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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2017年02月07日

旧校舎のテーマ

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プルシアンブルーの肖像』二曲目、「旧校舎のテーマ」です。

矢萩さんの作曲で、七分以上もある大作ですね。

バスドラの連打でリズムをとり、この……なんと呼ぶかわからない音色なんですが、シンセサイザーで鳴らした音色で、メインテーマの主旋律を奏でているところから曲は始まります。時折目立って聴こえるベースの音にドキリとさせられますが、ああ、ベースかなり大きく入っているな、とそれで気づかされます。フレーズに切れ目に聴こえるストリングス系の音にもヒヤリとさせられます。いや、怖い怖い。

スローなテンポなのに細かく連打されるバスドラ、不穏な音色のメインテーマのメロディー、ときおり存在感を際立たせるベースで、夕暮れどきに逆光で黒く浮かび上がる「旧校舎」をイメージさせるに十分な怖さです(笑)。

さて、曲は第二部とも呼ぶべき不穏さをより盛り上げたパートに移ります。メインテーマを発展させたかのようなやや高音のメロディーが奏でられ、続いて旧式の時計塔が時を知らせる音を模したような音色が、かなりの大音量で鳴らされます。遠くで大きな物が倒れたかのような音がそこかしこに挿入され、旧校舎のなかで起こる惨劇をリアルタイムで体験しているような気分にさせられます。この怖さを演出している張本人は、そう、川島さんですね(笑)。『STARDUST RENDEZ-VOUS』等で聴くことができますが、「プルシアンブルーの肖像」のイントロ的にこのあたりのフレーズを演奏している川島さんの姿を見ることができます。ああ、トーキング・モジュレーターも使っているようですね。「クワアアアア……コアアアア……クエ!」という感じの声がそれです。

怖さ満点の第二部が終わると、曲は突如としてピアノソロになります。これを第三部と呼びたいと思います。怖さ・不気味さのほとんどない、やさしい旋律です。おや?……物語的には一体何を表現しているのでしょうか?惨劇のあったことは知られずにまた朝が来て、通常通りの授業が行われている学校をみつめる旧校舎、という趣向でしょうか。あまりに平和すぎます。

と思ったら、曲はまたメインテーマへと戻りますこれを第四部とします。第四部では、また不気味さを醸し出してるなあ〜でもさっきと同じだしな〜と余裕をかましていると、突然のギターソロに驚くことになります。これがまた、矢萩さんらしいメロウな音色なのに鋭いフレーズで、旧校舎の不気味さを切り取るかのようなソロなんです。ああ!旧校舎の奥深くではこんなショッキングなことが!でも傍目には完全にいつものただの不気味な旧校舎だよ!という演出なのかもしれません。

一瞬、曲が途切れて、あれ、これで終わりかな?と思ったところにストリングスのやさしいフレーズが流れてきます。これがまた儚く美しいフレーズなんです。悲劇をその内奥に隠す不気味な旧校舎、その旧校舎の穢れを洗い流すかのような激しい雨、そして雨は冬には雪になって……すべてを覆いつくしてゆく、そして旧校舎(とカズミと秋人)は、冬花ちゃんの現れる季節を静かに待っている……という演出なのだと、わたくしは思っております。

いや、完全にわたくしの妄想に過ぎないことはよくわかっております。そもそも矢萩さんがストーリーをご存知の上で曲をおつくりになったかどうかすら定かではございません(笑)。ですが、映画のサウンドトラックなんですから、こんなふうに、映画の話とごちゃまぜで妄想を膨らませて楽しんだっていいじゃないですか。

と、まあ、このアルバムの紹介は、こんな感じで妄想をたくましくして参りたいと思います。なんだ、いつもとたいして変わりないじゃないか、というお声もございましょう。いやいや、それは全くその通りすぎて返す言葉もございません。

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2017年01月29日

青空

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プルシアンブルーの肖像』一曲目、「青空」です。

アコースティックギター二本のアルペジオ・ショーを聴くことができるという点では、「…ふたり…」や「風」の系譜上にある曲ということもできるでしょう。しかし、ピアノやストリングスがかなり大きな役割を担っているという点では、上述の二曲とは趣が異なるといわなくてはなりません。ベース、ドラムはかなり控えめ、最低限に近いです。

『安全地帯IV』からもその傾向はすでに見られていましたが、もうこの「青空」の時期では、かなり顕著になってきているといわなくてはならないでしょう。安全地帯五人が出す音を基準にするのではなく、曲が要求する最適なアレンジを基準にしているようなのです。

もちろん、ロックバンドである以上、「あっこの曲、こうしたほうがいいね」とバンドメンバーが曲のほうに引っ張られてアレンジをする・直すことはよくありますから、曲の要求という基準はつねに併せ持っているものでしょう。それでも、あくまで基本となる基準はメンバーの出す音なのです。今となってはもうあり得ないことなんですが、もしロニーとコージーが生きていて、初期レインボーの復活コンサートがあったとして、リッチー・ブラックモアが「あっこの曲、アンプはマーシャルじゃなくてメサブギーがいいネ」とか言って、KILL THE KINGをメタリカみたいに弾き始めたら、私は、泣きながらですが、帰ります(笑)。それはKILL THE KINGじゃない、という以上に、レインボーじゃないんです。レインボーの音、という基準を、聴衆の一人であるわたくしが勝手に持っていて、本家本元レインボーのほうから裏切られたからといって、文句を言える筋合いではないのは重々承知しておりますし、話がもはや安全地帯じゃないというのもわかっております(笑)。『安全地帯II』や『安全地帯III〜抱きしめたい〜』で私たちが体感することのできた「安全地帯の音」も、変わりゆくものなのだとわかってはいるのですが……ここまでピアノやストリングスが入ってくるようになると、「ん?」と気になった人はいることでしょう。事実、安全地帯はこの数年後にバンドサウンドの原点回帰をするかのごとく、『安全地帯VIII 夢の都』へとたどり着くのです。

ところで、ジョーとユルゲンのOVER THE RAINBOWはどうなったかなー、と気になってちょっと調べてみたら、いまはもう目立った活動をしていないみたいですね。まあ企画バンドなんですから当然でしょう。ジョーだって過去の夢にすがりついて生きていくには、まだ歌えすぎですし、また才能に溢れすぎています。全然関係ない話、失礼しました。でもとくに後期のレインボーは安全地帯と相性いいと思うなあ(まだ言っている)。安全地帯・玉置浩二の全曲紹介ブログがもし完結したら、次はパープル・レインボーの全曲紹介を始めようかと思うくらいです。

さて、「青空」に戻りまして(笑)、アルバム紹介でも書きましたが、アコースティック・ギターのアルペジオ、ピアノ、ストリングスで奏でられるこの曲は、イントロですでに青い空と広い大地を思わせるのです。上川盆地の、広い広い大地と澄み切った青空です。盆地なんだから山に囲まれているじゃん!と思うかもしれませんが、いやいやそれは旭川に行ってから言ってくださいよ。ああ、こここそが「青空」の舞台だ!と感じること請け合いです。

そして、どう聴いても「See」でなくて「Say」に聴こえてしまう玉置さんのささやきで歌が始まります。「君」につけられた修飾句(やれ「雲を描く」だの「風とたわむれる」だの)が幻想的すぎて、ため息が出ます(いい意味で)。ああ、これは冬花ちゃんのイメージだ!とわたくしは勝手に思っているのですが、冬花ちゃんのキャラクターはもともと松井さんがつくったものでしょうから、ある程度イメージが重なっても不思議はないでしょう。「小鳥」が手のひらを跳んでゆくというのも、映画の冬花ちゃんに似合いすぎです。

