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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2016年07月31日

眠れない隣人



安全地帯II』三曲目、「眠れない隣人」です。

『ENDLESS LIVE』を聴くとわかるのですが、アンコール後など、一気にコンサートを盛り上げるべきタイミングで投入する曲として演奏されていたようです。『安全地帯LIVE』では、「こしゃくなTEL〜眠れない隣人〜熱視線」とメドレーで演奏され、フロントマンが並んでステージを前へと歩き武道館を盛り上げているシーンが収録されています。初期のライブでは、ホーンセクションにイントロのフレーズを任せず、武沢さんが据え置きのギターシンセを弾いていましたので、そんなことは不可能だったんですけどね。メンバーだけでライブを行うと、かえってメンバー(とくに武沢さん)が自由に動き回れないということが起こっていたわけです。

サビの「たぶん」直後にで鳴らされる爆発音のようなパーカッション音は、スタジオ版ですと、強く鳴らしたスネア音と区別がつきませんね……。ほぼ当時のライブである『We're ALIVE』では爆発音がわりとはっきりわかりますので、おそらく、スタジオ版でも鳴っているのでしょう。……この時代のスタジオ版は、この曲に限らず音がだいぶ抑え気味にミックスされていますので、ライブ盤を聴いて聴き逃した要素に気が付くことがしばしばです。

ところで、『We"re ALIVE』を観ていて、このタイミングで田中さんがスネアじゃないところを叩いているのを目で確認しようと思ったんですが、必ず絶妙の編集で田中さん以外に画面が切り替わってくれます。まあ、そりゃ、わたくしの都合に合わせて編集するわけはないんですけども。

さて、この曲も、ギターは武沢さんのギターシンセ、矢萩さんの「縁の下の力技」パターンですね。「ビッグ・ジョーク」と同じパターンです。

歌詞は、本ブログでご紹介する曲としては初の松井五郎さん作となります。

のちの「ふたりで踊ろう」のように、勢いだけで駆け抜けてゆく小品、というイメージなのですが、こういう曲は「勢い」を演出するために歌詞が重要な働きをしているものです(謎の先輩風をふかせています)。

いうまでもなく「たぶん」の、くどいまでの連続がこの効果の大部分を担っているように思われます。

しかし、他の要素も作用しているように思われるのです。

「たぶん(2音)」
「あなたは」「死ぬほど」「心に」(すべて4音)
「気まぐれ」「たそがれ」「飽きられ」(すべて4音のうえ、必ず「れ」で終わるという律儀ぶり!)

驚くべきことにこの曲では、このパターンが完全に守られているのです。

「妖しい」「悔しい」「悲しい」(すべて4音で、すべて「しい」!)

といったようにです。

これは、松井さんが玉置さんをどのようなボーカリストか、まだよくわかっていなかったがために、誰にでも歌いやすいように音数を律儀に守ろうとした、というだけのことかもしれません。

しかし、松井さんがどのように意図したかはわからなくとも、この律義さがこの疾走感、勢いを演出したことは、おそらく間違いないでしょう。

もし、松井さんの「よくわからなさ」がこの曲を生んだのだとすれば……まさに偶然、まさに奇跡的です。

玉置さんは節の付け方が独特で、かつ絶対に乱れないという超絶技巧の持ち主ですので、松井さんもそれを熟知したうえでこの後の名曲たちの世界を紡いでいくのですが、もしかしてこの時期だけは、それをよく知ることなく作詞を行った可能性があるのではないでしょうか……だとすれば、後のアルバムにはない要素の一つとして、それが作用している可能性もまた、あることでしょう。

ごちゃごちゃ書きましたが、要するにこの曲では、わたくしこんなことに気が付きましたよ!という、たんなるご報告です(笑)。失礼いたしました。

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2016年07月30日

真夜中すぎの恋



安全地帯II』二曲目、「真夜中すぎの恋」です。

これは「ワインレッドの心」につづく五枚目のシングルでもあります。

玉置さんふうにいえば「エレキギターバリバリ」のロックなんですが、

玉置さんが、本気でそんなことを言っているわけではないだろうな、と思うのです。

というのは、「オン・マイ・ウェイ」や「アイ・ニード・ユー」と比べてみれば、歌謡曲然としているのは作った本人が一番わかっているでしょうし、ギターのアレンジも「ワインレッドの心」寄りなのは明らかだからです。

ですから、玉置さんからすれば不本意な「バリバリ」発言だったのではないか……と、勝手に感じています。

ただし、後期のライブですと、アオリはホーンセクションに任せ、武沢さんは深いオーバードライブをかけ、矢萩さんもディストーションで「バリバリ」に弾きまくっている様子を聴くことができます。

さて、この曲、「ワインレッドの心」に比べアップテンポで、派手に「ロック的なもの」を演出しています。もしかして、「ワインレッドの心」的な曲を期待したファンからは、ちょっと拍子抜けな印象をもたれたのではないでしょうか。この曲は、「ワインレッドの心」がオリコンの一位を獲得した直後、かつ、アルバムが発売される直前にリリースされましたので、アルバムの導火線みたいな役割を期待されたのかもしれませんね。しかし、このタイミングで、中継ぎ投手のような役割を負わせる曲として投入してしまうのは、もったいない気がします。

