2017年09月10日
まちかど
価格:2,511円 |
『安全地帯V 好きさ』九曲目、「まちかど」です。
「記憶の森」ではピアノアレンジをして、この「まちかど」にはインスピレーションを与えた、という武沢俊也さんの名がクレジットされています。
武沢俊也さんは、わたくしにとって聖飢魔IIのダミアン浜田陛下と同じ位にあるかたです。のちに大ブレイクするバンドを、デビューできる段階まで導き、自らはデビューせず身を引く……ああ、うっとり(笑)。
この曲は、聖飢魔IIでいうと「野獣」のような立ち位置にあります。デビュー前に気に入って演奏していたけれども、デビューしてしばらくたって、ブレイクしてからアルバム収録曲として登場した、という点で同じなのです。ただ、「野獣」は、デビュー時とはメンバーの技量やら音楽的感性やらが違っていて、なんだかもう他の収録曲との間に違和感がありありだったような気もするんですが、この「まちかど」はスンナリ安全地帯の、この時期の曲として受け入れられるというのがもの凄いです。俊也さんがおつくりになったころから、すでにこのクオリティだった、というわけなんですね……。
もちろん、たんにインスピレーションを与えただけで、実際にはぜんぜん違う曲と言っていいほどリニューアルされているんじゃないか?というお疑いはもっともです。ぜんぜん違う曲かどうか……それは、ご自分の耳で判断されてみてください。「最後の風景」という曲です。ちょっと探せば聴けるでしょう。
【追記】もしかして俊也さんがお作りになったのは「最後の風景」の歌詞のみであって、作曲はやっぱり玉置さんなんじゃないか……と思えてきました。「最後の風景」の歌詞を松井さんが別の歌詞にした、ただ原曲の歌詞は俊也さんなので敬意を表してクレジットした……というのが真相かもしれません。
「ああーっ、「最後の風景」やりてえなっ!」と玉置さんが言ったかどうかはわかりませんが、安全地帯は数年前に旭川で作られたなつかしの曲を、最新アルバムに収録することにします。
いま書いて気づきましたが、安全地帯って、この時点でまだデビューしてほんの3〜4年なんですよね。SMAPならまだ『SMAP×SMAP』も始まってないくらいの段階です。うーむ信じられない……。安全地帯の音楽生産能力と演奏能力の高さで、すでに大御所の風格を漂わせているこの『安全地帯V』ですが、実はまだまだ新人といえなくもありません。恐ろしい……。
さて、曲ですが、オルガンで始まり、次いでベース、ギター、ドラムが一気に入り、歌に入ります。そしてAメロ二回目からストリングスが加わり、切なさを一手に引き受ける……かと思いきや、いままで牧歌的な伴奏に聴こえていたオルガンが、急に哀愁を帯びて聴こえるようになります。このコンビネーションを最初から計算していたかのようなのですが……これは星さんのアレンジ能力によるものでしょう。
後奏に入るギターソロは、二本重ね、だと思うんですが……右チャンネルの音、おそらくそれまで「トゥットゥクトゥットゥー・トゥットゥクトゥットゥー」と繰り返していた音と同じで、おそらく武沢さんの音なんですが、揺れているように聴こえますね。わたくしの浅いエフェクター知識でいうと、フェイザーをかけるとこんな感じになりますが、このお二人のことですから、油断はなりません。指先の絶妙なコントロールでこの音を出していないとは言い切れません。ほんとうにありそうだから怖いです。何が言いたいかといいますと、普通に弾いてもこういう音にはならない……と思う……ということなんですが、とにかくわたくし、歯切れが悪いです(笑)。明らかに自分より技量が上の人のプレイを、自信をもって語ることができないという、ごく当たり前のことといえば当たり前の理由でひるんでいるんです。まあー、そんなこと言いだしたら、安全地帯の音楽を自信をもって語れる人ってどんな人ですか、ということになりますので、がんばって目一杯背伸びをしたいと思います。
