、
   思いをこらした、内省的な
en somme:つまるところ、結局、所詮は
étranger(ère):(形) 他人、よそ者



1299番:ペルル嬢(116)


ペルル嬢(116)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【116】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Ma mère était une femme d'ordre et de
hiérarchie. Elle consentait à traiter la petite
Claire comme ses propres fils, mais elle te-
nait cependant à ce que la distance qui
nous séparait fût bien marquée, et la situa-
tion bien établie.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

母は几帳面なひとで、格式を重んじていました.母
はこのちいさなクレールを本来の娘たちと同じ扱いを
することに同意してはいましたが、それでも私たちと
の違いを明確に線引きする距離感にこだわり、立場を
明確にしていた.
 

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

ordre:(f) 几帳面;avoir de l'ordre / 几帳面である
   homme d'ordre / 几帳面な人
hiérarchie:[イエラルシ](f) ❶階級、等級、序列、
    ❷格付け、格式
consentait:(3単半過去)
   < consentir (間他)[à に]同意する
traiter:(他) (人を)(〜として、のように)待遇する
propre:(形) 本来の 
tenait:(3単半過去) < tenir (ここでは間他)
tenir à ~:〜にこだわる、固執している、執着している
ce que la distance qui nous séparait fût bien marquée:
私たちと隔てる距離感の線引きをすること
situation bien établie:立場がしっかり確立されていること



1298番:ペルル嬢(115)


ペルル嬢(115)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【115】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Donc l'enfant fut adoptée, et élevée dans
la famille. Elle grandit; des années passèrent.
Elle était gentille, douce, obéissante. Tout le
mondee l'aimait et on l'aurait abominablement
gâtée si ma mère ne l'eût empêché.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 そういうわけでこの子はシャンタル家の養女となって、
育てられました.彼女は成長しました;年月が流れまし
た.彼女は親切で、やさしく、素直に育ちました.誰も
が彼女を可愛がりました.もしも母がこの子のわがまま
を止めていなければ、甘やかされて育っていたことでし
ょう.
 

−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

fut adoptée:(受け身、3単女単純過去) 養女になりました
  < adopter (他) 養女にする 
fut élevée:(受け身、3単女単純過去) 育てられました、
大きくなりました.
  < élever (他) 育てる;
fut:(3単単純過去) < être 
grandit:(3単単純過去) < grandir (自) 大きくなる
成長する
des années passèrent:年月が流れました.
passèrent:(3複単純過去) < passer (自) 通る、過ぎる
(時が) 過ぎ去る
abominablement:(副) ひどく下手に、 
(話) たいへん、とても
gâté(e):(形)甘やかされた、わがままな
  < gâter (他) 甘やかす
gâter: (他) 甘やかす
eût empêché:(接続法大過去)
empêché:(p.passé) < empêcer (他) 妨げる、
  邪魔をする、阻止する
si ma mère ne l'eût empêché:(接続法大過去)
   これは条件法第2形で「過去の仮定」 
もしも母が(彼女のわがままを)
阻止しなかったら
l'eût のl' はla (ペルルさん)ではなく
「甘やかされること」を受ける中性代名詞


−−−−−−−−−−≪gâter ≫−−−−−−−−−−−−−−

「甘やかす」のフランス語はgâter で、英語のspoil に
相当します.なので、「損なう」「台無しにする」という
意味も持ちますが、逆に「過分に喜ばす」という使い方
もするようです.過度の贈り物で相手を喜ばすときに用
います:
  C'est pour moi, ces fleurs ? Vraiment, vous me gâtez.
(この花を私に? 
   こんなにしてくださって本当に恐縮です.)





−−−−−−−−−−−≪文法≫−−−−−−−−−−−−−−−
 
過去における仮定は基本的には、条件節が
「Si + 直説法大過去」、
そして帰結節に「条件法過去」
を用いて、
Si j'avais eu de l'argent, j'aurais achré ce dictionnaire.
スィジャヴェズュ ドゥラルジャン ジョーレ ザシュテ スディクスィヨネール
もしも(あのときに)お金があったらこの字引を
買ったのに.

なのですが、接続法大過去が、条件法第2形として
代用されます.代用パターンは3通りあります.

基本形(Si + 直説法大過去、条件法過去)

第2形(パターン1)
(接・大過去=条・過去2形)、(条・過去)
S'il l'eût pu, il serait revenu.
もしできたら、彼は戻って来たろうに.

第2形(パターン2)
(直・大過去)、(接・大過去=条・過去2形)
S'il l'avait pu, il fût revenu.
もしできたら、彼は戻って来たろうに.

第2形(パターン3)
(接・大過去=条・過去2形)、(接・大過去=条・過去2形)
S'il l'eût pu, il fût revenu.
もしできたら、彼は戻って来たろうに.

というわけで、英語に比べてかなり自由のようです.

1297番:ペルル嬢(114)


ペルル嬢(114)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【114】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
On se remit à table et le gâteau fut partagé.
J'étais roi; et je pris pour reine Mlle Perle,
comme vous, tout à l'heure. Elle ne se douta
guère, ce jour-là, de l'honneur qu'on lui faisait.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 私たちは再び食卓に着いて、ケーキを切り分けまし
た.私が王様だった.そして私はペルル嬢を女王様に
選んだのです.さっきの君のようにね.まあ、その日
の彼女には、自分にそんな光栄が与えられたことなど、
ほとんど分かっていなかっただろうがね.


−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

se remit à table:(3単単純過去) また食事をし始めた
se remettre à + qc:また〜を始める
se remettre à + 不定詞:また〜し始める
ne ~ guère:ほとんど〜ない、あまり〜ない
se douta:(3単単純過去) < se douter (pr) わかる
douta de:(3単単純過去) < douter de (間他) 疑う
honneur:(m) 名誉、栄誉、光栄

1296番:ペルル嬢(113)


ペルル嬢(113)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−【113】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Je vous assure que ce fut une drôle de
rentrée dans la salle à manger avec cette
mioche réveillée qui regardait autour d'elle
ces gens et ces lumières, de ses yeux
vagues, bleus et troubles.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 この子を抱き抱えて食堂に入ったのだが、それ
が何とも滑稽な有様だったことは請け合うよ.そ
の子は目を覚まし、曇っておぼろげな青い目で周
囲の大人たちや照明などを見回していた.


