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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2017年02月20日

プルシアンブルーの肖像

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プルシアンブルーの肖像』六曲目、「プルシアンブルーの肖像」です。

安全地帯の十一枚目のシングルであり、この映画のテーマ曲でもあります。

この曲はなんといっても「はなさない」「はなせない」の連呼が印象的です。印象が強すぎてあまり他の部分を一聴して覚えられないくらいです(笑)。歌詞がひらがなであるのには、もちろん意味があるでしょう。

普通に考えれば「離さない」ですよね。「話さない」ではないでしょう。秋人が言葉を失ったから「話さない」では、「悲しいあなたがきれいで」の意味がなくなります。しかし、「話せない」のほうは意味が通ります。「願いはもう捨てて」ほしいのは、もうそろそろ自分の口から想いを伝えてほしいという願いには(臆病で)応えられないからだ、でも、信じて、「そのままで」待っていてほしい「迷い」なんて不要なんだ……(何と自分勝手な!)と読むことができます。こう読むと、「離せない」ではいまいち意味が通りにくいことにも気づいてしまいます。もちろん、抱きしめた腕を解くことができない、どうかこのまま時よ止まっておくれ的な意味であるという可能性もあるのですが、映画の秋人のおそろしく自分勝手な臆病さを表現していてほしいというわたくしの願いで、「話せない」であってほしいと思えるのです。

実は、この「はな」すが「離」す「話」すの掛詞であるというアイデア自体は、わたくしが思いついたものではありません。ネットのどこかで読んだものです。ソースを確認してリンクさせて頂こうと思ったのですが、わたくしの検索スキルではもう確認できなくなってしまっていました……申し訳ありません。ちなみに解釈のほうは、例によってわたくしのオリジナル妄想です(笑)。

さらに、恋物語やその一シーンを描くのでなく、いま、この瞬間の、「離したくない」「話せない」気持ちだけを描く、という方針に切り替えた、もしくはこういう方針の詞もラインナップに加えられるようになった、ということが、この曲ではっきりします。「好きさ」「じれったい」の生まれる土壌が、ここで醸成されたということができるでしょう。

さて、アレンジにも言及しておきたいです。玉置さん風にいえば「エレキギターバリバリ」の曲なんですが、ギターの音がとても抑えて収録されているので、あんまりバリバリには聴こえません。これは武沢さんによるものだと思うのですが、当時としてはかなり激しいディストーションサウンドなんです。しかし、抑えられたミックスのおかげで、90年代の高校生ギタリストが買ったばかりのマルチエフェクターでHIDEさんを目指して作った、歪みすぎの抜けが悪いドンシャリサウンドのように聴こえてします(ズバリ、当時のアチキの音です笑)。ひらたくいえば、現代的なギターサウンドではありません。この曲以外ではとても独特なサウンドを駆使していますので、時代を超越しており少しも古臭く聴こえないのですが、この曲ではオーソドックスなディストーションサウンドを作ったがために、古く聴こえてしまうわけです。武沢さんのサウンドメイキングがいかにものすごいレベルにあったかを、逆に示す曲になっているといえるかもしれません。

2010年のツアーでは、目の前で大型キャビネットをガッツリ鳴らされたので、かなり驚きました。こ!これは!オールドのチューブアンプ直の音だ!と思ったのですが、武沢さんの足元には今も昔もペダルがあって、Bメロからサビに移る瞬間にブーストをするのも変わりません。ネットで拾った情報ではVOXの、誰でも買えるようなマルチエフェクターをツアーでは使っているそうですが、とても信じられません。現代的ディストーションサウンドに生まれ変わった「プルシアンブルーの肖像」は、現代ロックファンの心を震わせるに十分のド迫力ギター・チューンになっていました。『安全地帯HITS』に収録されているバージョンが一番近かったでしょうか。ライブアルバムだと、どうしてもホール全体での鳴りになってしまっていて、あのガッツリ感が感じられにくいように思われます。

ディストーションギターのことにばかり言及してしまいましたが、クリーントーンのギターもけっこう存在感を発揮しています。Bメロで「こわくないよ(オーン、オーン、オーン)」と鳴っている音は、シンセではなくギターでしょう。安全地帯の曲を聴き込んできた人でないと、シンセだと判断するかもしれません。ふふふ、このわたしは騙されないぞ〜(バカ)。これが矢萩さんででしょう。そして、「こわくないよ(ツクツクツクツクツクツクツクツク〜)」と鳴っている音が武沢さんだと思われます。どっちもいい音ですねえ。かなり大音量のアレンジにもかかわらず、ハッキリ聴こえます。80年代歌謡曲のバックで弾いていたスタジオミュージシャンにはごく当然のスキルだったようですけれども、のちのバンドブーム以降では、こういうキレイなクリーントーンはあまり聴けなくなった気がします。バンドブームギタリストさんにとっては、クリーントーンとは、単に歪みエフェクトを使わない、というだけのことだったのでしょう(スバリ、アチキです笑)。

ギターを抑えることを含む、なんらかのミックス思想にもとづいているのでしょうけども、ベースはかなり大きく聴こえますね。Aメロではとりわけ大きく聴こえます。Bメロ以降は単に八分で刻んでいて、かつ他の楽器もかなり音量が大きいですからね。玉置さんもかなり叫びぎみですし。

ドラムは、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、すべてパターンを変えています。Aメロはベースとほぼリズムを合わせて、かなり重厚感を出しています。Bメロはとくに言及することもない八分(ベースと合わせるので当たり前です)、サビと間奏は驚異の八分バスドラ踏みっぱなし!ベースと揃うだけでなく、ボーカルと合わせているのです。そう、「はなせない」は何のひねりもない八分刻みのリズムなのです。「は」「な」「せ」「ない」にすべてドラム、ベースが同時に鳴っている、ということです。これが単調に聴こえないのがまた凄いですね。これは……と思ったのですが、この曲に似たアレンジパターンのハードロックの曲を、思いつかないということに気がつきました。う、うお?

そんなバカな?わたくしハードロック馬鹿にはわりと自信があるのですが、こういう曲が好きだったらあのバンドも聴いてみるといいかもよ?といえるバンドがまるきり思いつかない曲なのです。もしや、この曲は新しいパターンのハードロックなのでは?うーむ……自信があるだけで、実は全然ハードロックに詳しくないだけであるのかもしれません。もし、この曲に似たアレンジパターンのハードロック楽曲をご存知の方がいたら、わたくしにぜひ教えてください。

残念ながら、当の安全地帯にも類似の曲はないように思われます。つまり「I Love Youからはじめよう」からみた「情熱」のような、もうひとつの「プルシアンブルーの肖像」が思い当たらないのです。これは何を意味しているのでしょうか……。飽きた?(笑)そうではないとしたら?メンバーがこの曲を気に入らず、もう二度とこういうアレンジでは曲を作りたくない?そのわりにはライブでも積極的に演奏しているように思われます。そうであるならば……この曲を嫌いではなく、こういうアレンジをするにもやぶさかでない、とすれば、こういうアレンジにふさわしい曲が再び現れなかった、ということなのでしょう。