当時は、「ワインレッドの心」と「真夜中すぎの恋」の二曲、どちらを先にリリースするべきかで星勝さんはじめスタッフは悩んだんだそうです。このスタッフには、およそ10年前に、井上陽水の「心もよう」と「帰れない二人」とのどちらをA面にするべきか悩んだスタッフも含まれていたでしょう。結果として、「ワインレッドの心」が先、「真夜中すぎの恋」が後、という順になります。

もし、「真夜中すぎの恋」が先であったら、安全地帯の運命も多少は変わっていたのかもしれません。どのみち同じだったのかもしれません。もちろんわからないんですが、「真夜中すぎの恋」は、けっして「ワインレッドの心」に魅力やインパクトが劣るものではないと、わたくしは思うのです。

「ワインレッドの心」と同じように、矢萩さんの粘っこいソロで幕を開け、

「ワインレッドの心」と同じように、武沢さんの鋭いクリーントーンによるフレーズ、カッティングが曲の基調となるイメージを下支えし、

そして「ワインレッドの心」と同じように、六土さん田中さんはひたすら堅実なリズムでフロントマンを支え(この二人はガマンしてると思います。本当に)、

「ワインレッドの心」にはないキャッチーな歌声を、玉置さんはそんじょそこらのロックバンドのレベルを完全に超えた技量で歌い切ります。

クリスタルキングのお二人と、ジュリーくらいでしょう、この当時、オリコンチャートに登場したボーカリストで、玉置さんに匹敵しうるボーカリストは。前川清さんとかをロックボーカリストに入れるなら、話はちょっと違ってきますが。

井上陽水さんの歌詞も、「星座」「銀のピアス」「恋の罪、恋の罠」と、これまた人の心をくすぐる雰囲気満点の世界を演出します。

はたしてこの曲の戦闘力は、「ワインレッドの心」の後だからこそ生きたのか、

はてまた、「ワインレッドの心」の前でも十分に生かされるものだったのか……

もちろん、今となっては、いや当時だって、わからないんですけども、妄想してみたいのです。

「ワインレッドの心」が江川だったとして、「真夜中すぎの恋」は西本だったのではないか?(我ながら、なんというおバカな例え!)つまり、どちらが先でも十分に安全地帯という物語を作れたのではないか?

「セールス」という威力の強い事実に惑わされて、「ワインレッドの心」を絶対視しすぎていないか? 「真夜中すぎの恋」が「ワインレッドの心」ほどセールス的に成功しなかったのは、単にタイミングの問題によるのではないのか?

……とまあ、セールスの数字に惑わされているんだか無視しようとしているんだかわからない妄想を繰り広げてみるんですけれども、「ワインレッドの心」ほどには、多くの人が「真夜中すぎの恋」を心に留めていないのは、動かしようのない事実でしょう。

ちなみに、あのコンピュータグラフィックで作った様なピンボール演出のビデオは、一体どんなつもりで作ったのでしょうね。夜の都会、大人のアソビ的な世界をイメージさせるため? 安全地帯の映像にはどうにもねらいが不可解なものが多すぎます。たんにわたくしの趣味に合わないだけで、ツボに入ったらあれほど曲の雰囲気を盛り上げる映像はないのかもしれませんけれども。富士ローランドのギターシンセを構えた武沢さんが不憫に感じられる映像です(あの曲のどこで使っているんだろう?)。

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2016年07月18日

ワインレッドの心


安全地帯『安全地帯II』一曲目「ワインレッドの心」です。

「えー 僕らと みんなの 出逢いの曲を 歌います」

このセリフ、どんな気持ちで玉置さんは言ったのでしょう。

この曲がなければ、出逢いはなかったと、わかっていた、

わからなければならなかったのは、

どんなに辛かったことでしょう。

このような曲を、自分から作る気はなかった。自分たちだけではこの曲は生まれるはずがなかった。

その後のヒット曲も、生まれることはなかった。

それは、玉置さん自身が、誰よりも知っていることでしょう。

その能力がなかったわけでは断じてありません。

星勝さん「浩二はどんな曲でも作れる才能があった」(『幸せになるために生まれてきたんだから』より)

そして、『Remember to Remember』の各曲を聴けば、「ラスベガス・タイフーン」、「エイジ」、「アイ・ニード・ユー」などの随所に、すでにその要素が十分に表れていることは、すぐにわかります。

ここに、最後のピース、井上陽水さんの歌詞が合わされば、最高の曲ができるのは、後から見れば明らかです。

あとは、最高のタイミングで打ち出すだけ……ここに、サントリー赤玉パンチというワインのCMを選んだのは、信じられないほどのナイスアシストでしょう。

ルックスのイメージチェンジは……はっはっは(笑)。いや、笑い事じゃないですけど、「売れる」わけないですよね、『Remember to Remember』のジャケット写真じゃ。世のロック好きに受けるのは「売れる」とは言わないでしょう。少なくとも、それじゃ安全地帯のメンバーが陥っていた苦境を解決する力はなかったはずです。それなら、どんなに不本意でも、髪をセットしてシックなスーツに身を包む以外ありません。

星勝さん「あれ以外に、売れる方法を考えられなかった」(『幸せになるために生まれてきたんだから』より)

本当に、本当に、そうなんです……よね……でも、それが、玉置さんを後に苦しめることになった……いや、そのまま売れないままだったらもっと苦しんだ……そのまま「売れた」以外に、玉置さんの苦しみを避ける選択肢はなかったように思われますが、それがどんなに細い糸であったかは、