−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

assure:(直現1単) < assurer (他) 断言する、保証する
Je vous assure que ~:はっきり〜だと言っておこう
drôle:(形) おかしい、滑稽な
un(e) drôle de ~:❶おかしな〜、奇妙な〜、
   ❷たいした、すごい;
C'est un drôle de type. / あれは妙なやつだ.
ce fut une drôle de rentrée / 実に滑稽な帰還だった.
rentrée:(f) 戻って来ること;
lumière:(f) 光、明り、照明
yeux:[ィユー](pl/m) 両目、les yeux はリエゾン[レズュー]
   単数形は < œil (m)
Il a les yeux bleus. / 彼は青い目をしている.
Il a des yeux bleus. / 彼は青い目をしている.
どちらもOK.
vague:(形) ❶漠然とした、曖昧な、かすかな;
   ❷(眼差しなどが)うつろな、ぼんやりした
trouble:(形) 濁った、曇った


−−−−−−−−−−−≪文法≫−−−−−−−−−−−−−−−−

Elle regardait autour d'elle ces gens:
彼女は自分の回りの人たちを見ていた.

和訳問題なら、もちろんこれが模範答案で、
そのように解答していただきたいのですが、
自由に訳してよいときは、情景を思い浮かべて
訳します.そうしますとこの子が不思議そうに
キョロキョロ周囲を見回していた情景が浮かび
ませんか?そのように訳してみました.



1295番:ペルル嬢(112)


ペルル嬢(112)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【112】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
On ne la nomma que plus tard, Mlle Perle,
d'ailleurs. On la fit baptiser d'abord: ≪ Marie,
Simone, Claire ≫, Claire devant lui servir de nom
de famille.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

もっとも、この子に名前がペルル嬢とつけられたのは
さらに後のことでした.彼女にはまず「マリー・シモー
ヌ・クレール」の名前がつけられた.苗字にクレールを
もってきたのであった.



−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

nomma:(3単単純過去)
  < nommer (他) 〜に名をつける、命名する:
  nommer son enfant Paul /
  子供をポールと名づける
d'ailleurs:❶もっとも、ただし、❷それに、その上、
  そもそも、❸たしかに〜なのだが:❹他の場所から
  外国から、他の理由から
baptiser:[バティゼ](他) (人に) 洗礼を授ける、
  洗礼名を授ける
fit baptiser:(3単単純過去) < faire baptiser
洗礼名を授けてもらう
Claire devant lui servir de nom de famille:
   クレールを苗字にすること
   本文直訳は「クレールを苗字にすることで
   「マリー・シモーヌ・クレール」の名前がつけられた.


1294番:ペルル嬢(111)


ペルル嬢(111)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−【111】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Voilà donc comment Mlle Perle entra,
à l'âge de six semaines, dans la maison
Chantal.


−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 こういう次第でペルル嬢が生後6週間の若さで
わがシャンタル家の一員として入ってきたのです.


−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

entra:(3単単純過去) < entrer (自)入る
   entrer dans la maison / 家に入る 
entrer dans la maison Cahtal / シャンタル家に入る、
             シャンタル家の一員になる
  尚、(訪問して)シャンタルの家に入る場合は aller
  chez monsieur Chantal がよく用いられますが aller
  chez Chantal とすると、「シャンタルの店に行く」
  の意味に受け取られます.       



1293番:ペルル嬢(110)

ペルル嬢(110)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−【110】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Le chien lui-même ne fut reconnu par
personne. Il était étranger au pays. Dans
tous les cas, celui ou celle qui était venu
sonner trois fois à notre porte connaissait
bien mes parents, pour les avoir choisis
ainsi.


−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 犬のほうも、そいつは誰にもどこの犬かも分からなか
った.その土地の犬ではなかったのだ.いずれにせよ、
わが家の門扉のベルを3度も鳴らしに来た男、あるいは
女はうちの両親のことを知っていて、こうして選んだの
だろう.


−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

dans tous les cas:いずれにせよ


1292番:ペルル嬢(109)


ペルル嬢(109)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−【109】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Ce n'était donc pas une enfant de pauvres...
mais peut-être l'enfant de quelque noble avec
une petite bourgeoise de la ville... ou encore...
nous avons fait mille suppositions et on n'a
jamais rien su... mais là, jamais rien... jamais
rien...


−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 つまりその子というのは貧しい家の子ではなかった...
そうではなく、おそらくどこかの貴族と町人の娘との間
に出来た子か...あるいは...さらに私たちは想像して
みたが何も分からなかった.何も分からなかったよ.



−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

donc:(接) [ドンク] それ故、従って、だから
donc:(副)[ドンク] ❶ ところで、さて;
   ❷ [ドン] (疑問・命令・感嘆の強調) いったい、
へえ、さあ、〜だってば
quelque noble:どこかの貴族:noble は貴族(男女共通)
   quelque は本来は不特定数量を示す形容詞だが、
   ここでは「どこかの」
une petite bourgeoise de la ville:町の町人の娘

1291番:ペルル嬢(108)


ペルル嬢(108)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−【108】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
C'était une fille, âgée de six semaines environ.
Et on trouva dans ses langes dix mille francs
en or, oui, dix mille francs ! que papa plaça
pour lui faire une dot.


−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 それは生後6週間ほどの女の子でした.さらに父は
産着の中に1万フランの金貨があったのを見つけまし
た.実に1万フランでした! それを父はこの子の嫁入
りの持参金にするために、貯金しました.


−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

lange:[ラーンジュ](m) 産着(うぶぎ)、
   (おしめの意味のときもあります)
or:(m) 金、金貨
plaça:(3単単純過去) < placer (他) 預ける、預金する
dot:[ドット](tも発音するので注意) (f) 持参金


−−−−−−−−−−≪質問コーナー≫−−−−−−−−−−−−−−

−−pour lui faire une dot:彼女の持参金にするために
  では dix mille francs が直接目的格補語だと思うの
  ですが?

−−いいえ、pour lui faire une dot はdix mille francs
を修飾している前置詞句なので、動詞は無関係
です.dix mille francs pour lui faire une dot
(彼女のために持参金にする1万フラン)

1290番:ペルル嬢(107)


ペルル嬢(107)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−−−【107】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Comme maman était drôle, contente et effarée !
Et mes quatre petites cousines (la plus jeune avait
six ans), elles ressemblaient à quatre poules autour
d'un nid. On retira enfin de sa voiture l'enfant
qui dormait toujours.