そして、ツインギターのアルペジオ、田中さんのハイハット(これが泣かせるんですよ、また)を交えて最大音量となったサビで、玉置さんが雄大としか言いようのない歌いっぷりを披露してくれます。この雄大さが、「どこでも どんなときでも」は、バブルの東京を離れたバブル後の旭川なのではないかと、どうしてもイメージしてしまいます。もちろん、旭川である必然性はあまりありませんので、聴く人それぞれの「どこでも どんなときでも」があるのでしょう。そうでなくては、この曲が多くの人に支持されている理由がよくわかりません。1992年のアコースティック・ライブでも、この曲のイントロが始まった時は観客から他の曲にはない歓声が上がったのを覚えています。

歌詞に直接的な「好き」「愛してる」をほとんど使わない安全地帯ですから、「好きだと」はちょっとびっくりさせられますが、よくよく聴いたら、君がいう「もの」を「好き」になれるかも、と歌っており、「君が好きだ」とは言ってないんですね。もう松井さんたら!(笑)。「好き」と一言いうだけでこんなにびっくりさせるんですから、安全地帯がいかに奥ゆかしいイメージであったかがうかがい知れますね。そしてそれは、80年代の男女たちの世界でもあるのです。いやー、昭和の男(女)やから、好きとかよういわれへん、という気分になります。もう21世紀生まれの男女が恋の季節(笑)に入っていますので、こういう昭和の感覚は、わたしたち昭和の人間からみた戦後世代のメンタリティーに相当するくらい古臭いものにみえるのかもしれませんね。NHKの『君の名は』をみて、何回すれ違ってるんだよいい加減にしやがれ、とわたしたちが思ったのと同じ感覚だとしたら……ああ恐ろしい(笑)。でもそれが時代の流れってもんです。個人的には絶対に80年代の心を失うつもりはありませんけども。

とかなんとか、いつものとおり何の話をしているんだかさっぱりわからない文章を書き散らかしてしまいましたが、この「青空」は、安全地帯のバラード好きにはきっと気に入ってもらえる名曲だと思います。この当時の安全地帯にしかない色みたいなものがあって、その色がわかる人には一発でストライクでしょう。江夏豊の球が江夏にしか投げられない球であるのに似ています(喩えのほうがわかりづらくて喩えの役を果たしていないのですが、これもいつものことです)。

しかし、ひとつ難点が……究極的には、わたくしの音楽再生環境がしょぼいからなのでしょうが……サビになるとストリングスが邪魔してギターがかなり聴こえづらくなります。『STARDUST RENDEZ-VOUS』のライブ盤でも同様です。『安全地帯VI LIVE 〜月に濡れたふたり〜』くらいギターが大きく入っていないと、サビでのギターを聴きとることは困難です。わたくしの耳を鍛えればいいのかもしれませんけれども、20年も苦労して聴き取ろうと努力してきて、『安全地帯VI LIVE 〜月に濡れたふたり〜』が出たときに狂喜して聴きまくった、つまりラクをしてしまった身には、つらいものがあります。

キティさん(ユニバーサルさん?)、この『プルシアンブルーの肖像 オリジナル・サウンド・トラック』も、リマスターしてください……ぜひお願いします。もっとマシなアンプとヘッドホンを買え?ああー、リマスターが出たら、そうさせていただく所存です(笑)。

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2017年01月28日

『プルシアンブルーの肖像(オリジナルサウンドトラック)』

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安全地帯のアルバム『プルシアンブルーの肖像』の紹介です。

のっけからおかしなことを書かなければなりません。これは安全地帯の他のアルバムとは少し違います。というのは、これは、映画のサウンドトラックであって、安全地帯のアルバムとして発売されたわけではないようなのです。それが証拠に、背表紙には「プルシアンブルーの肖像 オリジナル・サウンド・トラック」とだけ書かれ、「安全地帯」の「安」の字もないからです。

しかし、クレジットを見て、さらに聴いてみればわかりますが、全曲が安全地帯か星さんによって作曲・演奏された、まごうことなき安全地帯の音楽集であることに間違いはありません。他のアルバムとの違いは「映画のために作られた」ことであるという点です。この違いをどのように評価するかは人それぞれでしょう。当サイトは「全曲よい曲であること」を前提にして紹介記事を執筆するという趣旨で書いておりまして、ようするに安全地帯の作品であればそれでいいわけですから、これが「安全地帯のアルバムであるか否か」はあまり気にしないことにしたいと思います。

矢萩さんの「旧校舎のテーマ」、星勝さんの「時計塔のテーマ」、六土さんの「カズミ」は、インストゥルメンタルなんですが、玉置さんでなく彼らの作曲したものが聴けるという点で、とても珍しいアルバムでした。映画のどこで使われていたかはさっぱり覚えていないんですが(笑)。いや、ほんとに。あれ、これは「旧校舎のテーマ」かな?とか、そんなレベルです。かなり気を付けて、つまり映画本編はそっちのけで音楽に集中していないとわからないでしょう。もしかして使われていないか、使われていたとしても数秒なんじゃないか?と思わされます。

1.「青空」 ピアノとアコースティックギターで伴奏される、ステキなバラードです。伸びやかな玉置さんの声と爽やかな松井さんの歌詞で、まさに「青い空」と、広い大地を感じされられます。
2.「旧校舎のテーマ」 矢萩さん作曲のインストゥルメンタルです。なんだか怖い、古い、やけに趣のある、「旧校舎」というテーマにぴったりの曲です。
3.「」 三拍子のバラードです。「冬花」はこの曲のインストゥルメンタルで、こちらは玉置さんの歌入りです。
4.「時計塔のテーマ」 星さん作曲のインストゥルメンタルです。「時計塔」は、映画の中では因縁のありすぎる怖い場所なんですが、まさにその十五年越しの因縁を表現したかのような怖い曲です。
5.「ゆびきり」 童謡を思わせる、ひたすらやさしい曲です。玉置さんの歌の、新たな可能性を世の中に見せつけた名曲と言えるでしょう。
6.「プルシアンブルーの肖像」 シングルで発売された、強力なハードロックナンバーです。映画には、高橋かおりちゃんのダンスを思い出してしまって、曲の世界にいまいちハマれないという副作用があります(笑)。ラッキィ池田め!とか怒るのは完全に筋違いでしょう。
7.「冬花」 「夢」のインストゥルメンタル版です。これは映画の中では「唯一ホッとする」場面をイメージして作られているのだと思われるのですが、すでに針のむしろに座らされた人は(後述)、べつにホッとしません(笑)。
8.「カズミ」 六土さん作曲のインストゥルメンタルです。磯崎亜希子ちゃん演じるカズミのテーマです。これも怖めです。カズミちゃんはべつに怨念たっぷりの死霊ってわけじゃないんだから、こんなに怖めにしなくてもいいのに六土さん!と思わされる渾身の曲です。
9.「Bye Byeマーチからエンディング」 「ゆびきり」の「さよなら さよなら」が「Bye Bye」なんでしょうけど、映画の場面はべつに「Bye Bye」ではないです(笑)。ああ、春彦くんがいちおうBye Byeかなー。前半は「ゆびきり」をマーチ風にした曲(歌入り)で、後半以降は「エンディング」なんでしょうかね。美しくも切ないインストゥルメンタルで、アルバムの最後を飾ります。

