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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2016年11月26日

夢のつづき


安全地帯IV』一曲目、「夢のつづき」です。

もうわたくしのパソコンでは、「つづき」が「続き」と変換されることがほとんどなくて、逆に困ることがあります(笑)。

一曲目にこんなスケール大き目のバラードをもってくるのは、安全地帯史上初なのではないでしょうか。「安全地帯II」をいきなり「あなたに」で始めるくらいの衝撃です。

そう、安全地帯では、バラードが一曲目になることはほとんどないのです。玉置浩二ソロですと「花咲く丘」や「願い」、「明りの灯るところへ」がありますけれども。ですから、『安全地帯XI STARTS 「またね…。」』で一曲目の「またね…。」を聴いたとき、「夢のつづき」の再来だ!と喜んだものです。

「ふは…っ」と息を吸う音がきこえて、リバーブ(残響)の効いた玉置さんの声「ゆ〜め〜の〜」で始まります。もう、ほとんど使われることはないであろうリバーブ。なんて効果抜群なんでしょう。リバーブを用いることがたとえ玉置さんの本意ではなかったとしても、玉置さんのスキルならばリバーブなしでも十分に聴かせることのできる歌であったとしても、このリバーブは、効いています。

そしてアルペジオのギター、シンセのストリングスにのせて、Aメロはしめやかに歌われます。

そして、ドラムとベースが入って、Bメロ…Aメロと後半のメロディーが異なるフレーズ、いわゆるブリッジが紡がれて、曲は早々にサビへと入ります。

ヴァースとかブリッジ、コーラスって言い方にあんまり慣れていないもので、AメロBメロサビと書いてしまいますけども、ほんとうはAとかBとかはリハーサル譜に書かれたAとかBとかのことであって、リハーサル譜を見ていない聴衆の側がそんなことをいうのはおかしいのかもしれないですね。玉置さんの曲はつくりが洋楽チックなので、ヴァースとかコーラスとかいったほうがぴったり当てはまる場合も多々あるのだというのは、なんとなく承知しております。わたくしの音楽理解の浅さと慣れの問題です、はい。

「エクスタシー」ではじめて知ったことばを使ってみるならば、いわゆる「ファルセット」でサビが歌われます。しかし……これほど豊かな「ファルセット」なんてあるんでしょうか。マネして歌う気にもなれないほど、いや、若いころマネはしてみたんだけど見事に撃沈した(笑)、信じられない歌声です。

そして、ボーカル、ギター、ベース、ドラム、シンセサイザーの安全地帯フルセット(笑)のまま、二番が演奏され、ああ〜もっとこのままこの恍惚に浸っていたい〜と思っていたところで、間奏にハーモニカらしき音が加わり、ノックアウトされます。歌詞が、恋人たちがこれまでの時間を振り返って、「手帖」だの「記念の指輪」だの「帽子」だの言ってちょっと懐かし気な雰囲気に浸っているような情景を描いているそのときに、そのハーモニカの音色はちょっと完璧すぎます。完璧すぎて卑怯です(笑)。だって安全地帯にハーモニカいないじゃんか!予想できないよ!……あ、玉置さんが吹けばいいのか、すみません、読みが浅かったです、と頭を下げざるを得ない完璧さです。

やや、すみません、熱くなりすぎました。熱くなりすぎたんですが…これじゃすまないのがこの歌の凄いところです。

歌はその後、サビを繰り返してフィナーレを迎えるんですが……なんと、後奏ではピアノが聴こえます。ピアノですよピアノ!遠くで聴こえていたピアノ!こもれ陽のピアノ!なんだよ卑怯じゃんか、安全地帯にピアノいないじゃんか!……あ、六土さんが(以下略)

……とまあ、ややムリに熱くなった感もなくはないですが(笑)、このくらい思う存分誰かに語りたくなるくらい、このハーモニカとピアノに若き日のわたくしはやられたのです。わずか4分31秒の曲なのに、ハーモニカとピアノに強烈な懐かしさを覚えさせられるのです。

歌詞と歌、ギター、ベース、ドラム、シンセのストリングス、そしてハーモニカとピアノ、使っているものはごく普通の、現代のロックと何も変わりのないものです。それなのに、これ以上の「懐かしさ」を演出・表現できる曲が、現代までにいったいいくつあるというのでしょう。サイモン&ガーファンクルの「アメリカ」、ロッド・スチュアートの「パープル・ヘザー」くらいです、他にこれに似た気分になるのは……。ほかに知っていたら、誰か教えてください。この種の刺激にわたくしは飢えています(笑)。

この頃の玉置さんのゴシップを知っていたら、けっして自分の恋人に歌いたいなんて思いつかないかもしれないんですが(それ以前に大概歌のスキルが足りなくて歌えないだろう、というのはおいといて)、それでもこれは、恋人に歌って聴かせたい曲です。片思いではおススメできません。この曲の「懐かしさ」は、少なくとも幾月かの恋人期間があって、その間に記念的な何かがあって指輪をさがしたことがあるくらいの経験がないと、かなり共感しにくいものです。

……そう考えると、安全地帯はもの凄いですね。中高生を対象年齢外にしているも同然です(笑)。生徒手帳とか、露店のファッションリングとかでもいいんでしょうか。それならあるいは……というのは冗談としても(笑)、かなりオトナなラブソングだというのは確実でしょう。

一曲目からいきなりテンション高く語ってしまって、残りの曲どうしようと思わないでもないんですが、それを考えると先に進めなくなるので、このへんで終わりにしてしまいたいと思います(笑)。『安全地帯IV』一曲目、「夢のつづき」でした。

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2016年11月23日

『安全地帯IV』


安全地帯の4thアルバム、『安全地帯IV』の紹介です。

Amazon.co.jpのレビュー等からは、これを最高傑作に推す人も多いようにうかがえますね。

ヒット曲「悲しみにさよなら」「碧い瞳のエリス」を収録しているというだけでなく、この二曲がヒット曲のなかでも人気の高いものであることであることも、評価を上げる要因になっているのかもしれません。