−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 母がいかに奇妙な顔をしたか、いかにうれしそうだっ
たか、さらにいかに驚いたことか! 4人の幼い従姉妹
たちは(一番上の子が6歳だった)、巣の周りの4羽の雌
鶏さながらであった.そしてようやく馬車から子供が取
出されました.その子は相変わらず眠ったままでした.



−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

drôle:(形) おかしい、こっけいな、奇妙な
comme maman était drôle:(感嘆句)
   母の奇妙奇天烈な顔といったら
comme maman était contente:
   そしてうれしそうな顔といったら
effaré(e):(p.passé) < effarer (他) 仰天させる、
comme maman était effarée !:
   そしてあの驚きようといったら 
ressemblaient:(3複半過去) < ressembler (自) 
ressembler: (à に) 似ている
poule:(f) めんどり(雌鶏) 
à quatre poules autour d'un nid:巣の周りの4羽の雌鶏;
   馬車を巣に譬えた面白い表現のようです.
retira:(3単単純過去) < retirer (他)
retirer: (他) 取出す、引き出す (de から)
retirer enfin de sa voiture l'enfant:
    ようやく馬車からその子を取出す.
qui dormait toujours:なおも眠っていた(その子)


1289番:ペルル嬢(106)


ペルル嬢(106)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−【106】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Ah ! par exemple, ce qui fut gentil à voir,
c'est la rentrée à la maison. On eut d'abord
beaucoup de mal à monter la voiture par l'escalier
des remparts; on y parvint cependant et on la
roula jusque dans le vestibule.


−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 いやあ、実に見ものだったよ、家に帰るときのこと
がね.まずもってだな.城壁の階段で馬車を上げると
きの苦労したことったら.あれやこれやで、やっとた
どり着いて、なんとか玄関まで転がして行ったよ.



−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

par exemple:❶例えば、❷(驚きなどの間投詞)
    なんと〜なことか、まったく〜だ、実に〜
とんでもない、まさか、いったい何なんだ、
gentil:(形) ちょっとした、
gentil à voir:ちょっとした見ものである
ce fut gentil à voir:(3単単純過去 < c'est gentil à voir)
ce qui fut gentil à voir:「見ものであったこと」ですが
「といえば」を足して訳します.
「見ものだったことといえば」そしてそのあとの
c'est につながっていきます.
「ああ、まったく見ものだったことといえば〜」
c'est la rentrée à la maison. 「家に帰るときのことだ」
rempart:[ランパール](m) 城壁、城砦;
ville entourée de remparts / 城壁に囲まれた町
parvint;(3単単純過去) < parvenir (自)
parvenir:(自) [à に] たどり着く、達する
parvenir au sommet / 頂上に到達する
cependant:[文語、古語] そうしている間に
roula:(3単単純過去) < rouler (自/他) 転がる、転がす
vestibule:(m) 玄関、(入口の)広間、玄関ホ−ル



1288番:ペルル嬢(105)


ペルル嬢(105)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−【105】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Mon oncle ne répondit pas, mais il fit,
dans l'ombre, un grand signe de croix, car
il était très religieux, malgré ses airs fanfa-
rons.

On avait dêtaché le chien qui nous suivait.



−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 叔父は返事をしませんでしたが、こっそりと十字を切
っていました.厳かな十字でした.叔父は空威張りのよ
うに見えて、その実、とても信心深かったのです.

 犬はすでに解き放してやっていましたが、私たちの後
からついてきました.


−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

dans l'ombre:闇[陰]に包まれて、陰に隠れて
ひそかに、謎に包まれて、不明瞭に、
croix:[クロワ](f) 十字架
faire le signe de la croix:十字を切る
faire un signe de croix:十字を切る
air:(m) 様子、外観、態度;
   avoir l'air + 形容詞 〜のように見える
fanfaron(ne):(形) 空威張りする、はったりの、
   虚勢を張る
dêtaché:(p.passé) < dêtacher (他) 解き放す、ほどく、
   はずす: dêtacher un chien / 犬を放す
suivait:(3単半過去) < suivre (自) 後に(ついて)来る


−−−−−−−−−−−≪文法≫−−−−−−−−−−−−−−−−

  suivre 直説法現在

je suis−−−−nous suivons
tu suis−−−−vous suivez
il suit −−−− ils suivent


suivre 直説法半過去
je suivais−−−−nous suivions
tu suivais−−−−vous suiviez
il suivait −−−− ils suivaient

1287番:ペルル嬢(104)


ペルル嬢(104)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−−−【104】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Il s'arrêta de nouveau, et, de toute sa
force, il cria quatre fois à travers la nuit
vers les quatre coins du ciel: ≪ Nous l'avons
recueilli ! ≫ Puis, posant sa main sur l'épaule
de son frère, il murmura: ≪ Si tu avais tiré
sur le chien, François ? ≫



−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 再び父は立ち止まった.そして思い切り大声で4度、
夜の闇を縫って四方向の空に叫んだ:「この子を引き取
りましたぞ!」 それから片方の手を兄弟の肩にポン
と置いて、呟きました.「フランソワ、お前が銃の引き
金を引いていたら、どうなっていたと思う?」



−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

s'arrêta:(3単単純過去) < s'arrêter (pr) 立ち止まる
de nouveau:再び、もう一度
de toute sa force:力の限り
cria:(3単単純過去) < crier (自) 叫ぶ
à travers ~ :(前句)〜を通り抜けて、を通して
vers les quatre coins du ciel: 大空の四方向に向かって
recueilli:(p.passé) < recueillir (他) (孤児、動物などを)
   引き取る、
posant:(p.pré) < poser (他)
murmura:ぶつぶつ呟いた (3単単純過去) < murmurer
tiré:(p.passé) <tire (他) 引く、発射する、撃つ


1286番:ペルル嬢(103)


ペルル嬢(103)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−−−【103】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Mon père reprit, pensant tout haut:
≪ Quelque enfant d'amour dont la pauvre
mère est venue sonner à ma porte en cette
nuit de l'Épiphanie, en souvenir de l'Enfant-
Dieu. ≫  