さて、このアルバムの歌詞カードには、「冬花シンドローム」なる掌編小説が載せられています。映画の脚本と、ノベライズ本を執筆なさった西岡琢也さんがお書きになったものです。おお、太っ腹!これがまた思わせぶりな小説でして(笑)。さぞかし本編では少女がたくさん落下するんだろう、凄惨な映画だな、と思わされるのですが、そんなことはありません。落下するのは磯崎亜希子さん演ずるカズミだけです。まあ、詳しいことは映画をこれから観る方のために書かないとして(笑)。でも、短いながらもかなり雰囲気たっぷりの力作ですよ。ノベライズ本のほうが映画本編よりいいと思っているわたくしのような不届きものには(すみません、多賀さん、そして出演者とスタッフのみなさん、映画、わたくしにはかなり厳しいものでした。猫パンチさんと同じ感想で「針のむしろ」でした)、うれしい付録です。

しかしこのジャケット!子どものころは、なんだか怖いとしか思ってませんでしたが、大人になってから見ると、各メンバーの特徴は当たり前につかみつつ、サラサラ書かれたように見えて、どうしてどうして味のあるイラストではありませんか。「青空」とか「ゆびきり」の牧歌的なイメージと、映画のストーリーに見られる猟奇性と、どちらも損なわずに示唆してくれる絶妙なタッチです。後から言っているから全然あてにならない評価ですけれども。描いたのは……イラストレーションのクレジットに「矢島功」と書かれていますね。おそらく、この方でしょう。「ファッションイラストレーター」なんですね。なんだか、ファッションなるものにほとんど興味のないわたくしでも、『プルシアンブルーの肖像』の面影を求めて画集が欲しくなります(笑)。

次回以降、このアルバムを一曲ずつご紹介していきたいと思います。

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2017年01月20日

ありふれないで


安全地帯IV』十曲目、「ありふれないで」です。

アルバム紹介の記事で、辛い恋をしていたふたりが、最後に少しだけ前向きになる曲、というような内容のことを書きました。恋のつらさは解決されていないのだけれども、それでも少しだけ前を向いた心情を表現している……前曲「ガラスのささやき」までのクライマックス感が物凄かったために、この明るめながらもやや気だるさが感じられる曲調、前向きっぽく読める歌詞は、「完全なハッピーエンドではないけれども、今後に期待の持てる終わり方」を示唆しているように、わたくしには思われたのです。毎度のことではありますが、曲順に特に意味はなくてランダムに決めました、とかだったら一瞬で崩壊する解釈で恐縮です(笑)。

少なくとも、初恋の甘酸っぱさを表現しているなんて思えない、もちろん、酸いも甘いも知り尽くした男女の恋の歌だとも思えない、このアルバムで「語られてきた(とわたくしが勝手に思っている)」ふたりの恋の歌であると、わたくしは信じたいのです。この曲の終わりに仕掛けられた、一曲目「夢のつづき」のフレーズは、このアルバムが単発の曲をただ十曲収めただけでなく、ひとつの恋物語を構成するように作られたものであるはずだ……と、わたくしは30年も信じてきたのです。単なる思い込みかもしれないのに。ああ、なんだか恋に似た気持ちです。今気づきました(笑)。

さて、アレンジですが……

最初のア・カペラだけで、もう威力抜群ですよね。三声ボーカルで「抱きしめてもいいだろう?」と玉置さんが叫ぶのですから、このアルバムを終えるにふさわしい名曲であることはもう決定的だという印象を与えます。

八分で刻む六土さん、それに応える田中さん、そしてギターは……役割分担がややわかりづらいですが、左チャンネルでアルペジオ主体に弾くのが矢萩さん、右チャンネルでそれに合の手を入れるかのように単音フレーズを弾くのが武沢さん……だと思います。その根拠は、Bメロで右チャンネルから武沢トーンのコードストロークがシャリーンと聴こえるように思われるからなんですが、レコーディングでは実はどちらも武沢さん(もしくは矢萩さん)が弾いていました、というオチももちろんありえます。フレーズはかなりはっきり聴こえるんですが、お二人ともディレイやリバーブをかけて比較的似たトーンで弾いてらっしゃるように思われます。

そのBメロ、リズム隊もリズムを変え、六土さんが八分と四分の組み合わせを弾きます。ギターも掛け合いでなく、比較的速いアルペジオとコードストロークに変わるため、曲が若干スピードアップしたような印象を受けますね、歌詞もここで「自分の思い」をストレートに語るような内容に変わるため、曲が一気に盛り上がります。まさに全パート、計算されつくしたかのように曲の物語を最高潮に持ち上げてゆきます。

「あなたのせいだろう」の箇所は、コードでいうとF#だと思うんですが、この曲はキーがEなので(そう思うだけです)、普通に考えればF#mを使うはずなのです(別に誰が決めたわけではないのですが、セオリー的にはそうなるのが一般的でしょう)。ですから、ここでメジャーコードが入ることによって、なんとなく意外な感じ……、いや、この曲を聴き始めた当時はそんな違和感を感じることはできませんでした。それくらい自然です。あとからコピーしようとして「あれ?」と思った、というだけのことなんですけどね。おそらく、玉置さんは意外な感じを与えようとしてこうしたわけではなく、ごく自然に「こうするとイイよね!」と純粋によいものを創ろうとしていたのでしょう。後のJ−POPアーティストにありがちな小賢しさがまるで感じられません。

そして曲は、「デリカシー」等で聴くことのできる、チャイナ風音色のソロを挟み、トドメと言わんばかりに三声ボーカルのサビを繰り返して終わります。ああー、効いた……いや聴いた……と余韻に浸っているところに、先程少し触れた「夢のつづきreprise」とでも言うべきフレーズが遠くから聴こえてきて、このアルバムを堪能した心を包み、慰めます。これは、冗談ぬきに涙ものです。のちに玉置さんのソロアルバム『あこがれ』にも用いられた手法なんですが、これは効きますね……。思う存分、このアルバムの世界に浸ったという感慨が湧きます。まさに、名演出というべきでしょう。

さて、これでこのアルバムの紹介も終わりになります。次回からは、『プルシアンブルーの肖像』の紹介に入ろうと思っているのですが、ご存知の通り、歌のない曲がいくつか含まれています。これをどうやって文字で紹介するか?本ブログを始める際に想定していた最初の正念場を迎えます(笑)。頑張ってみたいと思います。

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2017年01月15日

ガラスのささやき


安全地帯IV』九曲目、「ガラスのささやき」です。

20年以上昔のことですが、どこかのカラオケ屋でこの曲がリスト本(当時は分厚い本が二冊ずつ各部屋にありました)に入っているのを見つけて、驚いたことがあります。安全地帯のカラオケ曲といえば、『安全地帯BEST〜I Love Youからはじめよう〜』に入っているような曲しかなかったからです。ああ、当時はまだ「あの頃へ」がCMで流れているような時代でしたね。どんな理屈でこの曲がカラオケ曲入りしたのかは謎です。わたくしの知る限り、喜んでいるのはわたくしだけでしたので、歌いませんでした(笑)。だって、ねえ……「DA・YO・NE〜」とか歌っている人たちの仲間になりたくないじゃないですか。わたくしはひたすらニコニコしながら酒を飲むだけです(ワリカン要員?)。

