安全地帯『リメンバー・トゥ・リメンバー』八曲目、「リターン・トゥ・フォーエバー」です。
この曲を聴くと誰もが思うことですが、譜割が細かくて、早口です。まるで、ゆずです。そして肝心なことですが、ゆずは、当時まだいませんでした。
うーん、これは書くとわたくしの音楽経験の浅さをバラしてしまうことなのですが、わたくしの聴いた曲のなかでこの曲に一番近いのは、ピストルズのSilly Thingなんです。79年の歌ですから、当時はまだ最新に近い頃ですよね。……でも、ねえ……安全地帯とピストルズ、イメージが違いすぎます。
きっと、アメリカなりイギリスなりに、こういう早口ソングの一派があって、それなりに影響力があったんだと思うんです。それで、洋楽ファンたる安全地帯のメンバーたちにも、素養の一つとして作用していたのだとは思うんです。でも、わたくしはそれを知らないのです。だからバレてしまうんです。…ああ…。もう開き直りましょう。こういう早口ソングのルーツをご存知の方がいたら、ぜひこっそり教えてください!
さて、この曲ほどAメロBメロサビって言い方が無意味に聞こえる歌も珍しいですね。いや、きっとリハーサル譜にはAとかBとか書いてあるんでしょうから、AメロBメロは存在するのだとは思うのですが、ふつうの歌謡曲的構成でないことには誰もがうなずけますよね。
いきなりサビ、というのはよくあるパターンと言えばそうなのですが、次のフレーズ、次々のフレーズが、サビの後でないというパターンが絶対にありえないものになっています。それくらいサビと一体化しています。
歌謡曲的な構成では、いきなりサビを頭に持ってくるのは、目立たせるためであって、そのあとちゃんと前奏らしきものがあって、順当にAメロBメロ、そしてサビ再び、というパターンが一般的でしょう。前奏、AメロBメロサビといってもOKなように作られています。つまり、いきなりサビの必然性はそれほどないわけです。
ところが、この「リターン・トゥ・フォーエバー」は、いきなりサビでなければ成り立たない曲です。通常のAメロBメロにあたる部分が、サビの後でなければ唐突すぎて信じられない曲になります。信じられないだけで、それはそれでいい曲になるかと言えば、けっしてそうではないでしょう。
これを、おそらく安全地帯史随一の早口で一気に歌いきるわけですから、あっという間に曲の世界に引きずり込まれざるをえません。なんと恐ろしい曲!
この曲は、なんといっても、この曲構成の物凄さに注目してほしい曲なのです。この曲は歌メロディーが力づくで先にどんどん走って行って、構成は後から見たらこうなってました、という曲だと思います。天才玉置浩二のインスピレーションを誰も止めようがなかった……このデモだと、こうとしかできない!と、安全地帯のアレンジ力・演奏力で肉付けしたものでしょう。
突っ走って、一気に終わります。松尾由紀夫さんの細かい歌詞が、その突っ走り感をさらに高めます。内容はやけに叙情的ですけど。そこがピストルズとぜんぜん違いますね(まだ言ってる)。きっと、ものすごく時間をかけて作りこんだ歌詞だと思います。松尾さんが玉置さんに「器用な男」と言われるのは、きっとこんな工夫をしてくれるところなんじゃないでしょうか。
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