また、「捨て曲がない」という評判も散見されます。

安全地帯、玉置浩二にはもともと捨て曲がないと考えている当ブログにとっては、それはごく当然の評判でもあるのですが(笑)、逆にいうと、他のアルバムには捨て曲があるけれどもこの『安全地帯IV』にはそれがない、とお考えなのかもしれませんね。うむ、それは当サイトにとってはけっして当然ではないぞ(笑)。

わたくしも、なんだかんだでこのアルバムが好きなようで、CDを二枚持っているほかに、LPも一枚持っていました。LPは完全に保管用、観賞用で(ジャケットが大きいのがよかったのです)、針を落としたこともないのに、いくつかあった人生の転機のどこかで、いつの間にか失ってしまいました……。それはともかく、わたくしも他のアルバムにはない愛着をこのアルバムには感じていたようです。CDが二枚あるのは、一枚目を聴きすぎて傷だらけにしてしまい、まだ聴けるんですけど引退させてあげようと思ったからです。

さて、恒例の、曲ごとの短いコメントをしてみたいと思います。

1.「夢のつづき」 一曲目がシングル曲でなくこの曲であったことに、おそらく誰も文句を付けないであろう、名バラードです。
 
2.「デリカシー」 六土さんのベースがこの曲の雰囲気を作り出していますね。「夢のつづき」からこの曲に入ると、コントラストの鮮やかさに息をのみます。

3.「碧い瞳のエリス」 ヒットシングルの、美しいマイナー・ポップスです。このアルバムを初めて聴いたとき、曲全編を貫く美しさに圧倒されたものです。

4.「合言葉」 サビの疾走感に心地よく酔えるロック・ナンバーです。これも「碧い瞳のエリス」とのコントラストが効いています。「静→動→静→動」で螺旋階段をだんだん登っていく感覚です。

5.「こしゃくなTEL」 螺旋階段を登った先にある、楽しい曲枠に属すると思われる曲です。「眠れない隣人」の路線ですね。

6.「消えない夜」 B面に入って一転、アコースティック・ギターによる儚げなバラードです。儚げで美しいのに、ラブラブなふたりが主人公という、悲しい恋をしていることが丸わかりな曲です。

7.「悲しみにさよなら」 悲しい恋をしているふたりが、その悲しみに「さよなら」するという演出でこの曲順になっているとしか思えない、「ワインレッドの心」に次ぐ安全地帯第二のヒット曲です。

8.「彼女は何かを知っている」 タイトルからして不穏な、猜疑心と恋情とが入り混じった感情を、歌詞だけでなくアレンジ全体で表現している、全力投球の不穏恋愛ソングです。安全地帯はこういうのがほんとうに巧い!

9.「ガラスのささやき」 これも前曲に引き続き、穏やかならぬ心情をバンド全体で表現する曲なんですが、前曲よりもさらに感傷的になっていることがよくわかる一曲となっております。アレンジ全体がせつない美しさであふれています。

10.「ありふれないで」 アルバムの最後を飾る、すこし前向きになった心情を表現するバラードです。B面はひたすら悲しい恋を表現するものでしたが、この曲も恋の悲しさは少しも解決されていません。解決する必要はないですけども。そんなときにすこしだけ前を向いた心の、一種独特の輝きを表現しているように、わたくしには思われます。

……とまあ、このアルバムの構成としては、A面が「静→動」の螺旋階段で盛り上がっていく心情の物語、B面が、その後の悲しい恋の物語、というふうに、今の時点では考えております。

おそらくですが、こういうアルバム全体を通してボンヤリと感じられる物語というのは、聴く人一人ひとりによって異なるものなのでしょう。わたくしには、それは玉置さんと石原さんがどうしてもその物語の主人公のように思われて仕方がないのですが、かりに松井さんや玉置さんがそれを意図していたとしても、それでもそれも多くの物語の一つに過ぎないのでしょうね。音楽によって作り上げられる美しさを、一人ひとりがきっと違う物語からボンヤリと感じているにもかかわらず、それを誰もが極上の美しさに感じられるからこそ、このアルバムの評価は高いのだと思われます。

かりに製作者側が、その「物語」を構築するなんて考えていなかったとしてもです(笑)。「一曲一曲、大事に作っただけです」とか言われたらこけちゃいますね。

さて、このアルバムには川島裕二さんがクレジットされていますので、おそらくシンセサイザーのアレンジか演奏か、あるいはその両方かで、川島さんが参画していることがうかがえます。このアルバムには大胆なシンセサイザー音が随所にちりばめられており、その分ギターサウンドは生々しい音にやや特化されているように感じられます。それが原因でJUDAS PRIESTの"TURBO"みたいに賛否両論になった……ということは全然ないようです(笑)。いいですよね、このアルバムのシンセサイザーは。

さてクレジット関連でいえばもうひとつ、このアルバムにはAll Songs Written by 松井五郎というクレジットが入っています。すなわちそれは、井上陽水さんの詞はひとつもない、ということであり、アルバムすべてが松井さん玉置さんの同世代コンビで作詞・作曲されたことを意味します。わたくし個人の見解としては、これは前述の「物語」構築の上で決定的な要素だったと思っております。

また、これはこぼれ話に近いことですが、ジャケット裏のヒゲと眼鏡は……何なんでしょうね(笑)。「エイジ」の映像でリンゴを剥いているなみのよくわからない演出です。東京都庭園美術館で撮影されたジャケット表の写真がずば抜けて雰囲気がいいように思われるのですが、ジャケット裏で「?」です。このあたり、写真とか映像とかの世界というものは、わたくしにはわからないものがあります。

さてさて、次回以降、「夢のつづき」から一曲ずつじっくり語ってゆこうと思います。

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2016年11月20日

瞳を閉じて


安全地帯III 抱きしめたい』十曲目、「瞳を閉じて」です。

このアルバムのラストを飾る壮大な曲……ではなく、小品と呼んでいいような、とにかくかわいらしい曲です。

エレクトリック・ピアノいわゆるエレピの音、ギターのアルペジオ、ストリングス、二番にだけドラムとベース、管楽器によるものらしき間奏……もしかして、これが全てなのでしょうか。管楽器らしき音を、わたくしの推測が当たっていればですけど、武沢さんがギターシンセで弾いたとすれば、アルペジオは矢萩さんなのかもしれませんね。

『ENDLESS』では、エレピだけのシンプルな伴奏で玉置さんが朗々と歌っていましたが、この曲は六戸さんが何役もこなすので、ライブでは再現不可能と判断し、いっそのことエレピだけでいこう、と考えたのかもしれないですね。シンプルに聴こえるこの曲ですが、実はとても手がかかっていることがわかります。

さて、こんなかわいらしい曲ですが、歌詞はずいぶん穏やかならぬものです。

「消えそうに安らかな想い出」って……安らかな想い出が消えそうなんですか!それは一大事だ!

