安全地帯『リメンバー・トゥ・リメンバー』四曲目、「イリュージョン」です。
クリーントーンのギター・アルペジオ、ベースでのリズム、おそらくキーボードでのホーンっぽいリードメロディーで始まるこの曲は、二曲目「ラン・オブ・ラック」ととても似た、玉置デモ・ナマ素材さっぱり調理風の曲です。
クレジットを確認していまさら知ったのですが、川島裕二さんは、このときすでにキーボードで加わっていたんですね。もしかしたら、ホーンっぽい音は川島裕二さんが弾いているのかもしれません。
この曲で特筆すべきは、見事なリズムワークだと思っています。いや、もちろん全曲見事なんですけど、この曲のサビ〜間奏〜サビ〜後奏を、あっさりしすぎのリズム(ただのエイトビートとか)で刻むと、ひどく凡庸な曲になるのではないでしょうか。ズシーンと深めのスネア音、高音域をカットしてそうなベース、そのぶんシャリーンと音の通るギターで、タイトなリズムワークを見事にキメるのは、さすが職人!とうならざるを得ないアレンジ・演奏スキル・ミキシングです。安全地帯からすれば、なんでその程度のことを?と不思議がるでしょうけど、アマチュアのわたくしでは、とても自分のバンドでこんなリズムをキメる自信がありません。ましてや、ライブなんかもってのほかです。
玉置さんのメロディーメイキングと歌唱の能力は相変わらず凄まじいですが、あくまでバンドの曲なんだということを意識している感じがあります。これはハードロックバンドではごく普通の意識だとは思うのですが(違うと思う方にはお気を悪くさせてしまうかもしれませんが)、ボーカルは楽器の一つに過ぎないのです。それを、おそらく玉置さん自身がのちの時代よりももっと強く意識していた(よく言えば洋楽志向、ハードロック志向ですが、悪く言えばアマチュア時代のそういう意識のままだったと言えなくもありません)のではないか……とわたくしは想像しています。
「ボーカル以外誰も聴いていないよ! そんなところ作りこんだって無駄なんだよ!」
わかってる、わかってるんだ……でも、こうとしか、できないんだ……いや、そうじゃない!こうとしか、したくないんだ!
もし、こんなわたくしの想像が少しでも当たっているのだとしたら、安全地帯はさぞ辛かったと思います。
最近でこそ、インターネット上に個人の文章が蓄積されてきまして、安全地帯の歌「以外」の部分を聴きこんで、その難しさ・素晴らしさに惚れている人が、私以外にもいたのだと、わかってきました。しかし、少なくとも2000年ころまでは、そんな情報は私の知る限り皆無に近かったのです。80年代前半では、なおさらでしょう。ファン・レターを書く熱心な人もいたかもしれませんから、本人たちにそういうファンからの評価フィードバックがなかったわけでもないでしょうけど、玉置さんばかりが注目されていったのは、はた目に明らかでした。注目の集まった玉置さん自身も、「こんなんでいいの?」「え? (注目するのは)そこかい?」といった違和感をお感じになったかもしれませんね。
すべては推測・妄想ですが……(そういうブログなんです)。
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