ハードロック的な意味でのこれほどヘヴィな楽曲は、これ以降の安全地帯には見当たらないのです。安全地帯はハードロックバンドだ、と言い続けてきた当ブログの方針も、ここに転換点をはっきり見いださなくてはならないでしょう。正確には、安全地帯のロックが進化していき、他のハードロック勢とは分離していった、ということだとわたくしは考えています。他のハードロック勢の音楽がハードロックと呼ばれ続けていたのは、単に当時は大勢を占めていたというだけのことなのでしょう。事実、この曲当時から約20年が経過した現在、当時のハードロックと呼ばれた音楽を演奏するバンドはもうほとんどいません。いたとしても、懐古的な指向でわざとそうしているだけでしょうから、ある意味伝統芸能集団に近いといえるでしょう。

安全地帯はそうした伝統芸能集団ではなく、進化し続けるトップミュージシャンであることを選んだのでしょう。そのことは、わたくしのような、懐古ハードロックマニアにとっては、この「プルシアンブルーの肖像」を望み続ける気持ちを諦めなくてはならないということを意味します。そんな切なくも激しく美しい「肖像」を、20年も前からわたくしは壁の特別な位置に飾り、ときおり見上げてはうっとりと見続けているのです。

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2017年02月17日

ゆびきり

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プルシアンブルーの肖像』五曲目、「ゆびきり」です。

童謡のような、やさしい曲です。この曲が一番好きという声をよく耳にする名曲です。

いきなり余談ですが、わたくしこのアルバムを録音したテープを、同級生に貸したことがございます。パナソニックのいまはなきハイポジションテープで、ご丁寧にインスタント・レタリングまでしておいたやつです。時代ですねえ。余談のなかにさらに余談ですが、そのテープはナショナルの電器屋さんでしか手に入りませんでしたが、値段の割にやたらと音がよかったので、TSUTAYAとかで売っているTDKとかマクセルとかには見向きもせずに愛用していたのです。で、その珍しいテープを返してもらうときなんですが、

「ゆびきりが一番好き」「そう、いい歌だよね」「でもこれって、ロリコンの歌だよね」「え?」「だって赤い服とか小さな靴とか」「ああー……」

なんという暴言!わたくしが少なからぬ財産や時間や労力を投入した安全地帯の精神世界を「ロリコン」よばわりするとは!いやー、まあー、財産とはパナソニックのテープ代金280円とかですし、時間や労力といってもCDからテープに録音する時間とかその間レタリングにいそしんでいたこととかですが、それにしてもロリコンはないだろうロリコンは(笑)。

歌詞をただ虚心にみつめれば、晴れた日に、麦わら帽子かなにかを被った小さな女の子が広い野原で夕暮れ以降まで遊んでいるのを、青年〜オジサン〜もしかしたらおじいさんが、目を細めてみている、そして家に帰る前にまた会おうねと言ってゆびきりをする、という内容なんです。問題は、その青年〜オジサン〜もしかしたらおじいさん、の性癖がロリコンに該当するか否かです。いやー、この歌詞だけで特定・認定するのはきわめて困難と言わざるをえません。よって無罪!さきの暴言を吐いた者への処分は追って通知があります(笑)。

うーん、「中年男性が女子中学生に道を尋ねる事案が発生しました」などと警察がネットで発表するようなご時世では、無事ではすまない情景を描いた歌である疑いもないではありません。しかし、これはこの歌の世界よりも、どちらかといえばこのご時世のほうがクレイジーなのではないかと検討してみたくなります。みんなが快適な世の中を目指しているはずなのに、じつに不思議なことです。松井さんも、自分の書いた詞がよもやロリコン呼ばわりされることがあろうとは、1980年代中盤には思いもよらなかったことでしょう。

ひさしぶりに『Friend』を紐解いてみますと、「はじめて詩を書いたときのことを思い出して」お書きになったそうです。ああ、なんという純粋さ……そしてなんというロマンチストっぷり!うっとりです。それなのに、わたくしが真似をすると、事案発生などと報じられかねません。なんだか不公平な話です(笑)。

さて、肝心の曲ですがエレクトリック・ピアノによるアルペジオの伴奏に、ベース、ハーモニカが絡んでゆき、途中でストリングスがエレクトリック・ピアノと交代する、という基本構成になっています。ベースは……ちょっとわたくしの耳では判じかねますが、普通のベースの音ではないように聴こえます。六土さんがフレットレス・ベースをお使いになったか、もしくはストリングス担当の加藤グループさんに所属するベーシストさんがコントラバスをお弾きになったかだと思います。そして、これはおそらく初の試みでしょうけども、少年合唱団のコーラスが入ります。クレジットを見ると「森の木児童合唱団」とありますね。これはかなりの数のレコードを出している超有力合唱団です。現在は「ことのみ児童合唱団」になっているようです。この曲を聴いていても「巧い!」と思いますものね。玉置さんも、おそらくこの曲をきっかけにして、その後「夢のポケット」「このゆびとまれ」等の少年合唱団をコーラスに用いる曲をお作りになるようになったのではないでしょうか。

何とこの曲、ライブバージョンがありますよね。『安全地帯LIVE』のラスト、「ありがとう!また会おうね!」というセリフが入る箇所は明らかにレコードをかけてますが、その前の箇所は、中西さんがお弾きになったのでしょうか、エレクトリックピアノの伴奏で、コーラスもメンバーが担当して演奏しています。これは目の前で聴きたかったですね……今となっては仕方がないのでDVDをみて、ヘッドホンの大音量で浸るしかありません(笑)。DVDでは、お客さんが武道館から出てゆく映像が重ねられているんですが、これがまたいいんですね。みんな、心から満足した感じがよくわかります。ライブの終わりに、この曲を背中に武道館を去るなどという贅沢をしてみたい気もしますが、おそらく、もったいなくて演奏終了まで居座りたい気持ちが勝るでしょう。ああ、もちろん、実際のライブでも演奏が終わってから客電が点灯して、安全に順番にみなさんお帰りになったことと思います。ビデオの編集でこの曲が流れているうちに観客が退場してゆくという演出にしただけのことなのでしょう。

「さよなら さよなら また逢える」

わたくしはいつでも、きっとこれが今生の別れとなるだろうと思われるときにはなおさら、「また会える」といってお別れします。それは紛れもなく、この曲の影響なのです。

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2017年02月15日

時計塔のテーマ

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プルシアンブルーの肖像』四曲目、「時計塔のテーマ」です。安全地帯のプロデューサーである星勝さんの曲ですね。

もともと星さんは、編曲を担当することになったら、すべての音を書き込まないと気が済まない性格の人のようです。ほとんど星さんの作曲といったほうがいいんじゃないかというくらいの曲でさえ、クレジットは「編曲」であるようで、なんだかソンしているような気がしなくもありません。でも「編曲」というクレジットが存在するからにはそれくらいして当たり前だよね〜というアレンジャーやプロデューサーの誇りみたいなものが感じられて、わたくしはそんな星さんに憧れる次第であります。小椋さんとか来生さんとかの曲を聴いていても、ああ、これ星さんの編曲だなってわかるじゃないですか。そこがたまらないですね。