そして左チャンネルに聴こえる、クリーントーンのコードストローク、これが矢萩さんだと思うのですが、ボーカルの合間に真ん中に音が出てきて印象的なフレーズを奏で、また左に戻っていくように聴こえます。これはわりと聴こえづらいので、わたくし肉眼で見えない等級の惑星を探すかのように、きっとこのあたりにあるはずだ!と望遠鏡を向けるようにして探しました(笑)。うーむ、仕事が渋すぎです。その他細かい音がいくつも加えられておりまして、わたくし、この曲をコピーするなら、ギターは五本重ね録りすると思います。そんなわけで、いつもの話ではありますが(笑)、この曲はオルガンの目立つバラードであっても、明らかにギターポップのジャンルに入ります。
田中さんと六土さんは、この曲ではふつうのエイトビートで、まるで『安全地帯II』の頃のように、ひたすら堅実に支えます。バスドラとベースを同じリズムで、もしかするとアマチュアのころを思い出しながら、のように、確実に、素朴に……なんだか泣けてきました(笑)。テクニシャンのお二人ですから、工夫しようと思えばいくらでも工夫できたと思うんです。でもそれじゃ、この曲を壊してしまう、俊也さんと一緒に演奏した、旭川の大事なファンたちの前で演奏したこの大事な曲を、壊しちゃいけないんだ、とでもいうかのように、朴訥に支え続けます。もちろん全部わたくしの妄想ですが(笑)、こういうところに、勝手に職人魂を感じてしまうのです。
さて歌と歌詞ですが、「土曜日の午後」というだけで、懐かしくて胸が騒めきます。そうです。この頃は、いわゆる半ドンで、土曜日という日は、さあー昼めし食ったら何して遊ぼうかな、という楽しい日だったのです。そんな日に、まちかどで、髪を切ったかつての恋人を見かけてしまった、というストーリーです。
やさしい吐息をさそう唇が遠いって、そう、遠いんですよ……そんなに離れてないんですけど。へたすると隣のクラスとかなんですけど(笑)、とは言わないまでも、電話すればまだ余裕で連絡がつくくらいの距離感ではありますが、その電話はかけられないんです。気まずくて、というか、かけちゃいけないとわかっているんですね。そういう電話は、絶対に向こうからかけさせないといけません(謎の気負い)。80年代風に言えば「だから男ってバカなのよ」なんですが、いやー、こればかりはご勘弁ください。かけられないです。電話越しの、声の音圧ですら、引き金になりかねません。その声を一瞬識別できないくらいに忘れかけるまで、待ってください……とかなんとか言っているうちに、連絡もつかなくなるんですけども、それでいいんです。
声をかけるだけで、あなたが消えるわけはありません。ふつうに返事すると思います。「消えてしまいそう」というのは、わたくしみたいに、声をかけちゃいけないと思い込む人の、一種のロマンなんですよ。ほほえむだけなら、つまり、言葉を交わさなければ、そばにいられそうな気がしなくも……いやー、それもかなり厳しいですねえ。つまり、「いられそう」と思う人と、わたくしとのロマンは、若干違うことになります(笑)。ああ、なんの参考にもならない……。
さて、歌ですが……玉置さんの、音程コントロールの見事さを改めて感じる曲です。この曲は、音程の上下がいつになく激しく、歌えると思って歌い始めてもなかなかうまく歌えない歌になると思います。「揺れる瞳」とか、こんなに正確に上下できないです、わたくし。もちろんできる人は当たり前にできるんですが、できない人がこれを歌うと痛々しい感じが一気に……まだ曲の冒頭に、とんだ寒風が吹き込んでしまいます。また、サビが他の部分よりもかなり高いのですが、これも、サビ単体なら、声の高い人ならそれなりに歌えると思います。しかし、サビを歌い終わった後、またAメロに正確に戻れるかといえば、そうではありません。