カラオケで歌い惜しみしたごときで、こんなことを語るのも口幅ったいのですが、この曲は知る人ぞ知る秘密の名曲、という位置づけにしておきたかったのです。レンタルや又貸しなどを含めると、一体どれだけの人がこの『安全地帯IV』を聴きとおしたのかはわかりませんが、そのうち、どれくらいの人がこの曲の魅力に気がついたことでしょう。気がつかずスルーし「ありふれないで」を聴き終えて「ああ〜聴いた聴いた、まあ「碧い瞳のエリス」はやっぱいい曲だね」くらいでこのアルバムを聴いたことにした人は、「ガラスのささやき」の物凄さに気がつくことはありません。マルクスの『共産党宣言』を最後の一行「万国の労働者よ団結せよ」だけ読んで、一丁前の顔して学生運動に加わっていた70年代の大学生なみの豪快さです(笑)。わたくし貧乏性なのか、そんなもったいない聴き方はできず、一曲一曲かみしめるように聴きましたもので、さいわい気がつくことができました。

「ひとり傷つき噓つきながら」

しかし、松井さんは、こういうギリギリの綱渡りが、神業級に巧いですね。「それは君の中身の問題だろ、いったい何を悩むことがあるんだ」というオトナ側からの、冷静で、若い人にとっては冷酷なメッセージが明確に含まれています。「ひとり傷つく」って、別に誰も傷つけちゃいないのに、勝手に痛がっているってことですものね。それなのに、そんな冷酷さを少しも感じさせずに、わかるよ君の気持ち、痛いんだろう?ほら、ぼくもさ……いまは、このままでいいんだよ……きっと、すべてはうまくいくさ、と、まるで若い人の心に寄り添い、少しだけ安心させる第二の恋人、とは言わないまでも、憧れの人(少し年上)からの愛情あふれるメッセージであるかのように思わせる、あたたかささえ感じられます。冷酷さとあたたかさの綱渡り、これが玉置さんの声で歌われるのですから、そりゃーたまりませんよ(笑)。

「胸に隠したナイフのままの昨日」

わけがわからない、と切って捨てるのは冷酷なオトナです(笑)。これは、愛と憎しみが入り混じって混乱した感情が、昨日は憎しみのほうに大きく振れて、攻撃的な気持ちになった、そしてそのことを一日たってもなんとなく覚えていて、気持ちがうまく整理できていない、ということでしょう。ああ、こうして言葉で説明するのは、なんて野暮なんだ。でも、こう説明しないと、松井さんの描こうとしていたものが説明できそうもないのだから、仕方ありません。漫画とかで説明できれば話は別なんですが、わたくしにはそんな絵心はございません。ああ、よかった(笑)。ともかく、この曲は、説明しきれないくらいこういう秀逸な表現が多く含まれており、歌詞カードを見ながらじっくり思いを巡らすのが何とも楽しい曲でもあります。

さて、アレンジのことですが……

この曲、ごく簡単なコードストロークのギターの音がとても聴きやすい音量で収録されています。わたくし、これはおもに矢萩さんだと考えています。

しかし、武沢さんの「シャリーン」も時折聴こえます。では、武沢さんは「シャリーン」要員だったのか?いえいえ、おそらくですが、イントロ〜Aメロに流れ続けている、三連の細かいフレーズが、武沢さんの奏でたものなのでしょう。かるーくオーバードライブをかけ、適宜ミュートしながら弾いた音が、ちょうどこんな音になるはずです。運指的にも、巷によくあるギターのハノンフレーズ集には必ずありそうな運指です。しかし、例によってわたくしには再現できそうもありません。なんでこんなにいい音が出るんですか武沢さん……一にも二にも練習ですよね……わかっているんですが、この調子だと、還暦までに到達できそうもありません(笑)。

安易にキーボードに任せず、ギターで出来るところはできるだけギターで弾く、というのが安全地帯のサウンドづくりの根底にある精神だと思います。というより、生粋のギターバンドですから、はじめからキーボードに弾かせる、という発想がそもそもほとんどないんじゃないか、とも考えられます。「そんじょそこらのバンドならキーボードに任せるかもしれないんだけど、俺たちをそんな奴らと一緒にするなよ、ククク…よく見ておけ…」とかは少しも考えておらず、「え?ああ?ギターで普通に弾いたけど……それが何か?」というくらい自然なのだと思われます。

さて、この曲も「デリカシー」と似た思想で、リズム隊が躍動しています。ドラムとベースがぴったり同じリズムを奏でるのではなく、二人が合わせて一つのリズムを作る、という考え方のようです。田中さんが「ツッタッ(ウン)ツタッ」を繰り返しているところで六土さんが「ボ・ボ・(ン)・ボ」「ボ・(ン)ボ・ボ・ボボボ」弾くといったように、言葉だけ見るとズレているんですが、合わせて聴くと見事に一つのリズムになっているように聴こえる、というものです。これは狙ってそうしたというより、ふたりの長年のコンビネーションにより可能になるものではないかと考えられます。

「秘密の名曲」なのに、ずいぶん語ってしまいました。しかし、そもそも「碧い瞳のエリス」と「悲しみにさよなら」しか印象に残らないような人は、このページをそもそも読みませんので(笑)、ある意味安心です。秘密は守られます。

この曲単体でもわたくしにとって「秘密の名曲」の座は揺るぎありませんが、アルバム全体における役割においても、クライマックス後編という重大な位置につけています。機動戦士ガンダムでいえば、アムロとシャアの白兵戦です(笑)。この曲がなければ、ガンダムもジオング撃墜でいきなりエンディングになるようなもので、「え?どうなったの?シャアは?ジオン軍は?」と、打ち切り感満点な理不尽アニメになること請け合いです。この曲は、このアルバムにおいて張り巡らされた、恋物語のすべての伏線を回収する役割があるのです。

「夢のつづき」で安らかなふたりの日々は、どのような悶着の代償として得られたものか?
「消えない夜」のふたりは、あの冬以降、どうなったのか?
「碧い瞳のエリス」の少女は、成長してどのような恋をしたのか?
「悲しみにさよなら」のふたりは、あのままハッピーエンディングを迎えられたのか?

などなど、書ききれない伏線が、言葉に直せばそれだけ野暮になるから書かないままにすべきだったかもしれない伏線が、この曲ですべて回収されているように、わたくしには感じられるのです。

安全地帯4 [ 安全地帯 ]

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2017年01月05日

彼女は何かを知っている


安全地帯IV』八曲目、「彼女は何かを知っている」です。

これはもう、初っ端のリフを中心に作られた曲でしょう。キラキラの武沢トーンで「ジャーンジャジャーン、ジャッジャジャジャーン!」そしてツインギターのハモリで歌へと導く……ああハードロックの様式美がステキ過ぎる!