−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

父は考えていることを口に出してさらに言いました.
 「きっと不倫か何かの子だろう.だからこの子の母
親が公現祭の夜だというもんだから、神の子イエスに
あやかって、わが家の門の鐘を鳴らしに来たんだろう.」



−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

tout haut:声に出して、口に出して、はっきりと、
率直に; dire tout haut ce que les autres pensent
tout bas / 他人が密かに考えていることを
    はっきり口に出して言う.
enfant d'amour:辞書不掲載語
enfant de l'amour:私生児;
再度 enfant d'amour:(推定)ててなしご;
情事の果ての子、男が逃げていった女の子供、
シングルマザーの子 
Épiphanie:(f) 公現祭、主の公現
en souvenir de ~:〜の思い出に、〜の記念に


−−−−−−−−−−−≪解釈≫−−−−−−−−−−−−−−−−

en souvenir de l'Enfant-Dieu:「神の子の思い出に」 では
   変です.ここは辞書以外の意味が発生していると
   思います.「神の子にあやかって」としてみまし
   た.時として辞書がカバーしきれない訳語が必要
   になることもあるでしょうね.サードもショート
   も取れない三遊間の球があるように.  


1285番:ペルル嬢(102)


    
ペルル嬢(102)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−−−【102】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Nous fûmes tellement stupéfaits que nous ne
pouvions dire un mot. Mon père se remit le
premier, et comme il était de grand cœur, et
d'âme un peu exaltée, il étendit la main sur
le toit de la voiture et il dit: ≪ Pauvre aban-
donné, tu seras des nôtres ! ≫ Et il ordonna à
mon frère Jacques de rouler devant nous notre
trouvaille.


−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 私たちはひと言も口がきけないほどあ然としていまし
た.先に父が冷静さを取り戻した.父は心根のやさしい
人でもあり、気性の激しい人だったので、馬車の屋根に
手を伸ばして言いました.「可哀そうに、捨て子じゃな
いか.よしお前は家族の一員にしてやろう!」そう言っ
て父は兄のジャックに私たちより先にこの張り出し物の
車を押すよう命じました.



−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

fûmes:(単純過去1複) < être
tellemen...que ~:〜なほど...だ.
stupéfait(e):(形) あ然とした、仰天した
pouvions:(半過去1複) < pouvoir
dire:(他) 言う、のべる
un mot:ひと言
se remit:(3単単純過去) < se remettre (pr)
premier(ière):(n) 最初の人(もの)、1番の人(もの)
   (品詞は名詞だがときに副詞的に訳す)
   tomber la tête la première / まっさかさまに落ちる
de cœur:(形句) やさしい
   être の属詞としても用いる;
Il est de grand cœur. / 彼は心がやさしい.
être de grand cœur:心が広い
être d'âme exaltée:興奮しやすい気質である
exalté(e):(形) 興奮した、高揚した
étendit:(3単単純過去) < étendre (他) 広げる、伸ばす
toit:(m) 屋根
pauvre: 可哀そうに
abandonné:捨て子じゃないか.
   (この時点では男の子か女の子かは不明なので
    女性形語尾はない)
tu seras des nôtres ! :家族の一員にしてやろう!
ordonna à ~ :〜に命じた; < ordonner (自) 命令する
   ordonner de + 不定詞:〜するよう命じる
rouler:(車を)押す
trouvaille:[トルヴァーユ](f) 発見、掘り出し物


1284番:ペルル嬢(101)


ペルル嬢(101)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−【101】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
On enleva ces linges avec soin, et comme
Baptiste approchait sa lanterne de la porte
de cette carriole qui ressemblait à une niche
roulante, on aperçut dedasns un petit enfant
qui dormait.


−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

用心しながら、毛布を取去って行きました.バチストが
カンテラをこの犬小屋にコロコロが付いたような二輪馬
車の扉に近づけると、その中に小さな子が眠っているの
に気がついたのでした.


−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

enleva:(3単単純過去) < enlever (他)
   [de から] 取除く、のける、
linge:[ランジュ] (m) 布類(ここでは毛布)
soin:(m) 入念さ、注意
avec soin:注意深く、気をつけて
Baptiste:[バティスト](発音注意: p は発音しない)
   【既出語】洗礼者の意味ですがここでは人名で、
   召使いのバチスト.探検隊の先頭をカンテラを
   持って歩いていた.
ついでに、この探検隊の構成員は:
バチスト、父、叔父のフランソワ、兄のジャック
とポ−ルと私の計6名.
approchait:(3単単純過去) < approcher (自) (de に)
   近づく 
lanterne:(f) ランタン、カンテラ、ランプ、角燈
carriole:(f) 幌付きの二輪荷馬車;(前回voiture を手押
   し車と訳しましたが誤訳であることがわかりまし
   たので訂正いたします.すみませんでした.)
ressemblait:(3単単純過去) < ressembler (自) (à に)
   似ている、
niche:(f) ❶犬小屋、❷壁龕
roulant(e):(形) 車輪のついた、回転コマのついた、
   足輪のついた、fauteuil roulante / 車いす
   table roulante / ワゴンテーブル
aperçut:(3単単純過去) < apercevoir (他) ❶目に入る
見える、ちらっと見る、❷認める、気づく
dedasns:中に、中で、その中に
   
  

1283番:ペルル嬢(100)


ペルル嬢(100)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−【100】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Mon père alla droit à lui  et le caressa.
Le chien lui lécha les mains; et on recon-
nut qu'il était attaché  à la roue d'une pe-
tite voiture, d'une sorte de voiture joujou
enveloppée tout entière dans trois ou quatre
couvertures de laine.


−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

父はまっすぐ犬のいるところまで行って、そいつを
撫でてやった.犬は父の左右の手をなめた.そのとき
この犬が小さな二輪馬車の車輪につながれていること
がわかった.小さくておもちゃのような車だった.そ
れは3枚乃至4枚のウール製の毛布で全体をくるんで
あった.