武沢俊也さん、きっと歌えるんです、こういう歌。歌えない人はたいがい思いつきませんから、こんなメロディーと展開は。安全地帯のみなさんは、アマチュアのころからコーラスがとにかく巧かったそうですから、お一人お一人もかなりの歌い手なのです、そう、きっと俊也さんもそうなのでしょう……。それに加えて超弩級ボーカルの玉置さんがいたのですから、これは強力すぎます。アマチュアのコンクールで、中学生にもかかわらず、中島みゆきさんに次ぐ二位を獲得したのも当然でしょう。
しかしまあー、「小さな肩」を「いつか抱きしめた」って、しかもそのことは今も「秘密」のままだろう、なんて、玉置さんがいうともの凄い説得力ですね。玉置さんが背が高く肩幅も広い、という物理的条件もある程度説得力を増しているのでしょうけども、なにより、こういう歌を歌うセクシーさとロマンチストっぷりが、いかにもそういうことがありそうだ、と思わせる最も大きな要因であることには疑いの余地がありません。ほんとうに、人ごみの中で、ふと、そんなことを思ってそうなんですよ、この歌いっぷりは!これは玉置さん以外が歌っても、この説得力はありません。若き日の石坂浩二くらいです、似た説得力を出せるのは。あとは、火野正平さん……うーん、ちょっと違うなあ。何が違うかはわかりませんが、何か違います。「とうちゃこ」のイメージが邪魔して、うまく考えられません(笑)。
ところでギターをコードストロークでかき鳴らしながらこの曲を弾いてみたのですが、最後でつまずきました。あり?あ、半音上げだ!30年も気づかなかった……(大泣)。
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そう、寒いですよ、冬の北海道は。もう耐えられる自信がありません。でも、あのキーンとした朝は、たまになら味わいたい気がします。
廊下の室内温度、暖かくしてマイナス5度とかで
驚きました。
外だと凍死しますよね?
とても厳しい環境なんだなーって、体感しました。
あの土地で冬のラブソング作ると、二人きりで
暖め会う、という内へ内への感じになりますね。
あ、いや、そんな綺麗なもんじゃないです。寝込みたくなるような思い出も、あちらこちらのまちかどに封印されていますよ!ああ恐ろしい。
昔とは違うのでしょうね。笑
さぞかし、北海道の あの頃、は、とばさんの心の
風景になっているのでしょう。
そんな綺麗な思い出があるなんて、羨ましい〜。
そう、声をかければたちまち、「あの頃」が壊れてしまいそうなんです。あの街角も、足を踏み入れればたちまち壊れてしまいそうなのです。ですからわたくしグーグルアースで地元とかは決して見ません(笑)。札幌の、某繁華街がわたくしの「まちかど」なのですが、地下鉄が延伸されたので帰省の際にも立ち寄らずに済むようになりました。ですから、あのまちかどは80年代のままです(何かに洗脳された目つきで)。
ただ、Youtubeのは、安全地帯のバージョンがなくて
ああ、これって簡単そうでやっぱ難しい曲やねーって
思いました。
歌詞が非常にナイーブな感じで。
自然消滅しつつある関係をゆっくり見送る気持ち、
わかります。
多分、手を伸ばせばまだ届くのでしょう。
けど、それは掴めたとしても変質した別のものに
なるでしょう。
だから、あえて掴まずに見送りましょう。
自分の思い出や想いを綺麗なまま残したいからです。
もうそんな気持ちには出会えないかもしれないから
それでいいんだと思います。
ええ歌やな……しみじみ。
故郷を遠く離れて幾年月、「消えた」のはわたくしのほうなのですが、最近はGoogleという余計なものがありますから、ちょっと検索すればすぐ突き止められてしまいます。消えたかったのに……(笑)。頑固なまでにfacebookもやりません。やってたまるか、です。
故郷の日々は、それなりに大事なのですが、そこにわたくしがいなくてもいい、一緒に時を経なくてもいいと、わたくしは早々に気がついてしまいました。ですから、故郷は半ドンのときめきにあふれた、あのときのままです。たまに帰省するとき、うっかり何もかも変わったことに気が付きたくなくて、いつも曲がっていた角を曲がらない、なんてことをしています。あのギターがショーウィンドウに飾られていた楽器屋も、練習に通ったスタジオも、待ち合わせに使っていた駅も、みんなあのころの「まちかど」のままです。