さて、肝心の曲のほうですが、

これは、怖い曲です。時計塔が因縁の場所なのですから、怖い曲になるのは当たり前なんですけども、それにしてもかなり怖いです。

冒頭、メインテーマ……といってもいでしょう、のフレーズが、ボワボワした音色で奏でられ、その後ストリングス系の音色に引き継がれるのですが、ずっと「キュイイイイ…キュイイイイ…」という冷たい風のような音と、水が流れるような音が背景に流れているのです。なんで時計塔に水が流れているんだよ!と突っ込みたくなるんですが、それはアレです、「激しい雨」(「プルシアンブルーの肖像」より)が降っているわけですから。映画本編では、「激しい雨」では説明がつかないくらいの量で水が使われているのですが、あの時計塔にはかなりの量の水が備蓄されており、さまざまな用途(おもに怪奇現象演出)に用いられていたと考えるべきでしょう。あ、ふざけているんじゃないんですよ。ほんとうに怪奇現象を演出していたのです。詳しくはノベライズ本で。

そして「ジャン!ジャジャジャジャン!」とかなり強い音で驚かす箇所があります。これは、だいぶ昔のMIDIシーケンサーの知識になりますが「オーケストラ・ヒット」という音色でしょうね。わたくしがMIDIをいじくり回していたのは90年代以降ですが、すでに小さなシーケンサーにもこの音色は存在していたので、おそらく80年代にもあったのでしょう。TMネットワークとかで小室さんもこういう音を出していましたね。そうした最新鋭の機材を、川島さんはいち早く使いこなしていた、ということなのでしょう。川島さんや小室さんがこういうふうに使っていてくれなければ、90年代にわたくしがこういう音を使おうという発想を持てたはずがないのです。安全地帯の「最新鋭」(玉置さん談)は、こういう箇所にわざとらしくなく、違和感なく使われているので、安全地帯の音ってナウいね〜!とかいう人は私の周囲では皆無でしたが、実は最もナウい(そろそろ体がかゆくなってきました)音だったのです。

さて、時計塔が鳴るかのような激しくも短いピアノによるリード部を終えた後、また冒頭のメインテーマに戻ります。こういうところ、なんとなく歌謡曲やロックの感じで、星さんのこだわりが感じられるようでうれしいすよね。そして、風の音、水が流れる音を残して、時計塔が遠ざかるカメラワークのようなイメージで、曲は終わります。

怖い場所のテーマなのだから、怖い曲にするのは当たり前です。星さんは見事に怖い曲をお作りになったわけです。安全地帯のアルバム、という位置づけでなかったからこそ、遊び的な感覚で星さんの曲でも入れてみようかということになった……?うーん、そういう側面もあるのかもしれませんね。でも、わたくしには安全地帯が星さんを頼った、もしくは星さんを中心とした作曲チームだと自分たちを見なしていた、だから、星さんにお願いした、とみるほうが自然であるように思われます。矢萩さんが一曲で、六土さんが一曲で(これはかなり珍しいことです。当時は、矢萩さんによる「一秒一夜」以外は、すべて玉置さんの作曲だったからです)、じゃあもう一曲だね、豊も一曲書く?いやーちょっと忙しいかな〜じゃあ、星さん書いてよ!ええー僕かい?うん、それもいいかもね、いいよー!とか、そんな感じで決まったのではないでしょうか。あ、いつもの妄想で恐縮ですが(笑)。

ともあれ、この「時計塔のテーマ」は、星さんの作曲クレジットが記されているとても珍しい曲(安全地帯では唯一ですね)とあいなったわけです。うーん、なんて違和感がないんだ。安全地帯とほぼ一体化したかのような曲です。さすがです。というよりも、普段から安全地帯の曲にどれだけ星さんが貢献しているのかがわかるかのような、凄まじいアレンジャー魂、プロデューサー魂を感じることのできる曲といえるでしょう。

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2017年02月09日

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プルシアンブルーの肖像』三曲目、「夢」です。

これは珍しい三拍子のバラードです。玉置さんの曲で三拍子って……「夢のポケット」「氷点」「瞳の中の虹」くらいしかパッと思いつかないんですが……八分の六拍子だろそれは、約分するなというものも混じっていそうですが、それはご勘弁ください(笑)。

安全地帯の曲としてリリースされたもので、もしかして初の三拍子なのではないでしょうか。間違っていたら赤っ恥ですが(笑)。わたくしが言いたいのは、冬花ちゃんが踊るためのワルツ曲を作った、それがインストゥルメンタルの「冬花」だった、その曲を思いのほかメンバーやスタッフが気に入り、「冬花」に歌詞をつけて玉置さんが歌ったのがこの「夢」なのではないか……と、制作秘話みたいなものが妄想できる、ということなんです。

そして、この曲によって、三拍子の曲もいいなあ、たまには作ろうかね、と玉置さんが思って、のちに「夢のポケット」や「氷点」などが生まれたのではないか……と、妄想に妄想を重ねて、もはや遊んでいます(笑)。

さて、この「夢」、「冬花」の歌入り版なんですが、よく聴いてみると、若干の違いがあるように思われます。

すぐに気づくことですが、間奏の……あれはハーモニカでしょうかね、「冬花」にはあったソロがありません。あのハーモニカによってだいぶ牧歌的な感じになっており、少女が踊っていても不思議はない感じになっていたのですが、それに対し「夢」は、物静かな青年がひとり物思いにふけっている感じです。

ハーモニカだけの効用ではないでしょう。「冬花」にあったシンバル……タンバリンを太ももで叩いているときのような音ですが……によるリズムが、この「夢」には入っていません。少なくとも、玉置さんの歌が入る以上、これらの音は不要と判断なさったのでしょう。わたくしも不要だと思います。もちろん、レコーディングのときに仮にわたくしがスタッフだったとしても、自分からそんなこと進言できるはずがありませんけども。レコーディングされたものをあとから聴くからわかるのであって、レコーディングの時点でそんなことわかるはずがありません。これはほんとうにプロとアマの差でしょう。

玉置さんの歌だけに集中させるかのごとく、クリーントーンのギター、ベース、ストリングスの音だけで伴奏が行われているように思われます。なんとドラムもないのです。田中さんはヒマだったことでしょう(笑)。このギターのクリーントーンは、矢萩さんじゃないかな、とわたくしは思っているんですが、あまり自信はありません。前奏に、アコースティックギターもかすかに聴こえますので、これが武沢さんなんじゃないかな……。ハーモニカのなくなった間奏でよく聴こえますね、アコースティックギター。前奏のアコースティックギターと、音の違いはわたくしにはほとんどわかりませんが、前奏だけやけに弦をこする音が聴こえますね。なぜでしょう……ここだけ本当の生アコギで弾いてホール前でマイク・オンにした……?ちょっと謎です。

歌詞なんですが、これがまた映画のイメージそのままですよ。この映画の原案が松井さんですから、松井さんがこの映画にどのようなイメージをもっていたのか、歌詞のほうでドンピシャに表現されているとわたくしは思っております。

歌うのが玉置さんですから余計にそう感じるんですが、この曲はインスト曲「冬花」に対する「秋人」なんだと思います。そう、タイトルは「夢」なんですが、わたくしはこの曲の本来のタイトルは「秋人」だと思っております。