 
−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

lécha:(3単単純過去) < lécher (他) なめる;
   Le chien léche son maître. / 犬は主人をなめる.
reconnut:(3単単純過去) < reconnaître (他) わかる
   認知する、識別する
attaché:(p.passé) < attacher (他) 結び付ける、つなぐ
   くくる、縛る
roue:[ルー] (f) 車輪
voiture joujou:おもちゃの自動車
enveloppée:(p.passé) くるまれた; < envelopper (他)
envelopper (他):包む、包装する、くるむ
couverture:(f) 毛布、掛け布団
laine:(f) 羊毛、ウール、毛糸、 

1282番:ペルル嬢(99)


ペルル嬢(99)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−−−【99】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
En nous voyant approcher, le chien s'assit
sur son derrière. Il n'avait pas l'air méchant.
Il semblait plutôt content df'avoir réussi à at-
tirer des gens.


−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

犬は後半身を地に着けて坐ったまま、私たちが近づく
のを見ていました.犬に別段、意地悪いようなそぶり
はありませんでした.むしろ人間の引き寄せが成功し
たことに満足気のようでした.

 
−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

attirer:(他) 引き寄せる
derrière:(m)尻(=cul)
  s'asseoir sur le derrière / 尻をついて坐る
lion assis / 前足を立てて坐っているライオン
train de derrière / (四足獣の)後軀
assis sur le train de derrière /
  後軀をおろして坐っている


−−−−−−−−−−−≪解釈≫−−−−−−−−−−−−−−−−

En nous voyant approcher:

先生:これは何ですか?
生徒:はい、ジェロンディフです.
先生:nous は何ですか?
生徒:主語です.
先生:ブー.主語はこのフレーズのあとの
   le chien ですよ.
生徒:先生、思い出したことがあります.
先生:言ってみなさい.
生徒:voyant は感覚動詞なのでnous はたしかに目的格
補語ですが、同時にそのあとの不定詞の主語です.
「私たちが近づいて来るのを見て取ると、その犬
…は」となるのでした.
先生:ピンポ〜ン!


1281番:ペルル嬢(98)


ペルル嬢(98)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−−−【98】−−−−−−−−−−−−−−−−
   
 Mon oncle dit: ≪ C'est singulier, il n'avance
ni ne recule. J'ai bien envie de lui flanquer
un coup de fusil. ≫  
Mon père reprit d'une voix ferme: ≪ Non, il
faut le prendre. ≫
Alors mon frère, Jacques ajouta: ≪ Mais il
n'est pas seul. Il y a quelque chose à côté
de lui. ≫
Il y avait quelque chose derrière lui, en
effet, quelque chose de gris, d'impossible à
distinguer. On se remit en marche avec pré-
caution.



−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−

 叔父が言った.「おかしいぞ.こいつは前に来るでも
なく、あとずさりするでもないじゃないか.こいつに
一発見舞ってやりたい気分だ.」
 父が断固とした声で答えた.「いいや、こいつは連れ
て帰るべきだ.」
 すると兄のジャックが言い足した.「しかし、こいつ
1匹だけじゃないぞ.そばに何かがいるみたいだ.」
 事実、犬の後ろに何かがありました.何か灰色っぽい
ものだったが、はっきりとは見極めがっできなかった.
それで、用心しながら進み出たのでした. 


 
−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

singulier(ère):(形) 風変わりな、おかしな、変な
avance:(3単直現) < avancer (自) 前に出る、前進する
recule:(3単直現) < reculer (自) 後退する、
    後ずさりする
envie:(f) 切望、欲望、
flanquer:(他) (パンチなどを)くらわす、与える
coup:(m) 一撃、打撃、発射;
   tirer un coup de fusil / 銃を撃つ
fusil:[フュジ](m) 銃、小銃、鉄砲;
   coup de fusil / 銃撃、   
reprit:(3単単純過去) < reprendre (他)
reprendre (他):言葉を続ける、答える
ferme:(形) 断固とした、きっぱりした
voix ferme:断固とした声
il faut le prendre:そいつを連れて行くべきだ.
ajouta:(3単単純過去) 言い足した、付け加えた;
   < ajouter (自) 言い足す、付け加える
seul:(形) ひとりきりの
en effet:実際のところ
gris:(形) 灰色の
impossible à distinguer:見分けがつかない
se remit en marche:再び進み始めた
avec précaution:用心して

1280番:ペルル嬢(97)


ペルル嬢(97)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−−【97】−−−−−−−−−−−−−−−−−
   
 Je ne voyais rien, moi; alors, je rerjoignis
les autres, et je l'aperçus; il était effrayant
et fantastique à voir, ce chien, un gros chien
noir, un chien de berger à grands poils et à
la tête de loup, dressé sur ses quatre pattes,
tout au bout de la longue traînée de lumière
que faisait la lanterne sur la neige. Il ne
bougeait pas; il s'était tu; et il nous re-
gardait.



−−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−

 私は自分では何も見えなかった.それからみんなに
追いついたとき、私にも犬が見えた.その犬は見るも
おぞましく、怪奇な姿の太った黒い犬で、毛の長くふ
さふさした牧羊犬で、顔つきは狼さながら、雪の上を
照らす角燈が作っていた光の端に4本脚で立っていた.
そいつは動かなかった.黙り込んでいた.そして私た
ちをじっと見ていた.


 
−−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−−

rerjoignis:(1単単純過去) < rejoindre (他) 合流する、
(人と)再び一緒になる
aperçus:(1単単純過去) < apercevoir (他) ❶見える、
   目に入る、ちらっと見る;❷気づく
effrayant:(形) 恐ろしい、ぞっとするような、
  < effrayer (他) おびえさせる、こわがらせる
fantastique:(形) ❶空想上の、架空の;❷幻想的な、
   怪奇的な、
berger:(m) 羊の番犬、牧羊犬
poil:(m) 体毛、(動物の)毛
grands poils:(犬について) むく毛、
ふさふさとした長くたるんだ毛
loup:[ルー](m) オオカミ
dressé:(p.passé) < dresser (他) 立てる
patte:(f) (動物の)脚
traînée:(f) 細長い跡
lumière:(f) 光、明り、
lanterne:(f) 角燈
bougeait:(3単半過去) < bouger (自) 動く 
tu:(p.passé) < taire
se taire:(pr) 黙る、黙っている、黙り込む
il s'était tu:(3単複合過去) 彼は(それは)[犬]黙っていた.
吠えてはいなかった.
regardait:(3単半過去) < regarder (他) 見る、眺める
regarder=注意してみる
voir=見える、


1279番:ペルル嬢(96)

 
ペルル嬢(96)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−−−−【96】−−−−−−−−−−−−−−−−−
   
 Nous enfoncions jusqu'aux genoux dans cette
pâte molle et froide; et il fallait lever très
haut la jambe pour marcher. À mesure que
nous avancions, la voix du chien devenait plus
claire, plus forte.Mon oncle cria: ≪ Le voici ! ≫
On s'arrêta pour l'observer, comme on doit faire
en face d'un ennemi qu'on rencontre dans la nuit.