この曲、「ワインレッドの心」で「売れた」。その事実によって、イヤというほど思い知らされたことでしょう。

天上の神々の世界のことですから、わたくしのような下々の者は、本来なら察することさえできないはずなんですが、情報化社会はこんな天上の世界の情報まで、かなり信頼できそうなレベルでばらまいてしまいます。

「置き手紙」を聴いて、ああ、この人はどんなつらい恋をしたのだろう……なんて想像するけど、そんなことわかるわけない、ああ、それもせつない……とかなんとか妄想していた時代が、一番楽しかったような気がします。

さて、この曲、一発で覚えてしまう矢萩さんによる粘っこいギターソロのイントロ、

それまでの安全地帯には完全に欠けていた、オトナ(になりかけの人)の心の機微をとらえた、朴訥なだけの男と、勝手に失恋したと思い込んでいる女性による悲喜劇のようなドラマが、甘い歌詞で綴られるAメロ、Bメロ、

ここで発揮される、矢萩・武沢によるコンビネーション・プレーの高い完成度が、いちいち心のロックじゃないところ、ロックしか知らない心の弱いところを、わざと刺激してきます。

そしてこれまた一発で覚えてしまう、韻を踏んだかのような遊び心で、人の心の奥底まで覗きこんでいるかのような「もてあそびぶり」満点な詞にのせて、信じられないほど巧みな技法で、信じられないほど伸びやかで繊細な心の持ち主を思わせる声で歌われるサビのメロディー。これがまた、人の心を溶かすかのように甘い印象を、心を雑巾絞りするかのように強烈に叩き込みます。

ギリギリまで抑えたかのような、粘っこさ(イヤらしい!と書いてしまえば楽なんですが)満点の矢萩さんによるギターソロ

ダメ押しとばかり繰り返されるサビ

超絶技巧を、なんとスパニッシュギターの音色で聴かせる武沢さんのソロ。そこで曲をフェードアウトさせていくことで逆に得られる切なさ。

この間、ずーっと、淡々と曲をキープすることに専念している六土さん田中さんのリズム隊。

完璧としか言いようがありません。

メンバー、星さん、井上陽水さん(ノート三冊も使ったそうです)、キティのみなさん、関係者みんながとてつもない時間と労力を注いで作られた、この完璧さ。

だからこそ、玉置さんは、バンド以外の関係者の力を知ってしまった……。そして、「売れる」ということが、どういうことなのかを、身をもって知ってしまった……。玉置さん自身が「破滅の始まりだった」と振り返った名曲「ワインレッドの心」は、誰が何といおうと、玉置さんの曲と歌の力こそが、この曲の最大要素であるとわたくしは思います。

だから、玉置さんは「これは俺の力で売れたんだ」と思ってもいいはずなんです。普通なら。

でも、きっと玉置さんは知ってるんですよね。自分とメンバーの力を誰よりも信じていますが、自分たちの力だけでは、あと「いくつかのピース」が足りなかった、ということを。

かりにこの曲が、こんな大ヒットでなく(80万枚とも90万枚ともいわれています。これは、80年代中盤では大大ヒットです)、ふつうのヒット(10万枚程度)だったとしたら、彼らの運命もまた違っていたでしょう。でも、時代が、安全地帯を見逃さなかったわけです。

玉置さん「いきなりレコード店に何万枚も注文が来ちゃって」(『幸せになるために生まれてきたんだから』より)

この後、一年に二枚も三枚もアルバムを出すような、信じられないペースで曲を量産してゆく時代に入ります。CMで「24時間働けますか」が流れる時代ですが、その歌が冗談にならないのが、当時の芸能界で「売れる」ということだったようです。

玉置さんは、きっと、この曲を歌うと胸が痛んだことでしょう。「ふつうに、安全地帯の代表曲って感じ」で歌えるようになるまでに、どれだけの回数、この歌をファンのために歌ってくれたのでしょう。

わたしが、この時期の玉置さんに勝手に感情移入して「この曲嫌いなんだ」とか「この曲を好きなのは素人だけさ」とかいうのは、おそろしく滑稽なことです。言ってみたいですが(笑)。

この曲がもたらしてくれた「出逢い」に感謝して、この曲に注ぎ込まれた労力と時間に敬意を表して、そして、奇跡のようなこの曲のあらゆる要素を、これからも存分に楽しみたいと思います。それが礼儀だ、とか、カタギの仁義だ、とかじゃなくて、単にいい曲はそうして楽しみつづけるべきでしょうから。

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2016年07月17日

『安全地帯II』




セカンドアルバム『安全地帯II』です。

初っ端から80−90万枚を売り上げた名曲「ワインレッドの心

続けざまにスマッシュヒットの「真夜中すぎの恋

ライブの重要な盛り上げ役「眠れない隣人

そして松井五郎さん初参加の名曲「マスカレード

空前絶後の名バラード「あなたに

……と、A面(レコード、カセット時代は、ここで一回区切れなのです)は信じがたいテンションであっという間に終わります。

「あなたに」を聴いてボンヤリ恍惚に浸っていると、「ガチャン」とカセットのオートリバースがかかり、我に返ります。

「あなたに」の余韻をさらに盛り上げるかのような「…ふたり…

安全地帯にはここで一気にガーッと盛り上げることをしないで、こういう余韻を楽しむような曲を入れるパターンがあります。代表的なのは「Friend」ですね。

さて、ここから一気に行くぜ!B面!と言わんばかりの「真夏のマリア」(「マリア」とは、石原真理子さんのことだと玉置さんが語ったことがあるそうですね)