磯崎亜希子ちゃんと高橋かおりちゃんは、ちっとも似ていないのですが、原作では、カズミと冬花は似ていることになっています。このキャスティングが映画を分かりづらいものにし、秋人を単なる変質者的に描いてしまうことになったわけです。磯崎亜希子ちゃんと高橋かおりちゃんというスター少女を二人も迎えることができたので、「面影」なんて構想は吹っ飛んだのでしょう(笑)。違うんだ!秋人が冬花に近づいたのは、カズミの面影があったからなんだ!美少女だからとかじゃないんだ!ましてやいじめられて心が弱ったところを狙ったわけでもないんだ!わかってくれ!……いや、わたくし秋人の身内でも何でもないですけど(笑)、これじゃ秋人(と原作者)があんまりかわいそうです。この意図をはっきりさせるためには、多少無理があったとしても一人二役にするべきでした。磯崎亜希子ちゃんがいいか高橋かおりちゃんがいいかは、好みの問題でしょう。

カズミと冬花がよく似ているからこそ、「今日までのさみしさ」は、あの惨劇のあと心を閉ざしてきた十五年間のさみしさであり、「夢なんだと思って」は、カズミの生まれ変わりかと見まごう少女に出会った喜びであり、「あなたの名をいいかけ」は、カズミ、といいそうになって、いやあれはカズミじゃないんだ、と気がつき泣けてくる……そんな秋人の心情を表現していると、読み取れるわけです。

こんな構想が、スター少女二人の豪華キャスティングによって吹っ飛びましたよ!多賀さん!どうしてくれるんですか!(笑)

実際には、多賀さんのせいじゃないかもしれません。現場にはイロイロな力学が働いているものでしょう。監督という立場は大変ですねえ(無責任きわまりないヤジウマ)。

そんなこんなで、この詞が、映像によってわかりにくくなってしまった原作の世界をよく表現しているようにわたくしには思われるのです。

え?そんな気は全然なかったんだけど……浩二がこの曲を歌ってみたくなったから詞を書いてくれって突然言い出したから、映画のこととかあんまり考える余裕もなくサラサラ書いたたけなんだけど……とかだったら、いつものことながらすべて崩壊する妄想です。多賀さん、申し訳ありませんでしたああああ!(アホ)

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2017年02月07日

旧校舎のテーマ

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プルシアンブルーの肖像』二曲目、「旧校舎のテーマ」です。

矢萩さんの作曲で、七分以上もある大作ですね。

バスドラの連打でリズムをとり、この……なんと呼ぶかわからない音色なんですが、シンセサイザーで鳴らした音色で、メインテーマの主旋律を奏でているところから曲は始まります。時折目立って聴こえるベースの音にドキリとさせられますが、ああ、ベースかなり大きく入っているな、とそれで気づかされます。フレーズに切れ目に聴こえるストリングス系の音にもヒヤリとさせられます。いや、怖い怖い。

スローなテンポなのに細かく連打されるバスドラ、不穏な音色のメインテーマのメロディー、ときおり存在感を際立たせるベースで、夕暮れどきに逆光で黒く浮かび上がる「旧校舎」をイメージさせるに十分な怖さです(笑)。

さて、曲は第二部とも呼ぶべき不穏さをより盛り上げたパートに移ります。メインテーマを発展させたかのようなやや高音のメロディーが奏でられ、続いて旧式の時計塔が時を知らせる音を模したような音色が、かなりの大音量で鳴らされます。遠くで大きな物が倒れたかのような音がそこかしこに挿入され、旧校舎のなかで起こる惨劇をリアルタイムで体験しているような気分にさせられます。この怖さを演出している張本人は、そう、川島さんですね(笑)。『STARDUST RENDEZ-VOUS』等で聴くことができますが、「プルシアンブルーの肖像」のイントロ的にこのあたりのフレーズを演奏している川島さんの姿を見ることができます。ああ、トーキング・モジュレーターも使っているようですね。「クワアアアア……コアアアア……クエ!」という感じの声がそれです。

怖さ満点の第二部が終わると、曲は突如としてピアノソロになります。これを第三部と呼びたいと思います。怖さ・不気味さのほとんどない、やさしい旋律です。おや?……物語的には一体何を表現しているのでしょうか?惨劇のあったことは知られずにまた朝が来て、通常通りの授業が行われている学校をみつめる旧校舎、という趣向でしょうか。あまりに平和すぎます。

と思ったら、曲はまたメインテーマへと戻りますこれを第四部とします。第四部では、また不気味さを醸し出してるなあ〜でもさっきと同じだしな〜と余裕をかましていると、突然のギターソロに驚くことになります。これがまた、矢萩さんらしいメロウな音色なのに鋭いフレーズで、旧校舎の不気味さを切り取るかのようなソロなんです。ああ!旧校舎の奥深くではこんなショッキングなことが!でも傍目には完全にいつものただの不気味な旧校舎だよ!という演出なのかもしれません。

一瞬、曲が途切れて、あれ、これで終わりかな?と思ったところにストリングスのやさしいフレーズが流れてきます。これがまた儚く美しいフレーズなんです。悲劇をその内奥に隠す不気味な旧校舎、その旧校舎の穢れを洗い流すかのような激しい雨、そして雨は冬には雪になって……すべてを覆いつくしてゆく、そして旧校舎(とカズミと秋人)は、冬花ちゃんの現れる季節を静かに待っている……という演出なのだと、わたくしは思っております。

いや、完全にわたくしの妄想に過ぎないことはよくわかっております。そもそも矢萩さんがストーリーをご存知の上で曲をおつくりになったかどうかすら定かではございません(笑)。ですが、映画のサウンドトラックなんですから、こんなふうに、映画の話とごちゃまぜで妄想を膨らませて楽しんだっていいじゃないですか。

と、まあ、このアルバムの紹介は、こんな感じで妄想をたくましくして参りたいと思います。なんだ、いつもとたいして変わりないじゃないか、というお声もございましょう。いやいや、それは全くその通りすぎて返す言葉もございません。

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2017年01月29日

青空

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プルシアンブルーの肖像』一曲目、「青空」です。

アコースティックギター二本のアルペジオ・ショーを聴くことができるという点では、「…ふたり…」や「風」の系譜上にある曲ということもできるでしょう。しかし、ピアノやストリングスがかなり大きな役割を担っているという点では、上述の二曲とは趣が異なるといわなくてはなりません。ベース、ドラムはかなり控えめ、最低限に近いです。

『安全地帯IV』からもその傾向はすでに見られていましたが、もうこの「青空」の時期では、かなり顕著になってきているといわなくてはならないでしょう。安全地帯五人が出す音を基準にするのではなく、曲が要求する最適なアレンジを基準にしているようなのです。