ちなみに「ツインギターのハモリで」は、『ONE NIGHT THEATER』バージョンのことです。こっちのほうがずっといいと思うんですが、スタジオ盤では、何かやけに控えめなフレーズに替わっています。

横浜スタジアムでのライブは1985年8月31日、9月1日、

シングル「碧い瞳のエリス」は同年10月1日、

アルバム『安全地帯IV』は同年11月24日の発売です。

すると、『ONE NIGHT THEATER』における「彼女は何かを知っている」で聴くことのできたツインギターのハモリ導入フレーズは、言ってみればプロトタイプの一つだった、と考えることができます。うーん、わたくしこっちのほうが好きなんですが(まだ言ってる)。レコーディングにあたって、川島さんのシンセを導入してアレンジを一部再考したのでしょうね。スタジオ版の前奏ではシンセがずいぶん効いていますから、ギターをやや控えめにしたほうが曲全体のクオリティが上がるという判断をしたものと思われます。ギタリスト的にはここは絶対ツインのハモリだ!と思っていても、ギタリスト以外にとっては案外そうでもないものです。

この曲は、田中さんの踏むバスドラに、六土さんのベースがほぼピッタリとリズムを合わせて、タイトに曲を締めます。そうそう、わたしのイメージするリズム隊ってこうなんですよ。わたしにとってはこれがほとんど唯一のイメージですが、安全地帯にとっては、それはオプションの一つに過ぎないわけです。このブログを始めてからというもの、田中・六土コンビの引き出しの多さを思い知ってやっぱり凄いなあ、と感激してきたわけですが、この『安全地帯IV』ではとくにそう感じる機会が増えたような気がします。

余談になりますが、いいベーシストといいドラマーは、ゴールデンコンビになりやすいものでして、高校や大学のサークル等でも、あのバンドもこのバンドもこの二人、みたいなシーンが散見されます。玉置さんのソロ活動でも、結局この二人がリズム隊になっているシーンをよくみるのは、単に二人が仲良しだから、縁があるから、以上の理由があるように思われます。

さて、これまたずいぶん思わせぶりな歌詞のことですが(笑)、

「探偵みたい」「偽名のペン」「まるで女優」……猜疑心の塊みたいになっていて、お互いに綱渡りな感覚でハラハラしてるんだけど、それでもシャツは脱いじゃう(笑)、という、なんだかとても分かりやすい二人の情景なんですが、これ、当人たちにとっては、わりとたまったもんじゃないですよね。もうそういう時期を乗り越えてきたオトナからすれば、「ああー、そんな気分だったかもしれないなあ、言われてみれば。でももう忘れちゃったねえ」なんですけど、当時は必死な気分だったはずです。いまリアルタイムでこういう気分になっている若い人もいっぱいいるでしょうけど、大丈夫です、どんなに傷ついても、いつまでもそんなのは続きませんから、などと先輩風を吹かせているうちは、きっとまだまだなのでしょう(笑)。

しかし、松井さんが「こういう気分」を見事に切り取り、言葉に直してくれていたこと、そして玉置さんの歌声で、いってみれば永遠に、「こういう気分」が保存されていることに、感謝したいです。そうでなければ、きっとすっかり忘れていたでしょうから。

「魅惑」「疑惑」「孤独」「誘惑」、ぜんぶ「〜く」なんですけど、「魅惑」だけ「みわく」と読んで、あとはそれぞれ「うたがい」「ひとり」「なれあい」と読ませます。遊んでますね松井さん!歌詞カードを見て初めて気がつく仕掛けを用意しているわけです。こういうのを「粋だねえ」っていうんじゃないでしょうか。

この曲、これまでの安全地帯の曲の、どれにも立ち位置が似ていないように思われます。しいて言えば『安全地帯U』では「真夏のマリア」、『安全地帯III 抱きしめたい』では「Kissから」かなあ、とは思うんですが、曲順も、担う役割も違います。B面の最初に「消えない夜」をもってきた、その直後に大ヒット曲「悲しみにさよなら」をもってきた、という構成自体が、毎度のこととはいえ新しい試みであったでしょうから、もうこの時点では『安全地帯II』の様式をあまり意識していないということが分かるように思われます。「悲しみにさよなら」の後、「彼女は何かを知っている」「ガラスのささやき」と、ミドルテンポ二連発によって、聴くほうからすれば息継ぎしないで泳いでいるような感覚に陥ります。これが、緊張感のある恋物語をクライマックスに向かって怒涛の展開で進められているような印象を与えているのでしょう。

この曲は、さあ、ここから一気に行くよ、この恋物語、心の準備はいいかな?それー!という、クライマックス前段にあたる曲だと思われます。この曲だけ切り取って聴くような感じじゃないですけど、この名盤のクライマックスの一翼を担う名曲(名場面)であるといえるでしょう。

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2017年01月01日

悲しみにさよなら


安全地帯IV』七曲目、「悲しみにさよなら」です。

年の初めから意気地のないことで恐縮なのですが、この曲は80年代安全地帯第二の大ヒット曲ですから、語るのにもちょっと心の準備が必要なのです。

六土さん「〈ワインレッド〉のイメージから抜けられるかなと思って、ちょっとホッとした」(志田歩『幸せになるために生まれてきたんだから』より)

「ワインレッドの心」以降、いくつもの佳曲をリリースし、トップ10に次々とランクインさせてきた安全地帯といえども、「ワインレッドの心」の大ヒットの後では、どの曲も「ワインレッドの心」の余韻にしか感じられなかったのかもしれません。そりゃ……徳川埋蔵金が発見された山で、あとから千両箱がいくつか出てきたからって、「もしかして信玄公の遺したものでは?」とは思いませんよね。徳川埋蔵金の残りだと感じるのが普通でしょう。

そんな状態が続いたら、新しい畑を耕しているんだか、落ち穂を集めているんだか、自分たちでもわからなくなる、というのはありそうな話ではあります。

現代のわたしたちは、あとから見てますから、「ワインレッドの心」以降の楽曲の素晴らしさも、セールスの好調さも、ライブの盛り上がりも、決して「ワインレッドの心」によるものだけではない、むしろ、彼らはどんどん前に進んでいたんだ、と言うことが、ある程度できるでしょう。しかし、当の本人たちは、そうではなかったのかもしれません。自分たちの実力に謙虚であればあるほど、「もしかして自分たちは一発屋なのでは……?」という疑念は晴れにくかったことでしょう。安全地帯ほどの実力者であっても……。だからこそ、「ホッとした」のでしょうね。これからまた鬼のように忙しくなるのはわかっているのに。なんというんでしょう、音楽に裏切られなかった!という喜び、これはニュートンが万有引力の法則を検証して、やっぱりこれでいいんだ!とわかったときの喜びに近いでしょうか(われながら訳のわからなさに乾杯!)。

それほど、この「悲しみにさよなら」のヒットは大きいものでした。セールスでいうと、「ワインレッドの心」の半分ほどのようですが、それでも十分大ヒットです。誰もがこの歌を口ずさみ、夜はスナックでカラオケの歌詞カードをめくり、有線のある店でも受験生の聴くラジオでも、しょっちゅうこの曲を耳にする、そしてもちろんテレビの歌番組で毎週目にする、という具合です。

さて、松井さんは玉置さんの歌の力を信頼して「シンプルな言葉」で詞を書くことができた、とおっしゃってます。うーん、サビは確かにその通りですよね。簡潔な言葉で覚えやすくて、繰り返しを効果的に使っていて、誰もが一回聴いてこの曲を識別可能にならざるを得ないくらい、印象が強いものになっています。

ただ、サビ以外は、見事に松井ワールドですよね。「抱きしめる腕のつよさ」「夢のつづきさがす」「ひとつの夜にいる」こういった言葉たちは、この曲によって松井さんワールドのイメージを象徴するものになったのか、もしくは松井さんワールドが先にあって、この曲に用いられただけであるのか、(もちろん後者なんですけど)もうわかりにくくなってしまうほど、この曲と、松井さんの言葉と、玉置さんの歌は一体化しています。まさに、ひとつの絶頂期を象徴するような曲になっています。

ところで……わたくしが「心の準備が必要」だと思っていたのには、セールスの規模が大きかった、エポックメイキングな曲だった、ということのほかに、もう一つ理由があります。

なんと……わたくし、この曲のギターが聴き取れないんです!