16分の刻みというハードなギターワークに支えられるギターポップ「つり下がったハート

ワルツのようなメロディアスハードロックという、新境地すぎて誰も真似のできない「ダンサー

そして「ワインレッドの心」と同じ手法の細かいギターによって彩られる名バラード「La-La-La

レコーディングに一年くらいかかったそうで(あの安全地帯の技量をもってして一年!)、そのとてつもない力の入れようがよくわかるアルバムです。


初めて聴いて、「何度でも聴きたい」とこれほど思わされたアルバムは、当時は他にありませんでした。

もちろん当時は、どれだけの仕掛けがこのアルバムに込められていたかなんて、聴き取れる耳はありませんでした(今でもたいがいですけど)。ですから、単純に曲の良さに聴き惚れたのです。ぞっこんでした。玉置さんの曲、歌の威力にまずノックアウトされたんですね。

その後、何十年か、ことあるごとに聴き続けていくと、一つひとつ、その仕掛けに気づいていきます。ですからこれは、わたくしに「聴きこむ」ということを教えてくれたアルバムですね。

それにしても、どうでしょう!このギターサウンド!おそらく武沢さんの音なんでしょうけども、このシャリーン!という透き通るような音色!この音は一体どうやって出すのと、ずっといろいろ試してきたのですが、どうしても出ません。ギターがリックターナーだから出るんだろう、きっとそうに違いないアハハ〜とか思っていたら、2010年のツアーで武沢さんがわたくしのと同じようなストラトキャスターで同じ音を出していました。まだまだわたくしがドヘタなだけのようです(笑)。

そんなわけで次回以降、おそらく80年代安全地帯のイメージを決定的にしたと思われるこの名アルバム、『安全地帯II』の曲紹介をしていきたいと思います。

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2016年07月16日

アイ・ニード・ユー



安全地帯『リメンバー・トゥ・リメンバー』十一曲目、すなわちラストチューン、「アイ・ニード・ユー」です。

深く歪んだツインギター、重めに響くドラム、ルート弾きを中心に重さを際立たせるベース、これはまさにハードロック!

それなのに「アビーロードの真似して渡る」とは泣かせます。こんな曲でロック少年の一般教養でもあるビートルズを、聴くものに思い起こさせるなんて、ニクい演出です。

余談ですが、玉置さんが『カリント工場の煙突の上に』をたった一人でレコーディングしていたとき、ポール・マッカートニーの『ラム』のように、自分だけでやってみたかたんだ、と話していたということが、志田歩さんの『幸せになるために生まれてきたんだから』には記されています。そうは言わないかもしれませんが、玉置さんにもビートルズの時代があったんだ……と思わされることは、ある年齢層以上のロックファンには、特別な意味をもちます。同じ時代を生きていてくれて本当にありがとう、と思わせてくれるのです。

さて「アイ・ニード・ユー」の話に戻ります。この曲のいわゆるAメロには、聴きなれてしまうともうこれがごく自然にしか聴こえないのですが、ある仕掛けがあるように思われます。「さみだ」「れ〜」と、いわゆる弱起で始まり、「まねしてわたる」で一旦小節内に収まるため、歌が始まって六小節で何か区切れのようなものを聴くものは感じます。八小節なら何も違和感は感じないのに、六小節ですから、なんだかAメロが「足りない」感をもつのです。その後すぐさま「だれもいない」と畳みかけられますので、「ああ、まだ区切れていないんだ」と感じますが、「おうだんほど」「うお〜うお〜」と三小節かけて歌っているように聴こえますが、実際には「うお〜うお〜」で次のサイクルに入っていますから、結局は八小節で辻褄があっているわけです。ただ、弱起で始まり終わりが次の小節に食いかかっていますので、なんだか長い感じを受けます。ただ、「辻褄が合っている」(あまり適当な言い方でないですが)ため、聴きなれると違和感は消え失せます。

あまり理解していない音楽理論っぽい言葉を使って、恥を承知で書いてみましたが、わたしがかつてこれを聴き始めたころに感じた違和感を、現時点でわかるように書くとこうなるのです。

悶絶もののダイナミックなキメ(演奏するとさぞかし爽快でしょう!)を挟み、この曲が好きと言っていた田中さんのドラムがクレッシェンドのフィルインを唸らせ、曲はサビへと向かいます。

Far awayなのはやや残念ですが(笑)、美しいコーラス・ワークを聴かせ、印象的なメロディーをメンバーは歌い切ります。ああ、なんていい曲なんだ、とハードロック好きも安全地帯好きも納得の名曲、アルバムの最後を飾るにふさわしい曲であることを確信させます。しかし!しかしこの曲はそれだけじゃすまないのです。なんと第二のサビとでもいうべきパートがあり、これを聴くと、それまでの曲を一瞬忘れ、ついもう一度この曲を最初から聴きたくなるのです。昔はレコードやカセットでしたからそれが容易にできず、やむを得ずB面の最初から聴き、なんどもこの感覚を味わいます(笑)。

「おまえ そして俺 雨の中 歌いながら歩いた」と、最初のサビ直前の歌詞を、この第二サビでもう一度用いて、さらにキメで悶絶させ、サビを繰り返し、ダメ押しとばかりに第二サビを断行します。