「ひとりのままに〜ふれあえばなくしてく ときめき」って……ふれあえばふえあうほど、つまり知れば知るほど刺激がなくなっていって、もしくは知れば知るほど嫌なところが見えてきて……だから「ひとりのままに」いるほうがいい、あるいは、一人じゃないんだけど、まるで一人でいるままのような心境に保つよう努力して、ということでしょうか、それはまた、なんてワガママな!(笑)

……とまあ、かわいらしい曲調に隠された、なんだか不穏なニオイを、心ならずも嗅ぎつけてしまいました。このブログを書くようになって、歌詞を見たり聴いたりするだけでなく「読もう」と意識的に努力するようになったおけげです(笑)。

ヘンなツッコミをいれてはみたものの、こういうふうにワガママで、何にも脅威なんてないのに不安だったり揺れていたりするのが若い人の心ってもんでしょうし、そういう心情を汲んだ、あるいはそういう心情に沿った歌詞を書こうと、松井さんが心を砕いたというだけのことだなあ……と思い直しました。つまり、完璧に野暮なツッコミでした。以後、気を付けます(笑)。

この曲をもって『安全地帯III 抱きしめたい』は終わりになります。こんなレビューに三十曲以上も付き合ってくださった皆様に、厚く御礼申し上げます。頑張りますので今後もどうぞよろしくお願い申しあげます。

次回からは『安全地帯IV』のレビューを書きたいと思います。

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2016年11月12日

エクスタシー


安全地帯III 抱きしめたい』九曲目、「エクスタシー」です。

「あれはディレイなんだ」

田中さんが、エクスタシーのバスドラフレーズに関し、ご自身のサイトでインタビューに答えた記事でそうおっしゃっているわけですが、「あれ」とはどこのことなんでしょう?

(出典:https://web.archive.org/web/20161107043847/http://www.tanakayuji.com/memories/pg37.html

おそらく、冒頭から始終響いている、左右に振られているバスドラの音のことでしょう。速さ的には通常のシングル・バスドラで十分叩ける(踏める)ものですが、何といっても音が左右に振られていますので、ツイン・バスドラにして、それぞれにマイクを立ててレコーディングしたと考えるのが最も自然です。

ところが、田中さんはあっさり、それは機械的にそうしただけだよと答えてしまいます。ということは、田中さんは普通に叩いた(踏んだ)だけであって、その音を機械でリピートさせ、かつ左右に振った……ということになります。

えー!!

ウソだー!!

と言いたくなるくらい、自然な音です。いまもヘッドフォンで聴いていますが、同じ音を機械でリピートさせたとはにわかに信じられません。左右に振られているから、耳が(脳が)追いつかなくて同じ音だと確かめられないだけかしら……?きっとそうなんでしょうけど、どうも信じがたいです。田中さんがそうおっしゃっているからそうなんですけど……自分の耳と脳を信じられなくなる暴露話をありがとうございます、田中さん、またひとつ、謙虚になれそうです(笑)。

『Stardust Rendez-Vous』でもバスドラは左右に振られていますので、同じ仕組みを使ったことがわかりますね。『安全地帯VI LIVE〜月に濡れたふたり〜 』では左右には降られていないように思われます。これはマイクの置き方、ミキサー上のチャンネルの振り分け方にもよりますので、会場にいないとわからないですね……。もちろん、これは田中さんは当然ですが、一定以上の練度に達したドラマーならこのくらいの速さでバスドラムを踏み続けることはそんなに難しくないので、『安全地帯VI LIVE〜月に濡れたふたり〜 』では田中さんはバスドラをこの速さで踏んだということは、十分に考えられます。

……と、いきなりドラムの話からなんですが、この曲、歌詞を見てしまうと、もう、エロくてエロくて……ボーカルからギターから、すべてがエロく聴こえて仕方ないので、とても語りづらいのです(笑)。

田中さんのディレイだって、歌詞を見てから聴くと、あちゃー、これは胸の高鳴り!エロいわ!(笑)

……すみません、きっとわたくしの心がけが悪いか、もしくは松井さんの意図にドンピシャリの素直な心だから(笑)、エロくしか聴こえないのでしょう。

「ベルベット」とはガラスのことなんでしょうけど、もう、冒頭のギターも閨のガラスの音がするようにしか聴こえません。窓ガラスじゃないですよ!「ベルベットの肌」なんですから!もう(以下略)。

【追記】「ベルベット」とは、絹とかレーヨンとかに似た織物の一種のことであって、ガラスのことではないとご指摘いただきました。調べてみたらまさにその通りで、何十年も間違って覚えておりました。そんなわけで冒頭のギターの音も、すっかり織物をなでるような音に聴こるようになっています。ひどい話です。

ところでわたくし、この曲ではじめて知った言葉が多いです。「ベルベット」とか「コルセット」もおそらくそうでしょう。子どもの頃に読んだ『三銃士』とかで、侍女コンスタンスが王女マリーのコルセットを付けたり外したりした……とか書いてあったとしても、おそらく意味は分からず読んでいたことでしょう。

「トレモロ」とか「ファルセット」、「ビブラート」といった音楽用語も、この曲で知ったはずです。さすがに「ソプラノ」くらいは知っていましたが……これらの言葉も、松井さん玉置さんコンビによってとても官能的な響きをもたされています。