−−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−

 私たちは、このペースト状の冷たい沼を膝まで漬かっ
て進みました.歩くためには、脚をうんと高く上げなけ
ればなりませんでした.私たちが前進するにつれて、犬
の鳴き声はだんだんはっきり、大きくなりました.叔父
が叫びました.「ほら、あの犬だ!」 そいつをしっかり
見るため、みんなは立ち止まった.夜中に遭遇した敵と
対峙したかのような面持ちだった.


 
−−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−−

enfoncions:(半過去1複) < enfoncer (他) 打ち込む
   はまり込む
pâte:(f) ペースト状のもの
molle:(形女) 柔らかい、ふわふわした < mou (形男) 
froid(e):(形) 冷たい、寒い、
fallait:(3単半過去) < falloir
  il faut + 不定詞:〜しなければならない  
lever:(他) 上げる、持ち上げる
haut:(副) 高く
jambe:(f) 脚
marcher:(自) 歩く
à mesure que + 直説法:〜に応じて、〜につれて次第に
avancions:(1複半過去) < avancer (自) 前進する、
   進む
clair(e):(形) 明るく澄んだ、はっきりした、明白な
voix:(f) 声
fort(e):(形) 強い、(本文は声に掛かるので大きくと
   訳しましたが基本的訳語は「強い」という意味)
Le voici !: ほら、ここにあいつがいるぞ!
s'arrêta:(3単単純過去) (3単だがon はここではみんな全員)
observer:(他) しっかり見る、観察する
ennemi(e):(n) 敵、敵兵、敵軍
faire en face de:〜に向き合う

1278番:ペルル嬢(95)


ペルル嬢(95)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−−−−【95】−−−−−−−−−−−−−−−−−
   
 Et on se mit en route à travers ce rideau,
à travers cette tombée épaisse, continue, à tra-
vers cette mousse qui emplissait la nuit et
l'air, qui remuait, flottait, tombait et glaçait la
chair en fondant, la glaçait comme elle l'aurait
brûlée, par une douleur vive et rapide sur la
peau, à chaque toucher des petits flocons blancs.


−−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−

 そして私たちはこの雪の帳を横切る旅に出た.この濃
密な降りしきる雪を横切る旅に.まるでムースのような
濃厚な雪の中を横切りる旅に出たのだった.その雪は夜
空と空気を埋め尽くしていた.雪は揺らめき、翻り、落
ち、溶けると肉体を凍らせた.雪は肌の上を白い小さな
雪片に触れるたびに急激な痛みによって焼き焦がしてし
まうかのようだった.


 
−−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−−

on:ここでは「私たち」.なぜnousを使わないか?
  日本語でも、「わたし」とか「私たち」は言わない
  傾向があるのと同じ.でしゃばりを忌み嫌うのかも
  しれません.
rideau:(m) ❶カーテン、幕、帳、;❷蔽物、仕切り
本文では「雪のカーテン」、「雪の幕」「雪のベール」
se mettre en route:出発する、旅立つ
tombée:(f) 落ちること、落下;
   (雨などが)降ること;
   ここでは「降雪」(tombée de la neige)
épais(se):(形) 分厚い、濃密な、濃厚な 
continu(e):(形) 続く、連続する;
   ここでは「降りしきる」
mousse:(f) ❶苔、❷(ビールや石鹸などの)泡 
emplissait:(3単半過去) < emplir (他)[2群規則]
   ❶占める、埋め尽くす;❷[de で]一杯にする
   満たす
remuait:(3単半過去) < remuer (自) 動く、動き回る
   ゆれる;
< remuer (他) ❶移動する、運ぶ、❷かき回す、
   かきまぜる
flottait:(3単半過去) < flotter (自) 浮かぶ、漂う、
   (空中に)翻る、たなびく、漂う
glaçait:(3単半過去) <glacer (他) 凍らせる、冷やす
chair:(f) 肉体
en fondant:(ジェロンディフ) 溶けながら;<fondre (自)
   溶ける、融ける、液化する;
fondfant:(p.pré) < 2つの不定詞があるので注意.
   fonder (他) 設立する、根拠を持たせる
    p.passé = fondé (根拠がある)
fondre (自) 溶ける
      p.passé = fondu (溶けた)  
brûlé(e):(形、p.passé) ひりひりする、凍傷を負った
   < brûler (他) 焼く、燃やす、焦がす
    (自) 燃える、焦げる、ひりひりする、
    ひりひりと痛む
douleur:[ドゥルール](f) 苦痛、痛み
vif, vive:(形) 鋭い、鋭敏な、激しい、刺すような;
vive douleu / 激しい痛み
rapide:(形) 速い、すばやい、急速な、急な
peau:(f) 皮膚、肌、皮
flocon:(m) (羊毛、絹、木綿の)ふわふわした塊
(わた雪の)雪片、小片、
La neige tombait à gros flocons.
綿をちぎったような雪が降っていた.
toucher:(m) 触れること 
à chaque toucher des petits flocons blancs:
   白い小さな雪片に触れるたびに

1277番:ペルル嬢(94)


ペルル嬢(94)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−−−−【94】−−−−−−−−−−−−−−−−−
   
 Mais mon père, qui était bon, reprit: ≪ Il vaut
mieux l'aller chercher, ce pauvre animal qui crie
la faim. Il aboie au secours, ce misérable; il
appelle comme un homme en détresse. Allons-y.≫


−−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−

 だが心優しい父はこう言った:「腹を空かせて吠えて
いるのさ.連れてきてやったほうがいいぞ.この哀れな
身を助けてくれと言って吠えているのさ.あいつは困窮
に喘ぐ人間のように訴えかけているんだ.行ってやろう.