小さなことかもしれませんが、第一サビの頭のコードはFです。それなのに第二サビはF#mから始まるのです!こんなことがあっていいのでしょうか。いや、いいんですけど(笑)、これが第一サビを一瞬忘れさせる要因なのかもしれないなあ……と、わたくしの足りないコード進行知識で解釈しています。勉強になるなあ〜さすが安全地帯だなあ〜とか勝手に心の底から感心していて、実はメンバーはそんなことちっとも考えてなくてただ自然にこうなっただけかもわからないのが面白いところです。いや、面白いのはわたくしだけですけど。滑稽で。

さて、『リメンバー・トゥ・リメンバー』の記事は、これで終わりになります。次回からは『安全地帯II』に進むわけですが、これだけハードロックハードロック騒いでしまいましたので、自分でもちゃんと整理して次のアルバムを語れるか、ちょっと不安になっています(笑)。

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2016年07月12日

エンドレス



安全地帯『リメンバー・トゥ・リメンバー』十曲目、「エンドレス」です。

あっという間に終わってしまう、短い、そしてかわいらしい曲ですね。

アコースティックギターのアルペジオで伴奏されているんですが、簡単にコピーできてしまうくらいの単純なアルペジオです。もしかして、玉置さんが歌いながら弾いたんじゃないでしょうか。そうなると、川島さんと玉置さんだけで録音したのかもしれませんね。仮定に仮定を重ねるような話、つまり妄想ですが(笑)、川島&玉置コンビで録音したと考えるならば、のちの「あこがれ」に通じる雰囲気さえ感じられてきます。水が流れるような音、鳥の鳴き声、木々のざわめき……と、夏の北海道の深い森に迷い込んだような気分を味わうことができます。

松尾さんの歌詞も、英語混じりながら、雰囲気を盛り上げるのにこれ以上ない印象的な言葉を散りばめています。「遠い過去から伝わる息づかい」なんて、意味はさっぱり分からないのに(笑)、なぜかこの幻想的な雰囲気を盛り上げてくれます。確実に。

70年代には、こんな印象はやたら強いのに意味はさっぱりわからないワードを散りばめる手法がすでにあったのでしょうか。その手法は安全地帯をはじめとする80年代前半のアーティストたちが広めたものだと思っていますが、わたくし松井五郎さんがその旗振りをしていたものとばかり思っていました。よく考えたらこの時期の安全地帯はまだ松井五郎さんに出会う前です。松尾さんが元祖…?いやいや、70年代にはすでにこういう風潮が少しはあって、松尾さんも松井さんもそれを発展させたと考える方が自然です。これは、70年代の邦楽を研究する必要がありますね……といっても、ヒットソング集を聴いて、それっぽいのを見つけたら「これだ!」とか勝手に騒ぐだけかもしれませんが。

「この曲はどんな気持ちで作ったんですか?」なんて、制作者サイドに聞かないでおくのが吉ってもんではないでしょうか。こうやって妄想できるほうがずっと楽しいです。ダヴィンチの名画の数々だって、どんなことを表現したくて描いていた、なんて本人の日記に子細に書かれていたら、興ざめもいいところじゃないですか。いろいろな情報・資料をもとに、ああでもない、こうでもない、もしかしてこうなんじゃないか……と、みんなでワイワイ妄想し合って、真実らしきところに到達した、と勝手に思っているところを別の資料でひっくり返されて、またワイワイ……こんなことが、安全地帯の曲でできたらいいな、と思っています。もちろん安全地帯やスタッフのみなさんはご健在ですから、誰かが聞きだそうと思ったらできるのかもしれません。でも、聞きすぎないようにしてほしいなあ……なんて勝手なことを思っています。ああ、わたくしが読まなければいいだけの話なんですが。でも読めるなら読まずにおれようか!(笑)。

「エンドレス」は短い曲ですので、油断しているとすぐに次の「アイ・ニード・ユー」冒頭のスネア「ダダダン!」に驚かされます。きっと、それを狙ってこの曲順にしたんでしょうね。

三ヶ月以上もかかってしまいましたが、いよいよ次で『リメンバー・トゥ・リメンバー』もおしまいです。こんな調子だと、全曲語るまで10年はかかりますね。もう少し頻繁に更新するようにしたいと思います。

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2016年07月10日

冬CITY-1


安全地帯『リメンバー・トゥ・リメンバー』九曲目、「冬CITY-1」です。

1992年、私が安全地帯のアンプラグド・ライブを観に行った時のことです。

玉置さんが「北海道の歌を歌いたいと思います」と言ったとき、私は「もしかして!」と思いました。この「冬CITY-1」を演奏してくれるのでは?いやいやそんなまさか、ファーストアルバムの歌は一曲も歌っていないし、これまでのライブ盤にも収録されていない。そもそも全然イメージが違う頃の曲だし……とかなんとか思っているうちに、この「冬CITY-1」の演奏が始まり、わたくしは狂喜しました。メンバーの見事な三声ハーモニーにわたくしは酔いしれ、そのほかの演奏曲をあまり覚えていないくらいです。はっきり覚えているのは「Johnがくれたギター」「花咲く丘」「時計」「We're Alive」くらいでしょうか……。もったいないことなんですが、それくらい意外でうれしかったのです。