さてこの曲の、アルバム上の位置づけですが、前作における「ダンサー」の役割を彷彿とさせるものですね。アルバムの終盤をアップテンポの曲でフィジカル的に盛り上げ、シリアスながらにどこか(この曲に関しては、かなり)エロティックな歌詞でメンタル的にも盛り上げる役割を担っています。「ダンサー」の後継者(笑)として、十二分の威力をもった曲だといえるでしょう。それだけに、「La-La-La」よりもかなりかわいらしい感じの「瞳を閉じて」の効果が高まるという効果もあるように思われます。

またこの曲は、極上の武沢トーンがシャリーンシャリーンと鳴りまくっている、わたくしにとってとてもうれしい曲です。ほとんどドラムの話と、エロいという話しか書いていないので、ほとんどとってつけたようなギターの話ですが(笑)。このトーン……創業200年とかの蕎麦屋さんの返し以上の秘伝なのでしょう。このブログを始めて以降も相変わらずエフェクターやアンプをいじくり回して、なんとかこのトーンを出そうと試行錯誤していますが、いっこうに近づいた気がしません。このままだと思いあまってほんとうにリックターナーを買いかねませんが、きっとわたくしの腕ではリックターナーでも同じ音が出ずに、がっかりするに違いありません(笑)。蕎麦屋さんなら弟子入りできますが、武沢さんは弟子なんか取らないよなあ(笑)。このトシでローディーになる努力をするのもかなりはばかられますし、そもそも採用してくれないでしょうから、ここで妄想を書き散らすだけです(笑)。ソロでのスパニッシュギター的なトーンがまた!ああもう!(笑)。


そんなわけで、田中さんのディレイと、松井さんのエロさと、武沢さんの職人技にとことん惚れこむことのできる一曲、「エクスタシー」でした。

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2016年11月06日

アトリエ


安全地帯III 抱きしめたい』八曲目、「アトリエ」です。

こういう暗い曲は、好き嫌いが分かれる……と書きたいところですが、嫌いな人いるの?こんな美しい曲!キャー信じられない!とかも書きたくなります。こりゃー好きずきなのは重々承知なんですが、この曲が嫌いな人は何ゆえにこのアルバムに手を出したのかが大きな謎ではあります。

アコースティック・ギター二本と、ストリングス系のシンセ音、おそらくはこれもシンセで出したオカリナっぽい音、そしてパーカッション……ですね。ベースは入っていないように聴こえますが、これはおそらくライブでも同様で、六土さんはシンセを担当したのでしょう。

「風」のスピードとテクニックによる爽やか感が、一気にスローな寂しさに変わっていきます。この降下感は、なかなかの快感です。

ところが、発売されているライブ盤等で、この順番で演奏されたこの二曲はありません。一番近い『ENDLESS LIVE』でもこの二曲は逆の順(「アトリエ」→「風」)で収録されています。ほかは、「風」はあっても「アトリエ」は収録されていません。

もしかして、この二曲の組み合わせに何か他からはうかがい知ることのできない事情が……「風」を先に演奏してしまうと、アコギ特有の弦の硬さによって指が痛くてたまらなくなるとか(笑)、もしくは、オーディエンスにこの降下感を味わわせるのは興行的に得策でないと判断したか、もしくはメンバーが「アトリエ」を気に入っていない、あるいは玉置さんがこの曲を歌うのが辛くて歌いたくないとか……。

歌うのが辛いとか、オーディエンスの反応とかは、完全にわたくしの妄想ですし、余計なお世話っていうか、そもそもわたくしがどんな妄想をしようと、メンバー的には耳にかすることもないので痛くもかゆくもないわけですが……いやいや、えーと、この妄想も、いちおうそう考える根拠らしきものはあるのです。

それは、松井さんの『Friend』に記されていたことですが、松井さんが、玉置さんの後姿を見て、玉置さんとその当時の奥様との間に、何か決定的な亀裂が生じたと思しき気配を察して、その日の夜に「とてもさみしい詞をぼくは書いた」のだそうです。

つまりこの歌は、玉置さんの辛い思い出を題材にしているわけです。そんなこと言っていたら、一昔以上まえの安全地帯の曲はほとんど全部歌うのが辛いじゃないか、というのも、もっともなのかもしれませんが、この曲ほど辛い思い出にダイレクトに結びつくものが、ほかにあるでしょうか。

「アトリエ」は「キティのスタジオ」で

「屋根裏部屋」は「自室」、

「カナリヤ」は、九月にレコーディングのためにスタジオ入りした「スタッフ」

「なつかしい夢」は、ワインレッドの心以前に抱いていた「ミュージシャンとしての夢」かもしれませんし、もっとささやかな、「家庭を営むという夢」だったかもしれません

「いま逢いにゆく恋人」は、いたのか、いなかったのか……「あなた」に似ていたのか似ていなかったのか…

電話(ベル)が鳴るのは、スタジオの自室なのでしょうか。それとも、東京の住処だったのでしょうか、レコーディング中は本当に誰も出ないことでしょう。

……と、このように、確かなことは何にもわかりませんが、思わせぶり度MAXな歌詞です(笑)。

安全地帯にとってこの時期は、矢継ぎ早に曲をリリースして、勝負すべき時期であったことは確かでしょう。家庭のことを顧みている場合じゃないんでしょうね、だから多くのものを失わなくてはならなかった時期なのかもしれません。あの落合も、三冠王を狙った時期には夫人に子育てをさせてもらえなかった(その機会を失った)と述べているくらいです。

安全地帯はこの後、武道館、横浜スタジアム、海外……、レコード大賞出場、紅白出場、と、日本のロックバンドとしては空前の快進撃を続けます。ですから、この時期に勝負をかけたのは、戦略的には成功したといえるでしょう。

そんな安全地帯、玉置浩二が、戦略上の成功と引きかえにしなければならなかったもの……それをさえも題材にした、悲しいほど美しい曲が、この「アトリエ」なのではないか……などと、わたくしは妄想しているのですが、この曲が後年演奏されなくなるのは、たんにメンバーがこれを大した曲だとは思っていない、もしくは気に入らないだけかもしれません(笑)。わたくしは大好きなんですが。