ああー、白状してしまいました。言わなきゃいいのに勝手に言っちゃいます。みなさま、本当に申し訳ありません。少なくとものこの曲に関しては、わたくしギターのアレンジを語るだけの耳をもっておりません。いや、聴こえるんですよ、シャリーンという武沢トーンも、矢萩さんかな?と思わせるアルペジオのクリーントーンも。ただ、お二人がどのように弾き分けているのか、30年以上もこの曲を聴いておきながら、とうとう今日までハッキリ聴き分けることができておりません。

え?この曲はギター一本じゃないの?うん、コピーバンドでそれらしくやるなら、一本でそれっぽく弾くことはできると思います。先日発売されたスコアでも、採譜者はギターは一本という判断をしたようで、ギター一本分しか掲載されていませんでした。ただ、武沢さんの音と、矢萩さんの音、両方聴こえているような気がするんです。ライブの映像でも、お二人とも弾いていらっしゃいます。

そうなると……二人ともほぼ同じフレーズを弾いていた、という可能性が浮上します。それで、お二人のギタープレイのキャラクターの違いによって、トーンが強く前に出るところが違うので、わたくしに両方聴こえてくるように感じられる、ということなのかもしれません。サビでのアオリは矢萩さん、Bメロのカッティングは武沢さんだとは思うんですが、それ以外は何とも言えない、というのが正直なところです。

そうそう、一応映像でも確認しようと思って、いくつかDVD等をみていて、『ONE NIGHT THEATER』において、玉置さんの後方でサングラスをかけてアコギを弾いている御仁に、目がとまりました。

この御仁、松井さんなんだと、どこかで読んだ記憶があります。これももうソースがわからない話なんですが、非常にありそうな話です。安全地帯がわざわざライブのためにギタリストを雇うわけがありません。松井さんクラスの関係者でなければ、このステージに立つはずはないでしょうから。

ベース、ドラムのお二人は、このアルバムにありがちなハードで華麗な連携プレイでなく、ひたすらオーソドックスな八分のプレイでこの名曲を支え続けます。ニコニコと、ステキなお兄さんたちだなあ〜感満点なんです。難しい曲とか易しい曲とかじゃないんですね。この曲の安全地帯は五人ともみんなそうなんですが、音楽を演奏する楽しさ一杯で、ほんとうに憧れます。

さて、この曲はシンセがわりと大きめに入れられていますよね。だからギターがよく聴こえないんだよ!と文句を言いたいわけでは決してなく(笑)、曲の魅力を最大限に引き出すために、チーム全体で考えた最適な音量バランスでしょう。「碧い瞳のエリス」でも書きましたが、もう五人だけでは難しい曲がこれから増えていきます。それは安全地帯コピーバンドをするときの、ひとつの壁でもあるでしょう。スキルの高いキーボディストなら、五人だけの時代の曲でも適切なアレンジをして加わることができるでしょう。そうでなければ、休むしかありません(荒井注)。だから、五人でバンドを組みにくいといえば組みにくいといえるでしょう。

さてこれで終わりにしようと思うんですが……、『安全地帯ベスト2 ひとりぼっちのエール』で、みなさん思いませんでしたでしょうか?「要らないよ、悲しみにさよなら」って。

あのアルバムには、『安全地帯ベスト I Love Youからはじめよう』に入らなかった曲を入れるべきです。事実、そういう編集方針だったことを伺わせる渋めの選曲ですよね。「悲しみにさよなら」以外は。

曲に罪はありませんが、ヒットしすぎた曲の背負う業のようなものがあって、いささか露出過多気味です。簡単に言うと、食傷気味なんですね。わたくし一時期、この曲をとばしておりました。ちょっと致死量に達しちゃったかな…感が出てしまったのですね。まあ、逆を言うと、過去にそれだけ聴きまくったということなんで、大好きな曲であることに間違いはありません。むしろ、こうなるまで聴きまくってしまうという経験を与えてくれた、わたくしにとって唯一無二の曲だということもできるでしょう。

キティさん……古くからのファンが納得する選曲で、かつ新規購買層も獲得したかったのかもわかりませんが、これじゃ「悲しみにさよなら」がかわいそうです。どうせなら「ワインレッドの心」も一緒に入れてあげるか、あるいは両方入れないかだと思います……。翼くんがいないから、岬くんだけ代表入りさせました的な寂しさが漂っています。

翼くんがいなくてもこの男がいれば何とかしてくれるだろう、という岬くんのポジションに相当する曲なんですが、でもその結果岬君ばかり出場数が増えて、かけがえのないエースなのに疲労をためていく、みたいな、不遇ではないけど悲劇のエース、という印象をわたくしにあたえる曲です、というお話でした。いや、失礼しました(笑)。

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2016年12月31日

消えない夜


安全地帯IV』六曲目、「消えない夜」です。

雰囲気満点の歌詞!のっけから「星屑の名を呼ぶ」って何ですか!「……プレアデス……」とかですか(笑)。そんな訳はないので、これはもちろん比喩なんですが、冷静に考えるまで比喩だと気づかせないのがもの凄いところです。詞の力と歌の力、演奏の力が本気でこの世界を構築しに来てます。冷静に言葉を読みとるスキを全く与えるつもりがないんですね。

言葉を隠したって、何か言いにくいことがあるから黙ってごまかしたのでは?

「忘れかけた記憶の微かな痛み」を感じて、「指先の力が背中でこわれた」というのは、何か嫌なことを思い出して気分が萎えたということ?

あーーー!すべて野暮!安全地帯最高裁で銃殺刑を宣告されても仕方ないくらい野暮です。そうです。この曲は、安全地帯チームが全力で作り上げている世界に浸りきり、すべての感情の機微を美しいヴェールで包み、恋人たちのみにスポットライトをあて、外界はロマンチックなものしか視界に入らないように細心の注意をはらう義務を課しているのです。

ただ、実はそんな義務を意識するまでもないんですね。この世界には強力な魅力がありますので、わたくしもそうなんですが、大概のリスナーはあっさり陥落し、歌詞の内容を疑問に思うことすらほぼないでしょう。

この曲を流せば、たちまちあの世界に行けます。「ふっかつのじゅもん」でたちまちファンタジー世界の勇者になれたのと似ています。

音だけでこれだけの世界を創り出せるのですから、安全地帯はまさに超絶技巧の職人です。わたくし、やや古いタイプの人間ですもので、人間は自分の技巧の範囲内でしか物事を思いつかないと思っておりますから、技巧を高めることが同時に頭や心を耕して豊かにすることだと考えております。ですから、クニハラ派みたいに、武沢さんの目の前でスプーン持ってコップをチンチン叩いて、これが音楽だとおっしゃる方々には、爆笑しか差し上げられません。ああよかった、おれはマチイ派だなあ、とか思うんですが、実際にマチイ派のみなさんからは「あれ?オマエはあっち側じゃなかったっけ?」とか言われてうなだれてしまいそうなくらいにしか技巧がないような気がしないでもありません。

マチイ派、クニハラ派というのは、旭川で出入りする楽器屋によってなんとなく分かれていたアマチュアミュージシャンの派閥ですね。いまはもうなくなっちゃいましたけど、かつてこのエピソードを武沢さんのコラムで読むことができました。頑張ればインターネットアーカイブとかで今でも読めるかもしれません。