さて、この曲ですが、玉置さんがおっしゃるように、北海道を強烈にイメージさせるバラードです。正確にはあの頃の北海道……メンバーが住んでいたころの北海道ですね。「ティールーム」はともかく、個人経営の喫茶店がたくさんあって、携帯電話のなかった頃に若者はそこで待ち合わせ、退屈を持て余し、車を少し走らせて馬のいる牧場に行くわけです。今の若い人だと、こういう感覚はもう、何だそりゃ?なのかもしれませんね。昔は喫茶店で待ち合わせていたんです。それで、電話番号を控えるかわりに、喫茶店のマッチをいっぱい持ってたんですよ。みんな煙草を吸いましたし、電話番号は書いてあるし。この曲を聴くと、一瞬あの頃に帰ったような気がして、切ない思いになったり、寝込みたくなったり(笑)、楽しい気持ちがよみがえったりします。

この曲は、生ギターをボロロンと弾きながら歌うのにもとても適した曲で、「あなたに」や「青空」あたりとコード進行が似通っています(Eのスリーコードとプラスアルファです)。ギターでこの曲をコピーしながら、ああ、こういうコード進行で玉置さんが作った曲が自分は好きなんだなあ、と感じさせられたものです。

このイントロ〜Aメロに流れている、低音メロディーの音色は、なんでしょうね……現代のフォーク気取りバンドだったらハーモニカを使うところでしょうけど……耳が悪くてすみません。これはおそらく、ギター(シンセ?)で作った音だと思います。生バイオリンの素敵なオブリガードと間奏が入るのですが、違和感なくこの謎の音と馴染みますので、この謎の音がギターシンセだとしたら、よほど作りこんだ音だと思います。生楽器の音と電子音というのは、わたくしの少ない経験のなかでの話ですが、相性がよくないんです。さすがプロ!仮定に基づいてこんなことを言っても全然説得力がありませんが。

サビはギターのクリーントーンとベースで軽く刻みながら、印象的な歌詞で歌いあげられるボーカルを支えます。このサビの歌詞は、初めて聴いた人でも心に残るのではないでしょうか。早い人なら、一回聴いただけで口ずさめるくらいでしょう。

こぼれ話を二つばかり……

一つ目。わたくしのCDは何故か、八曲目「リターン・トゥ・フォーエバー」とこの九曲目「冬CITY-1」の曲順が逆に収録されています。おそらく、ミスなのでしょう。珍しいのでそのまま手元にあります。90年7月25日との記載がありますので、そのときプレスされたCDは、もしかしてみんなこの曲順で出回っているのかもしれません。

二つ目。CDを買う前はカセット(なんと奮発してメタルテープ!)に録音したものを聴いていました。当時、カセットのインデックスに曲名を書き込むんですが、当時はレタリングシートといって、アルファベットの小さいシールのようなものを一字一字こすりつけるものが売られていました。レンタルレコード屋さんとか電器屋さんとか、カセットテープの売っているところなら、たいていどこにでも売っていましたね。わたくし、これでアルバム名、アーティスト名、曲名をご苦労なことに一文字一文字こすりつけていました。ANZENCHITAI I REMEMBER TO REMEMBER みたいに。それなりに時間がかかるんですが、カセットに録音している間には終わります。そこでやっておかないと後から面倒になりますから、一生懸命ボールペンの頭とかでこすってました。ところがこの「冬CITY-1」は「冬」がありませんので、どうしたものかと悩みます。WINTER CITY-1だと曲名が変わっちゃうし、FUYU CITY-1もなんだか間抜けな気がするし……迷った挙句「冬」だけ手書きで書いたような気がします。どうにも見栄えが悪く、そのカセットを見るたびに少しだけ心が痛むんですね。いまみたいにパソコンがあれば何も苦労しないのに……。

どうでもいい話で失礼しました! この曲は、安全地帯屈指の「北海道」テイストあふれる曲です。「オン・マイ・ウェイ」の再販があれば、きっとこの曲がカップリングだったのでは……?と妄想したくなる、そんなステキな曲です。

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2016年07月09日

リターン・トゥ・フォーエバー


安全地帯『リメンバー・トゥ・リメンバー』八曲目、「リターン・トゥ・フォーエバー」です。

この曲を聴くと誰もが思うことですが、譜割が細かくて、早口です。まるで、ゆずです。そして肝心なことですが、ゆずは、当時まだいませんでした。

うーん、これは書くとわたくしの音楽経験の浅さをバラしてしまうことなのですが、わたくしの聴いた曲のなかでこの曲に一番近いのは、ピストルズのSilly Thingなんです。79年の歌ですから、当時はまだ最新に近い頃ですよね。……でも、ねえ……安全地帯とピストルズ、イメージが違いすぎます。

きっと、アメリカなりイギリスなりに、こういう早口ソングの一派があって、それなりに影響力があったんだと思うんです。それで、洋楽ファンたる安全地帯のメンバーたちにも、素養の一つとして作用していたのだとは思うんです。でも、わたくしはそれを知らないのです。だからバレてしまうんです。…ああ…。もう開き直りましょう。こういう早口ソングのルーツをご存知の方がいたら、ぜひこっそり教えてください!