災害で故郷を壊されてしまった人たちに、なんだか申し訳のないことをしているような気もしますが、だからといってわざと失うべきものでもないでしょう。おかしな感傷ですし、わたくしだけの異常な趣味かもしれません。それが証拠に、同じことをしている人に出会ったことがありません(笑)。
キツイこと書いてしまい、ごめんなさい。ハゲないでくださいね〜〜(笑)
何気ない日常って大切ですよね。
そこに当たり前に在る日常や風景が、どれほど大切なものか。
神戸の街に行ったり通ったりすると、今でも少し胸が痛みます。
すっかり綺麗になっているのですけどね…。
うーん、あの震災はずいぶん大きな変化を引き起こしましたねえ。わたくしは普段通りにしようと心がけましたが、それは実は大きな変化なのかもしれません。震災前はそんなこと思ってませんでしたから。日常は繰り返しではなく積み重なっていくものだと、わかっていたはずなのに、それでも気付かされたような気がします。
「声をかけてくれなかった」という事実だけが女の心に残ります。
それを「ロマン」って言うギタリストは禿げちゃえ〜〜(笑)
東日本大震災があって思ったのです。
行きたい所に行こう、観たいものを観よう、
話したい人と話そう、会いたい人には会おう、って。
無風状態でも自分が動くと風を感じるんですよね。
今の仕事もこのトバさんのサイトも、そうやって見つけました♪
でも、この曲のような切ないシチュエーションも大好きですけど(笑)。
もちろん素直じゃないですよ(笑)。なんで声をかけてこないんだろう?という顔をよくされたものです。なんで素直じゃないんだろう?ではありません。素直じゃないと気づかれもしないのです。完璧な偽装工作です。そんなことをしているうちに連絡先がわからなくなります(笑)。
消えてしまうというのは、連絡先がわからなくなることかもしれません。その気になりさえすれば連絡できる間柄のあるうちは、消えていないのです。下手に声をかければ、その間柄を失う危険がある……あーわかるわかる、LINEでブロックされることだねー、とか若い人に言われたら、お前は何もわかってない、そんな指先だけの心理的ブロックと一緒にするな、本当に物理的に連絡がつかなくなるんだ、と失望することでしょう(笑)。
玉置さんの説得力はすごいですねー。信じがたい生身の迫力です。スマートフォンじゃけっして操作できない心と肉体が、私達の忘れかけている次元での表現が、胸を打ちます。
言葉が少し置き換わっているだけで、ほぼ同じ曲ですよね。
武沢俊也さんのセンスとクオリティにほれぼれします。
一度離れてしまったら、連絡したり近づいたりするのに躊躇してしまう気持ちは分かりますよ。でも、「向こうから」って、つまりはもう一度話したい、会いたい、って事ですよね。
素直じゃないなぁ〜(笑)
しかし、そういう「ロマン」もありかもですね。
そういう気持ちが切ない歌になって玉置さんが歌うとこんなに素敵な曲になるからすごい。
本当に玉置さんほど、ビジュアル自体が説得力とリアルさを持つボーカリストって他にいませんよね。
妄想ばかりのブログですが、お楽しみいただけたら幸いです。
わたくし元ヘビメタ小僧ですので、人間椅子はもちろん存じ上げております。安全地帯と同じく、他にはない、素晴らしいバンドですよね。
どうぞよろしくお願いします。
ある日アマゾンプライムに追加されていた安全地帯2を聴いて衝撃を受けて以来、安全地帯玉置浩二にハマっています。中でも素晴らしいアルバムだと思っている安全地帯5をリアルタイムで全曲解説なさろうとしてる方がおられるとは感謝感激です。レビューとか解説を見るのが好きなので、これからも注目させていただきます!