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2016年10月16日


安全地帯III 抱きしめたい』七曲目、「風」です。

アルフィーの高見沢さんが、ラジオでこの曲を好きとおっしゃった、とどこかで読んだ記憶がありますが…もうソースは確認できませんでした。また聞きのまた聞きの、さらにまた聞き……ですね。

わたくし疑うこともせず読んだ瞬間に「さもありなん」と思いました。高見沢さんはやたらハードロックっぽい人なのに、ソロアルバムでは「赤い糸」とか、今にも消え入りそうな繊細な曲を歌う人、というイメージでしたもので、反射的にありそうだと思いました……。

なんか、心の中で勝手に作られた相性みたいなものがあって、それに初めて気づかされた時の快いショックがあったんですね。そういうときに人はデマを信じるのでしょう(笑)。や、もちろん本当に高見沢さんがそうおっしゃったのかもしれませんけれども。

さて、以前の記事でも書きましたが、この曲はわたくし安全地帯で一番か二番に好きな曲です。それだけに、書きすぎないように気を付けたいものです。

ボーカル:ひたすらやさしくAメロBメロを歌いきった後の、サビの三声コーラスが、信じられないくらい美しいです。

ギター:高速アルペジオをツインで、ときに同じフレーズを弾き、ときに役割分担し、軽快で重厚な演奏になっています。

ベース:ルートと五度上の音を四分で交互に弾きながら、まるで坂道を軽やかに歩く足音のようなAメロ、Bメロを演出し、サビで四分のうち一拍目と四拍目を基本に弾くことで、まるで立ち止まりながら少しずつ歩き、思いを巡らす主人公の足元を表現しているかのようです。

ドラム:サビで多少バリエーションを変えつつも、ロールが基本です。わたくしこの曲でロールの練習をいたしました。ただ連打するだけじゃん、とお思いになる方、ぜひやってみてください。できる人は当たり前にできますが、やったことのない人は、このペースで連打を続けられるようになるまで、思ったより時間がかかるのでは……?

田中さんの意図としてはおそらく、バスドラはベースに、スネアのロールはギターのアルペジオに完全に合わせるということだと思うんですが、これはわたくしに言わせれば神業です。ドラムが打たれていれば合わせやすくなるわけでは必ずしもありません。むしろ隙間がないので、遊びがまったくない機械のような状態になります。どこか歯車が狂うと、バンド全体が一気にヨレヨレになりかねません。スローな曲ながら、メンバー間はものすごい緊張感で満たされていたのかもしれません。

ここで伸びやかに歌う玉置さんたちのリズム感覚って、いったいどうなっているのでしょう。わたくしは一小節が16分割されていることだけで、うお!こりゃフルじゃん!と慌ててしまうのですが、メンバーの頭のなかでは、実は64分割位されていて、四回に一回弾けばいいじゃん、楽だなーとか思っているのでは……と思われるくらい正確です。ライブでも同様なのがさらに驚愕です。デジタル・レコーディングを玉置さんが嫌っていたのも納得です。要りません、デジタル。傍からみても。

さて、歌詞ですが、わたくしこの歌詞には感銘を受け、そんなことして何になるのと今でも思うんですが、歌詞をノートに何回も何回も書いて覚えました。覚える必要はまったくないんですが、覚えたくて仕方がなかったのです。歌詞の世界を自分の血肉にしたいとでも思ったのでしょうか。何かにとりつかれたように書いていました。数学の『解法のテクニック』でも書き写していればいいのに、そんな気は全く起こりませんでした。ティーン時代の精神的偏りが発揮されてしまったわけです。うーん、仕方ないですよね、それしか見えなかったんだから。

松井さんが、合宿所の伊豆から、おそらく軽井沢に恋人とともに「逃れ」て、ひとり早起きの散歩をしている坂道でこの歌詞を思いついた……とは書いていないのですが、そう示唆しているようにしか見えない記述を残しています(松井五郎『Friend』CBSソニー出版、1987年より)。なんとロマンチックな!それも松井さんの演出なのではないかと思わなくもないんですが、制作秘話までロマンチックってどういうことですか!と、松井さんに徹底的に参ってしまうほうが楽しめるのは明らかです(笑)。

この曲は、わたくし街のレコード屋にCDが出回り始めた初期に手に入れ、何度も何度もリピート再生しました。それ以来かれこれ30年くらい、折に触れて聴き続けています。おかげで、聴き逃している音がないんじゃないかってくらい聴きましたが、まだ飽きません。一つの曲にこんなに参ってしまう経験は他にほとんどありません。それ以前に聴いたサイモン&ガーファンクルがそれに近かったかもしれませんが、あの時はLPレコードと、それを録音したカセットでしたので、特定の曲だけを何度も聴いたわけではありません。CDがある、ない、の時代の違いなのか、「風」はLPだろうがカセットだろうが繰り返し聴いてしまったのか、比べようがありませんが、「風」がわたくしにとって群を抜いて特別な曲であることは間違いありません。もはや人生の一部です。

わたくしが、もし高崎晃にハマりきっていた十代後半以降にこの曲に出会ってしまったら、「少女趣味だなあ」で終わったかもしれません。この曲を知っている知人にも、わたくしほど「風」に異常な執着を示しているらしき人は見あたりませんでした。いつどこで何にどのように出会うかによって、人生は変わっていくのかもしれません。わからないものですね。

だからこそ、どんなにソースがわからない話でも、高見沢さんに一種特別な親近感を覚えてしまうのです(笑)。

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2016年10月08日

Kissから


安全地帯III 抱きしめたい』六曲目、「Kissから」です。

この曲は、B面を最初から景気づけるかのような、アップテンポナンバーです。

田中さんの、もっとドシドシ踏みたいのを我慢しているかのようなバスドラと(これが、難しいんです。その老獪さがたまらない!)ガシ!ガシ!と刻まれるスネアのコンビネーションは悶絶ものです。ぜひドラムの音に耳を澄ませてみてください。