もちろん、ロックバンドである以上、「あっこの曲、こうしたほうがいいね」とバンドメンバーが曲のほうに引っ張られてアレンジをする・直すことはよくありますから、曲の要求という基準はつねに併せ持っているものでしょう。それでも、あくまで基本となる基準はメンバーの出す音なのです。今となってはもうあり得ないことなんですが、もしロニーとコージーが生きていて、初期レインボーの復活コンサートがあったとして、リッチー・ブラックモアが「あっこの曲、アンプはマーシャルじゃなくてメサブギーがいいネ」とか言って、KILL THE KINGをメタリカみたいに弾き始めたら、私は、泣きながらですが、帰ります(笑)。それはKILL THE KINGじゃない、という以上に、レインボーじゃないんです。レインボーの音、という基準を、聴衆の一人であるわたくしが勝手に持っていて、本家本元レインボーのほうから裏切られたからといって、文句を言える筋合いではないのは重々承知しておりますし、話がもはや安全地帯じゃないというのもわかっております(笑)。『安全地帯II』や『安全地帯III〜抱きしめたい〜』で私たちが体感することのできた「安全地帯の音」も、変わりゆくものなのだとわかってはいるのですが……ここまでピアノやストリングスが入ってくるようになると、「ん?」と気になった人はいることでしょう。事実、安全地帯はこの数年後にバンドサウンドの原点回帰をするかのごとく、『安全地帯VIII 夢の都』へとたどり着くのです。

ところで、ジョーとユルゲンのOVER THE RAINBOWはどうなったかなー、と気になってちょっと調べてみたら、いまはもう目立った活動をしていないみたいですね。まあ企画バンドなんですから当然でしょう。ジョーだって過去の夢にすがりついて生きていくには、まだ歌えすぎですし、また才能に溢れすぎています。全然関係ない話、失礼しました。でもとくに後期のレインボーは安全地帯と相性いいと思うなあ(まだ言っている)。安全地帯・玉置浩二の全曲紹介ブログがもし完結したら、次はパープル・レインボーの全曲紹介を始めようかと思うくらいです。

さて、「青空」に戻りまして(笑)、アルバム紹介でも書きましたが、アコースティック・ギターのアルペジオ、ピアノ、ストリングスで奏でられるこの曲は、イントロですでに青い空と広い大地を思わせるのです。上川盆地の、広い広い大地と澄み切った青空です。盆地なんだから山に囲まれているじゃん!と思うかもしれませんが、いやいやそれは旭川に行ってから言ってくださいよ。ああ、こここそが「青空」の舞台だ!と感じること請け合いです。

そして、どう聴いても「See」でなくて「Say」に聴こえてしまう玉置さんのささやきで歌が始まります。「君」につけられた修飾句(やれ「雲を描く」だの「風とたわむれる」だの)が幻想的すぎて、ため息が出ます(いい意味で)。ああ、これは冬花ちゃんのイメージだ!とわたくしは勝手に思っているのですが、冬花ちゃんのキャラクターはもともと松井さんがつくったものでしょうから、ある程度イメージが重なっても不思議はないでしょう。「小鳥」が手のひらを跳んでゆくというのも、映画の冬花ちゃんに似合いすぎです。

そして、ツインギターのアルペジオ、田中さんのハイハット(これが泣かせるんですよ、また)を交えて最大音量となったサビで、玉置さんが雄大としか言いようのない歌いっぷりを披露してくれます。この雄大さが、「どこでも どんなときでも」は、バブルの東京を離れたバブル後の旭川なのではないかと、どうしてもイメージしてしまいます。もちろん、旭川である必然性はあまりありませんので、聴く人それぞれの「どこでも どんなときでも」があるのでしょう。そうでなくては、この曲が多くの人に支持されている理由がよくわかりません。1992年のアコースティック・ライブでも、この曲のイントロが始まった時は観客から他の曲にはない歓声が上がったのを覚えています。

歌詞に直接的な「好き」「愛してる」をほとんど使わない安全地帯ですから、「好きだと」はちょっとびっくりさせられますが、よくよく聴いたら、君がいう「もの」を「好き」になれるかも、と歌っており、「君が好きだ」とは言ってないんですね。もう松井さんたら!(笑)。「好き」と一言いうだけでこんなにびっくりさせるんですから、安全地帯がいかに奥ゆかしいイメージであったかがうかがい知れますね。そしてそれは、80年代の男女たちの世界でもあるのです。いやー、昭和の男(女)やから、好きとかよういわれへん、という気分になります。もう21世紀生まれの男女が恋の季節(笑)に入っていますので、こういう昭和の感覚は、わたしたち昭和の人間からみた戦後世代のメンタリティーに相当するくらい古臭いものにみえるのかもしれませんね。NHKの『君の名は』をみて、何回すれ違ってるんだよいい加減にしやがれ、とわたしたちが思ったのと同じ感覚だとしたら……ああ恐ろしい(笑)。でもそれが時代の流れってもんです。個人的には絶対に80年代の心を失うつもりはありませんけども。

とかなんとか、いつものとおり何の話をしているんだかさっぱりわからない文章を書き散らかしてしまいましたが、この「青空」は、安全地帯のバラード好きにはきっと気に入ってもらえる名曲だと思います。この当時の安全地帯にしかない色みたいなものがあって、その色がわかる人には一発でストライクでしょう。江夏豊の球が江夏にしか投げられない球であるのに似ています(喩えのほうがわかりづらくて喩えの役を果たしていないのですが、これもいつものことです)。

しかし、ひとつ難点が……究極的には、わたくしの音楽再生環境がしょぼいからなのでしょうが……サビになるとストリングスが邪魔してギターがかなり聴こえづらくなります。『STARDUST RENDEZ-VOUS』のライブ盤でも同様です。『安全地帯VI LIVE 〜月に濡れたふたり〜』くらいギターが大きく入っていないと、サビでのギターを聴きとることは困難です。わたくしの耳を鍛えればいいのかもしれませんけれども、20年も苦労して聴き取ろうと努力してきて、『安全地帯VI LIVE 〜月に濡れたふたり〜』が出たときに狂喜して聴きまくった、つまりラクをしてしまった身には、つらいものがあります。

キティさん(ユニバーサルさん?)、この『プルシアンブルーの肖像 オリジナル・サウンド・トラック』も、リマスターしてください……ぜひお願いします。もっとマシなアンプとヘッドホンを買え?ああー、リマスターが出たら、そうさせていただく所存です(笑)。

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2017年01月28日

『プルシアンブルーの肖像(オリジナルサウンドトラック)』

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安全地帯のアルバム『プルシアンブルーの肖像』の紹介です。

のっけからおかしなことを書かなければなりません。これは安全地帯の他のアルバムとは少し違います。というのは、これは、映画のサウンドトラックであって、安全地帯のアルバムとして発売されたわけではないようなのです。それが証拠に、背表紙には「プルシアンブルーの肖像 オリジナル・サウンド・トラック」とだけ書かれ、「安全地帯」の「安」の字もないからです。

しかし、クレジットを見て、さらに聴いてみればわかりますが、全曲が安全地帯か星さんによって作曲・演奏された、まごうことなき安全地帯の音楽集であることに間違いはありません。他のアルバムとの違いは「映画のために作られた」ことであるという点です。この違いをどのように評価するかは人それぞれでしょう。当サイトは「全曲よい曲であること」を前提にして紹介記事を執筆するという趣旨で書いておりまして、ようするに安全地帯の作品であればそれでいいわけですから、これが「安全地帯のアルバムであるか否か」はあまり気にしないことにしたいと思います。