 
−−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−−

aboie:(直現3単)
   <aboyer [アブワィエ](自) (犬が)ほえる 
secours:(m) 救い、助け、救助
au secours:助けを求めて;
crier au secours / 救いを求めて叫ぶ
Au secours !:助けて!
misérable:(n) ❶みじめな人、哀れな人、❷貧民
appelle:(3単直現) < appeler (他) 呼ぶ
détresse:(f) 悲嘆、苦境、窮乏
en détresse:進退窮まった状態の
Allons-y:さあ行こう(On y va !)
Here we go !;Let's go there !
Gehen wir dort !.
我们去吧!


−−−−−−−−−−−−≪文法≫−−−−−−−−−−−−−−−−

aboyer (ほえる)活用
直説法現在
1単:aboie
2単:aboies
3単:aboie
1複:aboyons
2複:aboyez
3複:aboient


1276番:ペルル嬢(93)


ペルル嬢(93)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−−【93】−−−−−−−−−−−−−−−−−
   
 Mon oncle reprit: ≪ Tiens, revoilà le chien qui
hurle; je vas lui apprendre comment je tire, moi.
Ça sera toujours ça de gagné. ≫ 



−−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−

 叔父は言葉をついだ:「おや、またあの犬が吠えてい
やがる.あいつに私がいかに上手く狙撃するかを教えて
やろう.

 
−−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−−

reprit:(単純過去3単) < reprendre (他)
   言葉を続ける;reprendre la parole / 言葉をつぐ 
revoilà:(前)[話] またあそこに(ここに)(そこに)来た.
   Nous revoilà en France. /
   我々はまたフランにやって来た. 
hurle [ユルル]:(直現3単)
   < hurler [ユルレ] (自) (犬・狼が) 遠吠えする
vas:間違った活用だが、おそらく方言訛りなのだろう.
  尚、ここは<aller + 不定詞>で近接未来.
  近接未来だが、むしろ、<意志・意向>です. 
apprendre à qn à + 不定詞:誰々に〜を教える
apprendre à qn + que + 直説法:誰々に〜を知らせる
Je vais apprendre le chien comment je tire
   あの犬に私がいかに射撃が上手かを教えてやる.
tirer:(自/他) 撃つ、狙撃する.
C'est toujour ça de gegné:とにかくそれだけは得だ.
Ça sera toujours ça de gagné:
   とにかくそれだけは得させてもらおう.
   訳本の相当部は「そいのくらいしないと
   腹の虫がおさまらないや」(岩波文庫)



1275番:ペルル嬢(92)

 
ペルル嬢(92)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−−【92】−−−−−−−−−−−−−−−−−
   
 Cétait sinistre de voir la plaine, ou, plutôt, de
la sentir devant soi, car on ne las voyait pas;
on ne voyait qu'un voile de neige sans fin, en
haut, en bas, en face, à droite, à gauche, partout.


−−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−

 平原を見るのは不吉でした.あるいは平原を眼前にし
て不吉を感じたというべきか.というのは平原そのもの
が見えたわけではなかったからだ;上下にも前も左右も
どこもかしこも、ただ果てしない雪のベールだけが見え
ていたのだった.

 
−−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

sinistre:(形) 不吉な、
   présage sinistre / 不吉な前兆 
plaine:(f) 平原、平野、広大な野原、
Vaste étendue de pays plat
voile:(m) ベール、覆い 
neige:(f) 雪
sans fin:果てしない
en haut, en bas, en face, à droite, à gauche, partou:
   上に下に前に右に左に、至る所に


1274番:ペルル嬢(91)


ペルル嬢(91)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−−【91】−−−−−−−−−−−−−−−−−
   
 J'entendis qu'on ouvrait la porte sur la plaine;
puis mon oncle se mit à jurer: ≪ Nom d'un nom,
il est reparti ! Si j'aperçois seulement son ombre,
je ne le rate pas, ce c... -là. ≫


−−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−

 平原への扉の開く音がしました.それから叔父が罵り
始めました.「畜生め.また行ってしまいやがった.たと
え影でも見つけたら、のがすものか.」

 
−−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

plaine:(f) 平原、平野
creusé:(p.passé) 城壁を穿って作られた
  とき:接続法
jurer:(他)(自) 誓う、断言する、ののしる
Nom d'un nom:畜生め
rate:(1単直現) < rater (他) ❶(乗り物に)乗りそこなう
   ❷(人に)会いそこなう;❸(〜に)失敗する、
   ❹(機会を)つかまえそこなう;しくじる;
   ➎打ちそこなう、的を外す

1273番:ペルル嬢(90)

 
ペルル嬢(90)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−−−−【90】−−−−−−−−−−−−−−−
   
 Quand on commença à descendre par l'escalier
tournant creusé dans la murailler, j'eus peur,
vraiment. Il me sembla qu'on marchait derrière
moi; qu'on allait me saisir par les épaules et
m'emporter; et j'eus envie de retourner; mais
comme il fallait retraverser tout le jardin, je
n'osai pas.


−−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−

 城壁の中を穿つようにして作られた螺旋階段を降り始
めたときは、実にぞっとしました.私は誰かが背後から、
つけて来ているんじゃないかと疑心暗鬼になっていまし
た.今にも誰かが私の両肩を引っ掴んで連れて行こうと
しちぇいるんじゃないかと震えていました.かと言って
もう一度ひとりで庭を横切って家に戻る勇気もありませ
んでした.


 
−−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−

creusé:(p.passé) 城壁を穿って作られた
    <creuser (他) ❶掘る、穿つ、
    ❷窪ませる
muraille:[ミュラーユ](f) 城壁、外壁
eus:(1単単純過去) < avoir
peur:(f) ❶恐れ、恐怖; ❷心配、不安
  avoir peur / 恐怖を感じる、恐い
vraiment:(副) 実に
Il me sembla que ~:私には〜と思われた (3単半過去)
que以下は確実性が高いとき:直説法または条件法
低いとき:接続法

1272番:ペルル嬢(89)


ペルル嬢(89)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−−【89】−−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Elle tombait si épaisse, la neige, qu'on y voyait
tout juste à dix pas. Mais la lanterne jetait une
grande clarté devant nous.


−−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−

降る雪はあまりにも濃くて、見えたのはわずか10歩先
までだった. しかし角燈は私たちの先を大きく明るく
照らしてくれた.