逆に、わりと遠慮なくビシビシ弾いているように聴こえる六土さんのベースが、田中さんの控えめなドラムと相まって、この曲の不思議なアップテンポ感を演出しているように聴こえます。そもそもこの曲、テンポ自体はそんなに速くないですよね。

ツインギターは「ワインレッドの心」Bメロ以降のような武沢トーンバリバリのカッティングが鳴りっぱなし、そこへ矢萩さんのアオリと粘っこいオーバー・ドライブトーンによるギターソロの組み合わせという、まさに本ブログ執筆者の大好物です。

そんな、安全地帯の本領発揮!ともいえるアレンジパターンの秀曲なんですが、「恋の予感」と「風」に挟まれているというあまりうれしくないポジションを与えられているように思えます。CDだったら飛ばされちゃうんじゃないかという位置ですね。アナログ盤だったらもちろんB面頭から聴きますけども。

「風」を何べんも繰り返し聴きたかったわたくし、この曲を飛ばしてしまっていた時期がありました。皆様申し訳ございません!わたくしこの曲の凄さに気づいておりませんでした。もちろん、いまでも気づいている保証はございませんが、少なくとも、「風」聴きたさに飛ばすことはございません。

この曲の魅力に気づきはじめたのは、『ENDLESS』を就寝時に毎晩聴くようになってからです。110分テープに録音してあったものを、ウォークマン、というかKENWOODのウォーキングステレオで二時間近くも聴きながら眠りにつくという贅沢をしていた、80年代も終わりの頃のことです。たいてい、選曲的に、序盤のマスカレードとか真夏のマリアとかで眠れることは少なく、だいたい「エイジ」くらいで眠くなってきて、「つり下がったハート」で意識が遠のき、「あなたに」「…ふたり…」でとどめを刺され、「風」のころにはもう眠ってる……カセットがガシャッとB面に切り替わった音で少し気が付いて、ああー、また「風」を聴けなかったなー、と少しだけ思って、また眠ってしまうというのがいつものパターンでした。

そんなわけで、「風」を聴かずに「Kissから」を毎日聴いていたわけです。

「Kissから」、「ブルーに泣いてる」、「Big Joke」、「エイジ」と、見事にギターバリバリのロック色強めな曲が続く曲順で毎晩毎晩聴いていると、「Kissから」のアレンジも次第に耳に焼き付いて、どのフレーズも忘れがたく印象的で、魅力に溢れるものであることが、だんだんにわかっていった、当たり前になっていった、という感じです。

なお、その数年後、メタリカの『…And Justice for All』における「Harvester of Sorrow」でも同じ体験をしております(笑)。メタリカはビデオだったんですけど、これも寝ながら早送りとかしていられないので、真っ暗な部屋で毎晩メタリカのライブビデオを見続けていたら、他の曲との相乗効果で、いつのまにか好きになっていた、というパターンです。アルバムで聴いていたときは、何じゃこの曲、飛ばせ飛ばせ、という感じだったんですけども。

もはや話は完全にそれているんですけど、いまの若い人たち大丈夫ですかね、MP3プレイヤーとかで音楽聴いていて。ライブアルバムぶっつづけ再生とか、ちゃんとしているんでしょうか。心配になります。余計なお世話なんですが。

さて、「Kissから」に話を戻しますと、玉置さんのボーカルが、毎度のことながら、松井さんの計算された歌詞でイキイキと輝いています。

「かっこ」「ベッド」「きっと」「もっと」と、促音で勢いをつけてリズム感を出し(それがまた武沢さんのカッティングと合うんです)、

「砂時計の心」「秘密という響き」という言葉で、ガマンできなさを詩的に昇華させ、

「〜のように〜おいで」と繰り返す歌詞で色気を爆発させるという、

へたにカラオケなどで歌うと非難されかねないギリギリのラインを、玉置さんは卓越した技量と信じがたい歌心で、見事に綱渡りしています。

とりわけ『ENDLESS』ライブで、「いま……」と、消えゆくように歌っているんですが、玉置さんはこういうのが抜群にうまいですよね。力強いのにささやくように歌うって、スタジオでディレクターとかにそんな指示出されても、歌える人いませんって。ただでさえ色気ムンムンの歌詞にこの歌い方をされては、ノックアウトされても仕方ありません(笑)。

そんなわけで、聴き込めば聴き込むほどその凄さがわかるスルメのような一曲、「Kissから」のご紹介でした。

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2016年10月01日

恋の予感


安全地帯III 抱きしめたい』五曲目、「恋の予感」です。

「なんていい曲を書いてしまったんだろう」と、ベストテンだったと思うのですが、テレビ番組で玉置さんが話していました。実際には「ワインレッドの心」の時点で少なくともデモテープはできてしまっていたはずですので、あたかも最近作ったかのように話したのか、それとも作詞、編曲、演奏まで含めての出来を語ったのか、のいずれかですね。

安全地帯のことをだれかと思う存分話せたことがないので、みなさんどのようにお感じになっているかはわからないのですが、

わたくし、シングル曲よりも、その他のアルバム収録曲のほうが好きということが、とてもよくありますもので、「恋の予感」がほかの曲と比べてものすごくいい曲だという感覚はあまりないんです。

ですから、玉置さんが「なんていい曲」と言ったとしても、それを言葉通りには受け取れないんです。ほかの曲もみんないい曲じゃないですか玉置さん、と思うからです。

「いやいやいや、そんな大した曲じゃないんですよ、それなのにみなさんにこんなに喜んでもらえて、驚くやら申し訳ないやらです。それでは、僭越ながら、一段高いところから失礼して演奏させていただきます。メンバー一同、精一杯演奏させていただきますので、みなさまなにとぞ今後も本バンドをよろしくお願い申し上げます」……とかなんとか、ここまで言う人はいないにしても、謙譲の美徳ってやつを多少は見せるのが無難でしょうに、それをあえて見せないところが、玉置さん一流のジョークだったのかもしれません。