矢萩さんの「旧校舎のテーマ」、星勝さんの「時計塔のテーマ」、六土さんの「カズミ」は、インストゥルメンタルなんですが、玉置さんでなく彼らの作曲したものが聴けるという点で、とても珍しいアルバムでした。映画のどこで使われていたかはさっぱり覚えていないんですが(笑)。いや、ほんとに。あれ、これは「旧校舎のテーマ」かな?とか、そんなレベルです。かなり気を付けて、つまり映画本編はそっちのけで音楽に集中していないとわからないでしょう。もしかして使われていないか、使われていたとしても数秒なんじゃないか?と思わされます。

1.「青空」 ピアノとアコースティックギターで伴奏される、ステキなバラードです。伸びやかな玉置さんの声と爽やかな松井さんの歌詞で、まさに「青い空」と、広い大地を感じされられます。
2.「旧校舎のテーマ」 矢萩さん作曲のインストゥルメンタルです。なんだか怖い、古い、やけに趣のある、「旧校舎」というテーマにぴったりの曲です。
3.「」 三拍子のバラードです。「冬花」はこの曲のインストゥルメンタルで、こちらは玉置さんの歌入りです。
4.「時計塔のテーマ」 星さん作曲のインストゥルメンタルです。「時計塔」は、映画の中では因縁のありすぎる怖い場所なんですが、まさにその十五年越しの因縁を表現したかのような怖い曲です。
5.「ゆびきり」 童謡を思わせる、ひたすらやさしい曲です。玉置さんの歌の、新たな可能性を世の中に見せつけた名曲と言えるでしょう。
6.「プルシアンブルーの肖像」 シングルで発売された、強力なハードロックナンバーです。映画には、高橋かおりちゃんのダンスを思い出してしまって、曲の世界にいまいちハマれないという副作用があります(笑)。ラッキィ池田め!とか怒るのは完全に筋違いでしょう。
7.「冬花」 「夢」のインストゥルメンタル版です。これは映画の中では「唯一ホッとする」場面をイメージして作られているのだと思われるのですが、すでに針のむしろに座らされた人は(後述)、べつにホッとしません(笑)。
8.「カズミ」 六土さん作曲のインストゥルメンタルです。磯崎亜希子ちゃん演じるカズミのテーマです。これも怖めです。カズミちゃんはべつに怨念たっぷりの死霊ってわけじゃないんだから、こんなに怖めにしなくてもいいのに六土さん!と思わされる渾身の曲です。
9.「Bye Byeマーチからエンディング」 「ゆびきり」の「さよなら さよなら」が「Bye Bye」なんでしょうけど、映画の場面はべつに「Bye Bye」ではないです(笑)。ああ、春彦くんがいちおうBye Byeかなー。前半は「ゆびきり」をマーチ風にした曲(歌入り)で、後半以降は「エンディング」なんでしょうかね。美しくも切ないインストゥルメンタルで、アルバムの最後を飾ります。

さて、このアルバムの歌詞カードには、「冬花シンドローム」なる掌編小説が載せられています。映画の脚本と、ノベライズ本を執筆なさった西岡琢也さんがお書きになったものです。おお、太っ腹!これがまた思わせぶりな小説でして(笑)。さぞかし本編では少女がたくさん落下するんだろう、凄惨な映画だな、と思わされるのですが、そんなことはありません。落下するのは磯崎亜希子さん演ずるカズミだけです。まあ、詳しいことは映画をこれから観る方のために書かないとして(笑)。でも、短いながらもかなり雰囲気たっぷりの力作ですよ。ノベライズ本のほうが映画本編よりいいと思っているわたくしのような不届きものには(すみません、多賀さん、そして出演者とスタッフのみなさん、映画、わたくしにはかなり厳しいものでした。猫パンチさんと同じ感想で「針のむしろ」でした)、うれしい付録です。

しかしこのジャケット!子どものころは、なんだか怖いとしか思ってませんでしたが、大人になってから見ると、各メンバーの特徴は当たり前につかみつつ、サラサラ書かれたように見えて、どうしてどうして味のあるイラストではありませんか。「青空」とか「ゆびきり」の牧歌的なイメージと、映画のストーリーに見られる猟奇性と、どちらも損なわずに示唆してくれる絶妙なタッチです。後から言っているから全然あてにならない評価ですけれども。描いたのは……イラストレーションのクレジットに「矢島功」と書かれていますね。おそらく、この方でしょう。「ファッションイラストレーター」なんですね。なんだか、ファッションなるものにほとんど興味のないわたくしでも、『プルシアンブルーの肖像』の面影を求めて画集が欲しくなります(笑)。

次回以降、このアルバムを一曲ずつご紹介していきたいと思います。

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2017年01月20日

ありふれないで


安全地帯IV』十曲目、「ありふれないで」です。

アルバム紹介の記事で、辛い恋をしていたふたりが、最後に少しだけ前向きになる曲、というような内容のことを書きました。恋のつらさは解決されていないのだけれども、それでも少しだけ前を向いた心情を表現している……前曲「ガラスのささやき」までのクライマックス感が物凄かったために、この明るめながらもやや気だるさが感じられる曲調、前向きっぽく読める歌詞は、「完全なハッピーエンドではないけれども、今後に期待の持てる終わり方」を示唆しているように、わたくしには思われたのです。毎度のことではありますが、曲順に特に意味はなくてランダムに決めました、とかだったら一瞬で崩壊する解釈で恐縮です(笑)。

少なくとも、初恋の甘酸っぱさを表現しているなんて思えない、もちろん、酸いも甘いも知り尽くした男女の恋の歌だとも思えない、このアルバムで「語られてきた(とわたくしが勝手に思っている)」ふたりの恋の歌であると、わたくしは信じたいのです。この曲の終わりに仕掛けられた、一曲目「夢のつづき」のフレーズは、このアルバムが単発の曲をただ十曲収めただけでなく、ひとつの恋物語を構成するように作られたものであるはずだ……と、わたくしは30年も信じてきたのです。単なる思い込みかもしれないのに。ああ、なんだか恋に似た気持ちです。今気づきました(笑)。

さて、アレンジですが……

最初のア・カペラだけで、もう威力抜群ですよね。三声ボーカルで「抱きしめてもいいだろう?」と玉置さんが叫ぶのですから、このアルバムを終えるにふさわしい名曲であることはもう決定的だという印象を与えます。

八分で刻む六土さん、それに応える田中さん、そしてギターは……役割分担がややわかりづらいですが、左チャンネルでアルペジオ主体に弾くのが矢萩さん、右チャンネルでそれに合の手を入れるかのように単音フレーズを弾くのが武沢さん……だと思います。その根拠は、Bメロで右チャンネルから武沢トーンのコードストロークがシャリーンと聴こえるように思われるからなんですが、レコーディングでは実はどちらも武沢さん(もしくは矢萩さん)が弾いていました、というオチももちろんありえます。フレーズはかなりはっきり聴こえるんですが、お二人ともディレイやリバーブをかけて比較的似たトーンで弾いてらっしゃるように思われます。

そのBメロ、リズム隊もリズムを変え、六土さんが八分と四分の組み合わせを弾きます。ギターも掛け合いでなく、比較的速いアルペジオとコードストロークに変わるため、曲が若干スピードアップしたような印象を受けますね、歌詞もここで「自分の思い」をストレートに語るような内容に変わるため、曲が一気に盛り上がります。まさに全パート、計算されつくしたかのように曲の物語を最高潮に持ち上げてゆきます。