 
−−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

épais(se):(形) ❶部厚い、mur épais / 厚い壁
épais de... / ...の厚さの
   mur épais de trente centimètres 厚さ30センチの壁
   ❷濃厚な、密な、濃い;
   brouillard épais / 濃霧 
lanterne:(f) ランタン、カンテラ、角燈、
   lanterne sourde / 龕燈


1271番:ペルル嬢(88)


ペルル嬢(88)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant



−−−−−−−−−−−【88】−−−−−−−−−−−−−−−−−
   
La neige s'était remise à tomber depuis une
heure; et les arbres en étaient chargés. les
sapins pliaient sous ce lourd vêtement livide,
pareils à des pyramides blanches, à d'énormes
pains de sucre; et on apercevait à peine, à
travers le rideau gris des flocons menus et
pressés, les arbustes plus légers, tout pâles dans
l'ombre.


−−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−

1時間前からまた雪が降り始めました.そうして木々は
雪を積もらせていたのでした.もみの木はこの重たい
鉛色の雪の衣服をまとい、その下でたわんでいました.
それはまるで白いピラミッドでした.あるいは巨大な砂
糖の塊のようでした.そして細かく圧搾された雪の小片
で出来た灰色の煙幕の向こうには、樅の木よりも軽く雪
を受けた灌木が日陰で青白くたたずむのがかろうじて見
えていた.


 
−−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

sapins:(m) モミ(樅)
pliaient:(3複半過去) < plier (他) 祈る
  曲げる、たわめる
  < plier (自) 曲がる、たわむ
lourd(e):(形) 重たい
vêtement:(m) 上着、
単数=上着、複数=衣服
livide:(形) 鉛色の、青ざめた、蒼白な
(空などが)どんより暗い
pareil、pareille:(形) (à に)よく似た、同様の、同じ
pain:(m) ❶パン; ❷(パンのような)塊
   ❶の意味で訳すとおかしくなります.本文は❷の
   塊という意味になります.つまり「巨大な砂糖の
   かたまり」のようだ、と言っています.「巨大な
   砂糖のパン」のようだ、ではわけがわからない.
flocon:(m) ❶(羊毛・絹・木綿の)ふわふわした塊;
   ❷(わた雪の)雪片、小片、
à peine:❶ほとんど〜ない、せいぜい〜だ;
❷かろうじて〜、やっと〜したばかり
rideau (複rideaux):(m) カーテン、窓掛け、幕
menu(e):(形) (物が)細かい、小さい、(声が)か細い
   (人が)やせて小さい、(出費が)こまごました
pressé:(形) ❶急いでいる、急を要する; ❷圧搾した、
   搾った、
arbuste:[アルビュスト](m) 《植》小低木、小灌木
léger, légère:(形) ❶軽い;❷ふんわりした、薄い
pâle:(形) ❶青白い、青ざめた、❷(色の)うすい
ombre:(f) ❶陰、日陰、物陰;❷影
Il fait vingt-cinq degrés à l'ombre.
日陰で25度ある.

1270番:ペルル嬢(87)


ペルル嬢(87)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−−【87】−−−−−−−−−−−−−−−−−
   
 Elle partit aussitôt. Mon père et mon oncle
marchaient devant, avec Baptiste, qui portait une
lanterne. Mes frères Jacques et Paul suivaient, et
je venais derrière, malgré les supplications de ma
mère, qui demeurait avec sa sœur et mes cousines
sur le seuil de la maison.



−−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−

 すぐに探検隊は出発しました.父と叔父が前を歩きま
した.バチストも一緒にいました.彼はカンテラを携え
ていました.そのあとを兄のジャックとポールが従いま
した.母が行かないよう懇願したにもかかわらず、私は
しんがりを勤めた.母は姉と従姉妹たちと一緒に玄関先
からは出なかった.


 
−−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−

elle::l'expédition (探検チーム) のこと.母ではありま
   せん.
supplications:[スュプリカスィヨン](f) 嘆願、哀願
demeurait:(3単半過去) < demeurer (自)留まる
   動かずにいる、残る
seuil:(m) 敷居、入口


1269番:ペルル嬢(86)


ペルル嬢(86)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


−−−−−−−−−−−【86】−−−−−−−−−−−−−−−−−
   
Mes frères, âgés de dix- huit et de vingt ans,
courturent chercher lerurs fusils; et comme on
ne faisait guère attention à moi, je m' emparai
d'une carabine de jardin et je me disposai aussi
à accompagner l'expédition .


−−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−

18歳と20歳になる兄たちは、各々自分の銃を取りに走
った.そして誰も殆ど私には目もくれなかったものだか
ら、私は射撃練習用の銃をひっつかんできて、探検チー
ムに参加しようとしました.
 

 
−−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−−

s'emparai:< s'emparer [de を] 奪う、横取りする
    占領する、❷すばやくつかむ、握りしめる
carabine:(f) 軽小銃、騎兵銃、カービン銃
carabine de jardin:(辞書不掲載につき不明) 訳本側は
  「空気銃」となっている.そこで空気銃を和仏で
  逆引きしてみら、空気銃:fusil à air comprimé (m) 
一方、仏和のcarabine の追い込みにある「空気銃」
はcarabine à air comprimé なのでcarabine de jardin
は依然、謎のまま.まさか危険な銃を庭に置いて
いたりはすまい.それとも庭に鍵をかけた倉庫が
あって、そこに保管してあったのか?その場合、
jardin には定冠詞がついてcarabine du jardin のはず.
これなら「庭から銃をひっつかんできた」しかし
それは違うはず.ここのde は「用途」のde で、
de jardin は「庭園用の」だと思います.庭園で
使用する射撃練習用の銃なのかも知れない.尚
kindle 版も紙版(Collection Guy de Maupassant 17)
もcarabine de jardin なので本側のミスでもなさそ
うです.さてどう訳すか.無責任なことはしたく
ないので、今自分が一番正解だと思う訳をつけて
おきます.「射撃練習銃」  
me disposai:(1単半過去) < se disposer
se disposer à + 不定詞:まさに〜しようとする、
accompagner:(他) (人と)一緒に行く、(の)お供をする
   (に)付き添う、(を)送っていく
expédition:(f) 探検、探検隊、遠征チーム.

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はじめまして.ゴタぴょんと申します.通訳ガイド(英語)をしております.というかしていました.コロナの影響で現在仕事はありません.毎日ヒマなので、語学学習をしております.学習したノートを公開しますので、どうぞ、ご一緒に!
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