安全地帯アルバム『リメンバー・トゥ・リメンバー』一曲目、「ラスベガス・タイフーン」の紹介です。
この曲は3rdシングルの曲でもあります(カップリングは、『リメンバー・トゥ・リメンバー』三曲目の「エイジ」)。
アルバム紹介のページでも書いたことの繰り返しにもなってしまいますが、これはハードロックです。
なかなかに重くて印象的なギター・リフ(繰り返しフレーズ)で始まり、ドラムを合図に、もう一本のギター(メロディ)とベースが入り…と、ハードロック・アルバム幕開けの曲としては実に王道的な曲なんですね。
安全地帯は、おそらくですが、少なくとも当時は、あんまりシングル曲を作ってアピールするって考えがなかったのではないでしょうか。
その意味で、洋楽的なんですね。
「ホテル・カリフォルニア」とか、「天国への階段」とかのシングル盤って、みなさん見たことありますか?
あるところにはあるんでしょうけど、これほど有名な曲でも、シングル盤で買ったという人を、わたくし見たことも聞いたこともありません。
世の洋楽好きはみんな、シングル単位でなくアルバム単位で聴いていたと思いますし、おそらくイーグルスとかツェッペリンだって、そのつもりでアルバムを作っていたのではないかと思われます。つまり、アルバム全体をひとつの単位として作るわけです。
安全地帯のメンバーも、「ワインレッドの心」が売れるまで、日本におけるシングルの威力を本当の意味では知らなかったのではないでしょうか。わかっていたのはキティのみなさんで、だから売れる曲書こうよって玉置に迫ったのでしょう。その結果、名曲「ワインレッドの心」や「恋の予感」ができたのですから、まあ良し悪しなんですけどね。
さて、売る気があったのかなかったのか、「ラスベガス・タイフーン」は王道ハードロック路線で玉置さんの歌を重ねていきます。コブシの少ない、ハードロック・ボーカルとして特級のボーカルで、いわゆるAメロBメロを歌いきります。ギターも、切れのあるクリーン・トーンと伸びやかなオーバードライブ・サウンドのアオリ、キメで曲を盛り上げ、六土さん田中さんのリズム隊は終始一貫、タイトな音で曲を運んでいきます。このアレンジ・パターンは、その後の安全地帯とほとんど変わりありません。ファーストアルバムからサードアルバムの『抱きしめたい』くらいまで、非常によく見られたパターンです。
いわゆるサビは、オーバー・ドライブサウンドのギターの刻みに合わせて、三声(四声?)ボーカルで聴かせます。これは昔のフォーク、ハードロックではごくスタンダードなスタイルなのですが、その後の安全地帯では「悲しみにさよなら」「プルシアンブルーの肖像」などでもこのスタイルを用いるものの、しっとりと玉置さんだけのメインメロディを聴かせることを選んだとみられる曲が増えていきます。
余談といえば余談ですが、わたくし初めて安全地帯のコンサートに行ったとき、メンバー全員の歌の巧さに驚いたものです。スタジオ版CDでは巧くて当たり前だろうとも思うのですが、ライブであのハーモニーを聴かされて、一曲でノックダウン、あっさり虜になりました。旭川でのデビュー前の安全地帯も、武沢さん兄弟と玉置さんとで無敵のハーモニーを聴かせていたのでしょうね。
さて、間奏・エンディングでは、矢萩さんのものと思われる伸びやかなギター・ソロが挟まれていますが、スタジオ版ではごくあっさりとまとめられています。聴くべきはライブ版です。
『We're ALIVE』でも『ENDLESS』でもいいのですが、これらのライブ版では、この曲のエンディングがやけに長いことに、おそらくみなさんお気づきでしょう。ここはじっくりとギターに耳を凝らして聴きたいところです。武沢さんのオーバー・ドライブの利いた切れのいいバッキング(これはかなり難しいのです)にのせて、矢萩さんが弾きまくります。アドリブなんだと思うのですが、洋楽のギター・ヒーローさながらの弾きまくりタイムです。
えー、トシちゃんとかマッチとか聖子ちゃんとかの時代に、こんな凄いのやってたの?で、武道館いっぱいに響き渡る黄色い声の中で、これを演奏したんですか?
「音楽性で評価されたい」と武沢さんがどこかで答えていたのを呼んだ記憶がありますが、
まさに「俺たちはハードロック・バンドなんだ!」という意地と、その見事な実力を知らしめるに十分な演奏です。
歌謡曲的には残念ながらあまり売れそうもないと思わせる曲です。ハードロック的には実にかっこいいのですが、日本のハードロック好き達の耳に入る前に、フェードアウトしていった感が否めません。時代が…あと五年早ければ…安全地帯が早すぎたのかもしれません。ハードロック道をひたすら驀進して五年ほど踏ん張れば、あるいはハウンドドックやこどもバンドのような売れ方をしたかもしれません。ただ、安全地帯はハードロック道で踏ん張ることができませんでした。それをするには、玉置さんの作曲能力と安全地帯の演奏力、そして適応力が高すぎたというべきでしょう。
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