追記です。読みたくなって頑張ってみたら読めたので、アドレスを残しておきます。

http://web.archive.org/web/20031127030319/http://yutakatakezawa.sub.jp/

余談になりますが、わたくしも多少旭川にゆかりがありますもので、実は少しわかるんです。この頃の雰囲気。1980年か1981年に、松山千春の『空を飛ぶ鳥のように 野を駈ける風のように』を父が旭川のレコード屋さんで買ったのに付き合った記憶がありますから、おそらくマチイかクニハラか、どちらかだったのだと思います。思えばそのころ、メンバーは上京するかしないかの頃だったのでしょうね。

さて、この曲、アレンジは、シンセがうすーく流れてはいますが、基本的にギターのアルペジオで作られています。わたくしアコースティックギターだと思っていましたが、よくよく聴いたらこれはクリーントーンのエレキギターでしょうね。安全地帯のクリーントーンはほんとうにウットリさせてくれます。いったいどんなギターとアンプを使ったら……いやいや、機材の問題じゃないんですね、本質的には腕の問題です。ただ、安全地帯のこういう曲を聴くたびに、クリーントーンにももっと気を遣わないといけないなあ、と痛感させられます。

ただ、ギターソロだけは、ガットギターに聴こえますね……これも技術でエレキギターでもなんとかできるのでしょうか……不可能な気がしないでもないんですが、あの二人ですから、油断はできません(笑)。ライブでどうしてもギターを持ち替えられない時ならともかく、レコーディングでそんな無理をする理由もないでしょうから、おそらくガットギターをお使いになったと思われます。ただ、通常のガットギターですとかなり弾きづらいポジションになりますので、おそらくカッタウェイ(高音部まで弾けるようにボディが削られている形状)のあるものをお使いになったと考えられます。普通に考えれば、ですけど。なにしろあのお二人ですから(以下略)。

この曲の最初から鳴り響いている田中さんのドラムですけど、最初がそれなりに単調なリズムの繰り返しですから、なんだ楽勝……とか思っていたら、サビでちょっと面喰らうことになります。といっても、あんまり自信はないんですが、サビのドラム、毎小節の三拍めのバスドラ、直前に、ごくわずかにバスドラを鳴らして連打しているように聴こえるんです。これは、ペダルを踏んで、その跳ね返りをさらに押し返すという、わりと慣れが必要なテクニックで、わたくしなど「あっ間違えたちょっと早かった!それ!」とかいうときに偶然そうなりやすいのですが(笑)、毎小節聴こえるところをみると、明らかにわざとです。ああー、田中さん!こんな、こんなわずかな音を!こんなにも丁寧に……!これは感動ものです。皆様もぜひ耳を澄ませてお聴きになってみてください。こうしてわたくしの口車に乗せられて「おおー」とか思っているときに「あれはディレイだよ」とか田中さんがおっしゃったりしたら、わたくし切腹ものです(笑)。

さて、またまた余談ですが、わたくしかつて安物のフォーク・ギターを買って、最初に弾いてみた曲がこの曲でした。すぐにカポタストが必要だとわかりましたが、この曲、EmじゃなくてF♯mだったんですね。ギターで曲を作るとき、EmかAmで作って、そのあといろいろやってみて一番きれいに聴こえる、もしくは歌いやすい、演奏しやすいキーに変えるのがありがちなパターンだと思うんですが、これはきれいに聴こえることを優先したのではないかと思われます。「キツイ奴ら」に出てきた「コモエスタ赤坂」「ラブユー東京」「夜の銀狐」「さよならをするために」、弾いてみるとわかりますが、ぜんぶキーはAmです。だから玉置さんもEmかAmを基準にギターをつま弾くのではないかな〜と、考えるにはちょっと根拠が薄いでしょうか。

で、ですね。フォークギターで喜んでこの曲を弾いていたんですけど、本来の16分アルペジオでなくて、8分でジャンジャンージャジャ、ジャンジャラーンジャジャ、と、六土さんのベースのリズムで弾いていたんです。ああ、この曲でわたくしが一番印象に残っていたイメージは、六土さんのベースだったんだ!と気づかされた瞬間でした。わたくし、いつかはこんな誰かの脳裏に焼き付くベースを弾いてみたいものです。

いやはや、銃殺になったり切腹になったり、あまり穏やかな記事でなくて失礼しました。いつも以上に話が飛びまくっているのも承知しております。こんな年の瀬に大変失礼しました。かさねてお詫びいたします。

2016年中には『IV』が終わるくらいまではいけるかな〜と始めたころは思っていたんですけど、そうはいかずに持ち越しになってしまいました。こんなしょうもないブログですが、新年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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2016年12月23日

こしゃくなTEL


安全地帯IV』五曲目、「こしゃくなTEL」です。

本ブログの常と違うのですが、いきなり歌詞から語ってみたいと思います。

わたくし東京に暮らしたことはないため、「感情線」が「環状線」すなわち山手線の比喩だろうという発想がそもそもございませんでした。手相のアレではないだろうから、「感情」が弛緩したり緊張したりする糸のように表現されたものだろう、とだけ考えていました。ああー、なるほどね、恋愛に悩んで、いろいろ思ったり感じたりしているつもりでも、実はグルグル同じところを回っているだけのあの状態ね、ついでにいうと「1000回」は「旋回」との掛詞になっているわけね、わかるわかる……わかるような気がしますよ松井さん!

ただ、そうなると、「左周り」は、山手線なら「内回り」ですよね。これは何を意味してるのか……?はやくも山手線の比喩だというセンは崩れそうです(笑)。これは東京の人なら生活感覚で何かわかるのかもしれません。わたくし、すでにくじけそうですが、このセンもまだ捨てずにとっておくくらいは冷静なつもりです。地方在住者の人生の謎というセンも、説の一つとしてここに記しておきます。

「女性関係を茶化した詞をいくつか書いた」という記述が、松井さんの『Friend』に残されています。

「ディープキッスは」と「チークダンスは」、「ハンドメイドな」と「ダイナマイトで」、「ミッドナイトの」、「嫉妬ばっかの」「フェイドアウトな」

お得意のことば遊びが効いていて、それでいて男女にありがちな事象を的確に表現しており、かつリズムに乗って歌いやすい、みごとな歌詞でほれぼれします。「ハンドメイドな」とか「ダイナマイトで」「フェイドアウトな」なんて、そもそも品詞がおかしいじゃないですか(笑)。こういう言葉をためらいなく使えるというのは、通常の日本語話者には、簡単にはできないでしょう。さすが言葉の職人!これを色気たっぷりの玉置さんがあの声で歌うのですから、これはたまりません。この時代、玉置・松井コンビは絶好調だったのでしょう。ツーと言えばカーという、阿吽の呼吸、以心伝心……は天才ならぬわたくしでも難しいと感じているのに、この二人の天才がツーカーになるというのは、傍から想像される以上に奇跡的なことに違いありません。

「こしゃくなTEL」だって、通常の日本語感覚じゃないですよね。思えばこのタイトルを思いついて、さらにそれが通る、ということが、いかに玉置・松井コンビの風通しがよかったかを示していたといえるのではないでしょうか。

さていつもとは逆に、ここでアレンジに言及したいと思います。

この曲、アマチュアでコピーしようと思ったら、まずドラマーが悲鳴をあげることでしょう。早くて手数が多いんです。最近のミュージシャンだと、アジアン・カンフー・ジェネレーションを思わせる手数の多さです。ひとつひとつは決して難しくないんですが、こう畳みかけられると、採譜している途中で放り投げたくなります。いや最近、アジアン・カンフー・ジェネレーションのコピーをしていて放り投げたもので(笑)。とくにBメロ以降のバスドラは、一小節ごとに若干違うんじゃないかってくらいバリエーション豊かで、田中さんマニアならぜひ挑戦してほしいものです。

