2016年05月08日
エイジ
安全地帯『リメンバー・トゥ・リメンバー』三曲目、「エイジ」です。
ライブ『We're Alive』では、指名手配中らしき玉置さんがビルの屋上で電話帳を読んでいて、メンバーは地面で横一列に並んでリンゴを剥いている、という、とにかく不穏なんだけど趣向がよくはわからない映像で盛り上げようとしていた曲です。
ライブの映像で見るとわかりますが、前奏が、これは当時武沢さんが使っていたギターシンセだったんですね。スタジオ版は、なんともいえません。キーボードでしか作れない音にも聞こえますし、ギターシンセの音に聴こえないこともありません。
仮にギターシンセだったとして、ボリュームを上下させながら冷たい風が吹いてくるような雰囲気を演出します。スタジオ版ならあとからレバーを上下させれば済みますが、ライブ盤でもギターシンセでこれをやってしまうのが武沢さんの凄いところです。いわゆるバイオリン奏法ってやつです。
そしてクリーントーンのギターとベースのユニゾンの八分刻みで徐々に盛り上げ、(この演出はスタジオ版にはないのですが)深く歪んだオーバードライブのギターとドラムで一気に最高潮に達し、歌に突入します。
ふう(前奏だけで書き疲れるほどこの曲は凝っているのです)。
さて、歌に入ってからはテクニカルなツイン・ギターとタイトなベース・ドラムのバッキングで、いつもの安全地帯、という感じになります。一枚目のアルバムですでにこのスタイルが完成していることがわかります。
つまり、安全地帯は、「ワインレッドの心」〜「悲しみにさよなら」のような曲をまだ当時は作れなかったということはなく、作らなかったのだということがはっきりとわかります。作れるけれど、演奏できるけれど、しなかったともいえます。少なくとも、売れると思ってアピールしようとする気はなかったのでしょう。
それくらい、この曲はのちの安全地帯に近いスタイルで作られています。のちのライブでもしばらく演奏されているところを見ると、メンバーもそれが後からわかって、あるいは気に入って、セットリストに組み込んでいたものと思われます。ずっと後の「銀色のピストル」に近い立ち位置でしょうね。
とりわけENDLESSのライブで聴くことのできる演奏は完成度が高く、まだ『リメンバー・トゥ・リメンバー』を聴く前だったわたくしは、これを聴いて「なんだ、このやたら凄い曲は!」と慌ててレンタルレコード屋さんに行ってスタジオ盤を探したことを覚えています。
さて、お気づきの方も多いと思われますが、スタジオ盤はキーがAm(イ短調)で、ライブ盤より一音高いんですよね。玉置さんが歌いづらかったから低くしたという可能性もなくはないですが(のちの「どーだい」も同じ事情かもしれません)、一音低いGm(ト短調)のほうが響きがよりさみしく感じられて、曲に合っているように思われます。
Bメロ、サビと、このアルバム随一の寂しくも美しい歌詞に彩られ、「エイジ」はギターソロを迎えます。オーバー・ドライブの効いた、指板を広く使うダイナックで美しいメロディーです。ライブを見るとどうやら武沢さんが弾いているようですが……わたくし個人的にこれが安全地帯のギターソロで最も好きなものです。
そしてBメロ、サビと繰り返し、後奏でギター・ソロの続きをさらに響かせるライブ盤と、それを省きサビのバッキングを繰り返してフェードアウトで終わるスタジオ版といったように分かれます。スタジオ版に詰め込まず、ライブで少しだけ披露するところがニクいですね。底知れぬ実力を秘めているようにしか思えないじゃないですか。なんでもかんでもスタジオ版に詰め込んで、ライブでさっぱり再現できない見栄っ張りミュージシャンとはわけが違います。
さて、ギターのことばかり書いてしまいました。歌はさきほども少し述べましたように、このアルバムでは数少ない、「ワインレッドの心」以降の安全地帯が好きな人にそのままウケる可能性が高い曲といえるでしょう。
もし、「ワインレッドの心」がなければ……安全地帯はこの路線をしばらく突き進み、アルバムにひとつかふたつ、このような極上のミドルテンポの哀愁ロックを残してくれたのではないか……と思わずにはいられない曲です。
のちの安全地帯のスタイルですでに作られている曲、ではあるのですが、のちの安全地帯ではけっして作られないタイプの曲でもあるのです。「この路線を主にやって行くぞ」という気負いがない状態で作られたであろうこの曲は、この時代の安全地帯にしかない絶妙の緊張感とそれゆえの儚い美しさに包まれています。
「ワインレッドの心」がなければ……という思いは、「ワインレッドの心」以降の安全地帯の大ブレイクを思えば、想像することすらメンバーや陽水さん、松井五郎さん、そしてほかのファンの方々に失礼千万なことなのかもしれません。
「あれが破滅の始まりだった」と、「ワインレッドの心」を振り返った玉置さんの心情も、いまでは変わっているのかもしれません。
ですから、「ワインレッドの心」がなければ、という思いを、この曲を聴いてふと思い出す、というのが、わたくしのこの曲の楽しみ方であって、それ以上でもそれ以下でもない、としか言いようがないんだと、つい熱くなって考えてしまう自分への戒めにしつつ、最高に好きな曲の一つであるこの曲のご紹介を終えたいと思います。
安全地帯1 Remember to Remember [ 安全地帯 ] 価格:1,545円 |
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マンガのエイジ、読んだことないですが、江口寿史の漫画だったと思います。わたしよりちょっと年上の人たちが読むマンガだった気がします。上條淳士の「TO-Y」みたいな感じで。当時サンデー読んでたんですが、わたしにはTO-Yはまだ早かったようで、あとから18歳ころに読んだら面白いのなんの!
奥様が安全地帯エイジと、オフコースのさよならが青春ソングだそうで「万歳!」
武沢さんのギターと六土さんの太いベースがが随分効いてますね。構成も三段階ロケット方式みたいにAメロ、Bメロ、サビでためながら苦しそうに唄う玉置さん。初期の安全地帯の名曲の1曲。
電話帳に何の意図があったのか……なぜリンゴを剥くのか……非常に謎めいています。たぶん大した理由はないのでしょうけども(笑)。
謎の映像が動画サイトにUPされていました19年1月4日公開
PVなのだろうか?最期の方で玉置さんが見ているのは電話帳だと思うが
ワンナイトシアターにエイジは含まれていし未収録テイク?