「あなたのせいだろう」の箇所は、コードでいうとF#だと思うんですが、この曲はキーがEなので(そう思うだけです)、普通に考えればF#mを使うはずなのです(別に誰が決めたわけではないのですが、セオリー的にはそうなるのが一般的でしょう)。ですから、ここでメジャーコードが入ることによって、なんとなく意外な感じ……、いや、この曲を聴き始めた当時はそんな違和感を感じることはできませんでした。それくらい自然です。あとからコピーしようとして「あれ?」と思った、というだけのことなんですけどね。おそらく、玉置さんは意外な感じを与えようとしてこうしたわけではなく、ごく自然に「こうするとイイよね!」と純粋によいものを創ろうとしていたのでしょう。後のJ−POPアーティストにありがちな小賢しさがまるで感じられません。

そして曲は、「デリカシー」等で聴くことのできる、チャイナ風音色のソロを挟み、トドメと言わんばかりに三声ボーカルのサビを繰り返して終わります。ああー、効いた……いや聴いた……と余韻に浸っているところに、先程少し触れた「夢のつづきreprise」とでも言うべきフレーズが遠くから聴こえてきて、このアルバムを堪能した心を包み、慰めます。これは、冗談ぬきに涙ものです。のちに玉置さんのソロアルバム『あこがれ』にも用いられた手法なんですが、これは効きますね……。思う存分、このアルバムの世界に浸ったという感慨が湧きます。まさに、名演出というべきでしょう。

さて、これでこのアルバムの紹介も終わりになります。次回からは、『プルシアンブルーの肖像』の紹介に入ろうと思っているのですが、ご存知の通り、歌のない曲がいくつか含まれています。これをどうやって文字で紹介するか?本ブログを始める際に想定していた最初の正念場を迎えます(笑)。頑張ってみたいと思います。

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2017年01月15日

ガラスのささやき


安全地帯IV』九曲目、「ガラスのささやき」です。

20年以上昔のことですが、どこかのカラオケ屋でこの曲がリスト本(当時は分厚い本が二冊ずつ各部屋にありました)に入っているのを見つけて、驚いたことがあります。安全地帯のカラオケ曲といえば、『安全地帯BEST〜I Love Youからはじめよう〜』に入っているような曲しかなかったからです。ああ、当時はまだ「あの頃へ」がCMで流れているような時代でしたね。どんな理屈でこの曲がカラオケ曲入りしたのかは謎です。わたくしの知る限り、喜んでいるのはわたくしだけでしたので、歌いませんでした(笑)。だって、ねえ……「DA・YO・NE〜」とか歌っている人たちの仲間になりたくないじゃないですか。わたくしはひたすらニコニコしながら酒を飲むだけです(ワリカン要員?)。

カラオケで歌い惜しみしたごときで、こんなことを語るのも口幅ったいのですが、この曲は知る人ぞ知る秘密の名曲、という位置づけにしておきたかったのです。レンタルや又貸しなどを含めると、一体どれだけの人がこの『安全地帯IV』を聴きとおしたのかはわかりませんが、そのうち、どれくらいの人がこの曲の魅力に気がついたことでしょう。気がつかずスルーし「ありふれないで」を聴き終えて「ああ〜聴いた聴いた、まあ「碧い瞳のエリス」はやっぱいい曲だね」くらいでこのアルバムを聴いたことにした人は、「ガラスのささやき」の物凄さに気がつくことはありません。マルクスの『共産党宣言』を最後の一行「万国の労働者よ団結せよ」だけ読んで、一丁前の顔して学生運動に加わっていた70年代の大学生なみの豪快さです(笑)。わたくし貧乏性なのか、そんなもったいない聴き方はできず、一曲一曲かみしめるように聴きましたもので、さいわい気がつくことができました。

「ひとり傷つき噓つきながら」

しかし、松井さんは、こういうギリギリの綱渡りが、神業級に巧いですね。「それは君の中身の問題だろ、いったい何を悩むことがあるんだ」というオトナ側からの、冷静で、若い人にとっては冷酷なメッセージが明確に含まれています。「ひとり傷つく」って、別に誰も傷つけちゃいないのに、勝手に痛がっているってことですものね。それなのに、そんな冷酷さを少しも感じさせずに、わかるよ君の気持ち、痛いんだろう?ほら、ぼくもさ……いまは、このままでいいんだよ……きっと、すべてはうまくいくさ、と、まるで若い人の心に寄り添い、少しだけ安心させる第二の恋人、とは言わないまでも、憧れの人(少し年上)からの愛情あふれるメッセージであるかのように思わせる、あたたかささえ感じられます。冷酷さとあたたかさの綱渡り、これが玉置さんの声で歌われるのですから、そりゃーたまりませんよ(笑)。

「胸に隠したナイフのままの昨日」

わけがわからない、と切って捨てるのは冷酷なオトナです(笑)。これは、愛と憎しみが入り混じって混乱した感情が、昨日は憎しみのほうに大きく振れて、攻撃的な気持ちになった、そしてそのことを一日たってもなんとなく覚えていて、気持ちがうまく整理できていない、ということでしょう。ああ、こうして言葉で説明するのは、なんて野暮なんだ。でも、こう説明しないと、松井さんの描こうとしていたものが説明できそうもないのだから、仕方ありません。漫画とかで説明できれば話は別なんですが、わたくしにはそんな絵心はございません。ああ、よかった(笑)。ともかく、この曲は、説明しきれないくらいこういう秀逸な表現が多く含まれており、歌詞カードを見ながらじっくり思いを巡らすのが何とも楽しい曲でもあります。

さて、アレンジのことですが……

この曲、ごく簡単なコードストロークのギターの音がとても聴きやすい音量で収録されています。わたくし、これはおもに矢萩さんだと考えています。

しかし、武沢さんの「シャリーン」も時折聴こえます。では、武沢さんは「シャリーン」要員だったのか?いえいえ、おそらくですが、イントロ〜Aメロに流れ続けている、三連の細かいフレーズが、武沢さんの奏でたものなのでしょう。かるーくオーバードライブをかけ、適宜ミュートしながら弾いた音が、ちょうどこんな音になるはずです。運指的にも、巷によくあるギターのハノンフレーズ集には必ずありそうな運指です。しかし、例によってわたくしには再現できそうもありません。なんでこんなにいい音が出るんですか武沢さん……一にも二にも練習ですよね……わかっているんですが、この調子だと、還暦までに到達できそうもありません(笑)。

安易にキーボードに任せず、ギターで出来るところはできるだけギターで弾く、というのが安全地帯のサウンドづくりの根底にある精神だと思います。というより、生粋のギターバンドですから、はじめからキーボードに弾かせる、という発想がそもそもほとんどないんじゃないか、とも考えられます。「そんじょそこらのバンドならキーボードに任せるかもしれないんだけど、俺たちをそんな奴らと一緒にするなよ、ククク…よく見ておけ…」とかは少しも考えておらず、「え?ああ?ギターで普通に弾いたけど……それが何か?」というくらい自然なのだと思われます。