この曲の、わたくしたちが聴いて感じるノリは、六土さんのベースと、Bメロ以降の武沢さんのギターが作っているように感じます。とくに、「なんだった」のあたりで聴ける「シャリーン」という武沢トーンは、そこで両手を突き上げてジャンプしたくなる爽快さです。ぜひ安全地帯のライブで、そこでジャンプしてるのは武沢マニアだけ、という光景を見てみたいものです(笑)。

しかし、「ビッグ・ジョーク」や「マスカレード」、「真夏のマリア」を思わせる、ひたすら細かいカッティング(おそらく単音でしょう)で曲を支え続ける矢萩さんは、もはや仙人か聖人かと思えるほどの職人気質を発揮しているというべきでしょう。曲の良さを絶対に最大限に引き出すぞ!それが俺のこの曲での役割なんだ!という、他のバンドのリードギタリストにはまず見られないほどの、滅私ぶりです。ムリだー、わたくしだったら絶対出しゃばって、ブルージーでメローなフレーズを入れてしまう!いやわたくしのスキルではそれは難しいからできないんですけど、もしわたくしに矢萩さんほどのスキルがあったら、出しゃばらずにいられない!いまのわたくしよりもずっと若いのに……ちょっといぶし銀すぎます。武沢マニアのわたくしではありますが、ここで武沢トーンにはしゃぐだけで終わるには、矢萩さんを尊敬しすぎているようです(笑)。

そんなわけで、「女性関係を茶化した」、しかしおそろしく真面目でハイスキルな音楽集団による、ちょっと簡単にこのノリが出せるとは思えないほどノリにノッていた時期の、愉快でありつつも威厳に満ちた曲、「こしゃくなTEL」でした。この名盤の、A面の終わりを飾るにふさわしい曲だと、わたくしは思います。

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2016年12月17日

合言葉


安全地帯IV』四曲目、「合言葉」です。

この曲は、すぐに気づくことではありますが、前奏〜Aメロが、二小節を単位としたリフで出来ています。

この「二小節を単位とした」というのは、一小節めに2.5回、二小節目に2.5回であわせて五回になるように作っている……一小節目の最後と二小節目の最初をくっつけて小節の切れ目を分かりにくくしている……すみません、分かりにくいですね。わたくしこの手法を昔から「ジミー・ペイジ風リフ」と呼んでいるのですが、どうしてそう呼んでいるのか、自分でも分かりません。きっと昔に聴いていたツェッペリンの曲にそんなのがあったのをたまたま発見して、通ぶってそう呼ぶことにしたのか、たんに立ち読みした教則本か何かにそう書いてあったから、ツェッペリンの音源を聴いて確かめることもせずにそのままそう呼んでいるのかのどっちかだと思います。どっちにしても、我ながら心がけが悪すぎて話になりません(笑)。

玉置さんの歌でいえば「涙の深さに沈」までが二小節なんですが、「なみだの ふ」「か さにしず」といったように、「深さ」が分かれていて、小節のつなぎ目が分かりにくくなるよう工夫されている、ということですね。なんだ、最初からこう説明すればわかりやすかったんだ(笑)。

ともあれ、その「ジミー・ペイジ風」リフをバンド全体で演奏することによって、一瞬変拍子か何かなんじゃないか、と思わせるリズムを聴くものに感じさせます。

Bメロ〜サビは、ふつうの四拍子(Aメロもふつうの四拍子なんですが)ですので、迷うことなく聴くことができます、いや、意図的にそう構成されていて、サビの疾走感に快く身をゆだねることができるわけです。しかしここでニクイのは、毎小節同じギターのリフ(おそらく矢萩さん)と六土さんの八分のルート刻み組は一小節単位、ギターのカッティング(おそらく武沢さん)、ドラムは相変わらず二小節単位、といったように、ある意味二チームに分かれてフレーズを奏でていることによって、その疾走感を演出しているということです。

玉置さんは「といかけた」の「か」「け」「た」が全音符、その後の「甘く危なくあなたをふるわす合言」まで、八分音符、といったように、長短を巧みに組み合わせることによって、疾走感を最高度に高めています。いや、疾走感、なんて言葉の使い方は、ヘビメタ音楽雑誌のレビューに毒されすぎですね。「碧い瞳のエリス」で使った(ような気がする)言葉をもう一度使ってみれば、「どこまでも二人で堕ちてゆく」感覚です。いってみれば「落下感」「堕天感」といったところでしょうか。うん、われながら言葉のセンスが悪い(笑)。

これも、バンドでコピーするとしたら、かなりリハーサルしないとちゃんとコピーできそうもない曲ですね。バンドのなかで二チームに分かれてキチンと合わせるなんて、どんな神業だよ!中国雑技団かよ!こんど何かのはずみでバンドメンバーを募集するときは、この曲を課題曲にしたいくらいです。自分ではできる自信はないですが(笑)。でも、このくらいはできないと、安全地帯バンドなんてできません。

さて、歌詞の内容ですが、「合言葉」というのは、もちろん「山」「川」とかそういうのではないですね(笑)。きっと、ふたりだけにわかる、ふたりだけのエピソードにおいて重要なタームです。

出会ったダンスホールで飲んでいたカクテルがトムコリンズで、「何、飲んでいるの?」「これかい? トムコリンズっていうんだけど……飲んでみる?」「苦…い」「あっはっは、ジンだからね、無理しなくていいんだよ、あれ、この曲…?」「…ニジンスキーね」「わかるの?」「子どものころ踊っていたの」

……とかなんとか!歯の浮くような!そんなエピソードがあったら!「トムコリンズ」と「ニジンスキー」が「合言葉」になるってわけですよ!

すみません、無理してるのが丸わかりです(笑)。トムコリンズなんて気取って飲むやついないよ!それになんだよニジンスキーって、アングラ舞踊かよ!女の子がそんなの「むかし踊ってた」わけないだろ!ニジンスキーなんてダービースタリオンに出てくるノーザンダンサー系の種牡馬としか思わないよ!

そんなこんなで、ブログ執筆者がない経験を雑巾を絞るように捏造してまで解説してみたわけですが、その「合言葉」を「熱い痛み」とか「迷い」とか「嘆き」のあるとき、簡単にいえば痴情のもつれがあって修羅場になっているときに(笑)言ってみる、それに相手が反応してその頃のことを思い出してくれるかどうかを試す、というのが「問いかけた」「あなたをふるわす」という歌詞の意味なのだと、わたくしは思うわけです、はい。

「このままで時をかさねて……何になる」「遠くへ流れてく…遠くへ…」というのが、この修羅場でどうにでもなってしまえという気分になりがちなときでも、それでも「合言葉」に反応してくれる相手への愛おしさをくるおしいほどに表現していますね。ここを乗り越えられるかどうか、乗り越えたほうがいいのかどうかは、この「ふたり」にしかわからないですが、ちょっと遠く離れたところから優しい気持ちで見守るようなポジションにいたいものです(笑)。いや、ちょっとはこういう思いに身も心も焦がしてみたいなあ〜という思いも、一ピコグラムくらいはないではないのですが、やっぱ、いいです(笑)。

「もう、松井さんたら、イジワル!」な、若い恋人たちの心を見透かすような歌詞が、この頃の安全地帯のカラーを決定づけていたのがよくわかる曲ですね。わたくし、『安全地帯IV』ではこの曲が一番好きかもしれません。リズムと歌詞によって演出されるこのイジワルな感じがスリルを味わわせてくれます。

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