さてこの曲、星勝さんによると思われるストリングスアレンジが胸に迫る、いかにも80年代キティ!って感じの切ないバラードになっています。

80年代キティ!の根拠が、来生たかおさんの曲ととても良く似ているストリングスアレンジだから、というだけに過ぎませんけど。

サビの、玉置さんのボーカルは、投手でいうと凄まじいコントロールによる豪速球です。よくぞ叫び声にならずにこんな凄い声が出せるものです。生半可な歌手では、この迫力を出せずに、フェイクを入れた叫び声になってしまうでしょう。このボーカルが、星さんの切ないストリングスをバックに歌われるんですから、そりゃ鳥肌物の曲です。「ワインレッドの心」は、この曲に比べると、だいぶ抑制を利かせて歌っていたのではないかと思われます。「恋の予感」のほうが、ハードロックバンドのパワーバラードっぽいボーカルになっていますね。

同時にこの曲は、安全地帯にとって、ギターロック路線でない、初めてのシングルであり、かつ初めてのヒット曲といっていいかもしれません。

基調となる伴奏は、当たり前ですがドラムとベースなんですけど、ふだんは変幻自在のツインギターが務める部分をピアノとストリングス音色のシンセサイザーが務めています。ギターはと言えば、武沢さんのギターシンセと思しき音色で前奏のテーマメロディーを奏で、歌の最中にアオリをクリーントーンで軽く入れているという、「あなたに」と似たアレンジ方針になっています。「あなたに」ではギターソロがありましたが、この「恋の予感」ではフルートらしき音色で間奏が行われています。

たったいま「あなたに」と似た、と書きましたが、「あなたに」はあくまでアルバム収録曲でした。それに対して、この曲はシングル曲です。露出が違います。テレビに出ることをなんとも感じず、ただの仕事の一部だと割り切っているのならいざ知らず、そうでなければ、だいぶ思い切ったのではないでしょうか。もちろん、彼らが、俺たちはギターロックのバンドなんだ、と思っていればの話なんですけど。

さて、井上陽水さんに提供された歌詞は、のちの「夏の終わりのハーモニー」を除けば、この詞で終わりになります。松井さんが、うまく書けなくて、陽水さんの詞を見てシンプルさに驚いた、勉強になったという意味のことを語っています(志田歩『幸せになるために生まれてきたんだから』より)。

きれいになりたい気持ち、好きだといえない気持ち、それに、なぜ?と聞いてしまう、色男のささやくような歌声

なぜ?と聞かれて千々に乱れる心を表現するかのような、嵐のようにかけぬける激しい歌、切ないことば

なんて完璧なんだ!よく考え付きますね、こんなこと。玉置さんが歌うとこの曲の、いい意味での破壊力がとてつもなく上がるとことを、完全に計算に入れています。『9.5カラット』に、陽水さん自身が歌ったバージョンが収められていますが、そっちはただのいい曲です(笑)。玉置さんが歌うからこそ、の威力があるわけです。

わたくし、井上陽水さんの声はフレディー・マーキュリーより凄い、歌は美空ひばりさんなみにうまいと勝手に思っていますが、それでもこの曲に関しては、完全に玉置さんのほうが上です。もちろん、陽水さんの曲を玉置さんが歌っても、ただうまいだけになるケースが多々あるでしょう。これはもう、曲と歌い手のマッチングとしかいいようがありません。

「なんていい曲を書いてしまったんだろう」という玉置さんのことばには、歌謡曲の仲間に入ってしまうんだ……という軽い後悔のようなものが含まれていたのかもしれません。ワインレッドの心は曲がりなりにもギターロックでした。その後のシングルもみな見事なツインギターが聴けるものでした。しかし、この曲は違います。それなのに、売れそうな雰囲気がプンプンするバラードです。「なんていい曲(売れそうなという意味で)を書いてしまったんだろう」、この道をこのまま進んでしまっていいのだろうか?……という迷いが、この言葉には込められていたのかもしれません。

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2016年09月22日

ブルーに泣いてる


安全地帯III 抱きしめたい』四曲目、「ブルーに泣いてる」です。

アップテンポの、このアルバムでは随一のハードロック的ナンバーです。

ハードロックハードロック言っているわたくしには、ハードロックに聴こえるというだけのことで、多くの皆さんにとっては、ちょっと激しめの、普通の安全地帯の曲でしかないかもしれませんが。

玉置さんが、色んなタイプの曲を書く才能に恵まれていたというのは、誰も疑わないことでしょう。

それと同時に、安全地帯のメンバー全員が、それに対応するだけのアレンジ能力と演奏能力に恵まれていた(もちろん、努力の賜物でもあるでしょう)ということにも、わたくしは何度も驚かされるのです。奇跡的すぎる!

さてこの曲、ディレイの効いたサックス風音色のギターシンセで前奏・間奏・後奏が彩られ、寂しさが演出されています。歌詞も、ひたすら孤独な心情を描いていますね。それなのにこの曲は、ぜんぜん穏やかな曲調ではありません。アップテンポなのにちっとも賑やかに聴こえないのが凄いところです。それによって、寂しさがかなり強烈なものであるような印象をもたされているように思えます。

Aメロでは、(おそらく)武沢さんがメロディーを弾いているんですが、(これまたおそらく)矢萩さんが八分でパワーコードを刻んでいます。これが、田中さんと六土さんのリズム隊によって演出されるタイトさ、スピード感をさらに倍加しています。

Bメロでは、武沢さんがアルペジオ混じりの単音を中心に弾き、矢萩さんが裏拍でリズムをとっているんだと思うんです。わたくしこの分担が聴き取れず、どうやって弾いてるんだろう? としばらく悩んだあげく、二人のフレーズをゴッチャにしたそれっぽい(にすぎない)フレーズを弾いていました。

サビですが、(おそらく)武沢さんのフレーズが、ほんとうに叫び声のように聴こえます。『ENDLESS』のライブバージョンではとくにそうです。わたくし、この曲をかけるたびに、誰かが外で叫んだんじゃないか? とドキリとしたものです。玉置さんが歌詞を間違うあたりで、ドキドキ感が最高潮に達します(歌詞の間違いとは関係がないんですけど)。