さて、この曲ほどAメロBメロサビって言い方が無意味に聞こえる歌も珍しいですね。いや、きっとリハーサル譜にはAとかBとか書いてあるんでしょうから、AメロBメロは存在するのだとは思うのですが、ふつうの歌謡曲的構成でないことには誰もがうなずけますよね。

いきなりサビ、というのはよくあるパターンと言えばそうなのですが、次のフレーズ、次々のフレーズが、サビの後でないというパターンが絶対にありえないものになっています。それくらいサビと一体化しています。

歌謡曲的な構成では、いきなりサビを頭に持ってくるのは、目立たせるためであって、そのあとちゃんと前奏らしきものがあって、順当にAメロBメロ、そしてサビ再び、というパターンが一般的でしょう。前奏、AメロBメロサビといってもOKなように作られています。つまり、いきなりサビの必然性はそれほどないわけです。

ところが、この「リターン・トゥ・フォーエバー」は、いきなりサビでなければ成り立たない曲です。通常のAメロBメロにあたる部分が、サビの後でなければ唐突すぎて信じられない曲になります。信じられないだけで、それはそれでいい曲になるかと言えば、けっしてそうではないでしょう。

これを、おそらく安全地帯史随一の早口で一気に歌いきるわけですから、あっという間に曲の世界に引きずり込まれざるをえません。なんと恐ろしい曲!

この曲は、なんといっても、この曲構成の物凄さに注目してほしい曲なのです。この曲は歌メロディーが力づくで先にどんどん走って行って、構成は後から見たらこうなってました、という曲だと思います。天才玉置浩二のインスピレーションを誰も止めようがなかった……このデモだと、こうとしかできない!と、安全地帯のアレンジ力・演奏力で肉付けしたものでしょう。

突っ走って、一気に終わります。松尾由紀夫さんの細かい歌詞が、その突っ走り感をさらに高めます。内容はやけに叙情的ですけど。そこがピストルズとぜんぜん違いますね(まだ言ってる)。きっと、ものすごく時間をかけて作りこんだ歌詞だと思います。松尾さんが玉置さんに「器用な男」と言われるのは、きっとこんな工夫をしてくれるところなんじゃないでしょうか。

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2016年07月03日

ビッグ・ジョーク


安全地帯『リメンバー・トゥ・リメンバー』七曲目、「ビッグ・ジョーク」です。

歌詞がなぜかカタカナで書かれているのですが、これもどういう趣向なのか、正直よくわかりません。もう30年も安全地帯を聴いていますが、聴くだけではわからないことがいっぱいあります。

そういえば、この曲名がファンクラブの名前になっていましたね。もしかしたら、ファンクラブの会報などではこういった謎が語られているなんてことがあったのかもしれませんね。あてずっぽうですが。

そんなわけで、もし、カタカナの謎をご存知の方がいたら、教えてくださるととてもうれしいです。30年来の謎が解けるのは快感でしょうね……。単に「小椋さんは最初は普通に書いたんだけど雰囲気が出なかった。なんとなくカタカナで書いてみた。そしたら不可解な感じが出てこれでいいやという話になった」とかでも、当時の息吹が感じられて感激モノでしょう。

また、小椋佳さんと並んで、リンダ・ヘンリックさんなる作詞家の名がクレジットされているのですが、このリンダさんも謎の一つです。さまざまな曲の作詞をした記録があるのですが、それ以外のことがほとんどわかりません。いや、作詞家でしょうからそれでいいんですけど、現代というデシャバリ情報垂れ流し(そうじゃないと生き残れない?)時代から見れば、信じられない奥ゆかしさです。ぜひ、こういう人になりたいものです。

さてこの曲、ギターとベースがひたすら刻みです。のちの「マスカレード」「真夏のマリア」でもそうですが、安全地帯ではこういう指先の体力・忍耐力をもって正確さをひたすらキープすることを要求する曲がたまに出てきます。これは玉置さんの発想じゃないように思われます。これは、矢萩さんなのでは……? この曲は、『ENDLESS』ライブでは派手なギター・シンセでソロが弾かれていますので、武沢さんがソロとアオリを担当したことでしょう。それを矢萩さんがひたすら刻みで支えたのではないでしょうか。こういう、「縁の下の力技」とでも呼ぶべき現象が、安全地帯ではごく当たり前にみられるのです。80年代中盤以降に流行ったバンドブームのバンドたちとは完全に一線を画する(古い側に入るということでもありますが)実力とバックグラウンドを垣間見ることができます。

この曲、歌詞とコード進行が醸し出す勢いだけでいえば、スティングのいたポリスを彷彿とさせます。しかし、矢萩・武沢のテクニカル・ツインギターがそう聴こえさせないように頑張っている……ヘンな頑張りに感じられなくもないんですが、「よく見ておきな。俺たちがやるとこうなるんだぜ……」的なこだわりを感じてしまいます。

相変わらず偏りまくった聴き方ですみません。でも、こうとしか聴こえないのがワタクシなのです。

ポリスはスリーピースですが、安全地帯は強力ツインギターを擁する五人組です。かつ、80年代日本のサウンドテクノロジー、70年代ハードロック・ヘビーメタルのテクニック、ウェストコーストの哀愁サウンド、そしてニューウェイブの息吹さえも取り込んだ安全地帯が、いかに物凄いバンドであったかは、歴史が語ってくれています。何といっても、いままで続いていますからね。少しずつ少しずつ、その凄さが理解されながら。

そんなわけで、この曲をお聞きになるときは、ぜひ八分の「刻み」にご注目を!