さて、この曲も「デリカシー」と似た思想で、リズム隊が躍動しています。ドラムとベースがぴったり同じリズムを奏でるのではなく、二人が合わせて一つのリズムを作る、という考え方のようです。田中さんが「ツッタッ(ウン)ツタッ」を繰り返しているところで六土さんが「ボ・ボ・(ン)・ボ」「ボ・(ン)ボ・ボ・ボボボ」弾くといったように、言葉だけ見るとズレているんですが、合わせて聴くと見事に一つのリズムになっているように聴こえる、というものです。これは狙ってそうしたというより、ふたりの長年のコンビネーションにより可能になるものではないかと考えられます。

「秘密の名曲」なのに、ずいぶん語ってしまいました。しかし、そもそも「碧い瞳のエリス」と「悲しみにさよなら」しか印象に残らないような人は、このページをそもそも読みませんので(笑)、ある意味安心です。秘密は守られます。

この曲単体でもわたくしにとって「秘密の名曲」の座は揺るぎありませんが、アルバム全体における役割においても、クライマックス後編という重大な位置につけています。機動戦士ガンダムでいえば、アムロとシャアの白兵戦です(笑)。この曲がなければ、ガンダムもジオング撃墜でいきなりエンディングになるようなもので、「え?どうなったの?シャアは?ジオン軍は?」と、打ち切り感満点な理不尽アニメになること請け合いです。この曲は、このアルバムにおいて張り巡らされた、恋物語のすべての伏線を回収する役割があるのです。

「夢のつづき」で安らかなふたりの日々は、どのような悶着の代償として得られたものか?
「消えない夜」のふたりは、あの冬以降、どうなったのか?
「碧い瞳のエリス」の少女は、成長してどのような恋をしたのか?
「悲しみにさよなら」のふたりは、あのままハッピーエンディングを迎えられたのか?

などなど、書ききれない伏線が、言葉に直せばそれだけ野暮になるから書かないままにすべきだったかもしれない伏線が、この曲ですべて回収されているように、わたくしには感じられるのです。

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2017年01月05日

彼女は何かを知っている


安全地帯IV』八曲目、「彼女は何かを知っている」です。

これはもう、初っ端のリフを中心に作られた曲でしょう。キラキラの武沢トーンで「ジャーンジャジャーン、ジャッジャジャジャーン!」そしてツインギターのハモリで歌へと導く……ああハードロックの様式美がステキ過ぎる!

ちなみに「ツインギターのハモリで」は、『ONE NIGHT THEATER』バージョンのことです。こっちのほうがずっといいと思うんですが、スタジオ盤では、何かやけに控えめなフレーズに替わっています。

横浜スタジアムでのライブは1985年8月31日、9月1日、

シングル「碧い瞳のエリス」は同年10月1日、

アルバム『安全地帯IV』は同年11月24日の発売です。

すると、『ONE NIGHT THEATER』における「彼女は何かを知っている」で聴くことのできたツインギターのハモリ導入フレーズは、言ってみればプロトタイプの一つだった、と考えることができます。うーん、わたくしこっちのほうが好きなんですが(まだ言ってる)。レコーディングにあたって、川島さんのシンセを導入してアレンジを一部再考したのでしょうね。スタジオ版の前奏ではシンセがずいぶん効いていますから、ギターをやや控えめにしたほうが曲全体のクオリティが上がるという判断をしたものと思われます。ギタリスト的にはここは絶対ツインのハモリだ!と思っていても、ギタリスト以外にとっては案外そうでもないものです。

この曲は、田中さんの踏むバスドラに、六土さんのベースがほぼピッタリとリズムを合わせて、タイトに曲を締めます。そうそう、わたしのイメージするリズム隊ってこうなんですよ。わたしにとってはこれがほとんど唯一のイメージですが、安全地帯にとっては、それはオプションの一つに過ぎないわけです。このブログを始めてからというもの、田中・六土コンビの引き出しの多さを思い知ってやっぱり凄いなあ、と感激してきたわけですが、この『安全地帯IV』ではとくにそう感じる機会が増えたような気がします。

余談になりますが、いいベーシストといいドラマーは、ゴールデンコンビになりやすいものでして、高校や大学のサークル等でも、あのバンドもこのバンドもこの二人、みたいなシーンが散見されます。玉置さんのソロ活動でも、結局この二人がリズム隊になっているシーンをよくみるのは、単に二人が仲良しだから、縁があるから、以上の理由があるように思われます。

さて、これまたずいぶん思わせぶりな歌詞のことですが(笑)、

「探偵みたい」「偽名のペン」「まるで女優」……猜疑心の塊みたいになっていて、お互いに綱渡りな感覚でハラハラしてるんだけど、それでもシャツは脱いじゃう(笑)、という、なんだかとても分かりやすい二人の情景なんですが、これ、当人たちにとっては、わりとたまったもんじゃないですよね。もうそういう時期を乗り越えてきたオトナからすれば、「ああー、そんな気分だったかもしれないなあ、言われてみれば。でももう忘れちゃったねえ」なんですけど、当時は必死な気分だったはずです。いまリアルタイムでこういう気分になっている若い人もいっぱいいるでしょうけど、大丈夫です、どんなに傷ついても、いつまでもそんなのは続きませんから、などと先輩風を吹かせているうちは、きっとまだまだなのでしょう(笑)。

しかし、松井さんが「こういう気分」を見事に切り取り、言葉に直してくれていたこと、そして玉置さんの歌声で、いってみれば永遠に、「こういう気分」が保存されていることに、感謝したいです。そうでなければ、きっとすっかり忘れていたでしょうから。

「魅惑」「疑惑」「孤独」「誘惑」、ぜんぶ「〜く」なんですけど、「魅惑」だけ「みわく」と読んで、あとはそれぞれ「うたがい」「ひとり」「なれあい」と読ませます。遊んでますね松井さん!歌詞カードを見て初めて気がつく仕掛けを用意しているわけです。こういうのを「粋だねえ」っていうんじゃないでしょうか。

この曲、これまでの安全地帯の曲の、どれにも立ち位置が似ていないように思われます。しいて言えば『安全地帯U』では「真夏のマリア」、『安全地帯III 抱きしめたい』では「Kissから」かなあ、とは思うんですが、曲順も、担う役割も違います。B面の最初に「消えない夜」をもってきた、その直後に大ヒット曲「悲しみにさよなら」をもってきた、という構成自体が、毎度のこととはいえ新しい試みであったでしょうから、もうこの時点では『安全地帯II』の様式をあまり意識していないということが分かるように思われます。「悲しみにさよなら」の後、「彼女は何かを知っている」「ガラスのささやき」と、ミドルテンポ二連発によって、聴くほうからすれば息継ぎしないで泳いでいるような感覚に陥ります。これが、緊張感のある恋物語をクライマックスに向かって怒涛の展開で進められているような印象を与えているのでしょう。

この曲は、さあ、ここから一気に行くよ、この恋物語、心の準備はいいかな?それー!という、クライマックス前段にあたる曲だと思われます。この曲だけ切り取って聴くような感じじゃないですけど、この名盤のクライマックスの一翼を担う名曲(名場面)であるといえるでしょう。

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