ギターの音で、こんなにドキドキさせられたのは、初めてのことだったかもしれません。のちにMEGADETHのHoly Warsを初めて聴いたときなみの興奮です(笑)。余談ですが、この曲のキーがEmなのも、のちにわたくしがヘビメタ好きになった原因だったかもしれません(笑)。…と、いつものように話がそれるんですが。

「ひとりきり」が効果的に用いられる歌詞で、主人公は男性とも女性ともとれるんですが、そこがまたニクいところですね。誰もがこの曲を聴いて、一人の夜に酔うことができます。ハードボイルドの小説に出てきそうな情景じゃないですか。探偵沢崎が、夜遅くにブルーバードから降りて、誰もいない渡辺探偵事務所に帰って灯りをつけ椅子に座ったら、窓の外からは風の音が泣き声のように聴こえている……と、ハードボイルド好きにしかわからない話なんですが、これは都会の暮らしに疲れた女性の共感を得そうだというだけでなく、男性のロマンにもピッタリ合いそうだなあ、ということが言いたかったわけです、はい。

ところで『ENDLESS』ライブバージョン最後の、田中さんのライドシンバルが……それは反則でしょう。玉置さんの歌が終わった後で、田中さんのドラムが泣いてる(涙を流してる)!武沢さんのギターシンセが、泣き声のように聴こえます。

わたくしの耳が悪いのか、スタジオ盤にはこのライドシンバルは入っていないように聴こえます。もしかしたら、ライブのために追加したのかもしれませんね。

そんなわけでして、この「ブルーに泣いてる」、ぜひライブバージョンも併せてお聴きになることをおススメいたします。

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2016年09月11日

Happiness


安全地帯III 抱きしめたい』三曲目、「Happiness」です。

この曲は、フェイドアウトでなく、きっちり終わりまで演奏してますね……って、いきなり終わりの箇所から始めるのは変な話なんですが、個人的に、フェイドアウト嫌いなんです。もっと聴かせて!まだ納得できない!と思いますんで。だから、全曲きっちり終わらせてくれるライブ盤のほうが好きなんです。

さてこの曲は……アルバム紹介でも書かせていただきましたが、「眠れない隣人」的ポジションの楽し気な曲のはずなんです。

「8分」「Happiness」「発奮」と、ことば遊びも絶好調ですし、

「Happiness Happiness」というノリのいいサビも覚えやすいですし

田中さんもハンドクラップなんて使っちゃってますし

……でもぜんぜん楽しげじゃないんですよね、この曲。「おおー!」「いえーい!」「ひゃっほー!」という気分には全くなれない曲です。せいぜい「……フフッ」ですよね。哀愁さえ感じさせる、爽快感とは無縁の感慨が抑えきれません。

そして、おそらくこれは意図的に爽快感を削ぎ落としています。この曲は、「眠れない隣人」的なポジションにありながら、「眠れない隣人」的な役割をぜんぜん担わせようとしていないところに、新しいアルバムにおける挑戦がみてとれるようです。あれほどの成功を収めた『安全地帯II』と同じようなアルバムを作っておけばいいのに!セールス的には!安全地帯はそんな楽な道を選ばなかった、もしかしたら眼中にすらなかったのかもしれません。

松井五郎さんの『Friend』には、このアルバム制作時の、玉置さんの私生活に関することがいろいろと記されています。もちろん、そうした私生活上のあれやこれやが曲作りやサウンドに影響したと考えることもできるでしょう。むしろ、まったく影響がないと考えるほうが不自然でもあります。そうしたことさえも音楽の凄さという形で表現できてしまう玉置さん、安全地帯というバンド、といったほうがいいのかもしれません。

…と、曲以外の話はたいがいにして、

この曲も、たいがいに難しいですね…中学生や高校生のバンドにコピーさせる気はさらさら感じられません(笑)。ひとつひとつが難しいわけじゃないんですが、合わせて演奏するのが難しいんです。

イントロやAメロBメロは、玉置さんがささやき声っぽく歌ってるほかは、よくある安全地帯です。つまり、役割分担の練り込まれたツインギター、ひたすら堅実で、20代にしてすでに老獪ささえ感じさせるリズム隊で構成される見事なアンサンブルです。

サビに入ると、バラード以外ではあまりみなかった、ツインギターによるアルペジオ……いや、この何とも言えない、リズムのアクセントが小節の枠を超えて移動していく感じ…のフレーズを、ツインで披露してくれます。玉置さんが歌うサビという、ある意味ギターのフレーズがぜんぜん目立たないところで(やたら音が追いづらいところで)。ここ、いまだにちゃんとコピーできません。矢萩さんと武沢さんがどんな音程で弾いているのか、どうやったらこんな音になるのか、とても謎です。それっぽくは弾けるんですが、あくまでそれっぽいだけです。コピーの苦労はさておき、玉置さんの歌と、このツインギターのフレーズが、わたくしにとってたまらない聴きどころになっているんです。ぜひ、サビ時のギターに耳を澄ませてお聴きになってみてください!

さらに矢萩さんは、とてつもないハードなソロをぶちかましてくれます。コード進行が単純ですから、もう、ここで弾いちゃうぜ!というあたりのポジションでひたすらトリル、ひたすらハンマリングです(笑)。よくまあ、こんな過激な音で過激なフレーズを、こういう曲に合わせてきますね……このセンスには、まさに脱帽です! 後からいろいろな音楽を少しずつ聴くようになってから、安全地帯はけっして普通じゃないんだということを知ったわたくしですが、安全地帯ばかり聴いていると、こういうソロがあることにも驚かなくなってしまいます。それは危険です(笑)。武沢さんがおっしゃる「画期的」の意味が分からなくなってしまうのです。

ところで、「ジキルに戻れないハイド」は、とても辛い運命を背負っています。凶暴で残酷なハイドと、自分の中の暗い衝動に葛藤する紳士のジキル博士の物語は、やがてハイドになりたい自分となりたくない自分、なってはいけないと思いつつハイドになってしまうジキルの苦悩を描き出します。

この歌で「Happiness」が、甘美な響きでありつつも、禁断の果実的に扱われているのは、「ハイドとなって思う存分、悪に染まる快感」に近い恍惚がイメージされるからかもしれません。

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