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2016年06月19日

オン・マイ・ウェイ


安全地帯『リメンバー・トゥ・リメンバー』六曲目、「オン・マイ・ウェイ」です。

この曲は、セカンドシングルでもあるのですが、売れたという話は聞いたことがありませんので、残念ながら埋もれていった名曲という扱いになるのでしょう。

玉置さん「レコードは全然売れないし」

の時期なんですね……。井上陽水のバックバンドをしながら、コツコツとレコーディングしていった中の、「今度こそ!」の勝負曲だったことと思います。

デビューシングル「萠黄色のスナップ」が、ギターポップとしかいいようのない、よくぞここまでギターでこんなに可愛い曲になったものだ、それでいてギタリストのハートをワシヅカミにする「そう!こういうのが聴きたい、弾きたいんだ」というフレーズ満載に仕上がっているのはもう脱帽だ、という、実に玄人好みの曲であるのに対して(だから売れなかったんでしょうね)、

セカンドシングル「オン・マイ・ウェイ」は、玉置さんふうにいえば「エレキギターバリバリの」爽快ハードロックになっていて、「じゃあ、これならどうだ!」という意気込みを感じます。こういう曲、ライブだと気持ちいいんですよね。演奏するほうも聴くほうも。

1982年…聖子ちゃんが「渚のバルコニー」、あみんが「待つわ」をヒットさせた年です。ロックっぽいところでは清志郎と坂本龍一「い・け・な・いルージュマジック」、サザン「チャコの海岸物語」の年です。そりゃ売れないでしょう、オンマイウェイ。あまりにも爽やかでストレートすぎます。

「絶対売れると思った」「流行っている曲より絶対いい」とは、この曲に限ったことではなく、この時代の安全地帯を玉置さんがそう思っていたということなんですが、

そりゃいい曲だし、演奏力も歌唱力もアレンジの力も文句の付けどころがないし……、

かりに自分が中学生・高校生だったとしたら、こういう音楽を好んで聴きそうな人がクラスにどのくらいいたかと考えてみたら……。シブガキ隊とかマッチとかにキャーキャー言ってるクラスメイト達を、一人だけサザン好きな子が少し冷めた目で見ている……くらいの時代ですからね。もう八年前に陽水の『氷の世界』が100万枚売れたことなど知らないに等しい世代です。そこでクラスに一〜二人は買って聴く子がいて、その他大勢がカセットテープに録音してもらって聴いている、というのが「売れる」ということなんです。ちょっと無理があるのは、後だからわかることではあるんですが、明らかでしょう。

さて、この曲は、エレキギターがバリバリのハードロックでして、ギタリストならコピーしてみるととてもスカッとする曲です。コピーするときにぜひ気を付けたいのは、大事なのは歪みの深さでなく、音量だということでしょう。ゲインでなくボリュームで迫力を出すような感覚でないと、単音弾きがギザギザと汚くなりますので注意したいところです。

イントロでは、ちょっとした手癖なんだと思うんですけど、Dのルート、五度の飾り音を入れて刻み、ルート音や飾り音を四拍目で半音ずらしながらリズムをとるリフになっています。このリフが、曲全体の印象を決めていますね。なお、バッキングはD、Cの繰り返しです。ベース、ドラムは基本的にタイトな八分ですね。

スタジオ版では、おそらく川島裕二さんのシンセが「ギュワーン」とスピード感、「北海道的な広がり」感を演出します。

歌全体を通して、基本的にスリーコード(G、C、D)で、Gの裏コードEmが挟まるだけのコード進行なんで、コピーもおそろしく簡単なんです。ただ、こういうところがニクイんですけど、間奏で、ギターソロのバッキングではDの代わりにBmを使っています。CDに合わせて調子よく弾いていると、ソロに入った時になんとなく合わなくて、アレッと思い「じゃあこうかな?」と試してみて合う、といった具合になるでしょう。

松井さんに出会う前に、英語の歌詞をバンバン歌っていた珍しい時代の、far awayとかだけで済まない英語の歌詞を玉置さんが歌うという、珍しい曲でもあります。これはぜひライブ盤We're Aliveでも聴いてほしいですね。武沢さんのノリノリなアクションも必見です。武沢さん、ずっとこういうノリでやりたかったんだろうな〜と、ちょっと切なくなります。

もしジャーマンメタルとか北欧メタル、みたいに、北海道ハードロック、というのがあるのであれば、まさにこれだと思います。アメリカでも古くはウェストコーストロック、もう少し現代に近づくとモトリークルーなどの「L.A.メタル」、都会的なBON JOVIらの東海岸ふうハードロック、シアトルのグランジ、といった郷土ロックがあるのです。安全地帯はそういうバンドの旗手として、日本の音楽界に郷土色というバラエティーをもたらす革命を起こせたかもしれません。90年代、沖縄ブームがあった時代に、北海道はこれなんだ!といえるものがあるとすれば、それはきっと安全地帯か、そのフォロワーだったかもしれないのです(千春やみゆきでなく)。以前にも書いたことですが、安全地帯の才能と技量が、残念ながら(幸運にも?)そういうスケールをはるかに上回っており、「ワインレッドの心」以降、完全に日本全国・アジアを制覇する勢いで売れていきます。

わたくしにとって、「オン・マイ・ウェイ」は、いまだ実現せざる「北海道ハードロック」の夢を見られる名曲なのです。

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